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2009/05/30 (土) 原子吸光(Atmic Absorption Spectroscopy, AAS)
という何とも聞き慣れない分析装置を知ったのは学部3年の学生実験でした。
金属イオンを含む溶液を噴霧し、3000℃のアセチレンバーナーで加熱することにより、その一部を原子化します。原子状態の金属は可視光付近に準位間の遷移による鋭い吸収ピークをもっており、同じ元素を電気によって発光させたランプの光を当てることで、測定溶液の濃度が吸光度としてひじょうに高感度で観測できる、というものです。
学生実験のなかでも異質な存在だったのですが、環境中の微量金属をしらべるには最適な方法で、よくニュースで目にする土壌やお米のカドミウムが何ppmだとか、そういうの調べる公定法としても多く採用されています。当時は水や清涼飲料水のCa, Mg濃度を調べただけでしたが、最近実験で半導体超微粒子の溶液の絶対濃度を調べる必要が生じたので、6年ぶりに使わせていただくことにしました。
なんと言っても前処理が大変です。有機物に覆われた無機半導体であるので、まずは濃硝酸110℃で加熱して有機物を炭化、NOxが大量発生。続いて徐冷しながら過酸化水素を加えて金属を完全に酸化溶解。ここでもNOx発生。そうやって純粋な金属イオンの溶液を得ます。ちなみに、食品や生体組織の金属成分を調べるときもこの方法を使うそうです。しかし、手塩にかけて育てた粒子ちゃんを熱濃硝酸で原料にまで分解、いや殺すのは心が痛みます(嘘)。「量子効率50%だよ?こんなにがんばって光ってるのに、殺さないで〜」ってか?
目的元素のランプに交換して、それぞれの元素の測定範囲に合わせて金属塩の標準溶液を作って検量線を引き、ようやくサンプル測定ができました。まあ、すっごく手間だけどしっかりデータは取れたし、組成比に関して言えば過去のX線による別の測定と比較してよく一致してたので、いいことにしましょ。
最近は7000℃のプラズマによって原子そのものを発光させるICP-AESに取って代わられ、AAS自体の需要は減っています。ICPだと元素ごとにランプが要らないので楽ですが、プラズマを立てるのに大量のアルゴンと電力を必要とするらしいです。ちなみに炎色反応が出る金属種・・・リアカーなきK村、動力借るとするもくれない馬力(Li赤Na黄K紫Cu緑rCa橙Sr紅Ba緑)・・・に限っては、ランプもプラズマもいらない炎光光度計というのが使えて安上がりです。大抵のAASには炎光モードがついてるし。
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