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2006/11/17 (金) 地下鉄(メトロ)に乗って〜浅田次郎
地下鉄ショップの小さな下着店ではたらく主人公 小沼真次。妻も家庭ももっているが、今や世界の衣料品メーカーの社長である父とは若い頃決別したきり。決して裕福とはいえない生活や、やりがいに欠ける仕事に常に不満を感じ、優等生だった幼少の頃を「見開きのグラビア」とたとえる。そんな真次に不思議な出来事が。営業の足であり、隅々まで知り尽くしたはずの地下鉄を降りると、そこは懐かしい昭和39年の東京だった。折りしもその日は兄の命日。真次たち兄弟にとってあこがれだった兄は、父との不仲の末に口論を繰り返し、ある日地下鉄に飛び込んで自殺してしまった。夢なのか?本当にタイムスリップしてしまったのか?真次は自分の人生を変えるきっかけとなった兄の自殺をくいとめようとするが。。。 真次にとって父は金のためなら何でもする、思いやりのかけらもない非道な人間。兄を自殺に追いやった人間。タイムスリップの後、依然として兄は生きていなかったが、その後不思議な体験をする。職場でデザイナーとしてはたらくみち子。何年間も深い関係はないが、信次の恋人。信次は彼女と同じ夢を見たのだ。いや、夢ではない。ふたりはまるで何かに引き寄せられるように、時代をさかのぼっていき、そこで時代に翻弄されて生きる色んな人と出会う。次第に明らかになっていくのは自分の知らなかった真実。父も、先生も、壮絶な時代を生きてきたのだ。では、なぜみち子は真次と同じようにタイムスリップしたのか?ついに残酷な結末が明らかになる。 都会をつなぐ地下鉄。長いトンネルの先には、時代から取り残された場所が今でも多く存在する。物語はそんな地下鉄に導かれるように進んでいきます。真次とみち子は、何か大きな力に導かれて過去を旅します。過去を知るためでしょうか?幸せを見つけるためでしょうか?読み進めるうちに自分の近しい人の過去を想像してしまいました。そこにはきっと、自分の知ってるその人とは全く違った一面があるはずです。幸せや苦い経験の全部が人を構成していると知ることで、その人を思いやることもできるし、自分の幸せにもつながるのかもしれません。
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