「アスカ、満たされぬ愛」 ♯3 中編
 LHS廚 (あくまでイメージ)ばーじょん。



アスカが目覚めた日の朝の出来事。



「もしもし、葛城です」
『あ、その声はシンジ君かい? お早う、シズナです』
「あ、お早うございますお義父…じゃなかった、シズナさん。 いつもお世話になってます」
『はは、ヒカリを貰ってくれるんだろ? だったら《お義父さん》でも』
「そのつもりはあります。 けど、『家族』を養える自信とケジメを一つ二つ…つけてからです」
『ふむ…こっそりやってた浮気の清算とか?』
「な!?」


危うく子機を落としそうになった。 この辺はやっぱりヒカリのお父さんだな、と思うんだよね…。


「ち、違います! そんな事してません!」
『私だって男だ、その辺は理解できるつもりだし。結婚までに清算…』
「そうじゃないんです! そ、それで、何か御用ですか?」
『わが娘はいるかな? 携帯も繋がらないし、NERVはまず電話を取り次いでくれなくて』
「ヒカリなら今日は本部に泊まり込みです。 二月に一回、丸一日使って行う検査の日があるんですよ」
「成るほど…ちょっと待っててくれないか?」


受話器の向こうから『どうしようか』とか『シンジ君信用出来るし、御願いしたら?』と相談する声が
聞こえてくる。

「あの、もしもし?」
『じゃあ、君からNERVの上の人へ頼んでほしい事があるんだが…いいかな』
「はい、僕にできることならなんなりと」

軽くせき込むシズナさん。


『昨日、新佐世保で暴動があったのは知ってるね?』


確か天候不順で食料運搬船が一日遅れたのを『配給が停止されたんだ』って勝手に勘違いした人々が
暴動を起こしたらしいって聞いてるけど。


「はい。駐屯している米軍が治安協力に出動した…まさか!?」
『あ、家族の誰かが怪我したとかじゃ無いんだ…まぁちょっと近い話なんだけどね。
 実は最近新諫早も治安が悪くなってきたんで、何か間違いが起きる前に家族の中で
 唯一未成年のノゾミだけは治安のいいそっちに戻したいんだ』

話を聞いて気になったことを質問してみる。

「そういう事なら皆さんで第三に移られたほうがいいんじゃないんですか?」
『そうしたかったんだけど母さんが納得してくれなくてね。
 何度言っても『お爺さんのお墓のあるここで暮らしたい』って言うんだよ。
 母さん一人をここにおいて行く訳にもいかないだろ?
 コダマは看護士をやってるから簡単に離れたり出来ないそうだしね』
「そう言う訳ですか……判りました。ちょっと待ってくださいね……今問い合わせてみます」

充電器にささっている携帯を取って、指令代行直通をダイヤルする。
専用回線のお陰ですぐに繋がった。

『冬月だ』
「お仕事中すいません、シンジです。 …お時間宜しいですか?」
『今は特に急ぎの用はないし、十分ぐらいならかまわんよ』
「実は…」

簡単に事情を説明すると

『ふむ、了解した。その子がこちらに来るのなら我々が責任を持ってお預かりすると伝えてくれ』
「有難う御座います!」
『お父さんに私の部屋直通の番号を教えてほしい。お父さんと直接打ち合わせをしたい』
「判りました」
『ヒカリちゃんには君が伝えてくれよ?』



翌日、ノゾミちゃんの第三への『帰省』が正式に決まった。



◆ ◆ ◆




僕は今夢を見ている。
「あの日」以来、一月に一度は必ず見る夢。

「はぁ…はぁ…」

僕がアスカに対して犯した罪。 たとえアスカ自身が許してくれたとしても自分が許せない罪。
病室で彼女を汚した事。


意外に思われるかもしれないけど、この頃の僕はアスカに対して欲情なんかしてなかった。

それだけはハッキリと誓える……恋心は抱いていたけど、高嶺の花と思っていたから。
僕がアスカに釣り合うとは思えなかったし、なにより彼女が好きなのは加持さんだって聞いていたから。


その…僕も男だから…『一人で』やった事はあったよ、確かに。
でも『ネタ』に使ったのはケンスケが見つけた写真とかで、アスカを『ネタ』として考えたり
まして使った事は一度として無かった。

第一病人に対して欲情するほど当時の僕はハッキリとした性欲を誰かに感じた事は無かったんだ。

でも、アスカの胸が見えたとき、条件反射のようにアスカを『おかず』にしている自分がいた。
『行為』が終わった時、そして精液がついた手を見たとき『僕は狂ったんだ』と本気で思った。
だから…呟くしかなかった。


「最低だ……俺って」



夢と言っても自分のやった事を思い出しているのだから、その後の行動も決まっている。
アスカの体を拭いて、手を握り締めて「何で僕はこんな事を…アスカ、ごめん」と言って帰っていく。

でも今日の夢はいつも通り…じゃなかった。
手に付いていた精液が意思を持ったように集まって……今はもういない彼女の形を作り出す。
まるでインパクトの時に見たあの姿のように。

「綾…波?」
『なぜ…洞木さんを選べたの? 貴方は彼女を求めて私を拒絶したのでしょう?』
「僕は…っ!?」

今度は寝ていたはずのアスカに抱きしめられていた。
全身の力を込めて必死に引き離そうとしている筈なのに、体は逆にアスカを抱きしめていく。

(違う!僕はこんなことしたくない!)


僕の手が無造作にアスカの乳房をつかんで揉みしだいている。
力強そうに…でもどこか痛みを与えないように注意していた。

アスカがあえぐ。
一度として見た事の無いいやらしい表情をして。
ただ、夢というのは残酷で……アスカの眼は開いていなかった。
顔は目まぐるしく変わるのに、眼だけは開こうとしない。
キスをしても乳房をつかんでも股間に顔を埋めて下着の上から唇を当てても……。
ぎゅっとつぶったりする事はあっても、あの蒼い眼を見せてくれない。


それがアスカの譲れない一線のような気がして、少し寂しいと思う自分がいた。



◆ ◆ ◆




しばらく『見物』を続けていくうち、ある違和感に襲われた。
『自分』の一挙手一挙動に見覚えがあるのだ。


どこかで見た事のあるデザインの下着を完全に脱がして一度として見た事の無いはずのアスカのあそこ
−−秘所とか陰唇とかラビアとか呼ばれる所−−をじっと見つめて。
左足を僕の両足で挟んで右足を片手で抱えて。
もう一方の手で自分のモノをアスカの入り口に合わせる。



(あ、これってあの時の……)



ようやく『違和感』に納得がいった。
ヒカリとの初体験をそのままアスカでやっているのだ。


そのまま躊躇せず中へ一気に飲み込ませていく。
アスカが僕の下で眼に大粒の涙をためて痛みに耐えている。

あの時はヒカリに自分の気持ちを刻み込んで、僕の『覚悟』を理解して貰おうとしていた。
けど、改めて自分のしたことを見ているとかなり乱暴なやり方で彼女の処女を奪っていた事に
今さらながらに驚き、同時にそれでも受け入れてくれた彼女に対する愛おしさで一杯になる。


完全にアスカの中に納まったとき、あの時のまま僕は足から手を離す。
まるでそれに合わせたように彼女の足がトン、と床を蹴って体をひっくり返された。

(え!?)


確か記憶では僕が下になったのは最後の四回目のはず。

それに、アスカの後ろにいつの間にかいるのは…。

(マヤさん!?)

一度として見た事は無い筈なのに、いきなり現れた彼女もなぜか全裸だった。
そしてそんな彼女の股間を覆い隠して、おまけに突き出しているのは……。

(確かディルドー…だったよね?)

一度ケンスケが製作に関わったらしい『穢れを望むもの』に出てたのを覚えている。
でも色が違う上に、あのビデオで見たのより形も凶悪だし、太くて長くてっ?!

《さぁ、行くわよ》

マヤさんの声とともにアスカの後ろから圧し掛かってきた。
彼女のディルドーがゆっくりと押し込まれてくる。
侵入していく感覚にアスカが仰け反って、薄い膜越しに僕のモノに何かが当たる感触が………



痛いっ!!




元々何かを『いれる』構造になって無い『僕の』同じ部分に対する圧倒的な拡充感と痛み。

(僕の中にも入ってくる! 何で!?)

慌ててずり上げようとする体を一組の手が押しとどめる。
アスカの手だ。

「ひぐぅぅぅぅぅ!!」

その手に気持ちが向いた瞬間、お尻にラバーの感覚が当たって、中にあの『棒』全部が
入ってしまったのが判る。

そのあまりにひどい激痛に目が見開かれたとき、アスカの体が目に入った。

『いい表情じゃない』

体中に付いた唇の跡。
拭った筈なのに付いている精液。
『行為』の跡。

いつの間にか開いていた眼は……『紅』だった。


『アタシがいなくて寂しかったでしょ? 「寂しさを紛らわせて」あげるわ…シンジ』

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」



◆ ◆ ◆




「今日、やるわ。準備するから今日呼び出し「うわぁぁぁぁぁぁ!!」…何!?」



アスカの前で(元)ミサトの部屋の襖が開いて薄紫のパジャマを着たヒカリがドタドタと
顔を真っ青にしながら前を走り過ぎていく。
その目には解決しなければならない目的以外なにも映ってない。

障子をパンと開いてシンジの部屋に入っていく。



◆ ◆ ◆




「大丈夫!? ねぇ碇君!」

気が付いた時、僕はヒカリに抱きしめられていた。
彼女は全てを知っている……勿論『いつもの夢』の事も。

「大丈夫だよ!? また見たんでしょ、あの夢! 今のは夢なんだからっ」

いつもと違う夢といつもの通りの起こされ方。
安心させようと抱きしめるその肩越しに、携帯を手に僕達を見ているアスカの姿が…。

さまざまな想いがココロにまとわり付いて…彼女の顔を僕は見る事が出来なかった。



◆ ◆ ◆




当初心配した僕達を他所にアスカはあっさりとクラスに溶け込んでいる。
もとより彼女は外交的な性格だったし、クラスのリーダー的立場の石津さんや
クラス委員長であるヒカリの功績も大きい。

だからこそ…目立ちすぎるアスカの『挑戦状』は勿論学校でも大騒ぎになった。


「ああーっ!アスカなんで髪切っちゃったのぉ!? もしかして失恋?」
「シンジ達といい再会した知り合い達といいアンタといい…なんで失恋と取るのかね」
「だって綺麗だったよ? あの長い髪は」
「うんうん、なんかキューティクルもきれいに光っててさぁ」

黒山の人だかりの中アスカはパンパン、と手を叩いて

「心配してくれて嬉しいけど気分転換以上の意味はないの! もうこの話はおしまい!」




「『気分転換以上の意味はない』…かぁ。 正直それを信じられたらどんなに気が楽になるか」
「そうね…」
「なに深刻な顔してんのよ二人とも。 失恋じゃないって言ってるんだし心配しなくていいじゃない」
「ユリコ…昔から彼女は気丈なふりをして内に溜め込む子だからよ」
「成る程ね…確かに無理に明るく振舞ってるようにも見えるわね」
「初恋の人は私達も知ってるの…確かに元恋人とよりを戻しちゃったから「振られた」ともいえるし」

こそこそと話し合う僕らが気に入らなかったらしいアスカが叫ぶ。

「ほらそこっ!何ひそひそと…」



「あ、いや、その、アスカの初恋の相手をシンヒカが知ってるって…」

「「おおっ!」」


「もぅ!加持さんに振られたのは私が『眠る』少し前!今回は関係ない…ってシンヒカって何よ?」

クラスメイトの一人が僕達を指差して さらっと一言。

『このほのぼのお日様な『おしどりカップル』の事よ』



とうとうばれた!完全に…。
薄々気付いてはいたと思うけど、これでもう言い訳は出来ないね…。

(今夜は修羅場かな……せっかくノゾミちゃんが来る日なのに)

僕達の内心の苦悩をよそに、今度は僕たちの話題で盛り上がり始める。


「ん? そう言えばさ、何でシンヒカって付き合い出すようになったの?」
「あ、それは私も知りたい! 北高に入った頃にはもうカップル同然だったもんね」

人だかりに今度は僕達が埋もれてしまう。

「さぁ碇君、ヒカリに惚れた理由を述べたまえっ こんな機会はもう無いわ♪ 堂々と惚気るのよっ」

代表として石津さんがノートを丸め、マイク代わりにして聞いてくる。

「ちょ、ユリコってば」
「…笑顔を独り占めしたかったから、だよ。石津さん」
「笑顔?」



◆ ◆ ◆




僕が彼女を異性として意識し始めたのは、アスカがコダマさんの頼みでデートに行った時。
結婚式に参列するためにミサトさんが出かけたとき。
そして僕が母さんのお墓の前でなんとか逃げず、父さんとささやかな会話ができた帰りの事だった。

『あれ、洞木さん?』
『え? 碇君?』

僕は同じくお墓参りの帰りだったヒカリ達と出会って…。
これも何かの縁、と彼女のお母さんのお墓にお参りをさせてもらった。

『ね、ねぇ碇君。アスカはちゃんと行ってくれたかな?』
『ミサトさんに「お気に入りのラベンダーの香水を貸してくれない?」って言ってたから…
 加持さんとのデートの予習として……デートを楽しもうとは……してるみたいだったよ』

この時の僕はアスカの事を『好き』だったから、彼女がアスカにデートを薦めた『本当の理由』には
まったく気付いていなかった。

一方、僕の話を聞いたヒカリは複雑な表情をしていたのを覚えてる。
『アスカがデートの彼に好意を持てば僕がアスカを見なくなるかも』というささやかな希望と
『今の僕がアスカしか見ていない』という事実に対する何よりも痛い悲しみ…。
この時の彼女の心の中はどんな気持ちだったんだろう。

僕らの沈黙を救ってくれたのは、シズナさんだった。

『碇シンジ君、ですね。 私は洞木シズナ、ヒカリの父です。娘から貴方の事はよく聞かされてますよ』
『お父さん!?』
『娘をよろしくお願いします』

そういって軽く頭を下げるシズナさんの影からコダマさん達がヒョイ、と顔を出す。

『ヒカリ!丁度良いわ! ナオト叔父さんの所には私達で行って来るからデートに行って来なさい!
 そしてアスカちゃんみたいに楽しんでくるのよっ』
『姉さん!?』
『ボクからもお願いします。 姉、家事が忙しくてボーイフレンド作る暇…なさそうだし』
『ノゾミまで…』


加持さんだけを見ているアスカへの嫉妬だったんだろうか。
今でも…よくわからない。
他人が怖いはずの僕が躊躇いも無く、何故この一言が言えたんだろう。


『じゃあ…行こうか、洞木さん』

沈み気味だった彼女の顔がぱっ、と輝く。

『…うん、碇君…行こう!』


…夕食をお互い心配しなければいけない身だったし、ウィンドウ・ショッピング位しか出来なかったけど、少し前にしたマナとのデートとは違う『何か』があった。
お日様の光をたっぷり浴びた布団に包まれているような、そんな安心感が確かにあったんだ。

そんなデートの途中、付き合ってくれたお礼に,、そして十日ほど遅いけど誕生日のお祝いにと
僕はデパートの宝石売り場で見つけたイヤリングを彼女にプレゼントした。
それは「誕生花」というシリーズ物で、彼女の誕生日のイヤリングは二月の誕生石アメジストと
銀で作られたキンギョソウがあしらわれたもの。

『キンギョソウの花言葉は『清純な心』…洞木さんみたいだね』と言ってプレゼントしたら
『あ…ありがとう。 大事にします』と顔を真っ赤にしながら笑って…心から喜んでくれた。

今でもあの時の笑顔が忘れられない。


夕方になって、家に帰った後も頭から離れなかった。
チェロを出して弾こう、と思ったのもそれが理由。
ただヒカリの事だけを考えて弾いていたからアスカに褒められた時は正直絶句したよ。
他の女性に浮気した(と思った)所を見られた、と思ったから。

『ねぇ、キスしようか』

今だから言えるけど、あの時のキスは正直したくなかった。
聞こえてたのに聞こえてない振りをしたしね。

だからキスした後の『アンタなんかとキスしたからよっ!!』は変に納得してしまった。
アスカだけを好きな僕がしたかったから…。

でも、心の中に芽生えた想いを拒絶するにはもう遅かったらしい。
あの日から僕には、間違いなく『異性』の彼女が住み着いていた。
彼女はトウジを想っていると聞かされてたし、僕はアスカが好きだったから、気になる異性
と言うより『可愛いお友達』で終わっていたけどね。
でも、僕自身気付かない所でヒカリに対する想いはくすぶっていたんだと思う。



僕自身気付いていなかった彼女に対する想いは、
アスカの看病に協力を約束してくれたヒカリを新長崎に迎えに行ったあの日、
あの時のイヤリングを付けてやさしく微笑んでいる彼女を見て…。


何の脈絡も無く…初めて僕は彼女の事を『異性として』好きになっていた事に気が付いた。


当然僕は必死に否定したよ。
『アスカを選んだんじゃないのか僕は!』とその想いを否定しようと躍起になった。
でもそうするほどに想いは少しずつ…でも確実に膨らんでいった。
自分でももうどうしようもない位に。


ヒカリにすら教えていないけど、僕があの時アルコールを飲みまくった理由はアスカを失う事に
対してじゃなく、アスカが死ぬかもしれないんだと言う事を『ああ、そうなんだ』と
あっさり納得できてしまったから。
僕にはヒカリがいるから……と思ってしまったから。



あの笑顔を見た日から約三年。
病室での告白から八ヶ月。
僕達がくっついた事を「アスカがいなくて寂しかったからだ」と噂されているのを聞いた事がある。
そうかもしれない…けど、今の僕の気持ちに偽りは無い。



◆ ◆ ◆




「『アスカの看病、一緒に頑張ろうね』って言ってくれた時の…あの笑顔は本当に素敵だと思った。
 その時初めて彼女の笑顔を誰かに渡したくない、僕だけの物にしたい、独り占めしたいと思った。
 だから僕が洞木さんを選んだ理由は《笑顔》だったんだよ……。
 思いに気付いた場所は、ちょっと不謹慎だったかもね」

かいつまんだ僕の説明は終わった。
アスカには話していなかったけど、EVAの事(というよりチルドレンの事)に対する守秘義務のお陰で
対外的に僕らの関係は大まかに言うとこういう事になっている。


『僕達仲良し三人組が「旧第三」の戦いに何度も巻き込まれているうちにアスカが怪我で入院。
 残り二人は病床のアスカを看病しているうちにお互いを想うようになって三年がかりでくっついた』


ケンスケ達が聞いたら「俺達は?綾波は?ミサトさんは?」と言い出しそうだけど、
NERVとの関係を改めて隠すためにはミサトさんが関わった所も消すしかなかったんだ。
となるとほぼオリジナルなストーリーにするしかない…。


「成る程ぉ、アタシ達って三人とも初恋は実らなかったわけか」
「「へっ? じゃあこの二人ってお互いが初めての相手じゃないの?」」 
「中学時代アタシには加持さん、シンジにはレイって子いたし、ヒカリにもトウジって奴がいたのよ」
「ね、姉さんに恋する弟じゃないよっ!! 僕はっ」


アスカにこの事は本当に話されていなかったらしい。 目と口で三つの0を作ってる。


「アスカが眠る原因となった『大爆発』の直後判ったんだよ。 僕と彼女が姉と弟の関係だったって」


あの赤いシリンダーの中でね。


「綾波の事は確かに気にはなっていたよ? けど僕は…そう言う気持ちになった事は無いよ。
 どう言ったら判ってもらえるのか判らないけどなれなかったんだよ、そんな気にはさ」



僕にとって綾波は『透明』な存在だった。
あの笑顔を見た時から好きだったけど、恋愛の様な『いろ』を付ける気にはならなかった。
『友愛』と言ったら判りやすいかな。


(ヒカリの時とは違って、綾波には何か神聖な気がしたんだよね、特にあの笑顔は…ん?)

胸ポケットの携帯が振動を始めていた。


それは今夜の狂宴の準備が始まった合図。
そして最後の参加者、彼女の到着を知らせるために。



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