Go Quest3

 母親の顔など知らぬ。いや、人の言う母親という存在が自分にあったのかどうかさえ分からない。ただ、この暗い洞の暖かな水底に体を丸めて漂っていると、自分が以前にもそのようなところに居たような感覚が甦ってくる。それは、記憶の中と言うには儚く、まるで夢を見ているように掴みどころが無い。 



朽ちかけた肉体を取り戻そうと思った瞬間、この暗い洞の中に沈んでいた。



自分は、ここで生まれたのかもしれない。



だが、母親の顔など知らぬ。

子どもだった自分の姿も覚えていない。



気がつけば、人々の怒りや悲しみ、憎しみや恨みを、自分の血肉として生きていた。時には体の中で交錯する誰のものとも分からぬ激しい怒りのままに破壊と殺戮を行い、小国が2つ3つ滅んだこともあった。相手が自分を憎めば憎むほど、自分の力は強くなっていった。



そして、いつしか魔王と呼ばれるようになっていた。



ぼんやりとした視界に、骨と皮だけになった自分の膝が見える。

それを抱える両手の指が膝の間から覗く。

血も肉も無い。



魔王たる自分が血肉を得て完全に復活するためには、人々の怒りや悲しみ、憎しみや恨みが必要だ。

それから、自分を憎む人間が。



そう思った時、何かが遠くで応えた。




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