北陸新幹線は何かと一長一短!?

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 私は今年の春から長年育った大阪を離れ、金沢に住んでいる。金沢では新聞紙上に北陸新幹線の話題が頻繁に載っているのには驚いた。大阪にいるときとは量が雲泥の差である。

 北陸新幹線は高崎から長野、富山、金沢、福井、敦賀と通って大阪まで結ぶ整備新幹線の1ルートであり、1997年10月に高崎−長野間が開業した。また、長野−上越、金沢−高岡などで工事が行われている。残りの区間に着いても他の整備新幹線と同様に早期開業を目指している。
 整備新幹線自体の着工は都心部へ速く行けるようになるので地方では歓迎されている。私の住む金沢から、大阪まで1時間半で結ぶとなれば結構いるだろう。

 ただ、平行在来線の経営分離が叫ばれている。もし北陸本線の一部区間が寸断されるようなことだけは避けるべきである。というのも、北陸本線は関西から東北・北海道を結ぶ日本海縦断線の主要路線であり、トワイライトエクスプレスをはじめとする多くの夜行列車や貨物列車が運転されていることから、これらの列車を通すためにも既存の在来線は必要なのである。ただJRから分離されることによって、分離された部分の運賃が高くなるのではないか心配である。
 他にJRでは、北陸本線の支線についても第3セクターに経営分離したい方針でいる。確かに北陸本線が分断され越美北線や氷見線、城端線といった支線のみがJRとして存続するとなると、車両検査などの手間がかかるかもしれない。また第3セクター側から見れば、北陸本線とその支線を同時に経営を行ったほうが地域輸送に専念できる分便利なダイヤになるかもしれない。
 ただ支線は通過交通が見込めず、収入源に欠ける。そのため支線自体の運賃値上げは免れないであろうし、新幹線に乗りかえて都心に向かう客のことを考えると、2社分の運賃を取られるのはやはり割高である。このように一長一短はあるが、やはり整備新幹線が開業して所要時間が短くなる手段が登場するのは嬉しいことである。

 この北陸新幹線、政府では全線フル規格で7年後の開業を目指しているが、それには財源があまりにも不足している。現在の整備新幹線予算は年間約1500億円程度であるが、7年後に開業するためにはこの9倍の予算を必要となる。現状維持の予算が続くならば、全線開業まであと60年以上かかることになる。ただ縦割り行政の中、財源を増額するのは相当問題があるため、60年後というならともかくとしても、7年後の全線フル規格開業はまず実現しないように思う。

 それと北陸新幹線の場合、敦賀以西のルートのことでもめている。当初の案では敦賀からそのまま西に進み、小浜を経て、そこから大阪に向かうルートであった。しかし経費節減のため敦賀から北陸本線沿いに南下して米原で東海道新幹線と接続する案が浮上している。
 この米原接続案だと北陸から関西以西方面のみならず、中京圏や東海道新幹線沿線に出るにも利便性が増すことから、需要も多く見込まれる。そのため、政府やJR側は米原接続に力を入れているが、地元・福井県は県内交通の利便性が高まる小浜ルートを支持している。

 私は北陸対中京圏の交通を考えて、やはり米原接続の方が懸命だと思う。というのは、現状での北陸対中京圏での鉄道の地位は、北陸対関西のそれより相当低いからである。北陸は文化的に中京圏とのつながりも大きいだけに、利便性を向上させてほしいものである。
 北陸から中京地区へは、現在のところ特急「しらさぎ」で3時間必要とするが、この「しらさぎ」はが2時間に1本程度しかない(「加越」を入れても毎時1本程度)。
 一方、道路環境は北陸対関西の場合と異なり、ほぼ平行して高速道路が通っていることから便利であり、3時間から3時間半ほどで行けるので「しらさぎ」と大差はない。また、中京地区が土地柄から自動車交通の強いところであることなどから、鉄道が意外と苦戦しているのである。
 米原接続で北陸新幹線が完成すれば金沢−名古屋間は1時間半ほどになり、所要時間で圧倒できることから、かなり優勢に進めることができるのである。 ところが、小浜経由だと北陸対中京圏は大阪回りもしくは敦賀や米原で乗換が考えられる。しかし前者は距離的に値段がかなり割高になり、後者は乗換の手間が嫌われ、結局のところ北陸対中京圏での利用は見込めないであろう。だからこそ米原接続にして、東京−米原−富山といった列車を毎時1本程度走らせれば、相当利用客は見込めるであろう。

 その他、敦賀以西をフリーゲージトレインにして湖西線や米原方面へ直通させるという案がある。この案だと予算が少なくてすむため開業時期が早まる可能性は高いが、金沢対大阪、対名古屋とも所要時間は30分ほどしか短縮できず、全線開業した場合と比較すると苦しい。
 とはいえ、小浜ルートについても新幹線が通らなくなっても当初案がこのルートであったことから、何らかのかわりにフォローアップしないと県や住民は納得しない。だから最低でも小浜線全線高速化および電化および近江今津−上中間に計画されている新規鉄道路線の開業を行うべきである。 現在小浜線は単線非電化のため、小浜から敦賀まで40kmを結ぶのに1時間程度要するのであるが、これが完成すると30分程度で結べるのである。
 そしてこれらの在来線改良が完成したら、東舞鶴−福井間の直通快速や、東舞鶴−近江今津−大阪の特急 (小浜以西は快速の方が良いであろう)を、2時間に1本程度運転すればかなり便利になるであろう。
 小浜線の直通快速は、フリーゲージトレインとして敦賀から新幹線に乗り入れ(敦賀以東では特急料金が必要になるが)、金沢発着や名古屋発着といった列車を立てるのも小浜の救済に役立つであろう。なおこの在来線改良については、当然のことながら整備新幹線予算で行うべきであり、改良した区間はJRが責任を持って運営すべきであるのは言うまでもない。

 ただ新聞等で各方面の意見を見ていると、米原接続を経費削減という理由で主張する人がいるが、こうした人たちは小浜のことを考えているのであろうか、いささか疑問である。米原接続案を主張する場合、小浜関係の在来線改良をセットで考えるべきであり、小浜について言及しなければ県や住民が納得しないのも当然のことである。
 とはいえ米原接続の場合、上記の在来線着工にかかる費用を合わせても、小浜ルートでフル規格新幹線を完成させる場合に比べて新規着工区間のキロ数は数十%に過ぎないことから、費用はかなり削減されることには違いはない。だからこそ福井県内の輸送を考えた、米原接続案にするのが望ましいと思う。

 余談ながら、私個人としては小浜ルートで完成したほうがうれしい。というのは、舞鶴に親類がいることもあり、金沢から舞鶴に行くのに小浜まで新幹線で行くということがあるからである。

(1999年6月14日)

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