深宴

第11話



著者.ナーグル
















 抵抗すればどうなるか。
 どんな地獄に落とされるのか。

 地獄に落とされた親友達の姿を見せつけられることで、アスカはこれ以上ない程に理解していた。肉体はおろか魂までも汚され、人間としての尊厳も矜持もなにもかも踏みにじられ、獣の妻として生きなければならなくなる。そして定期的に神呼ばわりされる不気味な肉塊…教祖曰く、原初の神『玄牝』に奉仕し、嬌声をあげなければならないのだ。

 本人がどんなに拒絶し、抗おうとしても無理矢理に快楽を絞り出される。
 犯されることが、逃れることが絶望的になったら、そうなる前に自殺する覚悟さえしていたはずのアスカだった。だが、そんな彼女の覚悟を封じる教祖の吐く毒が鼓膜を震わせる。

「まあ、今度のことは君の親友達も交えて、じっくりと話し合おう」

 逆らえなかった。











 途中のことは良く覚えていないが、アスカは教祖に導かれるまま『神』のいる空間から別の所に導かれていた。御輿にでも乗せられたのか、それともレイやマユミ達のように抱えられていったのか、それとも自分の足で歩いたのか、それすらも良く覚えていない。

「ついたぞ」

 教祖の言葉に反応し、アスカはようやく顔を上げ、自分がどこかの建物内にいることを知った。
 薄汚れていて壁のセメントが剥き出しだが、鉄筋コンクリートで出来た建物内部だ。恐らく崩落による破壊から免れた貴重な建物だろう。椅子と机などの必要最低限の家具、場違いに大きなキングサイズのベッドが部屋の隅に固まっておかれている。そして後からしつらえたものらしい、冷たく揺るぎない鋼鉄製の格子が部屋を二つにわけている。
 逃げ場のない牢屋の中には、丸一日中の凌辱に疲れ切ったレイ、マユミ、マナの三人がぐったりと倒れ伏していた。いまだ乾かぬ粘液で濡れた三人の肌はヌラヌラと明かりを反射し、意識があるのかないのか肩を上下させてか細い声で呻き続けている。

「レイ、マユミ、マナ…」

 どこから引いているのか電気が通じているようだ。暖房が動く音がし、生温い空気が室内を満たして三人が凍えないようにしている。それは彼女達にとって幸いなことなのか。
 友人達の惨状に言葉を無くしていたアスカだったが、今の自分はどれくらいの違いがあるのだろう、と青白い蛍光灯に照らされた自分の姿を見下ろしてみた。赤く鮮やかだったドレスはボロボロに擦り切れて破け、剥き出しの手足は日焼けした男の肌のように黒ずんで見えた。

(どれだけ、汚れてるのかしら…)

 カスパール・ハウザーだって今のアスカよりはよっぽど清潔だっただろう。
 ポツリ、とアスカは自分でも気づかないうちに呟いていた。

「お風呂、入らなきゃ…」
「…まずは身綺麗にすると良い。話は湯浴みしながらするとしよう」

 にんまりと笑うと、教祖は背後の扉に向かって手を叩く。

「ほら、早くしろ。桶と湯を持ってこい。着替えとタオルも忘れるな」
「は、はい。ご主人様、ただいま…」

 そそくさと、部屋の中に数人の女性が入ってくる。年齢は上は三十前半から、下は十代前半の中学生くらいまでの美女達だ。全員、汚れても良いようにか簡素な衣服 ――― 男物のワイシャツのみやバスタオルを巻いただけなど ――― を着ている。大きなタライを持つものや、湯気の沸き立つ大きな鍋や、ヤカンを持った者もいる。

「なによ、あんた達…」
「脱がしてやりなさい」

 彼はこの地では絶対君主なのだ。
 命じられるまま床に置かれたタライになみなみと湯を注ぎ、準備を整えと奇妙に上気した顔の女性達は一斉にアスカに手を伸ばした。
 抵抗や抗議の言葉も虚しく、数人がかりでアスカは衣服をはぎ取られ、髪飾りも何もかも奪われて生まれたままの姿にさせられる。そのまま突き飛ばすようにタライに踏み入れさせ、肩を押さえて無理矢理座らせられる。そして、熱い湯を掛けられる。

「ああっ! 熱い! ちょっと、やめ、やめなさいよ! なんでよ、なんであんた達、あんな奴の言いなりに」

 アスカの言葉と視線に耐えきれず、俯く女達。

「ごめんなさい、でも、仕方ないの」
「お願いだから、おとなしくして。言うことを聞いて頂戴。うう、でないと…でないと」
「暴れないで。お願い、暴れないで。ご主人様の、命令なのよ」

 結局、アスカの抵抗はそれから2分程続いた。周囲の女性達は殴られても蹴られても、引っ掻かれても黙々とアスカから汚れを拭うことをやめず、4人がかりで押さえつけられ、濡らした髪にシャンプーをつけられて泡立てられるに及んで、とうとう抵抗をやめた。

 その代わりに、湯を掛けられ大人しく体を磨かれながら、ニヤニヤと彼女の自慢の裸体に目を細める教祖を睨んだ。

(くくっ。やはり極上の美体だ)

 泡立ったスポンジがアスカの肌を擦ると、ピンク色の肌が姿を見せる。その美しさと若さに教祖は息を呑んだ。

(ますます欲しい。なんとしてでも、彼女を私の妻にしなければ)

 口元を歪めると、教祖はアスカの青い瞳を見つめ返した。こんな絶望的な状況であっても、まだ闘志も矜持も誇りも失っていない。こういう抗う女を嬲りながら自分の物にするのは最高だ。


「取引だよ。単刀直入に言うが、ミス惣流。私の妻になりたまえ」
「…まっぴらごめんよ」
「そう言うと思っていた。イヤだと言うなら残念だが君は支配者共の妻として与えなければならん」
「好きにしたら。あいつらに手を触れられる前に死んでやるから」

 剥き出しの乳房を隠そうともせず、湯の滴をぽたぽたとコボしながらアスカはそう嘯いた。

「舌を噛むか。頸動脈を掻きむしるか。いずれにしても、死ぬには時間がかかるし苦しいぞ」
「覚悟の上よ。あんなケダモノ以下の目に遭うくらいなら、その場で死んだ方がよっぽどまし」
「…君が私の妻になることを承知するなら、君の友人達も含めて特別扱いすることを約束するが」
「嫌だって言ってるでしょう。これ以上、あんたの戯言なんて聞きたくないわ。あんた、私が誰かわかってるんでしょ!
 今までの人間と違って、地上の人間達も本気で探すわよ。文字通り、根掘り葉掘りよ! 絶対、ここも見つかるわ。断言したって良いわよ」

 教祖は思わずたじろいだ。絶対的優位にいるのは自分のはずなのに、どういうわけだろうか。逆に自分が押されている。

「あんたに出来ることはただ一つ。今すぐ私たちを解放して、全ての罪業を白日の元に晒して司法の手に自分を委ねることだけよ!」

 司法…。その言葉を聞いた瞬間、教祖は自分の立場を思い出した。
 そう、司法も政治も、全て間接的に自分が支配下に置いているも同然なのだ。天使の精液という麻薬によって。そう、これを使えば、今のアスカの脅しも全て無効化できるのだ。
 だが、敢えて彼女の提案に乗るのも面白い。ゲームは大好きだ。それも9割9分勝利が確定したゲームは最高だ。地下道を彷徨ったアスカは大層に勇ましく、そんな彼女を追いつめるのはここ数年来の高揚を覚えた。

「なら、賭をしよう」
「賭け? 何を…」

 たるんだ頬肉を揺らし、教祖は肯く。アスカに向かってではない。アスカの背後で蒼白な顔をしている美女の一人に向かってだ。その女は震える手に一本の注射器を握りしめていて、その中には淡く光る液体が満たされていた。
 気高い美女が気配に気づくより早く、女達は一斉にアスカを押さえ、無理矢理右腕を引き延ばさせる。慣れているのだろう。
 二の腕の中程にゴム管を巻き、浮き上がった静脈に注射針が刺さる。針が刺さると同時にゴム管はほどかれ、液体…天使の精液はアスカの体内に流し込まれた。手足に力を込めて薬液が入らないようにするアスカだったが、抵抗は虚しかった。毒の一分子が血流に混じり、脳に達した瞬間、くにゃくにゃと体から力が抜け落ちた

「く、くぁ、あっ…ああっ。な、なにを」
「賭だと言っただろう。今から十分後、おまえの束縛を解く。正気を保ったまま、私を拒絶できたらおまえの勝ちだ。だが、私にされるがままだったら、おまえの負けだ」
「あんた、なにか、薬…を。うう、目眩が…。暑い…はぅぅ」
「スペルマは過剰に摂取すると骨の変形や痴呆などを引き起こすが、用法用量を守って使えば、疲労を忘れて24時間一睡もしなくても平気な覚醒状態になるだけでなく、感覚は鋭敏になり、傷や疲労の回復力は数倍にも増す。まさに、夢の薬品。
 まあ、初めてのおまえには少々刺激が強いかも知れないな」
「はっ、はっ、はぅ。うっ、ううぅ。目が、まわ、って。気持ち、悪い…」

 もう聞こえていなかった。
 酒を飲み過ぎたとか、その場で50回転したとかそんな物とはレベルが違う目眩にアスカは翻弄される。三半規管がまるで機能していない。上半身を支えきれずに顔から倒れ込み、冷めかけた湯が飛沫を上げる。周囲の女達が引き上げてくれなければ、そのまま溺れてしまったかも知れない。朦朧としつつも意識の深いところは冷静に逃げなくてはと考え続けているのだが、体に力が入らない。

「に、逃げ、ない、と。ひ、ひんじ」

 女達に掴まれ、無理矢理立ち上がらされたことも気づかない。心の中の呟きが、意識せず口から出てきて内心の全てがさらけ出される。

「ほらほら、しっかりしたまえ。ミス惣流。逃げるのではないのか。まだ1分も経ってないのになんだその様は」
「ひっ、ひっ、ひぃ。に、逃げる…。私、だけでも、逃げ、て。シンジ、と。シンジと」
「シンジとは君の恋人か。羨ましい男だな。ん…まさか、ネルフの青年会長の…。なるほど、なるほど、どうりで」
「恋人…。し、シンジは、私の、もの。レイ達には、絶対に、負けない」
「そうだ。君の友人達のためにも頑張りたまえ。こんなにあっさりと落ちてしまっては興ざめだぞ。君がこのまま気絶したら、彼女らは支配者共の所へ逆送だぞ」
「れ、レイ達…。どうでも、良い、わ。あいつらなんて、邪魔な、だけ。シンジに、つきまとう、虫よ」

 録音してなかったこととレイ達が意識を失っていることを残念がりながら、教祖は愉快そうにアスカの本音に耳を傾けていた。酩酊状態になっているのは数分程。しばらくはアスカの秘めた内面を、聞かれるがままに答えてくれるだろう。

 9分後、急速にアスカの意識は清明になり、そして10分後に同時に感覚が鋭敏になる。
 そのままとある物を求めて、凄まじい焦燥感に苦しむ。1分間が1時間にも思えるような…。

(たっぷりとじらしてから、あそこで可愛がってやろう)

「あと7分だぞ、ミス惣流。ああ、おまえ達。ミス惣流にその服を着せてやれ。下着もちゃんと着けて、そうそう、その髪飾りも忘れるな」











 うすらぼんやりとしたアスカの耳には、教祖の耳障りな囁きが聞こえるが、それが意味することをほとんどアスカは知覚できないままでいた。なにか酷く屈辱的な猫なで声が聞こえて、自分でも忘れていたことまで問われるまま口に出した気がする。

「う、ううっ。ここ…わたし…」

 血流が脈打つこめかみが鈍く疼き、ただ、喉の渇きにもにた焦燥と飢餓に翻弄される。視界が薄赤く染まり、なにかを求めて体が徐々に熱を持ち、疼き始めるのを他人事みたいに感じていた。

「なに、なんなの…よっ。あんた達、さわら、ないで」
「………あまり暴れないほうがいい。せっかくの衣装が台無しだ」
「衣装…そういえば、私の、ドレス」
「もうボロボロだったからな。折角なので着替えて貰った。君の名前が歴史の表舞台に挙がった、世界で最も有名な女性になった時に着ていた服だよ」
「え…」

 言われて電車の窓ガラスに映った自分の顔を見る。

(電車…? え、あれ、私、どうしてこんな格好)

 弱々しい電灯の元、やつれてはいるが美しさが寸分失われていないアスカの顔が映っている。いや、薬の影響からか頬を上気させ、艶めかしくも瞳を潤ませてその色気は物凄まじい。
 そしてなによりアスカを戸惑わせていたのは、彼女が着ている懐かしくも場違いな衣服のためだ。
 少々丈が短すぎる青いブリーツスカート、そのボリュームを納めるには少々小さい白いブラウス、エヴァのシンクロ用ヘッドセットに模した髪飾り。

(こ、これって、あの時の、14歳の時の制服)

 少々布が安っぽく、サイズが合っていないのは本物なのではなく、その手の店から購入したイミテーションだからかも知れない。
 いずれにしても、今更こんな格好をさせられるのはアスカにとって屈辱以外の何物でもない。そして、そんな姿を同じ車両内で惨めに身を小さくしている複数の女性達と、車両外に疎らにいる正気を無くした男達に見られている。こんな時にもかかわらず、羞恥にアスカは顔を赤くした。

(まだ裸にされた方がマシよ)

 戸惑っているアスカの背後から、全裸になった太鼓腹の中年男がのっそりと立っていた。いつの間に服を脱いだのか、醜悪な中年男の肉を震わせ、若く瑞々しいアスカの体に飛びかかる。
 抵抗する間もなく抱きすくめられ、アスカの肌を思う様に撫で回される。

「ひぃっ、な、なにするのよ!?」
「暴れるな。数こそ少ないが、外にはまだ支配者や奉仕者達はいるんだぞ」

 顎で窓の外を示し、それからドスの利いた低い声で囁いた。

「友達みたいになりたくはないだろう。それとも、また友達を奴らに与えようか。いや、おまえはそうして貰った方が嬉しいんだったな…」
「何を言ってるのよ。私は、そんなこと」
「そうだろう。そうだろう。そう言うと思った。だが、ほんの数分前、どんなことを口走ったか聞かせてやろうか。
 まあそれはいい。ともかく、まだ脱出を完全に諦めたわけじゃなかろう。だったら、支配者共の妻にされるより、私の妻となった方がよっぽどその可能性がある。そう思わないか」

 元の暮らしと比べれば地獄のような状況なのに、アスカにはそれがとても素晴らしい提案のように思えてくる。そうたとえ、この男に一時身を任せたとしても、絶対に隙を見て逃げ出してやる。

(だ、脱出…。そ、そうだわ。私は、絶対にシンジの所に)

 そう、こんな下衆の言いなりになっているのは、衝撃的な光景に打ちのめされているからでも、目先の恐怖と苦痛に負けたからでもない。全ては脱出するため、助けを呼んでくるため。あんな化け物に犯され、喰われるくらいならまだこの男に抱かれた方がマシだと思ったからでもない。

「納得したようだな。さて、楽しませて貰おうか」

 ゆっくりと力の抜けていくアスカの手応えに教祖はほくそ笑み、アスカの肢体にしがみつく。押されたアスカは慌てて目前の支え、鉄棒を思わず掴んだ。

「ちょ、ちょっとどういうつもりよ!?」
「口ではなんと言っても、その猛々しさは隠せんよ。こうでもしないと安心して…」

 身動きの取れないアスカの背後から、無遠慮に教祖の腕がアスカの体を撫で回した。
 ゴツゴツした蜘蛛の足のような男の腕がはち切れんばかりのブラウスの膨らみ掴み、指をめり込ませて絞り込むようにして弾力を楽しむ。

「くっ……んんっ。なに、するのよ」
「痴漢…といっても、ミス惣流は満員電車なんて乗ったこと無いかもしれんな。まあ、こういうシチュエーションで、君と楽しみたいのだよ」

 逃れようと身じろぎするアスカだが、鉄棒に押しつけられて身動きが取れない。それだけでなく、異様な興奮状態のためか息苦しさとともに倦怠感が全身を包み、どうにも力が入らない。自由にならないもどかしさに尻を突き出し、ずり落ちる上半身を支えるため、しっかりと鉄棒を掴んだ。それがまるで媚びるような格好になっていることにも気づかず、アスカはただ男の手の感触から逃れようと暴れた。
 だが、それは彼女を知っている者から見たら、随分とささやかな抵抗に見えたことだろう。

「ほれほれ、良い手触りだ。おお、なんという…」

 好き放題に揉みしだかれ、サイズが合っていなかったブラウスからボタンがはじけ飛んだ。

「あんうぅ。うぅ、あ、なにか…ああ、おかしい…」
「くくく、効いてきたか」
「き、効くって?」
「スペルマを注射したことを忘れたのか。さあ、ゲームの始まりだ。私の手から逃れられるものなら、逃れてみたまえ」

 無理だろうがな、と心の中で付け加えて、教祖はアスカの耳たぶを甘がみした。途端に、気丈だったアスカの目がとろんと蜜飴のように潤んだ。

「ん、くぅぅぅ…っ」

 ピシピシとガラスがひび割れるような幻聴の中、アスカはシンジ以外には聞かせたことがないような声を漏らした。
 逃れるように首を反らせ、眦を固く閉じてアスカはイヤイヤとだだっ子のように首を振る。まだ乾かない乱れ髪を掻き分け、教祖は舌を這わせていく。

「ひぃっ、き、気持ち、わるい」

 もはや化学反応レベルの嫌悪と拒絶がアスカを支配する。だが、その一方、言葉には出来ないような甘美な疼きが彼女を翻弄していく。逃げないと、戦わないと…そう思っても、体にはどうやっても力が入らない。それどころか、力めば力む程に体から力が抜けていく。
 ぞわり…と染み出すような快楽が耳たぶから全身を走る。ビクッ、と震えるアスカの胸を教祖の指先が撫で回していった。汗ばんだブラウスとブラジャーに指がめり込み、弾力と柔らかさを堪能する。

「あく、う、うぅぅ。やめ、て…。はなし、て」
「そんなものは拒絶の内にはいらんぞ。もっと体全体を使って抗いたまえ」
「ううぅぅ。勝手なこと、言わない、でよ」

 ブラウスの隙間から手を差し入れ、ブラジャー越しにぐいぐいとこね上げるように揉みしだく。電車痴漢プレイにしては、些か大胆で直接的な行動だ。だが、そんなことを指摘する人間はこの場にはいないし、指摘されたってこの男は聞き入れはしない。彼の地下世界を知ってからの半生は、色と欲で満たされている。
 病的な征服欲。
 いつしか、教祖の左手はアスカを押さえることをやめ、右手と一緒になって同時にアスカの両乳房を愛撫していった。両腕で重量感を確かめるように下からすくい上げ、柔らかさと弾力を楽しみながら指を沈めていく。
 揉みくちゃにされるその度に、ぞくぞくとする快感が痺れとなってアスカを桃色に染め上げていく。

「はっ、はぅ、うっ、ううぅ…。や、やめ…。やめ…て。放せ、馬鹿ぁ。あう、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はっ…はぁ」
「この手触り、この温もり。これを独り占めしていた男がいるかと思うと、羨ましい限りよ。指に、手の平に吸い付くような瑞々しさ。この香り、髪の柔らかさ。もう、おまえの体の虜になりそうだよ」
「ううぅ、勝手なこと、言わないで…離し、てよ。あううぅ、ううぅ、ぐぅ、あぁぁ。やだ、やだ、乳首、触っちゃ…あっ、あああぁぁ!」

 ブラジャーの布越しに乳首を摘まれてアスカの体が跳ね上がった。無防備なうなじをあつぼったい唇がじゅるじゅると音を立てて吸い付く。

「うあああぁぁ…。いや、いやぁ…そんな、やめて、やめなさい、よ。そんな、舐められたら…ああぅ、う、ううぅぅ」

 執拗な愛撫にブラウスの胸元は大きく引き開けられ、にこぼれだした豊乳が押しつけられるがままに手すりの鉄棒を間に挟み込んでいた。ブラジャーもまくれあがり、剥き出しの乳房はピンク色に火照り、乳首は幾分固さと大きさを増して屹立している。

「はぁ、はぁ、いやよ、感じてなんか、無い…。ううぅ、はぅ、あおぅぅ」

 薬のために感度が跳ね上がったアスカの体は、敏感に淫らに教祖の愛撫に反応してしまう。どんなに心で拒絶しても、その甘美なる刺激に我を忘れてしまう。自分の言葉がどれほどに頼り無いか、そのことを自覚してアスカはまた一滴の涙を流した。

「んあぁぁ、いや、ああ、あっ。あうぅ、うっ、うっ、うっ。はぁ、はひ、ひぃ…」

 肩で大きく息をし、縋り付くように鉄棒をきつく握りしめ、ずり落ちようとする体を支えるアスカ。
 鼻が詰まったような呻きを漏らし、必死になって意に反して痙攣する体を押さえようとする。だが、ビクンビクンと断続的に跳ね上がる体は止められない。涙さえこぼして、アスカは全身を駆け巡る官能に翻弄され声にならない悲鳴を上げ続けた。

「んんん―――っ、んん、うんん―――っ! ん、ん、んんっ、う…ああぁぁぁ…。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はっ…はっ…はっ…」

 まだ体を小刻みに震わせながら、アスカはガラスに映った自分の顔と、重量感溢れる自慢のバストを交互に見つめる。まるで映画のように現実感のない光景が移っていた。自分が最も嫌悪する、男に媚びるだけの女の顔…。

「う、嘘よ。こんなこと、私…に、あるはずが。ゆ、夢よ、こんなの…。悪い、夢…。はぁ…はぁ、はぁ、はっ、ああ…はぁ」
「なんという…体だ。あのレイという、うう…女も、最高だと思ったが、おお、なんと、おお…」

 愛撫している教祖もまた、テカテカと光る禿頭から湯気を立たせんばかりだ。
 ただアスカを啼かしてやりたい一心で愛撫を続けていたが、揉んでいるばかりでは堪えきれなくなったのだろうか。胸を揉んでいた右腕が、そろそろと腹を撫でるようにアスカの下半身へと向かっていく。指先が体の線をなぞる感覚にビクリ、ヒクリと彼女は体を震わせる。

「はぅ、あぅ、やめ、やめ…て。ううぅ、こんなの、わ、私じゃ、ない。う、うう」
「ほうほう、こんなに太股を粟立たせて、なんという素晴らしい肉付きだ」
「ふ、太股、触ったら、うううぅ、こ、殺してや…る、うぅぅ。む、胸も、ダメよ。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 スカートの裾を割り、指先が内側に潜り込む。

「んんん、んああぁ―――っ!」

 濡れたショーツの盛り上がりを愛撫した、『じゅくっ』という淫らな水音が股間から溢れた瞬間、再びアスカは大きく首を仰け反らせて甲高い叫び声を上げた。

「んああっ、あっ、ああっ、ぅああぁぁ! 指、ああああぁぁぁぁ―――っっ!!」

 未体験のオーガズムに、アスカは釣り上げられた魚のように激しく暴れる。そんな抵抗を盤石の体勢で受け止めつつ、遠慮無く指先がショーツの隙間から内側に潜り込んだ。淫靡に充血した淫唇を押し開き、人差し指と中指を第2関節まで差し入れて容赦なくかき回していく。
 電撃と衝撃が脳天まで焼き付かせる。

「あうあぅぅ、やぁぁぁ、やめ、てっ。そんな奥まで…っ。こんな、こんなの!
 し、シンジ助けて、助けてぇ! ああ、やめて、いやぁぁ―――っ。あっ、ああっ、うそ、イヤよぉ」

 うっすらと濁った愛液が内股を伝い、幾筋も滴り流れ落ちる。

「はぅぅ、あぅ、くぅぅ。いやぁ、いやぁ、やめて、こんなの、私じゃないわ!」

 耐えきれず、アスカの上体が地面と平行になるまで崩れ落ちる。プチプチ、と音を立てて残っていたブラウスのボタンがはじけ飛んだ。上着が引きはがされ、肩までが剥き出しになる。勢いよく剥き出しになった乳房を震わせる。
 四つん這いになり、尻を教祖へ突き出すような体勢になったことにも気づかぬまま、ヒップを左右に振ってアスカは甘く喘いだ。

「あうう、あう、ううぅぅ。ふぅ…ひぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ。だ、ダメ、こんなの、助け…て……。う、あうぅ……逃げないと、行けないのに」

 一中制服を着乱し、半裸状態でアスカは体をくねらせる。娼婦…いや、江戸時代の花魁さながらの色気に、教祖は唾を飲み込む間も惜しんで、汗の玉浮く背中に口を付けた。ちゅう、ちゅく、と吸い付き舐る音がアスカの心を打ちのめす。

「ちゅぶ、ちゅぱ…ちゅ、ちゅ………美味い」
「いやぁぁ、痕が、ついちゃう」

 ぽたぽたと音を立てて金髪碧眼の美女の涙と汗が、凌辱者の汗と涎に混じって床に滴る。
 心の奥底では逃れないと行けないのに、この教祖を名乗る男を打ちのめし、脱出しなければと強く思っているのに、どうしても体に力が入らない。

(今しか、今しかチャンスはないのに…。どうして、動いて、動いてよ! お願いだから! なんで、なんでよ。私の体なのに、なんで動いてくれないのよぉ)

 答えの代わりのように、アスカの口から快楽の毒に火照った嬌声が途切れ途切れに漏れだした。教祖に問われるがまま、アスカの秘めた内面を言葉に変える。

「どうだ? 良いか、良いだろう? 正直に答えれば、もっと良くしてやるぞ」
「ううぅ、ん、はひぃ、ひぃ、やめて、お願…い。ふぅ、ひぃ、ふぅ、ひぃあああぁぁ。い、良い…なんで、こんな……ああ、あはぁ…。あ、あっ、あっ、あっ………気持ち、良い…のぉ」
「そうか、そうか。もっとか、もっと気持ちよくして欲しいか」
「あう、ううん、うん、違う、違う、なに、私。私、なに、何を。ひぅぅぅ…ん」
「まだ頑張るか。なかなか、うう、強情な奴だ。これならどうだ!? 切なかろう、もどかしいだろう!?」

 アスカの秘めた心を剥き出しにしようと、教祖の指と舌の動きが一層激しく、淫らになる。

 ジュパ、ジュパ、グチュ、グチュ

「はぐ、くあぁぁぁ―――っ! や、やめ、こんな、のっ。激しっ! すぎる! お願い、ああ、シンジ、耐えられ、ないっ」

 車両内部に香水でも振りまいたように発情した女の匂いが充満した。二人の絡み合いを見ていた教祖の妻達が一斉に生唾を飲み込んだ。『なんて、凄いの』堪えきれず、一人の女が色に汚れた呟きを漏らす。自分が犯されるところを想像したのか、その表情は完全に牝だ。彼女だけでなく、全ての女達が刺激的な光景と淫臭にすっかり当てられ、桃色吐息を漏らしながら大きく肩と胸を上下させていた。

 そう、もうすぐ、教祖はきっと問うだろう。

『妻になる決心は付いたか? ついたなら、もっと気持ちよくしてやるぞ。その体の切なさも、解消してやる』

 新入りの妻候補に教祖はいつもスペルマを注射し、発情状態にした上で愛撫だけで数度オーガズムの感覚に貶めるのだ。自白剤のような効果もあるスペルマによって女の内面を徹底的にさらけ出させ、それからおもむろに女に問うて選択させる。実際には他の選択肢を排除した非情な質問を。それでも、それを選んだのは女自身だから、その後正気に返った時の苦しみは如何ばかりか…。
 今回もきっとそうだろう。アスカはなかなかに頑張っているようだが、それもすぐに…。

「はぅぅ、あぅぅ、やめて、ああ、やめてって、言ってるのに! 気持ちよく、なんか、ああ………はひぃ、んっ」

 大きく全身を波打たせるようにして息をするアスカ。執拗な愛撫に既に数回達してしまい、息も絶え絶えな状態だ。
 教祖の指が音を立ててアスカの捲れあがった秘唇から引き抜かれる。愛液の糸を引いた指先が擦りあわされると、ニチャニチャと粘つく音をアスカの耳元で奏でた。にたりとタラコのような唇を歪めて教祖が囁く。毒を吹き込む時以外、始終アスカの首筋や背中を舐め回していたため、下顎全部が自らの涎で濡れ光っている。

「これでもかね?」
「いやぁ、そんな音、聞かせないでよ…」

 生暖かい息を吹きかけられた瞬間、ビクリとアスカの体が硬直した。しとどに濡れた自分の陰部という証拠を突きつけられた気がして、それがまた限りない羞恥をアスカに感じさせる。

(ううう、変よ、どうしちゃったのよ。いくら、麻薬を打たれたと言っても、こんな奴に、触られて感じちゃうなんて)

 触られて感じていることだけが彼女を戸惑わせている原因ではない。既に3回はアクメの喜びに体を震わせ、休むことのない愛撫に粘膜を刷り上げられているというのに、全身を包むもどかしさと乾きが一向に収まらない。達すれば達する程、ますます空腹にも似た焦燥感と息苦しさは強まっていく。

「うううぅぅ…。やめ、やめてよ、やめなさい、よ。あんた如きゲスが、人の体を、好き勝手に…」

 肩越しに恨めしげに教祖を振り返ると、途切れ途切れにアスカは呟いた。切れ長の目が弱々しく涙を浮かべ、震えている…。アスカの内面の弱さがそこにあった。『これだ、とうとう引き出した』その確信にほくそ笑みつつ、教祖はアスカの耳元で魂の契約を強いる悪魔の如き優しさでこう答えるのだ。

「やめろと言うならやめても良いが。その場合、そのもどかしさや息苦しさは決して消えはしないぞ」
「え…? う、嘘…」

 耐えられる範囲だったはずの苦しさともどかしさと中途半端な快感が、突然、アスカの全身を耐えられない域にまで達した。このもどかしさが、終わらない…。この意識が飛びそうな最高レベルの歯痛のような快楽と苦しみが一生消えない。それは死刑宣告の様にアスカを打ちのめした。

「どういう、はぁ、はぁはぁ…こと、よ」
「なーに簡単なことだ。スペルマが産む快楽は異性との交合を行わない限り、決して収まりはしないのだよ。そう、どんなことをしても、な」
「うそ…そんな、馬鹿なことが。これは、麻薬の、禁断症状か、何かで、1日耐えきれば、消えて、無くなる」

 いつの間にかアスカの腰を左右から掴み、腰の高さを合わせながら教祖はアスカの思いこみを否定する。ブリーツスカートの手触りとその下のヒップの弾力を楽しみながらアスカの耳元で囁く。

「たった1回注射したくらいで中毒になると思うかね。昼夜なく三日は打ち続けなければ…な。
 違うよ。それは、男のモノで膣奥をかき回され、精液を受け止めるまで決して収まりはしない」
「いや、いやぁ。そんな馬鹿なこと、そんなこと…」
「まあ、そう嫌がるな。その時の快楽は、今までおまえが絶頂と思っていた物が子供の遊びのように思える程、凄い物らしいぞ。それこそ、声が溢れて止まらなくなるくらいな」

 アスカの顔が文字通りの絶望に彩られた瞬間、おもむろに教祖は腰を前に突き出す。
 ショーツ越しに灼熱の肉棒が秘唇に触れた瞬間、言葉を無くしてアスカは震えた。大きく背筋を仰け反らせ、唯一力が入る指先でしっかりと鉄棒を掴み、ずり落ちようとする体を支える。小刻みに震える太股には力が入らず、そうでもしないととても耐えられない。言葉を返せば、鉄棒を掴むことも出来なくなった時、アスカの抵抗は終わってしまうのだ。

「ひぐぅっ、うっ、やめ、やめてよ! あう、ううぅぅ―――っ!?」

 おもむろに教祖はアスカの唇を奪った。アスカの唇は想像以上に柔らかく、唾液は甘い。

「はぐっ、う、うううぅ。ちゅく、ちゅぶ、むぅっ」

 早回し映像のようにゆっくりと迫る唇をかわすことも出来ず、アスカはそのまま受け入れてしまう。心では避けないといけないと強く考えていたのに、意志に反して体は動かなかった。いや、動かなかったどころか、そうすればもっと快楽を貪れるからとでも言うように、積極的に、自分から唇をとがらせ、舌を絡ませてしまった。

「んぶ、んっ、んんっ。うぅぅ、じゅくっ。んあ、ぶあっ、はぁ、ああ、まだ…んんぅ、んんっ。ちゅぷ、ちゅっ」
「くはぁ、はぁ。なんという濃厚なキスだ。こっちがイかされてしまいそうだ。さすがは世界最高の女性、惣流アスカ・ラングレーと言うところか」
「ああ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ああぁぁ。そんな、こと。言わない、で」

 飲みきれない唾液を口の端から溢しながら涙目になって抗議するアスカに、教祖はぞくりと背筋に寒気が走るのを感じた。何という淫らな表情だろう。セレブとして世界に知られている尊きアスカは作り物で、本当のアスカは、この弱々しい方なのかも知れない。そう思った瞬間、教祖自身もまた、アスカを襲っているのと同様の焦燥感と飢えに囚われた。今すぐ、犯さなければこっちが耐えられない。

「くぅ、ミス惣流。もはや、耐えられんぞ」
「……嘘、まさか。イヤ、イヤだってば。待って、待ってよ。それだけは、ああ、絶対に」

 濡れて張り付いていたアスカのショーツは既に膝の当たりにまで引き下ろしてある。スカートをまくり上げると、剥き出しになったアスカのヒップが教祖の眼前にさらけ出された。

「くっくっく。口ではそう言うが、なら、改めて問おう」
「な、なにを、よ?」
「私を、受け入れて妻になるか。その消えない苦しさを一生抱えて、飼い殺しになるか。ああ、間違ってもおまえを支配者共の妻になんかはしない。体の良い、鑑賞物として、男の手に触れられないところで一生…」

 もちろん、本心はそんなことになって欲しくはない。教祖は、アスカにただ一言を言わせる自信があるのだ。
 教祖の顔、電車の床、教祖の妻達の顔とアスカは交互に視線を変えていく。勿論、そんなことをしたって答えが出るわけではない。いや、答えは既に出ている。教祖を受け入れるくらいなら、舌を噛んで死んでやる…と。

(ああ、なんで、なんでよ。どうして私、口ごもってるのよ)

 車両内部に奇妙な静寂が満ちる。はぁ、はぁ、と大きく肩で息をするアスカの呼吸音だけが聞こえる。見開いた双眸を戦慄かせ、拒絶の言葉を必死になって吐き出そうと大きく口を開けているアスカ。半開きになった口から、ただ一言、『No』と言えばいいのだ。簡単なこと。
 レイ達の我が身を犠牲にした行動も無駄に終わり、なにより、死という逃避を選ぶことは屈辱だけれど、だが、少なくとも誇りと貞操は守れる。

「ほら、早く言え。もっと気持ちよくしてほしいのか、それとも一生苦しみ続けたいのか」

(なにを、ああ、私…。言わなきゃ、やめてって)

 体をくねらせながらアスカは、大切な思い人の顔を思い浮かべた。なぜか、今の彼の顔ではなく、中学で同級生だったあの頃の、頼り無いシンジの顔を。

(シンジ、シンジ、シンジ! お願い、私に、力を…)













「……………………………………………して……………」













 長い…と思っていたが、実際はほんの20秒ほどの沈黙の後。ぽつりと聞こえた小さな呟きが、最初アスカは誰の言葉かわからなかった。蚊の鳴くような、彼女が毛嫌いする泣きかけたマユミのような小さな声に、アスカは最初苛立ち、的はずれな非難の瞳で教祖の妻達を睨んだ。

(なに、むかつくようなことを呟いてるのよ…! あんた達も、こっちを助けるとか、何とか出来ないの!?)

「そうかそうか。やはり、ミス惣流も女だったか」

 嬉しそうに教祖は改めて腰の位置を調整し、おもむろに体を密着させる。ビク、と体をすくませてアスカは教祖をせっぱ詰まった表情で睨んだ。

「い、イヤぁぁぁ! ちょっと、何するのよ!? 私は、まだ、何も言ってない!」
「いいや、今確かに言った。『して』と確かに言ったぞ」
「嘘、私、そんなこと言ってない! あいつら、あいつらの誰かが、言ったのよ! ああああぁっ!」

 アスカの悲鳴と共に、グロテスクに膨れあがった亀頭がアスカの淫唇の表面にヌルヌルと擦りつけられ、たっぷりと愛液を塗りつける。

「くっくっく、往生際が悪いぞ。違うというなら、今すぐ、逃げ出してみたまえ」
「う、いやぁ、放して、助けて、誰か…! あんた達、ぼけっと見てないで助けなさいよ! 私を、誰だと思ってるのよ!」
「ほれ、あと三つ数える間にな。ひとーつ」
「いやいやいやぁぁぁぁ! 嘘よ、こんな、シンジ、シンジ、シンジぃぃ―――っ!」

 ぐっ…と腰に力を込め、割れ目の中心に亀頭の中心を揃える。

「ふたーつ。なんで叫んでるだけで逃げない?」
「あああっ、ママ、ママぁ―――っ!!」

 せめて位置をずらして逃れようと必死に体をくねらせる。だが、腰をつっかりと掴まれて固定されている状態では、結果として上半身だけをくねらせることにしかならない。そんなことにも気づかず、髪を振り乱してアスカは泣きじゃくった。

「みぃーっつ」
「ひぃぃっ! 待って、待ってよ! まだ、ああ、あ、あああぁ…」

 アスカの抗議は飲み込まれた。食いしばった歯の隙間から、ヒィヒィと狂風のような喘ぎが漏れる。
 数え終わると同時に、ぬるりと教祖の肉棒がアスカの胎内に押し入ってきていた。シンジのよりも一回りは大きい豪棒に押し広げられ、強烈な圧力でアスカの胎内に挿入される。たっぷりとした愛液のおかげで、ほとんど抵抗もなく、教祖の肉棒は飲み込まれていく。

「ひっ…ひぅっ……ひっ…ひっ、いっ、ひぐっ」

 ブルブルと瘧のようにアスカは全身を震えさせた。挿入をあっさりと許した自分が信じられない。
 亀頭を飲み込み、竿を飲み込み、今もなおゆっくりとした教祖の肉棒を受け入れていく。あれだけ罵ったレイと同じ事を、自分がしている。

「あ、かはっ、はっ…いやぁ…」

 擦れた喘ぎの中、それだけを呟くのが精一杯。
 絶望と嫌悪とは裏腹にあれほどあった焦燥が消え、母の腕に抱かれているような温もりと充足感で満ち足りていく。知らず知らずのうちに下腹に力が入り、より深くより確かに男の肉棒を受け入れていこうとしている。

「はぁ、はぁ、あ、ああぁぁぁ…。なんで、ううぅ、ん、んんっ…こん、な、に。ああ、気持ち…いい…だめ、感じたり、なんか」
「良い、か。はぁ、ふぅ。ミス…惣流。いや、おお……アスカ」
「んんぅ…。良く、ない…気持ちよく、なんか………ああ」
「強情なところが、また、愛しいぞ…。うう、おまえの、待ち望んだ、珍宝だというのに」
「望んでなんかぁ〜〜〜、ない、わよ」

 恐ろしい程の快感に翻弄され、アスカは首を振って教祖の言葉を否定しようとした。だが、汗みずくになった体は教祖がゆっくりと腰を動かし、注挿を開始するとたちまちに彼女の言葉を否定した。

「ひっ、ひっ、ひっ、ひぃぃ……っ! うあ、あっ、あっ、だめぇ…声が、出ちゃう、ああ、また、またぁ」
「ほれ、ほれ、口ではそう言うが、アスカのこっちの口は、ひぃ、ふぅ…食いちぎらんばかりに締め付けて、涎垂らしてるぞ」
「あいいぃぃ〜〜〜〜っ。そんな、の、ただの、生理、反応よっ! 私の、意志じゃ、ないっ」

 教祖のゆっくりとしたピストン運動に、淫らに踊り狂うアスカ。教祖の肉棒が挿入された瞬間から、半ばイきっぱなしで、落ち着くことも出来ずどこまでも高みへと押し上げられていく。

(く、狂う…こんな、こんなに感じさせられて、ああ、い、いや。このままだと、わたし、わたし…)

 鉄棒を握りしめる指先は白く血の気を失い、崩れ落ちる寸前だ。
 肉の擦れ合う音が淫らに車内に響き、アスカは喘ぎ狂う。

「いや、いや、いやぁ! 良いの、イヤぁ! 感じて、ないっ! 感じてない、シンジ、シンジぃ! 違うの、これは、違うのよ! 無理矢理、無理矢理だから! ああ、感じたく、ない…っ!
 私は、レイなんかとは、違うの! 違うのよぉっ!」
「たまらんか、おお、気持ちよくて、いきそうかぁ。わ、私、もだ。おお、なんという…」
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああっ。やめて、もう、やめてぇ! あっ、うそ、ああ、やだ、あっ、んあぁっ…あっ、ああっ、あっ、あっ、あああっ」

 唐突に教祖の背筋がぶるっと震えた。同時に、大量の迸りがアスカの胎内で飛沫を上げ、唐突に内を満たすぬめりを感じ取りアスカは目を見開いた。ゴボゴボと人間離れした大量の精液が膣内にあふれかえるその感触。生暖かさはアスカの最後の一線を打ち砕き、溜まりに溜まっていた官能の扉を一息に押し開いた。

「んあ、あああぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!! ああ、あ、いああぁぁ―――っ!!」

 アスカの口から粘つく涎と共に甲高い嬌声が溢れ、車内はおろか地下世界に大きく響く。

「あ、あはぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ああ、あ、ああぁぁ。私、こんな、嘘…」

 快感の波にとうとう体を支えきれず、アスカの上体が崩れ落ちた。ヘアピン状にぐったりと体を折り曲げ、教祖の肉棒を挿入されたままの姿勢でアスカは屈辱に泣きじゃくる。

「うっ、ううっ、ううっ。ひ、酷い…なんで、こんな、私が…私が…。ああ、シンジ。ごめ、ごめん…なさい。わたし、あんた以外の、人に…。ママ、ママぁ…」

 泣きじゃくるアスカを見つめている教祖だったが、一度射精して固さを無くした肉棒が、むくむくとアスカの中でまた固さを取り戻していくのを感じていた。アスカもそれを感じ取ったのか、泣き声を一瞬途切れさせ、逃れようと藻掻き始めている。

「あう、うっ、ううっ。も、もう、イヤよ。はなし、て。もう、いいでしょう。お願いだから、解放してよ…!
 私じゃなくても、レイとか、マユミとかで良いじゃない。誰、にも、言わないから。だから、許して」

 これで終わりだって?
 いいや、まだまだだ。

 認識の甘い我が儘娘に言い聞かせるように、教祖はアスカの両腕を掴むと一息に後方へ引き絞った。強引に上体を反らされる痛みにアスカがうめくが、構わず教祖はその姿勢を保ったまま場所を移動させる。そして、数歩アスカを抱えたままよろめき、目的の場所に着くとようやくアスカの腕を放した。

「あ、ああっ」

 また倒れ込むのかと身構えたアスカだったが、予想外なことにすぐに体は何かに押しつけられ、双乳がぐにゃりとへんぺいにひしゃげる。混乱しているアスカは、自分が電車の扉に押しつけられたことにも気づかない。うっすらと開けた彼女の瞳には、電車の外で思わぬ光景に口元を歪める数人の奉仕者達の姿が目に入った。
 ガラスに押しつけられ、扁平に広がった胸にピンク色の乳首が埋没して今の彼女はとても扇情的だ。一歩間違えれば、外の奉仕者達が我慢できずに飛びかかってきそうな程に。

「そん、なっ。やだ、誰か、見てる! 見られてる! お願い、イヤぁ、こんな、姿」

 既にそんなことを気にする状況でもないし、男どころか教祖の妻達がすぐ側で見ているのに、これがアスカの乙女心という物なのだろうか。その反応に目を細めながら、教祖は再び固さを取り戻した肉棒の律動を再開させた。

「んああぁぁっ! あっ、やだ、やだぁぁ! こんな、男に、見られ、ながら!」

 再びビクビクと体を震わせ、窓ガラスを上気した息で曇らせながらアスカは甘く甲高い喘ぎ声を漏らした。半ば立ったままの姿勢故に、突き上げられると自分の全体重が反動となって自分自身に返ってくる。その感覚が彼女の全身の神経をほじくり出し、甘美なる疼きで痺れさせるのだ。

「あううぅぅ、いや、いやぁ。ママ、ママぁ…。お願い、お願い、助け、てっ。また、助けに、来てよぉ」

 残念ながらエヴァ弐号機は破損著しく放棄され、彼女の母、キョウコは今は完全に故人となっている。

「うううぅ、うぐぅぅぅ、ダメぇ、ダメぇ…。また、また、イっちゃう。うう、あううぅ」

 体の熱を少しでも冷まそうというのか、冷たいガラスによるピッタリと体を密着させ、犬のように舌を出して荒い息をするアスカ。すでに制服は彼女の汗で搾れば水が滴る程に濡れている。もう、彼女には限界が近かった。

「うっ、うっ、うううっ。も、もう、イヤ…。あつ、熱い、体が、熱い…。ママぁ、怖い、怖いよぉ」
「ぬ、ぬぐぅ。こ、このまま、抜かずの二発目…だ」
「や、やだ、やだぁ。二回目なんて、妊娠、しちゃう…。だめ、ママ、ママぁ。シンジ以外の、だなんて。シンジ、ああ、助けてぇ。わたし、こんな、のイヤよ。ママになんか、なりたく、ない」
「そ、それは、良い! う、受けと、めろ。今日一番の、男汁を」
「やめてやめて、あああ、ママぁ――――――っ!!」

 再び、長く間断ない小刻みな痙攣にアスカは体を震わせた。アスカのほっそりとした膣は二度目の射精を受け止めきれず、淫靡な結合部からぶびゅ、と脱糞のような音を出してあふれかえる。

「ふぅ…満足、満足」
「んあぅ…!」

 教祖がようやく茹で上がったように真っ赤になった肉棒を引き抜くと、内股を伝い、たるんだ靴下を濡らして愛液と精液の混合液が流れ落ちる。股間の真下にはうっすらと白濁した小さな水たまりが出来ていた。

「ううぅ、なんというか。極上の名器だな。あの、レイというおまえの『友人』が今までで最高だと思っていたが、これは、甲乙付けがたいぞ」

 教祖の支えを無くし、崩れ落ちたアスカを尻目に教祖もフラフラとその場に尻餅をつくように座り込んだ。もはや種切れ、いや、アスカが相手なら、まだ、後一度くらいは…。また固さを取り戻していく孝行息子に双眸を歪めながら、教祖はその場で胡座をかいた。
 うずくまり、肩で息をしているアスカに向かってにやついた笑みを浮かべる。

「どうだったかな。アスカ」
「う、ううっ。い、良いわけ、無い…でしょ。も、もう、良いでしょ。…お願い、だから。解放、してよ」
「なぜ解放など…」
「誰にも、言わないわよ。…人質に、レイ達を、残すから」

 苦笑しつつ、教祖はアスカの言葉を遮った。これ以上、言葉遊びをしても仕方がない。

「さて、アスカ。これが最後の選択だ」
「最後?」
「そうだ。こっちに来て、自分の意志でこの珍宝に挿入して、文字通り身も心も私に捧げるか。あるいは、自ら命を絶つか」

 ふらり、とアスカは立ち上がった。そのまま操り人形のような頼りなさで、のろのろと教祖の方へといざり寄っていく。教祖はニヤニヤと笑みを浮かべ、当のアスカは当惑した表情のまま、自分のしていることに戸惑っているようだ。

(あ、あれ? なんで、どうして。おかしい、私、どうして近寄ってるの)

 教祖の肩に手を乗せ、たるんだ胴体を両足の間に挟むようにしてゆっくりと腰を下ろしていく。

(操られてる? 私、こいつに催眠術か何かで)

 本当はわかっている。あの、魂が剥き出しにされたかのような快楽に体が逆らえなくなっているのだ。心ではどんなに拒絶しても、あの甘美なる快感にもう一度、翻弄されることを願っている。

「そうかそうか。そんなに私のが好きか。これは、アスカの返答と考えても良いのかな?」
「あ、あ、ああぁ…。ふ、太いのが…ああ……」
「よしよし、すぐに気持ちよくしてやろう」
「いやぁぁ、違う、違うの、こんなの私じゃない…。ああ、でも、でもぉ」

 ぎゅっと両手両足でしがみつき、ゆっくりと体を沈めていくアスカ。胡座をかいて座る教祖と体が密着するのに比例して、そのそそり立つ肉棒が熱く潤ったアスカの膣内へと入り込んでいく。

「んっ、ふぅ…っ! い、あいいぃ…っ!」

 強制されたからでも脅迫されたからでもなく、アスカ自身の行動で教祖を受け入れていく。

(うぐぅぅ、イヤなのに、イヤなのに! 逆らえない、抗えない…! シンジ、シンジぃ…良いの、気持ち、良いの)

 屈辱の涙を流しながらも、その目は喜悦に潤んでいた。

「ふ、ぐぅ…! うあ、あんっ、あっ、ああぁ…! 私、ああ、もう、そんな、そんな、どうして? でも、良いの、良いのぉ」

 首を反らせ、揺れる天井を見上げながらアスカは震えた。この世にこんなにも気持ちが良く、幸せな気持ちになれることがあったなんて。

「ああ、ママぁ。良い、良いのぉ。ママ、ママ、ごめん、なさい。良いのぉ。良くて、気持ちよくて、私、死にそうに、良いのぉ。もう、これ、なしじゃ…これがない、なんてイヤぁ」
「うう、積極的に、なって。アスカ…うう、柔らかくて、良い具合だ、ぞ」
「ああ、私、私、こんなの…。シンジ、シンジ、シンジぃ…」

 アスカの両胸の間に顔を埋めて、柔らかさを堪能しながら教祖もまた快楽に呻いた。ゆっくりと腰をグラインドさせながら、より深くよりいっそうアスカを求めた。もっともっとアスカを味わいたい。
 そのためには…。
 教祖は荒い息を吐きながら、妻達に指示を飛ばした。

「くぅぅ、お、おまえ達。ヤクモとミコト。この間教えただろう。この車両を、徐行で、走らせ、ろ…おおぉ、アスカ」
「ああ、あああ、んああぁぁぁ。やだ、やだぁぁ。こんな、こんな凄いの、私、ダメ。もうダメ、もう、ダメぇ」

 ずっちゅ、ぐっちゅと肉棒が膣内をかき回す音に、いつしかガタンゴトンと旧式の車両が揺れる震動と音が加わる。それが不規則な刺激となって、より一層アスカの官能をほじくり出していく。もはや発狂寸前の表情となり、舌を出してアスカは獣のように喘いだ。

「うぐぅ、あぐぅ、おあああぁ…。はぅ、うぐ、ぐぅ、おあぁぁぁ」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…おお、アスカ……もう、出す、ぞ」
「んんっ、んんっ! ま、また…また、一杯…熱い、のを。で、でも、また、出され、たら、本当に、ひう、ううぅ…妊娠、妊娠、しちゃ、う」
「嫌か? ううぅ、外に出して欲しいか? ふぅ、ううぅ」

 アスカの下腹が大きく波打ち、しがみついた教祖の背中に血が出る程きつく爪を立てる。シンジ以外の男の子を妊娠する可能性…。その恐怖にアスカは怖気を感じたが、それ以上に、今のこの快感を忘れたくないという肉欲が意志を上回った。

「ああ、ああ…あうん! だ、出して、このまま、な、中に! イヤ…なのにっ! ああ、離れたく、無いのぉ。気持ちいいの、やめないでぇ…。ああ、わたし、わたし、変に、なっちゃった、どうして、こんなこと、言うの…」
「う、うむ。そ、それが普通の、反応なの、だよ。スペルマ…かくも偉大な薬よ!」
「ん、んん、うんんっ! く、薬…薬の、せい…。し、シンジ…ああ、ごめん、ごめんなさい…。嫌なのに、嫌なのに、薬の所為で、拒絶できないのよぉ!」

 シンジに謝ったためだろうか。ガクガク、ブルブルと断末魔の痙攣に似た震えがアスカの全身を包んだ。淫唇も血の気を失う程きつく肉棒を締め付ける。

「おお、あ、アスカ。出す、出すぞ。膣内に、たっぷりと!」
「だ、出して、出してぇ! ああ、私…っ!
 ごめん、ごめんなさい! シンジ、ママ、私、頑張ったけど! レイより、頑張ったけど!
 でも、もうダメ、ダメなの! 許して、許して!」
「お、おおおおぉぉぉ…」

 教祖の呻きと同時にこれまでで最高の精液がアスカの胎内に噴き出し、細胞の奥底まで染み込むように広がっていく。ビクン、とアスカの全身が硬直した。振り乱された髪の隙間から、髪飾りがずれ落ち、コトリと音を立てて床に転がる。

「わたし、あああ、イっちゃう! んんあああぁぁぁぁぁ―――――っ!!」

 恐ろしい程の快楽に全神経を痺れさせ、ブルブル、ガクガクとアスカは爪先までも震わせてアスカの意識は断ち切られた。
 闇に沈んでいく刹那、アスカは自分が取り返しのつかないことをしてしまったことを思い出していた。

(あ、ああ…そんな、私、何を…うそ…でも……)





「ふくくく。賭はやはり私の勝ちだったな」

 ぐったりとしたアスカの体を抱き上げながら、教祖は緩く開いたままの彼女の唇を奪った。意識のない女の唇の感触というのも、また格別だ。それに、腰の具合も最高に軽い。もう限界だと思ったが、まだまだ体力も充分で、このまま意識のないアスカ相手に更に数回は楽しめそうだ。

「電車を止めろ。引き返せ。さて、続きは愛の巣に戻ってからとしようか」
「あう、う、うんん…」






 アスカ、レイ、マナ、マユミ…。
 最後の希望は、ここに陥落した。
 悪夢はまだまだ、終わらない。






初出2007/02/12 改訂2007/03/04

[Back] [INDEX] [Next]