人気殺到?サンライズエクスプレス

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 7月10日、「サンライズエクスプレス」がデビューした。7両編成で5両が2階建て、寝台は全室が個室というデラックスぶりで展示会は各地とも好評のようで、早くも人気が殺到しているようである。

 それもそのはずで、JRは従来から寝台列車の改善は非常に遅れていた。JRが誕生して以来、昼行特急や近郊型車両などは次々と新型車両が登場しているのに、寝台車に関しては改造車はあっても、新造車は「夢空間」3両を除けば全く登場しておらず、国鉄時代の一番新しい14系15形から20年近くが立っているのである。そこでようやく登場したのが、この2階建て電車、285系「サンライズエクスプレス」なのである。

 サンライズエクスプレスは、従来のブルートレインとは塗色も異なって、日の出のイメージを出している。設備はA寝台個室(シングルDX)とB寝台個室(シングルツイン、シングル、サンライズツイン、ソロ)と普通車(ノビノビ座席)から構成されており、今までにないデラックスさである。内装はミサワホームが手掛けるといった、従来にない方式を取っており、住宅会社らしく客室内は木の温もりを出している。性能は2M5Tの7両編成とし、モーターのない静かな車両を増やすとともに、モーター付きの車両はソロやノビノビ座席といった廉価版の設備の車両としている。

 今回は「サンライズエクスプレス」5編成(うち3編成がJR西日本、2編成がJR東海所属となっている)落成し、「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」(1往復)に投入、東京−高松・出雲市間を結んでいる。東京−岡山間は併結運転とし、電車化によるスピードアップにより所要時間も従来より約1時間短く、東京−出雲市間は11時間59分、東京−高松間は9時間27分になった。このように快適な個室化が進み、所要時間が短くなり利用者にとってこの両列車は大変便利なものになった。

 しかし問題がないわけではない。まず私が思うのは「あまりにも寝台列車、夜行列車の近代化が遅れてしまった」ということである。新造車が登場していなかったこの約20年間、多くの寝台列車、夜行列車が廃止されてしまった。この中には新幹線の開業によって消えた列車もあるが、近代化が早く進めば利用客もいたわけで、もしあと10年ほど前に近代化が行われておれば、「ゆうづる」「鳥海」「(博多)あさかぜ」「つるぎ」あたりは廃止されずに済んでいた列車である。近代化が遅れた理由にはJRの分割が地域に密着した鉄道網を考えすぎるあまり、長距離列車を担当する全国一元の組織が生まれなかったからである。そういった意味でJRは分割による弊害を振り返ってほしいと思うのである。

 次に問題なのは、定員の少なさである。「瀬戸」の場合、従来は24系25形の13連で、A寝台(個室)1両、B寝台11両(他にラウンジカーが1両。B寝台は7両に減車されることもある)だった。定員はA寝台が10人、B寝台は1両あたり30人強なので11両だと約360人(減車の時は約230人)である。それが「サンライズ瀬戸」だとA寝台が6人、B寝台が124人(シングルツインは8室とも2人利用した場合)、ノビノビ座席28人で合計158人にしかならない。今までの半分以下なのである。豪華な設備なこともあって人気が高い上に定員が少ないとなると、きっぷの取りにくい列車になることは必至で、繁忙期はもちろんのこと、通常期でも「サンライズ瀬戸・出雲」のきっぷはプラチナチケットとなるであろう。
 このように考えると、やはり定員をある程度確保することが必要だったのではないかと思う。「サンライズ出雲」の場合は仮にきっぷが取れなくとも、従来の出雲が1往復のこることもあって問題は少なそう。しかし「サンライズ瀬戸」の場合はそうはいかない。5編成にしか落成できないのであれば、今回は「サンライズ瀬戸」の置き換えのみに専念してもよかったのではないか。

 また、ノビノビ座席以外に通常の座席車も設けることも検討してみてはどうだっただろうか。「サンライズ瀬戸・出雲」の場合だと姫路や岡山から米子、松江、高松方面への乗客も考えられる。また上りの場合は「直通する」というメリットを活かして米子、松江、高松方面から阪神地区への乗客が考えられるほか、阪神地区から東京方面へ向かう流れも考えられる。しかしこうした乗客は、サンライズエクスプレスを長時間利用するわけではないので寝台だとやや割高となるので、座席車を利用することが考えられる。
 そこで例として、6号車の2階部のシングルは座席車として36人分の座席を設けたとする。そうなると定員は27人増加することになる。しかしサンライズエクスプレスにはノビノビ座席が連結されていることから、座席車はこれで充分ではないか、という考えもある。そうなると問題なのは、やはり「編成が短い」ことの方にあるのではないかと思う。

 今後はぜひとも、現在走っている他の寝台列車を、徐々にサンライズエクスプレスに取り替えてほしいと願う。今回デビューしたサンライズエクスプレスを増備するとすれば、直流電化専用であること、豪華な個室が少なく供食サービスの面に難点があること、といった性格から「あさかぜ」「銀河」に充当させることになる。やはり各列車とも定員を考えると14両編成で走行することが望ましい。
 さらにいうならば、定員の関係から「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」の分割・併合運転をやめ、各々の列車が独自で編成を立てて、各14両編成とした方がよい。そして「サンライズ瀬戸」のうち半分の編成は松山発着とすれば松山−東京間の直通客が利用するであろう。特に松山−東京間は寝台列車が走るのにふさわしい距離で、かつ需要は見込めるのにも関わらず、直通列車がないのは何とももったいない話である。直通列車を走らせれば11時間台で結ばれる。この所要時間は「サンライズ出雲」と同じ程度である。
 しかし九州方面への夜行列車を置き換えるとなると、サンライズエクスプレスのノウハウを活かしてまた新しい車両を開発する必要がある。交直流にすることはもちろん、豪華設備の整った目玉車両連結することや、供食サービスを考える必要があるからである。
 また所要時間もさらに短くする必要があると考えられる。今回のサンライズエクスプレスだと、岡山−東京間739.2kmを8時間27分、表定速度は87.5km/hである。この値は寝台列車としては速いほうであり、「サンライズ出雲・瀬戸」の運転時間帯を考えると妥当な数字だと言えるが、九州方面へ結ぶことを考えれば若干物足りない。そこで表定速度を100km/hとすると、東京−下関間を11時間強で結ぶこととなり、博多、熊本、大分、長崎あたりなら充分に利用価値のある列車となるであろう。

 今回の「サンライズエクスプレス」は試作的要素が強く、利用状況を見て今後の対応を決める可能性が高い。そこで利用者が多ければ、「つばさ」「こまち」などのように増結も考えられるし、またサンライズエクスプレスを他の寝台列車へ投入することも積極的に行っていくであろう。そこでこれを読まれた方は、積極的にサンライズエクスプレスを利用し、愛用してほしいと私は願う。初めに述べたように、他の列車に比べて寝台列車、夜行列車は近代化で遅れているのである。その遅れた分を一刻も早く追い付くために、ぜひともサンライズエクスプレスを初めとする寝台列車、夜行列車を利用して欲しいと思うのである。

 私も先日、「サンライズ瀬戸」のノビノビ座席を予約しようとしたが、発売日より1週間ほど経っていたこともあって、希望当日(8月9日)だけでなく前後の日も満席という盛況ぶりであった。利用客が多いことで、「今後に期待できる」という意味ではうれしく思う。しかし、自分の分が取れなかったのは残念。キャンセル待ちをあたってみるとするか…。

(1998年7月)

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