─ 福音のいけにえ ─

第2章



書いたの.ナーグル









 脱力したマユミを寝室に引きずり込むのは赤子の手をひねるより簡単なことだった。
 アスカが羽交い締めにし、シンジがマユミの足を抱えて運ぶのだから。
 窓を開け放っていたため、事後の熱気は吹き飛ばされていたが、アスカは内から溢れる自らの熱を感じていた。
 心臓が妖しく高鳴り、口元が痙攣するように引きつる。

「シンジ、ちょっとお願い」
「ん、わかってる」

 マユミを夫の手に預けると、アスカは飛ぶような歩調で窓に駆け寄り叩き閉め、ついでカーテンを乱暴に閉めて下界から完全に遮断する。途端に薄暗くなった室内の様子に満足そうにアスカは頷いた。
 こうなればマユミの甲高い悲鳴であっても、誰も聞きつけることはないだろう。

「さて、と。
 シンジ、マユミをベッドに」
「いや、はなして」

 マユミは引きつった表情で懇願するが、シンジは小さく『ごめん』と言うだけ。彼女を助けたときの面影はないし、本気で申し訳ないと思ってる様子もない。
 逞しく育ったシンジの腕で、哀れマユミはベッドの上に荷物のように放り出される。

「やっ」
「おっと、逃がさないわ」

 手足が自由になった一瞬、出来る限りの早さでマユミは跳ね起きようとするが、その前にアスカがマユミの両手首を組み敷いた。飛びかかるアスカの動きでぎしぎしとベッドが軋む音が、マユミに対する鎮魂歌のように室内に響くのだった。

「ああ、手を放してぇ」
「放すわけないじゃん。そんな抵抗して体堅くしない方が良いわよ。往生際が悪いって見苦しいだけだし、何より硬直してると痛みが増すだけだから」
「あ、アスカさん、あなた何を言ってるんですか」

 クスクスと可愛らしくアスカは笑う。笑顔だけ見てれば、友達の冗談に笑う新妻以外の何物にも見えない。

「それはこっちの台詞よ。マユミさぁ、本当は分かってるんでしょ。自分がこれからどんな目に遭うか。あなた頭良いんだし」

 自分が、一体どんな目に…。


「!!」

 瞬間的に顔が赤く染まる。
 心臓が高鳴り、一気に血液が頭部に流入したせいか目の前が赤い闇に染まった。

(わ、わたし、今一体何を)

 今まで夢にも考えたことのない、淫らな格好でシンジに組み伏せられて、その、想像するしかないシンジの肉棒で秘所を貫かれている自分。血を流し、苦痛に喘ぎながらもその手は、シンジの背中をかき抱く――――

「わ、わたし………あ」

 精神の一時的失調から回復したとき、鼻の頭がくっつく至近距離で、アスカの青い瞳が自分を見つめていることをマユミは知った。その深く冷たい湖の碧は、獲物の抵抗も思考も時間も何もかも吸い込んでいく。

「そう、大人しくしてればいいのよ」

 何か言わなくちゃ、そう思うけど指一本動かせない。
 捕らわれた子鹿を落ち着かせる口調で優しく語りかけながら、徐々に、アスカは距離を近づけていく。

「あ、は…」

 緩く開いたマユミの口が、ゆっくりとアスカの唇で塞がれた。
 虫歯一つない綺麗な歯並びや、健康的な歯茎を堪能するようにアスカの淫らな舌がマユミの口腔を思うさま貪る。
 ファーストキスが…。
 と思う間もなく、マユミはぞわりと広がる甘い刺激に息もできない。

「ふぅ、う、ううん、う、ううっ、ううぅぅむうぅぅ」

 目を白黒とさせ、左右に首を振ってマユミは喘いだ。
 しかし、アスカはマユミを決して放そうとせず、それどころか彼女の動きさえも利用しながらよりきつく押さえ込む。そのままキスを継続しつつ、美味しそうに揺れる胸を撫でさすった。胸全体から走る刺激に、足先までも痺れさせてマユミは呻く。

「んふふふふ。んっ、んっ、んんっ」
「あうん、う、ひゅぶ、ちゅ、ふ、うふうっ!」

 2人の美女が絡み合う横で、シンジがやたら巨大な、明らかに業務用らしいビデオカメラとそれを固定する三脚を用意していく。さらに、マイクの化け物のような集音機をしつらえると、うっすらと、母親ユイにそっくりな笑みを浮かべた。
 2人を見つめる彼の目は限りなく優しい。

「あ、う、ん、んん、あふぅ。ふぅ、ふ、はぁ」
「ちゅ、ちゅる、くちゅ……」

 長い長いキスだった。
 アスカの舌が縦横無尽に蠢くと共に、突っ張っていたマユミの体からゆっくりと力が抜ける。肌は紅でも塗ったように赤く染まり、嫌悪の涙をたたえていた瞳は、夢見るようにぼんやりと焦点を失っていく。
 やがて、半分反射で藻掻いていた手足からも力が抜け落ちた。もうマユミには抵抗の意志はない。
 そうなってようやく、アスカはマユミの濡れた唇を解放した。

「ちゅ、ん、ん、ん、んんっ。
 …………ぷはっ。あは、マユミ、やっと聞き分け良くなったわね」
「は、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……あ、あぁっ」

 アスカの軽口に答える余裕はマユミには既にない。そのままぐったりと、糸の切れた人形のようにベッドに沈み込んだ。
 彼女を組み伏せたまま、全裸のアスカはくすくすとほくそ笑む。軽くイったかな…アスカはキス魔であるシンジとユイに鍛えられた自分の技術の冴えに満足する。今まで何度キスだけでイかされたことか。せめてこれくらいは出来ないと。
 それはともかく、これも一回に数えるべきか、それとも、もっと楽しむべきか。

「マユミったらこんなに熱く潤っちゃって。凄いイキっぷりだったわよ」
「いやぁ、いやいやぁ。アスカさん、こんなの、恥ずかしすぎます。
 ああああぁぁぁ、ダメ、ダメぇぇ。お願い、これ以上は…」

 とりあえず、言葉責めをすることにした。反応良さそうだし。
 息も絶え絶えに長い黒髪を振り乱しながら、マユミは切々と哀訴の泣き声をあげる。
 だが、アスカはそんな声や淡雪のような抵抗に耳を貸そうとはしない。いや、かえってその声に、抵抗に興奮をいや増してマユミに豊かな胸をミルクを舐める猫のように執拗に嬲る。清純な白いブラウスとブラジャー越しでもその豊かさを誇示する胸を白魚の指先が、粘土人形を握りつぶすように強く揉む。
 激しい動きと無理に引っ張られたことでブラウスのボタンが飛んだ。

「は、はっ、はぅ――――っ」

 一転して襲い来る苦痛に、たまらず背筋を反らせてマユミは喘いだ。
 その苦痛は骨の髄に焼け串を刺されてるイメージに似ていた。ピキピキと小さな亀裂が全身をひび割れさせていく。
 苦痛で眉間に皺を寄せるマユミの顔に、アスカが楽しそうにあざけった。

「あら。ごめん。あんまり大きいから何か詰め物でもしてるのかと思っちゃった」
「う、うううううっ」
「なに、返事も出来ないくらい痛いの? それとも口を聞くのも嫌なのかしら?
 ねぇ、返事くらいしてよ」
「う、ぎぃ――――っ!!」

 握りしめた指の間の肉と奥のコリコリした芯の感触を楽しみつつ、アスカは心の中でサディスティックな欲求がどんどん首をもたげるのを楽しんでいた。自分にこんな黒い面がまだあったなんて、という思いもあったが、それよりもマユミの泣き顔を見ていると背筋がゾクゾク快感に震えるのを押さえられない。

「あ、ああ、あぐぐぅ、うっ、うう――――っ!」
「素敵、素敵よマユミ…もっと、もっと泣いて見せて――――」
「アスカ」

 ビクリとアスカの体が硬直した。
 背中に氷山のように重く冷たい声がかけられ、それまでの高揚した気分が一瞬で液体窒素に浸されて凍り付く。
 さすがにちょっとやりすぎたかな、と冷や汗を流しつつそう思う。

「アスカ。それくらいにしときなよ」
「ん、ああ。そうよね」
「良かった。じゃ、そろそろ彼女の着てるその無粋な服を脱がしなよ」
「そうね。これ以上はユイお義母さまが怒りそう…。
 じゃ、どうする? 乱暴に脱がすのと優しく脱がすのは…」
「優しく脱がした方が良いと思うな。彼女に苦痛を感じさせず、出来る限り彼女の意向に沿って気持ちよくさせるつもりなんだから」


(なんて狂った会話をしているの? ああ、やめさせなきゃ。こんな恐ろしいこと、もう、もう)

 力がゆるみ、苦痛からは解放されたがマユミはとても口を挟めない。
 挟むことを許されない。
 この2人は、無力な人の子であるマユミを支配する絶対者。
 そんな絶対者に接したとき、彼女が取ることは決まっている。今までの人生でずっとそうしてきたように。
 弱々しく体を小さくして、当てのない助けを求めて震えていることしかできない。

(た、助けて、誰か、誰か私をこの世界から…)











「いやっ、やだ、脱がさないでっ!」
「だ〜め。服を着たままなんて邪道よ!」

 汗を吸って張り付くブラウス、脇のスリットが大きく引き裂かれてしまったタイトスカートがむしり取られる。
 残されたのは小さな金のイヤリング、フレームのないガラスの眼鏡、外国製の形状記憶合金ワイヤー入りのブラジャー、ブラジャーと対になっている純白のショーツ、そして太股まであるガードルとそれを吊るガーターベルト。
 身を守る物としては、甚だ心許ない。

「あ、ううう、いや、見ないで…」

 惨めさに泣きじゃくりながら、マユミは剥き出しになった丸い肩を抱いた。二の腕に押しつけられた乳房がむにゅりと肉感的に歪む。
 無意識な仕草にかいま見える色気と美しさに、アスカも思わず溜息を漏らす。

「嘘、マユミってこんなに…綺麗だなんて」

 マユミに負けないほどの動悸に戸惑いながら、アスカはグビリと喉を鳴らして唾を飲み込む。
 そう言えば自分はユイに抱かれたことはあったが、誰かを、この碇家で自分より弱い誰かを抱いたことは一度もなかった。

「ああ。マユミ」
「や、やだぁ。アスカさん、そんな怖い顔をしてみないでぇ」
「大丈夫よ。もう痛いことはしない。ただ、2人一緒に気持ちよくなりましょう」
「あ、いやああああああぁぁ」
「力を抜いて……んんっ」
「ああっ」

 優しいキス。唇を離さないまま、ゆっくりと頬から首筋、鎖骨、肩となぞるように舌を這わせていく。

「ひぃ、いやぁぁぁ。女の子同士で、そんな、こんな事いけないわ」
「女の子って、お互い20歳になってるじゃない」
「と、とにかく、こんなの、こんなのダメぇ」

 アスカの舌がなぞった肌は、うっすらと桃色に染まっていく。汗に濡れた体をよじらせると、アスカとマユミ、2人の艶やかで長い髪は汗を吸った濡紙のように互い体に張り付いていった。
 ふるふる震える豊かな胸をほうっと一瞬惚けた顔をして見つめながら、アスカは思わず生唾を飲む。

(そ、それにしても…このアスカ様が悔しいと思うくらい立派なバストだわ)

 何者にも負けない、負けたくない。
 喩えそれがなんであろうと。

 そう考え生きてきたアスカだけれど、マユミの美乳には素直に負けを認めざるをえない。えいちくしょうめ。

(いかにもシンジ好みなのよね)

 ただ大きいだけでなく、綺麗な球形をした乳房は柔らかすぎず固すぎず、それでいて愛撫する手に吸い付くような肌のきめ細かさと弾力に溢れている。プラチナのエンゲージリングを着けていなければ、このまま融け込んでいきそうな手触りだ。
 ユイの少々お節介すぎるアドバイスとマッサージ、怪しげな薬で、中学以来ほとんど成長していなかった胸は母、惣流キョウコの持っていたポテンシャルを十分に再現している。
 とどのつまり、自分も大きさという点では負けていないつもりだが、だが紡錘形をした胸はどこか戦闘的で、シンジに抱かれるたびに彼を圧倒してるんじゃないかと不安になる。マユミのように全てを優しく包み込むような母性、肌の美しさと言う点では一歩劣っている気がする。
 それが悔しい。
 妬ましい。

(ふふふ、まだあなたのことは親友と思ってるわよ、マユミ。でもね。
 私が! あなたを!
 許せないのは!
 情事の後の質問で! シンジが! シンジが! シンジの馬鹿野郎が!)











 気だるげに荒い息を吐きながら、汗で濡れた夫の胸板にアスカは頭を預けた。昔は点で頼り無かったもやしっ子だったのに、今はこんなに逞しくて…。今夜こそ妊娠してると良いのだけれど、そんなことも忘れてしまいそうな気持ちで一杯になる。布団が柔らかく全裸の体に擦れて心地よい。

(あああ、シンジ…)

 胸に「の」の字を書きながら、アスカは潤んだ目をして夫の、シンジの目を見上げる。
 見つめ返すシンジの瞳は限りなく深く、穏やかだ。

『ねぇ、シンジ…私のこと好き? 愛してる?』
『勿論だよ、アスカ』
『胸、好き…?』
『勿論、君の胸も何もかも全部、僕は愛してるよ。世界の全てと引き替えにしても良いくらいに…』

 嬉しい…幸せで体が溶けちゃいそう。
 温もりに身を浸しながら、ぎゅっとシンジを抱きしめるとシンジも抱き返してくる。
 最高に幸せだった。
 ああ、それなのに。
 なぜ、あの時こんな事を聞いてしまったのだろう?
 無意識のうちに、彼女の胸に敗北を感じていたから? 答えは永遠に出ない。

『じゃあさ、私の胸と………………マユミの胸、どっちが好き? どっちが素敵な胸だと思う?』
『山岸さん』

 即答しやがった。











 ちゅぴちゅぷ、くちゅ

「ひぃん! そんな、そんなことしないで、ああ、お願い、しないで」

 遂に我慢できなくなってブラジャーを引きはがし、淫らに揺れ誘う乳首を捕らえる。
 音を立ててピンクの乳首を舌でしゃぶると、電機マッサージをしているみたいにマユミという淫らな獲物の体が痙攣する。口中でツンと乳首が固くなっていくのが分かる。うっすらと舌を喜ばす汗の味もまた素晴らしい。

(うふふ、かーわいいったらないわ。マユミって本当にエッチな体してるのに、エッチなことを怖がってるんだから)

 麻薬みたいな物ね。とアスカは思う。
 またまた、可愛いマユミをいじめ…もとい愛撫する手を休めることが出来なくなる。シンジがいなければ、このまま人の道を踏み外しそうだ。
 今までの、エヴァのパイロットになるべく己を律してきた過酷で辛かった人生。エリートであれと研鑽してきた反動だろうか。20歳になって、ぬいぐるみを抱く少女のようにアスカはマユミと、些か過激なスキンシップを行うことを好んだ。

 当初は『一緒にお風呂に入りましょー』とか『一緒に寝ましょ』とかだった。頭は良いのにからかうと途端にパニックに陥っておろおろするマユミは、正に猫に鰹節。アスカにマユミ。
 時折思うことがある。
 大好きなマユミをメチャクチャにしてやりたい、思いっきり泣き叫ばせたい、と。
 マユミを汚したいと、ずっと思っていた。

 大事に大切に思っている対象を、敢えて自ら破壊してしまう。倒錯した感情と、現在進行形でそれを行っている事実に、アスカは息をすることも忘れた。この全ての血液が蒸発していくような焦燥は、ある意味シンジに抱かれる幸福感と快感以上だ。

 もっともっと、もっともっと!

「ほら、シンジ! あなたも見てるだけじゃなくて!
 マユミの口が寂しそうにしてるじゃない」
「ん、ああ、そうだね。良いよね、山岸さん」
「ん、あ……ああぁっ、ちょっ、待っ、んんっ」

 拒絶を飲み込むようにシンジの唇がマユミの唇を塞ぐ。吐きかけた息と唾液を貪られ、キスされたと実感する間もなく舌を長く柔軟な舌に絡み取られて、喘ぐことしかできない。
 夜、独り寝の寂しさの中で夢想したこともあるシンジとのキス。拒絶の言葉は途中で止まる。それどころか自ら求めるように口を開き、シンジの唇を受け入れてしまう。
 ゆっくり触れる、柔らかく暖かい粘膜の感触にマユミは我を忘れた。
 想い人とのキスはあっけないほど簡単に実現し、そして予想を遙かに超える電流がマユミの体を駆け走った。

「んっ、んんっ、はぅ、む、んちゅ、ふぅぅぅん――――っ!?」

 アスカにされたキスとは比べものにならない陶酔感。
 文字通りシンジのキスに酔いしれる。

「う、うううぅ。うふ…うぅん。ううっ、う、うくぅ、はっ、はぁ、あ、んんん〜〜〜〜。
 ふぅん、うん、うん、うふぅん、ふぁう、あっ、うっ、ううっ、うんっ、うん、うん、ううん」

 忘我の表情でマユミはキスを求める。アスカから逃れた手は、かき抱くようにシンジを抱きしめ、より強く自分と密着させる。もっと強く、もっと深く。  シンジもそれに答えるように、発情した女を匂い立たせるマユミの肩を抱き、恋人同士のようにマユミを求めた。2人の頬が内側からもごもごと蠢く。

「あふっ…んんっ、や、はっ、はぅ、んんっ、ちゅ、くちゅ、ちゅ、ちゅ、ぴちゅ、くちゅ、ちゅっ、ううっ、うぐっ、ううっ」
「ちゅ、ちゅく、ん…………………。はぁ、キス、なかなか上手だよ山岸さん」
「あ、あはぁ……はぁ、はっ、はっ、はぁ。あ、ああ」

 蜂蜜よりも甘く濃密なキスとその後の恋人同士のような見つめ合いを前に、内心ムッとするアスカだったが、どうにかこうにか感情の爆発を押さえた。ここでマユミを怒鳴りつけ、シンジの唇を奪い返すのは簡単だが、今はそれより優先することがある。

(あとでたっぷり、マユミの前で見せつけてやるんだから!)

 その時を楽しみに待ってるが良いわ!
 それはそれとしてシンジがマユミの意識を引いている間に、下拵えをきちんと終わらせておかねば。

「うわあ、むっちりして凄くエッチな太股ね」

 キングサイズのベッド上で、シンジと場所を完全に入れ替わらせると、ふくらはぎから膝裏、太股までを撫でさする。
 一瞬、ビクリとマユミは体を震わせるが、再開したシンジとのキスにそれどころではないようだ。見ればシンジはキスをしつつ、たぷんたぷんと音を立てて揺れる胸を揉み始めている。同じ女だから、マユミがどんなに感じ悶えているか手に取るように分かる。

(巨乳は感じにくいって言われてるけど、この子は例外なのね)

 見ているだけなのに、自分まで愛撫されてるような錯覚で体が重い。
 本当に目に毒だ。

「う、こっちまでイっちゃいそうだわ。それより…」

 四つん這いになり、膝を掴んで左右に開くが、力の抜けたマユミの足は本のページを開くみたいにあっさりと左右に押し広げられた。その手応えはお湯で戻した乾物みたいに柔らかで、筋肉によらない腱の反発も感じられない。
 それくらいほぐれたというわけだ。

「へえ…。ユイお義母さまが感心するわけね。それに、凄く濡れてる」

 アスカがドキドキしながら見つめる、足の中心は湯気さえ感じる淫なる泉と化していた。濃密な性フェロモンにアスカは興奮を抑えられない。
 そっと指先でショーツを撫でると、染みた愛液は指の腹に小さな糸の橋を引くほど濡れそぼっていた。

(漏らしてるみたいにこんな濡れて…うあ、凄いエッチな空気。それにしても、脱水症状で倒れたりしないでしょうね?)

「ひゃう、う、ううぅぅ――――んっ! うああああっ、やぁ――――っ!!」

 見守っている間にも、マユミは切ない悲鳴を上げ、ビクビクと体を震わせている。見るとシンジに乳首を指の間に挟まれて、コロコロと転がすように執拗に愛撫されている。さらに乳肉全体をこねるように揉みしだかれてもいる。乳首と乳房を両方同時に愛撫される二点同時、いや両方の乳房を同時にこねくっているから四点同時の愛撫だ。
 一体どれほどの快感を味あわされてるのだろう…。
 思わず、アスカはゴクリと渇いた喉に唾を飲み込む。

(やだ、私、羨ましいと思ってる…。ううん、マユミの今を、シンジの愛撫を想像して、それだけで、ああ…)

 四つん這いになって犬みたいに突き上げた腰が、後ろから男の剛直で突きこまれてるみたいに震える。いつしか、マユミのショーツを脱がし、秘所を直に愛撫するという目的を忘れてアスカの手は自らの股間へと伸びていた。

「あ、あ、あはぁ」

 潤い湿った陰毛が手首をなぞる感触、長く伸びた指先が充血した淫唇を擦るようになで回す。
 途端、目の前で何度も稲光が瞬く。

「あう、あふあうああああぁ。イクぅ、イクイクぅ!」

 『はぅっ』と熱い吐息を漏らし、アスカの全身を官能の疼きが支配する。昔見た映画の、雷に打たれた怪物がドロドロに溶けるシーンがなぜか脳裏をよぎる。

「わ、私、溶ける!」

 堰を切ったように「つーっ」と、生暖かい粘液が幾筋も内股を伝いシーツの上に滴った。

「あうう、見てるだけ、見てるだけだったのに、私、私イっちゃうわっ!
 ああ、おう、あっ、うああっ、こんなの嘘よぉ!
 Gehen! Vertragt keinen! Hilfe!
 シンジ、おああ、うっ、Nein! Nein!」

 犬のように呻き、シーツに顔を押しつけて悶えるアスカの横で、乳首を舌で愛撫され、本日六回目の耐え難い絶頂を迎えたマユミが甲高い悲鳴を上げた。熱の籠もった室内にマユミの甘い啼き声が響き渡る。

「あああう、あん、あん、あっ、あっ、ああああっ! こんな、こんなわたし、ああ、そんなぁっ!
 ひあああ――――っ!! うあう、ああっ、くぅっ、こ、壊れる!
 私、壊れちゃうわっ! おっぱいが、破裂しちゃう! ああ、死んじゃう、このままだと私、気持ちよすぎて、わたしっ! ああっ!?
 いやあぁぁ――――――――っ! だ、誰か! 助けてぇっ!
 あああっ、ああっ、あっ、ああっ! あっ、うああ――――――っ!!」

 折れそうなくらいに背筋を反り返らせ、胸を天に向かって突き上げるようにしてマユミは全身を痙攣させた。そのまま、乱れた髪の毛を衣服のようにまといつかせて、マユミの意識は深い闇の底に落ちていった。

「え、あれ? ねぇ、ちょっと…。参ったな」

 意識がないまま、ハァハァと荒い息で胸を上下させるマユミと、お尻を突き上げた格好で突っ伏すアスカと、交互に視線を動かしてシンジは頭をかいた。

「ま、良いか。時間はたっぷりあるんだし少しくらい休ませて上げても」

 蹈鞴を踏むように上下するマユミの胸を視姦しながらシンジはほくそ笑んだ。これから、彼女が自分の物になるかと思うと…。棚ぼたとは言え嬉しくないわけがない。
 彼女の乱れように当てられたのか、アスカまで絶頂を迎えたのは少々計算外だったが、シンジは愛妻のへっぽこだが可愛らしい反応にほくそ笑む。
 まったく、いじましい。そんなにユイの言葉に、いや、実際に目の当たりにしたマユミの体に危機感を感じているのか。

(そういう嫉妬深いところも、限度を超えなければ嫌いじゃない)

「アスカ、アスカ? 大丈夫、なんで君までイっちゃうのさ」
「は、はうぅぅ、だって、シンジがマユミを、あんまり、可愛がるのを見てたら」

 昨日の夜から今朝方まで可愛がったし、今日はせっかくのマユミの歓迎会だからアスカとは控えめにしようかな、なんて思っていたけど。

(これは予定を変更しないといけないね)

 2人を重ねて同時にヒンヒン啼かすのは、想像するだけで楽しい。
 マユミとアスカ、異なる肌と髪の毛の美女を同時に…。
 ほんの少しだけ、心の奥でなくマユミの姿が浮かんだけど、すぐに消えた。

「今更、後悔なんかするものか」

 母譲りの整った顔が、淫蕩な表情を浮かべる。もしマユミがこの顔を見れば、百年の恋だって冷めてしまうだろう。それほど邪悪な顔だった。

「今日は忘れられない一日になりそうだ」







初出2004/11/07 更新2004/11/10

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