「アスカ、満たされぬ愛」 #プロローグ
 LHS廚 (あくまでイメージ)ばーじょん。


私は赦されない事をしたと思います。
親友の気持ちを知っててその想い人を手に入れたのですから。
彼女には勝てないと思ったから・・・私は親友に『彼』の事を言えませんでした。
でも、今彼は私の隣にいてくれる。私の後悔を解って受け入れてくれている。

『僕も一緒に謝るよ。アスカを裏切ったのは僕も同じなんだから』

彼が私に言ってくれた言葉。涙が止まらなかった。
私は・・・この人を選んでよかったと思いました。
たとえ・・・アスカに恨まれたとしても。

−洞木ヒカリの日記より抜粋−



◆ ◆ ◆



『こんにちは、弐号機パイロット』
『何しに来たのよ、アンタ』

今、アタシの前にはファーストがいる。
何処となく寂しそうなのは何故?

『碇君といられて、幸せ?』
『アンタ馬鹿!!アイツはアンタと一緒にいる・・・違うの!?』

アタシの発言にコイツは心底驚いた顔をしている。

『私は、碇君に選ばれなかったわ・・・選ばれたのは貴女』
『嘘』
『どうして嘘だと言えるの?誰の言う事も信じない貴女が・・・
 碇君の気持ちを知ろうとしない貴女が』
『知らなくても解るわ!アンタは・・・っ』

怒鳴り散らすアタシの前でファーストはインパクトの時何があったのかを教えてくれた。

ファーストとずっといられる世界を捨ててでもアタシと一緒にいることを望んでくれた。
アタシはアイツを誤解してた。
アタシの事なんか見てくれてないと思ってたのに。
アタシよりもファーストを取ったと思ってたのに・・・。

『これが本当の碇君、貴女を信じた・・』

シンジは這いずるように僅かでも前に進もうとしていた。
アタシを必要としてくれていた。
自分を見つけようと必死にもがいていた。

対してアタシはどうだろう。
弐号機の中にいたママにすがった上、ママとの繋がりを実感する為に沢山の人を傷つけた・・・自分の欲望だけで。
アタシを求めようとしたシンジを拒否した。
アタシは自分を理解してほしかったくせに・・・・・。

シンジを理解しようとしなかったのは・・・アタシも一緒だったんだ。


『アタシはシンジに謝りたい。アタシは・・・・』

ボロボロと泣き続けるアタシをレイは静かに抱きしめてくれた。

『そう・・戻り方、わかるわね?』

ただ、アタシは頷く事しかできなかった。



◆ ◆ ◆



第三新東京市立北高校、通称『北高』には『おしどりカップル』と
呼ばれる二人がいる。

ここが戦場だった旧第三新東京時代から居るという二人で、
中学時代から付き合っているらしく、人の目を気にせず自然に腕を組める円熟味がある一方で、それを茶化されると真っ赤になってしまうと言う初々しさのギャップがあり、美形同士のカップルに在りがちな「近寄りがたさ」がなく、
二人に親しみを感じる北高の生徒、
特に恋人達に「あんなカップルになれたらいいね」と言われている。

男性の方は180cmを超える長身ながら絵に描いたような童顔で、いつも首に架けている銀の十字架が唯一のアクセサリーだ。

底なしの優しさと大切な人達を守れる強さ、そして愛する人以外の女性を異性として全く見ようとしないという頑固さが「誠実なんだ」と多くの女生徒たちの憧れの対象になっている。

ね、シンジ。勉強”……する? 女性の方はロングの髪を暗めの黄緑色をした二つのヘアクリップで留めている。
大きめの黒縁メガネと僅かに残っているそばかすがアクセントになっていて不思議な愛らしさをかもし出している。

生来の生真面目さと恋人に負けない頑固さと非を認められる素直さ・・・
まぁ潔癖症と少し妄想しやすい所があるものの、それが原因で嫌われるということはなかった。


ただ・・・・昔の二人を知っている人物がいれば、彼の胸の十字架が元同居人の
形見である事や、彼女の髪型がいまだ目覚めぬ親友と全く同じである事に気付き、
二人にとっての『サード・インパクト』がまだ終わっていない事にため息を漏らしただろう。


男の名は碇シンジ、女の名は洞木ヒカリといった。



◆ ◆ ◆



『あの日』から三年、EVAに関する技術を医療方面に利用する為の機関へと
変貌を遂げたネルフは、市内に三つの大きな病院を建てていた。
そのうちの最も大きい『中央病院』に彼女は眠っている。

「いつになったら目が覚めるのかな・・?」


幾度か覚醒の予兆と絶望への道を行ったり来たりしている彼女の名は惣流・アスカ・ラングレー。

二人にとって、彼女は大切な家族であり、友人であり・・・
いつか、謝らなければならない人。


ふと気付くと、アスカの瞑られた瞳から涙がこぼれていた。
その涙を拭いてあげようとしたシンジは、ハンカチの先のアスカの目がはっきりと開いているのに気付く。


「ふぁ」

「「!!!!!!!!!!!」」

紺碧の瞳が焦点を結んでいく。
そこには明らかな意思が感じられた。

「シ・・ンジ?」
「うん・・うん!」
「そっちは・・・え?ヒカリ?」
「よかった・・・起きてくれたぁぁぁぁぁ!アスカァァァァァァァ!!!」

アスカの首根っこにしがみ付いて大泣きするヒカリ。
ハンカチで目を拭き、抱き合う二人を眺めつつコールボタンを押すシンジ。


五分後、アスカの病室は大騒ぎになった。



◆ ◆ ◆



「じゃあ、三年間も寝てたの?アタシって」
「まあ、そういう事になるね」
「ファース・・・(ずずず)・・・レイは?」
「残念ながら、行方不明なの。綾波さん」
「ミサトは?」
「父さんとリツコさん、ミサトさんと青葉さんは一年前に死亡が確定してるんだ」
「そっか・・・(もぐもぐ)・・・クラスメイトのみんなは?」
「トウジはアメリカ、ケンスケは第二、他の人達は連絡が付かないから今でも解らない」
「じゃあ、ヒカリとジャージの恋は」
「・・・振られたわ、私が」
「あの馬鹿ジャージぃ!」
「叫ぶと口の中の食べ物が飛び散るって・・・」
「うっさいわね!このバカシンジ!」
「久しぶりだね、そのセリフ」
「・・・アンタ・・・泣いてるの?」
「うれし泣きってやつだよ」
「心配・・したんだからね・・・アスカ」
「ゴメン」
「・・・・」
「な、なによぉ」
「「アスカが素直に謝ってる・・」」
「うっさい!」

「それにしてもシンジ・・・(がつがつ)・・非常識に背、伸びたわね・・・ヒカリ、麦茶もう一杯」
「ちょっと待ってね」
「『戻って』来た時にはもう175cmになってたんだ」
「やっぱり理由は不明?」
「うん」
「はい、アスカ」
「あ、アリガト・・・インパクトの後、何があったの?」
「インパクト直後、着地した初号機からプラグを強制射出させて地上に降りて・・・
 弐号機の残骸からアスカを日向さん達と一緒に救出したんだ。
 気がついたら初号機はなくなってた」
「はぁ?」
「目撃者の証言だと羽根が生えて飛び去ったんだって」
「???」
「マヤさんがアスカの集中検査をしていた時に偶然洞木さんからの電話が繋がって」
「・・・もしかして知ってる?」

「「何を?」」

「アタシの体のこと」
体をひとしきり気にするアスカ。

「フィードバックの結果出来た跡なら一ヶ月で消えたよ? 目も見えるで・・・もしかして!?」
「ううん。見えるよ(二人共知らないんだ・・・よかった)」
「気になる所・・あるの?アスカ」
「えっと、五体満足でいられるのが不思議なだけよ、ヒカリ。あんなに・・・痛かったのにね」



◆ ◆ ◆



かすかなメロディーが病棟に響く。

「面会時間の終わりの合図だよ、洞木さん」
「・・じゃあアスカ、明日は学校もお休みだし、朝すぐ来るね?」

別れの挨拶をしてアスカの個室を出る二人。
病室のドアが閉まる瞬間。

「!?」

アスカにはシンジとヒカリの手がしっかりと繋がれたように・・・見えた。

『違う・・・よね。二人はアタシを裏切ったりしないよね?』

アスカの視線は閉まったドアから離せない。
彼女の心の中に闇が再び生まれた瞬間だった。



◆ ◆ ◆



家のドアを閉めた瞬間、シンジの背中に彼女は縋り付いた。
かすかな、でもはっきりとした嗚咽が聞こえてくる。

「怖いよぉ、シンジィ・・・あれだけ、あれだけ望んだ事なのに・・・」
「・・・・・・・・ヒカリ・・約束、覚えてる?」

体を回して彼女に正面を向けるシンジ。

「信じて・・・ヒカリの側にいるって・・誓ったんだから・・・」

ヒカリの顔に両手を添えて自分の顔の正面に向けさせる。
涙でぐちゃぐちゃになった愛する人の顔。

「信じさせて・・・・・シンジの勇気、私にも分けて・・・ここで・・今すぐ抱いて・・・愛して」

シンジの手がヒカリの体を掻き抱いていく。
今の自分が最も必要としている女(ひと)に思いを伝えるために。

制服のスカートを捲り上げてソコに手を当ててみると、そこはすでに湿っていた。

「私・・もう濡れてるの・・・なんて・・」
「いやらしい、なんて思わないよ。僕を求めてるからだ、って判ってるから」
「シンッ」

口付けをしながら股布をずらしてヒカリの中にあっさりと自分の肉棒を入れていく。
彼女の体をいたわりつつ、シンジは二人の気持ちを高めて行く。

「ひぁ!・・もっ・・激しくして!今だけは忘れさせ・・・ふぁぁっ!」
「嫌だよ」
「・・・どうしてぇ」

「僕だって欲しい、『一緒に謝る勇気』が。 それをくれるのはヒカリだけなんだよ?」

それ以上何も言わず、ブラウスの下でブラをはずし、薄い布一枚越しに見える
赤いボタンを口でくわえ、甘く噛んだり舌で舐めたり・・・。
ヒカリはシンジの頭を自分の胸にぎゅっと抱き締め、動きに身を任せて喘ぐ。
その目に光っている雫は悲しみや恐怖からくる物ではなくなっていた。

「ちょっと、ゴメンね」
「え・・ひぐうっ!?」

繋がったまま、シンジはヒカリの腰をを抱えて歩き出す。

「いつ・・うくぅ!?深くて・・ひっ!」

彼女は両足をシンジに絡め、深い挿入を受け止めた。

「もっと・・ヒカリが・・欲しい」
「初めての時、んっ・・・言ったの・・・覚えてる?
『貴方の自由にして、ヒカリを手に入れて!』って・・くぅ・・・
もう私は貴方の物。・・・貴方だけの・・・はぁ・・・・ものなのっ」
「ヒカリッ!」

しがみ付いたヒカリを下駄箱のヘリに引っ掛けて、シンジは彼女をむさぼっていく。
ヒカリも手足を相手に絡め、ぬくもりを求めていった。
二人の動きが・・・速くなる。


「ごめんヒカリ、僕もう」
「最後の、ぬくもり・・頂戴っ!」

二人の体が痙攣し、行為の終わりを告げる。
痙攣と昂ぶりが収まるまで、恋人たちは想いを込めたキスを離さなかった。

 

しばらく抱きしめ合って余韻に浸っていたヒカリは、はだけたシャツから見える彼の左の鎖骨の傷にキスをして、顔を真っ赤にした彼女はシンジの胸に顔をうめて恥ずかしそうに呟いた。

「制服・・・汚しちゃったね」

 



[Menu] [Next]