「ほら、『あーん』して」
 「……」
 「ほら、レイったら」
 「……自分で……できる……から……」
 「意地を張らない。ね?『あーん』」
 「……ぁ……」
 陶器のような肌を持つ少女がうっすらと頬を染め、少し上を向く。
 そっと唇を開き、なぜか瞳を閉じる。
 まるでキスをせがむかのように。
 綺麗に皮を剥かれ、丁寧に切り分けられた林檎がそっと小さく開けた口に差し込まれる。
 さくさくと口を動かして飲み込む。「ほら」とくすくす笑いとともに唇の端をタオルで拭ってもらうと彼女は真っ赤になった。
 「おいしい?」すぐ目の前に優しい瞳があった。彼女は真っ赤になったままうなずく。
 「じゃ、また、『あーん』」
 「……あーん」
 プラチナブロンドの少女は今度は素直に口を開けた。
 照れくさそうに、でもとても嬉しそうに。
 少女と似た面立ちの従兄弟の差し出す林檎を美味しそうについばんでいた。



聖隷病棟





 ……いいな。あんなに仲が良くって。
 ベッドの上に身を起こし、膝に本を載せたままで惣流・アスカ・ラングレーはそっと溜息をついた。
 仕切りのカーテンの隙間から垣間見える二人部屋の隣のスペース、その光景が彼女にはひどく羨ましい。
 本人には自覚症状はないものの循環器系統に「重大な問題の予兆」が発見され、検査入院させられてしまったアスカを訪ねてくれるはずの母親はドイツからまだ戻ってこれないからだった。
 義理の父親とその娘たちは一度も顔を見せようとしない。
 だからアスカはアルビノの少女……綾波レイ……のことをよく知るようになる。
 直接口を利いたことはほとんどなかったが、アスカはレイとその優しい従兄弟のことをよく知るようになる。
 ほぼ毎日、放課後になると必ずやってくるレイの従兄弟、碇シンジとレイとの会話を漏れ聞くことによって。
 その他愛ない会話から。その柔らかな口調から。少年が立ち去ったあとのレイの哀しげな溜息から。

 碇シンジの訪問をアスカ自身が心待ちにするようになったのは、いつのころからだったか。
 彼がやってくるころには、自慢の髪をきちんと梳り、パジャマの裾が乱れていないかチェックするようになっていたのだ。

 だから、カーテンの隙間から少年と目が合ってしまったときは本当に嬉しかったのだ。
 「な、なによ。レディのベッドを覗くなんて失礼よ」と口走ってしまったのは動悸をごまかすために過ぎない。
 だから「ご、ごめんなさい」と碇シンジが瞳を逸らすと、「あ、その、えと、あの、そんなつもりで言ったんじゃないの。え、あの、その、つまり……」とみっともないほど慌ててしまったのだ。
 だから、シンジの母親が彼に持たせたという林檎を、お菓子をお裾分けしてもらったときは泣きたいくらいに嬉しかったのだ。
 レイが上目遣いで睨みつけていることなんて気にもならなかったのだ。
 一週間経たないうちに、少女は少年を「シンジ」と呼び捨てにするようになった。
 プラチナブロンドの少女と自分のベッドを隔てるカーテンが開いている時間のほうが長くなった。
 レイという美少女が虚弱体質ながらも、(いや、だからこそか)鋭い観察力と辛辣な舌を持っていることを知ったのだった。
 そして、少女たちはいつの間にか「退院したあとの予定」についてぽつりぽつりと話し合うようになっていた。




◆ ◆ ◆




 少年とレイが秘密を持っていることをアスカが知ったのは、その「予定」に碇シンジが不可欠の存在になってしまったころだった。
 アスカが自分の感情が「恋」であることをはっきりと理解してしまったころだった。
 隣のベッドに横たわる美しい少女を友人として扱うべきか、仮想敵として扱うべきなのか悩みはじめたころだった。

 ぼんやりと常夜灯に照らされた室内で、深夜にぽっかりとアスカは目覚めてしまう。
 隣にはひとの気配があった。
 最初は巡回の看護師かと思った。
 だが、なにかが違っていた。
 彼らの声は若く、むしろ幼いといってもよいほどだった。
 さらに彼らは切ない吐息を漏らしていた。
 なぜかアスカは声をかけることをためらい、息を殺したままカーテンの隙間からとなりを覗く。
 口元をぎゅっと押さえる。
 心臓が早鐘のように打つ。
 そこにいたのは何一つ身にまとわない姿でベッドに横たわる綾波レイ。
 そこにいたのは碇シンジ。
 二人は病院のベッドの上で抱き合っていた。
 綾波レイは声を押し殺したまま、情熱的に従兄弟の唇をむさぼり、ちゅ、ちゅっと少年の顔中にキスを浴びせては幸福そうな笑みを浮かべていた。
 碇シンジはレイとのキスのあいだも彼女の絹肌を慎重にしかし情熱的に撫で回し、少女の柔らかな胸の膨らみを愛情を込めて愛撫していた。

 ……そうなんだ。やっぱりそうなんだ。
 惣流・アスカ・ラングレーは納得する。
 ……すごく仲良かったもの。レイだって、「碇君ダイスキ」オーラを放ってたもの。きっと、なんどもこんな風に愛し合ってたんだろうな。
 ……お似合い、なんだろうな。きっと。あ、でも、レイがこんなことするなんて意外だわ。
 意外でもなんでもない、とアスカは気付く。
 愛する少年が深夜に自分のところへ忍んでくれたのだ。
 どんな要求にでも応えるのは恋する少女なら当然だろう。
 声を押し殺したままレイとシンジは抱き合うさまを見つめながらアスカは納得する。
 もし彼が、自分のところへやってきたのなら……。
 当然だろう。唇も、肌も、もし彼が望むのなら純潔さえも……。
 そう、これは当然のことなのだ。
 アスカは理解する。紺碧の瞳に涙を浮かべつつ。
 涙に濡れた視野のなかで、シンジとレイは若い肉体を密着させたまま甘いキスを交わしていた。




◆ ◆ ◆




 綾波レイは内心で首をかしげていた。
 いつもならけたたましいほどの勢いで話しかけてくるクォーター美少女、惣流・アスカ・ラングレーがカーテンを閉じたまま出てこようとしないのだ。
 まるで二人の関係が数週間前まで逆行したかのようだった。
 ……ひっきりなしに話しかけられるのも疲れるけれど、急にこうなってしまうのも。
 レイは小さく溜息をつく。
 しかし深夜の秘密の逢瀬による心地よい疲労がまだ抜けていないレイは、それ以上深く考えようとしなかった。
 いや、考えることもできない。
 愛おしい従兄弟が優しく衣服を脱がしてくれるあのときめきのことを思い出せば。
 甘く情熱的な口づけのことを思い出せば。
 やさしい指遣いが与えてくれる快楽のことを思い出せば。
 レイは両肩をぎゅっと抱きしめる。
 自身の躰の、それも下腹部の火照りを少女は幸せなものと認識していた。
 ああ、碇……くん。会いたい。会って、もっと愛してほしい……。でも次は、来週……なのね。ああ、もっと逢えればいいのに。
 しかし少年と少女の関係を不憫に思ってくれる女医が再び夜勤となるのは、週に一度しかない。
 人によっては無表情にしか見えない美貌を、かすかに、ほんのわずかに期待に朱く染めていた。




◆ ◆ ◆




 その夜もアスカはふと目を覚ます。
 カーテンの向こうに、レイ以外の気配があった。
 ……今日も……また……シンジが来ているのね。
 アスカは哀しく結論しようとする。しかし、隣の気配はたった一人のものではなかった。
 そっとカーテンの隙間から覗く。
 アスカは悲鳴を押し殺す。
 そこにいたのは碇シンジではなかった。
 そこにいたのは四人の大人、この病院の制服を着た医師たち……だった。
 そして綾波レイは彼らにされるがままだった。
 そう、レイは瞳を閉じ、規則的な呼吸を繰り返したまま夢の世界にいたのだった。
 パジャマを脱がされ、さわさわと肌を撫で回されるレイが睡眠薬かなにかの支配下にいるのは明らかだった。
 綾波レイは望まないまま男たちの玩具となっていた。

 シーツの上に投げ出されたレイの両手は男たちにそれぞれ持ち上げられ、剥き出しになった彼らのペニスを握らされていた。
 その醜悪な先端からにじみ出る液体にほっそりとした指が汚されても、レイの瞳は閉じられたままだった。
 青白い内腿を大きく広げられ、淑やかな花弁を猛烈な勢いで舐め回されると切なそうに眉根を寄せつつも、夢の世界から戻ってくることができない。
 形の良い鼻をつままれて、無意識のうちに唇を開けてしまったところに無理矢理ペニスをねじ込まれても拒絶などできない。
 碇シンジに優しく愛撫されていた乳房の先端を左右からこりこりと甘噛みされつつ、「ん、んんっ、ふぅぅぅ」とうめき声を上げながら、獣たちの汁液を喉へ流し込まれるのだ。
 そして裏に返されてお尻を突き出した姿勢を取らされ、綾波レイは陵辱される。
 夢心地のまま蜜を湧き出していた幼い花弁に、医師達は醜悪に腫れあがったペニスをゆっくりとねじ込み、乱暴に腰を振った。
 少女の肉の締まりの良さと、火傷しそうなほどの熱さを絶賛しつつ、まだまろみのたりない腰を抱えてずんずんとスラストする。
 男の腰の動きに、無意識のうちになまめかしい吐息を漏らしているレイの様子からして。この無法がなかば日常的に行われていることは明白だった。
 そしてこの犯罪がいまだに露呈していないことも。
 美しいダッチワイフにされてしまった少女は、未成熟な子宮へ精液を流し込まれても睡眠薬によってまだ夢の中だった。
 愛らしい表情を白濁液で汚されたまま、次の男とのセックスを強いられていたのだった。

 その夜、綾波レイは四人の男に二回ずつ犯された。
 惣流・アスカ・ラングレーはそのさまを黙って見つめていた。
 医師達が立ち去ったのち、そっと数人の看護婦がやってきて「可哀想に」とつぶやきながらレイの躰を清めるさまを、彼女の膣を洗浄するさまを震えながら見つめていた。




◆ ◆ ◆




 綾波レイは内心で首をかしげていた。
 昨日はひどくふさぎ込んでいたアスカが、今朝はひどく上機嫌なのだ。それどころかレイの体調をひどく気にしてくれるのだ。
 確かに今日のレイはあまり調子が良くない。
 全身の筋肉が痛むし、股のあいだもなにか違和感がある。
 そして、体の芯の火照りも治まらない。
 碇シンジが来てくれなかった夜にときどき起こる症状がまた、自分に起きてしまったのだ。
 レイは溜息をつく。
 こんな風だから、私はまだ退院できないのね。
 早く退院したいのに。早く退院して、碇君に私を……私のバージンを……捧げたいのに。
 それに、早く退院しないと……隣のベッドの女の子、とても綺麗で愛らしい惣流・アスカ・ラングレーに碇君が奪われてしまうかもしれない。
 彼女はとても甘え上手で、自分などよりもずっと会話がうまくて、それに「セクシー」なのだ。
 自分と碇君との間に当然のように入り込んできてしまったこの華やかな天使に、彼を取られないようにするためには、深夜の愛の交歓だけでは絶対に足りないのだと綾波レイは認識していた。
 なのに、それなのに……。
 熱っぽい頬に手のひらを添えて、レイはアスカに背を向けて目をつぶる。




◆ ◆ ◆




 ぼんやりと常夜灯に照らされた室内で、ふと綾波レイは目を覚ます。
 隣にはひとの気配があった。碇シンジではない。複数の気配だった。
 そっとカーテンの隙間から覗く。
 悲鳴を必死で飲み込んだ。

 そこにいるのは全裸の惣流・アスカ・ラングレーと五名の医師だった。
 少女はぼんやりとした半覚醒の表情で、男のペニスを頬張らされていた。しなやかな指で別の男のペニスを握らされていた。
 そして、長いすらりとした脚を大きく割り裂かれて、夜目にもはっきり分かるほど屹立してしまった肉芽をペニスで突き回されて、ひくりひくりと腰を痙攣させていた。
 大理石のような肌理細かな肌をぽっと上気させて、甘い鼻声を上げていた。

 ……悪戯されているのね。彼女。
 ……眠らされて、いえ、夢心地のままで、犯されているのね。
 ……あんなにたくさんの男の人たちに、無理矢理に……なにも知らないうちに。
 ……あぁ、ああ、彼女、二つ折りにされて男の人のペニスが入って、入っていく……ああ、アスカって……初めてじゃ……ないの……ね。
 ……胸を左右から……こりこりと……ああ、ああ、お尻の穴も弄られて。ね?アスカ、貴女、本当に眠らされているの?そんなに涎を垂らして、だらしない顔をして。
 ……貴女には、もう、資格なんてないわ。「彼」に愛を告げる資格も、愛される資格も。
 ……だって、貴女、まだ私と同じ一四歳のはずなのに、そんなに大きなペニスを受け入れられるなんて……。そんな女は……ふさわしく……ないわ。
 ……たとえ眠らされていても、そんなに感じてしまうような淫乱なんだもの。

 アスカのために助けを呼ぶつもりがいつしかなくなっていることに綾波レイは気付いていた。
 同時にそれが正しい判断だと理解していた。

 だから彼女はカーテンの隙間越しに観察を続ける。
 少女の最大のライバルが夢心地に堕落していくさまをじっと見つめている。
 パジャマのズボンの中に、自分の小さな手のひらがいつの間にか侵入し、くちゅくちゅと動いていることなど気づきもせずに。




◆ ◆ ◆




 深夜の病院の廊下を何人もの足音が響く。
 ドアの前で、ひそひそ声で彼らは笑い合う。
 「おやおや」
 「今日はダブルブッキングですね」
 「これは面白い趣向ですねぇ」
 ノブが回り、「彼ら」が入ってくる。
 しゅっ、と惣流・アスカ・ラングレーと綾波レイのベッドを隔てるカーテンが開けられた。
 二人が横たわるベッドに卑劣漢達が群がる。
 「今日の投与量は?」医師の声で誰かが尋ねた。
 「いつも通りです。朝までまったく目を覚ますことはありません。レイちゃんも、アスカちゃんも朝までぐっすりでしょう」
 「そうか」誰かが嗤った。「朝まで『キモチのよい夢』を見続けるわけだ。彼女たちは。いつものように」
 そう言って毛布を払いのける。
 天使たちは瞳を閉じ、規則的な呼吸を繰り返していた。どよめく男たち。
 「いつ見ても愛らしい」綾波レイの頬を男の手が撫で回し、輝くようなプラチナブロンドを玩ぶ。
 「こちらのお姫様も綺麗ですよ」くすくす笑う誰かの指が、花の蕾のような唇をいじりまわす。
 「大丈夫だろうね」ゆっくりと、念を押すような口調で誰かが言った。
 「もちろんですとも。いまの彼女たちは淫らな夢を見ているとしか認識できませんよ」
 「なるほど。では、さっそく」
 レイのブルーのパジャマのボタンが、アスカの黄色いパジャマのボタンが、ひとつひとつ外されてゆく。
 少女たちは人形のように、彼らの行為を受け入れていた。

 ショーツを残して衣類を剥ぎ取られた二人は、輝く裸身をうつぶせに尻を突き出す姿勢を取らされる。彼女たちの恥ずかしいところを隠しているのは、簡素なデザインの木綿のショーツだけだった。
 いや、それすらもう、役に立っていない。
 「ほぉ」老人が感嘆の声を上げた。「今回の『ドール』の仕上がりは早いな。男の指でいじられるだけでここまで濡れるか」
 少女の淫花はそこからにじみ出る大量の蜜によって、ショーツ越しでもはっきり分かるほど透けてしまっていた。
 「感じやすい身体なんですよ。二人とも」
 「なるほどねぇ。いつでも準備オーケーというわけか」
 くりん、と少女たちのショーツが剥かれて白桃のような美尻があらわになる。細い足首から抜かれた下着は男たちの手を渡り、二人の蜜の色と匂いが比較された。
 アスカの、レイの背後にそれぞれ男が位置する。にんまり笑うと猛り狂うペニスを少女たちの潤んだ秘裂にあてがう。
 そのままねじ込んだ。
 レイの、アスカの唇から小さなうめき声が漏れた。
 「いい締め付けだ」レイのまだ青硬なヒップを撫で回していた男がうめいた。
 「こっちもですよ。ほんと、アスカちゃんっていいモノもってますね」細いウエストを掴み、ぐりぐりと揺すっていた男も笑う。
 彼らは容赦しなかった。
 少女の狭い肉洞を大人の性器でごりごりと擦り上げ、感じやすいスポットを開ききった鰓でこすり立てた。
 美少女達の輝く裸身はたちまちのうちに脂汗でぬめ光る。
 アスカの、レイの声にならない吐息が室内に満ち始める。
 「感じてますねぇ。二人とも」別の男が枕元に立ち、そっと少女の髪を撫でる。「とても素敵な夢を見ているんでしょうねぇ。アスカちゃんも、レイちゃんも」
 男たちは目配せをする。
 犬這いの姿勢で犯されているふたりの夢見る少女の髪の毛が掴まれ、向き合わされる。
 男の口がレイの、アスカの耳元に近づく。
 そしてささやかれる。
 「いつまで寝たふりをするつもりかな?」
 「起きているんでしょ?」
 「「!!」」少女たちの瞳が見開かれる。
 紅の瞳が、紺碧の瞳が見開かれ、お互いの姿を認め合う。
 二人の唇から悲鳴が漏れ、一瞬後には大きな手のひらでふさがれた。
 泣き叫びながら二人は暴れる。それが男たちにさらなる快楽を与えてしまうことなど気づきもせずに。
 お互いの恥ずべき姿から視線を逸らすこともできず、少女たちは犯される。
 「薬を投与されている」と告げられただけでそれを夢だと思いこもうとしたことをからかわられ、こざかしく心理解釈されてしまう。
 一四歳の少女たちが逃げ込もうとした闇の部分をあげつらい、快楽以外に逃げ場がないことを教えてやる。

 ……ああ、ああ、夢だと、夢だと思ってたのに。本当に犯されていたのは貴女……アスカだと信じていたのに。
 ……アタシも!アタシもオモチャにされて……イヤ、イヤ、ウソよ、ウソよ!玩具にされているのはレイだけ、レイだのハズ!アタシは、アタシは夢を見ていただけ!夢を!

 「ほうら、もう我慢しなくていいんだよ」
 「おら、おら、おらぁ!」
 ずんずんと突き込まれ、二人の少女は甘いうめきをあげはじめてしまう。

 男に背後から貫かれたまま、少女たちは現実を直視させられる。
 綾波レイも、惣流・アスカ・ラングレーも、二人とも男たちの性玩具として開発されてしまっていたことを。
 しばしば陥る「淫らな悪夢」は美しいライバルになされていた卑劣な行為を思い出してのものではなく、まさしくその「開発」が我が身になされていたものであることを。
 ここ数週間、「悪夢」が現実感を強く持ち始めていたのは、投与されていた睡眠薬の量が徐々に減らされていたからだということを。
 そして今夜、二人には夢の中へ逃げ込むことも許されなかったことを。
 少女たちが「現実」から目をそらし、唇を噛みしめて快楽を表現することをこらえているさまを彼らは笑いながら見物していたことを。
 そう、快楽なのだ。
 彼女たちは快楽を感じていたのだ。

 自分の肌を撫で回し、悪戯する指に甘い声を上げそうになっていたのだ。
 柔らかな胸の膨らみをねちっこく揉まれ、先端を指で舌で嬲られると、その「夢」の中はピンク色に染まるほどだった。
 ショーツ越しに、あるいは平然と侵入する指に花心と花弁をくちくちと弄られて、「なんて素敵な夢を見ているのかしら」とちらと考えてしまったのだ。

 そう、とても気持ちがいいのだ。
 こんな姿勢で、こんなに強引にされているのに。
 そうなのだ。
 自分たちの躰は変えられてしまったのだ。
 牡のペニスに貫かれて、甘いめまいを感じるようにされてしまったのだ。
 乙女の心のままで、無垢な少女の精神のままで。

 悲しい理解に達してしまったアスカの、レイの瞳が見開かれた。
 ため込まれた快楽の圧力に負けた華奢な肉体が跳ね上がる。
 がくがくと震え、屈辱の涙を流しつつ望んでいないのに狭隘な肉壁で陵辱者のペニスを締め付けて絶頂を迎えさせられる。
 子宮へとたっぷり流し込まれる精液の熱さに、二人の美少女は悲鳴を上げた。

 「交代」と同時に少女たちはぐるりと身体を巡らされ、屈辱的な正常位でのセックスを強いられる。
 もがく両手は男に押さえ込まれ、さらに叫ぼうとする唇にはさきほど脱がされた、まだ体温の残るショーツがねじ込まれる。
 アスカの唇にはレイのショーツが。
 レイの唇にはアスカのショーツが。
 汗よりも塩辛く、どこか酸味を感じる蜜を感じてしまうと、レイもアスカも一切の抵抗を放棄してしまった。
 男にずぶずぶと犯されながら、つんと尖ったバストを、敏感な贅肉一つない脇腹を、可愛らしいおへそをさわさわと指で刺激されながら、くぐもった声で感極まった泣き声を上げ続けていた。
 隣のベッドで泣きながら犯される美しくも可愛らしいライバルのさまを、じっくりと観察させられ、さらにはなんども見つめ合うことを強制させられながら、屈辱的な高みへと連れていかれる。
 少女たちはなんどもエクスタシーを迎えさせられる。
 それも男たちの顔を見上げる体位のままで、自身の胎内へ情け容赦なく迸らせる彼らと見つめ合う姿勢をとらされて。
 これは夢ではないことを思い知らされながら、レイとアスカは絶頂へ駆け上がっていく表情と快楽に弛緩する表情を男たちに観察され、はやし立てられる。
 この地獄から抜け出すすべを二人は見つけることはできない。
 お互いに声をかけて慰め合い、励まそうとしても可愛らしいライバルの下着を頬張らされた唇からは言語にならないうめき声しか出せはしない。
 それどころか牡に犯されている間にその声さえも甘く淫らにとろけてしまうのだ。
 いつしか淫猥なコーラスへと変化したお互いを呼ぶ声を聞いているうちに、彼女たちは美しい乙女から男の欲望に奉仕する人形へと化身していく。
 自分自身で腰を突き上げ、さらなる快楽のために熱く硬く、太いペニスをきゅうきゅうと締め上げて牝の悦びをむさぼりはじめてしまった。
 いつしか、「これが夢ではないこと」を感謝しはじめていることすらもう気がつかない。


 だが、今日の「深夜授業」はこれで終わりではない。
 彼女たちには「仕上げ」としての最後の工程が待っていたのだ。
 華奢な少女たちは強引に持ち上げられ、対面座位でごりごりと貫かれた。細い手首は背中に回され、手錠がかけられる。
 ごろりと男が仰向けに倒れた。
 レイもアスカも泣きながらの女性上位にされてしまう。
 その淫らな姿勢から逃れることは目覚めてしまった二人にはできなかった。軽く腰を押さえられ、そこで突き上げられると少女たちは悲鳴を上げつつ男の上で腰を振りはじめる。
 止めることなどできない。我慢することもできない。
 ぽろぽろと涙を流しつつ、くりくりとお尻を振って秘肉とクリトリスからの快楽をむさぼってしまう。
 それも隣のベッドで同じ姿勢のセックスに没頭しているライバルと見つめ合うよう強いられて。
 その淫らな性交を強いられている男にささやかれた。
 「二人とも、寝る前にお腹の中を綺麗にしたよね?」
 ぎしりと音を立て、少女たちの背後に男が位置するの。
 「んんんッ!ふぅぅぅッ!」アスカが涙をこぼしながら首を振る。
 「うぅぅぅッ!ふぅぅぅぅッ!」レイも蒼白になっていた。
 「大丈夫だよ。アスカちゃん、レイちゃん」男たちの声はあくまでも優しかった。「二人ともお尻のセックスは経験済みなんだから。『夢の中で』ね」
 ぬるりとローションを塗りつけた人差し指が二人のアヌスへ侵入したとき、二人はそれが嘘ではないことを知る。
 アスカもレイもくぐもった苦鳴をあげながらも、脊髄を這い上がる快楽に意識を白熱させてしまっていたのだから。

 「おぉぉぉ……ふぅぅぅうぁ……ッ」
 「アスカちゃん、すごく良さげだねぇ」耳元でささやかれ、惣流・アスカ・ラングレーはなんども首を振る。
 「嘘ばっかり」反対側からささやかれた。「見てごらん、アレを」
 促された方向には、綾波レイがいた。
 ベッドの上で男に前後から挟まれている綾波レイが。
 スレンダーな肉体を軽々と抱きかかえられ、かくかくと膝から先を揺すりながら陰裂と菊門を男のペニスに貫かれているアルビノ少女がいた。
 「ふぅぅぅッ、ふぅあぁぁぁ……ッ、う、う、うぅぅぅぅッ」
 ずるり、ぬるりと巨大な二本のペニスが彼女の体内へ交互にピストンされると、アスカのショーツを頬張らされている唇からは獣じみた悲鳴が漏れていた。
 しかしその表情は、その瞳は、アスカを愕然とさせるには十分だった。
 アルビノの美少女の瞳は甘く澱み、怜悧な表情は快楽に負けてしまっていることが明らかだったからだ。
 そしてレイは、アスカをどんよりと見つめていた。全身を快楽で痙攣させながらも視線を逸らすことができないようだった。
 そのレイの表情に、免罪を求めるものがあることにアスカは気付いた。
 そのレイの視線に、安堵があることにアスカは気がついた。
 そのレイの瞳に、自身が映っていることにアスカは知る。

 そうなのだ。
 綾波レイはアスカのさまに安堵していたのだ。
 男たちに前後を貫かれ、甘く惚けた声を上げ続けているアスカに。
 腰高なボディを震わせて、前後の穴のセックスによる快楽を表現しているアスカに。
 レイにはまだ施されている手錠が外された両手を、しっかりと男の背に回しているアスカに。

 それに気付いた瞬間、惣流・アスカ・ラングレーは崩壊した。
 「ふぅぅぅ……ン。はぁぁ……ッ」
 ぶるぶると痙攣しながら、男にさらに強くしがみつく。
 途方もない快楽に精神を溶解させながら、涙をこぼしていた。
 「サンドイッチにされてのセックス、大好きかい?アスカ」と尋ねられると泣きじゃくりながらなんどもうなずいてしまっていた。
 狭隘な肉裂できゅうきゅうと男のものを締め上げ、幼い子宮への放出を促してしまっていた。
 綾波レイに見つめられていることを意識しながら、彼女へ向かってにっこりと微笑んでしまっていた。

 アルビノの美少女が甘い悲鳴を上げつつ大きくのけぞり、全身を弛緩させた。
 その手錠が外される。
 綾波レイは泣きながらその両手を男の背中へ回し、愛らしい胸の膨らみを男に押しつける。
 「ご褒美」として前後のピストンのピッチが上がったとき、アルビノ少女は惣流・アスカ・ラングレーに感謝の視線を向けていた。


 だから彼女たちには聞こえない。

 「……アスカ君、君は来週退院だよ。いや『出荷』というべきかな。キミはお義父さんの愛玩動物としての生活が待っているんだよ。義理の姉妹もきっとキミを可愛がってくれるだろうねぇ。あ、それから、ママが帰国しているとパパに気持ちよくしてもらえないからといって、ママに辛く当たってはいけませんよ……」

 「……レイ君はね、『さらなる精密検査のために転院』だよ。そう、キミはね、選ばれたんだよ。この国の中でごく一部の方が入院する病棟にキミは移ることになるんだ。キミはそこで、すごく気持ちのいい『診察』を受けるんだよ。『医者じゃないセンセイ』がたによってね。もちろん『お礼』としていっぱい奉仕してもらうことになるんだけどね……」

 美しいライバルと濡れた瞳で見つめ合う少女たちにはそんな言葉は聞こえない。
 淡く純粋な恋敵の転落ぶりを免罪符にし、セックスドールとなることを選択してしまった彼女たちには聞こえない。

 そして、もう理解することもできない。
 二人が恋していた少年には、もう二度と会うことができないなど。



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Original text:FOXさん