深宴

第9.2話



著者.ナーグル
















 看護婦時代、機会があったことから両親と養父について調べたことがあった。どうして母は殺されたのか、そしてどうして養父は自分を育ててくれたのか。その結果わかったのは残酷な事実。
 今まで実父と思っていた人は本当の父親ではなく、そして養父と思っていた父こそ、本当の父親だった。
 どういう複雑な経緯があってそんなことになったのかは戸籍謄本などからはわからない。母が父に殺されたのも、そう言った謎の部分に原因があったのかも知れない…。

『まゆ、マユミ…。し、ししし、し、する!』
「お父さま、そんな、やめて、勘弁して…」

 庇護されるべき娘は、庇護するはずの父親の手によって窮地に陥った。
 唯一出来る彼女の抵抗は、甲高い叫び声を上げることくらい。
 金切り声でも彼女の叫びはどこか甘い。顔は蒼白、憂いを帯びた瞳はどこまでも深く黒い。平安時代の姫君のように艶やかで長い黒髪は不安と恐怖で震え、和紙の白さの肌は興奮で薄桃色に染まっていた。

(実の親子なのに…。お父さま、本気で? いや、いやいや! それだけは、それだけは許して!)

 とっさに左手でざわつく悪魔の髪の毛ごと生殖器をつかむと、強引にねじ曲げて必死に挿入を妨げようとするマユミ。緊張の余りブルブルと手足が震え、力を入れた側から穴あき風船のように抜けていく。ぬめった手の中で暴れる生殖器の圧力に恐怖し、強ばった顔にあからさまな嫌悪と恐怖を浮かべてマユミは哀願した。

「だ、だめ…。親子なの…血が、繋がっている…の。お父さま、知って、いるんでしょう?」
『ううぅ…?』

 わかっているのかいないのか、怪物は動きを止めて首をかしげる。わからない振りして、とぼけてそのまま無し崩しに犯そうとしているみたいだ、マユミはそう感じる。赤い瞬きをしない目でじっとマユミの顔を見つめるが、歯槽膿漏患者特有の腐敗臭を口から漏らすと、おねだりする犬のように囁いた。

『でも、い、いた、いぃ…。か、くぁ、かわい、そう…。くるし。…とめ、て。たすけて、マユミ。だから、ううぅ。ああぁ――、あぁぁぁ、おあああおあおあおあ!』
「ひっ。………お、お願い。耳元で…叫ばないで、ください」
『うう、な、ならぁ。させ、て。こ…ども、つくり。した、い。マユミ、と』
「なんて、ことを…。なんてことを言うの…。
 お願い、だから、諦めて。うう、怖い、怖い…。いくらお父さまでも、ううん、お父さまだから、それは、ダメなんです」

 マユミの言ってることを半分だって理解しているのか怪しいが、だが拒絶していることを感じ取ったのだろう。怪物は怒りの感情をあからさまにし、黄ばんだ歯を歯茎まで剥き出しにして威嚇音を漏らした。

『シュ――――ッ!』

 掛け値無しの強烈な怒りの感情は、他人の感情に敏感なマユミは意図も容易く打ちのめした。掴まれている左胸に軽い痛みが走った。クリトリスをつまむ指先から優しさが無くなり、骨を凍らせる怒りがにじみ出る。これ以上我が儘を言うなら、容赦なく捻り潰す。言外にそう漏らしていた。
 やはり怪物は怪物なのか。
 情欲で火照っていた体が一瞬で冷める。目を見開き、恐怖の冷や汗をじっとりと額に浮かべてマユミは体を震わせた。怪物の生殖器は力の抜けたマユミの手の中で釣られた魚のように跳ね回り、マユミの秘所をかすめるまで接近する。

「ああ、お願い。お父さま、助けて、誰か、お父さまを、止めてぇ…」
『グルルル、シャ――ッ!』
「ひ、ひぃっ。ま、待って。酷いこと、しないで、ください。セックス、以外なら、何でも、しますから。何でも…うう、そう、手で…して、あげます、から」

 なんて事を呟き、そしてなんて事を提案しているのだろう。
 こんな淫らなことを父親に言うなんて、明らかにまともじゃない。だが、躊躇っている暇はなかった。潰れそうなくらい握りしめられ、張りつめた乳房破裂寸前な痛みで痺れている。たぶん、指の痕はしばらく決めないだろう。

『グルッ…。お、おう? ま、マユミ、ああ、ううぅ』

 ごちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ…。

 尋常でない覚悟を決め、硬く目を閉じたままマユミが手を上下させると、怪物は父親の声で気の抜けた呻き声を漏らした。
 屈辱と情けなさにとめどなく熱い涙をマユミは流し続けた。
 父を恐れ、拒絶する心は冷めていく一方で愛撫する体はますます熱を持ち、最初はぎこちなかった動きも、勢いがつくと共にリズミカルになっていく。

『うひぃ、うひひぃ。いい、きもち、いいいぃ』

 急に存在感と質量を増した生殖器に指が弾かれそうになる。ぬめりが手の平全体になすりつけられ、指の隙間から糸を引いてこぼれ落ちた。大量に溜まった湯垢を掻き出すようなおぞましい感触…。
 繊毛が生えていることでランダムなデコボコが生じ、手淫しているマユミにも微妙な快感をもたらしてくる。

「ああ、はぁ、はぁ、はぁ…。うう、気持ち…悪い…」
『ううぅ、あああううぅ。はぁ、はぁ、はぁ。マユミ、マユミ…。だいす、き…』

(そんなこと、言わないで…! お父さまの顔で、お父さまの声で言わないで…!)

 しかし、マユミは自分の心がアンビバレンツな感情に囚われていることを自覚していた。頬を伝い艶黒子を濡らす程悔し泣きしながらも、好きと言われて喜んでしまっている。シンジに申し訳ないと思う一方、彼女の強い被虐的な性根が喜びを感じ始めている。
 時には強く、時には弱く。生殖器の凹凸や硬軟に合わせて指の力を調節し、繊毛を梳るように指を沿わせていく。擦っていく内ににじみ出る粘液は量を増し、同時に先端の剥けた部分はその面積を増していく。幾つもの節と突起がある肉の塊が、開口部からその姿をかいま見せていた。

 ごし、ごし、ぐちゅ、ぐちゅ。

『あうぅ、あうぅ、あうぅ、あぅ、ああ、おお、あおおぉ…』
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ああ、お父さま…。あぁぁぁ、あぁぁぁ〜〜」

 愛撫している左手は重く痛みを感じ始めたころ、手の中で熱さと硬さが膨れあがった。

(ああ、で、出てくる…)

 怪物の生殖器が全てめくりかえった。繊毛を生やした紫色の外皮は一気に根本までめくれ、内側に封印されていたピンク色の器官が剥き出しになる。それはまさに人の想像の埒外の存在と言えた。蝶の蛹にどこか似た怪物の生殖器は地獄の番犬もかくやと言う程のグロテスクで、キューピッドが憤死するほどにエロティシズムに満ちあふれていた。たとえ処女でも、一目見たら性的な興奮を覚えずにはいられない。
 幾つも細かい繊毛を生やした体節に分かれ、節の一つ一つには気門のような小さな穴が左右に一つずつ開いている。そして、先端部は黒い複眼と触覚を備えた蛾に酷似した形状をしていた。
 一言で言うならば、怪物の股間には通常のペニスではなく、巨大な蛾の蛹が生えている。

『あおおぉぉぉぉ…、で、でっ』
「あぁぁ…。い、やぁぁ……っ」

 マユミの手の中で生殖器が破裂したように膨れあがり、爆ぜた。白濁した精液が四方八方に噴出した。迸りは到底マユミの手の中に収まりきれず、横腹や太股にまで粘つく汚液をこびり付かせていた。

「あ、ああっ…。あ、熱い…」

(な、なに、これ…)

 手の平はおろか髪の毛にまでべったりと張り付く精液の濃密な臭いに、マユミは胃の中から喉元までせり上がってくる物を感じた。
 あまりに予想外の噴出と生暖かくも粘つく感触にマユミは眉根を寄せてえづいた。怪物の精液の感触はたとえるなら、大量のミカン粒を内部に混入された、夏場1週間放置した海産物の腐汁が最も近い。
 ドロドロヌルヌルとして悪臭を放つ腐った油…。
 数時間前、マユミを凌辱した『脳』の精液もおぞましかったが、父の精液はまだ人間に近い分、余計におぞましいとマユミは感じる。

 ともあれ、これで怪物は…父は満足をしてくれただろうか?
 淡い期待を込めてマユミは肩越しに父の顔を顧みるが、彼の瞳を一瞥した瞬間、願いが叶わなかったことをマユミは悟った。爛々と光る赤い瞳は、一度射精したにもかかわらず、さらに強烈な性欲に支配されていることを伺わせた。

(あの目、まだ、お父さま、満足してない…。でも、これ以上は、どうすれば…)

 戸惑っている間にも、怪物は再び足を抱え上げようとしてきた。反射的にマユミは手で押しとどめようとするが、奇っ怪なことに蛹状生殖器は足を振り回し、彼女の指を弾いてそれを拒んだ。

「ああ、待って…。そ、そうだわ。その、口で、ああ、待って待って、そんな…っ」

 痛い程に大きく広げられた股の間で、マユミの淫唇がねっとりとした淫欲の蜜を漏らしている。蜜を受け止めながら、蛹状生殖器が喜びに伸び上がった。目を備えた先端部が、可憐な美女のもっとも羞恥を覚える内奥を覗き込む。

『マユミ、マユミ、やっと、やっと。ひとつ、に』
「ああ、やめて、やめて、お父さま、お願いします…。親子なの、親子なんです、ああお願い、お願いします…」

 幼児にオシッコをさせるような格好を強いられ、屈辱と羞恥にマユミは全身を震わせた。なにより、これから獣欲にまみれた実父に犯される。欲望に変異した異形の生殖器が、心に反して父の愛撫で淫ら開花した肉の花びらを押し割り潜り込んでくのだ。

(ああ、そんな…そんな…)

 父親に、犯される…。
 それも怪物と成りはてた父親に犯され、焼け付くような蒸留酒に似た精液を胎内奥深くに注ぎ込まれるのだ。もしかしたら、先に犯された怪物(脳)の子供を既に妊娠しているかも知れない。だが、それがなんだというのだろう。父の精液は、きっとその胎児にもならない受精卵を食い尽くし、代わりに自分たちを受精させる。
 全ての父親は娘を犯したがっている。そして、愛されて育った娘は、父親を理想の男性像と見る。
 マユミは痛い程そのことを自覚していた。

「ああ、助けて、お父さま、あああ…」

(でも、どんなに嫌でも…避けられない…。助けなんて、小説みたいに都合良く来てくれるはずがないわ。もう、どうしようもない…。それにお父さまが望むのなら…。でも、実の親子なのに。わたし、わたしどうすれば…どうすれば)

 左右同時の汗の浮いた白い乳房をぎゅっと掴まれ、溜息のような吐息を漏らした。胸を掴まれた時、じわっと体中に広がる快感に、それとも背徳的な状況に酔ってしまったのか。喉奥から間延びする呻きを漏らしてマユミは体を震わせる。

「ねぇ、やめて。お願いだから!
 ああ、シンジさん、どうすれ…ば、はぅ、はぁぁぁぁぁ…ぁ、んん」

 柔らかさと弾力を確かめるようにぎゅ、ぎゅっと揉みしだかれると、力の抜けた体はその時を待ちわびるようにしとどに濡れた秘所を潤ませていた。

(怖い。こんな畜生にも劣ることを、私が…。ああ、シンジさん、シンジさん…なんで、私、どうしてこんな、こと。おかしい、おかしわよ。私は、今日の今頃は家で、外は雨だからって、アンニュイな気持ちで過ごしてたはずなのに!)

 嫌悪と恐怖はまだ感じている。それはそうだ、愛するが故に最も許してはいけない相手に犯されようとしているのだから。これならいっそ生きたまま八つ裂きにされて喰われた方がマシだ。少なくとも、魂までは堕落しない。

(それなのに、ああ、私…逃げられないからって、諦めてる…でも、どうしようもないのよ。シンジさん、助けて、助けて)

 世界で最も愛しているシンジに対する申し訳なさで心の中が一杯になる。
 覚悟を決めたとしても父に犯される事実に嫌悪を隠すことは出来ない。しかし、どこかそんな異常な状況にマゾヒスティックな快楽を覚えている。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぅ。お父さま、今なら、まだ、まだ」
『するっ!』
「くぅっ…そんなわがまま…。だ、だめ、だめぇ…」

 父親への最後の懇願は拒絶されるだろう、言う前からわかっていたが、はっきりと拒絶された瞬間、マユミは奇妙な肉の疼きを股間に感じていた。
 敏感な肉華に蛾の蛹が鼻先を埋めてくる。卵状の先端部が押しつけられた時、その熱さにマユミは大きく体を震わせた。大きく仰け反った首筋がブルブルと震え、ぬめった汗を浮かべる。

「ああ、はあぁぁぁぁ…。お、お父さま…。おかしい、おかしいわよこんなの…。ひぅ、ううぅ、だ、ダメ…」

 おかしいのは自分たちなのか、それとも世界そのものなのか。
 生殖器の先端部に生えている一対の触覚がぺたぺたとクリトリスと充血した淫唇を撫で回してくる。肺から絞り出すような吐息を漏らし、M字型に広げられた足全体が大きく震えさせた。

『い、いいいぃぃ。おいいいぃぃ。あたた、ここ、あたたーか』
「おあ、あうぅ。ぐ…ひぅぅ。そんな、うそ…こんな、こと。わたし…、わたし」

 愛液を擦り付けるように淫唇をつついていた生殖器が、とうとうその先端を強くマユミの中心に押し当ててきた。今までとは明らかに違う、覚悟をもった先端部が少しだけ潜り込む。じゅぷ…と音を立てて淫靡な愛液が少しあふれ出た。淫猥な花びらはマユミの意に反して、父親の生殖器を、ペニスを受け入れようとしている。

「ひぐっ…。あう、ぐぅ。うっ……うっ…うっ、うっ」
(犯される犯されちゃう、お父さまに、お父さまにぃ…。ああやめてやめてやめて、お父…さま、お父さま、お父さまぁ…)

 避け得ない現実に絶望し、マユミはうなだれた。
 マユミを支えていた腕から力が抜けると同時に彼女の体は重力に引かれ、そして怪物は腰を突き上げた。

「うぁ、あっ、あぁぁっ!」

 焼け付く鉄杭で刺し貫かれたと錯覚するような、峻烈な感覚―――。
 圧倒的な肉の塊が、羽二重の餅のように柔らかなマユミの体を蹂躙する。
 凶悪な肉棒に貫かれた瞬間、嘆きに満ちた悲鳴が響き渡った。

「きゃぁぁぁぁ―――っ!
 あああっ、うあっ、ぐあぅっ! 痛い! いたっ、痛い! 本当に、入れるなんて! 酷い、酷いっ!
 いやっ、お父さま、動かないで!」

 痛い程に大きく膣口をこじ開け、暴虐の怒張はマユミの胎内に潜り込んでくる。ぼろぼろと涙をこぼし、髪を振り乱してマユミは啼き狂った。痛みと体の痛み以上に激しく責め苛む心の痛みに。
 彼女の気持ちを知ってか知らずか、淫欲に口元を歪めて怪物は涎を溢しながら馬鹿笑いを続ける。窮屈なマユミの膣の締め付けさえも楽しんでいる。

『おああぁぁ、あたか、マユミ、きも、いいぃ。いたい、なくなる、いい、マユミ、マユミぃ。あ、あば、だめ』
「いや、いやよぉっ。…いや、いや、いやぁ。痛っ、痛い……痛いの…。ああ、あううぅぅ。うっ、うっ、うっ、く、あうっ。…痛い、痛い」

 首を振っても目も閉じても誤魔化せようのない激しい痛みに貫かれる。快感なんてありはしない。身を裂かれる痛みと嫌悪と絶望にマユミは啜り泣いた。

「ううう、うぐっ。うっ、ひっく、ひぐっ、えぐっ。うっ、うっ、ううっ。
 こんなの、あぐぅ、うっ、ぐっ。酷い、酷いわ…。ひっ、ひぐっ。親子、なのに。やめてって、言ったのに…。うう、う、抜いてぇ…」
『や、やっ。やっ! マユミ、やっ』
「いたっ、やっ。お願っ、動かなっ…。許し、て。もう…………ああ、こんな、の」

 彼には父親だった時の記憶は残っているのかも知れない。だが、既に彼は人間とは言えなかった。
 しかし名前を呼ばれたことで不用意に近づき、蜘蛛の巣に飛び込む蝶のようなマユミの行動を責めるのも酷というものだろう。誰も頼ることの出来ない、地獄のような空間で(目的はどうあれ)彼女を助け、彼女の名前を呼んでくれた相手を、1%の期待で信頼するのは仕方ないことなのだから。
 だから、明らかな凌辱の意図を悟ってなお、マユミは父と呼ぶのだ。

『ひぃひひひ、もっと、もっと、もとぉ。きもち、よくして。マユミ、そだつの、まてた。だいすき』
「ああ、なんてこと、言うの。……ああ、痛い、痛い。……やめてぇ。あぐぅぅ、ひぐぅぅ。
 うぐぅ…。いた…ああぁ、お願い、お父さま。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ああ、お、お父さま…痛いの、許してぇ」
『ずっと、ずっとぉ。お、おかし、たかた。マユミ、うう、マユミ。あう、マユミ。こどお、こども』

 息切れしたのか、徐々に途切れがちに哀願するマユミの声すらも楽しみながら、ぐっと腰を押しつけ、更に生殖器を挿入していく。
 衝撃に体を跳ね上げながらも、徐々にマユミは痛みに替わって焼け付く熱さと圧倒的な存在感が取って代わることに恐怖を覚え始めていた。この先に待っていることがなにか、容易に想像できてしまう。そしてそれが頂点に達した時、自分がどうなるかも。

(ああ、熱い…壊れる……なのに、痛みが、ひいてく…。いや、そんな、いや、痛いままが良い、痛い方が良いの…。痛くないとダメなの、なのに痛くなくなって、る)

 ずぶずぶと音を立て、竿に当たる芋虫そっくりな部分が潜り込んでくる。芋虫の義足に膣を這い回られる甘美な疼きに体が震える。最初に感じた圧倒的な大きさから来る痛みが引き、今は膣全体を自分の形に押し広げる圧倒的な存在感に、マユミの体は喜びの涙を流しはじめていた。

「は……っ、うぅぅ。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。はっ………あっ…あう。…ああぁぁ。やだ、やぁぁ」

(ああ、熱い…お腹が、お腹の中に、熱いのが、広がっていく…)

 潤み、目の縁が赤くなった明らかに欲情した女の目をして、マユミはじっと父親と自分が繋がっている証を見つめた。涙でかすむ視線の中で、ごつごつした生殖器がビクビクと脈を打っている…。

「はぅぅぅ、やぁうぅ。……うう、ぐぅぅぅ、いぐうぅぅ。
 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぅ。…………う、うくっ、くぅぅ。はぁ、はぁ、はっ、はっ、はぁ。
 あぅ……あっ…あっ、あう!」

 早く浅い動きでマユミの体が上下する。体が沈む時、浮かぶ時、その度にマユミは首を仰け反らせ、髪を乱して甘い喘ぎを漏らした。背徳的な、してはいけない行為とはこんなにも甘美な物だったのか…。困惑と共に、なぜ子供はするなと言ったことをあんなにもしたがる物なのか、という疑問に答えが出た気がした。

(どうして、どうして? いけないことなのに、近親相姦、なのに…。なのに、どうして)

 気持ちが良くて仕方がない…。

「わかんない、ああ、わからない。ちがう…感じちゃ、ああ。ダメ、ダメなのに。
 ………うぅ、あうん。…うん、やっ、やぁ、あっ、あ、あ、ああ、ぁ、ぁぁ。……………あっ。
 ひっ…ひぅ、ひぃ、あぅ。く、はぁぁぁ………」

(ああ、感じたくない…いやぁ、お父さまで気持ちよくなんか、なりたくないよぉ…。なのに、どうして、シンジ、さん…。やだ、いや、ダメなの、そんなの、嫌なのに、ああ、助けて、助けて)

「あう、うぅぅ……ううっ。ひっ……うう…」

 子供のような口調でわんわんと泣きじゃくりながらも、父の邪悪な期待そのままに淫らに育った淫華は、貪るように父親の肉竿を受け入れていく。腰の前後する動きこそ速いが、侵入深さの進みはとてもゆっくりとしている。10mm挿入してはすばやく10mm引き抜き、間髪入れずに11mm挿入する。まるで、細胞一つ一つに自分の臭いが染み込むのを待っているように怪物の犯し方は執拗だった。
 気が狂いそうな程ゆっくりとした動きでマユミの体に自分の存在を刻み込む。過去の男のことを全て忘れ、彼だけを受け入れるよう、彼の形を覚えるように…。

「ああうぅ、やぁ、ああ……はぁ…はぁ…はぁ……はぁ……………ぅっ。お父さま…お父さま…」

 汗が滴となって周囲に飛び散り、大きな胸と髪がリズミカルに上下に揺れた。ゆさゆさと揺れる胸に怪物は手を沿わせ、再び柔らかさを味わい始める。

「くぅ…っ! ひぁ…………あっ…あっ、やぁぁぁ。……む、胸、いやぁ…。さ、さわっ……さわっちゃ、ひっ。う、ううっ」
『いたいのぉ。かわいそうだろぉ…マユミ、マユミ。いい、い…い、よ。やめると、いたい、よぉ』
「……う、ううぅ。そ、そんな。…………あっ、ひぐ。……あううぅぅ」

 挿入深度が深くなるに従い、徐々にストロークが深く、ゆっくりになっていく。それと共に快楽は否応なくマユミの中で高まり、ゆらゆらとマユミの下腹が波打ちはじめる。胎内に溢れる圧力で、マユミの脳内が快楽で濁っていく。嫌悪と社会通念、常識といった人を人たらしめる概念が崩されていく。

 深く、ゆっくりと蟲はマユミの胎内を蹂躙する。膣内で蛹状生殖器は手足を広げ、翼を広げて暴れ狂っている。じゅぼじゅぼぐじゅぐちゅとマユミの女の器官をかき回して淫靡な音を立てる。マユミの中の弱いところどころか何もかも全体をかき回し、こそぐように圧迫してくる。

「くぅぅっ…あん、はぅ、あぅんっ、お父…さまぁ。
 …………そんな…あん、あっ。そ、そんな、うっく……。あううぅぅ」

(お、おかしい…です。私が私じゃないみたい…。なに…これ? なん、なの?)

 浅く早く、深くゆっくりと。時にはえぐるように腰を回しマユミを嬌態に狂わせる。淫らな黄金の泉に沈み込み、再び引き抜かれる蟲の体節は愛液でドロドロに濡れている。言葉と態度で否定しても、拒絶しても体は正直だ。根本まで生殖器を差し込まれ、息を詰まらせた次の瞬間、亀頭のカリ首の当たりまで引き抜かれる快楽に酔いしれ、淫らな愛液の涙を流す。情欲にまみれた黒い炎に身を焼かれる。
 息をすることも気を失うこともできない。生き地獄だ、とマユミは思った。

「あうっ。い………ううぅ。く、くぅ…。はっ、はっ、はっ、ああっ!?
 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はっ、はっ、はっ、あ、あ、あっ。
 ………あん、あん、あん。………あん……あん、ああっ……んうぅ……。あ、あ、ああっ。あああっ。
 はふ、ふぅ、はぁ、ふぁ、あぁぁぁ………。あ、ああ、ああああぁぁぁぁぁ」

 突然の嬌声の直後、マユミの下腹の筋肉が板のように硬くなった。
 コチコチに全身を強ばらせ、ビクビクと痙攣させてマユミは体を仰け反らせた。敏感極まりない被虐の体にも関わらず、人外の快楽に耐えに耐えてきた彼女の体は、とうとう達してしまったのだ。

「ひうぅぅ………くっ…くぅ…。お、お父さま……。わ、私。
 …………い、ひぃあぁぁ」

 悲しみと拒絶は形をひそめ、快楽に充ち満ちた情欲の悲鳴がマユミの喉から溢れ、室内の空気を震わせる。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。はっ、はっ、は、あう、ああ、あうぅぅ…」

 全身を大きく仰け反らせ、ビクビクと痙攣していたマユミの体から力が抜け落ちた。くにゃくにゃと力の抜けたマユミの体を受け止めると、誇らしげに怪物は口元を歪めた。慰めるようにマユミの頭を撫で、美味そうに浮かび上がった汗の滴を名娶りながら、極上の女に育った娘に誇らしげな思いすら抱いている。
 人だった時は彼女を立派に育て上げ、一流の男に娶せて幸せになって欲しい、そう思っていた気がする。今も、その気持ちはある意味変わりはない。だが、唯一にして一点が異なっている。

『まゆみ、まゆみだけ、きもち、いい。ずるい』
「…………っ……っ、っ……ぅ…ぁ…ぁぁ。
 ぐ、あううぅぅぅっ。…はぁぁぁっ、あう、あう……あっ…ああっ。うぅっ……っ、うっ、うっ。シンジ、さん………わたし、ああぁぁぁ」

(わたし、お父さまに、犯されて…。シンジ、さん…許、して…。わたし、あなたのかお、思い出せない…)

 娘が『シンジ』と呟く時の愛情に満ちた響きが気に入らない。彼女には、娘には自分のことだけを考えていて欲しいのに。
一刻も早く、証を刻み込まなくては。
 そう、彼女を幸せにするのは、父親である自分の務めであり宿命なのだ。娘と結婚し、子を孕ませ、親子三人で仲良く…。

『まゆみ、もっと、もっと!』
「やぁぁ、もう、許して、下さい…。相手は、お父さまなのに…どうして、感じちゃうの?
 いやよ、いやぁぁぁ。あっ、あっ……あっ。もう、もう動かないで、動かないで……」


 哀願を聞こえない振りして無視し、マユミの体をソファーの上に押し倒した。前のめりに押し倒された瞬間、マユミは反射的に両手をつき、顔からソファーに倒れ込むのを堪える。頬をかすめて垂れ下がった髪の毛と、重たく揺れる胸が勢いよく揺れる。禁断親子相姦の耐え難い疼きに、彼女は底知れない恐怖を感じてしまう。

(こんな、後ろ向きで…ああ)

 屈辱的なことに犬の交尾のような四つん這いの姿勢を取らされるマユミ。
 トップ93でGカップの胸をゆさゆさと揺らし、息苦しさにマユミは呻き、無意識のうちに這いずって逃れようとする。だが、怪物はがっちりと優美な腰を掴んで放さない。滑らかな曲線は最高の触り心地だ。柔らかでそれでいてはち切れんばかりの弾力を持った乳房、じんわりと温かい膣の中は言うまでもない。

『わんわん、わんわっ。マユミ、いぬ、すき』
「こんな格好………あああぁっ」

 勢いよく腰を叩きつけられ、胸をヨーヨーみたいに激しく揺らして体を仰け反らせる。
 体位を変えた所為か、深々と挿入したままだった生殖器が、思いも寄らない角度で膣内をえぐってくる。歯痛の疼きにも似て耐え難い官能の荒波に悶え、マユミは手で体を支えきれずに前のめりに崩れ落ちる。顔をソファーに埋め、苦みのある合成革を噛みしめながら必死になって声が出るのを堪えようとする。

(だめ、声出したくない! こんな格好で喜んでるなんて、はしたない…!)

 勢いよくマユミの胎内に生殖器は出入りを繰り返していく。四つん這いにされ、尻を高く掲げあげられる屈辱的なスタイル。今更だが羞恥にマユミの顔が赤く染まる。内蔵を圧迫されて苦しそうにマユミは呻いた。

「はぅ、あぅ、ああっ、あっ、あっ……あっ………くっ…っ。うぐぅ、うぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐぅ。だめ、声、出しちゃっ!
 うっ………………うっ………ううっ。ふぐぅぅっ……。うう、苦し…」
『おうぅ、おう、わう、いい、いいいいいいぃ』
「うぐぅぅぅぅ……」

 マユミの中は温かく、それでいてきつい締め付けで生殖器をしめつける。シンジ以外の男を知らず、シンジにも5回程しか抱かれたことのないマユミの体はほとんど処女同然だ。成熟した女の潤いと深みを持ちながら、楚々とした蕾のような堅さを残している。
 なにより、快楽になれていない彼女の体はあっさりと堕ちていくのだ。

「やぁぁ、あう、ひぅぅ。……ああ…………あっ……あっ…あっ。
 ……あぁ、あ…う…うぅ。
 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぅ。……ひぅ…ぁ…わ、わたしの……ぁぁ…中に、何か…。はぁ、はぅ……いる…。ああぁぁぁ」

 ぐちゅぐちゅと音を立てて肉棒がマユミの膣をかき回していく重く疼く下半身の感覚。とろけた表情でマユミは喘いだ。涎が口元を伝い、汗と淫液で汚れたソファーにぽたぽたと滴り落ちていく。

「あぅ…あぅ、あぅ、ううぅ」

 執拗な2人の交接は続いた。時間と共に長く糸を引いた愛液がゆっくりとこぼれ落ちる量は増え、比例してマユミの喘ぎは淫靡な響きに充ち満ちていく。その声に淫欲をかき立てられたのか、応えるように喉まで突き上げる勢いで怪物は腰を叩きつける。

『おう、おう、うっ、おぅ、おおぅ!』
「ひっ……あっ……あっ…あっ……………くっ」

 濡れた2人の肌がぶつかる間の抜けた音が一定のリズムで響く。結合部から溢れた愛液は両者の内股と太股全体を濡らし、上気して桃色に染まったマユミの体は淫らに波打った。汗でぐっしょりと濡れたワイシャツは彼女の体に張り付き、肌の色がわかる程に透き通っている。そして背中の上で乱れ狂う長い黒髪。

「はぁ、は、はぁ………あ、はぁ。………ふあっ、あっ。…んあぁぁ」

 ぶるっと大きくマユミの体が震えた。バチバチと稲光に似た光がマユミの閉じた瞼の向こうで瞬く。

(また、また、私、そんなにされたら、いく、イっちゃう…っ。いや、そんなの……イヤよぉ)

「……イヤよ、イヤぁっ。我慢……しなくちゃ。あっ…ぁ…っ…くぁ………やっ、だ。我慢…………ぐっ、あっ。死、死ん…じゃう。
 ああ…ひ……っ…ひぅぅっ。うっ…うぅ……おぅ、うっ。あぁぁぁぁぁぁぁ」

 ひぃひぃと喘ぎ、鼻声で吐息を漏らし、再びマユミの体が小刻みに痙攣しはじめた。びくびくと膣をひくつかせ、下腹を波打たせて体をくねらせる。本能的に体は男を求め、ぎゅうぎゅうと彼女を快楽で苦しめる源を締め付ける。

(あうぅ。あぅ、だめ…意地悪、しちゃだめ。本当に、頭が、おかしく、なりそう…)

 自分から腰を押しつけくねらせていると、突然、胎内で大きく生殖器が膨れあがった。思わずマユミは息を呑む。父親の意図を悟り、恐怖に体をすくませた。もう、1分とかからずに父親の生殖器は弾けて、中に…。

「いぃ、やぁぁ…そんなの、だめ。
 し、シンジ、さん、誰か、助けて、助けて。助け、誰か、こんなのイヤッ。誰か、誰かぁ…。お父さま、親子なのに、親子なのにぃ。
 …っ……あうっ………っっ」

 背筋の産毛が逆立ち、ぞくぞくとした寒気が全身を包んでくる。
 このままだと、本当にイかされて、射精されて、妊娠してしまう…。

 ずちゅ…ずちゅ…ぬちゅ…ぬちゅ…。

 自分が達しそうなことを悟り、勢いに任せてがむしゃらな動きではなく、ゆっくりゆっくりとマユミの官能をほじくり出すように執拗な動きでマユミを責める。もどかしいと思うが、そのもどかしさがかえって彼と娘の喜びをいやますのだ。
 娘だって口では嫌がっていても体は喜んでいる。

『でる、でる、だすぅ』
「ひぅ…うっ……んうぅ…っ……くっ……だめ、だめぇ。妊娠、妊娠しちゃう、お父さまの子供、妊娠しちゃう。
 はぅ…あぅ……やっ、ひぅぅ。くっ……助けて、ああ、助けて」
『きもち、いぃ。いたいの、わすれる、いい、マユミ、いい…。よろこん、で』
「いやいやいやぁ…。良くない、気持ちよくなんか……ない。
 ああ、こんなの…酷すぎる。うああ、神様、神様ぁ。助けて、誰か、誰か、誰かぁ!
 アスカさん、霧島さん、綾波さん、シンジさん! 誰か、誰かいないの! 助けて、ああ、助けてぇっ!
 くぅぅ…ひぃ、くっ…はぁ、はぁ」

 襞を掻き分け、膣全体を刺激する父親の生殖器。
 背徳感はもはや快楽の理由付けにしかならなかった。一呼吸ごとに胎内の存在感が増していき、それ以外の何も考えることが出来なくなっていく。淫らな娼婦さながらに惚けた顔を上げてマユミはぶるぶると体を震わせた。

「ああ…いや、だめ、だめ。お父さま、だめ、ぬいて。
 まだ…間に合う…お父さま、ああ、あっ……っ…ぅ…ひっ…ひぅっ。………だめ……だめ。ああ、もう、だめ。
 ああ、ああぁぁぁ」
『マユミ、も、です』
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」

 最奥に叩きつけられた生殖器が膨れあがった。自分の断面図を目視したかのように、マユミは生殖器の先端が虫の顎のように左右に開くのを悟った。父親の…自分の元になった精液が自分の胎内に植え付けられる…!
 堪えきれず、折れそうな程に背骨を反り返らせた。彼女の激しい動きに、両方の二の腕に挟まれながらも、たっぷりとした乳房が勢いよく揺れた。

「抜いて、抜いて…! ああっ……あっ…あっ…っ……あっ…あっ、ああっ…ああぁぁぁぁ〜〜〜」
『マユミ、マユミ、で、でっ! おっ、おっ、おおっ!』
「やぁ…! いやぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!」

 マユミの喉から血を吐くような苦悶に満ちた叫び声があがった。汗に混じって、煌めく涙の滴がこぼれ落ちる。
 長く尾を伸ばす哀切な嘆き…。怪物はうっとりとした表情で押しつけた腰を痙攣させていた。一滴残らず、愛しい娘の胎内に絞り出そうとするように。脳裏に鮮明に浮かぶのは、精子の群れがマユミの卵子に群がり受精させる光景。
 絶対的な確信に口元を歪めて、彼は愛しい娘にして妻の背中を優しく撫でさすった。この華奢な胴体の内部の子宮で、ゆっくりと孫にして子供が育っていく。至福の思いに包まれ、忘我の表情で彼は精液と愛液をかき混ぜ続けた。











「うぅ、うっ、うっ。……うっ…うっ…っ…うっ、ううっ。おと、お父さま、お、おうっ。お父さ、おと、お」
『あ〜〜〜っ。うぃ〜〜〜。マユミ、あたた、いい…』
「やぁ…やめ、やめて、やめてぇ…うう、うぅぅ。地獄、よ。死んだ方が、マシ……うっ、うっ、ううっ」

 怪物は射精後の余韻に浸りながら、なおも5分程マユミの膣内をかき混ぜていたが、突然、マユミの体が糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

「あうぅ…」

 限界まで押し広げられた淫唇と生殖器の結合部から、ぶじゅっと音を立てて精液があふれ出てきた。粘つく精液はソフトクリームのような粘つきでソファーの上にヌルリとした水たまりを作っていく。

『いいぃぃ。マユミ、い、いいいぃ。マユミ、き、いい? きも、いい、よおお…。いたっ、くない。いたみ、きえ…た、よぉ。きもち、いいぃぃ』
「うっ…あぐ、はぁ、はぅ、うう、うううぅ。もう、良いでしょう? もう、満足、でしょう…。
 お父さま、苦しいんです…もう、許して」
『い、いい? マユミ、いい?』
「…うぅ………気持ち…良い、良いです。でも…はっ、はぅ…わたし、耐えられ、ない。だから、やめて…。ああ、お父さま、お父さまぁ…。
 …………うっ……はぅ。あん、ああ………あっ。あぅん」

 マユミは涙を流しながらも甘い声で答える。その言葉でますます父を猛り狂わせるとも知らず。
 ぽたぽたと精液がこぼれ落ちていくのを、喜びと諦めが混じった気持ちで受け入れていく。彼女のその言葉と無抵抗を肯定と受け取ったのだろうか、怪物は再び活動を再開した。マユミには拒絶の悲鳴を上げる暇もなかった。
 怪物が再び腰を動かすと共に、甘がゆい疼きが再びマユミの深奥を突き込んでくる。

「はぁ…あぁ…あっ、あっ、ああぁ。……あん………あん…あぁぁ」

(また、犯される…。ふふ、死にそうに、良い…。そう、そうなの…ね。私、結局…そうなのよ。結局、こんな、人生。馬鹿みたい)

 何かを悟ったのか諦めたのか…。ふっと、寂しそうにマユミは笑った。結局、自分はそんな女なんだ。中学生のあの日、シンジは一生懸命、命がけで自分を助けてくれたけど…。

(ごめん、なさい。シンジさん。あなたは、私を何度も助けてくれた。支えてくれたけど…。でも、わたし、あなたに…なれなかった…。シンジさんみたいに、戦い続けることが、出来なかった…。
 ………あの日、あなたに、助けて貰わなければ良かった)

 もう、良い。私なんか死んじゃえ。

「あぐっ、う、はぁ………あぁ」

 心をを投げ捨てた瞬間、何もかもが軽く舞い上がっていく。気持ちよくて、細胞がバラバラに飛び散って行くみたい。早く、早く、狂って欲しい。
 狂ってしまえばこの狂った状況が当たり前になる。普通に受け入れられるから。壮絶な笑みを浮かべると、マユミは自ら積極的に怪物の…いや、父親に腰を押しつけた。より深く、強く快楽を得られるように。

「………ああ、ああ。良い……良いです…たまらなく、良いです。濡れて…悶えて、犯されて、感じてる、感じてるのぉ…。
 お父さまの、精子熱い…。熱くて、気持ち、良いです…。はぅ、うっ……あっ、ああっ………うっ。
 気持ち…いい……して、もっと。もっと………んっ、もっと、して…」
『マユミ、マユミ、いい、いい、いいいぃぃ』
「はぐぅ…、うっ、う……。き、気持ち…いいの? お……はぅ…お…お父さ、ま。あぁ…マユミが、気持ち、いいの?」

 うんうん、涎を垂らしながら何度も何度も父は肯く。内蔵をかき回すようながむしゃらな動きにマユミは喜びの呻きを漏らした。

「あ、はぐぅぅ……。う……あっ…あおぉぉっ。はげ、しぃ。お、おとう、さま。ま、マユミを、あぐっ、う、うう…必要として、くれ…るの?」
『ほし、ほしいぃ。マユミ、ほしっ』
「ああ、嬉しい…嬉しい、です。わたし、お父さま、お父さまぁ…」
『ひっ、ひぃ、マユミ、マユミ。いい? いい?』
「きゃぅ、ひゃ、やぅっ。あ、ああぁぁぁぁ…あぁぁぁぁ…あぁ、あっ。
 あん……。あん、いい…。いい…いいですぅ。お父さま、いい…。もっと動いて、動いてぇ…。壊して、マユミを壊して、お父さま…。
 シンジさんより、いい、私も、気持ち、良いです…。ううん、あの人なんて、比べものにならない…わ。あ、ああ、もっと、もっとぉ…」

 マユミの左足を抱え上げ、伸ばした右足の上に腰を下ろすと怪物は勢いよく腰を動かした。たっぷり射精された精液とマユミの愛液で潤滑は充分だ。横臥したマユミは淫らな結合部もぶるぶると汗の滴を飛ばして揺れる乳房も丸見えだ。曇った眼鏡のレンズの下で、マユミの瞳がウットリと細められた。

「あぐっ…あうっ………あっ、はあ、んふぁああ。凄い、すごいぃ…」

(もっともっと激しく突き上げて。かき回して。何もかも忘れてしまうくらいに…)

 メチャクチャに、メチャクチャにして欲しい。思い出しても辛いだけだから、シンジのことを名前まで忘れるくらいに。
 膣の弱い部分を執拗に擦られ、また体が痙攣を始めている。凄く良い…ふわふわ飛んでいきそう。また、達するんだ。そうと悟り、マユミは微笑みながら肉の喜びを受け入れた。

「あう、うっ、くっ…お父さま、ああ、わたし、またお父さまの、おちんちんで…。あぐぅぅ、ひぅぅぅ……い、イっちゃう、イっちゃいます。………はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ああぁぁ、ああぁぁぁっ。中に、中にぃ」
『マユミ、マユミぃ。うれ、うれし、うれっ…』
「くるう、狂っちゃう。おぅ……おあおぉ…。うっぐ………ぐ、はぁ、はぁ、はぁ…。光が、瞬いて、どこかに、飛ばされてく…。
 ああ……っ……んんっ。こ、怖い、こんなの、怖い。ひぃぃ…あいぃ…。は、はなさないで。お父さま、はなさないで…。
 見捨てないで、わたしを、一人にしないで。んんぅ…んっ、あんっ。や……約束、約束して。一生、私を、守るって。
 ああ、あぐっ…。約束、して、くれるなら、わたし、ぜんぶ、捧げる…から。お父さま、もっと、もっとぉ」
『おああうぅ。いい、いいいいぃぃ。す、する! マユミ、し、しない、ひとり。い、いっしょ、マユミ、ずっと、いっしょ! マユミ、ずっとひと、つ! う、うう、うれしっ』
「ああ、あぁぁ、あ、ひぃぃぃっ…。おちんちん、お父さまの、おちんちん、大きい…です。お父さま、ああ、お父さまぁぁ…。大好き、大好き」

 ガクガクと首を揺らして、狂ったように嬌声を漏らすマユミ。眼前で誘うように揺れるマユミの乳首を口に含むと、怪物はチュウチュウと赤子のように吸い付き、舌先で転がした。指の愛撫とはまるで違う刺激に、狂人のような喘ぎを漏らしてマユミは右に左に体をくねらせる。

『おう、だいすき、おいし。マユミ、の、これ、すき。…ちゅく、ちゅぶ、ちゅるるるっ』
「ああ、お父さま、お父さまぁぁぁ……っ
 はぁ、はぅ、あああぁっ! いいっ、いいよぉ…。良すぎる、感じ…すぎ、ちゃうっ! どこかいきそう、飛んじゃいそうです。
 離さないで、お父さま、ああ、あぅ…あぅ、はぅ……ふぅ、んっく。ま、マユミを、絶対に、離さないで…」
『んぶっ…ぷぁ。は、はなさない…。いっしょ、いっしょぉ。マユミ、ずっと、はなさ。お、お、おうっ! きもち、いいぃ。まゆみ、いいぃ。がううぅ、あうぅぅ。きついぃ…あいいぃ、ああぁぁ、うおぁぁ』
「お、おとう、さま…おとうさま―――――っっ!!」

 ぶしゅ、じゅぶ、じゅぶぶっ。
 狭い膣内に収まりきれない程大量の精液が、焼けるような精液がマユミの子宮を狂わせる。また胎内一杯に熱い精液の迸りを受け止め、淫魔に取り憑かれた美女は歓喜の叫びを漏らした。

「ううん、うん、うん、うあぁぁ。……は、あう、ん。
 好き、好きよ。愛してます、お父さま、お父さま、おとうさまぁ…。あうっ」

 快楽に首を振り乱し、体をくねらせて男の一物を求める淫らな女。相手が実の父親であっても、喜び受け入れてしまう。それが今のマユミの姿だった。

『まゆ、マユミ、うん、うん。もっと、もっと、する! もっと、いっぱい、だす』
「ああ、お父さま、お父さまぁ……。あうぅ、うぅぅ…。うっ、はぅ…。あ、愛して……愛して、下さい。子供、赤ちゃん、お父さまの…赤ちゃん……ああ」

 引き抜かれた父の生殖器から、残り半分の勢いよく精液が噴き出し、ドロドロした白濁液でマユミの全身を彩る。
 アクメの余韻に痺れながらも、ぽっかりと洞窟のように開いた秘所からこぼれる精液を手ですくい取ると、うっとりとした目でマユミはそれを全身に擦り付けた。ぬるぬるした精液が体を染め上げていく感触に、マユミは喜悦の笑みを浮かべる。自分の手でありながら、自分の手で愛撫しているのではないみたいに感じている。

(ふわふわ、して。雲の中で、たくさんのエステの人にマッサージされてるみたい…)

『ま、まだっ。もっと! もっと、もっと! マユミ、なか、だ!』

 どこまで、底なしなんだろう…。
 だんだんと正気を無くしていっていることを自覚し、嬉しそうにマユミは微笑んだ。受け入れるように両手を広げると、覆い被さってくる父の背中をきつくかき抱いた。父の薄い胸板に胸が押しつけられ、へしゃげる様に形を変える。柔らかな乳房に沈む硬く凝った乳首の感触。
 どうせ避けられないなら、積極的に受け入れた方が楽で良い…。気持ちいいのは、嘘じゃないから。

「あああぁぁぁっ! お父さまの、胸に、乳首がこすれ、て………うううぅ。それに、お、奥に、当たってる…!
 お父さま、お父さまの、おちんちんが。当たって…。ああ、抱いて、抱きしめて、そのまま、動いてっ」

 これは結婚式。
 一日中かかって終わらせる、互いに深く愛し合う実の親子でないと出来ない至高の儀式なのだ。
 父は何度も何度もマユミを愛撫し、貪欲な剛直で蜜壺を犯し、大量の精液でマユミを染め上げる。全身を精液で濡らし、髪を搾ると滴る程に精液で染め上げた時、儀式は完了する。
 粘つき滴る精液をウェディングベールに、全身に張り付く乾いた精液をウェディングドレスに…。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…。はぅぅ、死ぬ、死んじゃう…。
 …………お父さま、ううん、ああ、大好き、大好き。世界で、一番、好き。好き、好き…。一所懸命、お父さまにつくします」
『マユミ、マユミぃ。もっと、もっとぉ…もっと、だす、だすぅ』

 最後に悪臭紛々たる父の薄い唇に口づけをして、怪物の父と人間の娘の結婚式は完了するのだ。

「んちゅ、ちゅ、くちゅ、ちゅ…。はぁ……あ、ああ、嬉しい。これで、私たち…。親子ってだけでなく、正式な、夫婦に…」

 もはや悪臭なんて気にならない。父への愛を肯定したマユミには、父の全てはマユミの命以上なのだ。
 互いの唾液をたっぷりと交換する濃厚な口づけをかわし、唾液の糸を引きながら唇を離した時、マユミは魂を売り渡す悪魔の儀式の本質を悟った。教会とかでやってる結婚の儀式なんて、全部上っ面をなぞっただけのおままごとだ。本当の、結婚とは文字通り魂を結びつける行為なのだから。

『うん、うんんっ。マユミ、マユミ、しぬまで、はなさ、なっ』
「ああ、お願い、絶対に、離さないで…。私を一人にしないで、下さい…。そうしてくれるなら、わたし、なんだって、お父さんの子供だって、うんじゃいます、から」

 もうマユミは地上でのことも何もかも忘れていた。
 いや、覚えていたけど、考えないようにしていた。だって、ちらりとでも思い出したら…。
 自分を見捨てて姿を消したアスカのことは勿論、レイも、マナも、結婚を夢見た相手だったシンジのことも忘れていた。正気を失った惑乱の感情の中、マユミは何をするでもなく考える。

(ああ、どうして、私、寂しかったからって、シンジさんみたいな人を好きだったのかしら? 優しくしてくれたから?
 人を見る目が無かったわ、私。結婚の話題を、あからさまに避けるような人だったのに…。酷い、不誠実な人なのに気づきもしなかった。わたし、時間を無駄にしちゃった…。お父さまを、探すこともしないで)

 父の動きに合わせて腰を押しつけ、シンクロして動かすと今まで以上に快楽が溢れてくる。意識して下腹に力を込めると、きゅう…と膣が収縮してゴリゴリと硬くなった亀頭部分が、膣の内奥を刺激してくる。落ちることの出来ない絶頂の連続に、喉奥から絞り出すようにしてマユミは喜悦に満ちた美声を漏らした。

(きっと、きっと、そうよ。あれは、初恋の人相手に感じた、ハシカみたいなものだったのよ。ああ、私馬鹿だ…。シンジさんみたいな人に、処女を捧げちゃうなんて…)

 後悔に涙が一滴こぼれた。
 だけど、もう大丈夫。父親は…いや、夫はそんな小さな事にはこだわらない。マユミが過去を反省し、全身全霊で愛せば、同じく全身全霊で愛してくれる。この狂った世界から守ってくれる。

「うふ、うふふふ。あははははは、ああ、お父さま、お父さま…ああ。ああああぁぁぁ」

 もう何度目かわからない痙攣でマユミは全身を震わせはじめる。毒々しい程に充血した秘所からは愛液と精液の噴水が溢れだした。

「あううぅぅっ! お父さま、ああ、また、一杯、一杯…」
『おおおっ、おうっ。あうぅぅ、まゆ、おぅ、おんな、おん、なぁ。あな、いい。いいぃぃ』

 再び、怪物はマユミの胎内に血液混じりの精液を迸らせた。快楽に狂乱した彼の頭は、もうマユミだから抱いているのか、女だから抱いているのかそれすらもわかっていないだろう。
 このまま死ぬまでマユミを自分色に染め上げるのか、それとも無限に思えた彼の性欲も収まる時が来るのか…。
 答えは誰にもわからない。

 マユミにとっては、どちらが幸せなのだろう。

 前者なら、数刻前まで怪物が隠れていた暗がりで、物言わぬ骸となって横たわる若い女と同様、1両日中に死ねるだろう。
 だが、後者だった場合…。一時の休息の途中で、一時的でしかない狂気に陥っていたマユミは、きっと正気を取り戻す。いつ終わるとも知れない、真の狂気である永続の狂気へはそう簡単に墜ちることは出来ない。

 正気に戻るその度に、マユミは背徳の快楽に身も心の苛まされるのだ。
 犯されるたびに泣き狂い、犯されてる最中に快楽にむせび泣き、自ら父親の精液を受け入れる…。
 そして狂えなかったその時は、真の地獄が待っているのだ。

「ああ、お父さま、お父さま…気持ち、良いよぉ…」

 せめて、一時的でも快楽に溺れている時だけは、幸せを感じていることが救い…………………なのだろうか?

 答えは、誰にもわからない。






初出2006/07/31 改訂2006/11/18

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