Stray Cat

Original text:半引退状態
Illust:目黒腹蔵さん



01

「そこっ! 無駄口は叩かないで、きちんとデータを見てなさい!!」

ぴしゃりと叩きつけられるような声に、まだ新人のオペレーター達は慌ててモニターに向き直った。
小刻みにキーボードが叩かれる音と、それに応える電子音が静かなざわめきを立てている。
十分に効いている冷房のせいだけでなく、彼らはぶるっと背中を震わせると努めて職務に没頭する体裁を繕わざるをえなかった。
彼らの座るオペレーターフロアよりも上層に位置する指揮フロアから、良く通る玲瓏な声を投げて寄越した相手が誰であるか。
それは彼らの肝を冷やすには十分な相手だったのだ。

「アスカちゃんも随分様になってきたよなぁ……」
「おいおい。惣流二尉、だろ?」

新人達を背後から監督しつつ、ちらと上を見やって日向マコトは同僚の青葉シゲルに囁いた。


イラスト:目黒腹蔵さん「アスカ19歳」

かつて赤いプラグスーツに身を包んで戦場に在った少女は、今では技術部員の証たる白衣をまとって赤木リツコの傍らに立っている。

19歳になった今、すらりと成長した身体は最早少女のそれを完全に卒業して、ハリウッドスターのような豪華さを備えるに至っていた。

赤みが抜けたブロンドは柔らかにウェーブを描いて金に輝き、白衣の肩の辺りで一旦、無造作にゴムバンドでまとめられて背中に流されている。

幾本かのボールペンを刺した胸のポケットといい、いかにも研究職にありがちな実用性本位の装いではあったのだが、上着を押しのけるようにして自らの形の良さを自己主張する豊かなバストと細くくびれたウェスト、そしてふくよかなヒップは女子職員たちの羨望の的で、その胸の肉にめり込むようにして―― 時には真っ赤なルージュを塗った唇に艶かしく咥えられるボールペンは男子職員達の嫉妬の的だった。


モニターの中では、また一方の男達の嫉妬を一身に集める存在である彼女のフィアンセ、碇シンジ三尉が目を閉じてエヴァとのシンクロに集中している。

『シンクロ、並びにハーモニクス、臨界数値。オールグリーン、S2機関起動します』

同じモニターの別のウィンドゥに開いた伊吹マヤの顔が、こちらもまた使徒との戦いの頃には見られなかった落ち着きを持って量産型エヴァンゲリオンの完全な制御を報告した。

「了解です。本部の観測でも完全な駆動を確認しました。……実験成功です」

いまやリツコに次ぐエヴァの専門家として各地を飛び回るマヤに変わり、長らくの英才教育による知識と、疑いない天才によって本部技術部ナンバースリーの地位を得たアスカは、リツコの右腕として現場を取り仕切っている。
その何ら危なげの無い指揮ぶりに笑みを浮かべて頷くリツコに軽く目礼を返して、アスカは最高責任者へと振り返り、まとめの報告をする。


イラスト:目黒腹蔵さん「眼差し、縛られて」

アスカのサファイアの視線が、しっかりと赤いサングラスの向こうの黒い瞳を見つめる。

発令塔の最上段に構えた碇ゲンドウ総司令が鷹揚に頷き、それで、遠くアメリカ支部と日本の本部とを繋いで行われた実験は締めくくられた。

そしてもう一度、結ばれたままの視線に頷いて、ゲンドウの姿は発令塔の上から消えた。


―― 上を見上げたままのアスカの白磁の頬に、誰に知られることもなく、そっとピンクの彩りが差し込んでいた。




◆ ◆ ◆



「うはぁ〜〜、たまんねぇよな。惣流二尉にもさぁ」
「俺達より随分年下なんだろう? ちょっとは年上に対する態度って言うかさ……。女王様かってーの」
「いや、本家女王様って言えば赤木部長だろ」
「はは、違いねぇな」

実験の後始末も終わり、職員達は三々五々、それぞれの荷物を抱えて発令所を後にしていた。
肩を解すようにしながら軽口を叩き合う。
彼らの多くはサードインパクトの後に補充された戦いを知らない面々であったから、エヴァの運用に対してアスカ達ほどまでは神経質になれず、ただその場のプレッシャーに息苦しさを感じていたのだ。

「……でも、あれでキャリアは俺達よりうんと上だろ?」
「んで、持ってる博士号も一つや二つじゃ無いっていうからな」
「子供の時からネルフの、スーパーエリート様だからなぁ……。そりゃ、俺達とは違うさ」
「ナニ、うっとりしてんだよお前……。あ、そういやお前、時々叱られながら喜んでるだろ? 女王サマってそういう意味かよ―― って、ホラ。噂をすりゃ影だぜ?」
「赤木部長も一緒だな」

若い職員が顎をしゃくって見せた先で、人込みの中からも目立って分かる金髪の美しい立ち姿が、二人並んで壁際の公衆電話に向かって何事か頷いて見せていた。
受話器を持っているのは彼らの上司であるアスカだ。
彼らが一様に目を奪われ、見つめる中、耳にかかる金糸を真っ白な指先でかき上げる何気ない仕草にも、どこか匂い立つような色香が漂う。
嬉しそうな笑顔は職務中に見せる怜悧な横顔とは打って変わって、恋人と語らう乙女に相応しい、太陽の輝きのような眩しさがあった。

「ええ……。アンタこそ気をつけなさいよ。いつもみたいにボケボケッとして、気が付いたらホテルに連れ込まれてた、なんて事になったらコロスわよ?」

相手はシンジなのだろう。
その砕けた口調は14の頃から変わらない。
機関銃のようにまくし立てる様子は、シンジを弟分のように引っ張って回っていた中学生のままで、傍らでタバコの煙をくゆらせるリツコの口元にも、思わず深い笑みが浮かぶ。

「はん? マヤと打ち合わせがあるから……? マヤもよ! 注意しなさい。あの女だって一人身が長いんだから……アンタも少しは自覚する!!」

惣流・アスカ・ラングレーは本部内の異性に高い人気を誇りながら、総司令令息の婚約者であるとの事実がしっかり知れ渡っているために、実はアプローチを掛けられる事は少なかった。
せいぜいがジョークの範囲に収まる程度である。
反対にシンジの方はと言えば、20になって背も伸び、母親譲りの整った容貌にアスカというパートナーとの絆に自信を持った余裕が宿る今では、絶えず若い女性からの―― 時に強引なモーションをも掛けられるようになっていた。
唐変木としか言いようの無い性格であるために、しばしば抜き差しなら無い所まで追い詰められてはいるのだが、口で言うほどにはアスカが浮気を心配していないことは、話しながら横目で視線を交わすリツコにも分かっていた。

―― 少年の日の記憶によるトラウマである。

戦いの中、まともな思考が出来ないまでに疲弊しきった精神が犯した病床のアスカへの歪んだ欲情の記憶。
それは負い目となり、戦後一時荒みきっていたアスカとの関係の中で、繰り返しシンジの心を抉る瑕となっていった。
良かれ悪しかれ、二人向き合わざるを得ない戦後の状況と周囲の遅ればせながらのサポートもあり、二人は互いを掛け替えの無い唯一無二の理解者として認め合うに至り、やがて恋人関係へとステップアップしたのだが……。
自涜のトラウマは癒えることなく、シンジの心に性に対するどうしようもない嫌悪感を残してしまっていた。
アスカとの恋人としてのキスですらおっかなびっくりという有様なのに、それで浮気の心配が要るはずも無い。
まず、生半な事では“勃たたない”だろうから――

「あん? 私の方こそですって? アンタも言うようになったわね。……も、もちろんする筈ないでしょ、このアタシが、ウ・ワ・キなん、てっ……!!」

浮気の部分をやたらと強調してみせるアスカに、眺めるリツコの笑みはいよいよ深くなって、

「浮気なんて、……ねぇ」

と意味ありげな視線をアスカに向けさせる。  
可愛い部下に寄越す微笑ましさではなく、どこか淫靡な横目遣い。
こちらも横目で返すアスカは首筋まで赤くなって、笑うリツコのお腹に肘鉄をぶつけて憤慨して見せた。

技術部の美人トップ二人のじゃれあう様子に、『特別な相手だけに気を許すキャリアウーマンってのも良いものだなぁ』などと頷きあった新人達は、羨望と自分だけの妄想を脳裏に描きながら歩き去ってゆく。
その若い牡らしい粘ついた視線がアスカや自分の胸や腰にまとわり付いていた事を目の端に捉えつつ、しかしリツコは、それよりも更に生々しい覗き込みをアスカの襟口から中へと向けていた。

滑らかな肌に包まれた繊細な造形の頤(おとがい)。
鎖骨から年頃の乙女らしいまろやかなラインで流れ、胸の谷間へと続く翳りの部分。

同じ女性同士とはいえ、あまりに無遠慮な目で服の内を覗き込まれるアスカは、たじろぐように顔を背けた。
アスカとリツコと、ネルフ本部の誇る美人師弟の間に流れる空気が、そっと切り替わる。
アスカの紅潮は一層白い肌に映え、ゴク……と細い喉が静かに鳴り響いた。

沈黙が流れた。
もじもじと受話器に繋がるコードを指先に巻くように手繰りながら、アスカは訝るシンジの声に慌てて返事を返す始末だった。

「……え? ええ、分かってるわ。それじゃあね、シンジ。愛してるわ……貴方だけ」

受話器を戻す腕も微かに震えていて、アスカは何かへの期待へなのか、秘めやかに熱いため息を洩らした。

(…………。はぁ、あ……)

それはひょっとすると、誰かへの罪悪感や、或いは自分以外の誰にも向けようの無いやるせなさだったのかも知れない。
いずれにせよ、それはシンジの知るアスカでは無かった。

「行きましょうか? アスカ……」

撫ぜるように柔らかに肩を抱いて誘うリツコに、目元を伏せたまま頷いて、そのままアスカはリツコと二人、高級士官用のエレベーターへと乗り込んだ。
ふわりとジャスミンの香水が薫るリツコの白衣の中に背中から抱かれて、アスカは普段の肩で風を切って歩く様子とは裏腹の、深窓の令嬢のように従順にされるがまま。
低いモーターの唸りに静かに高揚していく心を抱えたまま、ただ痛いほどの沈黙の中、頬を染めて床を見つめていた。
カタリ、カタリと階を示すカウンターが回って、エレベーターは行き先を示すボタンの列にただ一箇所だけ赤く染まったフロアを目指す。

―― 最上階へと。

そしてその時、アスカの両の手のひらは自分のタイトスカートの前に回され、確かに疼き始めた腹の底―― 子宮の火照りを感じ取っていた。

「あ……」

引き締まったアスカのヒップに、粘りつくような淫らな動きをする手が張り付いた。
若々しい尻肉を味わうように、リツコの指と手のひらが撫でさすり、揉み上げる。
左右の丘を交互にぐにぐにと変形させて、時にはそのあわいに指が這い、押し込まれる。
無言のまま震えるアスカに『ふふ……』と笑みを零して、寄せられたリツコの真っ赤に濡れた唇が耳朶を噛んだ。
そのままちろりと舐め上げ、そして耳の穴を舐るように犯し始める。

「あっ、ん……あぁん……」
「今日は良くやったわ。お疲れさま、アスカ……」

肩を抱いていた手はゆっくりと二の腕を下り、回されたお腹からやわやわと19歳の瑞々しい肉体の感触を楽しみながら、やがてアスカの胸の膨らみへと上っていった。
ごわごわとした固めの上着越しに、柔らかな美乳をねっちり情熱的に揉み上げる。

「あッ、は……いやぁ……」

ヒップを堪能していた左手は指先を伸ばして、ひっかけたスカートの裾を捲り上げ始めた。
戦慄き始めたココロとカラダに耐えるように、アスカの瞼はぎゅっと閉ざされたまま。
それでも抑えようも無く、次第に息を荒く喘ぎ出したピンクの頬に、リツコは満足そうに唇を寄せると、零れる清らかな滴を舐め取って囁いた。

「さぁ……。これからはご褒美の時間よ。天国で……遊んであげるわ……」
「んぁぁ……。リツコ……お姉さまぁ……」


イラスト:目黒腹蔵さん「modulation(転調)」


恋人たるシンジは知りもしない、想像すら出来ない淫猥な時間。
タイトスカートの下、閉じ合わされたアスカの白い腿の狭間を、熱いぬめりが一筋、今まさにの愉悦に焦がれ垂らされる唾のように淫らに伝い落ちていった――



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From:「EVA」アスカ&レイのエロエロ統合スレ