INNOCENT TABOO, case Asuka & Rei

Original text:引き気味


『 少女堕天録(下) 』


「じゃ、おれ今度はレイ姉に相手してもらってくるよ。ケイタのやつはいっぺんシャワー浴びてくるっていうから、アスカ姉も一緒に体洗ってくれば?」
 レイが今度はベッド脇の椅子に縛り付けられ、大開脚の格好で気絶してから10分も経っていない。
 赤く手形がついた乳房を絞り出す形に食い込む紐をほどいても貰えないまま、まだ意識を取り戻してもいないのに。ムサシは勝手に頃合い良しと判断したらしい。いそいそとベッドから飛び降りていく。
 ……後戯というやつが足りていないのではないか。アスカは、師であるユイが言い聞かせていたはずのマナー、パートナーへの気遣いを忘れていると見えるムサシの様子に、呆れた息を吐いた。
 さっきまで、またあれほど熱心にこの体を貪ってくれたくせに。
 アスカ自身のせいではあるが、愛人契約ごっこの約束を今度こそとの意気込みで迫ってくる少年を誤魔化すのには、骨が折れた。
 おかげでさっきまでに輪を掛けて全身がどろどろだ。
 たしかに一度シャワーを浴びて、すっきりしたいところではある。
 顔を起こしてちらりと目をやると、こちらを窺っていたのだろうケイタと目が合った。
 えへへと、全然可愛げのない照れ笑いを寄越してくる、あのイガグリ頭。
(シャワー、ね……)
 勝手知りたる碇家の間取り。使い慣れたバスルーム。
 我が家と比べて素敵だといつも思う、手足を伸ばして入れる広々としたバスタブよりも。アスカがまず思い浮かべたのは、洗い場に敷かれている厚手のエアーマットだった。
 ソープランドと呼ばれる場所で使われているものと同じなのだと、ユイが説明していたそれ。
 そして、その隣にボディソープなどと一緒に置かれているジェルローション。
「……はん?」
 ああ、と察しを付ける。そういえば、今日はずっとムサシとしていたばかりで、まだケイタには抱かせていない。
 ことに、レイで女の子のお尻を開発する楽しさに取り付かれてしまった気配のあるケイタだから、今度はシャワールームという場所柄、たっぷりローションを使ったプレイを狙っているのだろう。
 まずおそらく、マットの上でぺちゃんこになった蛙さながらの情けない格好で脱力しきるまで、アナルをほじくり返されることになる。
 たとえばアナル調教が開始された頃のレッスンでさんざん世話になった「お尻のおしゃぶり」などの専用バイブも使われて、よがり狂わされるわけだ。
 期待も露わなケイタに、アスカは肩を竦めて合図した。
「いいわよ。行きましょ」
 ベッド脇のタオルで軽く下半身を拭うだけ。汗とその他でぬめる素肌になにも引っかけず廊下に出るアスカに、瞳を輝かせたケイタがまとわりついて行く。つるっとした無毛のペニスを大きくして、ぶらぶら振り回しながら。
 これも今更だった。



◆ ◆ ◆

 ムサシに、ケイタに、アスカがセックスを許すようになってもう結構な時間が経っている。
 同時に、それよりかは期間的には幾らか長く、今までボーイフレンド未満の付き合いだった碇シンジに抱いて貰えるようになった嬉しい日々も過ぎていたが。それだけに余計に状況はいびつだった。
 シンジとの関係の進展。これは、付随する諸々の事情に目をつぶる必要はあるものの、一応はアスカの願いが叶った格好ではある。
 しかし同時に、願いが叶ったと看做すアスカの心情的にもう一方の側面を見やれば、そこにはシンジとの交際と重複して浮気をしているも同然という、ムサシたちとの肉体関係がある。
 加えて他に、同性の碇ユイ夫人、友人のレイとまでもベッドを共にしてきた今日までだ。
 あまつさえ、そこまではシンジも知っている話なのだけれども、実を明かせば更にその先というものがあるのだった。
 近頃には何度か、ユイの誘惑とムサシらのねちっこい説得に頷いてしまって、他の小学生たちにも体を与えてしまっている。
 ―― いいや。顔を隠してのことであちらにすら正体は気付かれていまいが、レイと一緒に、クラスの同級生でもある鈴原トウジ、相田ケンスケといった相手とも、繋がり合った。
 碇ユイが自らの愛人として太鼓判を押す、その彼らのセックスがどんなものか、吹き込まれた好奇心に負けてしまったのだ。
 学校に知れればどうなることやら。乱れも乱れたり。かつての模範的な優等生、惣流アスカがどうしたことか。
 直視しづらい事実である。
 ユイやレイとのレズビアン・セックスにしても。昔の自分なら聞いただけで『同性同士でなんて!』と首筋まで真っ赤にさせて、口走った馬鹿に制裁を与えていただろうに。今ではそれを、わりと平然とこなすようになってしまった。
 女同士で唇をついばみ合うのも、ムサシやケイタとキスをするのに比べれば、まだずっと抵抗は薄い。そんな考え方が最初の頃にあったのも思い出せるが――

「ね、これ使って良いでしょ? アスカお姉ちゃん、大好きだもんね」
「んもうっ、体洗うぐらいさせなさいよね」
「僕がお尻に出してあげた後でいっぺんに綺麗にした方がゴウリテキだよ。それより、ね? ここにほら、はやくマットに横になってよ。も少ししたら多分、ムサシとレイお姉ちゃんも体洗いに来るし。それまでにうんと楽しみたいんだ、僕」
「あんたの都合よね、それ。相手の都合をまず考えるってのが、マナーの一でしょ」
 案の定、バスルームに入る前に真っ先に、脱衣所に用意してあったグッズの中から「お尻のおしゃぶり」を取り上げきて、四つん這いのポーズをねだるケイタだ。
 アスカが渋い顔をしつつもエアーマットに片膝をつき、ついでもう片膝もつけて姿勢を低くしていくわずかの間も我慢できないらしく、しきりに目の前の白いヒップを撫で回す。
 最初の内はそうではなかった大胆さ、図々しさを剥き出しにした口調の、弟程度の歳の子に、
「そろそろシンジとおば様も帰ってくる頃だし、おば様だってお夕飯の支度の前にシャワー浴びるのよ? 6人で雪隠詰めなんてごめんだわ」
 長々と付き合ってやるつもりは無い、それを覚えておけと釘は刺しながらも、アスカはリクエストを丸々受け入れて、尻を差し出してやっていた。
「ンっ……」
 背中を向けているので気配で察しただけだが、鼻先を近付けたケイタがまじまじと秘部を覗き込もうとしている。
 直後すぐに、生温い鼻息が当たるのを、敏感な表面に感じとった。
(じろじろと見るんじゃないわよ……。もうっ)
 延々、体位を幾つも変えてではあっても実に二時間近く、ハメ込まれっぱなしだった彼女だ。秘唇には、ムサシの肉槍の形をどこかそこに残したままでいるような感覚があった。
 やたらに逞しく太々としたペニスでムサシたちに入れ替わり立ち替わり突かれ続け、抜去の後もぽっかり洞のように口を開っぱなしだったユイのそこの姿を、アスカはレイと一緒によく見ていた。それが、脳裏をよぎった。
 師匠格にあるあの美夫人とアスカとでは、経験した数が違う。年季の差と口走れば、ユイは穏やかな笑顔を保ちつつ周囲を黙り込ませるプレッシャーを漂わせてくるのだろうが、成熟の具合―― 性器のこなれ方にも違いは明らかだ。見かけからして小陰唇のはみ出した様子だとか、濃くなった色だとかがキャリアの証として歴然としている。比べたなら、アスカはまだ乙女のままと言って充分通るはずだった。
 だから、まず錯覚にすぎないだろうが。
 ―― けれども、錯覚が大部分だったにしても。きゅっと閉じた、一本の筋。少なくともそういった童女のごとき無垢な眺めでは無かっただろう。もはや。
(ああ、もうっ)
 意識するほどに、はしたなくヒクついてしまうのが分かる。ピンク色の粘膜からなる二枚の花弁と、その奥の膣口。
 そして今の姿勢なら、すぐ上に菊の花に似たアヌスのすぼまりが丸見えなのだ。
 女の子の羞恥の源泉を晒し、頬に帯びる熱を新たにする。
 しかし、アスカの心は一応そうやってさざ波だってはいても、千々にという程かき乱されているわけではなかった。
 女の狭間を異性に見られでもしたら即座に気絶死したくなる、そんな当たり前の14歳、思春期の女の子とは違ってしまっていた。
 堕落という名の、慣れである。
 代わりに存在するのは、年頃当然の羞じらいを摩耗させていく過程で逆に培われたもの。
「いくよ、お姉ちゃん」
 ケイタの声に、おおよそ無垢という言葉とは程遠い期待がわき上がる。
「ンンッ、ンーッ」
 もうさんざん覚え知っている恍惚、肛姦による官能への期待という意味では、胸はまさに高鳴りゆくばかり。バルーン構造になっている本体を膨らませる前段階の“ニンジン”と呼ばれる形状で直腸内に押し入ってきた「お尻のおしゃぶり」に、さっそく腰がうねってしまっていた。
「んふ」
 つれないセリフばかりの先輩美少女が示した明らかな歓迎、媚態に、ケイタが喜ぶ。
 ローションがたらたらと、尻のあわいに垂らされた。
 ふんだんな潤滑油に乗ったアナル専用バイブの抜き差しは瞬く間に激しさを増して、ほじくり回される腸壁をえもいわれぬ―― ただ摩擦のとは思えぬ熱で焼き尽くしていく。
「んぁ、ぁ、あっ、あっ、あっ……」
「うわ、もうおツユが垂れてきてる。アスカお姉ちゃん、ピッチ早くない? 先生たちがデートから帰ってくる前にって、急いでたりする?」
 アナルバイブのグリップを操りながら慣れた手付きで、アスカの興奮を示しはじめていたクレヴァス地帯にも愛撫の手をのばしたケイタが、そう言って彼女をからかった。
「シンジ君のをいっぱい出されて帰ってきたオマンコ洗うユイ先生といっしょにさ、アスカお姉ちゃんもお尻の穴の僕の精液洗えば良いんだよ」
 『でさ、ムサシのでいっぱいになった前と、僕のが残ってる後ろの穴、いっぺんに洗うレイお姉ちゃんと三人で並んでポーズとってみたりとか』と、不埒な思いつきをまた写真の撮ろうなどと言い出す。
 明らかに調子に乗っていた。
 こうやって暴走しだすと、碌なことにならない。
 それこそ尋常の女子中学生ではこんな場面でとても保っていられないだろう冷静な思考で、アスカは胸の内にため息をついた。
 一方で、躯の昂ぶりはいや増すばかり。エアマットにぽとぽとと、ねばっこい蜜が垂れ落ちていた。
「んぁ、ぁ……、あふ……」
 彼女の尻穴をヴァギナにも劣らず淫らな性器に作り替えたのは、ほとんどがムサシの仕業であったのだけれども、その頃レイのアナル開発を担当していたケイタとて、技術が劣るものではない。
 それは、人一倍寡黙な少女からあの手この手で恥悦に満ちた“試され心地”を聞き出しつつ、二人三脚状態で工夫してきた尻穴ほぐしのテクニック。
 ムサシが『アスカ姉のケツ穴のことなら俺、知り尽くしてるもんな!』と豪語するほどではないが、こと同じ14歳の女の子同士、同じ時期にロストバージンして性を学びはじめた者同士、レイの体で試したやり方は殆どそのままアスカにも通用するのである。
「あぉ……ぉ、ぉふ、おぅンんん……ン、んぉ……」
 こうなってくると、アスカだって途中で止められたりしては堪らない。一度はアクメを迎えてしまわないと、収まりがつかないというものだ。
 大きく胸を喘がせる。
 ぞくぞくと蟻走感の迸る背をしならせる。
 ケイタがグリップを右にひねると、アスカもヒップを右へうち揺すった。左に向かって抉られれば、左に振りたくって悦んだ。浅ましくはしたなく、雌犬の尻振りダンスでケイタに応じた。
 バルーンのスイッチ、バイブレーション・モーターのスイッチが入れられ、子宮の裏側にあたる腸内に拡張責めと一体になった振動がこだましている。
 分かりやすいクリトリス感覚や膣内感覚でがんがんに狂わされるのとは違った、体内にしだいに重低音が充ち満ちてくるような官能の高まり。頭の中を、じっくりと、じっくりと、いやらしい感覚だけにしていくかの風でかき混ぜられているのにも等しい。
 経験上、こうした攻めを受ける方がいざ閥値を越えてしまえば酷いことになるのだ。
 だからアスカは、一層の激しさで尻を振った。大いに声を張り上げた。次から次にとりとめもなく自分勝手な欲望を口にし続けるケイタには取り合わずに。
「……それで三人、三人でさ。ぴったりくっつけて並んだお尻を突いてあげるの。ぎゅうぎゅう詰めでも逆に楽しいよ。アスカお姉ちゃんのお尻にピストンしてあげながら、隣のレイお姉ちゃんのオマンコとか、ユイ先生のおっぱいいじったりできるもん。皆でぐちょぐちょになろうよ」
「言った……でしょ」
 息苦しさによらぬ理由から絶えずOの字に開きっぱなしの口で喘ぎ続け。目も大きく見開いてはいても、真正面の壁のタイルに描かれた何かの模様さえ頭に入ってこない有様に陥りつつ―― そう、意識して快楽への没入を受け入れつつ―― アスカは答えた。
「さっさと済ませる、って。……人の都合を考えないなら、こっちもこっちで勝手に楽しんで、仕舞いにするだけよ」
 すなわち、飽和する肛悦官能で頭の中が本当に酷いことになって、わけも分からず余計な約束を口走ったりする前に。対策はシンプル。まだしも見えてきた山の頂が低い内、とっとと登り切ってしまうに限る。
 故に、ケイタが前準備のつもりでいようがこっちは先に果てさせてもらって、一回はさせてやったからと終わりにしてしまえば良い。
 そして体を洗ってバスルームを出る。
 そうはっきり伝えて、彼女は半ばケイタに聞かせるための大きな喘ぎを上げた。
「ああっ! あ、あおぉ―― ぉ、おおぅ……!」
「えー?」
 ケイタがいくら不満そうにしても、知ったことか。態度で示して腰をくねらせ、毛先をシャワーで濡らして重たくしたブロンドを振り乱し悶えた。
 諦めたケイタがアナルバイブを引っこ抜き、自前の屹立を押し込んでくると――
「んあっ、あっ……あはぁっ」
 もう後は安心して、アスカもその巧みなアナルセックスに酔いしれた。
(ケイタの、けいたの……おちんちん……! あっ、あ、ほんとに……っ、ガキの、くせにっッッ)
 それは目で見て比べた限りではムサシの持ち物よりわずかに長さが短い。
 しかし、いざねじ入れられてしまえば、分かるのはただ(太い! 大きぃいいい!)というぐらいだ。
 咥え込んで形状の差を区別できるなんて芸当は、アスカは少なくともアナルでは出来ない。ただ、シンジに犯して貰う時よりも確実に、一突きのグラインドが奥にまで押し入ってくることだけは分かる。
 喉の底から、嘔吐感じみて何かが溢れだしそうだ。
「……んぃ、ぃいいいイイっ。いく……ッ、イクわ! あああ、アタシ、イっちゃ……ッ、あああぁーっ!!」
 出しなさい! そう、膣での性交では言えやしない叱咤さえして、熱いスペルマ注入をアヌスの奥に受け止めて。
 びくびくと雌犬ポーズの四肢を痙攣させて果て、マットに突っ伏したアスカは、ムサシと違って後戯を欠かしたりはしないケイタの手で息が楽なよう横たえ直された上で、たっぷりキスを求められたのだった。
「アスカ、お姉ちゃぁん……」
「ん、んふっ……、ン、ンン……」
 乳首の尖りきった胸を撫ぜまわされるのとセットで咥内を貪られ、唾液をすすられる。
 直後の夢見心地を持続させて“次”へ繋ぐのに、文句無しのベッドマナーだ。半開きの目をとろんとさせて、アスカは鼻で甘え啼いた。
(けど……)
 薄目で間近に見るこの口付けのお相手は、一途に想っていたシンジではない。
 好みからは相当に外れた顔の、陰気なイガグリ坊主。
 男の勝手さが表面に出がちな射精後であっても相手への気遣いは充分だが、根底にあるのはアスカという女の子に対しての思いやりではなく、ユイに仕込まれた一連の作法がそうだからというだけ。一種、刷り込まれた反射行動にすぎない。
 であっても。
「んふぁ、あ、あふ―― ふ、ふゥン、ンン……」
 舌を互いに出して絡め合う、濃厚なベーゼにも、アスカはもう以前ほどの抵抗感を覚えてはいなかったのだった。



◆ ◆ ◆

 ―― ただいま、ムサシ君、レイちゃん。
 ―― あらあら、レイちゃんったら。大丈夫なのかしら?

 よく通るあのひとの声は、廊下からか。小学生の少年のひょろっとした胸板に頬を預けつつ、アスカは意識をそちらへと傾けた。
 『あ、あやなみ……!?』と、素っ頓狂な声。シンジも帰ってきているらしいと知れる。
 夕飯の買い物という名目であったにしては長すぎたデートから、やっと帰ってきたのだろう。
 実に仲のよろしいことで、結構な話だ。
 ムサシたちから聞かされたユイとの愛人契約の話によれば、実の息子のくせに一人蚊帳の外に置かれているらしいシンジだったのに、
(なんか、違ってきてるのよね。最近)
 事後の余韻と共にぼんやり、アスカは思うのである。この頃のシンジとユイの距離感というものが、変わってきている……と。
 元々が仲の良い親子であったから、親密さを増しただのと言うのもおかしな話だけれども。しかし、以前までと同じではないと、アスカの勘が囁く。
 実の親子のくせに、ユイとセックスをしていたシンジ。近親相姦という許されざる関係を結んでいたことを知ったのもアスカにとって衝撃だったが、「レッスン」を通じ、ムサシやケイタといった他の少年たちも含めたこのまともでない人間関係を内側から観察していると、見えてきたものがあった。
 明らかにムサシやケイタたちの方がユイに馴れ馴れしく、積極的であり、シンジはどこか一線を引いたように遠慮がちな部分が見受けられた。
 後にムサシたちに聞かされた「愛人契約」の件でもって、まさしくそれは一線を引いていた―― 引かされていたのだと判明したのだが。
 その一線を、最近のシンジは踏み越えてみせているように思うのだ。
 妊娠予約まで取り付けているムサシたちを差し置いて、美しい母親と連れだって外出しては男と女の性臭を漂わせて帰宅する。
 デート先で何をしていたのかは一目瞭然だ。
 時にはこの日のごとく、レッスンに集まったアスカやレイといったガールフレンドたちを他の少年に任せさえしておいて、自分は母との外出レッスンを愉しんでいるのである。
 そして、それをシンジに許しているユイの考えが分からない。
(おばさま……。シンジ……)
 漠然とした不安。
 ユイとシンジの間の真実をレイと共に知ってしまった日以来の、自分はどうするべきだろうか―― どうすべきだったろうかという、まるで答えの見えてこない煩悶。
 シンジを諦められず、その恋を追い続けるためにこそ、碇ユイの誘いに乗った。この、背徳と禁忌に満ち満ちたフリーセックス思想の集団に身を投じたというのに……。
「あ、シンジ兄ちゃんたち、帰ってきたみたいだね」
「そうね……」
 たった今、片ややっと中学生2年生、片や年端もいかない11歳児という互いの年齢からは許されないほど情熱的な一時を過ごした相手と抱きしめ合う腕の中にあって。尚、別の少年を想い、アスカは身を震わせる。
 バスルームの外からは、あやなみぃ、とアスカの知っているシンジらしい情けない声が聞こえていた。
 名を呼ばれたならすぐに応えたはずのあの子の声は、聞こえてこない。
 元からひっそりとした居住まいの女の子であるから、離れたこの場所にまで届く大声を出すのは―― 性に狂ってよがり喘いでいる時以外―― 考えにくいが、この場合は理由は別だろう。
『あやなみっ!? それ、その格好どうしたのさっ』
 シンジの慌てた様子からも察せられる。さしずめ、また今日もハードさの際立っていたセックス・レッスンを受けた痕跡を生々しく、その真っ白な肌に残す裸のままで玄関あたりをふらふらほっつき歩いていたところを、帰宅早々目にしたというあたりか。
 体力の無い子だ。酷使されきった体はさぞ重かろう。声を出すのも辛いほど、くたくただったろうに。
 偶然ではあるまい。
 レイはまた、行動に出ていたのだ。
 アスカにとってあらゆる意味でのライバルであり、ほとんど徒手空拳に等しい身で碇ユイのセックス指導に臨む戦友でもある彼女。アスカよりよほど先にシンジの性癖を把握して、自分が勝つための方策を見出していた―― あのひたすらにまっすぐな女の子は、ケイタが最近凝りだした下手な和風SM流に縛りあげられた裸身を、そしてムサシに犯され抜いていた肢体を見せに行っていたのだ。
 きっとシンジが、その雪肌に食い込んだ亀甲の縄模様で絞り出された乳房の無残さに息を飲み、同時にいやらしいと欲情してくれることを期待して。
 きっとシンジが、手首にもくっきり赤く残る縄目に、逃げるのも抵抗するのも出来ない状態で、ひたすら一方的に弄ばれていたのだろうと読み取って、そして歪んだ興奮を抱いてくれることを確信して。
『へっへーん、どうだよ、シンジ兄ちゃん。兄ちゃんがお出かけの間で、レイ姉の躾けはばっちりってやつさ。俺ら、良い仕事してるだろ?』
『いや、でもそんな、首輪まで付けて、四つん這いって……。綾波、それじゃまるで』
『そうさ、レイ姉は俺達の雌犬ペットだもん。ペットには首輪つけて紐で繋いで、引っ張って歩かないとな』
 ムサシの得意げな声も響いている。別の男に玩具にされたばかりの躯を見せつけ、そしてあえてその傍らに寄り添ってみせることで、シンジの妬心が強烈に煽られることを狙ったのに違いない。
 しかも話の内容に耳を澄ませていると、アスカが思い浮かべた以上に大胆な振る舞いに出ていたらしい。
『ほら、啼いてみせてよ、“レイ”!』
『く、くぅぅンン……』
『あ、あやなみ――
 その思惑がまさに図に当たっていただろうことを、気遣いを伝える中にも明らかに異質の感情のゆらめきを窺わせたシンジの声が伝えていた。

 この直後、急ぎシャワーで体を洗い流し、バスタオルを巻いた格好だけで様子を見に出たアスカが目にしたものは、まさかそこまでと思いつつ思い描いたままを、それ以上に破廉恥に演じて見せていたレイの姿だった。



◆ ◆ ◆

「そらっ」
 パンッ、と。こちらもさっきと同じ素っ裸で仁王立ちになったムサシが、スナップをきかせて繰り出した右掌。上がりかまちからすぐの廊下に這ったレイの低い位置の尻朶に、赤く手形が刻まれる。
 びくんと背をのけぞらせたレイはすでに、出来たての白玉さながらに透き通ってすべらかだったヒップに、幾つもの腫れ跡をつけられていた。
 そして、床に向かって揺れる二つの乳房を中心に、華奢な上半身へ縦横に巻き付けられた縄。これが、弱々しく蹲る獲物を捕獲した、邪悪な蜘蛛の長い手足にも見える。
 ここまでがアスカが彼女を寝室に残していった時と同じ緊縛ヌード姿で、そこから先、ケイタがもっと縄を使ったプレイに慣れていたならそちらも余さず戒めが施されていただろう下半身には、代わりの小道具が新たに付け加えられていた。
 ヒップのあわいから突き出した、犬の尾型の飾りである。
 たしか、ユイの道具箱にあった物で、細身のアナルビーズと接続されていたはず。
 そうして、ペットショップによく売っているタイプの赤い小型犬用首輪を巻かれ。繋がる引き紐の先は、いかにもご主人様然とした顔でいるムサシの左手の中に。
「ちょっと、ムサシ君。こんな……縄で縛ったりしてるのもそうだけど、はっきり分かるような跡付けちゃったら、来週綾波が……」
「大丈夫だって、脱がなきゃ分かんない場所だし。明日も日曜で一日置けるわけじゃん。それにレイ姉、元々俺たちとレッスンした次の日とかはいつも体育休んでるって言ってたぜ。ねぇ?」
「ふぅン、ん、んぅふ……ふ、ふむぅ……」
 ぴしゃり、ぴしゃりと尻を叩かれながら、真っ白な毛並みのペット犬に擬せられたレイは、鼻息の返事もくぐもる口舌の奉仕を強いられているのだった。
「シンジ兄ちゃんのちんぽミルク、大好物なんだよね、レイ。ユイ先生がお裾分けしてくれるって言うんだから、感謝してごっくんしなきゃ。それとも、シンジ君のミルク瓶から新鮮なのをもらう方が良い?」
 年上の中学生であるレイを呼び捨てにして、わずか11歳の飼い主が命じている。
 帰ってきたばかりで靴も脱がずにいる母子の、並んで立つ下半身に鼻先を突っ込んで奉仕しろと、そんなプレイを指図して。
 手を床につき、膝でにじり、ドアを開け放てばすぐに外から丸見えの玄関に全裸で這って―― レイはそれでも従順そのものといった態度だった。 少年たちのリクエストには常にだんまりを決め込み、ユイかシンジの口添え無しでは梃子でも動こうとしなかったレッスン初期とは随分な違いだ。
 右を向いては美熟女の艶やかな黒の茂みに舌を這わせ、左を向いては学生ズボンの前からにょっきりと引っ張り出された若茎に唇を被せる。
「うぁ、ぁ、綾波……」
「あん、ん……。うふふ、困ったわ。せっかくシンジが注いでくれたミルクなのに、レイちゃんに全部舐められちゃいそう……」
 さすがにこの淫蕩の教室に君臨する女主人は余裕だ。予期せぬ出迎えのサービスに目を白黒とさせていた息子とは対照的に、自ら落ち着いた上品な色のスカートの裾を掲げ持って、実の娘も同然に可愛がる少女のクンニ奉仕を手助けしてやる。
 露わになった太股は白く、むっちりと成熟したなまめかしさ。そして黒く透けるレース細工がセクシーなガーターベルトでもって、同じく透けた黒のストッキングを吊るしている。貞淑なロングスカートの下に人妻が隠した、白と黒の魅惑的なコントラストというやつか。まさしく大人の女にのみ許された色香だった。
 そして、出掛ける前からそうだったのか、履き直さずに帰ってきたのか、ショーツは未着用だったらしい。ねばつく白濁の液を滴らせていた美人主婦のいやらしい性器がじかに、レイの小さく突き出した舌先を受けて、にちゅり、ぴちゃ、ぴちゃりと淫らな水音を立てていた。
 その間は所在無さげにぶらぶらと、上を向いたまま揺れているシンジのペニスだ。
「ああん、良い、わぁ……。とっても上手よ、レイちゃん」
「そうだぜー、レイ。良い仔だから、隅々までペロペロして、綺麗に綺麗にね」
 言葉だけは褒めてみせているムサシのそれも、まるで本当のペットにするように色素の薄い髪を撫でてやる手付きと同じ。別の意図を露骨に示すものでしかない。
 ムサシは言った。暑い中帰ってきたところになんだけれども、シャワーは今、アスカとケイタがお熱く盛り上がってる真っ最中だ。悪いけど、外出先での汗とかさっぱりするのは待って欲しい。
 代わりに―― 、と。
「ね? どう先生。シャワーも良いけど、俺のこの可ぁ〜愛いペットのお口で下だけ先にさっぱりすっきりしちゃうってのも、乙でしょ?」
 またも得意げに、俺の、俺たちのとレイを指して強調する。
 にやりと生意気な目配せをくれる先は、レイに中途半端にしゃぶられたまま放って置かれて、びゅくびゅく焦れったそうに勃起をひくつかせているシンジの方。
 本当にムサシの飼い犬になりきったかのように従っているレイであったから、シンジのやるせない部分は、次はそっちをと指示―― これがヒップへの平手打ちで行われていた―― が出ない限りは、ずっと放置が続くのだ。
 じりじりとした様子で自分を呼ぶシンジの小さな声は、たしかに耳に届いているはずなのに。
 どれもこれも、わざわざシンジの目の前でレイを辱めるためのものであり、同時にかつては強情だった分の無残さでシンジに見せつけるものだった。
 つまり、得意満面でいるムサシはこう言っているわけだ。
 どうだい? 兄ちゃんの大事なガールフレンドはもう、こんなざまさ。目を離してる間にたっぷり調教してやったから、今じゃ俺たちの言うことの方をよく聞くんだぜ―― と。
 そうして、更にとどめとばかりに見せつけるべく、シンジの持ち物より数段逞しい自身の剛直をしごき上げ、飾り尾を掴んで引き寄せたレイの秘苑に向かって突き込むのだった。
「そらぁっ! ご褒美だよ、レイっ」
「……ンムゥンンッ!? ンッ、ンンー!!」
 一瞬、ぶるぶるっと蒼銀のショートボブを振り乱して。レイが喉の奥から立ち上らせたのと思しきは、まさに感に堪えないといった官能の吐露だった。
「あん、レイちゃんっ。噛んじゃだめよぉ」
 あのエラの発達した、女泣かせな亀頭で最奥を強打されたことで、レイの官能にも最終的なギアが入ったらしい。むぐふぐと荒い息と声とが入り交じった唸りが、ユイの花溝が割り開かれているあたりにくぐもっている。
 ムサシの抽送が叩き付けられている場所で立てられているのも、『ぐちゅっ、ちゅぶっ、ぐちゅっ』と、よほど女の蜜に濡れていなければこうはという粘音だ。
 もうあれは、全身の産毛を逆立てるぐらいの興奮にのめり込んでしまったものとしか思えない。

 男として、屈辱感に震えるべきところだろう。
 ただ親戚だった以上に、幼い頃から共にあった大切な少女。無口なくせに、思えばいつもひたむきな視線でその想いを訴えかけていた彼女。はじめて体を重ねた日には、処女を捧げることが出来て嬉しいと、涙ながら花咲くような綺麗な微笑みをくれた女の子。それを我が物顔に犯され、こうも屈辱的に扱われておきながら明らかな快感の声をもらす程、その心のあり方を作り替えられてしまった悔しさに、胸の奥からが痛切に軋むべき場面の筈だ。

(けど、シンジは……)
 しかしまさしく、アスカがもう確信していた通り、そこにあったのは――
「あっ、ぁ、ああっ、あやな……みっ。あやなみぃぃっ」
 それまでに増して急角度で力を漲らせたシンジの股間であり。息遣いをいよいよ荒げ、見開いた双眸を血走らせんばかりにして、血縁の美少女の乱れぶりに見入る、狂気の眼差しだった。
 廊下の端で呆然と立つアスカのことなど、まるで視界に入っていない。
「ンンッ、ふっ、ふぅンンン! ンッ、ンンーッッッ!」
 青白い肌をこの時だけはエネルギッシュなピンク色に染め変えて、欲情の炎で全身を燃え上がらせるレイは、一匹の雌犬となって激しくのたうつ。
 要は、シンジの眼前で他の少年に家畜のごとく這いつくばらされることに、彼女がマゾヒスティックな興奮を覚えられるようになっていたということ。そして更に、期待した通り、自らが寝取られた姿でもって想い人の視線を釘付けにできた達成感―― 歓喜、なのだろう。
「ンムッ、ンヴ―― ッッ、ッっ、っァあああっ!!」
 作り物のくせに、本物の犬そっくりに尻尾がふりたくられる。それぐらい激しく、レイは串刺しにされた尻をくねり暴れさせていた。
 突き入れては抜き、突き入れては抜きで、肉同士の打ち合う音をパンパンと小刻みに鳴らすムサシのグラインドと合わせて、どれだけ膣の中に濃厚な愉悦が生まれていることやら。
 だが、前後はユイとムサシの師弟に挟まれた格好だ。難攻不落だったクール美少女を遂にここまで陥落させてやったと有頂天になるムサシは勿論、教え子の一段と淫らな成長を遂げたと窺える狂態に喜ぶユイも、息子の精を舐め啜ってくれる苦しげな舌遣いをたっぷり堪能したいらしく、揃って前後から手を伸ばして、華奢な肩を、手形で痛々しく彩られたヒップを、放そうとしない。
「あうっ! っああ……! ぁムッ、フッ、フムゥッッ」
 レイは狂おしく首を揺すり、ただただ嬌声と入り交じった悲鳴をあげるばかり。
 それが故に余計に、揉みくちゃにされる細身の少女の姿は、蹂躙される被虐美というものを際立たせていた。

「凄いよ、あやなみっ。ああ……、ああっ、なんて―― いやらしいのさっ」
 いよいよもうプライドも何もなく、見るからにガキ大将といった日に焼けた全裸小学生に突き狂わされるレイの様子をオカズに、猛然と自身を擦りだしたシンジだ。
「ははっ、かっこわりぃー。なに自分でシてんだよ、シンジ兄ちゃん! ユイ先生に一発抜いてもらってきたばっかりなんだろ? 母ちゃんが横で見てんじゃん。それに、レイ姉もさぁ」
 ぷっ、ぷくくくっと子馬鹿にした笑い声を上げて、ほんとうに愉快そうに、
「いいぜぇ〜、レイ姉」
 『―― シンジ兄ちゃんのチンポも綺麗にしてやれよ。なんかもう、すぐにまたオナニーミルク、ぶちまけちゃいそうだけどさっ』と、ムサシは気の大きくなったところを見せて、そして程なく、ペットとして扱う年上少女の胎内に思い切り、沸騰した射精をぶちまけていったのだった。
「ンムッ、むぅぅぅー……っッ! ッあっ、あっ!!」
「はっ、ッはははは! どうだよ、レイ姉。大好物のチンポミルク、シンジ兄ちゃんのちょびちょび出すやつ舐めんのと、マンコで俺のをたーっぷりぶち込んでもらうの、どっちが美味しいんだよ!」
 犬の尻尾を付けられたヒップを、鷲掴みにするムサシの乱暴さに負けないくらい振りたくりつつ、ぶわっと全身に一際の朱の色を浮かべて、こちらも抜き差しならぬ境地に達しつつあるのを露わにして一度答えかけたレイは、しかし、口ごもって見せた後でたしかに言い切ったのである。
「む、ムサシくんの……ムサシ君のチンポミルクが……おいしいわ……」
「聞こえないよ! もう一回、もっとはっきりっ」
「ムサシ君の、ムサシ君の方が……い、いいの! いいのっ……!!」
 その自分の言葉に間違い無く、彼女は絶頂の引き金を引いていたのだった。

 ―― 言ってしまった。
 アスカはため息をついた。
 さっきは同じおねだりをケイタにされて、やはりシンジよりもと言わされていた。
 今度はそのシンジの目の前でだ。
 だのに、シンジのやつはかえって喜んでさえいる。
 ムサシが力を失って廊下の上に崩れたレイの足首を掴んで片脚持ち上げ、ほら見ろよと、今また新たに射精されてしまったばかりのぬらつく股の割れ目を誇示するのに、一言も怒りを見せるでもなく、自分の手にぶちまけた精液を垂らしながら興奮の息を荒げている。
(どこまで救えない趣味してんのよ……)
 まったくと頭を振る。
 であれども。本当に救いがたいのは、そうと知って尚―― シンジを見放す気にならない、求める心を変えられない、自分たちなのだ。
 アスカにもその自覚はあった。
「まったく……」
 レイも、ここまでが体力の限界だったのだろう。すっかり伸びてしまっているのを、さすがに今のムサシやシンジに任せるつもりにはなれず、アスカはユイに断って一人でリビングのソファへと運んだのだった。



◆ ◆ ◆

「……ありがとう」
 体を軽く拭いて、タオルケットをかけてやっているところで、薄く目を開けたレイが言った。
「いいわよ、別に」
 ごく自然にそう返してから、ふとアスカは気付いた。
 以前では考えられなかったことだ。
 いがみ合う、というほどに仲が悪かったわけではないけれど。けれどやっぱり、アスカは自分とは何もかも正反対のタイプに見える少女のことをまずライバルだと見なしていたのだ。
 向こう側からもそう。
 対立がまず、お互いを隔てていた。
 素直な言葉で礼を言われることも、構わないと自然に応じることも、出来なかったことだった。
(変わったものよね……)
 戦友と呼ぶしかない間柄になって、それどころか時には裸で抱きあって唇を吸ったり、愛撫を交わして同性同士によるアクメへ導き導かれたり。
 それで、良きにつけ、悪しきにつけだ。

「……レイ」
「なに?」
 アスカの手の中には、疲れきった息をする少女の股間を拭いてやったばかりのタオルが握られていた。
 髪と同じで色素が抜け落ちたヘアが一つまみまばらに生えた一帯から下、恥丘の周辺は、レイとあと二人分の体液がいり混じってどろどろになっていたから、汚れをぬぐったタオルは相当の異臭を放つ状態だ。
「あんた……こんな調子だと、その内ほんとうに妊娠しちゃうわよ」
「……そうかもしれない」
 ぽつりと答えるレイに、アスカは本気の深刻さを見付けることが出来なかった。
「真面目に考えなさいよ。いくらおばさまがどうとでも手配してくれるって言ってても、あたしたちまだ中学生なのよ? どうすんのよ、赤ん坊なんて」
「…………」
 自分が心配してやることではない。かえって好都合じゃないか。そんな考えがちらりと頭の片隅を過ぎりもするが、それでもアスカは訊かずにはいられなかった。
「シンジの子供を産むつもり? だけどあいつ、避妊はきっちりしてるわよ」
 『―― あいつらと違って』と付け加えて言下に匂わせたのは、妊娠させられるのはムサシかケイタか、あの悪ガキどもの子供になるという、予測どまりを越えた鮮明さの未来想像図だった。
 レイも聡い少女だ。分かっていたはずである。
 脳裏に蘇るのは録画の台詞。
『わたし、綾波レイは、ムサシくんとケイタくんに求められるのなら、二人の赤ちゃんを妊娠することも――
(なにが『拒みません』よ。なにが『誓います』よ……!)
 その、“ごっこ”であった筈の言葉が洒落にならない。
 「…………」
 二人の間にはしばし、居心地の悪い沈黙が続いていた。
 レイにも答えられないのかもしれない。そうアスカは思った。
 盲目的なまでにシンジを想っている娘だ。そのシンジの関心をこれ以上なく引きつけることが出来る方法を見付けてしまって、手は他に無いと思い込んででもいるのなら、止めてしまうことはすなわち恐怖なのだろう。
 ではどうすれば良いのか。きっとその答えが出せないでいるのだ。
「一応、注意はしたわよ」
 言って、話を打ち切ったつもりだったアスカの背中。そこを『……でも』と。ほとんど一人言のように呟かれて追いかけてきた言葉を、後になっても彼女は忘れてしまうことが出来なかった。
 「わたしが……彼らのせいで妊娠してしまっても。碇くんはひょっとしたら、喜ぶのかもしれないわ……」
―― あんた、頭おかしくなってんのよっ!」
 これ以上、聞くことはない。そう、顔を真っ赤にさせながら、音高くリビングのドアを閉めた。
 そうやって激高してみせて、アスカが打ち切ってしまいたかったもの。それは本当は、思わず頷いてしまいそうになった自分の思考をこそだったかもしれなかった。

(な、なによ……。馬鹿じゃないのっ! シンジが、へ、変態だから……。だから他のやつの赤ちゃん孕まされたとこ見せれば、って)
 それこそ、おおよそ常識からは考えられないことだったのに。馬鹿なと笑い飛ばすことも、聞き間違えですませることも、アスカには出来なかったのである。




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