< 注意 >



この話には痛い描写が含まれています。
烏賊同文。






─ 異種遭遇 ─

「Phenomena」



書いたの.ナーグル












 マユミをからめ取ったまま、生物はそわそわと歩き始めた。無数の手足を動かし、気味悪いほど静かに粘液の溜まった廊下を滑っていく。
 魂を抜かれたように虚ろな目をしたマユミは気づいていない。しゃくり上げながら、脱力しきった手足を生物に預けていた。

「あ、あう……っ、ひっく、ひっく、えぐっ、うくっ」

 生物の戻った闇の中にぼんやりと浮かび上がる影が見える。薄暗い非常灯と外からの明かりだけではハッキリとわからないが、それは直径5メートル以上はありそうな円形で、その高さは床から縁まで1.5メートルほどあった。
 ローマの遺跡、コロッセウムのような円形の構造物の周囲は、キノコのような奇妙な塊が至る所にこびり付き異様な様相を呈していた。生物は迷うことなく登っていく。

 構造物の縁に立ち、中をのぞき込むと生物は満足げに息を漏らした。体の奥底で彼の最も重要な器官が熱を持って蠢いている。彼の体内で解放の時を待ちこがれ、貯めに貯めた欲望のたぎりが沸々と沸騰している。

 もう我慢できない。する必要もない。
 長く決して晴らされることのない怒りに包まれている間、いつか来るかも知れない獲物を囲い込むために用意した巣…それを使うときが遂に来た。

 生物は無造作にマユミの体を放り投げた。

【【【うおぅっ!】】】

「えっ…」

 ようやく状況に気づいたマユミの戸惑った声が室内に木霊した。
 呆然とした表情を凍り付かせたまま、光の届かない円(サークル)の中心に、マユミの白い体が落ち込んでいく。



 ドパーン


 奇妙に粘っこい音が、飛沫と共に周囲に飛び散った。
 薄暗い非常灯の光が大きく揺らめき、マユミの体はぬるりと生暖かい液体に包まれる。
 大きな波紋が出来るが、粘性が強い液体はすぐにそれを吸収してしまう。マユミを飲み込んだ暗い澱みはまるで何事もなかったかのように静寂を取り戻し…。

「ぷあっ、はぁっ、な、なにこれ!?」

 直後、もがきながらマユミが姿を現して水面をかき乱した。
 完全にパニックに陥ったマユミは出鱈目に手足を振り回し、ズブズブと沈み込む体を水面に引き上げようと必死に足掻く。奇妙に甘ったるい謎の液体を大量に飲み込み、込み上げる嘔吐感に、足が地面につくのかどうか考える余裕もなかった。

「ふあっ、あぷっ、うぶっ、これ…えぶっ。ふは、はふっ。
 なに、これ…ミルク……なの? なんで、こんなところに、そんなの」

 牛乳のような液体が彼女に染み込み、髪の毛や手足を汚していく。マユミは最初牛乳だと思ったが、その手触り、臭い、甘ったるい味…どれも牛乳とは思えない。
 まるで…精液に油を混ぜたような液体にまみれたマユミは、十数人の男に囲まれて一斉に射精されたような汚れようだ。これで甘いのではなく苦かったら完全に精液だと言えたかも知れない。

「ひ、ひぃぃっ! なんなんですか、なんなんですかっ!?
 こんな、こんな辱めを、なんの意味があって、なんで…」

 ヒカリやマヤほどではないが、多分に潔癖症な部分があるマユミは思わず嘔吐しそうになった。だが、この場で嘔吐したらもっと凄い有様になる。かろうじてマユミは吐き出すのを堪えた。
 必死になってえづき、空気を求めて荒い息を吸って、吐く。
 それに加えて沈み込まないように手足を動かしているため、すぐに彼女の顔色は赤くなり、さながら喘いでいるように見えた。

 構造物…もう、プールと言っていいだろう。その縁に立ってマユミの狼狽えようを見守っていた生物はニヤニヤと笑った。
 その笑みと目に浮かぶ光は、明らかにこの生物が明確な意志を持っていることを示していた。底意地の悪い瞳が、もがき苦しむマユミを見つめる。

「あ、ああ…し、沈んじゃう! ううっ、深い……一体、どれくらいの深さが…!」

 マユミは必死に泳ぎ、なんとか這い上がろうとするがすり鉢状の構造物はまるで掴み所が無く、粘液の所為もあってマユミはわずかに這い上がっては滑り落ち、また這い上がろうとして滑り落ちることを繰り返している。

 かといってその場に立ち上がろうとしても、底に溜まった柔らかい泥のようなものに、彼女の足はズブズブと沈み込んでいく。液体の暈自体は1.2メートルほどしかないが、その下の泥の深さはマユミには見当がつかない。
 泥の深さは1メートル以上あるかも知れない。つまり、身長が160センチちょっとしかないマユミは、頭まで完全に沈み込むことになる。そこまでの深さはないかも知れないが、もし深かったら彼女は完全に泥の中に埋まり、浮き上がることは出来なくなる。そうならないためには、泳ぎ続けるしかなかった。
 決して泳ぎが苦手なわけではないが、勝手の違う状況では実力の半分も出すことは出来ない。
 加えてマユミはいつまでも泳ぎ続けられるほどの体力はなかった。

「いやぁっ! いやっ! し、しず…むっ! 助けて、いやああっ! 溺れるっ!
 あぶっ、うぶっ………ごはっ、はっ、はぁっ!
 死にたくない、いやぁぁぁっ! ぶはっ、はっ、はっ! た、助けて、誰かぁっ!」

 次第にマユミの頭が水上に出てる時間より、沈み込む時間の方が長くなっていた。プラグスーツの大きく空いた透き間から液体がなだれ込み、手足の隙間に溜まって彼女を底に沈め込もうとすることも原因の一つだろう。

「いやっ、いやっ、いやっ」

 既に体は完全に沈み込み、足は完全に泥に捕らわれていた。すでに3秒に1秒は頭まで水中に沈み込んでいる。肺は焼け付くように痛み、振り回す手足は鉛のように重い。彼女はこのまま白濁の海の中に沈み込んでしまうのだろうか。

「死んじゃだめっ、死ねないんです!!」

 みんなが待っているから。
 手をヒラヒラと振り、空気と安定した大地を求めてマユミは最後の力を振り絞った。闇雲の手を伸ばし…指先が堅く細い物に振れる。

「…!! 手掛かり!」

 マユミの細い体のどこに…と思われるほどの力が指先に集中し、必死にその手掛かりをつかんだ。意外なことにその細い手掛かりは折れることなくマユミの体重を支える。
 これなら…とマユミは焦る心を抑えながら、慎重に右腕の手首と指だけの力で体を引き上げていく。
 まず頭が水面に顔を出した。目に滲みる液体で前を見ることが出来ないが、続いて伸ばされた左腕がゴツゴツした大きな物を掴んだ。更にマユミは力を込めて、体を引き上げていく。

「うっ、ううっ………うああああっ!」

 生存本能のもつ原始的な衝動を頼りに、マユミは丸太のような物の上に上半身を引きずりあげた。彼女の体重が浮遊物の上にずしりとかかるが、悠然としたもので彼女を完全に支えていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…。た、助かったの?」

 荒い息を吐き、マユミは1分ほど丸太の上に身を投げ出したまま体力が回復するのを待った。液体に浸かったままの足が気持ち悪いが、まだ足を引き上げられるほど力は回復していない。

「ふっ、ふぅ、ふぅ、ふぅ………でも良かった。ちょうどこんなものがあって」

 呟きながら命を繋いでくれた浮遊物に、そっと指を這わせる。奇妙に生ぬるくてぶよぶよしたそれはあまり気持ちよいものではないが、正体が分からなくても今の彼女にとってこれはダイアモンドの台座以上に価値のある物と言えた。

「……そうだわ、あの生物は一体どうして」

 今頃になって思い出したのか、落ち着かない目をしてマユミは生物の姿を探し求めた。滑り落ちないようにしっかりと浮遊物にしがみつき、右に、左にプールの警戒の視線を向けるが、どこにも生物の姿は見られない。

「どこに行ったのかしら?」

 暗くて見えないと言うわけではない。薄暗がりだったが、既に闇に目が慣れている。あんな巨大な生き物を見逃すことはあり得ない。

「どこか別の場所に行ったの?」

 あの生物はここに閉じこめられているようだった。もしかしたら、とりあえずの肉欲が満たされたことに満足し、マユミを巣(だと彼女は判断した)に放り込んでよそに行ったのかも知れない。

(もしそうだとしたら、逃げ出すチャンスだわ)

 むくむくと心の中で希望という名の灯火が大きくなる。
 逃げ出せる。
 まだアスカ達を助け出すことが出来るかも知れない。

「まずは、この外に出て、武器を拾って……。ああ、その前にちゃんと体を引き上げないと」

 重心を浮遊物の上に完全に移動させるように身を乗り出し、疲労でガクガクと震える足をずるずると浮遊物に引っかけるようにして持ち上げる。溶けかけたプラグスーツが浮遊物に擦り付けられ、所々がびりびりと破けるがマユミは気にせず体を乗り出す。自転車にまたがるようにして足をかけて、浮遊物の上に乗るために。

「ふぅ、ふぅ……この液体、妙に粘ついて重いから………ふぅ、きつい…」

 疲労しきった体はその程度の事にも悲鳴を上げ、太股の筋肉を痙攣させて抗議する。たまらずもち上がりかけた足はぶるぶると震え、マユミの意志に反して徐々に下へずり落ちていく。

「う、うぅーん。もう少しなのに…」

 遂に耐えきれなくなり、疲労で萎えきった足がずるりと滑り落ちた。
 しかし、水中に踵が触れた瞬間、足の滑りは止まった。驚きながらマユミはしっかりとした堅い感触に目を見張る。白濁した液体に隠れてわからないが、下から何かが支えているのだ。
 戸惑っている間にも足の下の支えは、抱え上げるようにマユミが足を持ち上げるのを手伝ってくれた。

「こ、これはご丁寧にどうも………え?」

 彼女の性格がよくわかるやりとりだ。些かのんきすぎるとも言えるが。
 しかし、さすがにどこかおっとりとした彼女の言葉は途中で止まった。下に向けられたマユミの目が引きつったように見開かれる。
 踵と膝の裏から足を持ち上げているのは、長く爪が伸びたやせ細った女の腕…それと皮膚が溶け筋肉が剥き出しになった逞しい腕だった。

「……………!! まさか、これは!」

 瞬間、まだ水中に沈んでいたマユミの足と尻肉を何かがしっかりとつかんだ。爪が食い込むほど容赦のない力に瞬きすることも出来ない。緊張のあまり筋が浮かぶ首筋に玉のような汗が流れる。
 マユミは全てを悟った。今自分が難破船の板よろしくしがみついているものは、何かの浮遊物などではない。そうと気づかず、自ら死地に転がり込む哀れな獲物…それは自分。

「うそ、うそぉ! そんなの嘘よぉ!」

 液体を割って人体を材料に作られた悪意が姿を現す。ポタポタと滴をこぼしながら、生物の眼は至近距離でマユミの顔をのぞき込んだ。ガラス玉のような目に、恐怖に強ばるマユミの顔が映っていた。
 蟷螂のように折り畳まれていた腕が、胸の皮膚を突き破って自由を謳歌する。緑青のような色の腕は、これから何をするのかマユミに見せつけるように握っては、開き、握っては…開く。
 それだけではない。

「ひっ、ひぃ!」

 マユミのほんの目と鼻の先に、赤黒い肉の杭が隆々とそそり立つ。
 皮膚を突き破り、粘膜部分をてかてかと光らせた肉杭が…2本。大きいのと細いのが求愛行動をする蛇のようにうねうねと動き、これから味わうマユミの蜜肉を思い、それだけで先端の淫穴からヌルヌルとした透明の先走りを吹き出した。
 遺伝子までも萎縮する臭いと光景に、気弱なマユミは気絶することも出来ず…自らの葬送曲のように歯がカタカタと鳴らした。

「ひっ、ひっ、ひっ…ひっ…酷い、酷すぎる……う、ううっ。どうしてそんなに酷いことするんですか……。希望を持たせて、それを、踏みにじるなんて…。こんなことしないで、最初から最初から……! そうすれば、諦めたままでいられたのにっ!
 ばかっ! ばかばかっ、バカぁっ!」

 待ち受ける運命を悟り、恨みがましい目をするマユミ。納得させるように、あるいは慰めるように蛙じみた腕がマユミの濡れ羽のように輝く髪の毛をまさぐった。
 マユミの顔が軽々と引き寄せられる。どこに?
 勿論グロテスクな異様を見せつける二つの塔だ。

「あうううっ、い、嫌です……そんな、汚らわしいもの………絶対に」

 髪を引っ張られる痛みにもめげず、マユミは顔を背けるがそれが空しい足掻きだと言うことはわかっていた。顎が掴まれ、左右から強く力を加えられる。

「あぐ、あぐうぅぅ」

 苦痛と強引な力…暴力でマユミの愛らしい口が開いていく。艶めかしく開いた口の中で、舌がぬめぬめとした唾液をかき混ぜるように動いた。そんな淫らな口中に生物は指先を差し入れる。

「はうっ!? ん、んちゅ…ぶっ、ふ、ぐぶっ。あ、あむ、ちゅる…んちゅ」

 口の中を指で犯されている。
 唾液をだらだらとこぼしながらマユミは必死に舌で押し出そうとする。錆びた鉄の味のする指は吐き気をもよおさせ、苦悶の表情を浮かべてマユミは必死にえづいた。

「はぶっ、うぶっ、おぐぅ……う、ううっ、うっ、うっ、うぐっ、うう、う―――っ!」

 酸欠のためか、それとも諦めが彼女を投げやりにさせたのか。
 徐々にマユミの体から力が抜け、今や舌先は無理に指先を追い出そうとせず、緩慢な動きで生物の口腔愛撫に答えていた。大量の唾液は喉を伝って胸までこぼれ落ち、生物が分泌した粘液と混じり合って、どこか不気味な結婚のような様相を呈していた。

「うっ、ううっ、うぶっ、う…ん。ごくっ…うふ…あぶっ」

 時折喉を鳴らして溜まった唾を飲み込む。そうせざるを得ない。
 味は最低だったが、指をしゃぶらされているマユミにはもうあまり抵抗がない。コクコクと喉を鳴らすマユミのおとがいがつかまれ、そっと引き寄せられる。大人しくマユミは生物の動きに従い頭を垂れた。

 ぴちゅ…。

「はぅ、む……ん」

 そのまま、こじ開けられたままの口中に赤黒い肉筍が飲み込まれていく。

「ふっ? う、うむ、うううぅぅぅぅんん!」

 口中につき込まれる肉の感触に正気に返り、文字通り目を白黒とさせてマユミは暴れた。必死に舌を動かし、指を追い出そうとしたように肉筍を追い出そうとするが…。

「ん、んんぅ…… ふぐっ、んんっ〜〜!」

 しかし、キスをするように舌が肉筍にからみつき透明な迸りを更に吹き出させることとなった。

「ふぐっ!? んんっ、ん、んん〜〜〜〜」

 目の端に涙を浮かべ、いやいやと首を振ってマユミは拒絶する。しかし、頭をしっかりと押さえつけられ、その動きすらも口腔内のいやらしい肉の塊を愛撫することになってしまう。

(あうう、どうして…こんなこと、するの………繁殖が目的なら、こんなこと…する必要、ないのに)

 生物は血肉のような色の精神波でもってマユミの疑問に答えた。

(単に…したいから? 気持ち良いから…私が、泣くのを見るのが…楽しいから?)

「いう……んっ、くはぁあ……ん、むぅ、んあ……」

 ぽろぽろと涙をこぼし、マユミは頬を染めるとゆっくりと項垂れた。
 生物のしたがっていることはわかっている。かつて散々にあの男に仕込まれたことだ。

(も、もう…そんなこと、したくない。でも、そうしないと……あの男みたいに)

 中途半端にくわえたまま躊躇するマユミに生物の腕が伸び、ぼろぼろに腐食したプラグスーツの残滓を引きむしっていく。逃げることが出来ないマユミは悩ましげに体をくねらせる。それで精一杯だ。

「あ、ああっ……はぁぁん!」

 改めてさらけだされたマユミの胸は、重く柔らかく揺れ動いた。押しつぶされながらも押しつけられる豊かな胸だ。満足げに生物は左右の乳房を掴んで押し開き、羨ましげに朋輩の隣で震えていたもう一つの生殖器を挟み込ませる。
 肌をくすぐるゾワゾワした感触にまたマユミは涙を流し、苦しげに柳眉をよじらせた。

「はぅ、んむっ、ちゅ……んっ」

(か、堅い…こんな、堅くなってる。それに……胸が熱い)

 催促するように口腔内の肉筍が頬を内側からつついた。恐怖に体が竦むと同時に、待ちこがれていたように身体の芯から熱くなり、水中の股間から熱い蜜が流れた。

「んぐ、んんっ……んんっ……………むぅ」

(ああ、もう……だめ………)

 生暖かい粘膜同士が擦れ合い、ちゅぷちゅぷと一際激しい音を奏でる。いつしかマユミの舌は拒絶ではなく、奉仕するように淫靡な動きで唾液をなすりつけ、溢れる雄の淫液を喉奥に受け入れていた。

(ああ、嫌なのに…本当に、嫌で嫌でたまらないのに…違う、違うんです…シンジさん)

 そう心の中で謝罪しつつ、マユミの指先は暴れすぎて口中から飛び出そうとする肉筍を押さえ、柔らかい口中に頬張らせるのだった。柔らかく歯でなぞるように竿を甘がみし、柔らかい亀頭部分を喉奥で受け止める。もはや理屈ではなく、心を責めさいなむ切なさに導かれるまま本能のように体が動く。
 もごもごと口が動き、白く柔らかい指先は肉筍の竿部分を摘んで静かに一定のリズムで上下に擦りあげる。すぼめられた唇が限界ギリギリまで肉筍をくわえ、舌が絡みつき先走りを受けたとき、先端が喉奥にぶつかった。

「んんんっ、んっ、んんっ! ふ……ぐっ…ちゅく…ちゅ」

 そして吸い付くように柔らかく大きな胸は、その間にもう一つの肉棒を挟み込んでやわやわと真綿で絞るような刺激を与える。特に手で押さえなくとも、たっぷりとした乳肉は肉棒を捕らえて放さない。

「あむ、ん……んっ、んっ、んっ…んふ、ちゅ、ちゅる…ちゅ、ちゅ…くちゅ……ん」

 いつしかマユミの舌は裏筋に沿って肉筍をくすぐり、先走りを舐めとる。
 ねっとりとした舌の感触で細胞一つ一つがバラバラにほぐれ溶けていくような快感に生物は溜息のような唸り声を漏らした。予想を超える刺激にそのまま身を浸してしまいたい。徹底的に仕込まれたマユミの指と舌は、百戦錬磨であるはずの生物をして容易く絶頂を迎えさせてしまう。

 ずちゅ、ぬちゅ、ずちゅ…。

 たぷ、ぺち…たぷ、ぺち…たぷ、ぺち…。

 マユミの啜り泣きと、淫らな水音に混じってたぷたぷと揺れて肉を打つ音がリズミカルに響く。
 暖かい口の中で舌を絡められる肉筍は言うに及ばず、自らが漏らした粘液でドロドロになった肉棒が、マユミの胸に挟まれたまま破裂しそうなほどに先端を肥大させた。

「ううっ……」

 脈打つ肉棒の熱と異臭にマユミは頬を染めて小さく呻いた。
 鼻で苦しい息を吐きつつ、そわそわと指をたっぷりとした自らの美乳にそわせる。愛撫と荒い呼吸で赤くなった柔肉に、添えられた指先が静かに沈み込む。マユミの顔が一瞬、苦痛とも快楽ともつかない形に歪んだ。

「ふ、ふぅ……ん」

 とろんとした目をしてマユミは呻き声を漏らす。
 ただ自分が指を沿わせただけで溢れる甘美な快感に、マユミはこらえようのない声を漏らしてしまう。いざ、生物が要求するとおりに愛撫を開始したとしたら、一体自分はどうなってしまうのだろう。
 本音を言えば逃げ出したい。
 しかし、虜囚となったマユミにはもう戸惑うことは許されない。そう、今のマユミは生物の可愛らしい肉奴隷だ。奴隷が主人に逆らうことなどできはしない。

「ふっ、ふぅ……ん」

 悲しみと後悔を飲み込み、唾液と粘液にまみれた乳房に肉棒を挟んだまま、ゆっくりとマユミはしごき始めた。痺れそうな快感をこらえて強く中心に寄せられた乳房は大きくひしゃげ、互いの乳首が擦れ合いそうなほどにぴったりと密着している。擦れ合う乳首からの一段と強い刺激にマユミは再び呻き声を漏らした。
 白い乳肉と薄桃色の乳首、赤黒い肉棒のコントラスト。
 氷のように冷めた心とは対照的に、マユミの体が徐々に熱を持ち始める。

「あ、あふっ……んはっ、あふ…ちゅく」

(ああ、熱い…なんて、熱いの…それが、こんなに強くおっぱいに、挟まれて……)

 意志に反して手の動きが呼吸が荒くなるにつれて忙しなくなり、胸の谷間の中心で肉棒がこね上げられていく。時折胸の隙間からモグラ叩きのモグラのように亀頭部分が顔を出し、再び布団に潜るように沈み込む。痺れるような感触にしばしマユミはぼうっとした表情をし、熱い吐息を漏らした。

「んふぅ、ふぅ、ふぅ……ふっ、ぶふっ!」

 俺を忘れるなというように口腔内の肉筍がズンズンと喉奥を叩き、たまらずマユミは呻いた。擦り付けられる粘液と喉を塞ぐ息苦しさに目を白黒させて身体をよじらせる。

「く、ぐぶっ、ぷあっ!」

 身体を仰け反らせたマユミの口から糸を引く唾液ごと肉筍がこぼれだした。ようやく息苦しさから解放されたマユミは酸素を求めて大きく喘いだ。チアノーゼを起こしかけていた顔色が良くなる一方、頭を押さえていた生物の腕が不機嫌そうに力を込めた。

「ご、ごめんなさい。す、すぐに……んんんっ……ん、ちゅ、ちゅぷ、くちゅ、ぺろ…ん…くちゅ」

 まるで舌で磨き上げようとするように、念入りにマユミは舌を這わせた。たちまちの内に肉筍は唾液でぬらぬらと光り、不気味な異様をますます見せつける。

「んん……ふっ。ちゅる…あはっ、ぴちゅ…ちゅ、ちゅ」

 半ば夢見心地の状態で、マユミは愛おしそうに肉筍を舌で舐め回した。竿の部分を横から軽く噛み、人間ではあり得ない突起を舌で押し、溢れる淫液を唾液ごと喉奥で受け取り静かに嚥下する。
 マユミは股間から滴が溢れていくのを感じていた。
 喉奥を犯され、熱い肉棒に激しく自らの胸を擦り付けているのだ。それも致し方ないことだと言えた。
 どんなに心で拒絶しても淫らな自分の身体は喜びで満たされてしまう。

「んはっ…んぶ…ちゅ……んんっ。も、もう…いやぁ……」

 拒絶の声を漏らしつつも、マユミは愛撫をやめるわけにはいかなかった。そんなことをすれば髪を引っ張られ余計な苦痛を被ることになる。少しでも早く解放してもらうためにも、マユミは口腔性交を止めるわけにはいかなかった。
 頬にかかる髪の毛をかきあげると、青筋の浮いた肉筍を再び口中に含み、尿道口を重点的に舐めあげる。ちゅぷちゅぷと淫らな音を奏で、胸はにちゅにちゅと濡れた水音をたてて肉棒を擦りあげる。

「んん……ちゅ、ちゅ…ちゅっ、ちゅっ」

 痛々しげに項垂れたマユミは、遂にチュウチュウと音を立てて欲望の塊を吸い始めた。一方で、堅くなった乳首が触れるように左右から肉棒を挟み込みこみ、よりいっそう愛撫の動きを早めていく。

【【【おおっ、い…いおおおあああううううっ】】】

 その健気な姿と奉仕に触発されたのか、たまらず生物の三つある口から呻き声が溢れる。腰がビクビクと小刻みに震え、二本の生殖器両方から先走りの汁を溢れさせ始めた。

「んんん、んぶ……んふぅ………んぐ」

(ああ、この感じ…もうすぐ…もう、すぐ…)

 それと悟ったマユミは、諦めと言うには悲しすぎる雰囲気を身に纏ったまま、丁寧に口と胸両方の肉棒をしごくのだった。

「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ……ふっ、ううっ!?」

 唐突に口中の肉筍が跳ね上がった。飛び出した肉筍はマユミの眉間にぴったりと狙いを付けたように鼻先に押しつけられる。

「あぐっ、ちょっと、まさか? あ、キャッ!?」

 ビクビクっと大きく震えると、肉筍の先端からネバネバした薄黄色い精液が噴水のように吹き出した。溶岩のように噴き出した精液は、驚きに目を見開くマユミの顔にたっぷりと汚していく。

「あ、あふっ、あつ…ああっ!?」

 遅れてマユミの胸の中の肉棒が破裂したように大量の精液を噴き出し、マユミの白い乳房を薄黄色い汚液で彩っていく。
 視線が通らないほど眼鏡を汚した精液が、重力に引かれてゆっくりゆっくりと滴り落ちていく。頬や鼻先、眼鏡についた精液をのろのろとした動きでこすり取りながら、マユミは濃厚な雄の臭いに呆然としていた。
 ハッキリ言えば不快な臭いにも関わらず、数年ぶりに感じる男の臭いと味は彼女の身体をうっとりとした気持ちにさせていく。

「あ、熱い…熱い……む、胸まで………一杯、はぁぁ、なんなの………これ」

(いや、いや…)

 それがマユミには恐ろしくてならなかった。今も気を抜いたら胸の谷間に溜まった精液を指ですくい取り、それを口に運んでしまいそうだ。そうしなければ、あの男にどんな酷い目にあわされたか。
 ぶるぶると震える指先がすくい取った粘つく精液を、沈み込むような戸惑いを浮かべた瞳がじっと見つめる。ほんの数センチ動かせば…。

「だ、ダメ…ダメよ。もう、こんなこと……」

 寸前、マユミは顔を背けると小さく慎ましくしゃくり上げた。その汚れても清楚な顔に相応しい楚々とした啜り泣きが室内に響く。

「ううっ、うっ、ううっ。もう……もう、いや、いやです…ひっく…。もう、もう、許して…下さい」

 吸盤のついた指先が慰めようとするかのように、気味が悪いほど優しくマユミの背中を撫でる。指が触れた瞬間、マユミはいやいやと首を振って拒絶した。

「ああっ……あうっ………もうっ…ダメ…いや、もう…いや…いや…」

 指を通して生物の意志が痛いほど大量に流れ込んでくる。
 マユミの目が大きく見開かれ、そして絶望と共に閉じた。
 生物の意志は変わらず、圧倒的な存在感でマユミを圧倒している。その意志には些かの乱れも見られない。

「いや、そんなの……なんで、どうして、こんな形で…子供、なんて…いやっ、やめて。はなして、犯されたくない、妊娠なんてしたくない…。シンジさん、シンジさん、助け…て」











「ひっ…!」

 生物は俯くマユミの体を抱え上げた。脇の下から手を差し入れ、軽々とマユミの体を引きずりあげる。白湯のような液体から濡れて香る臀部が現れる。
 既にプラグスーツは欠片も残っていなかった。
 腐食作用のある液体の中、生物の腕は確実にその仕事を果たしていたのだろう。ヒクヒクと痙攣したように震える太股が如実にその事を物語っていた。

「は、あ、ああっ…助け、助けて………無理…いや、もう、そんなの…」

 力無く垂れ下がるマユミの左足が、生物の胴体をまたいで反対側に移った。

「…ひっ」

 わずかに色を戻した瞳がわななく。濡れた恥毛が張り付く股間の真下から、狙いを定めるように天をつく肉筍と肉棒をじっと見つめる。もしここで生物が腕の力を抜けば、彼女の身体は重力に引かれて下に下がるしかない。それはつまり…。

「やっ、いや…いや…いや…。ああ、下がってる、下がってる…このままじゃ、そんなの嫌です、いや…」

 恐怖で強ばるマユミを生物はゆっくりと抱きしめた。ねっとりとした粘液に包まれた生物の体が、マユミの体に吸い付くように密着する。彼女の体を引き寄せ、抱きしめた状態を保ったまま、剥き出しの首筋に蛸の足のように自在に動く舌を伸ばした。
 両手と頭、そして左の太股を押さえ込まれた姿勢のマユミは逃げることもできない。肉筍のゴツゴツした先端がかするように濡れた秘所をなぞった。

「あ、あはぁっ、や、やぁ」

 ブルブルと瘧にかかったように震え、硬く乾いた唇から漏れるのは意味のない叫び。反射的にマユミは生物の肩に両手を乗せ、必死にずり下がる身体を支えようとする。ほんの数秒も経たずに二の腕までぶるぶると震えだした。

「う、ううっ、いや…ああっ」

 最後に残された力を振り絞った、彼女の最大最後の抵抗は、蟻が獅子に挑むよりも儚かった。
 生物はただマユミを抱きすくめているだけで、意外な忍耐で生物はその大暴れを受け入れる。
 
 生物も悟っている。
 それが消え行く蝋燭の最後の輝きであることを。
 無粋に暴力で抵抗を封じる必要もない。ただ下拵えが済んだ料理を味わうようにその時を待てばいい。


 やがて、マユミも暴れ疲れる…。
 指一本動かせず全て受け入れざるを得なくなる。ほんの数分後のことを思い浮かべ、生物は欲望の涎を垂らした。
 それまで前菜を楽しむとしよう。

 鷹揚に生物は薄く汗の浮いたマユミの首筋に舌を這わせる。ミミズかゴカイのように節のある舌は至る所から粘液を噴き出し、白い首筋はたちまち粘液に汚される。

「は、はぁ…っん、やめてぇ…そんなところ、あっ、舐めないで…ふぁぁ、くぁ!
 き、気持ちよくなんか、ない…だから、やめ」

 全く信用のおけない震える口調でマユミは拒絶した。小刻みに震える首筋に沿って流れた粘液は、まずマユミの豊かな胸の谷間に溜まり、それから糸を引いて床にこぼれていった。
 ぴちゃぴちゃと淫靡な音が飽くことを知らないように響き、マユミの心を最も深い部分から責めさいなむ。

「あ、はっ、やっ。汚い…」

 眼鏡に守られた目以外、顔中をべっとりと濡らされてマユミが呻いた。
 悪臭と怖気の走る感覚に顔をしかめ、首筋から胸元にかけて溢れる唾液が幾筋も幾筋も跡を残しながら滴り落ちていくことにさめざめと涙を流す。
 いやいやするように両手で胸を庇おうとするが、それは身体を支えることを放棄すると言うことでもある。

「…く、うっ。ああ、誰か…助けて。う、うあああ、うぅ…」

 眼鏡の下の瞼から一つ、また一つと大粒の涙をこぼれる。気弱な彼女にはこんな悪夢のような状況に晒されることはとても考えらず、耐えられることではない。

「あう、ううっ。汚い…汚いです…。ううっ、くっ、もう、手が……限界…ひぃっ!?」

 唐突にマユミは首を仰け反らせ、ビクリと体を震わせながら叫び声をあげた。大きく開けられた彼女の口からは、その後のも断続的に苦痛を堪えるような悲鳴が漏れこぼれる。

「う、うう、ああ! ぃあっ、あうんっ!」

 いつの間にか伸ばされた生物の触手が、やわやわと柔らかさを堪能するようにマユミの重量感溢れる胸を愛撫していた。締め付けるように揉み続けながら、生殖器に酷似した先端が恐ろしいほどの優しさで乳首をつつく。最初の拷問のような愛撫ですっかり敏感になっていたマユミの神経は、雷撃のような鋭い衝撃をマユミの脳に伝えた。

「あ、ああ!?」

 ビクンと筋肉が痙攣し、華奢な背筋を折れそうなくらいに仰け反らせる。

「ふぁ、ああああ―――っ! だ、だめっ!」

 力が抜けると同時にマユミの体ががくんと下がった。蜜で濡れる秘所に肉筍の亀頭が押しつけられ、甘い肉をわずかに押し割った。

「い、いや――――っ! ダメ、まだダメ! まだがんばれるから!
 だから、お願い!」

 この期に及んで身を捩り、腰を捻り、足をバタつかせて激しく暴れるが、それは無駄な抵抗でしかない。生物はその抵抗さえも楽しんでいるようだった。

「いやっ! いやっ! アスカさん、綾波さん! マナ! 洞木さん!

 しかしながらしぶといのも善し悪しだ。もう充分だと判断したのか、それとも待ちきれなかったのか、生物はマユミの細腰に手を添えると、強く大きく腕を引っ張った。

「っ、い、痛い、痛い…、やめて」

 きつく目を閉じ、文字通り骨の折れそうな痛みに耐える。いよいよ強く感じられる感触に体を硬くし、暴れるのを止めた彼女の体がさらに下がる。水中では腕が足首を掴み、殊更ゆっくりと引っ張っていく。

「はっ…そんな、やだ…」

 マユミの顔が羞恥に赤く染まる。何かを言おうとするように口を緩く開けては閉じるが、その奥から声が漏れることはなかった。

(こんな…こんな…)

 生物の胴体の上にまたがり向かい合ってしがみついている。対面座位とも騎乗位とも言える姿勢だった。犯される所と犯される顔を見られる屈辱的な姿勢、犯されるにしてもこの姿勢だけは嫌だったのに…マユミはそう思った。

「あ…あ、ああっ」
【【【ぐふっ…ふふっ】】】

 いやいやするように首を振るマユミの顔をのぞき込みながら、生物は疣付きの舌を長く伸ばし、マユミの頬を嬲るように舐めた。
 生物がごそごそと腰をずらすと、わずかに肉筍が秘所の奥に潜り込む。そこは当初の堅牢さを失い、内側から溢れる愛液ですっかりと緩みきっていた。

「お願い…犯さないで…いやなの…もう、無理矢理、こんな…いや…許して」

 過去に性行為の経験があると言っても、このような状況は気弱な彼女にはとても耐えられない。生理的嫌悪感を嘔吐しそうなまでに感じてしまう。
 その一方、熱く息づき、ヒクヒクと震えてその時を待つ自分の体が信じられなかった。一体どっちが本当の自分なのかマユミはわからなくなってくる。暴力で犯されることを嫌悪する気弱な自分が本当なのか、それともなんであれ犯される快楽を待ち望む自分が本当の自分なのか。

 答えは出ない。

 そして、生物はおもむろに体を揺すりはじめた。

「あああ、いやいやぁ! お願い、やめてぇぇ…あああ、いやよ、いやよそんなのっ!」

 揺すられることで更に勢いを増す嫌悪感の所為で、余計に生物の肉筍の感触を感じてしまう。そしてますます嫌悪する…。相互作用でいや増していく、快感(の期待)と高鳴る鼓動。
 首を激しく振り悶える彼女の入り口部分を、毛の生えた心臓のような形状の亀頭が嬲るように舐め尽くしていく。

「ひくっ。う、ああ…」

 肉筍はゆっくりと先の絶頂でこぼれたマユミの愛液を自身に擦り付けながら、熱く潤っている秘所を堪能する。不気味な深海生物のような見た目に反し、その動きは優しく、まるでいたわるように甲斐甲斐しい。

 体の力を抜いたその時を狙ったように、生物は耳まで裂けた口を歪ませると、ヘドロのように腐った息をマユミの顔に吐き掛けながら、凄絶な笑みを浮かべた。

「ひっ!?」

【【【おんな、おかすぅ】】】

 生物は声帯を震わせて、初めて意味のある言葉を漏らすとマユミの腰を自分の腰に押しつける。直前の笑みのもの凄さに、マユミは抵抗することを忘れた。

「は、はぁ!? う、うううう、うそ!?」

 緩く開かれた桃色の肉の通路を抜け、凶悪な魔物は潜り込んでいく。肉襞を絡み合わせ、愛液と先走りの粘液を混じらせてゆっくりゆっくりと。1ミリ1ミリと肉筍が潜り込むのに合わせて、マユミは首を仰け反らせた。
 激しく首を振り回し、黒髪を振り乱してマユミは喘いだ。

「ふぁああっ、だめだめだめだめぇっ!  絶対にダメぇ───!!!」

 さらに奥に潜り込み、ぐちゅりと鈍く湿った音が響く。
 と、マユミは体を突っ張らせ、限界を超えて仰け反った背骨が軋みをあげることも構わず身を捩る。

「んんんんっっ!? いやいや、いやっ、いやっ、やぁ―――!!
 そんなことだめ、うあっ、きゃあああ―――っ!
 ふぁ、あっ、ああああああ───っ!!」

 とても逃避の白昼夢世界へは逃れられない。所詮は儚い現実逃避にすぎない。現実に自分を犯している生物の圧倒的な力の前には無力でしかなかった。

「あぐぁっ、うぁ、ひぎっ!(な、なにこれ、なんなの!? 焼ける、体が焼けちゃう!)」

 息が壊れたポンプのように忙しくなく漏れ、ガクガクと震える自分自身がマユミは信じられなかった。まだ先端が入っただけなのに、マユミは全身の細胞という細胞が全て溶けて崩れてしまったような錯覚が全身を貫く。
 続いて、そわそわと震える尻肉を押し割り、もう一つの肉棒がすぼまった肉穴に押し当てられ、ぬるりと潜り込んでいく。

「ふぁぁっ! だめぇ、ダメになっちゃうぅ! ひあっ、きゃああっ!
 お、お尻にまで!? そっちは違う、違います! 違うって言ってるのに!
 んあああっ! そんな激しい! 壊れる、壊れちゃいます! ああ、それ以上はぁッ!!」

 充血し痛々しいほどに腫れ上がった淫唇に感じる、ズンと重苦しい感覚が心も体も溶かしていく。同じく神経が過敏になった腸を容赦なく抉っていく肉棒はマユミを新たな快楽に目覚めさせていく。
 身体の中心をほじくる圧倒的な感覚にマユミは息をすることも忘れた。あまりに強烈な快感はマユミを気絶させることも許してくれない。

「あうううう、おあうぅぅ……ひっ、ひぐっ!(負けちゃう、負けちゃ…)」

 左右に押し広げられていた足が太股からつま先まで、一斉に押し震えた。ビクンビクンと痙攣するふくらはぎが水面を揺らし、幾つも波紋を作っては壊していく。
 これに比べれば人間の男との性交など、いや先ほどの生物の陵辱であっても問題にならない。まさに言語を絶する快感だった。
 わななきながらマユミは、淫らに花咲く自らの秘所とそこに食い込む疣だらけの生殖器を見つめた。先端が入っただけでこれなら、全てが挿入されたとき一体どうなるのだろう…。

(そ、そんなことになったら、私、私…)

 マユミの逡巡を知ってか知らずか生物は改めて腕に力を込めた。二本の肉棒が淫唇を巻き込むようにしながらさらに半分ほど挿入される。

「ひ、ひぃあああっ!」

 マユミの脳裏に一瞬白い閃光が走り、甲高い、普段の彼女から思いもよらない良く通る芯の通った悲鳴が響き渡る。

「あああああっ、んくっ! うあああっ!
 だっ、だめっ! は、入んないです、入りません! もう、それ以上はっ!
 はっ、くるし…い、うああっ、抜いてっ、イヤぁっ!」

 目を見開き、何かを求めるように腕を彷徨わせるマユミ。しかしすがるモノは何もなく、虚しく這い回ったあげく、その手はぎゅっと硬く握りしめられた。

「んあああっ、はぁっ、はあっあっ」

 全身にこびりついた粘液が乾いた皮膜が、マユミの体からうっすらと浮き出る汗と混じり、再び湿り気と粘りけを取り戻していく。
 熱気に酔ったような顔をして、より強く密着してしまうことにも気がつかないのか、無意識の動作で強く生物の腰を足で締め付け、マユミは意味のない言葉を漏らし続けた。

「くるし…ぃ、いはっ、ひゃ、あぅあぁ、えぐっ。奥まで…ああ、まだ、まだ入る、入ってくる…。
 いやぁぁ、もういやぁ、こんなのはいやぁ…」

 まだ差し入れた、それも重力に引かれるままに半分ほど挿入しただけなのに、この敏感すぎる過剰な反応とは…。生物が奇妙に嬉しそうに口元を歪める。
 反応も上々だが、生物は肉筍が感じる尋常でない感覚に、我を忘れそうになっていた。本能の知識として知っていた性的快楽とは、明らかにレベルが違う感覚だ。まさに万人に1人の名器だ。

【【【ふぅぅぅ、おぅ、おおおおぉぉぉ】】】

 マユミの体の動きに合わせてぶるんぶるんと大きく揺れる、豊満な胸の双丘に生物は喜んで体を震わせた。つんと勃起した乳首をカメレオンのように舌を伸ばして捕らえると、チュウチュウと音を立てて吸った。

「ひぅ、うぅぅっ! ま、また…胸……を、あはぁう! そんな、音を立てて、吸って…。
 ふっ、ううっ、んっ、んんっ…。ぐっ、ふぐっ、ひっ、やだ、やだ…。こんなの…。
 ふぁっ、あはぁぁぁぁぁ」

 張り出したエラに膣内を擦られ、ぬるりとした粘液をまとわりつかせた肉棒が腸の熱い襞にねっちりと絡みつく。マユミは首を後方に仰け反らせながら熱い息をもらした。知らず知らずの内に引き寄せた左手の小指を強く噛み締めるが、その痛みも感じないのか痙攣のように体を小刻みに震わせる。

「あ、ああ、んあ…あっ…ぁぁ…。奥に、ひぃっ、奥に当たってる!
 はぁ、はぁ。ひぎぃぃぃっ!」

 ズグチュ

「はうっっ!!」

 遂に肉筍と肉棒が根本まで飲み込まれた。同時に膣の奥をこづく紛れもない感触にマユミは呻き声を漏らした。その目は瞳孔までもがわずかに開き、半開きになった口元からは涎が流れ落ちていた。そのまま声もなく全身を細かく震わせる。
 舌のような触手が口元の黒子に沿って涎を舐め取るが身動き一つ出来ない。

「ふぁ………あっ、ああっ……んあっ……はぁ、はぁぁっ」

 汗腺から火が噴いているように全身が熱い。生物に犯されたことでスイッチが入ったように、全身の神経が著しく敏感になっている。そうでなくとも敏感で、さらに薬の影響のある彼女はその事実に慄然とした。

「くぁ…ああっ……あうっ…だ……だめ、う、動かない…で(死ぬ、本当に、死んじゃう)」

 生物はそれまで味わっていたマユミの乳首をちゅぷりと音を立てて解放すると、二の腕に絞られたようになっているたわわな乳房に手を添えた。何か言いたそうにマユミは瞬きを繰り返すが、勿論生物はやめなかった。

「ひゃう、ひゃうん…ふぁっ、あん、あんあん、だ、だめ…」

 下からすくい上げるように重たい乳房を手の平で揉みしだく。伸ばした指先でコリコリと堅くなった乳首を虐め、指の腹で乳房全体を押しつぶすように転がしていく。いつしか生物の指はマユミの双丘をこね回していた。汗と粘液にまみれた美巨乳が生物の指先にいじくられ、面白いように形を変えていく。

「あ……うぁ……あふぅ……」

 苦しそうに目を閉じるとマユミは小さく呻いた。
 自分の胸がそんな風にされると、こんな風に疼き、身体全体を痺れさせる…今まで知らなかった女体の神秘を嫌と言うほど思い知らされていた。乳首をきつく摘まれ、ゴムみたいに引っ張られることでこんなに感じるなんて今まで知らなかった。

「いやよ、いや……こんな、こんな屈辱的なこと…ダメです、私…ダメ」

 拒絶の言葉ではあるが、どこか媚びが混じる甘い響き。
 本当に拒絶しているのか、ダメと言うことをして欲しいのかマユミにはわからなかった。

 そう、わからないといえばもう一つ。

 マユミの中心を貫き圧倒的な存在感を誇示したまま動こうとしない生物の対の凶器。
 息をしただけで全身が痺れて腰砕けになることに代わりはないが、全く動こうとしないためマユミは明らかに戸惑い、面食らっていた。勿論、骨が軋むほどの勢いでピストン運動をして欲しいわけではない。しかし、このまま挿入されたままでいるわけにはいかないのも確かだ。

(一体……なにを、考えて…ああ……いるの…?)

 ただマユミの胸を愛撫し、小刻みに震える太股を撫でるだけで生物は一切動こうとしない。それどころか、生物はマユミの胸を優しく掴んでいるだけなので、ほんの少し彼女が身をよじればその腕から逃れられそうですらあった。

(逃げて欲しいの…? それをまた捕まえたいとか考えてるのかしら? ああ、もう感じすぎて、何も考えられない。痺れる…痺れちゃう…。あううう、嫌だけど動いて欲しい、何もかも忘れさえて欲しい…………まさか)

 心に浮かんだ恐ろしい予想にマユミの体は硬直し、反射的にきつく胎内の肉筍が締め付けられた。蜜肉が締め上げているのをはっきりと感じる。わき上がる甘やかな快感にマユミは思わず甲高い声を漏らした。

「あはぅっ!?」

【【【うぐおぅぅ! おぁ、はや…うご…】】】

 不意打ちの刺激にビクビクと身体を痙攣させ、前のめりにくずおれそうになりながらもマユミはなんとか意識を保った。ハァハァと肩で息をしつつ、確かめるように一言一言を絞り出した。

「ま、まさか…私に、自分で…動けって……そんなの、無理です…。はずか…しい」

 返事はない。
 しかし、自分を見つめる生物の目が雄弁にその言葉を肯定していた。予想通りとは言え、マユミは目の前が真っ暗になるのを感じる。

「で、できません…。そんな恥ずかしいこと…アスカさんやミサトさんじゃあるまいし、無理…無理よ…」

 そう言いつつ、マユミはせざるをえないだろう事はわかっていた。マユミが自分で動かない限り、そうして生物を満足させない限り、生物は胸や足、髪の毛などそこ以外の部分をいじり回し延々とマユミを喘がせ続けるだろう。挿入したままの姿勢で何時間でも、あるいは何日でも…。

「うっ、うっうっ…恥ずかしい。こんな、こんなこと…ああ、私…自分からこんな……したくないのに」

 止まらない涙を拭うこともせず、マユミは嗚咽を漏らし続けた。

「私は、でも…私は…ううっ!」

 ぐちゅり

 溜息よりも小さく息を呑み、湿った音を立ててマユミの腰がわずかに持ち上がった。遠慮がちに動き、中腰になったマユミの体が電流を流したように小刻みに震える。マユミは頬を赤く染め、緩く開かれた口から上気した息を漏らした。
 あの男にさえ命じられなかった初めての体位は散々にマユミの心をかき乱した。
 わずかに引き抜かれて愛液にまみれた肉棒が照明の中でイヤらしく光る。
 身体を支えていた両腕が激しく痙攣したかと思うと、唐突に力つきたように肘が曲がった。当然持ち上げられていた彼女の腰が再び生物の胴体に密着する。

「はぐぅ―――っっ!」

 マユミは長いため息のような息を吐きながら体を弛緩させていく。痙攣するように生物の腰にしがみついていた太股が震えた。

「ん…ん…あううぅぅぅ」

 またマユミは腰を持ち上げていく。マユミは気づいていなかったが、今度は自ら快楽を貪るようにゆらゆらと前後に揺れていた。
 ぐちゅるぐちゅると先ほどより淫靡さを増した水音が結合部分から漏れる。

「あぅあああ、んあああっ、あう、はうっ…(私…こんな、こんな…イヤらしい音だしてる)」

 呻きつつもマユミは腰を持ち上げ続けた。それにともない凶悪なまでにエラが張り出した肉筍と肉棒は彼女の身体から恥蜜をこそぎだしていく。カリ部分が彼女の膣口にかかるギリギリまで達したとき、マユミの口から安堵混じりの息が漏れた。

「あう、んふ…ふ…うふっ。……くぁぁ、ぁっ…あぅぅ……」

 このまま抜いてしまおうか。

 そんな考えにとらわれマユミの動きが一瞬止まる。しかし、全てを見通していたかのように、生物はマユミの腰を掴むとねじ込むように引き寄せた。
 ぐちゅると白い泡を溢れさせながら、粘液まみれの凶器がマユミの体を再び穿る。

「っぐぁ───!」

 マユミの口から苦鳴が漏れ、首と背骨が折れそうなほど仰け反る。
 致命傷を受けたようにガクガクと震え、焦点の合わない目を見開いたまま、マユミは自身を焼き尽くすような快感の波に我を忘れた。それが彼女には信じられない。乱暴な動きに苦痛を感じたのはほんの一瞬だった。
 じゅくじゅくともうどちらのものかわからない愛液をこぼしつつ、マユミの秘所は生物の肉筍と肉棒を呑み込んだ。途中に幾つもある引っかかりのために、決してスムーズにとは行かなかったが。

「あっ、ああっ! ああっ、はぁっ!
 こ………こわ…れる。壊れて…んあっ、や、ちょっ」

 呆然と呟き、二の腕で自らの乳房を挟みながら力無く生物の肩をつかみ、マユミはぶるぶると震える。
 今の自分がとても現実のものとは思えない。
 悪い夢なら、今すぐに覚めて欲しい。
 しかし、生物は非情にも甘い快楽と共に彼女の意識を覚醒させ、無惨な現実を彼女に認識させる。

「ひどい、酷すぎる。ああっ……こんなの……いやあぁ……」

 そう言いつつもマユミの顔は淫らな快楽に彩られ、甘えた啜り泣きを漏らしていた。腰も意識しなくとも、自然な動きで前後に艶めかしく動いていた。

「わたし、犯され……てる、犯されてる! ああ、嫌なのに、嫌なことなのにぃ!
 はうんっ、はうん! イヤらしいことされてるのに、喜んでる! お腹のなか、一杯に、一杯にされて、熱いおちんちんで、一杯、一杯に…されて!
 ひあぅっ! ああっ、いやぁあっ!!」

 いつしか生物の激しいピストン運動とマユミの腰の動きが波長を合わせるように一致していく。生物の腰が押せばより深く全てを受け止めるようにゆらゆらと揺れ、マユミの腰が上下すれば生物の凶器は「の」の字を書くようにぐるりと動く。

 力の抜けてしまったのか脱力した身体を密着させ、いつしかマユミは甘えた仕草で生物の身体に抱きついていた。

「感じてる、感じてるの! くふうっ、あ、あは……んっ!
 わ、私の中、かき回されて…るっ! 前も、後ろも乱暴に…! イヤらしい音が…びちゃびちゃって…!
 もう、もう! あああ、まだ奥に、入ってくるぅ」

 正気を失った顔をしてマユミは生物の陵辱を受け入れていた。図らずも、生理的な嫌悪よりも快楽が勝り、文字通り彼女の身体を燃え上がらせる。今の彼女は敏感になった粘膜を擦られる甘美な疼きの虜になっていた。

(こんな、こんあ……私は、私はこんな、いやらしい……!)

 普段清楚であればこそ、淫らな状況に犯された瞬間、熟れた肢体は心に反して狂おしく燃え上がってしまう。 マユミこそ生きた見本だった。

「あっ、あぁん、あん! み、乱れてる…私、凄く、乱れてる…!
 イヤらしい、私、淫らに…喘いで喜んでるイヤらしい女…ですっ!
 ひ……っ、あ、あ、あんっ! あう、あうあぁぁ〜〜〜!」

 ズンズンと杭打ち機のような勢いで肉筍が打ち付けられるたびに、マユミは甲高い声を発し続ける。力強い躍動と共にふくよかな尻肉が激しく動き、淫魔のように淫らな身体をわななかせた。
 最後に残ったマユミの拠り所…シンジの優しい笑顔…。
 それももう見えない。
 心の中のシンジは背中を向けていた。

 そういえば、シンジはどんな顔をしていただろう。考えてみればきちんと彼の顔を見た記憶はなかった気がする。

「ひ、あっ……あん、くう、ん……っ、お義父さま……はあっ、あ、いっ……いいっ!」

 今彼女の心を占めるのは憎んでも憎み足らないあの男の顔。もうマユミは今がいつで、ここがどこかもわからなくなっていた。
 口から漏れるお義父様という言葉は彼女の敗北宣言そのものだ。その言葉と共に、マユミは心の底から墜ちていく。隠していた淫らな本性をさらけ出されていく。

「あぐっ、きゅう…ん……。わ…う……あ…っ、お義父さま……このままだと、私は、マユミは…うあぁんっ!!」

 今自分を抱いているのは義父だ。
 そう思った瞬間、キュウキュウと膣は肉筍をしめつけ、同時にマユミの体をこれまで以上の快感が貫いていった。

(そう、そう…だったんだ。わたし……)

 シンジのことを愛している。
 あの男を殺したいほど憎んでいる。
 だからこそ、自分はここまで喜びに震えているのだ。

「私……愛してる……シンジさん、のこと…心の底から、愛してる…!
 好き、好きです…大好き、です」

 生物の肉筍がぐっと押し込まれ、マユミは清楚な仮面をかなぐり捨てた表情で呻いた。

「でも、でも……私は、憎んでる……思い出すのも嫌なくらい、殺したいほど憎んでる…………あの男に…。
 お義父さまに、抱かれてるときが、罵倒されながら犯されてるときが……一番、いちばんっ………はぁぁ…あ、ああ…あん。
 き、気持ち…良いんです」

 遂に言葉に出して言ってしまった。
 その時、マユミはハッキリと大切な何かが壊れたことを悟っていた。自分は救いようのないくらいのマゾヒストだと認めてしまった。もう、後戻りは出来ない。過去を懐かしんだり後悔したりすることは出来ないのだ。

「あ、あう……! はひっ、ひっ、ひっ、あっ、あうっ!」

 認めたことで快楽のレベルが更に増した。
 全身が溶けていく。
 音がするほど激しさを増した鼓動が全身を震わせ、高ぶる体温は全身を焼けただらせていく。禁忌の感情は激しさを増していった。

「ひいっ、あっ、だ、め……おと、お義父さ、まぁ……あんっ、大きい、大きいです……!
 太くて、激しくて…ああ、もう、私っ!」

(狂っていく…私は狂っていく…)

「私を…狂わせて……」



 マユミのせっぱ詰まった表情に後押しされたように、生物の動きは更に激しさを増し、ゆっさゆっさとマユミの体を揺さぶった。淫らに狂わされた肉体は歓喜の蜜を結合部から溢れさせ、世の男共を惑わせてやまない巨乳がオーガズムの予兆に震えた。

「ひ、ひいっ、い……い、イキます……。お義父さまっ…………だめ、もうっ……いっ、マユミは、マユミは…イキ、そう……ですっ」
【【【うおおっ、おあああっ、ふぉああああっ!!】】】

 生物もまた絶頂の予感に打ち震えていた。
 あまりにも淫蕩なマユミの体に全てを忘れた。
 なにもかも忘れ去り、ただただマユミの体を貪り尽くす。
 全ての力を出し切るように激しく突き上げ、乳房をもみし抱き、紅く染まった乳首を舌で転がした。触手はマユミの髪を梳るように絡みつき、指の股までも舐めるように愛撫した。

 マユミの頭の中が光で染め上げられたように真っ白になっていく。
 激しい注挿は文字通り彼女を突き上げる。荒波の揉まれる小舟のように快楽という奔流に呑まれ、マユミは執拗に全身の性感帯を愛撫する指と舌、膣奥を最深部まで嬲る生物の剛直に我を忘れた。

「あう、はぅ…んちゅ、ちゅ…んんんっ」

 いつしか求められるままに生物の舌を受け入れ、自ら舌を絡めた。
 手は錠前のように固く生物の身体を抱きしめ、足は絞め殺さんばかりに強く生物の腰を締め付けていた。胎内に肉棒を納めた白い腹が波打つようにうごめく。

「あ、あ、あうう……っ、お義父さま、お義父さまっ! い、イキます!
 わたし、あっ、あ、ああああ、ああ―――――っ!!」


 きつく強くお互いを抱きしめ合ったままの姿で1人と一体は動きを止めた。2人の結合部はぶくぶくと泡立ち、音を立てて黄色く粘ついた精液と愛液の混合液が漏れだしていた。

「……ああっ、お、義父……さま」

 絶頂の余韻に身を浸したまま、マユミの体は崩れ落ちた。力無くしがみついていた手が生物の肩を滑り落ち、弛緩した身体に豊かな髪の毛をまとわりつけせて糸の切れた人形のようにマユミは前のめりに倒れた。

 屈従の姿勢のままでそっと下腹を撫で、霞む思考でマユミは考えた。

(できちゃった……きっとできちゃった……私の赤ちゃん………。シンジさんとの間に出来た子供じゃない…。
 お義父さまと、私の…赤ちゃん)

 愛おしげに撫でる手と裏腹に、マユミの瞳にみるみる涙が溢れこぼれ落ちていく。どうしようもなく惨めな気持ちで一杯だった。どうしてこんなことになったんだろう、そう思った。小さくマユミはしゃくり上げる。

「私、お母さんに…なるのよ。泣いてちゃ…ダメ…なのに。なんで、なんで……」

 しかしマユミはその答えを出すことは出来ない。
 少なくとも、今この時は。
 再び生物の目が情欲に燃える。

【【【も、もま…う…こあっ】】】

 欲望の呻きを漏らしながら生物がマユミの体を抱え上げる。
 諦め顔でマユミは目を逸らした。迫り来る生物をこれ以上見ることに耐えられなかったからだ。





【【【ばぎゃう!?】】】



 その時、突然生物の頭が弾け飛んだ。

「ひっ!?」

 眼前で起こった惨劇と胎内で膨れ上がり、再び止めどなく精液を噴きだす剛直にマユミは息をすることも出来ずに硬直した。
 赤い血が噴水のように噴き出し、マユミの全身を紅く染め、プールに溜まった液体がピンク色に濁っていく。

(な、なにが…起こったの? ああっ!)

 慌てて振り返るマユミの目に、プールの縁に立つ数人の人影が映った。
 全身をくまなく黒い装甲服で包み銃を構えた筋骨逞しい戦士達。それは見間違いでもなければ白昼夢でもない、正真正銘の現実だった。
 夢ではない。全身から感じる痛みと痺れがそれが現実の光景だと教えてくれた。

「あ、ああ………助かった…の? 助かったんですね……。
 お願い、早く助けて、助けて下さい!」

 震える身体を叱咤し必死に手をさしのべながらマユミは助けを求めた。
 どこか怪しげな雰囲気を漂わせているが、彼らの付けている装備は紛れもなく軍の正規装備だ。仲間のはずだ。

「私だけじゃなくて、他にも捕まってる人がいるんです! お願い、その人達も助けに………え?」

 兵士達はじっとマユミを見つめたまま、身動き一つしない。
 生物がいきなり動きださないかと警戒しているのだろうか?

「死んでます、大丈夫です! だから、お願い早く助けて、ここから出して下さい!」

 涙で顔をくしゃくしゃにしたマユミの哀願に、男達は背中を向けることで答えた。それはマユミが求めていた答えとは、あまりにもかけ離れた答えだった。

「ど、どうして…。ねぇ、行かないで! 私を1人にしないで、置いてかないで下さい!
 お願い、お願いします! どうしてですか、どうしてなんですかっ!?」

 本当はわかっている。
 そんな都合良く助けが来るわけがない。
 彼らは、彼らこそ…マユミ達を罠にはめた張本人…少なくともそれらの人間に関わりのあるものだ。
 それでもマユミは必死に助けを求め続けた。彼らが救いがたい内容の会話を交わしているのを聞いてもなお。

『急げ、すぐに第1世代共がここに来るぞ』
『…もったいねぇな。あんな極上の女、目の前にして何もできないなんて』
『ぼやくな。実験が終われば乱交パーティの始まりだ』
『ああ、そうだな』

 マユミを無視し、撤収を始める男達。

「いやぁ、置いていかないで、助けて下さい…助けて…助けて…」

 殿を務めていた男が意味ありげに肩をすくめた。

「待って…待って……連れていって…」

 男達は姿を消した。
 遠ざかるブーツの音に数十秒遅れて、マユミの耳にぴしゃぴしゃと濡れた足音が聞こえてくる。聞き覚えのある唸り声や、心をざわつかせるシンプルな精神が感じられる。よその部屋にいた、おそらくこの部屋の主を恐れていた別の生物がやってきたのだろう。
 実験をきちんと遂行するために。

(………………………シンジ、さん。私…もう、会えない)

 光を失った虚ろな目に、プールの縁から恐る恐るのぞき込む生物の頭が映る。










「ああうっ」

 ほどなく、マユミの押し殺した呻き声が室内から漏れた。







そしてエヴァンゲリオンの消息は途絶えた




後書き

 はい、遂に長かった宇宙で触手もとりあえずは幕となりました。

 続き…と言うかシンジ達による救出編は書く予定はありますが、ハッキリ言うとそれ系描写はあまりないです。ないわけじゃないですが、比較的あっさりと流されると思います。

 一刻も早い解決を期待している方には申し訳ありませんが、一応の幕となったわけでして、自分としては他に書きたいネタがあるのでそっちにベクトルが向くだろう…と思っています。
 いやまあ、いい加減このネタ引っ張るのは大変なんですよ本当に。
 ともあれここまでおつき合いして下さった方お疲れさまでした。
 ( ゚Д゚)y-~~  まったくおまいさんも好きだねぇ…。

2003/12/06 Vol1.00