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2012/09/26 (水) ハイブリッドカーの時代
という本を、つい買ってしまいました。もちろん、中身は1997年21世紀に間に合いましたのキャッチフレーズとともに登場した、世界初の量産ハイブリッド トヨタ・プリウス(初代)の開発記です。99年に父が購入し、当時高校生で特に車に興味などなく、どっちかというと自動車での旅行が嫌いだった自分としても、体感したこともない静かさと、トルコン式4速オートマが主流の時代にありえないくらいスムーズな加減速にはたいへん驚いたわけです。特に、刻一刻と変化するエネルギーモニターは見ていて飽きない。満充電になって、すーっと電気だけで巡航速度に到達する様は、もはや未来の乗り物。こんな思い出のある車ですが、その開発記も相当なものでした。
今年の新車(登録車)販売数は1位プリウスで2位が同システムを搭載したアクア、2つ合わせて月5万台っていう、ちょっとあり得ない状況ですが、そんな世の中を変える発明品っていうと、会社の中でも窓際な部署の起死回生策!みたいな想像を勝手にしてました。いや、プロジェクトXに出てくるシャープの液晶とかカシオのデジカメとか、全部そんな感じなので(笑)。
トヨタハイブリッドシステム(THS)はMTとかATとかCVTとかの枠を超越した構造をしており、遊星ギアを3軸とも使ってエンジンからの動力を発電機とモーター&車軸に分割してます。普通車に必ず存在する「ギア比を変える機構」や「クラッチ」が存在しないため、モーターが二つある割にはメカ的には非常にシンプル。ATやCVTの「低速ギア」を実現するために、エンジンの動力でいったん発電し、その電力でモーターを動かして強力なトルクを得る、という一見ムダな動作をします。にもかかわらず、エンジンを効率域で使用することや、回生電力を得られることで、トータルとして普通車の倍の燃費効率が出るというものです。よー考えたなぁ、というか、動いてるのが不思議なくらい、複雑な制御と電力変換技術の結晶みたいな車ですね。フェラーリとかランボルギーニカウンタックとかが平凡な車に思えます。走りがつまらないとか車を操ってる感覚に欠けるとか言ったらバチあたりそうですw。
そんな全く新しい車の開発が、完全に会社(の上の方)主導で行われたのは大変驚きです。エンジニアの方が実現不可能と考えて開発をためらっているのを、説得して、半ば強引にプロジェクトに仕立て上げたという。しかも、開発に費やした期間はたったの2年。その間には実に色々な人が携わるわけですが、研究所で電気自動車のプロトタイプを作っていた研究者、製造プラントのロボットのモーターをやってた人、エンジン制御のIC設計者から、学生時代に制御をやっていたという振動の研究者まで・・・こういう人たちが見事に結集され、適材適所で開発が進められた結果、トランクいっぱいに電池を積み、後部座席にインバーターが座った「コロナ」ベースの試作車がついに走り出すわけです。まさに会社力。そして柔軟な思考のできる人材がたくさん居るんだわ。でもさすがに電池の開発はできなかったようで、松下電池工業が短期間のうちにニッケル水素電池の容量を倍にし、量産体制を整えるというこれまたいい仕事をします。
新しいモノを作るんだという、会社としての信念の強さを感じたし、技術の裾野が広い、研究開発の自由度が高い、部署間の協力体制がすごい、あらゆる意味でやっぱ世界のトヨタだなと。小さなエンジンルーム、それも灼熱のエンジンの上に、一般家庭数十件分に相当する電力を変換するインバーターを2対積んでいるのですが、当時そんな劣悪な条件で動作するパワー半導体なんてなかったので、独自のイオン注入法まで開発してつくったと(笑)。交流同期モーターもコイルの巻き方から心材まで効率を上げる工夫だらけ、再来年特許切れても他メーカーは追いつけないでしょうたぶん。そりゃ、BMWも欲しがるわ。なんでも作れそうですねあの会社。ちょっと元気もらえました。
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