NEON GENESIS EVANGELION FANFICTION NOVEL
X-RATE GENESIS EVANGELION






 その日は何事も無く、何時もの様にただ過ぎ去る日の一日となる予定だった。
 誰しもが半ばそう確信していた。

 エヴァ零号機は沈黙している。
 その足下には緊急排出されたエントリープラグが転がっている。
 それに乗っていたシンジは、既に緊急治療室へと運ばれている。
 レイはその傍らに、力無くしゃがみ込んでいた。
 下腹部を押さえ、時折呻き声の様なものを漏らしながら、そこから動く事さえ出来ずに。

───これは…何?






“第二次相互接続試験についての報告書”

 リツコの自室に置いてある端末モニターに冷たく写る文字。彼女の手は椅子の肘掛けにだらしなく乗せたまま、続きを打ち込もうとはしない。
 苦々しい顔で、ただその文字を眺めるだけだ。
 何度目になるか分からない深い溜息を吐くと、背中の方からドアが開く音が聞こえる。

「シンジ君の容態は?」

 半ば、否、それ以上に怒気を含ませながらミサトは開口一番にそう言い放ったが、リツコの何時に無いその態度を目にすると、少しばかり怒気を削がれてしまう。
 リツコはクリップボードに挟んだ書類をそのままミサトに渡し、気怠そうに説明を付け足す。

「外傷は無し。運動機能にも問題は無し」
「……」
「血圧の上昇、テストステロン、DHT、DHEA等の異常増加、並びにLH(性腺刺激ホルモン)、LHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)も異常増加。フルタミド(抗男性ホルモン剤)を投薬してみたけど、直ぐに相殺されてしまうくらいだそうよ」
「……外的操作の可能性は?」
「エナント酸系、プロピオン酸系、メチル系、何れも検出されなかったわ。外部からの注入痕も無し」
「じゃぁ、どういう事よ?」
「私にも分からないわ。ただ……」
「何よ?」
「アナタも知っての通り、エヴァは各神経接続を人体と行う事によって動いているわね」
「ええ」
「特にA10を代表とするドーパミン作動性神経経路は、エヴァと接触・稼働させるのに重要な役割を持っているわ」
「……」
「女性の場合、その生理的現象や役割からそれらの影響に対する抗性は高いけど、それに比べ男性のそれは割と脆弱なものよ」
「それでシンジ君は?」
「外的所見では、彼は僅かな外的刺激にすらオーガスムに達してしまっている。内面は……もっと酷いでしょうね……」
「……」
「このまま行ったら、良くて無精子症と精巣傷害、悪くて……廃人になるわ」

 頬を叩く甲高い音が響いた。












頂きに融けるモノ













「シンジ君の保護者は私よ!?法的にもそうなってる!最後まで私はちゃんと責任を取るつもりよ!」
「アナタには無理です、葛城三佐」

 レイに怒鳴りつけるミサト、だがレイはまるで敵でも見るかのようにミサトを捉えている。

「アンタに何が出来るってのよ!?」
「それはアナタも同じ。弐号機パイロット…アスカはどうするの?」
「……」
「……エヴァに乗る者しか、この苦しみは分からないわ」

 ミサトは半ば反射的にレイの襟首を掴み引き上げた。レイも苦しさに顔が歪むが、視線をミサトから外さず、睨み続けている。

「碇君を壊したのは……アナタ達よ」
「っっ!」

 レイを壁に叩き付けるように投げ捨てると、零れ掛けていた涙が一筋の線を描いて行く。
 噛みしめた唇からは、もはや言葉は出ない。
 首を押さえ、よろよろと立ち上がるレイの姿を吹っ切るように、ミサトは早足で去っていってしまった。
 廊下の隅の方でこちらを伺っていたアスカの姿も、直ぐに消えてしまった。
 レイは重く溜息を吐き、呼吸を整えると、ふたたびドアの前に立つ。
───碇君は、私が守る。
 何時しか彼に言った言葉を、もう一度胸に刻み込むように胸元を掴む。
 そして今一度深呼吸をして、ドアを潜った。
 電灯も点けていない薄暗い病室。
 彼の刺激を押さえる為か、ここは消毒液の匂いは漂って無く、代わりに香が微かに炊かれていた。
 ベッドの脇に静かに座り、シーツの中に蹲っている彼に声を掛ける。

「碇君」

 返答は無い。だがやや荒々しく上下するシーツが、寝ていない事を示している。
 もう一度声を掛けようとした所で、遅い返事はやってきた。

「……気が、狂いそうなんだ」
「……」
「自分自身なのに、自分の身体なのに……ヘン、だよね……」
「……碇、君…」
「止まらないんだ……。もう何回も……」
「碇君」
「触らないでっ!」

 触れようとした手がそのまま宙を彷徨ってしまう。

「触れられたらまた…。だから触らないで!僕を見ないでっ!!」

 レイは手を下ろし、そして浮き掛けた腰をもう一度下ろした。軋む椅子の音を最後に、病室は再び静寂に包まれる。
 月明かりが僅かに差し込む半暗の小さな世界。
 レイは暫く、ただ黙ってシンジの被ったシーツを眺めていた。
 そこに写る自分の黒い影。
 やがてその影は立ち上がり、スカートのホックを静かに外した。
 衣擦れの音と共に、床に落ちる制服。更にネクタイが重ねられる。

「碇君」

 もう一度彼の名を呼ぶ。僅かに身動ぎしたものの、返事は無かった。
 レイは少しだけ唾を飲み込むと、ベッドの上に片足を載せた。

「…な、なにを?」

 恐る恐る顔を出したシンジ。
 レイは咄嗟に、そして強引にそのシーツを引っ張り捲った。

「止めてよ!」

 それを引き擦り戻そうとしたが、シーツは床に落ちてしまう。

「な、何を…」

 怯えるように目を逸らすシンジの身体に、レイはゆっくりと覆い被さった。

「大丈夫、大丈夫だから」

 胸をはだけ出しているように前を開けているワイシャツから白い肌が覗いている。その下からは、月の光を浴びて艶めかしい程に闇の中に栄えている白い脚。
 今の状態で直視出来る筈もないその姿から、シンジは目が離せなくなった。

「止めてよ……駄目だよ、綾波!」
「碇君、大丈夫だから」

 同じ言葉を呪文の様に繰り返す。
 そのままゆっくりと腰を落とし、下着越しに彼のものを自らの恥部に充てた。

「駄目だっ!離れて!!」

 熱と脈動が伝わってくる。下着から収まりつかなくなった彼の精液が、レイの下着にも染みてきている。

「見ないで……」

 息を荒げ、力無くそう繰り返すシンジの肩を抱き、頬と頬を合わせてなだめる様に、静かに繰り返す。

「大丈夫。穢れたなんて思わないで」
「見ないで…」
「碇君、とても暖かい」
「見ない…」
「碇君を感じる」
「みな…」
「優しいのね」
「み…」
「私を染めて……」
「……あ、やな、み……」

 落ち着いたのか、射精は止まった。
 レイはそのまま塗みれた茎から腺を拭うように滑らせ、自分の頬に塗り込む。そして腰を僅かに上下させながら、柔らかな刺激を彼に与えていた。
 触れ合えば幼い口付けの様な音が響き、離れれば二つの間に数本の糸が引かれていく。
 頬に塗られたそれも同じく、指がそこから離れると糸が線を、弧を描き、それぞれに分かれて滴っていった。

「ほら、碇君ので染まってるの」

───いえ、穢れたいのは……私。
 再び手を降ろしていき、今度は自分の下着の中に滑らせていく。
 濡れている。シンジの精液が染みこんでいるだけでなく、そこには確実に自分の淫液もが溢れていた。
 軽く指を動かすだけで、シンジの耳にも届きそうな音が立てられる。

「ほら、私も一緒。止まらないの」

───壊れるのなら、一緒に。
 出来るだけ音を立てるように大雑把に動かしていく。
 あふれる滴が下着を通り越し、、今度はシンジのものを濡らしていく。

「碇君ので染められるから、溢れてくるの、こんなに」

───私が……壊したのね、きっと。
 蹲る零号機の姿は自分に重なる。彼を取り込もうとした零号機。
 否定は出来ない。
 この奥底からくる疼きが、何よりの証拠。
 シンジの目が自分を見ている。自分の胸を、そして自ら慰めている指の動きを、見開いた瞳の中にそれが写り込んでいる。

「んぅっ…碇君、見て…こんなにも……ぁっ」

 下着を横にずらし、自らを晒け出す。下着に押さえられていた滴が、半ば塊となってシンジの陰茎に降り注がれる。
 彼の瞳にある自分の顔は、見た事も無い淫らな表情。
 張り付けられた自分の表情が剥がれ落ちていく。
 堕ちる様な昇るようなどちらとも言えない感覚に指が酔いしれ、また身体も踊る。
 指の腹に擦られる陰核、指先ではじき出される様に溢れていく淫液。喜びと共に音は増し、その応えとなる彼の息遣いが頬に当たる。

「綾波……」

 彼の手が伸び、頬に触れる。
 そしてそのまま誘われるかのように、互いの顔の距離が近づいた。
 恐る恐る触れられる唇と唇。
 指が陰口を開かせる。
 僅かな触れ合いから、互いを包もうと這わせ合う唇。
 指が奥へと潜り込む。
 それぞれの舌が、互いの唇を愛おしむように撫でる。
 指が膣を掻きむしる。
 そして触れ合い、存在を確かめ合い。
 指が壁を襞を嬲っていく。
 そして抱き合う。
 隠れ声の中、唾液が筋を描きシンジの頬を撫でる。互いの鼻息に心地良さを感じ、口の中で抱き乱れる様に絡ませていく。
 卑猥に、魘される様に。
 シンジの手は首筋から肩、そして胸元へと這わせられ、レイが望んでいたように包んだ。
───も、う……イ、く…!
 口と、胸と、陰部と、それぞれが引き寄せられ、一点へと引き上げられていく。

「…んっ…ぅっ…んんんっ!!」

 胸の突起は強く摘まれ、舌は大きく重ねられ、そして指は未だ止まらない。

「んっ!うっ!ふぁ!んん!」

 身体が跳ね上がる度に、指の隙間から、陰口から、腺が吹き出されシンジの陰茎に勢い良く降りかかっていく。
 陰茎もその刺激を受け、何度も跳ね上がり、その度に白濁の液をシンジの腹に吹き掛けた。

「ぅっ!……はぁ、ぁっ…はぁ…」

 幾多もの糸を描きながらゆっくりと口を離し、互いに荒くなった息を受ける。
 そして融けた目を見つめ合い、今一度唇を触れ合わせた。

「…っぁ、はぁ…ほら、大丈夫。私も、一緒、だから……」

 そしてシンジの背中に腕を回し抱きつくと、ゆっくりと横向きに寝かせる。自らも彼の横に添い、彼の未だ脈打つ陰茎を包むように握り、自分の太股に軽く挟んだ。
 シンジの口をついばむようにキスを繰り返し、撫でるような声を吹きかける。

「ずっとこうしてるから……。ゆっくり寝て」
「綾波…」
「おやすみなさい」

 鼻の頭に優しくキスをすると、彼は静かにゆっくりと目を閉じていった。

「…おや、すみ……」

 レイの下着の中も、太股も、彼の精液と自分の淫液でまみれていた。

───熱い
 そう感じる、自分の陰口と目頭。






 幾度、昼と夜が繰り返し訪れたか分からない。
 無機質な部屋。所々解れたカーテンの隙間から洩れている光が、唯一今が昼か夜かを物語っている。だが、その光が部屋を満たす事は無い。
 ビーカーの中のたゆたう水が、時折その光を反射させ、二人の姿を明確に映し出す。
 レイのベッドの上でシンジは安らかな寝息を立てていた。その幼子の様な寝顔を見つめながら、レイはただ黙って彼の手を握っている。
 だが、何かが軋む物音に気付き、惜しむようにその手を離すと、音の方へと歩む。
 ドアの前の人影。
 暫く見る事の無かった日の光を忌む様に目を細めたが、再び軋む音と共に光は痩せ衰え、そして塞がれた。
 数瞬眩んだ目はすぐに慣れ、その姿を見る事が出来た。

「……」
「……ファースト?」

 彼女は驚いた目で自分を見ていた。無理も無いとは思う。暫く鏡で自分の姿すら見てないと思うが、酷い格好をしているのは確かだ。
 皺だらけのワイシャツを羽織っただけで、後は裸。顔や脚だけでなく、身体中にシンジの精液がこびり付き、所々乾いたそれが瘡蓋の様になり、白い肌に斑模様を描いていた。
 アスカは何度もそれを確認するかのように見渡すと、僅かばかりたじろぎ、足を滑らしそうになった。

「何か用?」
「え……ぁ……」
「彼、今寝ている」

 アスカの位置からも僅かばかり見える、無味な部屋の中にある白いパイプベッドの足。レイはその方向に首を傾けて差した。
 アスカがまた固唾を呑むのを聞いて、再び同じ質問を繰り返す。

「何か用?」

 だが、アスカは怯えた様に僅かに震え、口を閉ざすばかりだ。
 彼女が何かを口にしようと、やっと開き掛けた時、その声が響く。

「綾波……綾波、どこ?」

 レイはアスカに向かい、唇に人差し指を充てて静かにしてるように強く目で訴えると、小走りにシンジの元へと戻っていった。

「ここに居るわ。大丈夫」
「あや、なみ…良かったぁ……居なくなっちゃったのかと」
「ずっと一緒よ」

 アスカにはその様子が伺えない。ただ、漂うこの独特の生臭さが、この部屋で繰り返されている情景を深く物語っている。

「あ、綾波?何するの?」
「フフ、ちょっとイタズラ。少し待ってて、直ぐ戻るから」

 聞き慣れないレイの微笑む様な声。逆にそれがこの匂いに混ざる淫靡さに拍車を掛ける。
 呆気に捕らわれているアスカの前に、再びその声とは逆の険しい顔をしたレイが、アスカを手招きした。
 まるで幽霊に誘われるかのように、恐る恐るアスカは部屋の中に入っていく。
 求めていた姿がベッドの上にあった。
 目隠しをされ、そこに腰を掛けて待っているシンジ。だがその口元は、以前の様に彼らしい柔らかなものがあった。

「綾波、まだ?」

 その声に思わず身体が跳ね上がりそうになる。
 レイはそんなアスカの耳元に囁くように継げた。

「見たかったら見るといいわ。現実を」

 そう言い残し、シンジの後ろへと回り込み、彼を背中からゆっくりと抱き締めた。

「碇君、お待たせ」

 彼は回されたレイの手を取ると同時にそれを強く握る。身体が微震し、萎える事の無い彼の陰茎から白濁の液が飛び散る。
 アスカは思わず声を漏らしそうになるが、両手で口を押さえてそれを飲み込んだ。

「ぅっつ…ねぇ、まだ目隠ししたまま?」
「暫くそのまま。私を感じて欲しいから」
「……う、うん」

 照れるように俯くシンジの首筋に唇を這わせ、彼の背中に胸を当てつけるようにゆっくりと動かす。
 手は彼の胸を幾度かまさぐり、彼の脇、彼の脚、そして憤るように液にまみれた脈打つそれを、撫でるように弄ぶ。
 そしてもう一方の手で、アスカを手招きした。
 腰が抜けてしまったようにへたり込んでしまったアスカは、言われるがまま、恐れるままに、這うようにして二人に近付く。
 頭の上から被るように聞こえる二人の荒い息。目の前にあるシンジの脈打つ肉塊、そこを弄るレイの白く細い手と、水が滴る様な繰り返し聞こえる淫性の音。

「綾波、駄目だよ!また……」
「いいの、一杯出して」

 レイに促されるまでも無く、またもや大きく震え、液が迸る。それは勢いを増し、いくつかはアスカの顔に降りかかった。

「……っ!!」

 声を殺す所か、喉から出る事すら出来ずに居た。
───熱いっ!
 それが頬に、鼻に掛かり、今ゆっくりと線を描いて顎の方へと滴っていく。

「綾波、また!」
「今日は、すごく沢山出てるわ。素敵」

 射精は時を隔てずして、繰り返される。
 アスカの口や髪もが、シンジの精液で染められていく。
 唯々唖然とし、その熱い液体を被り続けている。

「っく、また、止まらないよ、止まらないよ!綾波っ!」
「大丈夫、我慢しないで。私に掛けて」
「っぅ、あっ!」

 シンジの後ろにいたレイは、シャツを脱いでそのままシンジの前に回り込み、彼の肩に手を回しながら腰を下ろしていった。

「飽きるまで、膣中で出して…っぁ!」

 滑る様にレイの腰がシンジの腰に密着していく。肌の擦り合わさる音、ぶつかり合う音、滴の漏れる音で部屋が満たされていく。
 目の前で繰り広げられるレイとシンジの痴態。
 それはとてもリアルなものなのに、まるで幻想の世界に迷い込んでしまった様に見える。
 肌と肌が合わさる音が、自分の中に在った妄想を沸き立たせる。
 陰唇と陰茎が擦られる姿が、自分の中に在った淫鬱な情欲を思い出させる。
 二人の汗と二人の腺の匂いが、これ以上無い甘美な媚薬となって身体に染みこんでくる。
 徐々に激しさを増す二人の動き、その時折に繋がった部分から吹き出る腺がアスカの方へと飛び散っていく。
 顔に、服に、手に掛かったそれをアスカは凝視する。
 指を閉じまた開くと一本の糸が引かれ、その糸を辿って滴が渡っていく。滴はそのまま、更に一本の糸を作りながら指間へと落ちていった。
 恐る恐る頬にも指を持っていく。
 同じ様な粘り気を感じながら、震える指は自分の意志とは関係無くそれを口元へと運んでいく。
───これが……シンジの…
 味は分からない。ただそれを自ら口の中へ含めたと言う事だけで、頭が溢れそうになる。
───舐めた。シンジのを。自分で!

「ふぅ!あ!ん、ぁ!出てる!たくさん!」
「あやな、み!すごい!凄いよ!」

 シンジの精液。レイの淫液。混ざり合ったそれは動く度に隙間から音を立てて吹き出している。
 止めど無く、枯れる事の無い涙の様に次々と。
 二人のものは白濁に塗れ、脚もベッドも床も染めていく。
 二人の脚の間には、幾多もの腺の糸が繋がり、滴を煌めかせ、まるで妖しくも美しい蜘蛛の巣の様だ。
 粘液と音と匂い。
 酔わずにはいられない。
 気が付けば自らも脚を広げ、蜘蛛となるべく淫口を広げていた。
───溢れてる
 片手で口を広げ、もう一方で零れる腺を掬い取り、それを元に戻す様に指を挿れていく。だが、戻した筈の淫液は倍になって指に降りかかってきた。

「…っふ!」

 蜘蛛の糸に取り憑かれた指は、呪われた様に勝手に動き出す。
 陰唇を撫で回し、徐々に奥へと潜り込み、それぞれの壁を撫で回し、指の腹は陰核に擦りつけられる。

「…っ…っ…っ…っふ!」

 レイとそしてシンジの動きに指が重なる。
 目の前の匂いと音と悦びを得るように。
 だが激しさ故、突如として沸き上がってきたその感覚に購えなかった。

「んっ……………ぅぅっ!!」

 身体が震え、足下に水溜まりを作っている。
 荒くなる息に堪えながらその感覚が収まるのを待とうとするが、指が止まらない。
───いや!や!どうして!?
 執拗に動く指は、目の前の二人を見ていた。
 時を近くして達したらしいレイは、似たように身体を打ち振るわせながらも、まだ腰を動かし続けている。

「ん!はぁ!ぁああぁ、あ、あぅ、あああっ!」

 悦びに満ちたレイの顔。
 目の前が、白濁の液に染まっていく。


 それは、シンジが再び寝息に包まれるまで続いた。












EPISODE:X-RATE:04 Cos we can't fulfil our dream in this life














 気が付いた時には椅子に座らされていた。乱れていた筈の自分の服装も、何時の間にか直されている。
 やはり夢か幻覚かと思い始めたが、目の前に立つレイの姿がそれを否定した。
 シャツ一枚羽織っただけの半裸のレイ。そして彼女の脚の間から、未だ糸を引きながら滴っている白い粘液が、強く物語る。

「碇君、棄てられたのね」

 突然のレイの言葉に戸惑いながらも、ゆっくりと首を縦に振る。
 元々はそれを伝えに来ただけだ。
 否、シンジを……。
 思考をそこで止め、何とか喉の奥から絞り出す様に声を出す。

「ファースト、アナタもよ……」
「そう」

 素っ気ない返事。
 レイは暫くアスカを見つめた後、椅子に掛けてあったタオルを引き上げ、アスカの顔にこびり付いた精液を柔らかく拭った。

「……どうしてそんなに落ち着いて居られるの?」

 レイの為す事に、何故か心地良さを覚えながらも、弱々しく言葉を綴る。
 母親の様に優しく、顔や髪、服に付いたそれを拭っていくレイの姿は、対照的に欲情の痕に染まっていた。

「碇君は壊れた。いえ、私が壊したのかもしれない。だから私も壊れたの」
「……何故?」
「多分……」
「……」
「愛しているから」

 見て。
 レイは続けて呟く様に言うと、脚を開き指で陰唇を広げ、滴るシンジの精液をアスカに見せた。

「彼のもので染まっていく。彼のものが私の膣中を満たしていく。とても幸せなの」
「……」
「アナタにはエヴァがあった。碇君には父親が居た。けど私は何も持たなかった」
「……ファースト」
「でも満たされたの。碇君に、こうして」

 指を軽く挿れると、僅かな音を立てて更に膣中に残っていたものが零れ落ちていく。獲物を酔わせ、絡め取り、堕としていく蜘蛛の糸。

「そんな私のココロが、彼を壊したのね……」

───泣いて、る……?
 レイははにかむような顔のまま、涙を流していた。
 アスカは見惚れる。
 シンジの欲情に穢れた頬に流れる一筋の線。僅かな光を受けて輝きながら床へと沈んでいく。
 純真で、無垢で、素直に出てきた本当の彼女の顔がそこにある。

「……レ、イ…」

 レイは軽く目を拭うと、タオルを持ったままアスカに背を向ける。そのままシンジの方に歩み寄り、安らかに寝ている彼の身体を、先と同じ様に柔らかく拭き始めた。

「アスカ、ごめんなさい」

 背中越しに静かに呟く。

「愛してるの、碇君を」

 その言葉の後に残ったのは、唯々虚脱感。
 既に人影は無く、アスカは床を見続けている。
 ビーカーの中の水は、時折外の光を反射して、佇むアスカを明確に映し出す。
 スカートの上に、涙が染み込んでいく。






 警報が鳴り響き、オペレーター達の声が何十にも重なり続ける。
 そこに居る誰しもが、汗を額に滲ませ、必死に繰り広げられる状況を把握しようとしていた。
 MAGIはそんな彼等の事など気にもせずに、次々と警報を鳴らしていく。

『E計画主幹ファイル257に於ける変更を審議中、三者一致の』
『承認されました。只今より関連ファイル及び人類補完計』
『変更終了。エヴァンゲリオン初号機のコア変』
『緊急事態発生。初号機搭乗の自動シークェンスを開始しま』

「MAGIが自律的にデータベースシステムを閉鎖していきます!止まりません!」
「なんてこった!自分で自分をリプログラムしてる!」
「モード変更コマンド自体を削除されました!」

 日向の椅子を握り潰すような勢いで掴み、恐怖と怒りで震える声を絞り出し、ミサトは指示を出す。

「ベークライトを第7ケイジに注入!8番から15番までの通路も同様!周囲に保安部員を配置!」
「保安部との連絡は遮断!ベークライト注入もMAGIに妨害されています!」

 リツコは項垂れ、ポケットに手を入れたまま静かにマヤに指示を出す。だが、彼女自身、それが無駄である事を分かっている様だ。

「MAGIの3者独立、カスパーを除く2機を脳死に。残ったカスパーをセントラルドグマの維持だけに回して……」
“Command not defined”
「……」

「おい!どうするつもりだ碇!」
「どうもこうもない。最悪、初号機のコアだけでも死守するしか無い!」

 この事態に流石の冬月も焦りを隠せず、ゲンドウに掴みかかるような勢いで問い詰めた。ゲンドウも冷静を保てず、声を荒げて応える。

「何としてでも初号機との接触をさせるな!パイロットの生死は問わん!」

 ゲンドウの怒号に、発令の端で蹲っていたアスカの肩が揺れる。

「零号機及び初号機パイロット…」
「“敵”だ!それは“殲滅目標”だ!」
「は、はい!…て、…目標は第7ケイジに到着!エントリープラグがオートシークェンスに因り搭乗位置へ!」

 ミサトはリツコに駆け寄り、その落ち込んだ肩を強く揺さぶった。

「これ、どうなるのよ!?」
「……終わりよ。何もかも……」

 リツコの表情は、レイの様に硬く仮面を纏っていた。

「目標の搭乗を確認っ!エントリープラグ、挿入されます!!」
「シンジ君!レイっ!!」



「碇君。行きましょう」
「……うん」


 ゆっくりと縺れ合う様にL.C.L.の中を沈んでいく二人。互いの頬に手を添えて、長く、求め合う、口憑。時折、気泡が顔を撫でていく。

「来て」

 レイはシンジの茎を自らの膣中へと誘う。
 触れるだけでも達してしまうシンジのそれを、優しく包むように、そして飲み込んでいく。

「満たして。私の膣中を……んっ!」

 再びの脈動。それを受け、レイは悦な声を漏らす。



「エントリープラグ、強制排出!」
「駄目です!信号受け付けません!」
「初号機後首部装甲をパージ!」
「受理されません!」

 濁ったL.C.L.の中に浮かぶ二人の姿がメインモニターに写し出された。



「綾波…っ……融けそうだ…」
「私も……」

 麻痺した頭の中でもはっきりと目に映るレイの白い肌。レイの頬を、耳を、首筋を、そして胸を、絶頂の衝動に耐えながらも、それ以外のものを必死に求めるように口を這わせていく。

「んっ…碇君、碇君……」

 殆絶え間なく激しく注ぎ込まれるシンジの精と、なだらかに柔らかに、愛しんでくれるシンジの愛撫に、吐息を漏らし彼の名を呼ぶ。
 彼の頭を胸に抱き、一つとなりつつある彼の柔らかな頭を繕うように撫でていく。

「気持ちいい……落ち着く…とても落ち着くんだ……」
「同じよ、碇君。アナタを感じるわ」



「エヴァ初号機内部より高エネルギー反応!」
「第7ケイジ、緊急退避!急いで!!」

 騒然とする発令所の中、アスカはそこに佇むしか無かった。

「シンジ…ファースト……」



 レイはシンジの手を自分の太股へと誘い、そして彼に脚を上げさせた。
 シンジの目の前に、二人が繋がっている部分が晒け出される。

「ほら、溢れてる。碇君の気持ちが、溢れてる」

 自らの太股に指を這わせ、そして膣溝を広げて見せると、隙間から精の泡が小さな音を立ててこの海の中を泳ぎ始める。
 レイはそれを指で掬い取り、頬に塗り、唇に塗り、そして口に含んだ。

「碇君の味がする」



「強力なA.T.フィールドが発生…否、違う!数値が反転していきます!」
「アンチA.T.フィールド!?」
「拘束具が解除されました!初号機、射出口へと移動します!」
「いかん!レイ!シンジ!止めるんだ!!」

 ゲンドウが立ち上がり叫ぶ。



「碇君も感じて、私を感じて」

 シンジの手はレイの尻に置かれ、レイの腕はシンジの背中に巻かれ、互いを引き寄せるように、より深く、より強く繋がっていく。

「綾波…あやなみ…」
「壊して、私を」

 突き上げられる腰。



「葛城三佐!に、弐号機が起動します!」
「アスカ!?何をするつもり!!」
『嫌ぁああっ!!』
「初号機、射出されます!」



「碇く、んっ!……んぁ…ぁ…っ!」
「あや、なみ…」

 半ば麻痺してきた到達感の何にも、今までとは違う温もりを感じる。今までとは違う悦びがある。心の壁が融かされ、自分がレイに、レイが自分に入れ替わるような感覚。

「こんなに、っ、苦しんでいたのね……」
「こん、なに……感じてくれてるん、だ……っ」

 貪るような口憑。肌も漏らさぬように密着させ、互いを浸食し、求め合い、融けていく。

「綾波っ!」

 レイの腰と首筋を強く抱き、そして腰の動きを早める。
 壊すように、奪う様に、奥まで、底まで。

「はぁっ!うっ!んんっ!い、いかり、く、ぁあっ!」



「続いて弐号機も射出!」
「初号機、地底湖、底辺部に出ました!弐号機も同ルートを推進中!」
『嫌ぁあっ!置いて行かないで!私を独りにしないでっ!』

 アスカの叫びと、シンジとレイの喘ぎが木霊する。

 蹲る様に横たわっている初号機に、弐号機が駆け寄って行く。

「嫌!嫌!独りは嫌なの!だから置いてかないで!」

 地底湖に入り、初号機の姿を捉える事が出来たが、突如背中が引っ張られる。
 アンビリカルケーブルが巻き戻しを開始し、弐号機を射出口へと引き戻そうとしていた。

「邪魔しないでっ!!」

 ケーブルをパージし、レイの部屋の時と同じ様に、這うようにして初号機へと向かっていく。

「シンジ!シンジ!レイ!もう嫌なの!ここは嫌なの!独りにしないでっ!!」



「あ、すか?」

 レイは頷く。
 上半身を上げて、少しシンジとの距離を開ける。だが腰の動きは早さを増し、白濁の泡は万千の星の様にプラグの中に鏤められる。
 同時に大きなものが投げ込まれるような音と共に、彼女は現れた。
 一瞬どうなったのか理解出来なかったが、アスカはシンジの姿を見つけると、縋る様に抱きついてきた。

「シンジ!シンジっ!シンジぃっ!!」

 混ざる様にレイの声、そしてシンジの声も荒げられた。気泡と白濁の泡が渦巻く。

「い、碇、くん、も、もう、ぅあっ!」
「あ、やなみ…あす、かぁ、っ!」





 刹那。
















───愛してる。だから壊して
















“00:00:00”










「…………え、エヴァ初号機、および弐号機、沈黙…」
「……パイロットは?」










“VANISHED”


























───THANATOS───




























後書

Writin' by Touru kanna