03.MAGMADIVER

浅間山火口内に使徒の幼生が発見された。
続けざまの使徒襲来において、初の攻勢のチャンスである。

「失敗は許さんぞ」
「左様、くれぐれも慎重に頼むよ」

ネルフは上部組織である人類補完委員会の許可を取り付け、この捕獲に乗り出したのだが――

「イヤよ。冗談じゃないわ」

修学旅行で出掛けていた沖縄から急ぎ連れ戻されたチルドレンを前に、出撃前のミーティングを行っていたところがアスカのこのセリフである。
ただでさえ彼女の我侭と、何故か妙にその発言に寛容な―― 一応渋面を作っては見せるのだが―― 上層部に不満を抱えていたミサトは激発した。
そもそもこの修学旅行とやらも、本来は待機を優先させてキャンセルさせる筈だったところを、アスカがミサトの頭越しに司令部と話を付けてゴリ押ししてしまったものだったのだ。

「アスカっ! 命令よ、従いなさいっ!!」
「いーやっ。何でこんなカミカゼ紛いに付き合わなきゃならないのよ。アタシらの仕事は使徒の殲滅。アンタも作戦立案が仕事だったら、もうちょっと実効性の見えるプランを立てて見せたらどうなの?」

『ハハン?』とこましゃくれ度もすこぶるな態度。
納得が行けば従ってやると、要するに葛城ミサトの仕事を信用していないと言っているも同然だ。

「アンタね……」

低く抑えた声も、怒りに震えるのまでは止められなかった。
大西洋での使徒遭遇に続いて前回と、アスカはとかくミサトを軽視するような言動を取り続けてきている。
使徒殲滅の成果と、やれ指揮管制が混乱していただの、現場の判断だのと賢しげに言を弄し、直接の衝突こそは回避されていたが、ここに来てミサトも良い機会だと態度を決めていた。
ボスが誰であるのか、この生意気な小娘に思い知らせてやらねば……。
そうでなくては組織というものが成り立たないのである。

「私は上官で貴方達は部下。命令に納得する必要はないの。従うのが貴方達の仕事―― 従う義務があるのよ!」

さもなくば抗命罪で営倉に叩き込むと、そこまで言い切ったミサトをアスカはせせら笑った。

「無いわよぅ?」
「ふざけてんじゃっ―― !!」

緊迫した空気におろおろとするシンジ。
我関せずといったレイ。
そして何事か諦めたような、それでいて忌々しげな視線でアスカとミサトのやり取りを横にしているリツコ。
いよいよ頭に血の上った体のミサトがアスカの拘束と、その前に一発もくれてやろうと腹を括ったその時、

「何てったって、そういう契約だからね」

『アタシに限っては』と、相も変わらず黒尽くめを貫いているその懐から取り出した書類がミサトに突き付けられた。
法外な報酬についてや一尉待遇として扱う等と、長々条項が連ねられているが、この際問題となるのはその一部。
そこには確かにアスカの命令拒否権を認める一文があり、ネルフ総司令名義でのサインが印されていたのである。
―― ちなみに、わざわざ使い慣れない日本語を使ったアスカのサインはどうしようもなく汚かったのだが。

「納得したかしらん?」

鼻高々と、さながら葵の御紋をひけらすような得意満面の勝ち誇りっぷり。

「ど、どういう事よ……リツコぉっ!?」

自分よりも遥かにネルフという組織の詳細に通じている筈の親友は、食って掛かったそばから、やたら後ろめたい顔で目を反らしたのだった。

「事情があるのよ……」
「そんなっ! それじゃ組織が成り立たないじゃないのよッ!!」
「分かんなくても従うのが仕事なんでしょう〜? ガタガタ言ってないで受け入れたら?」
「クッ……!」

抑えなさいと親友の目も告げている。
部下の前で恥をかかされた事は屈辱であるけれども、これ以上に冷静さを欠いた姿を見せるにわけにもいかないのが組織人としてのミサトである。
そのことは例え頭に血が上っていても分かっている。
この場はと歯軋りしながらも引き下がるしかない。
その分は後でたっぷり陰険に、ネチネチじっくりと思い知らせてやると心に誓っているのだが。

(ケツの青いジャリが舐めクサってからに……)

ネルフにおけるアスカの立場は、自分が考えていたよりもどうやら強いものであるらしい。
その事実を知らされていなかったのは憤懣やるかたないところであるが、組織に置ける上下関係が決して肩書きや組織図上の順位権限範囲で決まるものではないとミサトは知っていた。
なにしろミサト自身が若すぎるほど若い、さらに女性の身でネルフの作戦担当を務めているのだから。
いくらでも思い知らせてやる機会はあるというものだ。
とりあえず、更衣室から着替えをこっそり奪い取っておくところから始めようかと、女学生のイジメのような事を考える。

さし当たって今回の作戦担当については、サードチルドレン=シンジに白羽の矢が立てられた。

―― って、ええっ!? ファーストじゃないのっ!?」
「特殊装備は、プロトタイプの零号機には合わないのよ」
「ええええ〜っ!?」

勿論、今更自分がとは言い出せないアスカである。
ならばサポートをと立候補してはみたのだが、

「いい加減にしなさい、アスカ。あなたに作戦内容について口出しする権限まであるわけじゃないのよ」

今しがたの聞かん坊っぷりが災いしての本部待機と相成ってしまったのだった。



◆ ◆ ◆



『助けてっ! 助けてよミサトさん!! 綾波ーっ!!』

現地をモニターしている映像の中では、死に瀕したシンジの絶叫が続いている。
ミシミシという不吉極まりない軋みは、予定深度を越えての深さへと使徒に引きずり込まれた、その初号機の耐熱耐圧殻が上げる悲鳴だろう。

「何やってるのよシンジっ! 熱膨張、熱膨張よッ!!」

必死のアスカの声も届くものではない。
なにより例え届きはしても、そのキーワードから何を理解できるというのだろうか。

「こんなコトになるなんてっ……。シンジぃ……!!」

無理を通して修学旅行に出かけた。
そこで、すっかり怯えの目で見るようになってしまったシンジとの距離を何とか詰めようと、引っぱり回すようにして遊び呆けていたのだが……。
浮かれていたアスカは、彼女が記憶している「かつて」の戦いの中で勝利の鍵となったその会話を繰り返しておくことに、大した必要性を感じなかったのだ。

「いっ、いかん……! 何をしている葛城一尉! 急いで初号機を引き上げろ!!」

そしてまた、周囲の懸念を押して使徒の捕獲を実行させたゲンドウも、今やダラダラと大量の脂汗に背を濡らす破目に陥っていた。
レイの「予備」であるシンジの事などはどうでも良いが、初号機のコアが失われては大いに困るのである。
元々は、失おうともさして痛いわけでもない弐号機とセカンドチルドレンの組み合わせを使う予定だったのだ。
その理由についても言い含めておいたつもりのリツコが、アスカの勝手をあっさりと認めてしまったのも計算外なら、幼生に過ぎなかった筈の使徒が突然孵化し、たちどころに戦闘を仕掛けてくるまでに成長するのも予想外だった。
初号機のボディは、例えN爆雷を投下しようとも硬くコアを守ってくれようが、さすがにマグマの底に沈んでしまっては無事で済むまい。

「だから本当に良いのかと言ったのだ……! これでは……!!」
「それどころでは無いだろう! 葛城一尉っ、聞こえているのか! 早く初号機をっ……!!」
『しかし、パイプが切断されていて、後はシンジ君の頑張りに期待するしか……ッ!? レイっ!?』
『碇くん、今っ……!!』
『馬鹿な……。止めなさいレイっ! B型装備のままの零号機では耐えられないのよ……!!』

戦端が開かれた早々に初号機へとプログナイフを投げ渡して以来、火口直ぐに控えていた零号機。
救いを求めるシンジの声に応えてか、その暴挙としか思えぬ決死のダイブに飛び込んだ姿を、皆は一様に信じがたい思いで見詰めていた。
普段から意思の希薄さを漂わせ、例え同僚の死にも動じるまいというイメージで受け止められていたのが綾波レイという少女だったのだ。
だが、しかし――

『うわぁぁぁぁぁぁぁ……! 母さぁぁぁ―――― ん!!』

初号機と零号機、二体のエヴァンゲリオンを飲み込んで浅間山の火口が火柱を吹き上げる。
その様子を淡々と映し続けるモニターを、アスカは呆然と眺めているしか出来なかった。



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スパシン物・鉄の掟、消化メニュー

高CQ、博士号、直接シンクロ、高笑い、名前変化、聖痕、特殊能力(ATF、眼力悩殺スマイル等)
爪先から頭のてっぺんまで漆黒エヴァ二人乗り、俺理論全開、料理の鉄人、名前だけの訳わからん必殺技
命令拒否権いちおくえん請求、ハーレム、刀から炎、ピアノ線、指弾、レイたん人形、元傭兵
MAGIへの最高ランクアクセス権、下逸も真っ青な大金持ち碇家当主、もしくは次期当主
私設特務機関●○××総司令官、最低でも尉官以上の階級、俺キャラマンセー
コアなアニメ及びエロゲー準拠のオリキャラ、使徒っ娘、やたらと無能な外道電柱、赤毛猿
無能かつアル中なホルスタイン牛、改造大好きマッド、単にヘラヘラ笑っているだけの無精髭
ショタもしくはズーレな手下、超熱血馬鹿、潔癖性馬鹿、キモイ軍ヲタ、狂牛病メガネ、忘れられたロンゲ
「左様」以外に台詞を吐かない敵役、強化型ナルシスホモ
サンドバック、もしくは糸でカッティングされるチンピラとヤンキー
決まって虐殺される保安部か諜報部の黒服さんと戦自の隊員さん
形だけでも出るか完全無視、たまには大悪人になるJA作った人
二、三行の戦闘表現、もしくは特大フォントの擬音だけであっさりと死んでしまう使徒の皆さん

※このメニューは最低スレpart5のレス185に準拠しています。