ばん、と鈍い音が狭い室内に響く。
 少年は内心で溜息をついた。
 「……アスカ……怪我する……よ」
 答えはもう一度の打撃音。
 制服の少女が背中を預けている金属製の壁、それに拳を打ち付けた音。
 少年は沈黙する。そのまま十数秒が過ぎる。フロア数を示すカウンターが巡る音だけがかすかに聞こえていた。
 「今日も絶好調だったわね!サードチルドレンさまは!」
 沈黙を破ったのはとげとげしい一四歳の少女の声。シンジは顔をそむけた。
 「風邪気味のはずなのに、シンクロ率はいつも以上!ミサトもリツコもおおはしゃぎ!ほんと、シンジさまってすごーい」
 少女の声にも、ブルーサファイアの瞳にも賞賛の色はみじんもない。あるのは怒りと憎悪のみだった。
 「そんなの、意味ないよ」
 「意味がないですって!」少女の声が裏返る。「アタシは、アタシはそのために!一生懸命頑張って!頑張って……」
 少女はうつむく。攻撃的な瞳が紅茶色の髪に隠れた。今日も彼女のシンクロ率は低く、技術陣を懸念させていた。
 「だから……シンクロ率なんて」
 「アンタはいいわよ!」少女の叫びはもはや悲鳴だった。「いい数字出して、使徒を倒して!ちやほやしてもらって!」
 「そんなことしてもらっても嬉しくないよ!」いつもなら言われっぱなしの少年が言い返したのはおそらく熱と、それによる疲労のせいだったろう。「誉めてもらっても、それはただ僕がエヴァの部品としてうまく機能しているからじゃないか。そんなのって、嬉しくないよ……」
 「アタシはそれすらない」ぽつりと彼女はつぶやく。「アタシは、そのために、それだけのために……」
 「……みんなは……どうなんだろう?」
 引き込まれるようにシンジはつぶやいた。
 「みんなって?」
 「たとえば……クラスの……」
 「はン!」少女は鼻で笑った。「アンタのクラスメイトの相田はモデルガンを買うためのお小遣い稼ぎが目標だったっけ?鈴原は……アレはゴハンのことしか考えてないじゃない。ヒカリなんて、そのバカにあげるクリスマスプレゼントとしてマフラー作ってるのよ!こんなに温かい国で……バカみたい!」
 「……ケンスケやトウジはともかく、洞木さんは……」
 「バカよ!あのコ!温かいとか、送るつもりの相手にデリカシーがないとかそんなことじゃない。もっと本質的なことよ」少女は断言する。その表情にはシンジにも分かる嫉妬があった。「クリスマスなんて、クリスマスなんて来ないかもしれないのに!それまでにみんな死んじゃうかもしれないのに!!」
 「……アスカ」
 「使徒はどんどん強くなっていく!でも、アタシはどんどんダメになっていく!」
 「アスカ」シンジの声が大きくなる。でもそれは少女の叫びにかき消されてしまう。
 「いつ終わるの?そもそもあれはなになの?どうすれば終わるの!!!」
 「アスカ!!」
 シンジも絶叫する。

 そのとき、彼の世界は暗転した。



Carols






 「……くん、いーかーりーくーん。碇クン」
 笑みと怒りが微妙に混じった声が聞こえてくる。
 それも遠くから、かなり遠くから。
 「ったく、いい根性してるわねぇ」
 急に息が苦しくなる。代わりに意識が急激に覚醒する。
 目が開いた。彼女がのぞいていた。
 伊達眼鏡の奥に、温かなブルーの瞳を宿した彼女が。
 手を伸ばして、微笑しながら彼の鼻をつまんでいた。
 「ぷ、ぷはぁぁッ!」
 「目が覚めた?シンジ君」
 「は、は、は、はいぃぃッ!」しゃんと背が伸びる。座った椅子ががたがたと揺れた。
 「そう、それは良かった」教科書を持った手を後ろに回して彼女は身を反らせる。男子生徒の間で「ロケット」とひそかに呼ばれている美乳が清楚なブラウスを押し上げて自己主張していた。
 「あ、アスカ……せん……せい」シンジは口ごもる。そして事態をようやく認識する。

 自分は授業の最中に居眠りをしてしまったのだ。
 こともあろうにアスカ・ラングレー先生の授業の時間に。
 教師陣の中でずば抜けた美貌を誇る学校のアイドルの授業の時間に。

 「……お前なぁ」
 「……目を付けられてたのに……」
 親友二人の嘆息をよそに、碇シンジは固まっていた。
 「ふっふっふー」小学生でも男の子ならその視線が釘付けになるような艶やかな唇を邪悪な笑みの形に変えて英語教師は言った。
 「碇シンジ君、ワタシ、なにをお話しすればいいか分からなかったのよね。きょうの家庭訪問で」
 さぁっと碇シンジは青ざめる。その美教師は彼の担任でもあったのだ。
 「いいネタできたわぁ、ありがと」長身を反らしてほほほ、とアスカ先生は笑う。
 首を洗って待っていなさいな、と。
 あと二週間でクリスマスだけど、これは先生からのありがたーいプレゼントね、と。


 「……はぁぁ」碇シンジの隣で深く深く溜息をつく母親の紅茶色の髪の毛を、少年は横目で眺めつつ同時に深い溜息をついた。
 ぎゅっと太股をつねられる。
 ここは碇シンジの自宅。
 ワンルームマンションほどの広さのある応接間に通された女教師が部屋の調度に一通り感心し、さらに「本物のもみの木」が飾ってあることに驚いたのちにはじめた家庭訪問の懇談の場。
 少年の成績(これは特に問題ないみたいですね。ま、ご両親とも優秀な学者さんですし)。
 少年の学校生活(とっても楽しそうですよ。お友達も多いし)
 そして雑談になったところで、担任はひょいと爆弾を破裂させたのだ。
 「すみません。すみません」学会でも一目置かれているはずの女性学者は息子の担任にぺこぺこと頭を下げる。「ったくこのコったら緊張感なくって、ぼーっとしてて、だから居眠りなんかするんですぅ……」
 「まぁそんなところもないと、中学生ですもの」
 くすくす笑いつつ「アスカ先生」はシンジの入れたコーヒーを口にする。
 「でもぉ」
 「アスカ先生」に勝るとも劣らない豊満なバストをぎゅっと抱えるように、シンジの母親は身体を縮める。
 その仕草に少年はどきりとしてしまう。
 ……いま、ハイネックのセーターからもくっきり透けて見えるブラジャーのホックを外したらどうなるんだろう。
 ママのおっぱい、ぷるんってすごい勢いで飛び出すんだろうなぁ。
 ……そういえば、きょうのママって躰の線が綺麗に出るズボン……じゃなくってパンツなんだ。うわ、あんなに身体を曲げたら太股からお尻のラインが……。
 「シンジくん」穏やかな、しかしどこか厳しい口調で担任に呼ばれて少年は我に返る。
 「ダメよ、人前でママに欲情しちゃ」
 「!!」「な、なんてこと!」
 シンジと彼の母親が同時に悲鳴を上げた。
 「分かってますのよ。碇博士」くすくすと英語教師は笑う。「だってシンジ君もお母様も、お互いを見つめる視線が『男と女』のものですもの、それにね」彼女はゆっくりと唇を舐めた。「大好きなオトコノコがなにを考えているか、女って分かるものですわ。ね?お母様……碇アスカ博士?」
 「あ、ああ……」目の前の教師とうり二つの美貌を持ちつつ、どこか清楚な雰囲気を漂わせていた人妻はがくがくとうなずいてしまった。
 「アタシ、いちど見学させて欲しかったんですよ」教師アスカは頬を染めつつ言った。「シンジ君が夢中になるママが、どんな風に息子さんを愛するのかって」


 「ああ、ああ、ダメよ、そんなに激しく舌を、ああ、舐めちゃだめ、だめよ!おかしくなっちゃう!ああ、アスカせんせいが見ているのよ!ああ、あ、あむぅぅッ」
 ぴったりしたパンツを両足首に絡ませたまま「アスカママ」は制止の声とは裏腹に腰を突き出し、少年の奉仕をさらに深く受け入れようとする。
 息子の教師にいだくひそかな競争心の現れとして、ルージュで丁寧に飾られた唇は彼の巨大なペニスを深々とくわえてその形、硬さ、熱、さらに味を堪能している。
 「ああ、すごい。シンジ君の舌遣いって……見てるだけで身体の奥が熱くなってきちゃうわ」
 ソファーに横たわってシックスナインの舌交歓にふける母子を見上げるアスカの瞳は輝いていた。
 絹のような肌触りの高級絨毯についた膝をにじらせて、さらに二人の近くに寄る。
 「ねぇ、お母様」かすれた声で女教師は保護者の耳にささやく。「いつもお口だけなんですか?ペニスへのご奉仕は?」
 「ん、ふぅッ、ふぅぅん」母親は首を振る。性急に剥かれたセーターによって拘束された両腕をじたばたと動かす。
 「そうなんですか。その指で愛してあげるのね……すてき。でも、今日はシンジ君にさからったから……」
 「ひ、あぁぁ、やめて!そんな奥まで、ああ、ああ……」
 「シンジ君を産んだアナをシンジ君に征服されて……貴女って本当に幸せな女ね」
 バラ色のリップにじゅぼじゅぼと出入りする肉棒に、教師の顔は魅せられるかのように近づいてくる。
 ああ、と熱い吐息とともに少年のペニスにキスをしてしまう。
 嫉妬した母親が抗議の声を上げると、寛容な微笑みとともにれろ、と舌を伸ばしてペニスの根元へと先端を這わせていく。
 そして生々しい匂いを放つ若牡の排泄口に熱烈な接吻をするのだ。
 少年のあげるせっぱ詰まった声に深い満足感を覚えつつ、よく手入れされた指で少年のすらりとした肉体を、肌を撫で回す。
 「あ、ああ、ママ、アスカママ、出すよ!出すよ!」
 うん、うん、と感涙にむせび、勝利感に溢れた瞳で息子の担当教師を見つめつつ、麗母はその下をさらに熱心に動かした。れろれろとカリを這い、先端をノックし、さらにちゅうちゅうと音を立てて吸う。
 碇シンジが「引き金」を引いた。
 まるで固形のように濃厚で芳醇な汁が喉をノックし、彼女の意識は一瞬遠くなる。しかし女としての本能は喉を鳴らしてその大事な大事な息子のエキスを一滴残らずすすってしまう。
 ずるりと碇アスカの唇から一四歳のペニスが引き抜かれた。それはまったく硬さを失っていなかった。
 「し、シンジ君」教師アスカは瞳を潤ませて懇願する。「お願いだからぁ、キミの……それ……ください」
 少年がゆっくりと母親の身体の上で起きあがる、ぐるりと彼女の方を向きなおる。
 すっと伸びた彼の手が学校一の美貌を誇る教師のタイトスカートへと潜り込む。
 「う、ふぅぅッ、はぁぁ……」アスカ・ラングレーは全身を震わせた。
 「先生ったら、スカート短すぎるんだよ。ソファーに座ってても丸見えなんだもの、僕、恥ずかしかったですよ」きわどいナイロンショーツの前から忍ばせた指先で担任教師の飾り下の感触を楽しみつつ彼は言った。
 「あ、ああ、だって、だって、シンジ君のママが赤くなるのが楽しかったんだもの。あ、ああ、シンジ君、あ、す、すごくうまい。あ、あ、だめ、そこ、そこ、そこは先生のGスポットぉぉ」
 「あはっ、先生ったらお漏らししちゃって」
 「あ、あ、あ……」紺のタイトスカートの前から湯気を出しつつ、美教師はへたり込んだ。あまりの不甲斐なさに涙をこぼしてしまう。
 肩を震わせて泣くからだがぎゅっと抱かれた。
 「あ、あ……」
 「ごめんなさい。アスカ先生」
 耳元で聞こえる優しいささやき、学校でふと耳にすると彼女の心拍数を上げてしまうあの声は乱暴な行為をわびた。
 それだけで彼女は全てを赦してしまう。
 それどころか少年にあらゆるものを捧げようとけなげに決断してしまう。
 だから「先生が欲しいから、スカートを脱いで四つん這いになって」と頼まれると、「うん、うん、先生を……アスカ先生はシンジ君のものよ。だから……ね、すきにしていいの……ね」と大声で叫んでしまう。
 いそいそとホックを外して濡れたスカートを落とし、ナイロンショーツをガーターストッキングの足首に絡ませたまま膝をついてお尻を突き出す。
 「ね、ね?ちょうだい、ね?」欲情に濡れた瞳をうるませておねだりする。

 「ああっ!ママ!シンジ兄!まだ明るいうちからナニしてるの?」
 応接間の扉が勢いよく開き、活発な足音が近づいてくる。担任教師は身をこわばらせ、シンジの手を握りしめた。
 「ったくぅ、ママ、今日は早く帰ってくる日だって聞いたけど、こんなコトのため……に……あああーっ!」
 ソファーの陰に隠れていたシンジの担任を認めた声がひっくり返る。
 「……お兄の……ガッコウの……先生……」
 「あ、あの、こんにち……わ」
 「お兄!!!」
 シンジが全裸のまま気をつけをした。
 「この人、このひと、このひとって、その、アレでしょ?初等部の校舎の裏で駐めた車でいっつもエッチなことしてるヒトでしょ!?」
 「……あ」とシンジ。
 「……あ、ばれて……た」ぽつりと担任教師がつぶやく。
 「もう、みんな見てるところで凄いことしてるんだもん、お兄は!」母親とうり二つのクォーター美少女はびしっと兄を指さした。「ママ、知ってる?お兄ったら車の中ですっぽんぽんに『されちゃうん』だよ!この人に!」
 勝ち気な少女は頬を染めて微に入り細にわたって報告する。
 慎ましい抱擁がためらいがちなキスにつながり、濃厚な舌遣いのディープキスで兄がぐったりすると、スポーツカーの狭い車内で女教師は彼の制服のボタンを外しはじめるのだと。
 そしてシートを倒して身体を密着させ、彼の下半身をそれはとても美味しそうに舐め回すのだと。
 「あ、あのね……あの……アスカ……ちゃん」女教師はおろおろと弁解をはじめた。「最初は車の中で相談するだけだったの。でも、その……シンジ君と一緒にいるんだ。たった二人でいるんだ。って気がついてしまって……あの、我慢できなくなって……でも、でもね、乱暴になんてしてないの。無理矢理なんかじゃないの。私はシンジ君のこと、とっても大切だから、大好きだから……」
 「そーれーは、アタシもおんなじなの!アタシもお兄が大好きなの!」まったくてらいもなく初等部制服のワンピース姿の美少女は断言した。
 「だから許せないの。ちょっと美人でおっぱいおっきいからって、お兄をゆーわくして!」ずんずんずん、と全裸の兄にソファーを乗り越えて近づくとぎゅっと抱きつく。
 「ママはアタシも大好きだから許してあげるけど、他はだめ、絶対だめ。分かった?分かったらパンツ履いてすぐに帰る。もうお兄にはちょっかい出さない!いい?……あ」
 勝ち気な少女の顔が真っ赤になった。兄にそっと肩を抱かれたのだった。
 「あのね、アスカ」兄が腰をかがめて妹の瞳をのぞき込む。「アスカ先生は悪くないんだ。僕が、その、僕が誘ったんだから」
 「嘘!お兄、だまされてる!」
 「そんなことないよ」ぎゅっと妹は兄に抱きしめられた。少女の体温は急上昇した。
 「アスカだって、大好きな人に『されちゃったら』抵抗できないだろ?」兄は身体をかがめて膝をつき、身体を密着させたまま少女のお腹のあたりから見上げた。
 「ほら、こんなコトされても」さわさわとお尻を撫でられる。少女が嫌悪感など感じるわけがなかった。
 さらに少年は姿勢を下げ、ひざまずく。スカート越しに兄の吐息を感じた早熟な少女は快感に震えてしまっていた。
 するりと兄の手が制服のワンピースの裾を割って入り込む。
 つるつるした太股を撫でられる。
 「あ、ああっ、あ……」小学生の桜色の唇から女の吐息が漏れだした。腰を突き出し、太股だけでなく「秘密の気持ちいいところ」が兄の手に触れるようにする。
 愛しい兄は妹のひそかな欲望に応えてくれた。
 そっと指先がコットンショーツの底をノックし、リズミカルにノックする。
 「あ、あは……あ……」アスカは兄の髪の毛を掻きむしった。「お兄ったら……卑怯だよぉ……あすかをキモチ良くしてごまかしちゃうんだぁ。いつもみたいにぃ」
 甘え声で抗議する美少女はしかし、兄の「じゃ、やめる?」という声にぶんぶんと首を振るのだ。
 だから兄は妹を甘い性愛の淵へと誘ってあげるのだ。
 元気いっぱい校庭を駆け、太陽と埃のにおいのする、でも明らかに女としての丸みを獲得しつつある脚を丁寧に舌で舐めあげる。
 立ったままで少し脚を広げさせ、さきほどのタッチで熱を持った少女の未熟な牝園をショーツ越しに鼻の先でごりごりマッサージする。
 少年のような言葉遣いの妹が「ああ、お兄!」「ああ、ああ」としか言えなくなると、そっと下着をずらして、今度は無毛の花園をじっくりと舌でねぶってあげるのだった。
 やがてようやく妹が兄の行為に「一応の理解」を示し、「アスカ先生」にちゃんと「こんにちわ」ができるようになると兄は心の底から安堵する。
 言動は乱暴だが、心は本当に優しい妹が、他人を罵倒するなど耐えられないのだから。
 だから少年は妹に「感謝の印」を捧げる。
 少年の前で恥じらいながら衣服を全て脱ぎ捨てた「妹のアスカ」と「担任教師のアスカ」がおずおずと、でもしっかりと抱き合って、ソファーの上に横たわる。
 十分に脂肪の乗った美脚と、健康的なエロスを放つ少女の脚がからみ、大きく持ち上げられる。
 少年の前には二輪の花が咲いていた。
 蠱惑的に発育した花弁が咲き、ひくひくとペニスに絡みつく襞を持った担任教師の女陰が。
 少年によって開通され、まだ痛みを感じるときはあるものの、一生懸命愛おしい兄に奉仕しようときゅうきゅう締め付ける、まだ蕾の気配を保ち続ける一二歳の妹の美裂が。
 二人の脚を自分の肩に乗せ、側位の体位でゆっくりとペニスをねじ込む。
 「お、おにいちゃぁん……」素直になった妹がむせび泣く。
 「は、はやくぅ……先生にも、せんせいにも……」気高い教師が感極まった声でせがむ。
 まだ膣感覚が未熟な妹に苦痛を感じさせないよう、兄はゆっくりと腰を動かし、同時にちっぽけなクリトリスをくすぐって彼女に十分な快楽を与える。
 ゆっくりと引き抜いたペニスをこんどはぐい、と担任教師にねじ込んだ。
 眉を寄せ、熱い吐息を吐きながら教師アスカは教え子のペニスをぎゅうぎゅうと締め付け、あたたかな粘膜で同時に矛盾した天井の快楽を与えた。
 その刺激に少年が我慢できるはずがない。本能が命ずるままに美教師をむさぼってしまう。ぐりぐりと腰を回しながらスラストされると一瞬にアスカの意識は飛んだ。
 「ああ、ああ!そうよ!シンジ君、すてきよ!」叫びながら彼女は腰をグラインドさせる。「突いて!突いて!もっともっともっとして!」
 お人形のように可愛らしい少女と素肌を触れあいながら、彼女はさらなるセックスをねだる。
 さらにずんずんと突かれ、不意に引き抜かれる。
 「あっ、だめぇ。もっとほしいのぉ」
 「お、おにぃ……きゃ……ふぅぅッ!あ、あ、あ、あ、だいすきぃ……だいすき!、あ、あ」
 学校では先生すらやりこむ知性を誇り、飛び級を検討されたものの「兄と同学年になるのはいかがなものか」という理由で却下された(そのことを知った少女は地団駄踏んで悔しがったのだが)妹は兄のペニスを受け入れると舌足らずに歓喜の調べを奏でた。
 口元からだらしなく涎が垂れていることも少女は気にならない。
 兄のペニスが与えてくれる快楽が、自分のお椀型のバストの先端でいきり立つ蕾が兄の担任の驚くような柔らかさと弾性を保っている乳房におしつけられ、その先端と擦れ合う感触が一二歳の少女の知性を蒸発させた。
 美しい女性に唇を奪われても抵抗しない。兄に教えられたとおりにちゅうちゅうと相手の舌を吸ってさらに快楽を高めてしまう。
 まず最初に達したのは碇シンジの妹だった。
 ひそかなライバル心を抱いていた美人教師が快楽に酩酊する声、それをずっと聞かされ続けていたのだからそれは当然だろう。
 次は教師だった。
 生意気な小学生が「おにいちゃん!おにいちゃん!ステキ、すてき!アスカはおにいちゃんがだいすきだよ!お兄ちゃんのためならどんなヘンタイなことでもするんだから!」と澄んだ声で宣言したのちにがっくり力を失って、柔らかな人形になるさまを見せつけられた彼女は、少年のペニスに子宮を突かれる感覚に夢うつつになってしまった。
 「愛してるわ、愛してる。だれよりもあなたが好き、シンジ君!シンジ君!」とつぶやきつつ、少女と同じ幸福な高みへと連れていかれた。

 その後、湯気が出るほどどろどろになった息子のペニスにずっとおあずけを食らっていた母親が泣きながらむしゃぶりつき、「アスカ先生の大好きなポーズで、アスカママも愛して」とおねだりしたことを女教師は知らなかった。
 獣のようなうめき声を上げながら、少年の担任教師の年収の三倍はある絨毯を掻きむしりつつ「ああ、シンジ!こんなイヤラシイせっくす、どこで覚えたの?ああ、ああ、こんなポーズで責められたら、シンジのこと、誰もが大好きになってしまうわ」と世界でも名高い女流学者が悲鳴を上げたことも知るよしがない。
 美しい母親が恥知らずにも「ね、ね、ね、シンジ、シンジ!お願い。お願いだからママの中に出して!ママにシンジのザーメンをちょうだい?お願い、お願いだからママのなかでイってぇ!」と背徳的なお願いをしたことも、碇シンジがにっこり笑って母親のお尻の穴を悪戯しながらその子宮を白濁液でいっぱいにしたことも知るはずがない。

 ソファーの上でぐったりと腰掛ける少年のほっぺたがひんやりした掌で包まれた。
 「……あ」少年が目を開く。にっこりと微笑む。「アスカ姉」
 「このケダモノ」苦笑したまま女子大生は少年の顔を玩具にする。柔らかなほっぺたをぐりぐりともてあそび、鼻を軽く指で弾いた。
 「母親に、妹に……担任教師まで。このエロ弟め」
 「いつ帰ってきたの?」
 弟に尋ねられると、姉は返事の代わりに左手でどこからかビールを取りだし、プルを指で弾いた。
 「いま」一気に半分ほど飲み干してカットオフジーンズとタンクトップ姿の姉は笑った。
 「もうちょっと早かったらアタシも参戦してたかな?」
 「ほんと?」
 活発な姉は視線をそらす。妹が溜息混じりに「どーしてみんな、そんなにおっぱい大きいのかな」とつぶやく豊乳が揺れた。
 「ごめん。シンジ」姉がつぶやく。「その、あの、アタシは……シンジの希望に応えてあげられないんだ」
 「いいんだよ。アスカ姉」シンジは微笑む。「そんなことしてくれなくても、僕はアスカ姉が大好きだから」
 「ば、バカ」ぷいと彼女はそっぽを向いた。近所でも評判の美人女子大生はこどものようにもじもじしていた。
 しばらく二人とも沈黙する。
 「あ、あのさ」残りのビールを飲み干してから姉は弟に言った。「見せたいものがあるんだ。アタシの部屋においで」
 「うん」
 少年は姉のあとに続く。性的な行為には常に臆病な、でもスポーツ万能で弟にはいつも優しい美しい姉のあとに。

 「アスカ姉……こ、こ、この部屋……いったいなにがあったの?痛っ!」
 「何が言いたいの?弟よ」
 「なんでも……いや、だって、信じられないくらい片づいてるんだもの。いつもだったら……」
 「大学三年にもなって、弟に部屋の掃除をやらせてる姉なんてあり得ないでしょうが」
 「……先週まではそうだったじゃないか……痛い!」
 「一念発起したのよ。一念発起、それにね?気がつかない?」
 「えっと、その……」思わせぶりな姉の言葉に少年は部屋を見回した。
 お気に入りの家族の写真に、それが猿とは言われないと分からない変な縫いぐるみ、母親が書いた教科書も以前の通りだった。
 「まだまだだな。弟よ」姉はそっくりかえった。「気がつかない?そうかもね。人間って『あること』よりも『無くなっている』ものには気付きにくいから」
 「『無いもの』?」
 「そ。先週まではあったけど」
 「え?えっと……ぉ」もう一度見回す。そして気付いた。
 「灰皿!」
 「大正解!」ぎゅっと抱きしめられる。
 「禁煙?」にわかに彼には信じられない。常に「アスカ姉、もっとちゃんとしようよ。部屋の片づけもちゃんとして、お酒もちょっと控えて、タバコも……ね?」と弟にぶつくさ言われていた彼女がいきなり身ぎれいになったことが信じられない。
 「そうよぉ。やめたの。すっぱりと」
 「嘘……」
 「嘘じゃないよ」ベッドに隣り合って腰掛けた弟と姉は目線を合わせた。くすりと笑って口を開ける。はぁっと吐息を弟に浴びせた。それは絶対の信頼と愛情がお互いにないとできない行為だった。
 「ほらぁ、たばこ臭くないだろ?」
 「酒臭い」
 「なにぃぃ」姉はにこにこしながら弟の髪の毛を掻き回す。
 「でもさ、どうして?」
 「内緒。教えてあげない」姉の言葉にシンジは苦笑し、肩をすくめる。
 「でも良かった。アスカ姉が僕のいうこと聞いてくれて」
 「な、なに言ってるんだ、シンジが言ったからじゃないぞ」
 「そうよ、ママが言ったからよ」
 二人は振り返る。シンジの姉の部屋の入り口には全裸の母親がいた。内腿に愛液と性交の跡があるのを隠そうとせずに彼女は言った。
 「シンジとキスしたいのなら、たばこはやめたら。って言ったの」
 「ママ!」アスカが悲鳴を上げた。真っ赤になっていた。
 「それにね、『えっちな玩具を弟に見つけてもらいたくって、部屋を片づけないなんてコドモみたいよ』って言ってあげたの」悪戯っぽい表情のまま母親は続けた。それに対して姉は顔を両手で覆ってしゃがみ込んでいた。
 すうっとアスカはかがみ、そっと娘の肩を抱く。母親としての威厳と愛情を込めた口調で娘を諭す。
 「臆病にならなくていいのよ。心を開くだけでいいの。貴女がシンジを大好きなことは、みんな知っているの……シンジでさえもね」
 「あ、ああ……」
 「大丈夫よ。怖がらなくていいの。さぁ」
 母親のしなやかな指がカットオフジーンズのファスナーをじりじりと下ろしていくのをアスカは震えて見つめていた。

 「ああ、ああ、シンジの舌!ああ、ああ、こんなに、こんなにいいなんて!ああ」
 「アスカお姉ちゃん、ずるい」シンジの妹が頬を膨らませた。「あんなにぺろぺろ舐めてもらって。いいなぁ」
 「今日は大事な日なのよ。あの子にとって。だから……ね?」
 うん、と彼女は不承不承うなずく。
 なんといっても今日はずっと意地を張り続けていた「彼女」が「彼」を受け入れる日なのだから。
 その間も成熟した肉体に、弟によって女の悦びを与えられたアスカはさらにさらに高みへと登っていく。
 愛おしい弟に全身を舌で清められて、背徳感と恍惚感で彼女は気も狂わんばかりになった。
 優しい指で襞をそっと撫でられ、中をゆっくり掻き回されると、エクスタシーのあまり潮をしぶかせた。
 長い長い情熱的なキスのあとはこどものように泣きじゃくって、妹のアスカに髪を撫でて慰めてもらうくらいだった。
 そして、母のアスカに、妹のアスカに、弟の担任教師のアスカに見取られ、介添えされて、アスカは弟に処女を捧げる。
 痛みすら、こじ開けられる苦痛にすら幸福を感じつつ。


 「あ、ああ、あああ、シンジ!シンジ!シンジ!ぜんぜん痛くない。ああ、ああ、大好きだよ。アタシ、シンジのことが大好きだよ!」
 「お兄ちゃん、お兄ちゃん、もっと、もっと、指でアスカをいじめて!」
 「ああ、ああ、シンジ君、シンジ君ってすごく舐めるの上手。ああ、だめよぉ、吸っちゃいやぁ」
 「はぁん、ふぅん、ああ、シンジのお尻の穴ってとっても美味しい……」
 姉のベッドの上で、碇シンジは快楽に翻弄されていた。
 処女を弟に捧げ、彼の肩に両足首を乗せた姿勢で貫かれる姉。
 姉の隣に横たわり、兄の指で幼い秘裂をくちゅくちゅと掻き回してもらっている一二歳の妹。
 姉と抱き合った姿勢でお尻を突き出し、教え子の舌技に歓喜の声をあげる女教師。
 息子の背後からひしと抱きつき、アナル奉仕に夢中の母。
 誰もが幸福だった。
 姉も、妹も、母も、担任も。
 全てのアスカが幸福だった。

 そして、シンジも同様だった。
 さまざまなアスカ達が与えてくれる快楽と愛情に満足していた。
 姉の言葉をふと思い出すまでは。

 ……「あること」よりも「無くなっている」ものには気付きにくいから。

 碇シンジはすっと立ち上がる。
 いままで彼と愛し合っていたアスカ達は一瞬あっけにとられた表情になった。
 「なぜ?」シンジは四人のアスカに問いかけた。「なぜ、彼女はいないの?」
 「彼女って?」母親が尋ねる。
 「アスカだよ」
 「アタシがアスカよ」美しい姉が言った。
 「私もそう」担任が微笑む。
 「お兄ちゃん、あたしがアスカ」妹がふくれる。
 「そうよ、みんなアスカ。あなたのことが大好きな、あなたのためにどんなことでもするアスカよ。もちろんわたしも」母親が髪をかき上げた。
 「だけど、だけど、彼女はいない」シンジは言った。「僕と同い年で、僕よりもずっと賢くて、人気者で、僕をバカにする、エヴァンゲリオン弐号機パイロットで、でも僕よりずっと、ずっと傷つきやすいアスカはここには……いない」
 「それはとても簡単な理由よ」女教師が微笑した。「彼女は可能性のひとつに過ぎなくて、でもその可能性はほとんどないから。だからここには存在しない。できないの」
 「どういう……こと?」
 「誰も彼女を望むものがいなくて」
 「彼女もそれを望まなくなって」
 「彼女が自分の世界に希望が無いことを知れば」
 「どうやってかのじょはそんざいできるの?」
 もはやどれがどのアスカの言葉なのか碇シンジには分からない。ずるりと脚が滑り、そのままひっくり返った。
 甘い体臭とともに妹が、姉が、母が、担任教師が少年に覆い被さり、心を込めて指で、舌で奉仕する。
 「さぁ、選びなさい。あなたが大好きな『アスカ』を」
 「さぁ、あなたのための『アスカ』を選んで」
 「ね、とても素敵でしょ?」
 「そうよ、好きなだけ迷いなさい。迷って迷って……好きなだけ気持ちよくなればいいのよ」

 その時にたぶん、世界の選択はなされたのだろう。
 彼にも分からない理由で、決して彼にも思い出すことができない理由で。

 「僕は……」シンジは思う。どうして僕は泣いているんだろう?「僕は、彼女に会いたい。僕と同い年で僕と同い年で、僕よりもずっと賢くて、人気者で、僕をバカにする、エヴァンゲリオン弐号機パイロットで、でも僕よりずっと、ずっと傷つきやすいアスカに」
 「なぜ?」無邪気きわまりない表情でアスカ達は一斉にたずねた。
 「分からない。でも、でも、彼女が可能性を見つけられなくても、ひょっとしたら僕が……見つけてあげられるかもしれない」
 アスカ達は一斉に笑った。だがそれは心地よい笑い声だった。
 「やっぱり男の子ね」
 「そうね、傲慢だわ……とっても。素敵なくらいに、羨ましいほど」
 「だから人の子なのよ」
 「そうね、そうね。だからだわ。だから彼らは……」

 少年の前にアスカ達の顔が覆い被さる。
 笑顔の、
 少しはにかんだ、
 少し涙目の、
 どこか誇らしげな、

 また会いましょう。いいえ、会えるわ。
 なぜならば私たちは彼女の可能性のひとつでもあるのだから。


 碇シンジの世界は暗転した。



◆ ◆ ◆



 少年の目の前にアスカの顔が覆い被さっていた。
 「ちょっと!ちょっと!あ、起きた!」
 碇シンジは目を開ける。何度も瞬きをする。
 「ここ……は?」
 「エレベーター」ぶっきらぼうな声でシンジと同じ中学校の制服を着た少女は説明した。
 「アンタ、ぶっ倒れたのよ。急に。びっくりしちゃった」
 起きようとする。ずきずきする頭に苦鳴をあげた。
 「寝てなさいったら。けっこう熱があるのよ。ったくリツコったらチルドレンの健康管理くらいしっかりしなさいよ」
 そのとき初めて碇シンジは惣流・アスカ・ラングレーに膝枕されていることに気がついた。
 「あ、あ、あ、あ、ありが……とう」
 「なによ、真っ赤になって……あっ!」がつん、とシンジの頭が床に落ちた。スカートを押さえてアスカは後じさる。
 「……アンタ、なんかいやらしーこと考えたでしょ」
 「考えてないよ……ったく、どうしてアスカは……優しかったり、急に怒ったりするのかな……」
 「な、なによ。いきなり」
 「そうだ」シンジはふと思い出す。きっと言えるのはいまこの瞬間だけだろう。そうだろう、たぶん。「あのさ、アスカ」
 「なによ」
 「今年のクリスマス、みんなで集まってなにかしようよ」
 「はぁ?」少女の表情が厳しくなった。「だから、さっきも言ったじゃない、そんな先のことなんて……」
 「来るから。クリスマス」
 「アンタねぇ」
 「みんな元気なクリスマスが」
 「ばっかじゃないの?」
 「来るから。ぜったい」
 「……ばか……みたい」
 「だから、だから……もう、あんなこと、『クリスマスが来ない』なんて……」
 その時エレベーターのドアが開き、血相を変えた葛城ミサトと赤木リツコが飛び込んできたため彼はそれ以上の言葉を口にすることはできなかった。


 それから数日後、ミサトが相変わらずのにやにや笑いを浮かべてシンジにささやいた。
 あのアスカが手袋を編んでいると。
 理由についてしつこく尋ねると、ぶすっとした顔で「クリスマスプレゼント用」と言ったことを。

 葛城ミサトは首をひねっていた。
 なぜ碇シンジはああも嬉しそうな表情ができたのだろうかと。
 惣流・アスカ・ラングレーが編んでいた手袋(らしきなにか)が、彼のものになる確率は(Nerv職員中のオッズによると)とほうもなく低そうなはずなのに。




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Original text:FOXさん