「アスカ、満たされぬ愛」 ♯2 後編
 LHS廚 (あくまでイメージ)ばーじょん。



第二新東京国際空港・国際線ロビー。

『どうして・・・・・』
『ワイ、センセの変わりになる気なんぞないし、どの道・・・委員長を女として見れん。
 今のワイが好きなんは・・・綾波やからな』
『おいおい・・・・惣流以上に碇しか見ないぞ、綾波は』
『だから、ワイはアメリカに行くんや。 三年ほどかけて男を磨き、綾波に振り向いてもらうんや。
 そういやケンスケ、お前の場合は?』
『初恋の相手って意味か? 俺は霧島だったな。 ま、ふられたみたいなもんだ』

『ごめんなさい、鈴原。本当にごめんなさい・・・』

泣く事しか出来ない私の頭をなでながら

『惣流がいるからってセンセを諦めるな、ワイは逃げ道とちゃう。
 綾波に告白出来んかったワイも人の事言えへんけど、気持ちに嘘付いてもむなしいだけやで?』

そう言い残して、彼はアメリカへ旅立って行った。


私の想いがかなう、二年以上前の事。



◆ ◆ ◆


アスカが体調を崩したり持ち直したりを繰り返すのを、私達ははらはらしながら見守っていた。
そんな日々が三ヶ月ほど過ぎた頃、、地上都市周辺で石化したように固まっていた量産機が痙攣程度とはいえ動き始めた、と言うニュースが冬月指令代行を始めとする上層部を絶句させる。


旧東京の倉庫の隅で埃をかぶっていたJAを接収の上、何とか稼動状態に持ち込んで回収。
本部内で調査をした結果、三機が生き残ったS2機関の力で再生をほぼ終了していたらしく、
ダミープラグまで再生していたらどうしようも無かった、と言う極めて危ない状態だったそうだ。


四号機の件がある以上おいそれと解体する事も出来ず、量産機は厳重な管理の元で『仮』封印と言う事になって・・・・それはまた、ある別の問題を巻き起こす。



−調査終了二日後・第二発令所-


「私が・・・チルドレン、ですか?」
「EVAを解体・封印するとしても、S2機関の安全な封印方法が判らない現状ではケイジでの監視に留めるしかない。
 その写真のような『悲劇』を繰り返さないためにも。
 そんな今の状態では、万が一の為にパイロットは機体分、つまり3人は確保しておきたいのだよ。

 そして現時点の第三においてEVAとのコンタクトが可能な人物はシンジ君と洞木君、
 君たち二人しかいないのだ。まさか病床のアスカ君にやらせる訳にもいかないのでね。
 すまないがお願いでき「やります。是非やらせてください」・・・本当かね!?」

「ほ、洞木さん!? 自分が何を言ってるのか、判ってるの!?」

「碇君達は私やみんなを守ってくれた。今度は私が碇君達を守る番だと思うの。
 私に出来ると言うのなら、是非やらせて下さい」

碇君との「絆」が作れるのなら、と私はその話を受けた。
   ・・・・そう、まだ碇君の事を私は諦めきれてなかったのだ。



◆ ◆ ◆


新長崎への帰省を明日に控えた夜。

「ねぇ、ヒカリ。 シンジの左肩の怪我、いつの?」
「左肩?」
「あの噛まれたみたいな奴の事よ。 聞いてない? アタシがクリーンルームでアイツの裸を
 一度見たコトあるんだけど、その時は無かったのよ・・・・あんな傷」
「・・・あれ・・・付けたの・・・私」
「へ!? なんで?」


私は内心の怯えを必死に押さえつつ、シンジと打ち合わせしてあった話をした。
これには元になる話がちゃんとある。

シンジと私がアスカの看病をし始めて五ヵ月たった頃、『ゼーレ』のスパイがアスカを誘拐しようと
彼女の病室に忍び込み、アスカの体を拭くために来た私に見つかると言う一件があった。

以前のような警護が出来ない保安部の目を潜り抜けて犯人は侵入、それを見つけた私と、
私の叫び声を聞いたシンジが犯人ともみ合って時間稼ぎをしている間に保安部が到着、
犯人は以外にあっけ無く捕まった。

これに、「怖かった私が噛んでしまったのだ」という話を加える事にした訳だ。

「・・・・・・・・・・・・・という訳なの」
「ん、判った。 アリガト、守ってくれ・・ふぁ・・・・ぁ・・・。
 最近『リハビリ』がきつくってさ・・・・・ちょっと眠くなって来からもう寝るね」


アスカは知らない。
あの傷の本当の原因・・・それは私が初体験のときにつけたもの。



◆ ◆ ◆


今から八ヶ月前

アスカの脳波が弱くなり、『今回は覚悟しておいて』と伊吹さんに聞かされた日からの一週間。
この一週間の出来事・・シンジはうろ覚えらしいけど、私はよく覚えている。

彼は荒れに荒れた。
『好きな人がもうすぐ死ぬかもしれない。』
その可能性はシンジの心を徹底的に痛めつけ、その痛みから逃げ出そうとシンジは簡単な方法を使った・・・つまりお酒。


葛城さんの家・・・今の私達の家・・・に残っていた葛城さんのお酒を文字通り浴びる程に飲みまくった結果、彼は急性アルコール中毒になってひっくり返ったのだ。

私の通報で運び込まれ、処置を受けた彼はそのまま二日間眠り続けた。

この時ほど、アスカを許せないと思った事はなかった。
こんなにも碇君は貴女の事を想っているのに!
私の部屋に泊まりに来た時に言ってた「貴女が欲しがってた一番」じゃない!

それなのに何で貴女は眠ってるの!?
あの時、嫉妬から貴女に背中を向けた私へのあてつけ!?



どこまでも彼を縛るアスカへの嫉妬から・・・。
碇君が目を覚ました時、冷静になれなかった私は彼を力任せに思いっきりひっぱたていた。

どうして私じゃ駄目なの? 今でもこんなに貴方の事を想っているのに!



「碇君。そんなにアスカの事・・・・好きだったの?」
「よく判らない。綾波には、あの時も言ったけど「家族」で『恋の相手』じゃなかった。
 ミサトさんには『大人のキス』を教えて貰ったけど、『家族』でしかなかった・・と思う。

 アスカは・・・確かに十四歳の僕は彼女に『恋』をしてた。・・でも」


でも?


「今は・・・よく判らない。好きだという事は自信がある。
 でも、その思いは今も『恋』なのかと聞かれたら、多分違う気持ちになり始めてると思う。
 『恋』、と言うより・・・かけがいの無い大切な人に対する『好意』だと思うんだ。

 家族とは違う、友達とも違う・・・多分恋人とも・・・。でも、側にいて欲しい大切な人。
 今のアスカに対する感情って、うまく言えないけど、そんな感じだと思う」


私達の間に沈黙が流れる。

そして2,3分も経った頃・・・ついに私は言ってしまう。


『じゃあ・・・私は?』


 ◆ ◆ ◆


「洞木・・・さん?」

私が何を言っているのか全くわからない様で、彼は呆然とした顔で私を見続けていた。

やっぱりそうだったんだ。
アスカから、『私は鈴原に片思いしている』と聞かされていたんだろう。
そして、今でも鈴原の事を好きななんだ、と思っていたんだ!


彼の態度に何年もたまっていた鬱憤が爆発して、私は一気に言い切った・・・貴方が好きだと。


「碇君、知らなかったでしょ。私が本当に好きな人は碇君・・・貴方。
 3年前、私がその想いに気付いた時、すでに貴方の側にはアスカがいた。

 だから碇君への気持ちを忘れる為に・・・鈴原の事を好きになろうとしたの。
 でも、駄目だった・・・・浅ましい自分を見せ付けられただけだった」

「浅ましい・・・自分?」

「鈴原が使徒との戦いで重傷を負ったと相田君から聞いた時、私は鈴原を心配しないで
 たった一つの事を思ってたの。『碇君も傷を負ったのかしら』って。
 相田君から「委員長?」と呼びかけられたとき、彼の前で泣いちゃった。
 多分、相田君は『トウジが生きてると判ってほっとしたんだ』と思っただろうけど」


碇君は私の肩に手をかけて、自分の方に向け、落ち着かせようとする。
その手を私は払いのけた。


「私は『鈴原の事を聞かされているのに、私は碇君の事を考えてる』と思ったら・・・
 自分は他人を自分の為だけに利用して、相手の事を考えない女なんだ、って思えて」

「そんなこと、ないよ」


彼を睨みつけ、私は叫ぶような勢いで《告白》を続ける。


「アスカが相談しに私の家に来た時、アスカが私に
 『バカシンジより下になった自分はシンジに見てもらえない』って言ってた。

 私はアスカに背を向けた。だってその時も私は碇君しか見て無かったもの!
 貴方はアスカが一番だったし、私はそれに嫉妬してたから、そんな顔を見られたく無かったの。


 鈴原は私の気持ちに気付いてた・・・アメリカに行く時、空港ではっきり言われたわ。

 『惣流がいるからってセンセを諦めるな、ワイは逃げ道とちゃう』 って。

 鈴原にも気付かれてたのに、どうして貴方は気付いてくれなかったの!?」


彼の胸をぽかぽかと叩き始めていた。
興奮でかすれる声。 それでも口は止まらない。


「サード・インパクトの後、碇君が私の所に来て『アスカの治療を手伝ってくれないか』と言われてここに来てから、私がどういう気持ちだったか判る?
 アスカしか見ようとしない貴方を見ている私の気持ちが!?

 貴方に看病されてるアスカに嫉妬して、このままアスカが目覚め無ければいいと思った事もあった。
 『看病の事で相談したい』と貴方を私の部屋に呼んだ時、何も知らない貴方が部屋から出た後に私は貴方が座った椅子の上でオナニーをした! 碇君に抱かれる事を考えて!
 貴方の気持ちを無視して! アスカの事を考えないで自分の欲望だけを考えて!
 私は・・」


それ以上先を言うことは出来なかった。 唐突に抱きしめられたから・・・・・。

「怖いんだ」
「え?」
「この二年間近く一緒にいてくれたでしょ。 だから、ずっと見ていてくれたのもなんとなく気付いてた。
 中学生の頃から見ていてくれたのは流石に気付かなかったけど。

 でも洞木さんも忘れてる・・・僕にだって「心変わり」はあるんだよ?

 正直に言うとね、僕も好きになり始めてる・・・ずっと側にいてくれた・・・洞木さんの事。
 でも、・・その・・」

「・・・・アスカに・・・悪いと思ってるの?」

「それもあるけど・・・。
 僕は、父さんに捨てられた事があるんだ。「必要じゃないから」って。
 これから先、アスカが目を覚ました時、アスカを選ぼうとする自分がいるかもしれない。
 洞木さんを捨てようとするかもしれない。あのときの父さんのように・・・・!」

「寂しさを紛らわせるため・・・でもいいよ」

「そんなのいやだ! 必要なときだけ利用する関係なんて! 今の僕は洞木さんが好きなのに!」

「いかり、くん・・・?」

「今の僕の気持ち、好きだという気持ち、洞木さんにあげる・・・だから・・・
 洞木さんが僕を好きだって事、信じさせて・・・」

私は、そのまま碇君にベッドの上に引っ張り込まれ、押し倒された。


◆ ◆ ◆


彼の行動に私は恐怖した。
彼のほうから私を抱こうとする、なんて今まで思いつきもしなかった。

二人の気持を知ってて横恋慕する私に碇君が振り向いてくれるとは思えなかったから、
イヤリングをもらったあの日に覚えた一人Hで私の想い浮かべる「ネタ」は、
いつも私が押し倒して彼をその気にさせるというストーリー。

でも、今の私は碇君に抱かれてる。
たくし上げられたサマーセーターから見える二つの乳房の上で碇君の手がある。
おっかなびっくりな手つきだけど、それでも私には十分な刺激になった。


「いかりくぅん」


・・・多分・・今のは私の声だ。 信じられないくらいに甘い声になっていく。

「洞・・・ううん、これからはヒカリって呼ぶね・・・いい?」

胸がいっぱいになって声が出せない。それでも必死になってうなずいた。
ありがとう、と呟いて碇君はキスをしてくれる。

「ヒカリって、着やせするんだね」
「そうっ、かしら・・・ひぁぁん!」

 しばらく私の胸の感触を楽しんでいた碇君だったけど、急に動きが止まって

「あ、あのさ、えっと」

さっきまでの強気な態度から一転、彼の声が微かに戸惑いを含む物になった。

「どう、したの? 私の体・・・・変?」
「そうじゃなくて・・・前に、その、ホックって言うんだよね・・・ないんだけど」
「え?」

 これには少し笑った。
後で聞いた話だけど、葛城さんもアスカもフロントホックの物しか使わなかったらしい。

じゃあ、フロントホックの外し方は判るんだ?と聞くと耳まで真っ赤になって
「洗濯を下着込みで任されてたから・・・」だって。

 少しリラックスできた私は簡単に後ろにあるホックとその外し方を教えてあげた。
碇君は恐る恐る、でも確実にブラジャーをはずし、じかに私の胸を触り始めた。
ていねいに私を愛したい、と言う彼の思いが伝わって・・気持ちいい・・・。 

 

「いか、くんっ、ちょっと・・ふぁ・・待ってぇ」
「やだ」
「はずかしいよぉ」
「だって・・気持ちいいんでしょ?」

碇君は手を止めてくれない。明らかに私の反応を見て楽しんでる。
たまに手が止まったとしても

・・・・ふちゅ・・・ふむ・・・

舌を絡めあうキスに没頭したいからで、休みたいからじゃない。
何とか碇君の手を止め、一息つこうとすると、彼も気付いて手を背中に回してくれる。

「ねぇ、碇君」
「なに?」
「夢じゃ、無いよね」

微かにたまった涙を唇でぬぐってくれる。  ちょっと・・キザだ。

「夢だと・・・思ってるの? じゃあ、信じる事以外・・出来なくしてあげる。僕がヒカリを好きな事だけは」

それからしばらくは翻弄されただけで何も覚えてない。
 


◆ ◆ ◆

「あうん、はっ、やだ・・・あーっ」


いつの間にか、私は下着一枚を残すのみになっていた。
生暖かいのが、太ももに・・ってまさか!?

碇君の舌が私の下腹部に近づいて、ぱくっと音がしそうな感じで口全体であそこを覆われた時

「ふぁ・・・・・!」

幾度目かも判らない波にさらわれてあっさりとイッてしまう。

くたくたになった私は最後に残った下着が脱がされ、熱い何かが押し当てられても動けなかった。
だから、この後に来た痛みにもただ耐え、彼にしがみ付くしかなかくて。
痛みに耐えようとした私は彼の左肩に噛み付いてこらえた。

(その痕は今でも残っている・・アスカが指摘したのはこの傷の事)

私も足を必死に広げて、彼のを私の中へ引き込もうとした。
碇君の気持ちに応えたかったし、何より私が望んでいる事だから。


五分くらいたって、碇君を根元まで何とか迎え入れる事が出来た時、心を満たしたのは痛さより


(安心感・・・?)

本当なら私が手に入れられない筈だったぬくもり。
アスカとキスする彼、アスカを受け入れる彼、私に振り向く事の無い彼・・・・
アスカに対して感じた嫉妬がどんどん消えていくのが判る。

『私は・・・ずるい女。でも・・もう離さない!』

 

快楽を求め、私の中で動き始める『碇君』。

「いっ、ぐう・・・痛っ」

耐え切れず、痛みを訴えるたびに動きをゆっくりとした物にしてくれる。

「ふぅん・・・ん、んくっ」

そして私が落ち着いたと感じると動きを少しずつ早めていく。

痛みが少しひき始めたかなと思い始めた時、ごめん、と言う一言と共に『碇君』が一気にスピードを上げていった。

「や・・痛・・んふっ」
「ごめ、ヒカリ・・気持ちよすぎて・・もう・・・僕」
「やめなくて・・・・・・いいの!貴方の自由にして、ヒカリを手に入れて!」
「・・・ヒ、ヒカ・・・んんっ!」
「ふぁ・・・っ!」

 

結局、私達は見回りの看護士さんたちをごまかしたりしながら碇君と一晩中重なり合った。

痛かっただけだったのが、しだいに快感が上回るようなって、最後は彼の体の上で果てていた。

 

「痛かった・・・よね」

鈍い痛みがまだあるせいか、かなり引きつった私の顔が彼の瞳に写ってる。
でもお互いの笑顔にかげりはなかった。


「うん・・正直少し痛い。 でも、心地よい痛みって、本当にあるんだね・・今なら、判るの」

まだ彼のが入ってるあそこを触って見ると、血と精液が混じった物が指についた。

「女・・・かぁ」

「・・・あ、忘れてた!  これからは・・僕の事もシンジ、って呼んでね」


この日から、私はシンジの「女」になった。


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