02.Both of You.Dance Like You Want to Win!

「なにやってるの? 惣流さん……」

その日、登校したシンジが出くわしてしまったのは、『んしょ、んしょ……んっとこしょーっ!』と下駄箱に何かを押し込めようと躍起になっているアスカの姿だった。

「あら、シン……サードチルドレン。グーテンモーゲン!」
「ぐぅてんもーげん―― って、で、何なの?」
「見れば分かるでしょ? ちょっと靴が入んなくってさ」
「またそのゴツいブーツ……。無理なんじゃない?」

それよりも、シンジにはわざわざ第壱中制服のデザインを忠実に再現しているらしい―― けれども生地は全て黒に変更された、彼女の怪しい格好の方が気になって仕方が無い。

「ほら、アタシって転校生でしょ。まだ制服が間に合ってないのよ。仕方が無いから前の学校のをね?」

テヘッと舌なんぞ出して見せてくれているが、ブリッ子度なら普段から『さーびす、さーびすぅ』と大安売りの某同居人女史でとっくに耐性を獲得済みのシンジなのだ。
この新たな同僚も、ネルフという怪しげな機関の構成員のご多分に漏れず奇矯にも程があるらしいと、胸の内は静かな諦観である。

(ドコの世界に喪服が制服になってる学校があるのさ……)

顔は可愛いのにな……と、人並みな思春期中学生時代には欠かせない甘酸っぱいナニかを、この街に来て以来急速にブチ壊しにされている気がしてならない。
彼は、そんな自分が『なんかジジくさくない? アイツ』と級友達に評されているのを知らなかった。



◆ ◆ ◆



「なに気取ってンだよ、テンコーセー」

『ああん?』とガンを飛ばしているのは、この新世紀にいっそ希少価値を認めて保護してやりたいくらい伝統に忠実なスタイルの不良少女さん達。
自分達に負けず劣らず気合の入ったスタイルのアスカを同級に迎えるに当たり、緊急会談の必要性を感じた彼女達が、早速某所女子トイレに場所をセッティングした次第である。
かくして多対一の強面交渉に臨んだ皆さんであるが、一向に怯えてくれる様子の無いアスカに「優しく撫でるくらいの歓迎」から数段階用意していたオプションの中でも、かなり過激な選択肢を選ばざるをえない事態となっていた。

「ハン! なんでこのワタクシが、あんた達ごときにヘイコラらしてやんなきゃならないのかしら?」

胸をそらし気味に、見下し光線発しまくりなアスカ。
その態度はどう控えめに見てもエリート様意識丸出しで、あまり褒められたものではない。

「シメちゃおっか? ね、シメちゃおっか……?」
「そうさね。アンタに恨みはないんだけどさぁ……、そこまで強情張られるとアタイも面子ってもんが立たないんだよ」

モゴモゴとアスカを威嚇するのは、特に風邪を召しておいでではないのにマスク姿のリーダー嬢だ。
一見これも伝統に忠実な不良ルックを貫いているように見えるが、実のところを言うと単なる花粉症対策なのであった。
これは特に珍しい事ではない。
元々社会環境の汚染が進んでいた上に、あまり環境に優しくないアレコレを後ろめたくも杜撰に取り扱っていた報いが、セカンドインパクトの際の二次被害としてそこらにブチ撒けられてしまった世の中に育った世代である。
アレルギー持ちやら過敏症やら、生まれながらのハンデを背負った子供達の割合はかつて無かったほど。
例えば綾波レイのようなアルビノさえも、もはや珍しいものでは無くなっていた。
復興も道半ばで、余裕はまだまだ遠いのが現実。
片親が居ない家庭も極当たり前で、はっきり言って『グレてやる』などという甘えは、却って逆に余程恵まれた環境でなければ通らないのがこの時代である。
そんなわけでこの不良さん達、中学校の中でもかなりの白眼視扱いで浮いてしまっていた。
それだけに仲間内の結束は大切だ。
はぐれ者同士寄り添っているのだから。

ここで強く出なければ、皆に舐められてしまうやもしれぬと、後には引けないリーダー嬢。
そこまでするつもりじゃなかったんだけど……悪いのはアンタだからね等と、一応ちゃんとあった良心に言い訳しつつ得物を構える皆さんである。
こうなるともう集団心理で、『便器を舐めさせるくらいじゃ収まんないよぉ?』とか、『ウリやってもらおうか。ウリをさぁ』等と笑いを立てて、自分達が痛い目に遭った事がないだけにナチュラルに残酷になれるのがこの時分。
―― しかし、他人の痛みに躊躇がないのは、相手もどっこい以上だったのである。

「あら? バタイフライナイフにチェーン? ……良いわねぇ。怪我じゃすまないって感じよね」
「済むワケないじゃん。アッタマわりぃんじゃねぇのぉ〜?」
「オーケイ、よく言ったわ。これでつまり、正当防衛ってやつよね」

ニヤリと笑って、我が意を得たりとでも言うような表情。

当方に迎撃の用意アリ……!―― って、いっぺん言ってみたかったのよ!!」

バッとスカートの裾が跳ね上げられた。
露になったガーターを付けた太腿と黒いショーツに、同性ながら彼女達が『お……!』となった次の瞬間、アスカが腰の後ろから引き抜いた『オモチャのテッポーかよ。バッカじゃねぇの?』が、シュコココ……と、やはり本物とは思えない気の抜けた音を立てた。

「…………!?」

自分の身に何が起こったのかも分からない。
悲鳴にもならない喘ぎを喉から振り絞って、瞬く間になぎ倒された少女達がトイレの床でのた打ち回る。
チャリン、チャリン……と排出された薬莢がタイルの上で跳ねて踊り、その音が途切れてようやく、リーダー嬢は自分達が「撃たれた」のだという理解に至った。
『マジかよ……!?』ってなもんである。

「あ、もう弾切れか。やっぱ、フルオートだと早いわねぇ」

遅れ馳せながらの悲鳴に満ち満ちた中で、同年代の少女達に平然と銃をブッ放したアスカは、これまた平然とした顔で撃ち尽くした弾倉を交換している。

「素手が相手なら刃物。刃物相手にゃ鉄砲でってね。勝ちに行くなら、賢くあるべきだと思わない?」

『日本の喧嘩は遅れてるわねぇ』等とは、実にアメリカ国籍らしいうそぶき様である。
改造制服も最早大量出血で真っ赤に、チアノーゼまで起こして死に掛けているという悲惨極まりない状態にある少女達。
上機嫌で戦果を睥睨するアスカだが、誰も軽口に応えてくれない事は少しばかりの不満。
ヤラレ役ならそれらしい捨て台詞とか恨み言とか言ってくれないとと、気分としては印籠を出す前に片が付いてしまった時の水戸黄門のようなもの。
本当ならば『だぁれが便器を舐めるって? あぁん〜?』と逆にやらせてみるとか、『死にたくなかったら、這いつくばってこのワタクシの慈悲を請うのね。ホーッホッホッホ!』とかやってみたかったのだ。
それどころでないほどに少女達が脆かった、或いはアスカの暴力が過剰だったのは計算外。
つまりちょっと物足りないわけで、

「つまんないわね……」

折り良く襲来した使徒の事を報せに来たシンジがこの惨状を目撃して卒倒してしまわなければ、もう一本弾倉を空にして「物足りる」ようにしていたかもしれない。

結局、屠殺場紛いと化したトイレから避難のドサクサに紛れて搬送された不良少女達は、幸運な幾人かがネルフの息の掛かった病院で長くベッドに縛り付けられて過ごす事となり、残りは使徒襲来における犠牲者として処理された。
紀伊半島に上陸しようとした使徒については、欲求不満をぶつけるような弐号機の前に「美しく、無駄なく華麗に」嬲り殺しにされ、折角の二身分離攻撃も効を奏することなく終わっている。
ネルフ上層部が眉間に皴を寄せるような弐号機の―― 引いてはアスカの異常な強さが目立ったばかりであるが、使徒をさっくり粉砕してのけた直後、ふと何かを思い出したかのようなアスカが『しまった〜!!』とエントリープラグ内で一頻り身悶えしていたのは完全な余談である。

ちなみにこの一件以降、シンジはあからさまにアスカ相手には腰が引けてしまうようになり、またも何事か期するところのあったらしい彼女をして歯噛みさせることとなった。



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スパシン物・鉄の掟、消化メニュー

高CQ、博士号、直接シンクロ、高笑い、名前変化、聖痕、特殊能力(ATF、眼力悩殺スマイル等)
爪先から頭のてっぺんまで漆黒エヴァ二人乗り、俺理論全開、料理の鉄人、名前だけの訳わからん必殺技
命令拒否権、いちおくえん請求、ハーレム、刀から炎、ピアノ線、指弾、レイたん人形、元傭兵
MAGIへの最高ランクアクセス権、下逸も真っ青な大金持ち碇家当主、もしくは次期当主
私設特務機関●○××総司令官、最低でも尉官以上の階級、俺キャラマンセー
コアなアニメ及びエロゲー準拠のオリキャラ、使徒っ娘、やたらと無能な外道、電柱、赤毛猿
無能かつアル中なホルスタイン牛、改造大好きマッド、単にヘラヘラ笑っているだけの無精髭
ショタもしくはズーレな手下、超熱血馬鹿、潔癖性馬鹿、キモイ軍ヲタ、狂牛病メガネ、忘れられたロンゲ
「左様」以外に台詞を吐かない敵役、強化型ナルシスホモ
サンドバック、もしくは糸でカッティングされるチンピラとヤンキー
決まって虐殺される保安部か諜報部の黒服さんと戦自の隊員さん
形だけでも出るか完全無視、たまには大悪人になるJA作った人
二、三行の戦闘表現、もしくは特大フォントの擬音だけであっさりと死んでしまう使徒の皆さん

※このメニューは最低スレpart5のレス185に準拠しています。