碇シンジ寝取り道中膝栗毛


Original text:引き気味


01. 「某オオイソシティ編T」

(いやぁ〜〜。親切な人に拾って貰えて良かった)

ははっ、ははは〜♪ と、雪のちらほら舞う道で年上の女性に手を引かれつつ、シンジはご機嫌だった。

(着いた早々、ガっちゃんとはぐれちゃったんじゃねぇ……)

なにしろ、今のシンジは世界が滅んでもそれで通したという学生服を身に着けているだけ。
常夏の第3新東京市に合わせたスタイルは、ゲートをくぐり抜けたこの世界には些かそぐわなかったようで、かつて体験したことの無い「冬」という気候に唇も青くなったりと、少々辛かったのだ。
神の力とやらで都合良く対処したいところだが、はっきり言っての現状は仮免未満の習熟度。
レイが付けたサポート役無しでは如何ともし難く、たまさか通り掛かったのが、お人好しというかお節介焼きというか――そんな彼女でなければ途方に暮れていたのに違いない。

(うーん。肝心なところでご主人様の役に立たないなんて、後でガっちゃんにはお仕置きだね)

まぁ、その分を埋め合わせてもお釣りの来る出会いだったとは思うのだ。
いかにも迷子のお子様を優しく――といった感じで手を握ってくれているこの女性、年の頃は二十の半ばくらいであろうか? とにかく美人であった。
心細そうな表情を作っているシンジに、ぷっくり艶やかな唇で微笑みかける。
ワンレンのロングストレートは少し脱色していて、これでボディコンでも着ていれば、夜の盛り場を遊び回っていそうなタイプに見えたかもしれないが、落ち着いた物腰に、いかにも包容力を感じさせるその優しげな美貌。
あまりシンジの周りには居なかったタイプだ。
胸もこう……『バンッ!』と、そして腰がキュッでお尻もムチッ。
綾波やアスカとはまた違って、さすがオトナ……! とかヨダレが出るのである。
ついでに『ヘクシ!』とクシャミも出たり。

「あらあら。風邪引いちゃったかな? シンジ君」
「ふんっ、そんな薄着でほっつき歩いたりしてるからよ! まったく、こんな寒いのにどーゆー間抜けなんだか」
「こらっ、ユキナ!」
「ふ〜んだっ!」

そしてもう一人。妹らしい、なんとなく最初からシンジに非友好的であった彼女は、舌なんぞ出して見せつつ、前方へ見え始めた一軒家へと駆けて行ったのだった。
気持ちを素直に表現する、そんな少女の振る舞いは、年齢の近さもあって何となくアスカを彷彿とさせなくもない。

「ゴメンねぇ? あのコも、悪い子じゃないんだけど……」
「あ、いえ……。やっぱり女の人だけのお宅にお世話になるっていうのも……あの子が警戒する気持ちも分かりますし」
「もう、子供が遠慮なんかしないの」

今更のように申し訳無さそうな顔をする(勿論、上っ面だけである)シンジに、ダメよとたしなめるみたいに人差し指を振って見せて、

「さ、ここが私たちの家よ。上がって頂戴」
「じゃ、じゃあ……お邪魔します。ミナトさん……」

引き戸をガララ……と開ける、昭和の佇まいの玄関。「遥」と表札の掛かったその家に、招き入れる。
女所帯にまんまと上がり込んでしまったシンジと言えば、三和土に靴を脱いで揃えるミナトの屈み込んだ拍子、髪の下に覗いたうなじの白さに、内心本音の部分で思いっきりムラムラ来ていたのだった。

(良いよ、良いよ! こーゆー、落ち着いたお姉さんが打って変わってあられもないってのが美味しそうって言うか、健康的なユキナちゃんも一緒に……姉妹丼ってやつ?)

人の親切心に、思いっきり仇で返すつもり満々。最低である。



◆   ◆   ◆



遥家の食卓は、これまた実に昭和的和風の景色と呼ぶべきものであった。
玄関から、暖簾をくぐってすぐの畳敷きに、丸いちゃぶ台。普段は二人暮しだからこれで良いのだとミナトが笑うその小さな食卓を囲むようにして、彼女は心づくしの夕食を振舞ってくれた。
しきりに恐縮してみせる(まさに、して見せているだけ)シンジに手ずからご飯をよそおって、『元気を出しなさいよ、迷子少年クン!』という事であるらしい。
そんな歓迎の一方で、

「あー、もぉっ! さっきから、ええとかまぁとかハッキリしないわねぇ。男だったらもっとシャキシャキしたらどうなのよ」
「いや、その……。初めて来た町なんて土地の名前も良く分からないし……」
「今時コミニュケも持ってない。連絡先ははぐれたって言う、お姉さん? みたいな? 世話してくれてる人ぉ? それって所謂お手伝いさんじゃないの――ってのに、聞かないと分からないって言うし」

あからさまに疑惑の眼差しを向けるユキナである。

「あんた、ひょっとして潜伏中の木連主戦派残党ってことは無いでしょうねぇ?」

『どーなのよ!』っと、くりくりと良く動く大きめの瞳で覗き込んでくる。気分はスパイを尋問する憲兵だとか、そんな勢いだ。

「……まぁ、ゲキガンガーもホントに知らなかったみたいだし」
「ああ、さっきのロボットが出てくるやつ?」
「あんた木連人なみにズレてるし、間違いないと思ったんだけどなぁ……」

腕を組んでうーんと首を捻るユキナ。
合わせて、肩までの長さをカチューシャで止めた活動的な髪も右に左に揺れる。
自信満々の推理でもって、『これが証拠よ!』と、彼女曰くの木連男子なら反応せずにはいられないというアニメを突き付けてきたのだが、シンジが吃驚したのはその画面がふよふよと宙に浮いて現れたことの方だった。

「そう言えば、白鳥さんたちも初めてコミニュケを見た時は驚いてたみたいだったけどね」

ぽかんとした顔でウィンドゥを突っついていたシンジをからかうミナトの声には、何かを懐かしむような響きがあった。

「木連とどっこいのド田舎モノってのだけは確かだったわけよねー」
「これっ、ユキナ! あんまり失礼なこと言わないの」
「は〜いっ、ミナトさん」

悪びれた様子も無く、澄まし顔で返事を返事をしてみせる。
優しそうでいてちゃんと締める所は心得ているようで、ユキナをたしなめるミナトはさすが高校の先生をやっていると言うし、どちらかと言うと教師と生徒のようなやり取りだろうか。
それでもお互いが信頼し合っているのだと分かる、和んだ雰囲気だ。

(……うんうん。ユキナさんはアスカに似てるかなって思ったけど、やっぱりミナトさんは全然オトナって感じだよね)

要するにミサトと比較して、彼女には同居早々で台無しにされた『年上の素敵なお姉さん』幻想でもってときめいていたシンジである。

(料理も上手だし、なんかこう……気を遣ってくれるさり気なさなんか、ミサトさんとは比べ物にならないし。こんなお姉さんと一緒に暮らしたいよなぁ……)

なんと言ってもと、シンジの気を惹いてならないのがその豊かな胸の膨らみ。
小さなちゃぶ台を囲む至近距離で、お膳に取り分けてくれたりのちょっとした隙にちらちら、洋服の胸元から魅惑の谷間がたゆん……とシンジを誘うのだ。

(ミサトさんも大きかったけど……)

ごくんと生唾。
最早完全に「素敵なミナトさん」に対する「がさつでダメダメだったミサトさん」として引き合いにしてばかりなのだが、考えてみれば、彼女の他に赤木リツコの胸も随分立派だった。
せめてあんな結末を迎える前に、一度触ってみたかったなぁ……と残念に思えて仕方が無い。
折角の恵まれた環境を無駄にしてしまっていたと、それはスケベ心の反省である。

(そうっ! 同じ失敗を繰り返しちゃア、いけないンだ!)

少し頬染め、ぼぉっと見詰めている。そんな初々しいシンジは上辺だけ。
持ち前の女顔もあっての純情好少年の演出は、向けられるミナトに悪い気はしない――くすぐったさを与えてもいたのだが。
可愛いかもと暢気な感想を浮かべていたそのすぐ横で、当の少年が寒気がする程の具体的なプランをその夜に用意していたとは、神ならぬ身のミナトには分からぬ話で無理も無い。

「あやしい……」

じめっとした横目に警戒してみせるユキナにしても、それはどちらかと言えばミナトに優しくされるシンジを面白くないと思っていただけではあったのだ。



◆   ◆   ◆



「じとぉ……」

急遽客間として整えられた六畳間。襖に細く隙間を作って、ユキナの監視がシンジの背中に張り付いている。
『なに仕出かすんだか分からないんだから。ちゃんと寝るまで油断しないわよ!』ということらしい。

(ああっ、早くミナトさんの部屋にお邪魔したいのになぁ)

ちらと振り向きため息トホホ。

「あのさ、ユキナさん」
「何よ?」
「ずっとそこに居るつもりなの?」
「そーよー」
「僕が寝るまで?」
「もっちろん。ミナトさんに変なコトしようとしたら、許さないんだから」

(うわ、良い勘してるよ……)

ちょっと引きつりもしてみたりのシンジ。
ユキナがどこまで本気で警戒しているのかは知らないが、やましい心当たりがありまくるだけに冷や汗もかく。

聞けば遥ミナトと白鳥ユキナは実の姉妹ではないらしい。
義理の姉妹にはなれていたのかもしれないけれどと、そこには知り合って間もないシンジには尋ねるのを躊躇わせるものがあった。
それでも、血よりも堅い絆で結ばれた心の姉妹、なのだそうだ。ユキナに言わせると。
だからミナトさんは私が守ると意気込んでいる。

――その実のところ、ユキナの方をこそ気に掛けて、少し離れた自室から耳を澄ませていたりするミナトがいるのだったが。



◆   ◆   ◆



「うんうん。仲良きことは素晴らしきこと、ね」

伝え聞こえてくる賑やかなユキナの声。
あまり夜更かしをするようなら注意もしなければならないだろうと思いつつも、意外に早く仲良くなってくれそうだとミナトは頬を緩ませていた。
見張る、と言っても、ミナトの見る所ユキナのあれは、これまであまり身近に接したことの無かった同じ年頃の異性に対する興味の裏返しだろう。
人と人との巡り合わせも縁の内。シンジ少年との出会いも、ユキナにとっても好い経験になるのかもしれない。

(私と白鳥さんとも、突然だったし……)

今はもう亡きユキナの兄、白鳥ツクモ。戦時中に敵と味方でありながら恋に落ちた彼との出会いもまた、突然としか言いようの無いものだった。

(でもまぁ、ユキナはジュン君が気になってるみたいなんだけど。ね、白鳥さん……)

ベッドサイドのフォトスタンドに暫ししんみりと思い出を振り返っていたミナトは、こみ上げた寂しさを何かに紛らわせたいと――そう、例えばアルコールに――そんな気分になっていた。

(やだ。何を考えているの……?)

まさかとは思うが、あの少年とユキナの間で万が一があるかもしれない。少なくとも、二人が寝静まるまでは起きていなければ。

(それなのにお酒だなんて……)

耳を澄ます。
先ほどまでの、ユキナがぽんぽんと投げかけていたらしい声は聞こえなくなっている。

(ひょっとしてもう寝たの? それとも、自分の部屋に帰ったのかしら)

静かだが……さっきの今であまりに早いようにも思える。
それでも、もう大丈夫かもしれないと差し込んだ誘惑は、無性に抗い難い魅力となって、ミナトを立ち上がらせていた。
教育上の観点からもあまりユキナの前ではと決めていたミナトであっても、それでも飲みたい夜などに備えたボトルは本棚の奥にキープしていた。
そろそろと本棚の隠し場所に手を伸ばしながら。ミナトは、どうして今夜はこんなにも飲みたいなどと、ふと沸いただけの気持ちがこう大きく膨れ上がったのかと、その不自然さに心の片隅で違和感を覚えていた。

「……んっ、ちょっとだけにしとかなきゃね……」

その疑問も、喉に染みる味わいを楽しんでいる内に、ほかほかと火照り始めた意識の波間へと消えていく。

「うん、やっぱりもう寝たみたいだし……」

グラスを傾けながら部屋の外の気配を窺っても、ひっそりと静まり返っているだけ。
安心して、もう少しだけと湿らせた唇に重ねるミナト。
そのもう少しだけが次を呼んで、また次へと。

そんな同じ頃に、物音一つしていない筈の客間では、今まさにシンジのための布団にうつ伏せに組み敷かれたユキナが、パジャマのスボンを脱がされ、さらにパンティーも膝にまで引き下ろされたあられもない姿で喘いでいたとは、気付きもしなかった。
股間に縦すじのように切れ込んだ柔らかな粘膜を、後ろから荒馬のような強張りに貫かれて泣き悶える――そんな少女の尾を引く叫びが、まるで聞こえてはいなかったのだ。



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