ヴァージニア・ナイツ誕生

 ナイツ一族の一人、リチャード・ナイツが凄絶な死を遂げた同時刻。ワイドのウィリアム・ナイツ家では元気な産声が響き渡った。
「おじいちゃん!生まれましたよ!」
産声の主の母であるディアナが、赤ん坊の祖父を呼ぶ。次の瞬間、バタバタという音と共に一人の老人が階段から駆け下り、そのまま転倒して転がり落ちてきた。彼こそがリチャードの父であり、赤ん坊の祖父であるウィリアム・ナイツ=タイクーン・ウィルである。
「お、おおぅ・・生まれたか・・・」
ウィルは鼻血を滴らせ、カタカタと震えながら初孫に近付く。あのタイクーンも寄る年波には勝てず、最近になってめっきり老けてしまった様である。
「おお、おお。可愛い子供だ。ディアナに似た美人になるだろう」
「まぁ、ウィルおじいちゃんったら・・・。で、この子の名前は?」
ウィルの言葉にディアナは頬をほんのり赤く染めながら、鼻の穴に詰め物をしているウィルに聞いた。
「ふふ、もう決めておるよ」
突然ウィルの鼻息が荒くなる・・とは言っても鼻には詰め物をしているので息がまともに通らず、顔が酸欠で赤くなってきている。
「お、おじいちゃん!落ち着いて、口で息をしてください!!ただでさえ血圧高いのに!」
「心配するな!私はまだ老いておらん!」
ムフームフーと詰め物の間から怪しい吐息を漏らしながらウィルは初孫の名前を発表しようとした。
「バ、ババ、ヴァージ、ヴァージニ・・ふががっ!」
興奮のためか口の動きもおぼつかなく、そのまま総入れ歯がポロリと落ちてしまった。そして、それは見事に赤ん坊の頬に食い付いた。
「び、びえ〜〜〜〜〜ん!!」
赤ん坊は大声を上げて泣き出した。当たり前である。
「ほが、ほが、ほうひはんば、ばーひひあ(おや、おや、どうしたんだ、ヴァージニア)」
孫の涙の理由がわからず、老人は困った表情を浮かべた。誰かこのジジイをどうにかしろと赤ん坊は訴えたいだろうが、それは不可能である。そして、当のジジイ(ウィル)の方も入れ歯の事実には気が付いていないのである。
「あ、あのおじいちゃん・・入れ歯が・・・」
と、ディアナはささやかな抗議をしたが・・・
「ひへは?ふはふはいぼ。ははひははいいひほはいははふへんほへははっへひふ(入れ歯?臭くないぞ。私は毎日5回はタフ○ントで洗っている)」
あっさり却下されてしまった。しかし、そこら辺はタイクーンの凄さ。入れ歯のアニマを感じ取り、見事に孫の頬から入れ歯を取り戻した。
「ははは、ダメじゃないかヴァージニア。おじいちゃんの入れ歯で遊んだら」
・・・てめぇのせいだろ・・。ディアナと赤ん坊のヴァージニアは心の中で呟いた。
「よしよし。おじいちゃんが高い高いしてあげよう」
ようやくまともな展開になった事で、ディアナはホッと胸を撫で下ろした。が。
「高い高ーい!」
何を考えたのかウィルは思いっきり孫を天井に投げたのである。
ベシッ。もろに顔面を強打した音が轟く。
「ヒィィィィッ!!ヴァージニア!!」
ディアナは思わず叫んだが、その悲鳴も強打音も耳が遠くなった老人には届かなかった。
「どうだい、ヴァージニア。おじいちゃんの高い高いは凄いだろ!」
その間にもヴァージニアは床に落ちて頭を強打し「他界」しようとしていた。
「おじいちゃん!どうしてヴァージニアを受け止めてやらないの!?」
ピクピクと痙攣するジニーに駆け寄り、涙ながらに訴えるディアナの声が聞こえているのか聞こえてないのか、ウィルは震える手をゆっくりと差し出した。どうもタイクーンの反応は鈍ったらしく、床に落ちてから74秒後にようやく受け止める手を差し出したのである。
「・・おや?ヴァージニア?ジニー?どうして落ちて来ないんだい?」
怪訝そうに天井を見上げるが孫の姿はない。
「ディアナ。ジニーはどこにいったんだ?」
とディアナの方を向くと、ディアナは空中にいるはずの孫を抱きかかえて泣いていた。
「・・・ジニー!?どうしたんだ!!」
ウィルは慌てて二人の下に近づいたが念願の初孫はすでに冷たくなっていた。
ジニーーーーーーーッ!!」
ウィルは声を限りに叫んだ。何故だ、何故、私の可愛い孫が死んでるんだ・・・!もちろん、彼は自分がジニーを死なせた人間であることに気がついていない。
「・・・エッグか・・・・」
老人はうつろな目で呟いた。その目には怒りと悲しみと憎悪が渦巻いている。
「エッグめ、調子に乗りおって!父さんや母さん、リチャード(推定)、そしてジニー・・・一体、私から何人大切な人を奪えば気がすむんだ!!」
この間にもディアナはジニーを殺したのはアンタだと訴えているのだが、彼には全然聞こえていない。
「ディアナ!私は行くぞ!これ以上、エッグの好きにはさせん!」
ウィリアム・ナイツは今、一人の老人からタイクーン・ウィルに変身した(多分)。愛用の武器・若木の杖(最弱の杖・しかも現耐久度2)を手にとり、出口に進む。
「あぁ!おじいちゃん、やめて下さい!この前も『エッグを倒す』とか言って出て行ったけど、結局ワイドの町中をぐるぐる回ってただけで、迷子札を見た人がここまで連れてきてくれたんじゃないですか!もう、これ以上人に迷惑をかけないで下さい!」
「大丈夫だ、ディアナ。私は負けはせんよ。必ず、エッグを倒してくる」
「だからそうじゃなくってぇ!」
ウィルの足にすがり付いて泣くディアナ。きっと、ディアナはエッグの怖さをわかっていない。ウィルは勝手に確信した。
「ディアナ。どうしても行かせないつもりか?」
「もちろんです!!」
「・・・そうか・・。仕方がない・・。では・・・
疾風打!!
「キャアアァァーーーッッ!!」
突然の大技にディアナは防御する事が出来ず、そのまま息を引き取った。
ぜぇぜぇ・・・。許してくれ、ディアナ。エッグを放置していたら、・・・はぁはぁ・・・沢山の人間が悲しい目にあうんだ」
数十年ぶりの大技の発動のせいか極度の疲労を感じた。でも行かねばならない。そう自分に言い聞かせてタイクーン・ウィルは死体が転がる自宅を後にした。

その後、彼がどうなったのかは誰も知らない。またしてもワイドの町を徘徊して自宅に連れ戻されたと言う噂もあれば、疲労でのたれ死んだという噂もあり、挙句の果てにはエッグ所持者に運良く会えたもののあっさり殺されたと言う噂もある。どれを信じるかはこれを読んでいる読者自体・・・。

(完)


ひぃぃぃ!ウィルファンの皆さん、すいません!(汗)これを閃いたのは、今日プレイしたサガフロ2「エッグとの死闘」のラストシーンです。あまりにも悲しいラストシーンなのに、この小説によってイメージボロボロですね(滝汗)これでも私ウィル好きですよ♪(マジで)ホントはもっと下ネタでウィルにメチャクチャさせる所でしたが、そこら辺は泣く泣く(オイ)カット・・。老人用オムツしてたり便器にはまったり・・(殺)

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