ボクのヒミツたいけん


Scene.10
Original text:引き気味
Illust:目黒腹蔵さん



「やめなさいよ、このヘンタイ……!」
「やめてやめて―― か、惣流はいつもそうやのぅ……」

アスカは押し殺した声に精一杯の殺気をこめたつもりだったが、とぼけた声にはまるで意に介した様子はなかった。
相も変わらず、左脇から胸に廻された手はブラウスごとアスカの胸を揉んでいるし、吊革を握る反対の手で精一杯押し止めようとするのを無視して、いやらしく太腿を撫ぜ回す掌もそのままだ。
ぴったりと背後に張り付かれたお尻の辺りには、トウジの硬い感触が押し当てられていて、電車が揺れる度にその振動を利用して擦り付けて来る。
そうやって、やわらかなヒップの感触を楽しんでいるのだ。

「ええのぅ……。満員電車の中で、惣流みたいなめんこい女子を触り放題ちゅうのも、まんまマンガみたいな“しちゅえ〜しょん”やな。えらい興奮してくるで」
「勝手なことを言って……。覚えてなさい、絶対に―― ッ!? ひぁ! やぁっ……!!」

真っ赤になって柳眉を逆立てるアスカのうなじに、ペロッと後ろから舌を這わせる。この鈴原トウジという少年は、かつてアスカがあれほど馬鹿にしていたように、自他共に認めるエリート少女にしてみればまさしく屑同然の―― 只クラスメートであったというだけの取るに足らない存在でしかない。
だのに、今はそう許されるのが当然といった顔で、まさしく痴漢そのままの振る舞いにアスカを弄んでいる。

「キモチ、ワルっ……のよッ!」
「それももう聞き飽きたのぉ……。惣流もいい加減、説得力っちゅう言葉をな? 覚えたらどうなんや―― と」
「ぅあっ……ハ、あ!」

スカートから繋がるベストに隠された下で、トウジの指が張り詰めた乳房の先端を捉えていた。
摘んだ指との間にブラウスとブラと二重の防壁が介在していようとも、所詮は、乙女の急所を守るにはあまりに薄っぺらな布切れに過ぎない。
指の腹で転がされるようにされてしまえば、情けなくも乳首が硬くしこっているのだと、そう知られてしまうのは防ぎようが無かった。

「ひっ、く……。うぅっ」
「コチコチやで、惣流? 感じとるんやないか。なぁ?」

感じやすいのねと、ヒカリにも散々にからかわれているアスカの身体だ。精細な木の実を揉みこねられれば、電流が走るのにも似た心地良さがピリピリと止まらなくなる。
ニヤニヤとトウジが息を吹きかけ、唾液を塗りつけてくる首筋にも、甘い戦慄にびっしりと鳥肌が立っているのだろう。
鼻の下を伸ばしきったジャージの痴漢男がそうと見透かしているように、実のところのアスカは、もう堪らなくなってしまう一歩前だ。
成層圏から落下する使徒をエヴァの手で受け止めるという、奇跡のようなミッションを成功させた―― そのねぎらいとして上司の財布でラーメンを食べた帰り、たまたま電車の中で出くわしてしまって以来、延々とアスカはそのいやらしい手で刺激を送り込まれ続けている。
しかも相手は、アスカを一から開発した一人。華奢な肢体のどこを責めればアスカが感じるのか、知り尽くしている。
熱くなって、熱くなって、抑えようがない。

「ふぅ……! っく、乳首……しつこい……いぃ……!」

だが、声を上げてはいけないのだ。そう唇を噛み締めるのと同時に、吊革を握った右手にはギリギリと力が篭る。
これがもし、いつもアスカが調教を受けているようにヒカリかトウジの家でなら、口では否定し続けてもきっとアスカは受け入れてしまっていただろう。
ある意味、気兼ねすることなく。今にも喉から迸らせてしまいそうなこのあられもない声を、心置きなく悦がり叫んで熔けてしまえる。
だが、ここは周囲に人が多すぎる電車の中だ。
他の乗客に聞かれでもしたら……。そう思うだけでアスカのプライドは気が狂いそうになる。
そしてそれ以上に、この電車に乗り合わせているのはアスカ達二人だけではない―― 絶対にこんな姿を見られてはいけない“アイツ”も乗っているのだから。



「あう……う、うっ。……ダメだったらっ! シンジに気付かれちゃうわよ……!!」
「大丈夫や、こんだけ混んどればそうそう分からんよって……。それにシンジは綾波の相手で急がしそうやで?」

薄く涙目になりながらアスカが探したシンジは、アスカ達同様、周囲の大人達に埋もれて、スーツの集団の隙間にちらちらと後姿が垣間見えるだけだ。
その向こうに見える青い髪は、もう一人のアスカの同僚にしてライバルでもあると最大の警戒を払ってもいる、綾波レイに違いない。
カーブの度に揺れる人込みの中、二人もつれ合うようにしている。
シンジの顔は見えないが、耳が真っ赤になっているのが窺えれば、アスカとまた違う理由にて上気しているのだと―― 綾波レイと何か宜しくやっているのだろうと見える。

(あいっつぅ……!)

だが嫉妬に唇を噛んだ次の瞬間、アスカは『はぅ……!』と背を仰け反りかえらせていた。
淫らな指先が、ショーツの上からアスカの突端をグリグリと押し込んでいる。

「くふっ、ううぅっ……」

イラスト:目黒腹蔵さん「淫惑痴漢電車〜アスカの屈従〜」

シンジ達に気を取られたことでトウジの悪戯を忘れでもしたのか、慌てて口を押さえはしたが、折り良く車輪の軋みが響いていなければ車内中にその扇情的な啼き声が響き渡っていただろう。
むっとアスカの熱気が篭ったスカートの中、ヒルが這い登るようにして内腿からこの美しい同級生の中心に進められていた魔手は、今やアスカが手を離した事で好き放題にその聖域を荒らしまわっている。
足をきつく閉じようとしても今更手遅れでしかない。ショーツの上にしっかり陣地を確保して、やわらかく切れ込んだ溝をなぞり上げてくる。
火傷でもしたかのように熱く爛れたそこは、たっぷりとアスカの分泌した汁気に塗れていて、トウジが少し力を込めて押し込めば『じゅわっ』と、薄い布地に吸い切れないぬめりを浮かばせて、その指先を濡らすのだ。

「だめっ、だめぇ……。こんなところで、そんな……そんなとこをしないでぇ……」

身をよじるようにもがくアスカは、いつしか人込みの中を揺られる内、ドアとの間に追い詰められていた。
蒼い乳房を鷲掴みに揉み立てる腕が上半身をがっちり掴まえ、背中からぐいぐいとヒップの谷間に腰を押し付けてくるトウジの身体全体でドアに押し付けられてしまっている。
只の中学生など問題にならない格闘技能を持つアスカだが、それは平時の彼女であればこそ。にちゅにちゅと粘ついた音を立てる布地を細かく擦られて、真っ白な内腿に浅ましい欲情の証を伝わせている今のアスカには、恥ずかしい声を漏らすまいと頑張るのが精一杯。
力の入らぬ華奢な躰は、ますます図に乗った痴漢少年の手で弄くられるまま、ビクビクと細腰をのたうたせて喘ぐばかりだ。

「ほれ見ぃ、ビショビショのヌレヌレやないか」
「うるさい……わよっ」

囁く声も抗う声も、どちらも熱く、荒い。

「あ、ああ……や、やめなさい。いやらしい手で……触らないでよ。この……ヘンタイ……!」
「分かっとるて、惣流。嫌よ嫌よも好きの内ってな。そういう可愛くない事を言うんが、惣流の好きなやり方なんやろ?」
「なに、を……ぉ、おぁあああ……!」
「入れるでぇ……」

股の細布の下に潜った人差し指が、アスカのまだ女にさせられて間がないそこへと侵入を開始する。
左手で執拗に乳房を愛撫しつつ、とびきり窮屈な合わせ目を、内側から滾々と溢れ出す羞恥の滴を潤滑油に少しずつ、少しずつ。

「ああっ、だめよ、だめ。……ふぅン! いっ、入れちゃダメ、入れちゃだめぇ……!」
「惣流があかん言う時は、要するにしてぇってコトや。堪らなくなっとる程、天邪鬼やさかいなぁ?」

第一関節が沈み込み、熱い秘唇をこじ開けながら第二関節まで。そして――

「嘘よ、うそ……。ああ、入って……、アタシの中、入っちゃってぇ……」
「そう言う端からケツ振っとるしな。サービスや、クリも弄ったる」

充血した肉芽を親指の腹で転がされて、頭の中まで甘ったるく熔けてしまいそうなアスカは、朱金の髪を打ち揺すって悶える。
スカートの奥に深々と、やがてトウジの指が柔肉に根元までヌルリと没入してしまうのを、アスカは頬を押し当てたドアの窓に、ハァハァと息を白く曇らせつつ耐え凌いだ。

「ほぉれ、奥までズップリや」
「あ、ああん……」

吐き出す息は安堵にも似て、悩ましい。

「どや? ええんやろ、惣流。なぁ?」
「あ、あ……。アタシの、奥ぅ……」
「ほれ、ほれ。この辺か?」
「あァ、ふ……! ダメ、ダメよアスカ……。あ、ああ……!!」
「好きなんはここんトコ、クリの裏側のあたりやろ? ばっちり、外と中から可愛がってやるさかいなぁ」

つぷつぷと抜き差しし子宮口まで。くすぐるように、ひっかくように、快楽の天辺に一番近い場所を弄られるアスカは、涙に潤んだ碧い瞳を虚ろに、『あぅぅん……』と白い喉を喘がせた。
肌の火照りはそれまでの比ではなく、揉みくちゃにされているブラウスの胸元から覗く素肌も、びっしょり汗が浮いている。
蜜液はいつの間にか開かれていた両脚の膝まで垂れ落ちて、子宮の疼きに炙られ続ける脳裏は、飛び交う官能のスパークに今にも吹き飛んでしまいそうだ。
気持ち良い、気持ち良い! もっと、もっと……! と、悩乱に身を任せてしまいたい。
処女を奪われてからというもの、三日と空けずに快楽を注がれ続けてきたアスカの精神は、その肢体の隅々までを犯し抜いたトウジの前には、もうあまり高く防壁を張り続けることが出来ないのだ。
しかし、

(シンジが、シンジがいるのよ……!)

後先を考えず、煮え滾る愉悦の縁に身を投げてしまいたいアスカを、一片の乙女心が必死に決壊を防いでいる。

「ダメっ、……あ、ああん。す、鈴原の指っ、奥っ、キてる……ぅ」
「いやらしい声やで、惣流ぅ……」
「んうっ、ン、んぅぅぅ〜〜ン……!」
「いつもみたいに、またおかしくなってきたんやろ? 惣流は、ここからやからなぁ……」

次第に熱を帯びる一方のアスカに気を良くしたトウジが、指先に奏でる快楽器官への抽送を激しくすると、昂ぶりを増すばかりの今やその身に馴染んだ肉欲のバイブレーションが、股間から全身へと広がっていく。
最後の頼りの乙女心とても、これまでのトウジとヒカリの快楽責めの前に連戦連敗を重ねてきたものでしかない。
なにより、二人がかりの誘惑に処女を明け渡してしまって以来、次から次へと、羞恥に慄きながらも恥知らずな要求に下ってきた愚かさがアスカの真実なのだ。

「あふっ、うっ、フグゥッ……! ンふ、ンムゥゥ……!!」
「分かっとるやろうな? ここは満員電車の中なんやで? それでこんなに気持ち良ぅなってもうて、呆れるド変態っぶりや」
「ンムゥゥ……、ぅあ、アタシは……あ、ああ……!」
「良いんや惣流。学校一のアイドル様の正体がどんな淫乱恥女でもなぁ、ワイらの前ではええんや。好きにイってまえや、なあ……?」
「ちがっ、アタシっ……、あっ、あああっ。アタシはぁ……。くっ、ングッ、ンムムゥ〜〜!」

指を噛んで声を殺すアスカの瞳も熱に浮かされたようで、今にも朦朧と最後の輝きが熔け落ちてしまいそう。
そんなアスカの醜態を、人垣の向こうから、赤い瞳は全てを見詰めていたのだ。



◆ ◆ ◆




第3新東京市環状線の車内は、遅い仕事帰りのサラリーマンで混んでいる。
カーブに車体が揺れるたびに、すし詰めになった人垣は次から次へと寄り掛かるように傾き、実際以上に感じる揺れの中にシンジとレイの二人を閉じ込めていた。
大人達の肩ほどまでの身長でしかない中学生の少年少女だから、立ち込める人いきれの中、すっぽりと谷間に嵌り込んでしまった状態だ。
スーツの壁にぐいぐいと潰されるようにして、レイの華奢な身体が押し付けられてくる。
踏ん張り返せばそれこそ挟まれた彼女が辛いだろうから、シンジもまた後ろの誰かに背を預けるしかない。
申し訳ないと思う気弱な少年なのだが、実のところ、そんな満員電車での当たり前の迷惑に今更意識を向ける者はいなかった。
疲れきったサラリーマンばかりだから、見知らぬ誰かに寄り掛かったまま眠りこけている者さえ居るほどだ。

「綾波、大丈夫?」

頬を擦るほどの近さのレイにドキマギとしながら気遣いの声を掛けると、赤い瞳がこくりと頷いて、それから『問題ないわ』と小さな応えがあった。
レイがわざわざ返事を返すのは珍しい事だ。
この寡黙過ぎる少女に、比較的まともな対応をして貰えるのはシンジくらいのもので、それがまたトウジやケンスケといった悪友のからかいの的となっているのだが。
心なしその口元が微笑んだかなとシンジには見えたから、ひょっとするとレイも気遣ってくれたのかと思えた。
―― また鼓動が高鳴る。顔が火照ってしまう。
何故かはじめて出会った時から気になってならない少女と密着しているシンジは、そんな真っ赤になった自分が変に思われやしないかと気になってならない。
レイの身体を抱きとめている格好だから、やわらかな感触が胸の中一杯にある。
蒸すような人いきれの中、それだけははっきりと分かるのはレイの匂いだ。
同居人であるアスカともミサトとも違う、あれだけ無造作にしているのに、それでもやはり女の子なのだなと感じる甘い匂いだ。

(あっ……)

その匂いがトリガーになって、フラッシュバックのようにシンジは思い出してしまった。
セキュリティ・カードを届けに行ったレイの部屋で、シンジはシャワーを浴びたばかりのレイを目撃して、それから――

(こんな時に、なに考えてんだよ……!)

一度意識してしまえば、一向に頭から離れようとしてくれない鮮やかなレイの裸身。
今も車体の揺れと共に胸にやわやわと押し付けられているのは、あの時図らずも触ってしまったレイの乳房だ。
気にしてはいけないと思えば思うほど、その感触に意識が集まってしまう。

「……どうしたの?」

急にもじもじと落ち着きのなくなったシンジを訝ってか、レイが見詰めてきていた。
カーッと頭に血が上る。
その奇麗な目と見詰め合うには後ろめたくて、シンジは慌てて顔を逸らした。

「な、なんでもないよっ。だ、大丈夫だから!」

『……そう』と、それでもレイは小首を傾げたようだったが、やがてまた顔を元に戻した。
混雑の隙間越しに窓の外でも眺めているのだろう。
そんなレイの横顔をちらちらと横目に盗み見ながら、シンジは、
(やっぱり、綾波って……可愛い……)
等と、アスカに知られれば殺されるようなことを考えていた。



タタン……

カーブに差し掛かるとまた床が傾いて、そして押し合いへし合いの中にシンジとレイは揉みくちゃにされる。
二人抱き締め合うように押し潰されたり、こちんと額をぶつけたり。
その度に顔を赤く慌ててしまうシンジだったが、気が付けばとてもマズい状態になっていたのだ。

(うわ、これって……)

手近な吊革も無く、かといってそこらのスーツを掴むわけにもいかず所在無くしていた右腕が、よりによってレイのお腹の下に当たっている。
半身で互いに胸を合わせた形の、丁度二人の腰に挟まれた状態だ。
確かめるのも恐ろしいが、位置的に見てレイのスカートの真ん中辺り。となれば、手の甲のこの感触は――

(あっ、綾波の……うわぁ〜〜っ!)

マズいにも程がある。
バレたら―― いや、気付いていない筈がないが、痴漢だとでも思われでもしたら、シンジはもう明日からどうやって彼女と顔を会わせれば良いのだろう。
かといって他所へどかすにも、こうギュウギュウに挟まれていては、抜き取ろうとするその動きは彼女の股間をまさぐるようなものと取られかねない。
その時こそ、またレイに引っぱたかれる事になるのだろうと、もはや血の気の引く思いのシンジだ。
あわあわとある筈のない救いを探して視線を泳がせたシンジは、そこでまたギョッと、激しい動揺に襲われてしまった。
不意に目に止まった白さに引かれてみれば、そこにレイの制服の胸元が大きくたわんでいた。
ほっそりとした首筋から鎖骨へと、きめ細かな雪にも似た白い肌が目を奪う。隙間の先に、乳房の丸みやブラジャーさえ見えてしまっている。

「うぁ、あ……!」
「……あっ」

ごくりと唾を飲み込んだ音に自分自身で飛び上がるほどに驚いて、慌てて口を塞ごうとした右手が、レイの股間を思い切り擦るようにしてしまった。
ビクンとレイの脚が震えた。

「ごっ、ごめ……ゴメン! 綾波。わざとじゃないんだ!」

―― もうだめだ……。震える声で許しを請うシンジの脳裏では、以前平手をもらった時と同じ冷たい瞳が睨んでいる。
だがしかし、実際のレイのその赤い瞳は、意外なほどにシンジに優しかったのだ。

「……いいの。仕方ないって、分かってるから」

パニックになりかけていたシンジは、まだ彼女の腰に押し当てられたままの右腕の事も忘れて、そこで呆けてしまった。
もう一度、分かっているからと繰り返して。まるで慰めるかのように、その桜色の唇が微かな微笑みを向けてくれていた。
レイはシンジを許してくれていた。

「綾波……」

恐慌の冷たさが胸から抜けて、代わりにほんのり頬を赤らめたレイのやさしさで一杯に詰まる思い。
ぎこちなく笑みを返して見詰め合って。だけれども、シンジはそこでレイの呼吸が僅か早くなっていることに、透き通った赤の眼差しがうっすら潤みを帯びていることに気付けるには、少しばかり経験というものが不足していたのだ。

(良いの、碇くん……)

レイもまたこの時、シンジとの触れ合いに密かに小さな胸を高鳴らせていた。
そして、この無垢であるが故に容易にバイアスを受け易い純白の心には、シンジが中学生らしい煩悩にどきまぎとしていたのよりも遥かに明瞭に、色づいた欲求の灯火が揺らめいていたのである。

―― レイはずっとアスカを眺めていたのだ。



◆ ◆ ◆




(弐号機パイロットと、鈴原トウジ……ジャージ?)

さして他人に興味のないレイではあったが、一応はトウジの事も認識している。
目下、レイにとっての一番の関心事であるシンジの周辺人物、クラス内ではジャージと呼ばれている筈の生徒だ。
背中越しに密着した状態は自分とシンジと同じような事情によるものと思われたが、

(セカンド……何? 嫌がっているのとは、少し違う……)

人と人との機微には疎いと自覚のあるレイだが、二人は確かあまり良い関係ではなかったはずだ。
顔を付き合わせればぎゃあぎゃあと騒ぎ、シンジや洞木ヒカリに困った顔をさせている。
しかし、

(胸を触らせて……。いえ、あれは愛撫?)

周囲が邪魔で分かり辛いが、その分興味がそそられた。
そのまま観察を続けていると、セカンドチルドレンは背後から乳房を揉まれ、更にはスカートの下に手を潜らせることも許しているようだ。
鈴原トウジの手付きからすると、性器への接触をすら行っているらしい。

(胸や女性器は他人には触らせてはいけないと、赤木博士は言っていた……)

特に男子生徒には気を付けねばいけないのだと、この年頃の男というものは、性欲のはけ口―― セックスの対象として女性の身体を見がちであるからと注意を受けている。
レイ自身、自分の身体にまといつく、粘つくような視線を意識した事は何度もある。
それらは主に胸や尻に向けられていたもので、中には水着を着用しての授業中や、更衣の最中を盗み見ていた者も居た筈だ。
女の裸というものは、男にはとても魅力的なものであるらしい。
その特に性欲を刺激させる部分である乳房や性器は、愛する者にしか見せてはならない、触らせてはいけないのだと言う。
そうして許した相手ととり行うのが、子供を作るための行為であるセックス。それは同時に、愛の確認なのだと教えられていた。

(それはとてもとても気持ちの良いこと―― 碇くん……)

口頭でのレクチャーや書籍からは得られなかったセックスの魅力については、レイの経験の中でも近頃最も呼び出す頻度の高い、シンジとの接触が想像の足掛かりとなっていた。
シンジを思いながら彼のしたように胸に触れてみると、かゆいような、もっと触りたくなるような、とても心地の良い感覚がある。
胸が熱くなり、動悸が激しくなる。苦しいようで、不快ではない。寧ろそこには幸福感が感じられる。
そして決まって性器が疼くのだ。

(感覚が集中しているから、その分刺激を繊細に感じ取ることが出来る……ならば、セカンドもあの心地良さを感じているの?)

鈴原トウジが執拗に刺激を与えているのは、乳首と女性器。特にブラウス越しに忙しなく揉み立てている乳房と並んでそれらの場所は、性感帯と呼ばれるのだと記憶している。
セックスの際には相手を心地良くさせる為の刺激、愛撫には最も向いている部分とされており、それは自分で触ってみて確認してもいる。
白人種の血を引いたセカンドチルドレンの肌はクラスメートの中でも際立って白く、青白いと評される自分と違い、女生徒達の憧れであるらしい―― その肌が真っ赤に紅潮していた。
発汗も伴っているそれは、性的興奮のサインに違いあるまい。
しきりと首をふるようにして、乳首を摘み転がされたりと鈴原トウジの愛撫を受けている。

(泣いて……いえ、あれは我慢しているのね……)

何を? それは必死に口元を押さえようと頑張っているのだから、性的快感に必ず伴う悲鳴のような“あの声”を堪えているのだろう。
愛撫を加えられれば自然息は荒くなり、喘ぎ、すすり泣くようにしてしまうというのが、レイの知る快楽への反応だ。
「悦がり声」と資料では形容されている。

(……そう。鈴原君に愛撫して貰って、気持ちが良いのね)

捲り上げられたスカートの下、時折ちらちらと見えるショーツには失禁したかのような濡れ具合と、内腿に流れる輝跡が確認できる。愛液、なのだろう。
性的興奮、つまり発情によって女性器から分泌され、男性器の挿入を助ける役割を果たす液体。
それは少し粘ついていて、ショーツを着用したままの愛撫には―― 自分自身で行うものはオナニーとも自慰とも呼ぶらしい―― ねちゃねちゃと、何故か気恥ずかしい音を立てるものだ。


その恥ずかしい水音が、今、鈴原トウジに触らせているセカンドチルドレンの股間で響いているのだろう。

(セックスを……しているのね。そんなに気持ち良さそうにして……)

羨ましいわとレイは思った。
彼女がセックスを許すような好意を鈴原トウジに抱いていたとは意外だったが、愛する男性に愛撫されての性的快感とは、どれ程のものだろうか?
制服から覗くうなじや手足を真っ赤に染めてヒクヒクと震えているその様子は、かなりの苦痛に耐えようとしているのにも似ている。
使徒と戦う時の顔にも近いが、それが全部鈴原トウジによる性感帯への愛撫によるのだとすれば、その快感の大きさは……?
愛する者とのセックスこそは最大の幸福であるのだというが、自慰で得られるそれとは比べ物にならないのだろう。

(碇くん……)

自分も彼にして欲しいと、レイはシンジに熱い視線を向けた。
セカンドチルドレンがされているように、いつかの時のように胸を揉んで欲しい。
スカートを捲って、性器に触れて欲しい。そうして一番のお気に入りの性感帯―― クリトリスを刺激して、セックスをして欲しい。
そう考えていると、いつしかあの疼きが生まれ始めていた。
シンジと胸を合せている、その先端がジンジンと。電車が揺れるたびに擦られるようになるのが気持ち良い。
腰の辺りにはシンジの腕があって、思わず揺れに合せてそっと押し当て、彼の手の甲の感触を確かめてみた。
じわ……と、濡れたような気がした。
そうして軽い快感にレイが浸っていた、その時だ。
不意にシンジの手が跳ね上がり、レイの股間に突然の刺激を加えたのは。

(はっ、あ……! 碇くん……!)



◆ ◆ ◆




レイは許してくれたが、シンジとしては気恥ずかしさと申し訳無さで一杯だった。
それでも、すし詰めの車内が二人をまるで抱き合うかのように密着させたままでいる。
男である自分とは違う、どこかミルクにも似た甘い香りのする女の子の身体だ。
意識は自然と、シンジの胸に押し付けられているレイの二つの膨らみや、手の甲に感じるスカート越しのそこの感触に集まってしまう。
考えてはいけない事だと思いつつも、触れ合う部分からはじめて知るやわらかさが伝わってくれば、どこか感動にも似た熱い気持ちが胸に広がっていく。
恐ろしさではないが、背中の震えが止まらない。
身を強張らせたままじっとやり過ごしていれば、いずれ冷静さを取り戻せたかもしれなかったが、場所は走り続けている電車の中である。
揺れに連れて小刻みに、シンジが触っているそこも胸に重ねられた双丘も、少しもじっとしていてはくれないのだ。
やわやわ、やわやわと。その度にシンジの理性が削がれていく。
急なカーブにぎゅっと自分の胸でレイの乳房が潰されるのを感じたときには、頬の火照りは最高潮に達していた。
同時に彼の拳は肢の付け根との三角の隙間をめり込みかけた形で捉えていて、自分の手が今どこを触っているかについては、もはや興奮せずにはいられない確信があった。

(綾波の……アソコ、なんだ……)

生唾を飲み込むように喉が喘いだが、そこはとうにからからに干上がってしまっていた。
『タタン……』と揺れればまたシンジの手の甲に、そして少し立て加減にした中指の節にレイの股間が擦り付けられる。
レイもまた息を熱く上擦らせているのだと気付けないシンジの胸には、やがて少しくらいならという誘惑が射し込んできていた。

(こんなに揺れているんだから。仕方がないって綾波も言ってくれたし……)

―― わざと触ったなんて、分かりっこないよね、と。

はじめはおずおずと指の背をもたげさせて、揺れが来る度のレイの陰部への接触を深めてみようという程度だった。
しかし、漠然と触れられていた手の甲全体のタッチから指の節などが食い込んだりと、時折明確に点を突いた刺激が加えられ始めたことに実は喜んでいたレイが、一層強く腰を寄せるようにしてきていたのだ。

タタン、タタン……

人込みの寄せては返すように。シンジの胸にレイが身を預け、また逆にシンジがレイに向かって倒れこんだりと繰り返している内に、いつしかシンジはより大胆に掌の方でレイのスカートの股間を触っていた。
左手は周囲との隙間に差し込んで、さり気なさを装ったつもりでレイのお尻に回している。
そうして揺れと共に人垣が動くタイミングを見計らって、さすさすと両手を蠢かせるのだ。

シンジは夢中になっていた。
彼も異性へ無関心ではいられない時分の少年だったから、例えば女子達のプールサイド姿を盗み見たり、悪友の意味深な笑顔と共にもたらされる「際どい写真」に不埒な想像を巡らせたことは幾らでもあった。
その中でも特に脳裏を熱くさせた二人の内の片方、レイのお尻やもっといやらしい場所に、半ば堂々と触ることが出来るのだ。
なんてやわらかなんだろうと、触っても触っても飽きる事は無い。
自分の一部分も硬くなってしまっており、レイに気付かれやしないかと焦る部分はあったが、それよりもはじめての女の子の身体をまさぐることの方が、意識の大部分を占めていた。



シンジの手付きが少しずつ大胆になるにつれ、レイの受け取る快感も増していく。
それでも少年はあくまでバレないようにというつもりのタッチに留めていたから、膨らみかけの小さな胸を高鳴らせているレイには、次第にもどかしさが募り始めていた。

(碇くん、もっと……)

そっと肢の間に指が這わせられるだけでなく、より適切な場所を触って欲しいとの率直な気持ちが、もぞと彼女の腰に指を追い掛けさせる。
一番の気持ち良さが味わえる場所を触って欲しいと、少女の中心にある小粒のボタンを自ら差し出すようにして、

(あ……、もう少し……上を……)

ほっそりとしたウェストを巡らせて、願う場所からのずれを修正する。

「はぁ……、ぁ!」

やはりそこが一番素敵、と。既に興奮しきった尖りに受け止めることが出来たエクスタシーは、まさに奥底から貫き通す電撃だった。
愛しいシンジの指がと思えば、自分でそこを刺激した快感にも倍する思いだ。
もっともっとと、すぐに夢中になった。
一度の接触から、シンジがほとぼりを冷ますそうと手を離すその僅かの空隙が我慢できない。
電車の振動を理由にしているシンジが、寄せた身を離そうとする後を、慣性に逆らって追いかける。
レイにはシンジが気にしているような後ろめたさ―― 痴漢行為への罪悪感は無かったから、それは引いていく波を追いかける童女の無邪気さにも似ていた。

(素敵……。ああ、もっと……。もっと、碇くん……)

―― やっとシンジがそれに気付けたのは、レイの首筋からブラウスの中身を覗いていたからだった。
レイへと身を寄せるに紛らわせた触り心地も最高だが、背を倒した時に出来る隙間に盗み見る、美少女の無防備な胸元の谷間や下着もまた少年の心を捉えて離さない。
だが、妙にレイがその隙間を埋めてくるのだ。
身体に掛かっている力は逆向きのはずなのに、まるでレイが、二人の密着を解くまいとしているかにすら思える。
これではずっと触りっぱなしではないか。いくらなんでも彼女だって変に思うに決まってる―― と、そう焦るシンジは、半ば無理にでも身体を引こうとして、それでも胸に擦り付けられ続けるやわらかな感触に、漸くまさかと思うことが出来た。

「どうしたの……?」

流石にレイと顔を合わせながらでは不埒な行いに及べない。この無口な少女のひたむきな眼差しには、どこか心の底の醜さをも暴かれてしまいそうな神々しさがあったから。
―― だから、顔を合わせないようにとしていたのに。この時、美しい白皙の目元には、そんな静謐さを湛えた普段のレイからは思いもしなかった、蕩けた熱情が浮かんでいたのだ。

「あやな、み……」

薄く開いた瞳はうっとりと潤み、ポゥと紅潮した頬には汗が浮いて、一層この美しい同級生を艶かしくさせている。
頬で甘く感じるほど身近な息遣いは、どうして気付けなかったのだろうと思うほど忙しなく、切ない。

「はぁ、あ……碇くん……。もっと……気持ち良く……」

―― してくれないの?

甘えたその囁き。

(あの綾波が、こんな声を出すなんて……!?)

驚きもまたカッと頭に血を上らせて、シンジはもう―― おかしくなってしまった。
ぐいと細い腰を抱き寄せて。レイのスカート越しに、ぷっくらとした秘めるべき盛り上がりを掴まえる。

「あっ、良いの……。碇くぅん……」

レイがそう上擦った声を漏らすものだから、シンジにはもう遠慮は無かった。
ぐいぐいと揉むようにしながら、指先はデルタの隙間へとどんどん生地を押し込んでいく。

「そこなのっ、ああっ……」

力をいれればやわやわと弾む、レイの恥丘がシンジの掌の中に収まっていた。
少女の腰の一番底から、この年頃の少年達が最大の好奇心を注ぐ割れ目を意識してなぞりあげる。

「ああ、ああ、あああぁ……!」

薄手のスカート生地ではあったが、さすがにの形までは分からない。
だが、耳元にしがみ付いて吐き出される切れ切れの美しい声は、紛れも無くレイの快感を伝えていて、シンジを有頂天にさせるものがあった。
あの物静かな綾波がこんないやらしい声をと思えば、興奮はいや増すばかり。
しきりに胸に擦り付けられている膨らみの真ん中にも、気の所為か、意識してみれば乳首だろうかと思えるコリコリとした塊りが感じられる。

「あやっ、綾波……。気持ち……良いの?」
「え、ええっ……」
「信じられない……。あの綾波が……」
「んぁぁ……、だって……碇くんが触ってくれるから……」
「信じられないよ。綾波が……綾波が……」

こんなエッチな事をする―― いや、させてくれるだなんて、だろうか?
興奮のあまり思考がぐちゃぐちゃになり掛けているシンジには、ただ、普段からは想像できないというその驚きを、上手く伝える事は出来なかった。

「赤木博士が……ああ、言っていたわ。性器を刺激すれば、 誰だって気持ち良くなるものだって……。オナニーは普通そうするものだ―― って」
「おなっ、オナニー!?」

それこそ、レイのような神秘的な雰囲気の美少女の口から出るとは信じられない。

「綾波っ、してるの……!?」

『ええ……』と、いとも素直に。誰よりも愛しい手がヒップや股間をまさぐってくれる甘やかな官能を、スカートの裾をぎゅっと握り締め、喉を喘がせ喘がせしつつ受け止めていたレイの答えだ。

「碇くんは……していないの?」

うっとりと陶酔に瞑っていた目を開けて。あまりに無垢なその少女は、快感の吐息の下から不思議そうに尋ねた。

「男の人も……性器を触られると、気持ち良いのでしょう?」
「うぁっ、あっ、綾波ぃ……!」

やわやわと勃起した股間を撫でられて、シンジは声を詰まらせた。

イラスト:目黒腹蔵さん「淫惑痴漢電車〜レイの喜悦〜」

「……気持ち良い? 碇くん?」
「だめっ、ダメだよ……綾波……」

そっと添えられた手の動きは自分でする程の刺激でないけれど、その手がレイのものであるだけに、シンジには目も眩むほどの快感だ。

「ああ……碇くん……。私にも、もっと……」
「な、ならさっ。綾波……」

シンジにしては大胆な事を言い出せたのは、ともすればレイに触られる快感に飲み込まれそうになる―― 女の子に一方的にされてしまうだなんてという、少年らしい見栄っ張りからだったかもしれない。
後になって、良くそんなことが言い出せたものだと恥ずかしさで転がり回ることになるのだが、シンジは気が付けば『直接させてよ』と、図々しいまでの要求をしていた。

「ね、触って良い?」
「え、ええ……構わないわ……」

ハァハァと熱い息をこぼしながら、レイが自分のスカートへと手を下ろした。
めくってくれるのだろうか? そう思ったシンジよりも、更にレイの行動は度肝を抜いていたのだ。
裾を摘むどころか、そのまま中へ潜らせた手でなにやら腰をよじっていたかと思えば、白い両肢にするすると、丸められた布切れが下げられてくる。
左右に引き伸ばされた中心に染みが出来ている―― それは、レイの履いていたショーツだ。

そこまでするとは思いもしなかったシンジが唖然としている前で、膝まで下げたそれ以上から抜き取るにはと、腰を屈める隙間も無い周囲に顔を顰める。
邪魔そうに眉根を少し寄せて、放っておけば『下着を脱ぐから、どいて』とでも言い出しそうな気配。
慌ててシンジはその手を押さえた。

「い、良いよ。こんな所で脱がなくても」
「……? 直接触るには邪魔なのでしょう?」

首を傾げてみせるこの少女には、やはりどこか浮世離れしたところがある。

「アスカだって居るのに……。バレちゃったら大変だよ」
「そう? 碇くんがそう言うなら……」

―― さぁ、と。レイはスカートの前を摘み上げた。
密着した姿勢ではよく見えないのがシンジには残念でならないが、その下にはショーツを膝まで下げて、全くの無防備地帯となったレイの下半身が白く差し出されている筈だ。

「い、行くよ……」
「ええ。……触って、碇くん……」

くちゃりと、そこはとぬかるんだ熱さに包まれていた。

「はぁう……!」

レイの身体がビクンとうち揺すられる。
熔けきった部分に直にシンジの指を迎えて。レイでも触れるまでの数瞬を緊張して待っていたのか、シンジがはじめて知る少女の聖域に感動している内に、感極まったような切れ切れの息を洩らしながら、顔を少年の首筋にと預けてくる。
ゆっくりと緊張を解き、強張りの浮いていた内腿からも力が抜けていくと、シンジの触っているそこも自然に蕾を開き始めていた。
受け入れの意思を示す緩やかな合わせ目に、指先が浅く沈められてくる。
充分に潤った粘膜がくすぐられると、たちまちの反応に悲鳴にも近い声が上げられた。

「ごっ、ごめん。強すぎた?」
「……いえっ、いいえっ……。凄く気持ち良かったから……。あ、ああ……もっと……碇くぅん……」
「綾波……」

上擦る声はむしろ切迫して、もっと愛でて欲しいのだと伝えていた。
幾度もの眠れぬ夜に夢見たシンジの愛撫を与えられて、レイはとにかくそこを弄って欲しくてならないのだった。
おっかなびっくりのタッチでは焦れったいとすら感じる。
やんわりと押し当てられた掌の中心で勃ち上がった少女の宝石が刺激され、浅く食い込む指先が泥濘にちゅくちゅくと振動を加えると、それだけでレイの神経に火花が飛び、未熟な感覚が研ぎ澄まされていく。
少女の下半身にそよぐ拙い愛撫の一扇ぎごとに、燃え上がる炎が膨らむ思い。

「はぁん……ン……。んぁ、あ、そこなのぉ……」

シンジの胸に躯を預けたまま、一心に少年の指先を求めてきている。
どれほどの快感を味わっているのか、カクカクと脚を震わせ続けていても、更に深く愛して欲しいとシンジに腰をすり寄せる。
もっと、もっとと、甘えた鼻声で催促しつつ―― それがまたシンジを興奮させるのだ。

「じゃ、もっと足を開いてよ。……ね?」

中指の腹でなぞり上げると、レイは白い喉首を反らせてわなわなと打ち震えた。
こくこくと必死に首を縦に。
シンジの耳元で、甘い吐息が一層熱を増していた。
じっとりと濡れそぼつ、唇にも似た器官へ加える愛撫の一つ一つに敏感に反応して、まだ肉付きの薄い未熟のヒップがくねり踊らされている。
震える唇を半開きに。ただただ快感を訴えるばかりになっている少女の口の端からは、だらしなく涎さえこぼれているのだ。
レイは自分がこうも淫らがましい姿を晒してしまっていると自覚してはいないだろう。
―― いや。シンジの前にシャワーを浴びたばかりの裸を晒してさえ、何の恥じらいも見せなかった少女なのだから、何故シンジがカラカラになった喉に尚も生唾を飲もうとするほど魅入られてしまっているか、理解は出来ないかもしれない。
ただ、シンジがレイの痴態に気が狂いそうな欲情を掻き立てられていると知れば、一途な恋心が『うれしい……』と頬を染めさせただろう。
そして育てられた環境故に稚いとさえ言える無垢さのレイであったが、シンジへの思いを募らせてきた夜を経て、今や拙く言葉を紡ぐ以上にシンジの興奮に応える術を、男を自分に惹き付けるやり方を知っているのだ。

「いいの……。はぁぁ、いいっ……。もっと……気持ちよく……シて、碇くん……」

すり寄せられる胸に二つコリコリと。それが膨らんで硬くなってしまったレイの先端であるのだと、シンジにはもう分かっている。
無意識に何度も胸を押し当て潰すようにして、快楽を貪っている。
じっと見詰められれば恐怖さえ相手に与える怜悧な美貌が、瞳を霞ませて赤く染まっていた。
ハァハァと桜色の唇を戦慄かせながら、とにかく感じてしまってならないらしい。
満員の電車の中で、本来ならば怒り狂うのが当然の痴漢行為を受け入れてしまって、可愛い喘ぎ声で愛欲に耽溺している。
そんなレイの貌はシンジには驚きであり、また自分の手が綾波をこうも悦がらせているのだと思うことは、少年に妙な自尊心を与えてもいた。

「綾波……、凄いよ。凄くいやらしくって……最高だ。もっとしてあげる。だからもっと気持ち良くなって……!」
「あっあっあっ、……あぁっ、ああっ……」

もう何も聞こえなくなってしまっているのか、シンジは指先で急かすようにして更に開かせた股間に手をねじ込んで、ぬかるむ亀裂全体に中指の腹を馴染ませた。
幾重にも折り畳まれたぬめる花びらの奥に、女の子の奥底への入り口を捉えている。
指先を少しだけそこに食い込ませて、ネチャネチャ、ニチュニチュと、聞くだけで勃起が痛いほどの淫らがましい水音。
湧き上がる予感がもっととレイの股間を突き出させた。
ああと白い喉を喘がせて、その瞬間を待ち望む。

くちゅりっ、つぷっ……つぷぷっっ……!

「はぁっ、あー……っ。ああ……ン!」
「ああっ、これが綾波の……。熱い、こんなに女の子のが熱いなんて……」
「碇くん、碇くぅんんん……!」

喜色を浮かばせ、完全に寄り掛かって悶えているレイの陰部は、まだツルツルとして幼い。
シンジはその未成熟の丘をすっぽりと掌に収めて揉みこねながら、伸ばした指先を窮屈な入り口に潜らせた。
レイはたまらないと背をブルブル震わせて、味わうシンジの指を逃すまいとでもするかのように内腿をギュツと締め付ける。
指先を締め付けてくる肉襞はトロトロに熔けていて、とにかく熱い。
蜜液のぬめりもそれまでなかった程にどっと溢れ出して、軽く抜き差しするだけで、指先を濡らすどころか手首まで伝ってくる。
裏返りそうに啼きもらす声は、シンジの忘れかけていた理性が警告を寄越す程に大きかった。

(凄い……敏感なんだ……)
「あっ、はっ……。や、碇くん……やめないで……」

怯んで引き返そうとした指を、点火された肉の快楽に夢中になっているレイがむずがり引き止めようとする。

声を抑えるように頼んでみたが、そんな必死の顔でせがむレイというものも、シンジにははじめて知るものだった。
濡れた唇がぬめぬめと艶かしく、赤く染まった目元もとてもいやらしいのに、何だか幼女を思わせて可愛いとさえ思える。

「お願いだよ綾波。静かに、静かに……ね?」
「ええっ。だから……早くぅ……」

シンジがまた指を滑らせはじめたそのやわらかい切れ目の縁には、僅か一摘みほど生え初めた飾り毛を冠して、少女の真珠が息衝いている。
そここそ最も美しい声で少女を囀らせるスイッチなのだとシンジにも分かっていたが、レイの発情の程を示して尖りきった肉芽は驚くほど敏感になっているらしく、掠るだけでも喘ぎ声のトーンが跳ね上がるのだ。
とにかく物静かで、戦闘中の悲鳴さえ滅多に洩らさないレイを甲高く啼き叫ばせるのは、それはそれでシンジの男心を疼かせるが、場所が場所だけにそうもいかないだろう。
あまり刺激が鋭くなり過ぎないよう注意しつつ―― それがまたシンジ自身にも二人っきりの場所だったならと、もどかしいのだが、ちゅくちゅくと軽い抜き差しをレイの剥き出しの性器に繰り返す。

(人が居なきゃ、もっと綾波にシてあげられるのに。それに僕だって……)

「いいの……。ああ、いいのっ……碇くん……」

捲り上げたスカートの裾を固く握りつめつつ、鼻に掛かった甘え声で啜り泣くレイが、シンジの肩を濡らしていた。
声を殺すように伝えてからは、ともすれば叫び出しそうになる唇にシャツを噛んで耐えている様子だ。
その押し殺した声がまた悩ましい。

「くふぅン、んっ、んぅ〜〜……」
「綾波、綾波ぃ……。良い? 気持ち良い?」
「ええっ、ええっ……!」

気になってならなかった美しい少女を好きに喘がせる事が出来る―― この夢のような思いの中で、シンジはすべすべとしたヒップをまさぐり、泉の如く愛蜜を湧きこぼすレイの秘所に指を踊らせ続けた。

「イっ、あいっ……いっ、碇くんッ! うっ、うぁあ……!」

叫ぶような鋭い愛撫は控えられていても、夢に見たシンジによる快楽刺激に、レイの火床に注がれ続ける愉悦が官能の炎を大きくしていく。

「イっちゃいそうなの、綾波? 僕に触られてっ……イきそうになってるんだね?」
「そうなのっ、はぁっ、あ……。んっ、んぅふ……!」

真っ赤に染まったアルビノの美貌がうっとりと喜悦に歪み、せり上がり続ける甘美な予感に、嬉し涙が止まらない。
もうすぐ、もうすぐなのだ。

「綾波っ、綾波ぃ……!」

与えられる快感を一滴でも逃すまいと、レイは自分の入り口に潜り込んだシンジの感触に意識を集中させた。

ちゅぶっ、ちゅぶっ、にちゅぅっ……!

粘液まみれの指先が浅く食い込んだ一撃で、遂に堰を切った熱情愉悦が背筋を駆け上った。

(すごいのっ、すご……い……、ぃぃい!)

細い眉根が切なく寄せられる。
恍惚の笑顔とも、痛切の悲鳴ともつかぬ複雑な表情に、涙を滲ませた真紅の双眸が虚空に焦点を失う。
尾てい骨のあたりから痺れるように絶頂が全身に広がって、弓なりにのけぞった肢体がビクビクと痙攣した。
それまでの自慰で得られたような頂点とは、比べ物にならない高みへと押し上げられていく開放感。

「むぅうッ、ウムッ、ふむむぅぅぅぅ〜〜〜〜!」

びくっ、びくん……びくんっ……

思わずシンジの肩に歯を立てながら、レイは、魂を打ち揺さぶる歓喜の天辺に華奢な身の全てを任せたのだった。



「いかり……くん……」

はあっと陶酔の吐息を首筋に吹きかけて、

「素敵だったわ……」

願いが通じたものと、そう夢見心地に浸りながらしがみついたシンジの肩越しには、アスカの後姿が見えていた。
窓に縋りついた背中が仰け反っていて、ちらと覗く人垣の間からは、やはりショーツを引き下ろしたヒップが真っ白く震えていたのだ。



◆ ◆ ◆




チクショウ―― と、アスカは脱いだショーツを脱衣籠に叩き付けた。
アスカ自身の漏らした愛液を吸い込んだ布切れは、ぺしゃりと嫌な音を立てる。

(あんなヤツに……好きにされて……!)

使徒との戦いに勝った。それも無茶極まりない作戦を成功させて―― シンジ達とのコンビネーションも最高だった。
約束通りミサトに奢らせたラーメンも美味しかったし、シンジの本音も少し覗けたような気がした。
レイの妙に通な好みも知る事が出来た。
要するに上機嫌だったのだ。
―― 帰りの電車で鈴原トウジに出くわすまでは。

(いやらしいオトコっ。何の取り得もないバカの癖に……このアタシを……)

忌々しい限りの痴漢行為にさんざん嬲られて、抗議もまるで聞き入れられることなく胸を揉まれ、スカートの下を弄られた。
舐めしゃぶられた首筋はべたべたと気持ちが悪いし、終いにはショーツまで引き下ろされてしまった股間も同様だ。
あの時珍しくトウジが自分のジャージ嗜好を残念がっていたように、もしも普通にファスナーで前を開くことの出来るズボンを履いていたなら……。
自分は犯されていただろう。満員の乗客を乗せた電車の中で。

『残念やなぁ……。ほんま、惣流ももう我慢が出来へんのやろうになぁ?』
『うるッ、サイ……! アンタは、いい加減に、ぃいいい〜〜!』
『こないな場所でケツまで出して……。もうベッチャベッチャのドロドロマンコになっとるのにのぉ、惣流?』
『あうっ、ヒッ、深い……! ぃ、脱がせたのは、ああ……アンタでしょうがっ!』
『それでも、濡らしまくって悦がっとんのは自分やろ? こ〜んなに解れてしまっとるしの。入れて貰いたくて堪らんって感じやな』
『はぁあうぅっ! あっ、変なもの……押し付けないでよっ!!』
『わいも堪らんで、ホンマ……!』

何よりも我慢できないのは、本当は分かっているからだった。
自分は抵抗出来なかったわけではない。抵抗をしなかったのだと。

『キュウキュウ締め付けよってからに。指やのうて、チンポやったらワイも気持ち良うなれのんにな。なんや不公平やで。気持ち良うなっとるんは、惣流だけや』
『誰がっ、気持ち……ぃイぃあああぁぁぁ……!』

強がりを叫ぼうとしても、その端からあさましい悦がり声が自分を裏切ってしまっている。
―― いつものことだ。
ヒカリに誘われ、トウジに強引に引っ張られて、いつもベッドに連れられて行くその時から、アスカは股を濡らしてしまう女の子になってしまっているのだから。
最近はもう、学校だろうが下校中の物陰だろうがお構い無しに、二人の手で躯を撫でられるだけでその気にさせられてしまう。

(アタシ……どんどんだらしなくってきてる……)

だからこそ、電車の中だというのに自分は感じてしまっていた。
トウジの痴漢行為を悦んでしまっていたのだ。
ブラウスの上からだけに物足りなくなった手がぷつぷつとボタンを外し始めた時には、やり易い姿勢にと協力さえしていなかったか?
そうして胸元にまさぐり入ってきた掌にブラジャーとの隙間までこじ開けられて、乱暴な愛撫に乳首を摘み転がされ、噛み殺した悲鳴は、どこか甘えたものではなかっただろうか?
トウジの手がショーツをずり下ろそうとしていく中、蒸れたスカートの下に吹き込むひんやりとした空気をスリットに感じて、自分は背筋にゾクゾクと期待しての愉悦を覚えていた筈だ。
ドアに上体を預け、まるで背後からのアタックを受け入れるような姿で秘部を弄られ続け、幾度と無くアスカの中を嬲った指に貫かれて、切羽詰った啼き声を上げていた。
―― そして、トウジの囁く淫らな言葉に苛まれながら迎えたアクメ。

(あんな事まで言わされて、アタシ……)

まるでエサの為ならなんでもやってのけるバカ犬のように。愛液に熔けきった狭隘な膣洞をズポズポと抜き差しに責められ、追い詰められたアスカは、愚かにもとどめを請い願ってその要求に屈してしまった。
自らの浅ましさ、淫らさを認めさせられて、セックスを望んでいるのだと言わされた。
それは真実を認める言葉でもあったのだ――

(アタシは……スケベで、淫乱で、変態……)

自分自身を偽れるわけがない。
屈服と引き換えに与えられた心地良い痙攣も、力が抜けた身体をトウジに抱きとめられて、やわやわと事後の火照った肌を擦られた陶酔も、全てを覚えている。
そしてまた、そんな浅ましく愚かな女の子をあの男やヒカリにしっかりと知られてしまっていることも、また疑いようのない事実だ。
カードの手の内はあからさまになっているのに、それで駆け引きが出来る筈がない。
だからアスカは、あの二人に貪られる一方なのだ。



鏡の中の赤毛の女の子が、目を赤く、弱々しく肩を落とした姿でアスカを見詰めている。

(違う! こんなの……アタシじゃない!)

髪を振り乱して否定するアスカだったが、なにより今だ収まらぬ躰の疼きが全てを物語っていた。
胸は痛いほどに張り詰め、女の芯が尖りきっている。
つい先程、オーガズムを与えられたばかりの筈の子宮が、たらたらと太腿に涎を垂れ流している。

『こないだ、雨宿りさせてもろた時も途中までやったしな?』

求めているのだ。
膣の底に浴びせられる、熱い精の迸りを。

『お互い、堪っとるやろ? こないな程度では収まらんからのぉ』

別れ際にトウジは囁きを残していた。今晩は家に誰も居ないからと、二人で朝まで楽しもうではないかと。

(アタシ、馬鹿なこと考えてる……)

愛しいシンジでなくとも、この飢えを満たしてさえくれるのなら――
その囁きは悪魔の声だと、分かってはいるのだ。アスカにも。
だがどうせ、シンジにと決めていたはずの処女も奪われてしまった。
二人がかりで犯されたのも、ネルフによって避妊投薬がされているからと膣内射精を受け入れさせられたのも、数度どころの話ではない。
乙女の唇さえ、ファーストキスより前にトウジのペニスに口付けさせられた―― そんな今のアスカに、奇麗なところなど残っていないのだ。

(どうせファーストとは違うわよ……)

「シンジっ。アタシ、ヒカリのトコに泊まるから!」
「こんなに夜遅くに……。委員長だって困るよ、きっと……」

そんな我侭を言い出すのもいつもの事だし、喧嘩の度にアスカが親友の家に行ってしまうのも慣れた事だ。
だから、シンジの声は弱気に反対はしていても、もう諦めの色を浮かばせてしまっていた。
そこには、電車を降りてからの妙に不機嫌なアスカが絡んできたように、レイと宜しくやっていた―― アスカに『随分、楽しそうにしてたじゃない?』と言われた以上に、実際は過激な事をしてしまったのだが―― その後ろめたさもあったのだろうが。

(結局、引き止めようとしてくれないんだら……!)

それは嫉妬なのだと気付いてくれない物悲しさを抱えて、半ば自棄混じりにアスカは家を飛び出した。

(アタシ……犯されに行くんだ。……自分から、あんなやつに……)

夜道を歩きながら、淫欲に突き動かされる自分の惨めさを自嘲して笑う。
だが、俯き加減に前髪を落としたその口元に覗いていたのは、快楽の予感に打ち震える、どこか卑屈な笑顔でしかなかった。




To be continued...



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