『苦笑』

「プレゼントは私v」
という冗談は、いつの時代のものだろう。そう言われて喜ぶ男は、今どれだけいるんだろう。
かつ、それは恋人同士になって初めての時に通用するものであって、それ以後には通用しないのだ ろうから、ただ一度きりの手ということにもなるのか。
というか、本来それは男のほうから強要するものではなく、女の方が自発的に発するセリフの ように思っているのだが、それは間違いなのだろうか?
冗談にしても本気にしても、男はそれを受け取る側という存在なんじゃないのか?


「なぁなぁ、くれないの−。」
のっしりと、俺の背に覆い被さって来たのは、現在の恋人である敦也(あつや)だった。
クリスマスイブだという今日、いきなり敦也は彼得意の『おねだり』を始めたのだ。
猫というよりは、犬。犬の中でも柴犬。些か大きな柴だ。

「プレゼントーーー」
と言って、尻尾を振るように懐いてくる。しかもただパタパタ振っているというよりかは、 高速でぶんぶん振っていると言っていいような程だ。
「さっき渡したろ。」
俺はそう返す。何度目だろう。
「あれはあれで、凄く嬉しかったよ、でも買えないモンがいいって、言ってるじゃんか」
再三の問答に、俺は若干の溜息を吐く。こういうところが敦也のかわいいところだが、鬱陶しい ところでもある。
脱色された茶色の髪は、それでも子犬の毛のように柔らかい。その感触を頬で感じながら、 俺は「金で買えないものって、何だよ」と不機嫌そうに言った。
「あるじゃん、それに気付いてくれなきゃ、意味ないよー」
ありきたりではあるが、イブは敦也の誕生日でもあった。遠まわしに二重のプレゼントの要求を 受けていることになるが、敦也自身そんな事は考えてないだろう。
金で買えないもの。そんなものは本来ない。個人だって買える。命は買えないとよく言うが、 全く買えないわけでもないのだ。時と場合によるだけで。

「ホラ、離れろよ」
俺は右手で敦也を牽制した。敦也はむぅ、と口の中に風船を入れたみたいに頬を膨らます。 思わず、笑ってしまった。
「笑うなぁぁ!!」
敦也としては真剣なのだ。だからかわいいのだと、俺は思う。
しかし、言いながら飛びついてきた敦也に、俺はバランスを崩してソファに倒れこむ形となった。 勿論、敦也ともども。
柴犬と言っても、割に大型。そして結構重い。それくらい知っている。かつ、敦也は柴犬ではない。
「・・・・・重い・・・・・」
俺は敦也をのけようとした。そのとき、目が合った。
(あ、やばい)
そう思った。
敦也は俺に馬乗りとなっていて、俺を見下ろしていた。目が、さっきまでと少し・・・ かなり違う・・・・・。
「あつ・・・や・・・・」
俺は名前を呼んだ。思わず、掠れ声となってしまう。
「ね、貰っていい?」
「何を」と言おうとしたが、口が魚のようにパクっと開閉しただけで終わってしまった。 それを問うのは・・・バカかもしれないと思ったせいもある。
何となく、というのが大部分だが。

当惑と逡巡を浮かべている俺を無視して、敦也の体重がかかってくるのが分かる。
「ちょ・・・ちょっと待・・・」
そう言った矢先に、敦也は俺の顎を捕らえてそのまま・・・・・。

俺は瞳を閉じる。
「いいか」と思ってしまったせいもある。
軽く唇が重なった後、敦也は俺から離れた。
「?敦也?」
声をかけると、いきなり敦也はその場に平伏した。俺は酷く驚いた。それくらい、唐突で、 素早い行動だった。
「ごめん!!!!!」
吠えるように大きな声だった。それにも俺は驚いた。
「あ・・・敦也?」
「無理矢理はヤだったんだ。なのに、なのになのにーーーーー!!」

待て。

何か?プレゼント・・金で買えないプレゼントって・・・・・
今の・・・
「ごめんなさいーーーーー」
泣き出さんばかりだ。俺は自分の想像していた『プレゼント』に赤面し、目の前でひたすら手を つく柴犬・・・のような敦也を見た。
フローリングに頭を擦り付けて、怒られた犬が尻尾を垂れている。という図を思わず連想して しまったのは、俺の後ろめたさもあるだろう。
無償にそうしたくなって、俺は敦也のふわふわの髪を撫でた。
敦也は上目使いで顔を上げて、無言で「怒ってない?」と目で訴えてくる。
「バカ敦也」
そういうと、敦也は涙目になった。

俺は、思わず苦笑した。

INDEX × Next→



*******************20011202*************
クリスマスが近いです。今年も家でダラリと親が買ってきたケーキを食す予定。
妹とプレゼント交換なども決行予定。(笑)オオトリ様簡易パズルと、チョロQを贈呈する。(笑)

というわけで、クリスマス=苦しみます。と言ったのは誰だったろう。「そんな古い事は知らない」 と言う方が多いのだろうか、昨今は。
で、唯それをタイトルに持ってくるのもイヤで、変換を二段階くらいしたのが、この「苦笑」です。 甘甘です。甘いのは結構砂吐きものなのですが、最近は砂くらい吐こうかという気になっている ようです。楽しいです。
最近、我が家のパソのウィルス事件を抱え、家ではその対応と対策と対処で寝不足です。ので これは会社で書きました。(書くなよ←しかもバレていそう。)
知識がないというのは、素早い対処ができず被害を広めるものだと身をもって知りまし た・・・・。しかしながらパソの勉強ってどうやるんだろう・・・と未だに分かりません・・・・・。 (精魂足りず)

では、楽しいクリスマスを過ごされる事を。