04.The Day Tokyo-3 Stood Still

「ふっふんふーん、ふん、ふん……。ふ、ふぅ〜ん……」

テンポ外れの鼻歌が、真っ暗な通路にへろへろと。
お供に響くのは、これまたへっぴりトボトボな足音が一人分。

「……ふ、ふんのふんの、ふ〜ん! ふふん、ふんふん……。ふん、ふん……ふ……。……ううっ」

そして、とうとう黙り込んでしまう。
目尻が赤くたってアタシ泣いてないもん―― と。只今、ダンジョンエクスプローラーinネルフ地下施設なアスカなのであった。



◆ ◆ ◆



国連直属の特務機関ネルフとは、これでもかというくらいの機密と内緒事と後ろ暗さのカタマリである。
ついでに金持ちで権力持ちで声もでかい。
ムカツク―― と周囲に嫌われる要素はほぼ完璧なのであって、その秘密を探り出してやろうと、日夜必死に任務に励むスパイな皆さんが結構な数居たりするのだ。
しかしながらこれが結構手強い上に、事実上の世界征服達成状態的ヒミツ結社―― ゼーレが背後に居たりするものだから、各方面共々に、いまいち何も掴めきれずにいるのが実情であった。
バレる、捕まる、イビられる。場合によっては日活Vシネロマンなビシバシも込みで、とにかく痛ましい犠牲の数々続出。
そんなこんなな苦労の果てに、日本政府内務省が、乾坤一擲の大作戦に打って出たのが本日の大停電だった。
ここまでしてでも、今度はなんぼか掴ませてもらいまっせという、結構背負っていたりするチャレンジなのであったが―― これを覚えていたが幸いに、利用してやる気満々だったのがアスカである。

どうせ一人ぼっちで、ヒマしてたし。
ついでに上司と折り合いが悪すぎる職場環境だったりして、ストレス貯金は高利回りで上々運用中だったりだ。
なるべく考えないようにしている鬱な事件もあったばかり。

―― だからこそ、面白さげな事でも探してないと、最近滅入って滅入ってやってられないわ、と。

「いい歳してやる事セコイのよね。なにかってーと無視するし、アタシだけランチに誘わないし……。こないだプラグスーツに虫入れてたのも、絶対あいつよね……!」

うなじの下の辺りで『モゾモゾ』とやられた感覚まで思い出してしまったのか、相変わらず黒ずくめワンピのアスカは、ぶるっと背中を震わせた。
振り払うようにぶんぶんと首を振る。杖代わりに拾ってきた金属パイプで床もガッツンガッツン叩く。
アスカはこのところ躁鬱が激しいのだ。

「どーも、ミサトに入れ知恵してんのリツコっぽいのよね。何かいぢめるネタの一つも転がってないかと思ったんだけどなぁ……」

結果はただの迷子が一名。
事前にそれなりに充実した地図を用意したり、構造推測も立ててはいたのだが、生憎自分の現在位置を見失ってしまっては、折角のマッピングも意味無しであった。

「マズイわよねぇ……。ひょっとしてもう、結構近付いてきてたりするのかしら? 使徒――

心細そうに呟いたアスカは、そこで『あら?』と、通路の先に気配を捉えて目を輝かせた。

「ラッキー! とりあえずケイジまでの道を聞いて、急がなくっちゃ!」

変な場所を歩いていた事については、怪しまれないように『迷子になっちゃって、テヘ』でいこうと。念入りに猫を被ってから飛び出したのだが、

―― !?」
「……誰だっ!?」
「アンタ達っ!?」

アスカに負けず劣らずの黒尽くめルックな集団Aと、そして集団Bも一瞬ギョッとしたことだろう。
―― が、そこは流石のプロフェッショナリズム。
緊迫の睨み合いに突然割り込んだ怪しい少女を(なにしろ黒尽くめで、足下はゴツ過ぎる武闘派ブーツだ)、内務省コマンドの皆さんも、ネルフ保安諜報部・ダンジョンキーパーズの皆さんも、考えるより先に引き金を下ろす事で対応したのだった。



◆ ◆ ◆



T字路の左右から突き刺さるようにアスカに命中した銃弾が、その絶大なノッキングパワーを遺憾なく細身の肢体にブチ込み届ける。
当然、のけぞる、吹っ飛ぶ、宙に舞う。金糸のロングヘアが奇麗になびく。
『ゲフ……』と、くの字に折れた姿勢のままでくるくると壁に叩き付けられるアスカは、その時点で既に戦闘圏内的には「死体=障害物」の一つ扱いだ。
ネルフ側はどこかで見掛けた顔だと思いはしたが、結構必死な戦闘中なのでサクっと頭から追い払った。
そのまま目もくれずに打ち合う両勢力のヘッドギアが固めた鼓膜を、しかし唐突に大音響なソプラノが、かぁんと高く震わせた。

「イッタイの、よぉ〜〜〜〜っ!!」

涙目で起き上がるアスカは、まだこの時点では「トドメが足りなかった障害物未満」だった。
しかし、無造作に噛ました筈の追い討ちを、このクソ怪しい少女は今度はかろやかに躱して飛び掛って来たのだ。しかも、一瞬ノクトビジョンの視界から消えるほどの高速で。

「あべし!」「ひでぶっ!」「たわば……!!」

ブン回された金属パイプが、瞬く間に三人の内務省コマンドをなぎ倒した。
思いがけない脅威に背筋を冷やっとさせたコマンドの仲間達が、それでも冷静にふり抜いたアーミーナイフを白刃止めに。金属パイプを構えたアスカが、にやりと犬歯を光らせる。

「三下が好き勝手してくれて―― !」

ブーツの金属底が蹴り剥がした間合い。黒いスカートの裾が渦巻くように回転した時には、もう侵入部隊のメンバーは一人しか残っていなかった。

「アタシを誰だと思ってんのよ! ええっ!?」

『知らねぇよ!』と、背中の隙を狙った最後のナイフに振り向きもせず。細腕の一撃が、アッサリこれをへし砕く。
驚きに見開かれた目と目との間に、チタン合金製の刃をもガチンコ負けさせた極悪なパイプ棒がめり込んで。それが内務省コマンド部隊の壊滅だった。

「あら、結構調子良い感じじゃない? この得物」

ほど良くしなって、良い感じに硬い。
アスカがニンマリ気に入ったその金属パイプは、実はエヴァの装備用の、今となっては大変に貴重な無重力下合金製だったりした。
「超硬質無重力合金ガリオネット」と言うのだが―― ともかくその恐ろしく高価な金属パイプを肩に、アスカは呆けたような保安部員達に振り返った。

「馬鹿な……」

愕然と呟く男の前で、よくよく見るとセカンドチルドレンでしかありえない顔立ちのこの少女は、尚も散発的に続く銃撃の前に、いとも平然と突っ立っている。
コマンド部隊を蹂躙する途中からはもう面倒になったのか。避けもしないでいた全ては、黄金色に煌く光の壁が受け止めていた。

「……ATフィールド!?」
「違うわよぉ?」
「何を言う! ソレはどう見てもっ!!」

元より怪しさ爆発で、保安諜報部内でも要警戒人物だったアスカを、既に彼は味方として見る事は出来なくなっていた。
何より、ここ暫くの戦いでネルフの人間に染み渡った、ATフィールド即ち使徒という構図が思い浮かぶ。

「これは、そう……魔法よっ!」

『シールドとかシェルとか、そんな感じ?』と、偉そうな顔でのたまうアスカの言葉には、まるで全然真実味というものが欠けていた。

「ふざけるな! なにが魔法だっ!!」
「だってホラ、服も黒いし。これでも昔から有名だったのよぅ? 未来を予言してみたりとかしてね」

言うなれば――

「魔法少女アスカってやつかしらん? ちょっとプリチーよね?」

『ほっほっほっほ……』と、その気で笑うアスカに、真面目な公務員の人はやたらムカついた様子だった。
騙されるかこのヤロウ。口より手より、足が先に出る野蛮猿が、変身の一つもせずに何が魔法少女だ。中途半端にパチモンなカッコしやがって、俺のハーたんを侮辱するか……! とか、とか。それはもうエライ剣幕。
かなり本気でブチ切れたらしいそのむさ苦しい男達とは、結局有無を言わせぬ展開になったのだった。

―― さて。そうこうしている余裕がアスカにあったのも、この時の使徒に貧弱といった印象しか残っていなかったからだったのだ。
とは言え、さすがに時間を食い過ぎたかと急ききってケイジに駆けつけたアスカが見たものは、ただ一機のエヴァンゲリオンにやはりあっさりと敗北した使徒の姿だった。

「零号機? ……ファースト!?」

そんなまさかと、

「黒コゲになった筈なのに、どうして……。アレで生きていたって言うの!?」

その真新しいブルーの装甲を見上げて立ち尽くすアスカは、『じゃあ……』と唇を震わせた。

「し、シンジは……?」



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スパシン物・鉄の掟、消化メニュー

高CQ、博士号、直接シンクロ、高笑い名前変化、聖痕、特殊能力(ATF、眼力、悩殺スマイル等)
爪先から頭のてっぺんまで漆黒エヴァ二人乗り、俺理論全開、料理の鉄人、名前だけの訳わからん必殺技
命令拒否権いちおくえん請求、ハーレム、刀から炎、ピアノ線、指弾、レイたん人形、元傭兵
MAGIへの最高ランクアクセス権、下逸も真っ青な大金持ち碇家当主、もしくは次期当主
私設特務機関●○××総司令官、最低でも尉官以上の階級、俺キャラマンセー
コアなアニメ及びエロゲー準拠のオリキャラ、使徒っ娘、やたらと無能な外道電柱、赤毛猿
無能かつアル中なホルスタイン牛、改造大好きマッド、単にヘラヘラ笑っているだけの無精髭
ショタもしくはズーレな手下、超熱血馬鹿、潔癖性馬鹿、キモイ軍ヲタ、狂牛病メガネ、忘れられたロンゲ
「左様」以外に台詞を吐かない敵役、強化型ナルシスホモ
サンドバック、もしくは糸でカッティングされるチンピラとヤンキー
決まって虐殺される保安部か諜報部の黒服さんと戦自の隊員さん
形だけでも出るか完全無視、たまには大悪人になるJA作った人
二、三行の戦闘表現、もしくは特大フォントの擬音だけであっさりと死んでしまう使徒の皆さん

※このメニューは最低スレpart5のレス185に準拠しています。