Beautiful Party

7話Bルート



著者.ナーグル














外見
 一般的な種名は「ピンクオーク」であり、または「ケオティックオーク」や「オルクオーク」とも呼ばれる。人間型のヒューマノイドであるが、人間やドワーフたちのような主要種族とは血縁はない。
 身長は150cmから200cm、体重は100kgから200kgと人間に比べると骨太で大柄である。ただし、極端な短足のがに股と猫背の所為で実際よりも背が低く見られることがほとんどだ。手足は一対ずつで指の数は5本、猫背が酷いことと人間に比べると足が短い点に目をつぶれば、プロポーション的に人間とさほど違いはない。
 肌の色は名前どおりピンク色、またはくすんだ赤紫色が一般的だが、汚れている為に元の体色がわからないことも多い。頭部は人間というより豚や猪のそれに酷似した形状をしている。体毛に関しては胸や手足にはあまり毛が生えてないが、背中と腹部から股間にかけて剛毛が密生していることが多い。特に背中の毛は鬣と呼んで良いほどまっすぐで硬い。力や体力は人間以上だが知恵や意志は人間より低めであり、獣人型ヒューマノイドに分類される。


社会
 1人の族長と10〜30人前後の小規模な集団を作り、山賊行為等の略奪や破壊者の傭兵で生計を立てている。稀に強力なリーダーの指導の元、数百人単位の集団を作ることもある。およそ有機物なら何でも食べる雑食性であり、特に人肉を好む。
 独自の文字や言語という物はなく、酷くなまった共通語かグリーンスキン語で会話する。ほとんどが戦士だが稀にシャーマンやダークプリーストとしての技術を身につける者もいる。金銭に執着することは少なく、それよりも繁殖相手や食料を見つけることを常に考えている。そのため、ゴブリンの集団なども彼らにとっては同業者ではなく襲撃の獲物である。
 およそ衛生という概念はなく、たいてい疥癬など皮膚病にかかっており全身をシミや吹き出物、あるいはカビが表皮を覆っていることも多い。雨に濡れることを極端に嫌うが、これは身体を清潔にしたり濡れることを嫌がっているわけではなく、寒さを嫌っての行動らしい。確認はとれていないが、温泉に好んで入る部族がいたという報告もある。
 類族であるグレイオークとは社会の成熟度、文化、戦力共に比べものにならない差がある。彼らの文化は穴居人や原始人のそれと大差はない。
 また、頭部が豚に酷似しているが美醜の感覚は人間のそれに準じている(人間が美人と思う女性を、やはり彼らも美人と感じる)。


成り立ち
 先にオークの一種と述べたが、実際は彼らの始祖といえる最初の一体が全てのオーク達の始まりといわれている。ただし、このことをグレイオークの前で語ったら命の保証はできない。彼らは侮辱には敏感だからだ。
 殺戮と姦淫の神が作った最初の1人はナイトハグにも匹敵する力を持った怪物で、解き放たれた人間世界で見境なく暴れ回り、他の種族を襲って自らの類族を増やしていった。だがその結果、突然変異種とも言えるグレイオークが生まれ、さらにグレイオークとオーガーの混血であるブラックハートなどが生まれたのは皮肉としかいいようがない。余談ながらグレイオークとピンクオークは互いを不倶戴天の敵としており、両者が遭遇したらどちらかが全滅するまで戦い続ける。


種族特徴
 種族の特徴として男しか存在せず、繁殖には他の生命体の女性を利用しなければならない。繁殖相手は人間、エルフ、ドワーフ、ハーフリング、ノーム、ライカンなどのほか、ゴブリン、ホブゴブリン、オーガ、はてはセントールなど多岐にわたっているが、特に人間の女性と子を成すことを好んでいる。彼らの子供は全てが父親と同じピンクオークであり、母親の能力や目や髪の色など以外、つまりは種族的特徴は受け継いだりはしない(ハーフオークは生まれない)。彼らが他の種族と協調することは稀であり、ほとんどが村落の襲撃の為にゴブリンなどのグリーンスキン族と、一時的に手を組むと言った場合がほとんどである。
 人間を殺すのではなく種を造り替えることで絶滅を狙って作られた種族である為か、性格は粗暴にして残酷であり、性欲が大変に強い。歩行が困難になるほど巨大な睾丸を一般的に15〜20前後持ち、それらを納めた陰嚢はグレープフルーツほどの大きさがある。口腔内部にも生殖器がある。年中発情しており、明確な発情期と呼ばれる物はない(反論有り)。
 またオークオーラと言う聖騎士の絶対守護圏に似た不可思議な空間効果を常時発生させている。この半径10フィートほどのオーラの影響範囲中では、女性は恐怖、恐慌、嫌悪などを強く感じるようになり、なにより呪文や毒、薬などに抵抗する能力が極端に減少する。エルフやドワーフなどに対してはそれほどではないが、人間の場合は影響が顕著であり、極端な話、ドラゴンを倒せる女勇者であっても、オーラの範囲内ではオークに恐怖を覚え、もっとも初歩的な眠りの魔法をかけられた場合、抵抗できずに眠ってしまう。
 また彼らの体液は強力な媚薬となり、また精液が軽傷治癒の秘薬と同等の効果をもつ塗り薬になり、また服用すれば疲労回復の秘薬と同様の効果を持つ。また髄液から女性限定の不老・若返りの薬を作ることが出来るという報告がある。


危険性
 ピンクオーク自体は人間と比較してもたいして強くはないため、充分に距離を取って戦うか、オーラが効果を発揮するまでの数十秒以内に倒してしまうかすれば、女性でも対処することは可能である。また魔法を極端に恐れる傾向があり、火球呪文の一つでも放てば容易く勝利できるだろう。そのためピンクオークの驚異度は低く、よほどのしくじりか数の差でもなければ、女性であったとしても同レベルのピンクオーク相手に敗北することはない。
 次章からはもう少し細かい、ピンクオークの日常について説明する。





●ピンクオークは半夜行性であり朝から昼にかけて眠り、夕方から深夜にかけて活動する。

 洞窟の最奥にまで太陽の光は届かないが、朝…つまりは黄昏時が近づいてきたことを感じ取り、族長は心地よい眠りからゆっくりと意識を覚醒させていった。明かりとして持ち込んだ松明はとっくに燃え尽きているが、部屋が薄ぼんやりと光り輝いているから問題はない。
 クッションとカーペット代わりに室内植え込まれた魔法のヒカリゴケの上で身動ぎをする。この苔は彼らが住居としている古代文明の廃墟に残された環境維持を目的とした魔法植物で、小さなキノコと苔の中間といった形状をしており、柔らかくて衝撃に強く、同時に手触り肌触りも抜群だ。さながら苔の絨毯と言った趣だが、単にカーペット代わりと言うだけでなく、スライムの因子を組み込まれているため抜け落ちた毛や小さな有機物のゴミを取り込んで栄養に変えるので、掃除の必要がない。上で寝そべれば汗や湯上がり直後で拭き切れてない雫なども吸い取り、常に清潔に保とうとする。
 オーク達の根城にされたこの洞窟遺跡は、元々は鍾乳洞に作られた穴居人気分を味わえる観光施設として作られたものだった。主も文明も何もかも失われた今もけなげに生き続け、オークという最悪の主人相手にも変わらず与えられた役割を果たし続けている。
 この洞窟がオークの住処にしては清潔に保たれていて、不幸なことに捕らわれた人間の健康を維持しているのは、今もまだ生き残っている一部の魔法生物やシステムのおかげだ。

『もう朝かオーク』

 魔法植物でも拭いきれない目やにのついた目をしばたたかせ、ゆっくりと室内を見渡し、昨日と変わらぬ光景ににんまりと笑う。いや、厳密に言えば昨日から妻達が変わっているが、それは嬉しい変化だ。おとといまでは彼の妻はやつれきった人間の女性が3人と、バグベアの密輸人兼奴隷商人から大枚金貨15枚で買ったゴブリンの娘三人だった。ゴブリンの女性は若い頃 ―― およそ20歳以下 ―― は種族の特長でもある深い皺が無く、スベスベした濃い緑色の肌をしている。耳がエルフと比べてもさらに木の葉のように大きい。見ようによってはとても小柄なエルフといって通用する容貌をしている。人間から見ても美しいとか可愛いと言える容貌なのだが、それでもオークである彼には不満が多かった。

 だが今は違う。

 素晴らしき狩りの成果、族長として当然の報酬として5人の人間の美女を新しく妻に迎えたのだ。代わりにそれまで妻としていたゴブリン娘と中年の人間の女を、部下達の共用妻として下賜した。乱痴気騒ぎをしつつ疲労しきったそれらの女達を捕まえて部下達は夜通し楽しんでいた。あの嬲りようだと1週間と持たずに女達は死ぬかもしれない。しかし、族長は全く哀れみを感じていなかった。なにしろ新しい5人の妻達は絶世の美女なのだから。
 1ヶ月前に捕まえた1人と合わせて、計6人の妻達が今の彼の無聊を慰め、未来を作る子を産む。
 やがて生まれるだろう、大いなる力を持った子供達がきっとピンクオークの時代を作ってくれる。

 昨晩の…ほんの数時間前まで激しく愛し合った疲労からか、妻達は死んだように深い眠りに陥っている。突然の生活の変化に慣れるのは大変だろうが、すぐに彼のペニスなしでは昼も夜も、天も地もないようになるだろう。

 ともあれ苔の淡い発光で夕方が、つまりはオークにとっての朝が来たことを知った族長は目を覚ました。口の中の粘りを痰と共に床に吐き出し、腐った臭いの息を漏らす。朝起きて最初にするのは大広間に行き、粥と焼き肉で朝食を取ることだ。それが大飯ぐらいのオークに活力を与えてくれる。朝食は妻達も一緒に取らなくてはならない。同じ釜の飯を食うことで、奴隷であっても一体感、連帯感を持つことが出来るのだ。
 子分達も偉大なる族長が来るのを待っているだろう。

(あまり待たせるわけにはいかないオーク)

 粗暴で凶悪な男ではあったが、そう言った部分の気は利いている。部下の掌握が出来ずして凶悪なるオークのトップではいられない。
 族長は支度する為に立ち上がり………ふと、意識を失っている妻の真っ白な臀部に目を奪われた。族長の腕を枕に、うつぶせになって眠っているのは栗色の髪の毛が健康的なマナだ。親友のマユミたちに比べれば些か控えめな胸をしているが、華奢ながら忍者を生業としていた者らしい弾力としなやかさがある。悪夢でも見ているのか暢気で人懐っこい顔を、今は苦悶に歪めて寝苦しそうにしているが、昨夜は本当に可愛らしい仕草と声で族長を楽しませてくれた。
 ゴクリと唾を飲み込むと、族長はマナの尻に手を伸ばす。両太股の内側が熱を持ったように痺れ、睾丸の内部に異物が挿入されたような違和感を覚える。たった一晩で精液の再生産を終えてスイカほどの大きさに回復した陰嚢は、一刻も早く目覚めの一発を解き放ちたいと堅く張りつめている。
 童貞男子のような目眩を覚えながら、族長はマナの身体を仰向けにして両足を足首からつかんで左右に割り開いた。露わにされた秘所が淫猥に燃える。昨夜の残滓が残るそこからは淫蕩な匂いが立ち上り族長を狂わせる。

「ん………あ、ああっ」

 そこまでされればさすがにマナも目を覚まし、そして目を血走らせてのし掛かるオークの顔に一瞬息をのむ。無意識のうちに抵抗しようと手足を突っぱね、なんとか押しのけようとするが、疲労し、何より昨夜の余韻の快楽に呑まれていた身体は、呪物に支配されていなくても抗うことが出来なかった。

「いやっ、いや…。やぁ、いやなのに、もう、やっ、だ、よぉ」

 口では拒絶して涙を流して嫌がるマナだが、族長がのし掛かってくると族長の腰に足を絡ませ、手は背中に爪を立ててしがみつく。今までの拷問じみた性交の果てに、そうしてしがみつくのが最も刺激に耐えられる方法だと無意識のうちに学んでいたからだ。

「そん、な、くっ」

 奇妙な光景が展開されていた。口では拒絶し、激しく首を振り、涙を流して嫌がりながらも自ら積極的に腰をくねらせ族長を受け入れていく。恋人か夫婦同然の体勢で族長にしがみつきながら、股間に押し当てられたペニスの熱とそれが数瞬後にもたらすだろう狂気の快楽を想像して、マナは目を固く閉じて歯を食いしばった。マナが覚悟をした直後、ほんの一呼吸の猶予も許さず、ヌルリとマナの胎内へと異形のペニスは埋没していき、それは現実となる。

「ふっ、あああぁ! いやあああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」

 ギシリと軋むほど全身を硬直させ、首を仰け反らせてマナは叫んだ。族長のペニス専用にカスタムメイドされたようにすっかり馴染んでしまったマナの身体は、あっさりと極太の族長を受け入れて、肉の摩擦に喜悦の痺れと愛液を迸らせる。

「くああああっ、あっ、ひゃ、うあっ! ひ、ひぐっ、ひぅううぅっ!!」

 族長のリズミカルな律動と共に、猛々しい獣のペニスがマナの淫裂を押し割って出入りする。時として挿入したままグルグルと右に左にと腰を振り立て、わずかでもマナが慣れると再び注挿を再開し、じゅぽじゅぽと泡立ち音を立てて幾千幾万もの快楽でマナを翻弄する。

「はうっ、ひゃう、あ、あう、あっ、あっ、あっ、あっ、うあっ、く、あっ、ああっ」

 全身にじっとりと汗を浮かべ、体内を掻き回される快楽に身もだえするマナ。族長も快楽に涎を垂らして、ますます注挿の勢いを増していく。イトミミズのような繊毛が密生した異形のペニスがぐちゅぐちゅと異様な音を立ててマナを攻め立てる。

「ああ、あああ、あうううぅっ! ひっ、ひっ、ひぃぃっ! や、だめ、だめ、やめてぇぇー! いきたく、ないっ! お、ああっ、や、だよぉ…。あぐっ、ひっ、ひぅっ、きゃううぅぅっ!?
 や、やめて、やめてよ、ああ、もう、だめ、だめぇ。だ、め、よぉ…」

 マナの嬌声に目を覚ましたアスカ達が呆然する中、正常位で組み敷かれていたマナの身体がビクンびくんと跳ね上がる。太く熱い赤銅色をしたペニスがごりごりと容赦なくマナを凌辱する。無力なくノ一美少女の頬はバラ色に染まり、拒絶を漏らしつつも口の端からはまぎれもない快楽の涎を垂らしている。

「んあっ、あっ、はぁ、はぁ、はぁ、ひっ、く………っ、ん。…うううん!? はぅ、あっ、はぁ…はぁ、はっ、はふ、あぁぁ」

 徐々にマナの抵抗の声が弱まる。
 彼女がもどかしげに身体をくねらせて悶えると、首輪とそれに結ばれた細い鎖がじゃらじゃらと音を立て、どんなに彼女が感じているのかを周囲に嫌でもさらけ出していた。弱まった喘ぎ声に反比例するように、鎖の音がもう一つの嬌声となっていく。

「あう、あう、あああっ。あっ、んっ、くひっ」
『ほうれ、濃いのくれてやるオーク!』
「いや、いや、いやっ! やっ、あっ! いやぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 族長が快楽にうちふるえた瞬間、大量の精液がマナの胎内に放出された。新鮮な精液の熱とそれが子宮に満たされたとき、同時にマナの精神と身体もまた絶頂にうち震え、200kg以上ある族長の体を一瞬持ち上げるくらいに大きく背中を仰け反らせた。声にならない悲鳴を上げて強くきつく族長の身体にしがみつく。

「ひぅぅぅぅ………っ」

 両手が両足が族長にしっかりと絡みついて締め付け、そして唐突にぐったりと脱力した。

「んんっ、んっ、んん………う、うう、うぅ〜〜〜」

 気絶寸前の快楽に翻弄されていたマナだったが、かろうじて意識を失うことはなかった。鍛え抜かれた鋼のような彼女の精神は、そう易々と敵に屈服することはない。胎内の異物感とヌルリとした感触に絶望を覚えながらも、血走った敵意に満ちた目で族長を見上げる。

「いつか………か、かならず………ん、ひゃうっ」

 呪いの言葉は族長がペニスを引き抜いたときに中断された。中心を貫いていた肉の媚行から解放されたマナだったが、起きあがる気力もないのかぐったりと倒れ伏したままだ。彼女を労るようにマユミが近寄り、涙を流して抱きしめる。
 しかし、族長は容赦なく鎖の束 ――― 全員の首輪に結びつけられている6本の鎖 ――― をつかむと、犬の散歩でもするように引っ張った。

「放っておいて! マナさんを、休ませてあげて!」

 親友の危機にいつになく、強い口調でマユミが拒絶するがそんなことを気にする族長ではない。慣れた鎖捌きでマユミとマナを引きずり、マユミだけを引き倒し、真っ向から眼鏡越しの瞳をにらみ返すと、強い口調で断言した。生臭い息がマユミの顔に吹きかかる。

『飯。お前達も来るオーク。あんまり遅れるのだめオーク』

 命令された瞬間、憎悪の瞳はそのままだがマユミは静かに頭を垂れ、不承不承という感じでうなずき返した。

「わかり、ました…。ご主人、さま」

 憎悪を隠そうともしないマユミの返答に満足げにうなずきながら、族長は改めて全員の鎖を引っ張った。族長専用の奴隷妻といっても彼女たちの立場がオークの家畜であることには変わりはない。肉や乳、性処理用に飼われている山羊との違いはないのだ。故に彼女たちは立って歩くことは許されない。獣同然の四つん這いのまま、彼女たちは族長の後に続いた。屈辱に唇を噛みしめ、羞恥の涙をこぼしながら…。





●ピンクオークは雑食性であり、腐った物でも何でも食べるが、特にヒューマノイドの肉を好む。

 洞窟の大広間で(オークにとっては)賑やかな食事が行われている。鎖につながれたままではあるが、この時だけはアスカ達も立って歩くことを許され、オーク達の食事を用意し、配膳し、要求されれば酒をついで回らされる。実際は酌はほとんどせず、大半は族長のそばに侍り、要求されれば粥を皿につぎ、また要求されればドワーフですら目を回す防腐剤のようなオークの火酒を、口うつしで族長に飲ませるなどをしている。いずれにしても、人間らしい扱いなどは期待できないし、されるわけがない立場だ、
 今日の献立はアスカ達に命じて作らせた粥を主食として、岩塩と血で味付けした山羊と犬の焼き肉、略奪品に混じっていた乾パンや名も知れぬ苦い臭いの野草などだ。

 彼らが楽しげに食事をしているよそで、給仕が一段落したアスカ達は四つん這いの姿勢で食事、いや、餌を与えられている。床に直に置かれた薄汚い皿に適当に盛られた粥を、直接口を付けて啜ることを強いられている。

(畜生、畜生、畜生、畜生、畜生っ! このオーク共、私に、この私に犬食いなんて惨めなことをさせるなんて!)

 絶対に許さない。殺してやる、喩え全滅はさせられなくとも、族長だけは絶対に殺してやる。
 アスカは犬食いをさせられながら、族長を睨み付けた。
 彼は岩の玉座に腰掛け、右手に焼き肉、左手にピュータ製の酒杯を持ちながら楽しげに笑っている。アスカの憎悪の視線など気にもとめておらず、ときおり甘美なる刺激にビクリと身体を震わせ、刺激の原因を愛おしげに眺めていた。
 彼の股間にはマユミがうずくまり、ブドウの房がザクロの実を思わせる異形の睾丸に両手を添えて一心にペニスをしゃぶっている。さきほどマナを庇ったときに口答えをした罰として、彼女には今日はまともな食事ではなく、族長のザーメンミルクのみを与えられている。屈辱と嫌悪の涙を流して嫌がりながらも、その舌はイヤらしく蠢き、口全体で奉仕し続けている。「そんなもの飲むくらいなら餌抜きの方がマシだ!」となるのが当たり前だし、実際に彼女は拒絶したのだが、なぜかマユミは涙を流しながらも、もてる技の全てを尽くして族長に奉仕を行っている。彼女の重たくたわわな胸が、長い黒髪が動きに合わせて揺れ動く。

『うっ……出すぞ、今度はちゃんと飲めオーク』
「ん、ちゅく、ふぁ、は……………うぅ……。うん、ちゅ、ちゅぶ」

 先の射精は失敗しているのだろうか、顔と言わず髪と言わず薄黄色がかった白濁液をこびりつかせたマユミは顔をしかめた。だが、今度はちゃんと『飲め』と言われた以上、飲まないわけにはいかなかった。
 口一杯に溢れる精液をコクコクと喉をならしてマユミは飲み干す。本日三度目の射精にも関わらず、勢いと量が全く衰えない。勢いを押さえきれず、口の端から溢して唇と艶黒子を精液で汚してしまう。だが、マユミは懸命に飲み干そうとしている。そして飲み干した以上の涙を流している。

(いや、嫌なの、嫌なのに。こんなこと、したくない…嫌なのに…)

 だんだんと、苦くて粘つくだけの不愉快なオークの精液を美味しいかもと思い始めていることが恐ろしかった。少なくとも苦くてえぐいその味を、不快に思わなくなっていた。
 それにしてもオークを親の仇と憎んでいたマユミが、甲斐甲斐しく奉仕する。たとえオークオーラの影響があるとしても一体どういう事なのだろう。












(この、首輪さえなければ)

 首に重くのし掛かる首輪をアスカは呪った。彼女達の首を飾るのは青銅で作られた年代物の首輪だ。時代を感じさせる緑青が浮き上がり、ぞっとする肌触り以外は、ごくありふれたつまらない骨董品にしか見えないが、実はこれこそが彼女たちをオークに従属させる原因なのだった。

 首輪が不気味に明滅する。

「は、はうぅぅぅ」

 抵抗しようという意識を持った瞬間、苦痛ではないが苦痛かと感じるほどに強い焦燥感が、彼女達の心を縛る。もどかしく、切なく、息が苦しい。

(こ、れなら、まだ、苦痛の方が…マシよ)

 古代魔法王国時代に作られた玩具としてアーティファクトがこの首輪の正体だ。
 手軽に犬、猫などの動物を馴らせるようにと予めいくつかの制約魔法(ギアス)が永久化されており、これをつけられた動物は、首輪を付けた人間の命令に対して絶対服従を余儀なくされる。それだけでなく、他にもまだいくつかの魔法が込められている。

 1つ、主の命令にはどんな命令であっても従わなくてはならない。
 1つ、主とその仲間を傷つけてはならない。
 1つ、上記に反しない範囲で自分自身と仲間の生命を守らなければならない。
 1つ、首輪を破壊するようなことはしてはならない。

 この首輪が付けられた生物は自己で考えられる限りの範囲に置いて自己保全しなければならない。つまり、自殺や自傷行為も出来なくなるし、知識のある人間なら偏った食事を取る、と言ったことも絶食なども出来なくなる。これは今朝の食事にも現れている。無意識のうちに薬学・栄養学の知識のあるマユミは、粥にビタミン豊富な野草を混ぜて草粥のような物を作ってしまった。彼女たちの健康状態の維持に大いに貢献することだろう。
 これは自分だけでなく、同系列の首輪をした者同士の間でも有効なので、首を付けられた者同士で殺し合うといったことも出来ないし、他者の首を取ってあげるといったこともできない。

 こうして書くととても恐ろしい呪具のように思われるが、当然これを作った当時の魔法使い達も同じ事を考えていて、これが悪用できないように作っていた。その支配力は大変に弱く、これが効力を持つのは前述どうり、犬か猫、精々が小柄な豹くらいだ。虎やライオンのような大型獣にはそもそもサイズが合わないし、サイズがあったとしても支配するだけの強制力を持ち得ない。当然、人間にも効果がない。5歳の幼児でもあっさり制約魔法の支配を打ち破ってしまえる。

 ただし、首輪を付けられるのが人間の女性であり、かつオークオーラの範囲内でのことなら話は別だ。
 オークオーラの影響により、女性はそれがもっとも低級な眠りの魔法であったとしても、抵抗することが出来なくなってしまう。それは魔法の呪具の精神支配に関しても同様だった。そして一度抵抗に失敗してしまったら、喩えオーラの範囲外に出ても影響力は残り続けてしまう。解除される為には、首輪を付けた当人が死ぬか首輪が外されるかしないといけない。
 ありふれた道具がオークが使うというだけで、想像できない結果を生み出してしまう。なんと恐ろしいことだろう。





●ピンクオークは狩猟・採集生活を行っており、もっぱら略奪で日々の糧を得ている。

 食事の後、オーク達は揃って狩りに出かけた。洞窟に残っているのはまだ成長しきっていない子供のオークと、元はゴブリン部族でシャーマンをしていたというゴブリンの老婆、それから奴隷…つまりはアスカ達だった。
 ゴブリンの老婆はその若いときとは似ても似つかぬ皺まみれで醜怪な生き物だ。オーク達ですら敬遠する妖婆だが、彼らがいない今は彼女が序列では一番上だ。首輪の魔力でアスカ達は彼女の命令にも逆らうことが出来ない。そして今、老婆が命じるままにオーク達が散らかした大広間を片づけている。
 あのアスカ達がだ。

「なんで、私が…こんなことを」
「しっ。アスカさん、聞かれたら、あなたも」
「わかってる。でも、言わずにはいられないのよ」

 マユミの言葉でマナの背中に残る幾筋ものミミズ腫れをチラリと見て、それからアスカは直前までの作業を再開した。
 ゴブリンの妖婆は見た目同様にわかりやすい性格をしているらしい。

 ワラを束ねたタワシで3人がかりでないと持てないような大瓶を洗い、喰いカスを集めて洞窟奥の縦穴に廃棄する。仕事はきついし汚く、決して気の休まる仕事ではない。それでも、もう一つの仕事に比べれば天国だ。だからアスカですら口答え以上の反抗はせず、おとなしく掃除に勤しんでいる。
 もう一つの仕事、それは念願叶って遂に死ぬことが出来た人間の女性 ――― 族長の前妻の一人 ――― の死体を切り分け、食料として加工することだった。アスカ達の代わりに今はゴブリンの娘達がバラバラに切り分け、塩漬けにしている。
 そうやって片づけと夕食の準備が終わると、ゴブリンの娘達はオークの子供達に性の手ほどきをしてやり、族長専用の奴隷妻であるアスカ達は洞窟奥の泉で身を清め、万全の態勢で夜の奉仕ができるように、その時が来るまで泥のように眠ることになるのだった。

 しかし、大人しくその言葉に従うほどアスカ達は従順ではなかった。ひとしきり、どうにか出来ないかと首輪を外そうとしては手足を痙攣させて倒れ込み、自分のではなく仲間のならばと試してみて、やはり頭蓋を締め付けるような痛みに耐えきれずに倒れ伏す。事故か偶然を装おうとしても同じ事だった。考えただけで偶然ではなくなるのだから、当然と言えば当然だった。

「外せない…どうすれば、良いのよ?」

 考えられる限りあらゆる手段を試して、その全てが徒労に終わった直後、苔のクッションの上に座り込んでアスカは呻き声を上げた。このまま、何も出来ずにまた犯されてしまうのだろうか…。

「無駄よ。私も、色々やったわ。やろうとしたわ。でも、全部ダメだったんだから」

 自嘲気味の笑いを浮かべながら、少女は無駄な努力をするアスカ達を止める。アスカ達に先立って捕らえられ、族長の奴隷妻にされていた冒険者の少女だった。

「無駄って、あなたはそうかもしれないけど…」
「なら試したらいいじゃない。止めないわ」

 大きな瞳のためかやや幼く見える少女、いや女性だ。後ろ髪は肩の上でワンレングスに切りそろえていて、アスカ達の知人であるリツコ同様に気の強い印象を受ける。緑色の瞳は大きく猫のようで、見た目の印象だけでも相当に勝ち気で口も手も早い印象だった。年はアスカ達と同じ18歳で、14歳の時にサーカスを飛び出してずっと冒険者をしていると語った。
 レイとは対照的な褐色の肌は日焼けによるではない。陶器のような艶がある肌から、彼女が南方人の血を引いていることが伺えた。つややかな肌にはシミひとつなく、野生動物のような張りがある。実際、身体能力に優れているのだろう。ドルイドは僧侶系に分類されるクラスだが運動能力に長けている者が多い。彼女もその口らしい。だが、呪いの首輪に捕らわれていてはそれを披露することは出来なかった。

「私が試したこと無いと思ってるの?」

 アスカ達の先輩に当たる少女は「ナディア」と名乗りドルイドのビーストマスターで ――― どれほど前なのかわからないが ――― オーク退治に来て返り討ちに遭い、捕らえられたとアスカ達に語った。本当にどれくらいの時間が経ったのかわからない、と疲れた表情で彼女は言った。

「10日以上捕まってるんだから、その間色々試したわよ。捕まってどれくらい? 10日? きっと違うわ。でも、3ヶ月は経っていないと思う」

 そう言う彼女だがあまり自信はない。10回までは数えた。それから先は時間の感覚が狂い、もう何日経っているのかわからない。

「…きっと、助けが来るわ。だから、諦めて死ぬわけにはいかないの」

 もしかしたらそれは首輪が持つ保護の魔力がそうさせたのかもしれないが、ナディアはオークが隊商達から略奪した品物にあった大量のリネン布を貰い、それを加工して巻頭衣のような衣服を仕立てていた。あり合わせの適当な服だが、それでも裸よりは何倍もマシだ。

「風邪ひくから着といた方が良いと思うわ。…言っても聞かないと思うけど、きっと色々試すんでしょうね」

 下手なことをしたら族長 ――― ナディアは自発的にご主人様と呼んでいるが ――― に見つかり、常以上に手酷い仕打ちを受ける。アスカ達がそうなるのは勝手だが、こっちを巻き込まないで欲しい。
 そう、無駄なことをしないで大人しくして、助けが来るのを待っていればいいのに。

「…………すぐに、すぐにジャンが助けに来てくれるわ。今までだって、ずっと、そうだった。何してんの…はやくしないと、私、本当に」

 それだけ確かめるように言うとアスカの反論を無視してうずくまり、膝の間に顔を埋めてぶつぶつと何事か呟いている。いつまで経っても助けに来ない相棒のことだろう「ジャン」という名前と、彼に対する恨み言だけが聞き取れた。

 アスカ達がナディアから聞き出せたのはそれだけだった。
 半ば正気を失い、来るはずのない恋人の助けを待ち続けている哀れな虜囚。
 彼女への哀れみとオークに対する怒りが5人の胸を焼く。だが、他人事ではないのだ。彼女が将来の自分たちの姿を暗示していないと誰が言えよう。アスカ達は無駄と悟りながらも、再び首輪を外そうと足掻き始めた。ナディアの忠告を無視し、考えられる限りの方法や手段を試し、結局、無駄な努力と気づくまで…。











 午後11時ほどに族長達は帰還し、アスカ達はゴブリン老婆に叩き起こされ、促されるままに族長達を出迎える。
 遺跡の方に足を踏み入れた冒険者などはいなかったようだが、森での狩猟は大漁だったようだ。鹿が2頭、ウサギが6羽、不用心な人間の猟師が1人。頭から血を流し、身動き一つしないが死んでいるのではない。オーク達の胸が悪くなるお楽しみの為に、敢えて殺さずに生け捕りにされたのだ。

 アスカ達は彼を哀れんだが、どうしようもなかった。目の前で人間が拷問され、死んでいくのを見せつけられるアスカ達もまた地獄だ。
 オーク達の饗宴の中、主賓たる彼は地獄の苦しみに泣き叫び、同じ人間であるアスカ達に必死になって助けを求めたが、都合の良い救いの神などいるはずもなく、遂に3時間後その苦しみに満ちた生涯を終えた。アスカ達は彼の名前すら知ることはなかった。
 そして、彼の死を契機に、アスカ達の今夜のもう一つの地獄が始まる。





●ピンクオークの日常は謎に包まれている。それを見て生きている人間は皆無だからである。

 頃合いだった。
 松明が燃えて周辺を赤く染めている。揺らめく炎が不気味に照らす中、玉座 ――― 円柱状の岩 ――― に腰掛けた族長が笑いを浮かべて、目の前に傅く妻達を見つめている。族長がいるのは大広間の奥まったところにある、周囲より3メートルほど高くなった特別な場所だ。
 下に屯している子分共はゴブリンの娘や雌山羊を犯し、あるいは飲み食いしながら、羨ましそうに族長達がいる玉座を見上げている。あれだけの実力を見せられてなお、謀反を起こしてでも物にしたい美女達。彼らのいる場所からは何も見えないが、声を、それも最高に惨めで哀れな美女の喘ぎ声を聞くことは出来る。せめてそれを肴に酒食を楽しむしかない。

 玉座に腰掛ける彼の股間からは隆々と二本のペニスがそそり立っている。そしてアスカ達に見せつけるように、今朝から更に変異した異形を誇示していた。

「はぁ……うぅ」

 これから起こることを想像し、艶っぽい呻きを漏らしたのは6人の中で誰だろう。
 アスカ達との交合をきっかけにして、族長の変異は激しさを増していた。
 比喩でなく、昨日から肉体の変化速度が著しい。第2ペニスは太さと形を増し、第1ペニス共々、表面をみっしりとウジ虫に似た小さな柔突起が覆い尽くしている。米粒ほどの大きさの突起を指で軽く触ってみると、指先とペニス双方からの何とも言えない心地よさが族長の神経を痺れさせる。族長の感情に合わせてウジ虫は一斉にわさわさと蠢き、ジュクジュクと精液をにじみ出させている。そんなペニスが2本、ぞわぞわもぞもぞと股間に屹立して蠕動している。

 脇の下から生えた変異腕が空を掻く。変異は彼の太股にも現れていた。両の太股に女性器に似た亀裂を持った腫瘍が生まれ、亀裂を押し割って大小様々な触手状器官が無数に蠢いていた。
 右の太股からは指くらいの太さをした10本近くの疑似ペニスが、密生したキノコのように生えている。左の太股から生えているのはユスリカの幼虫、アカムシの群生のようにも見える無数の、小さくて細い触手の塊だ。ざわざわ、わさわさと海草のように揺れ動いている。

「なに…あれ」

 彼女らしくない怯えた目でアスカは呟いた。毛虫やウミウシを可愛らしいと思える日が来るとは思わなかった。
 あまりにもグロテスク。昨日だって言葉を失うような快楽責めをしてきたというのに、あんなもので攻められたら…。今までだって狂わなかったのが不思議なくらいだったのに、あんなものを挿入されたりしたら…。

(本当に、狂っちゃう)

 顔面蒼白、だがほんのりと朱に染まった頬でアスカは後ずさった。横目で見るとレイ達も驚愕に目を見張って震えていた。ある意味、オークに慣れているはずのナディアですら驚いている。もう族長はオークなんかではない。もっとおぞましい別の生き物だ。

『ん〜〜?』

 妻達を待たせていたことに族長は漸く思い至った。さすがの彼も自分の変化を把握するのに時間がかかったわけだが、女共を焦らすのもここまでだ。

『こっち来いオーク』







初出2010/07/11 改訂2010/08/19

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