First Mission



01

(レイったら、大丈夫かしら……)

惣流アスカは、たった一人で歩いていく喧嘩友達を思って不安げに睫毛を震わせた。
こっそりと覗き見る先では、綾波レイがきゅっと唇を結んで、まさに覚悟を決めたようにそのドアをくぐろうとしている。
小さな拳をぎゅっぎゅっと握り締めているのは義兄譲りの癖だろう。
普段はおりこうさんを気取って見せて一人前のような口を叩いているのに、そんなレイでもやっぱり心細いのに違いない。
アスカがライバル視している何かと生意気な同い年の女の子。
面と向かえば憎まれ口ばかり叩いている関係なのに、時折見せる不安そうな上目遣いのルビーの瞳が思い浮かぶ。
そんな時、何故だかいつも放っておけないアスカは『あ……』と声を掛けそうになってしまって、ポンと肩に置かれた手に振り返った。

「大丈夫だよアスカ。レイは心配ないよ」

にこりと笑いかける優しい顔。
アスカの住むマンションのお隣さん、大好きなシンジお兄ちゃんの笑顔を向けられると、アスカの不安は春の陽に照らされた雪のようにあっさりと消え去ってしまうのだった。

「もうレイもピ―― !才。一人でおつかいだって出来るよ。……さ、アスカ。僕達はレイがしっかり買い物を済ませて帰ってくるのを待っていよう」
「うん!」

安心させるように頷いてみせるシンジお兄ちゃんに元気に返事を返して、アスカはまた、はじめてのおつかいに臨むレイを応援するように、電柱の影から二人並んで「赤木薬局」と看板を出した店を覗き続けるのだった。



はじめての
い 



「あら。こんにちは、レイちゃん。今日はシンジ君はどうしたの?」
「シンジ兄さんはおうち。……今日は一人でおつかいなの」

店員でもないのに始終店に居付いている大学生、伊吹マヤはちょっと残念そうにしてみせたのだけど、幼い顔に少し背伸びした決意を見せるレイの愛らしさに、ずくにいつものダメな人になってしまって『レイちゃん偉いのねぇ』などとはしゃいだ声を上げた。

「マヤちゃん。自分で言い出した店番なんだから、騒いでないできちんとなさいな」

なにやらこめかみに手を当てつつ、店の奥から店主の赤木ナオコも顔を出す。
伊吹マヤとの学生時代の先輩後輩の間柄を今も昼に夜に引き摺っている赤木薬局の跡取り娘、リツコの母親にして、紫の口紅がアダルト過ぎる独身熟女だ。
店を訪れると、3回に1回はマヤと二人して、更に時にはリツコまでも加えて妙に赤く火照った顔と着崩れした姿で対応してくれるのが商店街でも人気を呼んでいたりする。

「……あら、今日はレイ一人なのね。お父さんは元気かしら?」

それでと促されたレイは、急に顔を真っ赤に染めてもじもじと言葉を詰まらせた。

「……シンジ兄さんに言われて。そ、その……、買ってこないとだめなの……」
「何をかしら? レイ」
「ほ、欲しいの……。その……こ、コン……」
「え、何?」
「だから、こん……。コン―― ムを……買ってきなさいって……」
「ん〜。よく分かりませんね、店長」

メモにでも書いてもらえば良かったのにと、どうしても口に出せないレイは茹で上がったように顔を赤くしながら俯いていた。
ごにょごにょと、まるで普段のレイらしくない。
勿論、おつかいの品を忘れてしまった訳ではなかった。
ただ、それを面と向かって言葉にするには、どうしても年齢以上に備わってしまっているレイの羞恥心が邪魔をしてしまうのだ。

「さ、レイ。落ち着いて、何をあげれば良いのか言ってごらんなさい」

わざわざレイの目の高さに屈んで優しく尋ねるナオコ。
キツめな容貌からは意外な事に、これでもナオコは子供には甘々なのだ。
ついで言うと、レイのような可愛い女の子には、マヤと同レベルでかいぐり衝動を迸らせてしまうくらい弱かったりする。

さぁと微笑んで促されたレイは、勇気を振り絞るように顔を上げた。

「こ、コン―― 、…………。」

―― ダメ。
アレを下さいって、ちゃんと言わないとシンジ兄さんの言いつけを守れない――

それでもレイには言えないのだ。
シンジ兄さんやアスカ、お母さんにならともかく、他所の人にこんな事はと、恥ずかしさで身動きが出来なくなってしまう。
レイの小さな唇ははっきりとしたことは何も言えずにぱくぱくとするだけで、しまいにはぐしっと、口をへの字に結んでまた俯いてしまったのだった。

あら、珍しいもの見ちゃったわねと、ナオコは内心に僅か驚きの声を上げた。
碇さんちの綾波レイちゃんと言えば、商店街でも評判のお澄ましさんだ。
雪の妖精のようにクールな振る舞いと、その一方では義兄のシンジの後ろから出てこようとしない小動物のような人見知り。
時たまの寸鉄刺すような口の悪さとのギャップがまた可愛いと、ナオコも密かに気に入っている。
そのレイが一人でおつかいに来て、なにやら随分と恥ずかしがってもじもじとしているのだ。
レイのように我慢強い女の子が泣き出しそうにまでなっているのは、正直、ナオコにはツボなのであって――

こんな田舎の商店街で薬局をやるには勿体無さ過ぎる天才が察しを付けたのか。
それとも、悪い虫が疼き出して思い付いてしまったのが先だったのか。

ピンと閃いてしまったナオコは、傍らで『萌え萌えですぅ』とレイの恥じらう様子に目を輝かせているマヤを小突いて、店先にささっと準備中の札を掛けさせたのだった。

まるでハムスターを見つけた時の猫みたいだったよと、アスカと二人してその様子を窺っていたシンジは後に語ったものだった。



◆ ◆ ◆




「レイちゃん。何が欲しいのか、名前が思い出せないのね?」

そんなわけじゃないのと、俯いた前髪の間から少し不満そうな目を向けるレイ。
しかしナオコは分かってるからと不自然なほどのニコニコ笑顔で柔らかく宥めると、猫なで声でレイに言うのだった。

「それじゃあ、レイちゃん。何に使うお薬かだけおばさん達に教えてくれる? それで一緒に考えてあげるから。ね?」

買って帰らなければならないその名前をどうしても言えないレイは、渡りに船と頷いた。

「じゃ、どんな時に使うお薬かしら? 頭が痛い時? お咳が止まらない時?」

尋ねるごとにおでこに、そして喉に軽く撫でる様に手を添える。
子供に患部を尋ねる小児医のような、でも実はナオコの心の裡に妖しい喜びを育てている―― そんな手付き。
僅か顔を顰めるレイも、ナオコを疑う理由もないので黙って触られるままにしている。

「……それともお腹が痛い時のかしら?」
「ウンチが出ない時の薬ですかねっ!」
「いいから、あなたは黙ってなさい!」

ポカッと割と本気の拳骨を貰ったマヤが、抗議なのか『う゛〜〜』と年甲斐のない唸り声を上げた。
そんなデリカシーの無さが、リツコを篭絡しきれずにいる理由なのよとナオコは片眉をヒクつかせる。
女の子はみんな臆病なのだから、警戒させてはいけないのだ。
はじめはあくまで優しく繊細に、誘いと気付かせないうちに強張った心を解していくべきなのだとナオコは思う。
押し倒すのは逃げる気が起きないほどに絡めとってから。

―― でも、それも良いわねとナオコはじゅるり涎を飲み込むのだった。



『あ、あ……、もうダメ。も、もれちゃうの……』
『ホーッホッホッホ、かわゆいわよレイちゃん。レイちゃんみたいなちっちゃな子が、お腹をぷっくり膨らませて我慢してるお顔って、おばさんとってもそそられちゃうわぁ〜〜♪』

そう笑ってチクチクと、ヒールのつま先でMの字に開いて縛ったすべすべのお尻を突っついてあげると、少女は脂汗を流しながら恨めしそうに見上げるに違いない。

『……どうしてこんなことをするの?』
『それはね? おばさん、レイちゃんの可愛い声が聞きたくて聞きたくてたまらないからなのよ。……ほら、どうかしら。可愛いお声を聞かせて頂戴?』
『あ、や、だめ……。そんなことしたら……。あ、あ、ああ……!』

そのままつま先を股間に滑らせて、さんざん可愛がってあげたワレメに突っ込んだままのバイブの底を蹴り突付く。
そうすると堪らなくなってビクンと小さな背中で身悶えして、幼い裸には不似合いなグロテスクなオモチャを無理に咥え込まされた下のお口と、排泄感に歯を食いしばった上の口の両方から切なくヨダレを垂らして泣き喘ぐのだ。

『っああ! あ、あひゃ……、くんっ、んぅ……ン!』
『ほらほら、頑張らないと……洩れちゃうわよ?』

ああ、素敵。
胸もおしりもまだまだまっ平らで、ワレメもぴったり閉じてツルツルの女の子が、バイブによがらされて喘ぐ顔ってどんなかしら?
お浣腸してあげたお腹に必死に堪えようとして、それなのに暴れまわるバイブが気持ち良過ぎて我慢できなくなってしまいそうになる、今にも崩れ落ちそうに追い詰められた顔。
きゅっと小さな唇をかみ締めて、切なく眉根を寄せて堪えているのね。
やっぱりユイの“あの時の貌”とそっくりなのかしら?

『……ひぁん! あ、あぁ、キツいの……』

縛り上げた縄を少しだけキツくしてあげると、ぷにぷにのお肌に跡がくっきり残るの。
それでギュッと薄い胸を搾り出すようにしてマッサージしてあげると、ちっちゃな乳首も固くしちゃって……
そうね、大人の女でもそうは付けられないような、とびっきり高級でいやらしいピアスを通してあげましょう。
金色のチェーンを繋いで、くいって引っ張って叫ばせてあげるの。
そうしたら、きっとたっぷりグリセリンを飲ませてあげたお尻も、いよいよ我慢できなくなってしまうに違いないわ。

『ああ、ダメ……! だめ。ああ、ああ……。い、いや、ぁ……!!』

レイちゃんのようなクールな女の子が堕ちた時の啼き声って……



「ああ、堪らないわ……」

さすさすと、自分の頬をさすりながら逝ってしまっているナオコの様子に、レイは冷めてしまった目を向けていたのだった。


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