〜 2/14 〜
学校に通えと言ったのはネルフでしょうにと、アスカはその癖、キラ星の如き素敵学校行事に向ける子供たちの気持ちにはまるで気を使う気配の無い大人達相手にくさっていた。
その一方、どう控えめに見ても一番ガックリきた雰囲気を背負っているのはキッチンの碇シンジ少年なわけで。
修学旅行、文化祭、クリスマス。そして続いての一大イベント日和を台無しにされた――今日がバレンタインデーの2月14日だと彼女が思い出したのは、エヴァの新装備テストがようやく終わって這々の体で家に辿りついた、夜も更けてのこの時間のこと。
シンジの様子とそれをからかうミサトの言葉に、迂闊にもやっとの11PMなのだった。
「あらん。シンちゃんも、やーっぱ残念だったぁ〜?」
「ミサト、聞くまでも無いでしょう。菓子メーカーと周辺業界の見え透いた商法ごときに、分かっていても踊らされずにはいられない――。殿方にとっては今日はそういう日なのよ」
「悲しい性ってもんよねぇ」
文句を言うにも素直な理由を口に出せないアスカを散々いじって遊んでいた女二人、ミサトとリツコが笑い声もけたたましく、からかいの矛先をシンジにも向ける。
この一週間本部に詰めっ放しで後始末も凄いことになってる筈なのに、何故かさっさとチルドレン共々、帰宅便に乗り込んで、今は葛城邸のリビングにでれんと寛ぐ二匹の酔客と化していた。
白衣のままのリツコもどうしてよなら、ついでにレイまで付いてきていたりする。
今はなにやらごそごそと奥の部屋だ。
「ウチの子達も色々用意はしてたみたいだったんだけどね〜。ちょぉ〜っち、今回のテストはトラブり方が半端じゃなかったし」
「流石に遊んでる余裕は無かったものね。マヤも残念だったこと」
「おおっ。技術部のマスコット、伊吹のマヤおねーちゃんもシンちゃんにメロメロだって! やぁるわねシンシちゃん。ヒューヒュー!」
「血筋ね。きっと」
腹が減った、何か作れと彼の少年をキッチンに追いやってまだ幾ばくも経たないのに、既に言動がオヤヂ。
早っ、と。テレビの前、テーブルも除けて宴会モードに用意されたスペースで林立する空ビール缶の多さに、ちらと振り返って見たシンジは戦慄する。
料理が終わった頃にはどこまで出来上がっているやら。
その時良いように肴にされるのは自分の番だ。
見れば、酔いどれ二人に挟まれて辟易とした顔のアスカまで、缶に手を付けようとしているのだった。
――勘弁してよ。
――いいからさっさと仕上げて、アンタも来なさい……!
目と目で語る内容は、経験が語るイヤ過ぎる予感。
両側からがっちり肩に手を回されているアスカは、既に脱出の機会を失っているのだと悟っている。
後は、自分ばかりが酔っ払いの玩具にされまくるか、犠牲者を増やして一人当たりの被害を減らすかだ。
ついでに自分も酔ってしまえば第3の道が拓かれる。
翌朝の酷い頭痛と引き換えの、“弄くる側”への転身である。
「んでぇ〜? アスカも準備無しってわけ?」
「うっさい! 一週間も人を缶詰にしといて、よくそんな口叩けるわね! だいたい、なんでシンジ如きにアタシのチョコレートを恵んでやんないといけないのよ!」
「――だって、シンちゃん。アスカはチョコの準備無しなんだって〜。んもー、残念ねー!」
吐く息もいきなりやたらに酒臭く、ミサトが普段に倍して騒ぐ騒ぐ。
リツコも流石、学生時代からの友人っぷりで、やはりピッチが尋常ではない。
冗談じゃないわと、アスカも南無三覚悟で喉にビールを流し込む。
こうなればもう、ただただ酔ったもん勝ちなのだから。
「……佳い女のすることではないわね」
ボソリと洩らしたリツコに、ミサトもそうそうと頷く。
「こんな戦略的大チャンスをみすみす見逃すだなんて、全くもう、私の部下とも思えないわ」
わざとらしく溜息を吐き、
「まだまだ教育不足だったかしらねぇ」
「……何の話よ?」
「どわ〜ってぇ。ねー、シンちゃ〜ん♪」
『ねー』と歳柄も無く声を揃える。
アスカは一気に煽りすぎて、うえっと涙目だ。
だから子供がアルコールなんて飲むものじゃ……。うるさい、アタシはドイツ産だ。
手早くまとめたツマミの皿を置いて、アスカの無闇で意味不明な威嚇の目付きに慌ててまたすぐキッチンへ戻ろうとした、その油断なシンジの背中。
「わ、わわっ、ミサトさん! リツコさんンー!?」
ミサトが短パンの腰に手を伸ばし引っ掛け、リツコが半脱ぎまでずらされた悲鳴の間にTシャツまで掴んで手繰り寄せる。
良い感じに火照った女の胸に、両腕をぎゅっと確保された少年のウブな悲鳴。
耳元にくすぐったく掛かる息は酒臭くってアレだが、魅惑のボリューム感計四つは脳天直撃に充分すぎる。
こう、ふにっと、たゆんと。
「にゅわっ!?」
アスカはいきなりに慌てすぎて舌を噛んだ。
「ちょっ、なにやってんのよ! このヨッパライー!!」
「言うまでも無いっしょ〜? チョコよ、チョコ。シンちゃんにバレンタインチョコあげるのよん」
言うが早いが、懐から取り出した一欠けらを口に放り込み、そのまま『ん、ちゅ〜♪』と。
「ミサトさっ、んン!? んっ、んんむ、んンンン〜!!」
「あ、あー! シンジっ、ミサトぉー!!」
げに凄まじきは少年少女には未体験領域の技を熟達で揮う、ミサトの「大人のキス」であった。
アスカまで目を白黒とさせている間に、みるみるモゴモゴと頬の内側でワンサイドゲームが繰り広げられ、シンジの目はあらぬ潤みに篭絡されていって――。
「淑女たるもの当然の嗜みよ。抜かりは無いわ」
続けて二番手ですと吸い付くリツコの唇に、藻掻いていた手もがくりと崩れ、うっとりとチョコを味わされる有様。
「ネルフの売店で買ったような20円チョコでも、工夫次第で必殺ってもんよ。アスカもまだまだね」
はふと満足そうな顔を浮かべ、少年の腕を胸の谷間に挟んだままのミサトは、引き攣るアスカへにこり微笑む。
アスカの手元でビール缶がベコリと潰れた音を立てた。
「んあっ、ふわっ、リツコさん……んー」
「あらあら。なぁに、これは?」
「あっ、ああっ!」
「ふふ、私の唇がそんなに良かったのかしら。ここ、こんなに硬くして……光栄だわよ、シンジくん」
「んっ、んんー!!」
「な、な、ななな……! なに、可愛い声で啼かされたりしてんのよ、あんたわー!」
怒髪天を貫くアスカの声も、シンジは聞こえていない様子。それどころか、である。
握り締めた拳を振るおうとて、アスカの前にはミサトの鉄壁防御が立ち塞がっているのだった。
「あんたら、まさか――」
「……ぬふふ」
さてはと、三十路二人してタッグを組み、この期にシンジを美味しく食べきってしまう心積もりかと気が付くも。
獲物を押し倒し、更なる段階まで攻めを進めている親友を背に庇い、軽く腰を浮かせた姿に隙は無い。
「だめよ、アスカ。今日はヲトメの決戦の日よん。チョコも持たないお子ちゃまはここから先はキープアウト。後学のために見学だけは許可して、あ、げ、る♪」
おのれ、こんちくしょう……! 歯噛みしつつもアスカの頭はフル回転だ。
(必要なのは口実よ。確か、部屋にオヤツのチョコポッキーが……!)
もたつく間にどこまで食い荒らされるのか分かったもんじゃないと。
慌て蹴躓き、足の小指を引き戸に引っ掛け、自室までを駆けて戻った彼女が目にしたものは――、
「……碇くん、食べて」
ポッとか、そんな勢いで頬を染めたレイがプレゼントの包装よろしく赤いリボンを巻きつけた“だけ”の格好で、ミサトの部屋からぺたぺた歩み寄って、シンジを誘惑しているのだった。
「……バレンタインだから」
寄せて上げた白い胸の合間に、ちんまりと二十円チョコが震えている。
「あ、あやなみ……」
床でほど良くあふあふ喘がされていたシンジも思わず息を呑む。
ゴクリと生唾を飲んでしまう。
――と言うか、転がったまま首を伸ばして真下から見上げるそのロケーションは、14の少年には危険すぎた。
レイのすんなり伸びた素足から逆さまに目を上げていけば、その上に付け根に、見えてしまっているのである。
「……あらま、シンちゃんったら。もうチョコの食べすぎかしらん?」
リボンを回していって微妙にカバーしたつもりらしい、膨らみかけの頂の赤い木の実二つにしても、髪と同じ色の飾り毛の丘にしても。
ぶっちゃけ、真正面から見る視線にしか効果が無いのではなかろうか――。
等と思いつつ、鉄の匂いを鼻腔に嗅いで、頭の中はぐるぐると目が回りそうなシンジなのだった。
「寧ろ、ベストコーディネイトと言うべきね。効果抜群よ、レイ」
「……抜群、ですか……。そうなの、碇くん?」
「っッ、シンジのどこに聞いてンのよーっ! ボケファーストぉぉ!!」
咄嗟に立てたにしてはナイス作戦よ、とかリビングからの往復ダッシュ中に自画自賛でときめいてしまった『ポッキー咥えて迫ってみよう』プランは、敢行する前に敗北していた。
今更発動させても、痴女丸出しなファーストの前では霞んで飛んで『フッ』とか鼻で笑われる。
きっとミサトとリツコの二人も足した三人に揃って馬鹿にされる。
過激さに負けた。
『し、シンジ……。ほ、ほら、アタシと二人で、その両側から……ね?』
でもって、カリカリと差し向かいにしても近すぎる位置から見詰めあいながら近付いていって、そしてキス完成よぅ〜とか、嬉し恥ずかしさに悶え転がってしまった辺りがアスカの限界だった。
「碇くん……」
チョコを落とさぬよう、慎重に膝でにじり寄るレイ。
「やるわね……。さてはリツコ、あんたの入れ知恵ね?」
「ふふふ、この年頃の坊やの青い性欲には、やはり直球が一番効くようね」
「負けちゃらんないわ。レイがそうくるなら――!」
ひとしきり感心した挙句、いそいそと下を脱ぎだすミサトもミサトなら、
「なるほど、ワカメ酒の応用でくるというわけね? さすがミサトだわ」
付き合いの長さが以心伝心か、はたまた単に似たり寄ったりの脳腐れなのか、後に続いてスカートを落とすリツコもアレだった。
(こいつら、みんなアホだ……)
なんかもう、根こそぎ気が抜けた。凄い、脱力感。
がっくしと手を突き項垂れるアスカだった。
天井知らずな恥知らずさだ。勝てるわけないじゃんと。
半泣きで齧るチョコポッキーが涙味。
◆ ◆ ◆ 「はぁっ、あっ、イっ……」
「……? アスカ?」
一頻りの狂乱が過ぎて、ふとシンジはその声に気付いた。
レイではない。レイには真っ先に挑みかかって散々食べさせてもらった。
その後でミサトやリツコから飲んだりしゃぶったり、重ねて食べさせてもらったりした後、またお代わりに誘われて、ついさっきまで夢中になっていた分、
「はふ……。凄いの……」
今はしどけなく脇に寝転がって、夢の中だ。
「も、もうお腹いっぱい……。シンちゃんのホワイトミルク、これ以上飲んだらわたし……」
「やだ……。わ、私、司令にもこんな目に遭わされたこと無いのに、こんな……こんな子供に……。ああっ」
ミサトとリツコも同じくダウン中。
あられもなく手足を弛緩させて横たわるむっちりの肢体に、なにやら白いトッピングがどろどろに掛かった有様を思えば、あれだけ貪欲だったにしても、もう起き上がる余力は残っていまい――と思う。
何しろ、自分はもう腰もガクガクの絞りカスみたいなものなのだし。
(なんだか、一生分くらいヤりすぎ……)
瞼も重く、その声が耳にこんなに気にならなければ、さっさと眠りの園に休みたいくらいだが、そういえばとすっかり忘れていた彼女に思い当たる。
「……アスカ?」
「なによぉ……。今更、いまさらっ。あ、あんた……ずっとアタシを放りっぱなしにしておいて……」
すんすんとしゃくりあげ、赤くなった目の恨みがましさに胸を突かれた思いだった。
「ご、ごめん……」
「ごめんじゃないわよ……」
「ごめん、アスカ……」
泣き濡れた声は罪悪感を誘う。
アスカの泣いた顔なんて滅多に見ることはないし、それはとてもシンジには辛いのだ。
眠気も一気に吹き飛んで、醒めた。
慌てた心は駆け寄ってなんとか言い訳しなければと、慰めてあげなきゃと。
しかし、
「あ、あれ……」
身を起こそうと突いた手がふらふらと崩れ落ちる。
はっきり言って、ヤリ過ぎ。碇シンジはガス欠でした。
「なにやってんのよ、あんた……」
『ほらぁっ』と、苛立った叱咤がシンジを呼ぶ。
「見なさいよ。あ、アタシ……アタシだって……出来るんだから!」
乱交に耽るシンジ達に置き去りにされる間、一人でずっとそうし続けていたのか。
準備してたのよと言い募るアスカはぺたんと座り込んでいた両脚を開き、シンジに自分を拡げて見せる。
「んぁ、あ……ファーストになんか、ミサトになんか……負けないんだからぁ」
くちくちと、淫靡な水音を立てて抜き差しをさせているアスカの手元に息を呑む。
ドロドロとすっかり溶けたチョコで桜色の粘膜を汚して、寛げたアスカのその指がくつろげる入り口に、悠々と出入りを繰り返す棒菓子に。
「んあっ、あ……、見なさいよ。も、もっ……アンタ達があんまりいやらしいから、アタシだって……」
『一本じゃ足りなくて』と、ふるり背を喘がせて。
アスカは束ねて持ち、逆手にして自分の中に突き入れているのだった。
「あっ、あうっ……。は、早く……しなさいよ」
「待ってアスカ。あ、あれ……」
力の入らない手足をもどかしく。
それでも、そこだけはもう身も蓋も無く勃ちあがっている股間を彼女に、なんて魅力的なと目を奪う痴態の彼女に突き入れたいと。
焦る気持ち、そればかりで付いて来ないシンジの身体。
「あれっ。……く、くそっ、なんで……」
「もうっ、なにグズグズしてんのよぉ……」
「待って、待ってアスカ……。このっ、畜生……!」
「いいわよ! もうっ、アンタなんかそこでファーストと寝てれば良いんだから!」
ぐしっと最後に鼻をすすって、アスカは瞼を閉じた。
眉根をきつくよせて、乱暴に動かしている感覚にだけ集中するようだった。
「アタシは……あ、あたしはっ、これで……奥に……あっ、あっ、あっ……! やっぱり、こ、これだけ一遍に入れると……!」
細い顎を仰け反らせ、甘い声を散らして。
没入するほどに貫かせているそれに溺れていっているようで――、
「はぁ……はぁ……ハァア……ア、アア……!!」
『アスカぁ』と、シンジが声をしゃがれさせた目の前で、アスカは思い切り背をしならせてゆき、次に高い叫びと共に見開いた目は、シンジもそっちのけの恍惚色に染まっていたのだった。
From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(5)