─ 福音のいけにえ ─

第3章



書いたの.ナーグル











「さて、どうしようか?」

 ぐったりとしたマユミからショーツを脱がしながらシンジはアスカに尋ねる。

「どうって?」

 ショーツを脱がすときに外したガーターベルトとガーターを、その後しっかり繋ぎ直すシンジに呆れながらも、アスカは言葉の意味を問い返した。正直、今は気怠いながらも心地よい疼きに浸されていて、少し休んでいたい気持ちだ。
 そう言えば今日、ネルフを休むって連絡してなかったっけ。

「ん、母さんまだ時間かかるみたいだし…。もうちょっと山岸さんを可愛がるかって聞きたかったんだけど」

 意識のないマユミの片乳をわしづかみにしてグニグニと嬲りながらシンジは言った。

「えー、まだするのぉ? マユミだって気絶してるし、少し休ませてよ」
「だって僕まだ気持ちよくなってないし」

 こいつはいけしゃあしゃあと凄いこと言いやがる。
 さっきのガーターを繋ぎ直す事も含めて良い趣味してるわ、と思いつつアスカはもうその気になってる自分に内心苦笑していた。

(う、見てるだけでまた、私…)

 あんな風に自分の胸も可愛がって欲しい…。

「気持ちよくなかったって、あんたさっきさんざんキスしてマユミのバストを揉み倒してたじゃない。
 アレで気持ちよくなかったてーの」
「いや、うん。確かに凄く気持ちよかった。癖になりそうだったよ。だけどさ、結局僕、射精してないし」
「ああ、はいはい。わかったわかった」

 この性豪め、と夫に抱くのとは明らかに間違ってることを思いつつアスカはのろのろとシンジに近寄る。四つん這いのまま胡座をかいたシンジの股間をのぞき込むと、

「うあ、なによそれ。破裂しそうじゃない」

 と宣った。
 今朝方、シンジは自分の中に何回射精したか分からないってのに、それなのにこれは一体何事だろう。とアスカは苦笑する。シンジのジュニアはまるで1ヶ月我慢した中学生みたいにガチガチに固まり、先端がはち切れんばかりだ。
 それにしても…。

「おっきくて可愛い」
「どこに向かって話しかけてんだよ…」
「シンジのジュニア〜」

 変なところは昔のままなんだから。
 馬鹿なことを言ってるアスカのおとがいを持ち上げ、体を折り曲げてそっとキスをする。

「あん、うふ、うふふ…ん、ちゅ、んんっ」

 たっぷりと唾液の交換をし、存分に舌を絡め合ってから名残惜しそうに2人は唇を離す。
 ウットリとした表情をしながら、アスカはシンジに尋ねた。

「それで、シンジはマユミをファックたいのね」
「うん。我慢できない」
「でもユイお義母さまさんが来る前に抱いちゃったら…」
「ああ、母さんきっと拗ねて、しばらく機嫌が悪いままだろうね。もう見た目だけじゃなくて中身まで子供っぽいんだから」

 まったくだわ、とシンジの肉棒を右手でしごきながらアスカは何度も相づちを打つ。あの子供っぽさの所為で、シンジ共々何度酷い目にあったか。結果、経験則として2人には決してユイには逆らうな、と刻み込まれている。

「じゃ、私とする?」

 手淫を継続しつつ、こびるような上目遣いでシンジを見上げるアスカ。
 シンジに抱かれる…そう思った瞬間、じゅんと音を立てて秘所が潤う。
 そうなれば、全身全霊でもってシンジをはなさない。絞り尽くしてやる。少なくとも、今日一日シンジであってもマユミを抱くなんて事は出来ないだろう…。
 しかし敵もさるもの。

「そうしたら、きっと今日は1日中アスカから離れられなくなるし」
「嫌なの!?」
「いや、その……違う違う!
 最初の『いや』はそう言う意味じゃなくて、言葉のあや! 枕詞だよ!
 だから、その握り拳は勘弁して! 痛い痛い! 千切れるっ! ダメ、ダメェー!
 母さん言ってたじゃないか! 今日山岸さんをって!
 それを勝手に僕たちだけ出来上がってたりなんかしたら、母さん機嫌悪くなっちゃうよ!」

 勿論、実際はそんなことない。
 気絶したマユミを放って愛し合うシンジとアスカを見たら、『あらあらまあまあ』と口元を押さえてこう言うだろう。

『我慢できなかったのね〜。わっかいんだし、仕方ないか。
 でも若いんだからシンジ、アスカの次はきちんとマユミを可愛がって上げるのよ』


 結局同じこった。

「う、うう〜言われてみれば、結局何の意味もないのかも…」
「それにさぁ、山岸さんをほったらかしにしっぱなしって訳にはいかないよ」
「ううむむむむむ、あ、そうだわ」
「え、何か思いついたの?」
「こうすれば良いんでしょ」











「はん、はぁ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、ああっ」

 ガクガクと揺さぶられながら、マユミは断続的な喘ぎを漏らす。背後から脇腹越しにつかまれた乳肉はチェリストの長く繊細な指で思うさま揉みしだかれる。指先が乳首をつまみ、引っ張り、闇に落ちそうな意識をその度に無理矢理引き上げて気絶することを許さない。

「や、は、ひぃ! はひぃ、いっ、ああっ、んあああっ、ダメ、こんなの、ダメ、ダメぇ!」

 手の平全体でこねるように揉まれると、ぞわぞわと小さな虫が胸から全身へと広がっていくように思える。シンジがもたらす快楽という毒虫に、全身を食い尽くされそうだ。

「ううーっ、うっ、ううああっ」

 シンジに愛されてる、と思いたくてもそんな甘い感傷は快楽のブリザードで簡単に吹き飛ばされる。
 逃れたくても逃れられない。

 じっと撮影を続けるカメラのレンズに映るマユミは、しっかりと拘束されているから。
 仰向けにベッドに寝かせられた彼女の下には、シンジという肉布団が敷かれているのだ。

 左右に体をよじっても、決してシンジは離さない。今の彼は快楽という甘美な苦痛を与え続ける拷問台。胸を執拗に愛撫し、うなじを猫のように舐め続け、耳元で淫らな言葉を囁き続ける。

「ああ、気持ちよくて、良い匂いがして、最高だよ山岸さん。僕は今まで君みたい触り心地の良い女性を抱いたことはない」
「か、勝手なこと、言わない、でっ。あっ、あうううっ、もう、もう胸、い、いやぁぁぁぁ」

 背中に感じるシンジの腹筋や胸板の逞しさがまたマユミを苦しめる。自分の柔らかい体とはあまりにも違う質量に、逃げようと思うより先に絶望が走る。
 対照的にシンジはマユミの背中の柔らかさ、下腹部の上のヒップの柔らかさと大きさ、それでいてキュッと吊り上がったしなやかさに生唾を飲み込んでいた。マユミが足掻くたびに体は左右にくねり、愛撫するようにシンジの体に擦りつけられる。間に挟まれたマユミの髪は時としてチクリとした痛みを感じさせるが、その痛みすらもシンジは楽しんだ。

「うう、良い。良いよ…凄く、柔らかい。吸い込まれそうだ」
「ひゃう、うあっ、はぁ。もう、もうダメぇ。あ、あ、ああっ、ああん、あん、あん、ああ、ひぃぅっ、く、うっ、んあああっ」

 美乳の双丘をふもとから山頂に向かって絞るように揉むと、『はぅー』と鼻にかかった甘い声を漏らしてマユミの体が反り返る。胸に押しつけられるマユミに後頭部の感触にシンジは楽しそうに笑う。
 性感帯を同時に複数点責められると何倍にも感じてしまう彼女の悲しい性(サガ)だ。

「はぁ、はぁ、はぁ。良い具合だよ山岸さん」
「はっ、きゃうぅ、ううっ、ふぐっ。ああ、うそ、そんなゆっくり触られっ、ひっ」

 意志に反し体が突っ張る。きつくきつく指先を握りしめ、汗の滴をまき散らしながらマユミは喘ぐ。
 搾乳するようにシンジの指先は容赦なく胸を揉み続け、きつく絞られるたびにゾワゾワと背筋を舐るような怖気が全身を走った。吐息は喘息患者のように早く浅い。

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はうっ。んくぅ〜〜〜〜っ。う、ううっ、ふぅ、ふっ…ふっ、うう、くぅ、んっ。きつい、ああ、む、胸は、やめて下さい。もう、もう胸はいじめないで」
「ごめんね。それだけは聞くわけにはいかないんだ。だって、こんなの実際に目の当たりにして、我慢できるわけないじゃないか」
「ひ、酷い」

 縋る物を求めて空を引っ掻いていた指先が、シンジの腕を掴み、しばしの逡巡の後、ゆっくりと脇に下ろされた。

「しんじ、さんっ、私、信じて、いたのに。あなたのこと、本当に、ああ、す、好き、だったのに。はぁ、うあっ。うっ、ううっ、う、裏切った、騙したのね。
 あああはぁぁ、他の人と同じで、私を、裏切った…」

 涙が後から後からこぼれ落ちる。

「酷い、酷いわ…。ああ、馬鹿、馬鹿ぁ。シンジさんの裏切りものぉ…。アスカさんの裏切りものぉ…」

 全身を駆け回る官能の疼きと、心を責めさいなむ絶望を、シーツを固く爪が食い込むほど握りしめて堪えようとする。

「そんな悲しい事言わないでよ。ね、山岸さん」

 指の隙間から乳肉が漏れるほど強く、だが苦痛を感じるギリギリを見計らってシンジは指先に力を込める。指を弾くゴム鞠のような弾力に四苦八苦しながらも、流れる汗と最前の愛撫でついた唾液をローション代わりに、くにゅくにゅと先端部分を乳輪ごと弄んだ。

「ひ、うんっんっ…はぁぁん。だ、ダメ、やめて…。ああ、もう、私こんなの嫌」
「でもそれにしては君の体は喜んでるよ」

 そう語りつつ、首筋に浮いた汗の滴をついばむようにシンジは舐め取る。
 体の上で踊るように乱れるマユミの体。それを直に感じているシンジだからこそ言える言葉だった。

「ひっ、あぁぁ。また、またこんなこと。いやぁぁ、やめて下さい。あぁぁ、そんなことされたら、わたし、痺れちゃう。シンジ、さん…ああっ」

 マユミの体が一段と強くよがり狂う。もはやマユミの意志がどうであろうと、彼女の体が快楽の奔流の中でクルクルと引き回される小舟同然だと言うことは、誰の目にも明らかだ。

「往生際が悪いんだね。それじゃあ、また乳首とおっぱいを両方同時に可愛がって上げるよ」
「ひ、ま、またぁ!?」

 死刑宣告をされた人間のようにマユミは目を見開いて仰け反った。先程から、何度も何度も、そうやって絶頂を迎えさせられたこと数え切れない。自分でも知らなかった弱点とも言うべき性感帯をあっさり見抜き、執拗に責めたてるシンジの性技はもはやマユミにとって恐怖と同義になってしまっていた。

「い、いやいやぁ。お願い、お願いします。もう、もう私、あんなの怖い、怖いんです」

 絶頂による極彩色の光景と、意識が闇の奥に吸い込まれていく瞬間は魂が砕け散るような気すらする。それがとても怖い。

「怖くないさ。痛いわけじゃないし、悪夢を見るわけでもない」
「今の状況が、悪夢じゃなくて、何だって言うんですか」
「天国だよ」
「ち、違いますっ。ふぁ」

 自分の言葉で今の状況を今頃恥ずかしいと思ったのか、もじもじとシンジの上でマユミは体を小さくする。シンジはしっかりと彼女を抱きしめ、逃がさないようにしてそっと耳たぶをしゃぶる。

「あ、あうぅ」
「ちゅ、くす。イっちゃう時、どこかに落ちていきそうで怖いんでしょ。どこにも君は行かないよ。大丈夫、ちゃんと君を抱きしめてるから。だから安心して、可愛い声を聞かせてよ。僕の小鳥さん」

 プリプリとスポンジケーキのように指を弾く乳房を、手の平全体で転がすように愛撫する。再びの絶頂を予想し、マユミは全身を硬くして叫んだ。

「ひ、ひぃぃん。あん、だめ、そんなの!
 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…あ、はあうぅぅ。恥ずかしい、こんな、ああっ、ぁぁぁぁぁっ」

 首を激しく左右に振り乱し、眼鏡の下の目をきつく閉じて甘い断末魔をあげるマユミ。
 両乳首を、マシュマロのような乳肉を同時にこね回される快感が襲いかかる。

「はぁっ、あっ、はぁぁあああ……っ! こんなことで、気持ちよくなんか…なりたく、ないのにっ!
 あう、くう、いやぁ、いや、いや、いやいや!」

 マユミの一際大きく悩ましい喘ぎの独唱の直後、仰け反ったマユミの体は腰と肩、後頭部だけがシンジの体に接するほど持ち上がる。よく転げ落ちない物だと、見ているアスカが感心するようなバランスを保ちながら、ビクッ、ビクビクッと大きく痙攣する。

「ひぅ、ひっ、ひっ、ひぁ、やぁぁぁ。あ、ああっ、や、だめ、そんな、わたし、また、また、い、くぁぁっ。
 お、堕ちちゃう! わたし、また、また、あ、ああっ、あ、ああ――――っ!!」

 意志では制御できない官能の稲妻がマユミの全身を奮わせた。指は筋を浮かせてシーツを掴み、肋がうっすらと浮いて見える脇腹は鞴のように収縮を繰り返す。ハァハァと大袈裟なほどにマユミは呼吸を荒くし、無駄な脂肪のほとんどない健康的なお腹が波打つように動いた。

「はっ、はっ、はぁ。あんっ、あんっ……はぁ、はぁ、ううっ、くぅっ」

 ぐったりと脱力した体がシンジの上に崩れ落ち、密着するように汗ばんだ体がシンジに押しつけられる。

「ふふふ、またイっちゃったね。これで、もう10回はイったんじゃない?」
「あう、はう、はぁ、はぁ、はっ、はぁ」
「返事も出来ない、か」

 額に張り付いた髪の毛を指ですき、乱れた眼鏡の位置を直してやりながら、シンジはマユミの白い腹部を意味もなく撫でさすった。

「ふふふ、こっちの感度は十分だ。形も、大きさも、色も、柔らかさと弾力も…。点に辛い僕でも100点満点が付けられるよ。
 で、アスカ。そっちはどう?」

 ニヤニヤしながらシンジは尋ねる。
 それまで散々に舐め、しゃぶっていたシンジの肉棒から口を離し、涎をぬぐうとアスカは溜息をついた。シンジの膝を挟まれ、閉じることができないままの刺激的なマユミの股間をのぞき込む。

「ん、く、ぷちゅ…はぁ。
 凄いわ。こっちも凄く濡れて…これで処女だなんて信じられない。
 あ、でもラヴィアとかはこんなになってもまだ控えめで上品で、さっきまでスタンダップしてたクリトリスも小さくて皮が剥けきってなくて、キスしたくなるくらい可愛らしかったわ…」
「実際キスしたんじゃないの?」
「うん。マユミがイクのに合わせてしちゃった。
 ま、これなら99点付けたって良いわね。これだけ濡れてれば、普通に挿入しても痛くないんじゃないかしら」

 さらりと可愛い、と言うかへっぽこな事言うな僕の奥さんは。と、嬉し恥ずかし年相応の顔をするシンジ。しかし、ちょっと気になることがある。

「なんで100点じゃないの?」
「100点は私だから」
「あ、そう」

 ああやっぱり僕の奥さんだね。

 当然よ、と偉そうに胸を張りながらアスカはマユミににじり寄る。ユニゾン訓練仕込みの以心伝心でシンジが体を起こすと、座椅子にでも座ってるようにマユミの体も起きあがる。だが、糸の切れた操り人形、電源のなくなったエヴァよろしくマユミはピクリともしない。

「また気絶したの?」
「ううん、ぐったりしてるけど意識はあるみたいだよ」
「じゃあ、大丈夫ね」

 ぐったりと垂れ下がったマユミの顎を持ち上げながら、アスカは一言一言噛みしめるように囁いた。

「どうだったマユミ? 愛撫だけで何回もイっちゃった気分は」
「う、ううう…もう、やめて下さい…」

 マユミの胸をまだ掴んだままのシンジの手に、同じく手を重ねながらアスカはなだめるようにマユミの目をのぞき込む。

「まだそんなことを…。大丈夫、シンジはとっても上手よ。そりゃあ、ちょっと、いえかなり大きいけど」

 ちらり、とマユミは視線を落とし、そして初めて目にする男のイチモツ、分身、ジュニア、ペニス、呼び名なんてどうでも良いがともかく、肉棒の姿に全身を硬直させた。恐怖は上気した肌を一瞬で冷却し、背中の窪みを冷たい汗が流れ落ちる。

「ひ、ひぃぃっ! な、なんなんですか、それっ!?」
「それって、なんだか傷つくなぁ」
「そうよねぇ。確かに初めて見ればそんな反応しちゃうわよね。でも大丈夫だって。私もかなり驚いたけど、今はとっても大好きになっちゃってるんだから」

 アスカの言葉を、マユミはぶんぶんと音がするくらい激しく首を左右に振って否定する。

「嘘です、ありえません。こんな、こんなグロテスクな物が、ワニ亀が、マルスッポンが、そんな、シンジさんについてるなんて…」
「ひ、酷いや」
「何本気で泣いてんのよ馬鹿シンジ。
 マユミもマユミよ。グロテスクって言うけど、女の物も大概だと思うわよ。あ、でもワニ亀はナイス喩えよ。マルスッポンはわかんないけど。
 それより……ね、マユミ。もう、覚悟を決めなさい」

 やっぱり激しく首を振って拒絶する。
 この期に及んで可愛い物だ。喩え彼女の意志がどうだろうと、シンジがほんの少しその気になればあっさりと犯されることになると言うのに。

「あ、あ、無理、無理です。こんなのが…わ、私のあそこ、こわれちゃう」

 痛々しいほどに屹立したシンジのワニ亀、もとい肉棒が濡れて光るマユミの秘所にノックするように擦りつけられる。

「ひ、ひぃぃっ」

 ゾワリ…と背骨をバラバラにしそうな甘い痺れが走り、嫌悪感と混じり合ってマユミはたまらず悲鳴を上げる。逃れようとするが背中からシンジに抱きしめられ、シンジの腰の上に座ってる状態では逃げることは出来ない。

 無駄なことをやってるわね、と改めてマユミの痴態を見てるとアスカは思う。
 はしたなくも万国にさらけ出した秘所を隠そうと足掻くが、シンジの足が邪魔をして、開いたままのむっちりした足を閉じることも出来ず、プリプリした巨乳を揺する姿は生け贄の子羊にどこか似てる。

「……マユミ。あんたわざとやってない?」
「いや、もう、いじめないで。気持ちよくないです、嫌なだけです。嫌なの、もう、こんなの嫌なの」

 スタイルの良さだけではない。濡れて艶を増した癖のない長い黒髪、フレームのない軽めの眼鏡が理知的で生真面目な雰囲気をいや増し、ごく小さく控えめだがセンスの良さが光るイヤリングのワンポイント。なにより、色気を嫌でも感じさせる艶黒子。
 意図せずに悲しいほど彼女の美しさと、持って生まれた淫蕩な空気を濃く重くさせていく。

「うっ、う、ううっ。お願い、もう許して、私が悪かったなら、謝りますから…ひっく、ひっく」
「泣かないでよマユミ、それ以上泣かれると、私…」

 いじめたくなるから。
 ますます、いじわるしたくなるから。

 猫がネズミをいたぶるように、こう、なんだかいじめたいという欲求が強くなる。我慢できなくなったシンジは、再びマユミの巨乳をたぷたぷと音がするほど勢いよく揉みしだいている。
 この色キチガイめ。と、心の中で夫をもの凄い喩えで呼ぶアスカ。

(むー、なんか私とするときより興奮してるんじゃない? あとでとっちめてやらないと…。
 まあシンジがマユミの体をいじめるのなら、私は心の方をいじめちゃおうかしら)

 ペロリと唇の端を舐めながら、クスクスとアスカは笑う。
 マユミがシンジを女として慕っているのは知っているが、もう一つ、マユミが義父のゲンドウを慕っていることも知っている。
 あくまで男としてではなく、父親として慕っているのは勿論承知しているが、敢えてマユミの心を責め苛むためにアスカはその言葉を口にした。

「シンジの入れられたくないの?」
「や、やだぁっ。入らない、無理です…」
「ふーん、そんなになって収まりがつかないでしょうに。
 あ、それじゃ、お義父さまのは? 凶暴な顔だけど、テクニックが凄そうでしょ? なんだかガツンガツンって音がしそうな勢いで犯してくれるわよ」
「!! げ、ゲンドウ先生が、そんな、そ、そんなぁ」

 マユミの脳裏に自分が父と慕うゲンドウの裸体が浮かぶ。
 職業が官能小説家とは言え、マユミは今までゲンドウを男と意識したことは一度としてない。いわば彼女にとって絶対的なタブーだった。シンジを懸想する事とは違う、いわば不可侵の聖域と考えていた。強く、大きく、厳しく、絶対的な存在。
 アスカの言葉は嫌でも禁忌の行為を意識させる。

「あ、あ、ああっ、わ、私、私が、碇先生に、げ、ゲンドウ先生に、ああ、ああああっ」
「あら、なんだか愛液の勢いが凄くなったわよ。ねぇ、どんな感じ? お義父さまに抱かれるところを想像してるんでしょ、ねぇ、大きい? 気持ちが良い?」
「いやぁぁぁ、言わないで、言わないで下さいっ。それ以上、私の大事なところに踏み込まないで」
「何言ってるのよ。あんたが勝手に想像して興奮してるんじゃないの。淫乱なんだから!」
「う、うううっ、うっ、ううっ。私、淫乱なんかじゃ、ありません。もう、ううっ、言わないで。いじめないで下さい。あう、ううううっ」
「あははは、マユミったら大人しい顔してとんだ淫乱娘だったのね! ほら、今からお義父さまの所に行って抱いて下さい、って頼んできたら。もしかしたら、ユイお義母さまより若い子が良いって抱いてくれるかも知れないわよ。
 って、なによ。なんでシンジ硬直し…て……」

 アスカの問いは途中で止まる。





 音も立てずに影のように背後に立つ影が一つ。





「へえええ、私、もう若くないんだぁー」

 朗らかで親しみのある声。だけどアスカにとっては死神の誘い。
 紅潮していた顔は一瞬で青ざめ、氷水につかったような震えがアスカの全身を支配した。

「アスカ、しばらくさよならだね」
「ゆ、ユイお義母さまっ!?」

 失敗を、破滅を悟った。
 淡い、夏の雪のような期待を込めてシンジの顔を見るが、シンジはあからさまに顔を背ける。
 曰く、『ごめん。僕は、卑怯で、弱くて、臆病で』

 調子にのりすぎてしまったアスカは、自ら奴隷契約書という悪魔の紙にサインしてしまったことを悟った。これでしばらくの間、アスカはシンジの妻という位置から、碇家のペットに堕ちてしまうことが、避けられない事実として決定してしまったのだ。

「さって、アスカちゃんの大好きな目隠しとボールギャグが待ってるわよ〜」

 肩を優しく、でも絶対逃がさないと言わんばかりにしっかりとユイの腕が掴む。

「ひ、もうそれ嫌――――っ!!
 あむ!? う、うむ――――っ! う、うう、むぅ――――っ!」

 革の目隠しが隙なくアスカの視界を塞ぎ、穴開きボールギャグを噛まされたアスカが、神業じみた動きをするユイの細腕によって、胸が剥き出しにされた革の拘束服を着せられ、折って畳んで縛られて、蛙のミイラみたいな格好であっさりベッドの上に転がされる。

「まったく、どうしようもない嫁ね。私をどう思っているのかよーっくわかったわ。
 …ねぇ、シンジ。マユミと再婚する気とかない? レイやマナが相手でも良いけど」
「母さん、冗談でもそんなことは…」
「冗談? ええ、そう言うことにしておくわ。とりあえず、お仕置きはするけどね」

 マユミの乱れようは気にもとめず、ユイは足を広げて秘所をさらけ出したまま固められたアスカを睨む。

「さて、それじゃまずは軽めに、マユミに飲ませるつもりだった利尿剤入りのレモネードを飲ませて、栓をしてしばらく放置しようかしら」
「ふぅむむむ――――っ!! う、うううう〜〜〜〜っ!」
「嬉しいみたいね。じゃ、早速♪」
「おうぶ、うぶ、う、ううう――――っ!?」

 ユイがアスカに陰湿なお仕置きをする横で、シンジは困った顔のままマユミにレモネードを飲ませていた。勿論、こっちは利尿剤入りなどと言う怪しい物ではない。単純に、さんざん叫んで色々な物を流したマユミのために用意した物だ。それに、ある程度お腹に物が入れば気分が落ち着く。

「ほら、飲んで。喉、痛いでしょ」
「う、うう、うううっ………う、ごくっ、ごくっ」

 マユミの本心はともかく、乾いていたマユミの体は貪るようにレモネードを飲み干す。たっぷり、600mlほどを一息に飲み干したマユミの頭を、シンジはそっと優しく撫でさすった。

「凄い飲みっぷりだね。大丈夫、気分悪くなったりしてない?」
「う、はうぅぅ。だ、大丈夫、です…」

 一瞬、状況を忘れて素直にマユミは応える。

「良かった。滅多にないけど、たまに拒絶反応とかアレルギーを起こす人がいるらしいんだよね」
「え…?」

 目を見開くマユミを見つめるシンジの口が、にぃーっと悪魔のように吊り上がった。

「美味しかった? 媚薬入りのレモネード。一応無味無臭なんだけど、たまに分かる人いるみたいだし」
「び、び、媚薬!? し、シンジさん、あなたは私に、そんな物を!」
「やだなぁ。用意したのは母さんだけど、飲んだのは君自身の意志じゃないか。あ、お代わりなら母さんいっぱい用意してくれたよ」
「そ、そんな詭弁を…。何も言わないで、口元に運べば、誰だって」
「うんそうだね。でもさ、過程はともかくとしてだよ。君のここは、凄く熱くなってるんだけど」

 シンジの指が、初めてマユミの股間に伸びる。淫靡な指先は熱く濡れそぼつ秘所を捕らえ、くすぐるように弄ぶ。

「は、やあうああああ〜〜〜っ!?」
「良い具合だ。可愛いよ山岸さん」
「ひぃう、うっ、ううっ、うああぁぁぁぁ! やだぁ、体がビクビクって、ああ、止まらない!」

 凄い…とまじまじと自らの手とマユミの痴態を見ながらシンジは嘆息する。マユミの激しい乱れようもさることながら、ほんのちょっといじっただけで、指先どころか手の平全体が愛液で濡れてしまった。まだ薬が効くわけはないのだが、言葉だけでここまで反応するとなると…。

「意外だ。山岸さんって、雰囲気に酔うタイプだったんだ」

 これなら、こんなレイプまがいの行為をしなくても良かったかも知れない。
 自分に出来るとは思えないけど、ホストよろしく仕事に疲れた彼女を優しく支えて、寄りかからせるだけでマユミは堕ちてしまったかも知れない。

(ま、今更遅いか)

「それじゃあ、そろそろ山岸さん良いよね?」

 マユミを正面から見つめるように抱き直すと、シンジは自分でもどうかと思うくらい甘ったるく囁いた。惚けていた惚けていたマユミの目が、シンジの意図を悟ってほんの一瞬輝きを取り戻すが…。

「え、え、ああっ。ま、待って下さい…。私、私やっぱり」
「抱くよ」

 マユミの言葉を無視し、シンジはマユミの足首を掴むとM字型に開いて固定する。その時が迫ったことを悟り、固く目を閉じてマユミは呻いた。
 上品に生えそろった淡い茂みの下でトクトクと泉のように愛液をこぼし続ける秘所に、鴛鴦が寄り添うように亀頭を押しつける。ぬるりと熱い感触にシンジとマユミは共に小さく息を漏らす。

「うおっ」
「ふぁあああんっ」

 これより神秘にして未だ前人未踏の秘境へ突貫する!
 爽やかな笑みを浮かべながらシンジは腰に力を込め、しっとりと濡れて甘い世界へと旅立つのだ――――、








「大丈夫、山岸さん。痛くないから…って」
「はい、ストップ」

 甘美な刺激に全身を奮わせるシンジの肩を、ポンとユイが叩いた。もの凄く良いところで邪魔されて、一瞬で高揚した気分が奈落の底まで落ち込んだ。

「ってなんだよ母さん。ここで邪魔をしないでよ」
「気持ちは分かるけどね、私はマユミに約束したでしょう? 痛くしないって」
「そ、そうだけど…」
「だから、色々と用意してきたのよ」

 そう言いつつ、手品師がボールを操るように手の平の中でいくつかの物品をユイは転がす。
 細長い、一見するとシロアリの女王の腹部のような物。妙な光沢がある所を見ると、カプセルか何かのようだがそれにしては奇妙な形状だ。

「なに、それ?」
「これはねぇ。処女膜を傷つけないように細く長く作った座薬型カプセルよ。中には特別製のローション兼媚薬が50cc封入してあるわ。破けたらもう濡れ濡れ、フィストファックだって出来るかも知れないわ」
「座薬みたいな物か…。溶けないの? いやそれよりなにより、破れないの?」
「勿論溶けるわ。でも、溶けるまでには結構時間かかるのよ。まあ、愛液いっぱい出せばそれだけ溶けるのは早くなるけど、ね。
 それから、太さはカテーテルくらいだからこれくらいじゃ破けたりしないわよ」

 答えつつ、ユイは慣れた手つきで ―――― なんで慣れてるか考えたくないが ―――― マユミの膣内にカプセルを潜り込ませる。
 異物が体内に潜り込む、痛みと言うより圧迫感にマユミの体が激しく震える。

「は、はひぃぃ!?」
「大丈夫、痛くない痛くない」

 よしよしと、異物が入って硬直したお腹を撫でながら、ユイはもう一つの物品を取り出した。

「チューブ…歯磨き粉?」
「なわけないでしょ。これは、遅効性の媚薬の一種よ」

 クリームと言うより、固まりかけのセメントのような内容物を指先にひねり出しながらユイは答える。

「これの効果はもの凄いけど、効き目を出すのに時間がかかるのよ。たっぷりと水分を吸うと、カタクリ粉を混ぜたお湯みたいにドロドロに溶けて効果を出すのよ。まあ、そうなるまでにたっぷりと愛液を出して貰わないといけないんだけど」

 なぜかユイの言葉に剣呑な物を感じてシンジは尋ねる。基本的に傷つけるようなことはしないだろうけど、人の予想を裏切るという点ではユイは他の追随を許さない。

「出せないとどうなるの?」
「中途半端に固まっちゃうわね。下手したら摘出するため外科手術しないといけないかも」
「そんな危ない物使う気!?」

 ええ、そうよ。と頷くとユイはシンジの目を見返した。文句を言う前に、ちょっとくらいは男を見せてみろと言わんばかりに挑戦的な目だ。

「大丈夫よ。見たところ、マユミの愛液って凄く量が多いし。もう十分すぎるほど濡れてるから。こんなに濡れてるんじゃ、すぐに水分吸ってローションみたいになっちゃうわよ。それにいざと言うときのための洗浄液もあるわ」
「なんだ。脅かさないでよ」
「ごめんなさいね〜。でも、マユミを感じさせて愛液で濡れぬれにして、このクリームを全部とかしてからじっくり抱いてやる! くらいのことは言えないの?」

 シンジを挑発しつつ、ユイは無造作にマユミの膣内にセメント状のクリームを塗り込んでいく。先のカプセルにくわえて強さを増す圧迫感に、マユミは背筋を仰け反らせて悲鳴を上げるが、ユイは気にせず作業を続ける。

「ああう、あうあ、あがっ、ああああ〜〜〜〜〜っ!! ひぃぃ――――っ!!
 だめぇ――――っ! 破れる、お腹が、あそこが裂けるぅ! や、やめて下さいぃ――――っ!」
「大丈夫よ。ほら、もう終わり。よく我慢できました」

 たっぷりとクリームを塗りおえると、マユミの汗みずくになった顔を見つめながらユイは尋ねた。

「さ、それじゃあ最後に質問」
「えう、う、し、質問…?」

 涙で歪む視界に写るユイは、今までの行動をするのに相応しい悪鬼のように歪んで見えた。ヒックヒックとしゃくりあげるマユミの質問に、ファウストをたぶらかした悪魔メフィストよろしく楽しそうにユイは答える。

「そう、さっきちょっと覗き見してたんだけど…。マユミ、あなたこのままシンジの大きいので処女無くすのと、うちの宿六の萎びたので処女無くすのどっちが良い?」
「!?」

 驚きに目を見張るマユミ。落ち着かせるようにマユミの髪を指で弄びながら、ユイはとくとくと言葉を続ける。

「選びなさい。ここまで色々されて、とても静めることなんかできないでしょ?
 ゲンドウさんの貧相な物が良いか、それともシンちゃんのがいいか、どっちかしら?」
「母さん!」

 本気で怒ったシンジを手で制止ながら、ユイは少し寂しげな表情を浮かべる。それは、あまりに馬鹿なことをやって来たんだから、多少の不利益は我慢するべきじゃないか、と自分を納得させるような、そんな顔をしていた。

「私は最初に約束したわ。出来る限り彼女の意向に沿うって」
「だから、何だって言うんだよ。なんでそこで父さんが」
「さっき見てたときにね。ちょっと思い至ることがあったのよ。マユミ、アスカに言われた言葉に凄く戸惑ってたけど、でも、とても興奮してたわよね」

 そう言われてみれば…。もしかしたら彼女は僕より…。
 明らかに落胆した顔でシンジがうなだれる。ブツブツと文句を言っているが、敢えてユイに逆らうつもりはないようだ。彼とて、時と場合によっては十分ユイに逆らう気概は持ち合わせている。しかし、マユミの意志をちらつかせている以上、理はユイにありそうだ。そう彼は判断した。

「う、ううっ。屁理屈にしか思えないけど、確かに、山岸さんの選択だって言うなら」
「マユミがシンジのことを好きなのは間違いないけど、ゲンドウさんのことを慕っているのも間違いないのよ。たぶん、彼女にもよく分かってなかったと思うんだけど。
 でも、こうしてわかっちゃった以上は、ね。ちゃんと彼女に選ばせないと後々まで禍根を残すわ」

 大丈夫、絶対彼女はあなたのことを選ぶから。とシンジをフォローしつつ、ユイはマユミにウィンクする。

 私の、選択…?
 戸惑うマユミに、ユイは夫を他の女に抱かれることを良しとしなければならない妻らしく、どこか寂しそうに口惜しそうに囁いた。

「さあ、選んで。シンジか、ゲンドウさんか…」
「ど、どっちって…」

 交互に、震えながらシンジとユイの顔を交互に見つめる。ふと、目の端にヒクヒクと痙攣するアスカの姿を捕らえた瞬間、マユミは適当なことを言ったら命取りになることを嫌でも悟った。そうと悟った瞬間、舌は痺れ口蓋に張り付く。声が、出ない。

「答えられない? じゃあ、目を閉じて手を挙げるのでも良いわ。
 あ、シンジ。ゲンドウさん呼んできて。私の部屋でくつろいでると思うから。マユミを抱けるかも知れない、って言えば喜んでくるわよ」
「…………なんか凄く納得できないけど、わかったよ」

 部屋からシンジが一時退出する。それを縋るような目で見つめながら、マユミは体の震えが大きくなるのを感じ取っていた。

(この人は、碇ユイという人は…)

 快楽で惚けていてもはっきり分かる。怖いなんて物じゃない。あの時、寄生した使徒なんて物の数じゃないほど恐ろしい。











 脅えるマユミに、ニヤリと退廃した人間特有の、暗い欲望に濁った目をしてユイは微笑んだ。
 勿論、ゲンドウが他の女を抱くなんて想像するのも真っ平ごめんだ。先程の言葉は、よりマユミを戸惑わせるために発した、魔法の言葉のような物。案の定マユミは戸惑っている。

 第一、マユミはシンジを選ぶに決まっている。

(でも…もし、この子がゲンドウさんを選んだら?)

 まず激しい怒りと憎悪が沸き起こり、それから…奇妙に冷えた鉛の感情がユイの中を支配した。
 夫を寝取られるかもと想像するマゾヒスティックな感情の波。

(ゲンドウさんが、私以外の女を…その手に抱く?)

 ほうっ、と熱い吐息が漏れる。
 最近ご無沙汰だった。仕事がきついときはいつもそうだ。原稿があがったとき、お祝いの意味もかねて一晩中愛して貰う。それがルールだ。
 だからゲンドウもたっぷりと溜まっている。それが、本来なら自分だけの精液が、他の女に…。それも、嫉妬しそうなほど美しく、本当の若さを持った女に…。目眩のするようなゲンドウとのセックスを思い出し、ユイは知らず知らずのうちに自分の体を抱きしめた。
 あの快感を、他の女が共有する?
 赤木親子が一時期ゲンドウの愛人だった事実を知り、かつて烈火のように怒り狂った。
 ああ、だが、どうしてあの時気づかなかったのだろう。
 ゲンドウに折檻し、泣きじゃくりながらも心の奥底でどす黒い炎が燃えさかっていた。

(そう、アレは暗い…喜びだったわ)

 アスカに嫉妬するレイの気持ちが少し分かる。今まで冗談で夢想したことはあったけど、この寝取られるという感情は予想以上だ。予想以上に恐ろしく、且つ、興奮する。
 いや、この暗い欲望は…。シンジとのセックスを見るより明らかに楽しめる…。
 鳩尾に重いしこりのような物を感じる。明らかにそれは不快な感情と感覚なのだが、どこかでそれに興奮し、楽しんでいる自分がいる。


(私に、まだこんな未知の部分が残っていたなんて…)



 永遠とも思える一瞬の思考と選択。




 よし、決めた。
 新たな世界に開眼したユイの凄惨な笑み。

「さ、手を挙げて。
 ゲンドウさんに抱かれたいなら右手を挙げて。
 シンジに抱かれたいなら、左手を挙げるの」










初出2004/11/07 更新2004/11/10

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