Stray Cat

Original text:引退気味


05

ネルフ本部の最上階は、フロアの全てが総司令碇ゲンドウの執務空間に充てられている。
その内装は主の持つ権力に相応しい豪華なものとなっていたが、仮にも公的機関の中枢であるにも関わらず、おおよそ公務員の職場には相応しからぬ雰囲気が濃厚であった。

そもそもがまるで薄暗い。
数千人を数える本部職員でも限られた数人しか使用することのないエレベーターロビーからの通路は、足下が不安になる程ではないものの、最低限の照明でしか照らされていなかった。
足音など立ちようのない柔らかな緋色の絨毯を踏んで、執務室の扉は重々しいオーク材仕立ての外観となっている。
その向こう側は天井と床とを怪しげなセフィロトの樹の装飾に挟まれて、広々とした四面全てがガラス張りであるにも関わらず、酷く暗い。

アスカはまるで一歩一歩が魔怪の領域に近付いているようだと感じたことがある。
普段の職場、同僚達の行き交うざわめきや活気に満ちた“人間の領域”からは厚く何層も隔てられて、冷たい闇の静けさに支配された、本来自分達の近寄るべきではない場所。
そう無意識の身震いを込めて、恋人となったシンジに語ったことがあった。
幼い頃からネルフの一員として育ってきたアスカの世界においては、そこはまさしく雲の上。
自分達のボスは碇ゲンドウという日本人なのだと、10年に渡りその名は圧倒的な権威とプレッシャーを伴ってアスカの脳裏に深く刻み込まれている。
将来の義父となる筈の男は、それほどに遠く近付き難い存在だった。



◆ ◆ ◆

「ン……! んむぅ、くぅああ……」

切れ切れに、少女の押し殺した喘ぎ声が通路に響く。
堅く冷たい執務室の扉に頬を押しつけて、アスカは背後から秘裂をまさぐるリツコの指に、華奢なその身を艶めかしく揺らめかせていた。
先程まで腰にわだかまっていた真っ赤なタイツスカートは足下に落とされて、妖精のように白く細りとしたアスカのヒップがさらけ出されている。
すがるように扉に預けた上半身にはまだネルフの士官服が残っていたが、ボタンを全て外して拡げられた間には初々しいバストが汗に濡れて、樫の木を張った扉の表面に発情した若い牝の匂いを染み込ませていた。

「ほらアスカ、もっとお尻を上げなさい。して欲しくないのなら良いけれど……止めちゃうわよ?」
「あっ! だめ……。お願いリツコ、もっとぉ〜〜」

しとどに濡れそぼった粘膜を同性のたおやかな指先がかき回し、花びらの頂点で慄えるピンクの小粒を繊細なタッチで揉み上げる。
下腹から全身を熱くとろめかせる感情の昂ぶりに、肩越しに涙をぽろぽとこぼしながらアスカは哀願した。
もはやアスカは肉体を快楽の鎖に縛られたリツコのペットも同然で、女主人の不興を懼れてその小さなお尻を精一杯に突き出してみせる。

「そう、いい仔ね……」
「あっ、ひっ……! くぅああ……んっ、んむぅ〜〜」

普段は神業めいた速さと正確さでキーボードを叩くリツコの指遣いである。
与えられる快楽は、17の少女にはあまりに強い麻薬のようなもので、アスカは自分の腹の中を縦横無尽に踊り回る感触に、眩い朱金のロングヘアーを振り乱して悦がり狂っていた。

「うぁァ……! はひッ、ふわぁっ……。イッ……! イ、ひ、……んぐっ、むむぅ〜〜」

(あっ、だめっ……。声を上げちゃ……あ、ああ……。だめよアスカ……声を上げたら誰かに……。ぅ、あぁ……き、聞かれでもしたら……!!)

スーツの袖を噛んで必死に声を殺そうとはするのだが、リツコの指が踊り、潤みきった淫口を抜き差しされる快感に神経はすっかり犯されて、アスカの唇は意思に反して絶え間ない媚声を溢してしまう。
しかし、ここは遠慮呵責も無しに官能に溺れて良い場所ではない。
儚く官能に揺さぶられる理性は、同性の上司との恥戯に溺れるこの姿を他者に見られでもしたならば、即ち身の破滅だとしきりに警告しているのだが――

「ああっ、だめっ! 声は……んぁ、ああん……。声はだめぇ……いやっ、あはぁ……! イイっ! ああ、リツコぉ……」

見れば通路の絨毯には、エレベーターからずっと点々とした染みが落ちている。
会議室からここまで、赤い士官服の前もその下のブラウスもすっかりはだけ、小振りに整った裸の美乳を晒して、更にはタイトスカートを華奢な腰までたくし上げたあさましい姿で、リツコに弄られるままショーツを奪われた下肢に愛液をまとい付かせて歩いてきた、その恥ずかしい印だ。

リツコが人目の無い事を保証してはいても、普段の職場で素肌を露出する行為はアスカにとって恐怖以外の何者でもなかった。
ただでさえ自分は元チルドレンとして、技術部の新参、“でしゃばり娘”として目立つ存在だ。
かねてからレズビアンだとの噂の絶えないリツコと淫らな行為に耽る様を目撃されたなら、それは瞬く間に本部はおろか支部まで伝わって、今の地位も立場も失うことになるだろう。
そして自分を疑いもしない恋人、世界でただ一人自分と過去を分かち合い、孤独への怯えから救ってくれるシンジに知られでもしたら……!

恐怖に肌を粟立たせながら、それでも赤い飾り毛が薄っすらと覆う性器をヒップの下から差し込まれた手にまさぐられると、とても冷静ではいられない。
理性を熱く麻痺させて、甘えるような鼻声を洩らしてしまうのだった。
肌を滑る戦慄は、通路に愛液を垂らしながら歩く、そこらの物陰に誰かの視線を想像してしまう恐怖からなのか、それとも空調からの冷気に晒した剥き出しのバストが感じる変態じみた官能への陶酔なのか、桜色の乳首を硬くさせながらも分からなくなっていく。

(ああ……。アタシ、こんな変態みたいな真似をしているのに……。どうして? ……凄くいい。躯が熱くって堪らない。喉がカラカラで……胸が、心臓が弾けてしまいそう)

少女は朦朧と恋人へ訴えた。

(ああっ。堪らないっ、堪らないのよ……! シンジ、シンジ……。アタシは、アタシはどんどんおかしくなってるの……!!)

エレベーターに乗り込んだ時には、アスカの清純な美貌はもう疑いようのない欲情に真っ赤に染まりきっていた。
完全な密室に辿り着いた安堵感は、免罪符となって少女に堰を切って絶頂に駆け上らせた。
最上階まで上るその僅かな間に、床に倒れ伏したアスカは力の抜けた細腰をガクガクと震わせながらも高々と掲げ、蜜を溢す粘膜に二本三本と挿し込まれるリツコの指を迎え入れて、また歓喜の涙を流したのだった。



◆ ◆ ◆

『アスカ。その扉に手を突いて、脚を開いてお尻を差し出しなさい』

そう執務室の前で言われた時にはあまりの羞恥に血の気が引いたアスカだったが、少女をここまでの快楽の虜に貶めたリツコには、所詮儚い抵抗だったのだ。
扉と年上の同性の躯の間に挟まれて、ただでさえ腰に力の入らないアスカに逃げ場はない。
怯えおののく乳首を摘まれながら、幼い胸の膨らみをぐにぐにと揉み上げられた。

『アスカ。……アスカ? 私は聞き分けの無い子は嫌いよ。ねぇ、良いのかしら? こんなに乳首もクリトリスも硬くしているのに。それでもアスカがそのつもりは無いって言い張るなら、私は止めても良いのよ? もう、ここでお終い。後は自分でどうにかするのかしら?』

ふるふると、自慢の髪をなびかせながら首を振るしかアスカには出来ない。
灼けつく子宮の疼きが自分一人で鎮められるはずがないと、とうに知り抜いているのだから。

『そうよね、アスカ。サカリの付いたメスネコのように、我慢の出来ないあなただもの。オナニーなんかじゃ、もう満足なんて出来ないものねぇ……。言ったでしょう? 今日は、まだあなたの知らない快楽を教えてあげるって。それは、とてもとても素敵な事なのよ』

震える首筋をついばまれ、耳まで羞恥に赤く染まったその耳朶を甘噛みされる。
ねっとりと耳孔に舌を差し込まれながら、今の昂ぶり切ったアスカには抗い難い麻薬のような愛撫を餌に、強く促されたのだ。

『あぁ……。で、でも、こんな所で……。んっ、んむぅっ……。らめぇ……お願いよリツコぉ……』
『んふ、あむっ……。あなたの唇も舌も、唾も……甘くって美味しいわよ。ねぇアスカ……私が今まで教えてあげたことは、みんなあなたも悦んでくれたでしょう?』

サファイアの瞳を赤く涙に濡らして、許しを請う唇をキスに捕まえられた。
深く咥内へ攻め込まれてくちゃくちゃと舌を絡ませあうと、アスカはまた新たに股間から熱いものが滴るのを感じてしまった。
今となってはアスカのその美しい肢体には、リツコに知られていない急所など残ってはいない。
スーツの裾を捲り上げられた優美なラインの背筋や、カモシカを思わせるしなやかな腿、真っ白なお腹に秘めやかに覗く臍までも、敏感な肌を蜘蛛が這うように蹂躙するリツコの手によって、その下に隠されていた性感帯を暴かれてアスカに押し殺した嗚咽を溢させるのだった。

『心配はいらないわ。私を誰だと思っているの? 大丈夫、誰もジャマをするような人間は居ないって、ちゃんと確かめてあるのよ。……ふふ。そう、誰もあなたがそのキレイなお顔をぐしゃぐしゃにして、エッチな声で泣き叫ぶのをジャマする人はいないの。あなたは安心して……。ねぇ、アスカ?』
『あうっ、うっ、うんッ……。ふぅ……! ひっ、ああっ、リツコ……リツコぉ……!』

泣いて音を上げる程に感じさせられ、瞬く間に陥落したアスカは、執務室の扉に揃えて両手を突き、桃のような未熟のヒップをリツコに差し出していた。

「んっ、んっ、んっ……。んふぅ……! んっ、んぅ……くぅんン……!!」

ぐいと背中を反らし、突き出した尻たぶをこねるように愛撫されて、時にはそのあわいに潜む蕾にまでも指を伸ばされて、少女は仔犬のように鼻を鳴らしながら惑乱する。
陰裂に差し込んだ指をそよがせ、リツコは外側からはクリトリスを、内側からは猫の舌のようなざらつきを指先に捕らえてGスポットを責め立てる。
レスボスの秘技に熟達した大人の女の技巧に必死に耐えるように、命じられるまま一杯に開脚したまだ肉付きの薄い腿にははっきり腱が浮かび上がって震えていた。

「ふふ。折角の晴れ着もすっかり皺だらけでぐちゃぐちゃね、アスカ。さっきはジャンヌダルクのように勇ましくって、ハンサムだったわよ。……気付いていてアスカ? あのお爺さん達、最初はいやらしい目でしかあなたを見ていなかったのにね……。きっとファンになっちゃった人も多いんじゃなくて?」

幾度となく絶頂を迎えさせられ、少女の躯は哀れなほど敏感に昂ぶってしまっている。
リツコの指に軽く粘膜を抉られるだけで脳裏には一面にスパークが飛び散り、意識が飛んでしまいそうになるのだ。

―― もう限界だった。

「……でも、今のあなたはただの淫乱なメスネコよ。その立派な頭でエッチなことしか考えられない、私のいやらしい仔猫ちゃん」

若い天才技術者としての怜悧さが剥がれ落ち、17の高校生とは思えぬほどに淫らがましく歪んだ白皙には、アスカの流す涙と汗と、口元から喉にはしたなく伝う涎がぬめった輝きを見せている。

「んふっ、んぁっ、あはぁ……」

しきりに小鼻をひくつかせて甘い吐息を洩らし、真っ赤に染まった瞼の下には、今にもぐるっと上に回って白目を剥いてしまいそうな、切羽詰まって危なげな瞳が揺れていた。

「さ、また逝かせてあげるわ。どこを弄って欲しいかおっしゃいなさい、アスカ。おっぱいを揉んで欲しいの? 乳首を引っ張って欲しいの? それともクリトリスを潰して欲しい? ……さぁ、アスカ」
「あっ、あいっ……。イイっ、あはっ! あああ……お、おく……。もっとおくを、奥をぉ……!」

リツコが尋ねるままに、気位の高い少女はシンジやヒカリといった同級生達、技術部の同僚達が見れば目を疑うような甘えた声で最後の一責めをねだる。
あさましく尻を振って卑猥なダンスを踊り続け、喉も枯れよと悦楽の歌を歌い続けた少女は、もはやぐたりと扉に上半身をしなだれか掛からせなければ立つ事もままならず。
それでもまだ、しこり立った乳首を扉の表面に擦りつけて貧欲に快楽を貪ろうとしている。

「……奥に頂戴。ああ、アタシもっと奥がいい。おくに欲しいのぉ……!」
「いやらしいのね、アスカ。でも前はここまでよ? それともヒーメンを破っても良いのかしら?」
「アッ、ふわっ! ヤッ、イヤッ……。処女は……しょじょは、ひんじにぃ……」
「なら、どこにかしら? はっきりおっしゃいなさい、アスカ!」

叩き付けるように促されて、快楽にどろどろに溶けきったアスカは人一倍強い筈の羞恥心もかなぐり捨てて、あさましく叫んだ。

「お尻っ、お尻に……! アッ、もっ……ンフゥ、ハファ……。あぁ、お願い。おしり……おしり、おしりにぃ〜〜!!」

垂れ流し続ける透明な蜜に濡れて恥丘に張り付いた赤い下生えの奥、鮮紅色の割れ目をぬめぬめと淫らに輝かせて、高く、高くアスカの尻が掲げられる。
もう、誰かに見られてはという恐怖もどこかへ吹き飛んでしまっていた。
何もかも全てよりも、今、熱くこの身を灼き焦がす疼きを鎮めて欲しいという欲望が勝る。

いくら乳首を擦りつけても堪らない。
掻きむしる程クリトリスをこねて貰っても収まらない。
スリットの入り口をいくら弄ってくれても、まだまだ全然足りない……!

―― もっと奥まで……!!

躯のもっと奥底、芯からあたしを焦がすこの疼きを、どうにか……どうにか……

「もぉ、ダメェ! リツコッ! どうにかっ……ああ、どうにかしてぇ〜〜! 」 
「いいわよアスカッ! 好きなだけイキなさい……!!」

ぐぐっと揃えたリツコの指が押し込まれた。
深く粘膜の奥へ潜って、ヴァギナに突き刺さった指と肉の壁を一枚越しに処女の腹の中を抉る。

「ヒ……! ア、ア……アァ……!!」

反らした背中が、精一杯にヒップを張り出していた両脚が、ピンと伸びきって、その頂点でガクガクと痙攣する。
同時に、切なげに張り詰めた乳首が扉に押し付けられ、秘部に小さくも勃起しきっていた肉芽はリツコの親指にこねられて、ぎゅうと潰された。
爆発のようなカタルシスが全身を、細胞一つ一つまで沸騰させるように広がっていく。

―――― ッ、ツ!?」

涙を振りまきながら見開かれたサファイアの瞳が、瞼の奥にまで裏返った。
ひきつけを起こしたように幼い肢体が震え、柔らかなウェーブを帯びた美しい髪がざわざわとざわめく。

「おゥぁ……! ハ……! うァアアアア―――― ッ!!」

可憐な少女の唇からとは信じられない、獣のようなくぐもった叫び声を張り上げて、アスカは限りないエクスタシーに身を震わせた。



◆ ◆ ◆

「フフ、フ……。ウフフフ……」

グッタリと崩れ落ちたアスカを見下ろして、リツコは堪え切れぬ喜びに頬を歪めていた。
一から快楽を仕込んだ少女が、おおよそそこらの処女には辿り着けぬほどの絶頂を極めたのと同時に、リツコもまた軽いアクメを迎えていたのである。
ちろちろと覗く舌先が、真っ赤なルージュも艶めかしい唇を舐めるのは、今やリツコも我慢が出来ぬほどに興奮していたからだった。
胸の先は痛いほどに張り詰めて、ブラジャーに擦られるだけで背筋を甘い電撃が駆けめぐる。
ショーツやタイツはおろか、スカートにまで染み出すほどに秘部は潤っている。
笑い声に喉を震わせる、そんな微かな動きでさえ、期待に燃える躯が暴走しそうになる。

(見るが良いわシンジ君。あなたの可愛い恋人の淫らな姿を。床どころか扉まで汚して、年頃の女の子がグショグショのアソコを隠しもしない、股をだらしなく開いた姿で喘いでいるのよ?)

―― ああ、本当に……!
見せてあげたいわと、リツコ誇らしさに打ち震えた。

(こんなにうっとりと嬉しそうで、ベッドの上でもない、道ばたでハダカを晒して悦がって、アナルなんかで感じて……!) 

無垢な少女をここまで堕落させたという達成感と、今やすぐに突き落とされるだろう絶望に少女が見せる表情への、歪な期待が胸の鼓動を早めている。
人の作る甘い顔の裏を疑うことも知らない、頭でっかちなだけの世間知らずな女の子。
それはまるで、遠い昔の自分のような。
そんな可愛くてならない小娘が、信じ切っている相手に裏切られ、陵辱の憂き目に遭い、そしてまた新たな快楽に無理矢理目覚めていく―― いや、目覚めさせられる時が来たのだ。
楽しみで、楽しみでならない。
そして何より、汚辱の向こう側に突き抜けてしまった時、この少女はいったいどんな選択をするのか……!

「素敵よアスカ……。誰だって今のあなたには我慢できないわ。シンジ君だってきっと獣になって飛びかかって来たわね。……ふふふ。こんな素敵な時に出張だなんて、なんて可愛そうなのかしら」
「……しん、じ……?」
「喜びなさい。約束通り、天国を見せてあげる。今のアクメも吹き飛ばすような、最高のエクスタシーを教えてあげるわ。……ふふ、ふふふ。ウフ、ウフフフ……!」
「リツコ……?」

ついに声を立てて笑い始めたリツコに、いまだ桃源の夢心地を抜け切らないアスカがぼんやりと、どこか訝しげに見上げる。

スゥ……と、風が流れた。
火照った体を撫でる冷気に身を竦めて、首を傾けたアスカは、音も無く扉が開いていた事を知った。

「フフ、フフフフ……」

部屋の中は通路よりも尚暗い。
濁った空のようなグレーはガラス張りの壁で、机から立ち上がった人影が一つ、そこに浮き出して見える。

「うそ……。誰も居ないって……」

もう夢見心地は消え去っていた。
強張った唇を震わせて、掠れた声が絞り出される。

「ええ。私達を邪魔するような野暮は絶対に入らないわ。ふふふ、赤木リツコの名にかけて、絶対にね」

ゆっくりと人影は歩み寄る。
無意識に手で押えたアスカの小さな胸は、早鐘のように打ち鳴らされていた。
つい今しがたの甘いそれとはまるで違う。
冷たい氷でいっぱいになっているような、胸の奥が軋んで痛いような―― そんな圧迫感。

「そんな……」

アスカは喘いだ。
音の感じられない世界。
視界も白く色褪めて、それは強いショックによる貧血症状だと、意味も無く冷静な声が心に囁く。
わなわなと慄える手が意識の外で床に伸びて、打ち捨てられていたタイトスカートを引き寄せた。

(ああ、いや……。に、逃げなくっちゃ……)

狼に見竦まれた小鹿のように、もがくばかりの足は自由にならない。
汚れたままの秘部をスカートで隠すのがせめての精一杯。
見上げる男は、遠目に見て思っていたよりもずっと長身だった。
サングラスの奥、どんな表情で自分を見ているのか分からない。
眩暈に揺れる視界が急速に狭まっていく。

黒い制服のズボン。
そびえるような足が二本、アスカの傍らに突き立っていた。
上へと視線を辿らせた股間が大きく膨らんでいる。

アスカは目が離せない。
そこに全てが暗示されているようだった。

「あぁ、いやぁ……」

それはまるで、アスカが一番嫌っていたか弱い女の子の姿。
消え入るような悲鳴を上げるだけの、ハリウッド映画のプロローグにだけ出てくるステロタイプ。
野獣のような悪役に泣きながら無力にレイプされて、それっきりなのだ。

ぱさっ、ぱさっと床に二つ白い手袋が脱ぎ捨てられて、震える少女を覆うように、男の手が伸びた。
凍り付いたようにアスカは動けなかった。
視線さえも止まったまま。
ただ、身をかがめた男の、より顔に近づいたズボンの中心から目を離せない。
否応無く、その下にいきり立ったものが圧倒的な存在感でアスカの脳裏を覆いつくした。

それは自分を刺し貫くもの。
大切にしていた綺麗な自分を、腹の中に汚濁を流し込んで穢すもの。
純白の花嫁になった自分が愛しい彼に捧げる純潔を、踏みにじって奪うもの。

気が付くと、ガチガチと奥歯が鳴っていた。

(し、シンジ……)

圧し掛かってきた男に裸の乳房を握られて、アスカは涙を流しながら悲鳴を上げた。

「……ヒッ、いやっ。あぁ、いやぁ〜〜〜!!」

床に組み伏せられる、その男の体臭に嫌悪感が募る。
ぐいぐいと乱暴にバストを揉まれ、確かめるように少女の柔肌が撫でさすられる。
味見するように美乳を舐めしゃぶられる。
処女の砦となるにはあまりに貧弱な、タイトスカートが力任せに奪われた。
乳首を歯で摘まれ無理に引っ張られて、悲鳴を上げた隙に股間に手が入り込んだ。
恐怖に背を仰け反らせて、必死に逃れようとしても、それらはヒルのように張り付いて離れない。
荒っぽくクリトリスを潰されて、アスカは悲鳴をまた上げさせられた。
それはゴツゴツとした“男”の手のひらだ。
気が遠くなりながらも藻掻こうとする、その両腕は後ろからよく知った柔らかな女の手で押さえられていた。

「ハッ、ひ、ヒィィ……!! 」

冷えて気持ちの悪いぬめりを残した下腹部に、無遠慮に男の手が這わされた。
恥丘全体を覆うように乱暴に押し揉まれて、それでも惨めにぐちゃぐちゃと粘った音を立てる淫裂に、折り曲げられた中指が差し込まれた。
自分を裏切った女の指とも、愛しいシンジの繊細なそれとも違う、硬く太い、木の棒のような指。

「あぁ……いやぁ……」

自分の体内に男の侵略を受ける。
両脚の奥の粘膜に、まさぐりながら分け入ってくるそのおぞましい感触を涙ながらに知覚して、アスカの精神は糸が切れるように闇に沈んだ。



◆ ◆ ◆

いかがです。司令?」

「ふっ、良い手触りだ。思ったより楽しめそうだな」
「素敵な夜になりますわね……。この子、明日の予定も空けさせてありますのよ」

しなだれ掛かる愛人が、男の耳元に熱い吐息をこぼす。
まさぐるように回された手は、男の股間をズボン越しに軽く撫でて、気が早くももうファスナーを下ろしてベルトを外し始めていた。

気を失い、しどけなく床に裸身を投げ出した少女を眺めやりながら、ゲンドウは嗤う。
女を喰うのは悪くない。
始終付きまとう、この退屈な気持ちをいくらかは紛らせることが出来る。
それが面白い筋書き付きなら尚一層だ。
これまでも愛人と共に数多くの女達を蹂躙してきたこの男には、自身を外道と省みるつもりはとうに残っていない。 ただ、実の息子の恋人を辱め―― 純潔を奪うという、いつもの陵辱よりも遙かに楽しめそうなシナリオに昏い喜びを湛えて、歪み切った笑みを浮かべていた。



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From:「EVA」アスカ&レイのエロエロ統合スレ