< 注意 >



この話には痛い描写が含まれています。
烏賊同文。






─ 異種遭遇 ─

「Alien prey」



書いたの.ナーグル


















 ぐにぐにと柔らかさを確かめるように、生物は両手を使ってマユミの胸を揉んだ。服の下から上向きに尖って存在感を主張する乳首の感触と、しっとりと指に吸い付くようにしながらも、指先をはじき返そうとする瑞々しさに溢れた乳房の感触。意識がないままの淫らな体を、生物は強弱をつけて執拗に、丁寧に揉みほぐしていく。その度にマユミの口からは、背筋がゾクゾクするような甘い吐息が漏れた。

「はぁ…あっ」

 親指の腹で先端部分を左右にねぶり、残る指全てで下からすくい上げるように胸を優しく愛撫していく。0.7Gの環境下では、マユミの胸はあまり形を崩すことなく、形良く盛り上がったままプリンのように震えている。
 緩急をつけて揉みながら、徐々に堅くなっていき自己主張する頂点の蕾を、生物は人差し指を使って右に左にへと転がしていった。全てはマユミという極上の甘い蜜をすするために。

「ふぁぁ……んっ、あっ」

 ビクリとマユミの体が震え、彼女の体から立ち上る甘い匂いがよりいっそう強くなっていく。まったく、どこまでも淫らな体の持ち主だ。本人の意思がどうあろうと、ほんの僅かな愛撫で痺れるような快感に弄ばれる。

【くぉ、おあああ…まん…ま】

 絵画に感動した好事家のような溜息をもらし、生物は服を脱がさないままブラウスの上から胸に舌を這わせた。若さに溢れた乳房に、ざらざらした舌がねっとりと粘つく涎を擦り付けた。豊かな乳房の稜線に沿って、涎とそれ以外の粘液が白いブラウスに染み渡り、透けて下のブラジャーを模様や柄がわかるくらいに浮き上がらせる。形の崩れない乳房はぶるっと震える。うっすらと張り付いたブラウスの下に、ブラの細かい刺繍は勿論、きめ細かい肌が透けて見えた。ただ白いだけでなく、淫らな刺激に桃色に染まる淫肉が。

「あん……あっ」

 生物の手の平と舌が表面を撫でさすり、またビクリとマユミの体が震えた。本当に意識がないのか、生物が怪訝に思うほど敏感だ。

「ふぁ…ぅん…っ」
【おおお、おっ、おおっ】

 舐めているだけでは物足りなくなったのか。それとも誘い込むようなマユミの肢体に堪らなくなったのか。
 ドロドロに濡れた衣服を張り付かせたマユミを見下ろす生物に奇妙な変化が起こる。ゆっくりと生物の蝙蝠ダコの傘の様に複雑な形状の口が開いた。紫色の肉が広がり、不気味に赤い肉の華が広がっていく。もし、マユミに意識があったら、さぞかし恐ろしい思いをしただろう。
 しかし、意識のないマユミは…。
 悪魔の投網のように生物の口腔は広がり、直に乳房全体を含もうとする。意識を失っているマユミは、それを避ける手段はない。湯気が立ち上りそうなくらい熱を帯びた触手が刻一刻と近づいていく。マユミは目を覚まさない。ただ、期待するようにぶるっと体が、柔らかい双乳が震えた。

 ぐぶちゅ。

「…………………っ……ん」

 やたら粘ついた音を立て、マユミの右の乳房の3分の2を生物はくわえ込んだ。外から中の様子はうかがい知れないが、だいたい予想することは出来るだろう。呼吸する蛸の漏斗のような動きから察するに、柔らかい乳房は思う様に嬲られているのだ。それこそパン生地を捏ねるように執拗に、丁寧に。
 もごもごとゴム鞠のように形を変え、水音が響くと共にマユミの顔が紅潮していく。

「ああっ………んっ………んっ…んんっ。ううん」

 僅かに呼吸が速くなり、緩く開いたマユミの口から熱い吐息が、そして涎がこぼれ落ちた。いやいやと首を左右に振るが生物の愛撫は収まる気配が微塵も見られない。汗みずくになった体が小刻みに震え、じりじりと首が、体全体が弓なりに仰け反っていく。生物の口の端からこぼれた粘液がブラウス全体に染み渡っていった。
 その反応を楽しむように、水気で潤ったマユミの胸を生物は愛撫し続ける。

「はっ……ん」

 乳首の先を擦られるたびに、マユミは苦痛に耐えるように、指に引っかかったシーツの端をクッと強く握りしめた。
 無意識の動作で生物をはねのけようとするマユミだが、それは生物をいたずらに刺激したことになったようだ。7本の舌状触手が、頬袋の中で縄を巻き付けるように乳房に絡みつく。敏感な所を探し求め、執拗に動き回る触手達。

「ふぁ…あ、ああん……………ぁ………ぁぁ」

 悪夢でも見ているように眉をひそめ、汗で濡れた顔を背けるマユミ。さらに追い打ちをかけるように、本来あった舌が変化した巨大な触手が蠢いた。先端がヒトデのように開き、つまみ取るように、服の上からでも屹立してるのがわかる乳首をくわえ込む。既に折れそうなほどに仰け反っていた背骨が、さらなる酷使を強いられた。

「や……ゃ……ぐっ、く……ぅぅ」

 ずぶちょ、ぐちょ、ぶちゅ…。

 生物は楽しみながら舌で愛撫を繰り返した。本当に楽しくて嬉しくて仕方がない。もしランク付けをするとすれば、間違いなくマユミはトップクラスに位置する美乳の持ち主と言えるだろう。豊かな乳房、乳輪、乳首、全てがトップだ。

「……あっ、あん……んっん…………んんん〜〜っ」

 押さえの効かなくなった欲望が胸にわき上がり、生物は初めて女を抱く少年のように、せっかちに胸を揉みしだく。童貞の少年のリビドーが性を求めるように、生物はマユミを欲した。蜘蛛のように長い指に余るマユミの胸は、まるで麻薬のように生物の欲望を捕らえて離さない。ラクダの瘤には水が詰まっていると言われるが、マユミの胸には男の心を捕らえる何かが詰まっているのだろう。

 麓の部分から上の方へ絞り上げるように指がめり込ませていく。じっくり、たっぷりゆっくりと。そして十分に柔らかさと弾力を楽しんだ所で指をゆるめていく。愛撫の刺激で膨らみを増した乳房は、ブラウスを破かんばかりの質量だ。
 そして痛いほど屹立した乳首は、舌で押しても形を崩すことなく、形を保ったまま乳房にめり込み、ぶるりと震えて舌先から逃れようとする。ただ指でつまむのとは違う、乳首全体を刺激する吸引が、性を嫌悪するマユミの官能を呼び覚ましていく。

「……あっ、あん……んっん…………んんん〜〜っ」

 音楽はマユミの嬌声、寝台はマユミの肢体というクッション。素晴らしい環境だ。とろけたような目をして、生物は自らの幸運に歓喜していた。甘い乳肉をいつまでもこうして堪能していたい。しかし、これでは満足できない。もっと、もっとマユミを味わいたい。もっともっとマユミを喜ばせたい。

【ぐぼあ…ぁぁ………あ】

 名残惜しげに、生物はマユミの胸から顔を上げた。開かれた口の隙間から大量の涎が溢れ、マユミの上半身全体を湿らせるほどたっぷりとこぼれ落ちる。汚液の飛沫が顔にかかるが、相当深いレベルで意識を失っているマユミはそれでも目を覚まさない。

「はっ……はっ……はっ……はっ、はぅ」

 くちゃくちゃになったブラウスとブラに包まれた胸が、マユミの荒い呼吸に合わせて誘うように上下した。

【………ごくっ…りゅ】

 潰れたヒキガエルの様な音を立てて生物は息をのんだ。感情の無いはずの生物だが、マユミの淫らさに魂を奪われたのだろうか?
 勿論、そんなことはない。
 一瞬呆けたように動きを止めていた生物だったが、すぐに本能に突き動かされるままに蹂躙を再開する。涎と愛撫の刺激をたっぷりと吸い込み、ふわりと盛り上がる乳首を中心に、うっすらと見える乳輪の部分を、バストラインがハッキリとわかる白い膨らみに両手を添えると、激しく前後左右に動かした。

「んんぁ、ふぁ…………はぁっ、ぁぁ……あっ……ふぅぅ」

 乱暴な愛撫に豊満な胸はゆっさゆっさと音を立てて揺れ、その激しい動きにほとんどはずれたブラウスの貧弱なボタンは、一瞬も耐えることが出来ずにはじけ飛んだ。観音開きに大きく開かれたブラウスから、ブラジャーに包まれた乳房がもれ出た。サイズがきついらしく、執拗な愛撫にも関わらずきつく胸に食い込んでいる。生物の漏らした粘液をたっぷりと吸っていたため、黄色く染まって粘ついた糸を引くブラジャーは、まるで卵の殻か何かのようにも見えた。

【おおぅ、おぅぅお】
「はぁ…はぁ………はぁ……くぅん、んっ。……ぁぁん」

 生物の口から粘つく溜息と共に赤紫色をした触手が、数本、糸を引きながらこぼれ出る。直径2センチほどのミミズのようにも見える触手は、ブラウスの隙間から、あるいはスカートの裾の隙間から衣服の中に潜り込んでいく。濡れた服を透かして、赤い触手がうねうねと素肌をはい回っていく様がよく見えた。赤い淫らな血が流れる血管がマユミの体を締め付けていく…。

「あぅ………ん、んんんっ…………ぅ…ぅぅ……ああああっ。んぁぁ、ひぃ、ひんっ」

 昆虫標本を添削するように、触手に絡められた手足が広げられていく。苦しげにマユミは呻いた。蛇がとぐろを巻くように両乳房に触手が絡みつき、血が流れ込んで硬度を増した先端部分を押しつぶすようにつついた。

「…ぁ、ぁぁ」

 無意識の内に体をずらしてマユミは愛撫から逃げようとするが、太股や手足、胴体にしっかりと触手が絡んだ状態では不可能だ。上気したマユミの顔をのぞき込んだ生物は、はだけられた胸元に指を差し入れ、生木を裂くように左右に開いていく。
 ブラジャーの薄布だけに包まれた豊かな胸の谷間に、湿ったネクタイと蠢く触手が挟み込まれた光景はたまらなく刺激的だ。
 完全に漏れ出た乳房を、今度はブラジャー越しに掴むと、先ほどまでの愛撫が挨拶のように猛り狂って生物は愛撫する。揉み、つまみ、撫で、舌を這わせる。屹立した乳首を口腔に捉え、ちゅうちゅうと音を立てて吸い付くと無言でマユミの体が硬直した。

「っ……あっ! はぁっ! あ、ああっ………はぁ、あはぁ」
【お、おおおぉぉぉ〜〜〜】
「ひゃ……ひゃぅ、ゃん。…………あん……あん…あぁ………はぅ、あぅ」

 思わず生物も歓声を上げる。服を着ていたときから大きいと思っていたが、こうしてブラジャーに包まれた状態だと、さらに色々なことがわかる。アスカの胸が攻撃的な刺激に満ちあふれてるとすれば、マユミの胸は全てを受け入れるような母性を備えている。

「あふっ。くぅん、くぅ………ん、くぅぅん…………ふぅ…んっ」

 足に絡んだ触手が少々強引にM字型に開脚させると、子犬のような声を漏らして大げさなくらいにマユミは反応した。快楽に悶えて眉根が寄せられ、線が震えた八の字を書く。ぐっと握りしめられていた手が、足掻くように開き、再びきつく握りしめられる。

「ああ、あっ、ああっ」

 意識が無くてこれなのだから、彼女の体は相当に淫靡な因子を備えているのだろう。あるいは、大人しい顔に似合わず過激に開発をされてしまったかだ。彼女の過去を考えるならば、それは十分にあり得る。
 イヤでイヤでたまらない、大嫌いな相手に犯されたとしても、意志に反して彼女の体は、心は千々に乱れてしまう。コンプレックスを持っている大きな胸と同じく、彼女が複雑な思いを常に抱いている事実。例え媚薬効果のある生物の体液が無くとも、マユミは淫らに悶え、屈辱と快楽に声を震わせる定めだったのだ。

【うぶ、うぶるるっ】

 勃起した乳首ごと生物は力強く、リズミカルに胸を揉む。大きな手一杯に包み込んでその手触りを心の底から楽しんだ。張りのある胸を下からすくい上げるように包み込むが、生物の手でも限界ギリギリの大きさの胸は、生物の指の隙間からいびつに歪んだ白い乳肉が溢れる。塗りたくられていた粘液が弾けて、ぐっちゅぐっちゅという音が淫らに響き、まるで撞きたての餅のように、マユミの白い乳房は大きく変形した。

「やぁ…だ。……ゃ……いやで…す。
 お、義父……さん、や、やめ………てぇ…くだ、さい」

 相手のことを気遣わないがむしゃらな愛撫に、彼女の体を開発した男の夢でも見ているのか、身悶えしながらもマユミの口からは快楽に満ち満ちた嬌声とも、嫌悪の悲鳴ともつかぬ声が漏れた。言葉だけなら明らかに嫌悪と拒絶なのだが、声の震えと紅色の頬と、あまりにも甘い吐息は、夢現のまま快楽の波に翻弄されていることを示している。

 これは本当に楽しめそうだ。腰の奥に溜まった灼熱感を抑えるため、愛撫する手を休めて生物はにんまりと笑みを浮かべた。
 否定するだろうが、マユミは当人の気づかない母性に満ちている。どんなに情けない男でも、どんなに卑劣な男でも、心は望まなくとも体はきっと受け止める。それが種族の違う、彼の様な異性物であってもだ。
 ……きっと良い子を孕んでくれるだろう。断定するように生物の目が冷たく光った。
 吸い付くような肌の感触と早く一体化したい…でも、まだだ。

 体重をかけないようにして、優しくブラジャーの上から胸を撫で回す。乳首を手の平で撫でられ、ひくりとマユミの体が震えた。生物が視点を下げると、スカートからこぼれるマユミの太股が細かく痙攣しているのが目に見える。手の跡が残るほど乱暴な愛撫だったというのに、明らかにマユミは感じている。それも胸を少しいじり、触手で体を撫でただけだというのに。

「はぁぁぁっ。んんっ…ぁぁ、そんな……ひ……………はぁっ……あっ、んんっ、はぁぁ…ぁっ……ぁ」

 ビクリと大きく体が震え、脱力していくマユミの体から汗と濃い牝の匂いが立ち上った。
 生物は一瞬戸惑い、動きが止まった。
 まさかという思いに戸惑ってでもいるのか、その目は不安そうに揺らぎ、浅く早い息を繰り返すマユミを見つめている。

 達したのか…。

 好き勝手にいたぶったお前が…という感じもするが、生物は前戯であっけなく絶頂を迎えたマユミにある意味呆れていた。敏感にもほどがある。陵辱されるために生まれたような女だ。
 生物は喜悦に体を揺すって喜んだ。それは蜜蜂が花粉と蜜がたっぷりある花を見つけた時と、同じ様な反応だったのかも知れない。

「はぁ…ふぅ…はぁ…はぁ、はっ……あ…はぁ、はぁ……うぅ」

 半裸の肢体をしどけなく横たえ、快楽の余韻で体を切なく震わせている。はずれかけた眼鏡の下で、泣いているような、あるいは悪夢に苦しんでいるような、そんな複雑な目をしていた。
 意識がない状態でこれだ。直に愛撫したら、どんな反応を示すのだろう。生唾を飲むような想像に我慢できなくなったのか、生物は俄然次の行動に移った。
 人間だったら襟を正すのに相当する行動なのか、全ての触手が口腔内に引き戻されていった。触手に巻き付くマユミの甘い味を堪能しながら、ゴクリと生物はそれを飲み込む。
 半拍おいて、生物の目が鈍く光った。


【おおおおおおぉぉっ!】


 指をぴったりと張り付いたブラジャーの隙間に潜り込ませ、紐が抗議の抵抗をするのも構わず、強引に引きちぎる。
 こぼれでる巨乳。野球のグローブのように大きな生物の腕に丁度サイズが合うほど、マユミの胸は大きい。アスカのような弾丸型、レイやヒカリのようなお椀型ではなく、彼女の上司のミサト同様、豊かな稜線を描く丸い球形の胸だ。それだけでなく、マシュマロ並の柔らかさとゴム鞠のような弾力を持っている。サイズ90のFという、マナから半ば憎悪の目で見られるその胸は、感情を持たないはずの生物ですら一瞬心を奪ってしまった。彼女自身は大きいだけで肩は凝るし、男の人の妙な視線を集めるしとあまり良い気持ちはしていないのだが…。
 彼女は自分がどんなに素晴らしい物を持っているか理解してないと言っていい。

 薄暗い照明の下、ピンク色で程良い大きさの乳輪は唾液に濡れて光り、清楚で控えめながらこれまでの愛撫で堅く勃起した乳首が、指先に擦られるたびに右に左にブルブルと揺れる。それでいてただ大きいだけではない、どんなに乱暴な愛撫を繰り返しても、一向に形が崩れない黄金の曲線を保つ豊かな乳房。大きく豊かな白い胸は黒子一つ、染み一つなく、聖女の清楚さ感じさせる。しかし文字通り水蜜桃のように、汁気を滴らせんばかりの淫蕩な美乳だ。
 それは全ての雄を狂わせる。

















「いたっ!? …え、あ、うええっ!?」

 ブラの紐が胸を打つ痛みでマユミは目を覚まし、濡れたレンズの下の目が、戸惑うように左右に振れる。いま、一体何がどうなって…。
 そして目の前の光景に言葉を失った。視界の半分を遮る、白い…自分自身の胸。そしてそれを掴む汚れきった生物の腕。白と黒の極端な対比にマユミは言いかけていた言葉を忘れ、パニックに陥った者特有の疑問を紡ぎだした。

「な、なに!? なんなんですか!? なにが、なにが…ああっ!?」

 マユミの言葉は途中で遮られた。文字通り鷲掴みにされた右の乳房がひっぱられ、指先からひしゃげた乳肉が漏れ出たマユミは苦痛に呻く。切なげに啼くマユミを更に責めたてんと、人差し指と親指の隙間から飛び出るように突き出た乳首を、生物が赤子のようにくわえ込んだ。

「ふぁ……っ、ぁあ、ああっ、ふぁぁ」

 思いも寄らない刺激にマユミは甘い声を漏らしてしまう。直後ハッと頬を赤く染め、顔を強ばらせたマユミは、まるで新たなる責めを待ち望むようにも見えた。
 もちろん、生物は期待に応えないわけがない。マユミの意志はこの際おいておく。
 稜線に沿うように舌を這わし、しょっぱい汗と甘い雌の匂いを存分に楽しむ。これ以上ないくらいに尖り、程良く堅い乳首をかろうじて残っていた唇で甘く噛みしめ、舌先でコロコロと転がす。

「ぁ――――っ、あっ、ひぁっ、いぁぁ!」

 さらに乳首の先端をノックするように舌先を尖らせてつつき、しゃぶりながら弄ぶ。吸われ揉まれ、乳首はより鮮やかな朱に染まり、薄く血管の浮いた白さは火照った桃色に染まった。そして赤子が吸い付くような無垢さとひたむきさを持ちながら、同時に脂ぎった中年男性のような淫猥な愛撫が、マユミに二度、三度と喘ぎをあげさせる。

「い、いやっ! くっ…………んん……っ、んふっ」

 全身をとろかす様な快感に、マユミは声を出すことも忘れて首を左右に激しく振り、だだっ子のように生物のたるんだ胸板を叩いた。さらに生物を押しのけるように体を揺すり背骨を仰け反らせ、堅く閉じた足で膝蹴りを腹に叩きつける。だが生物はびくとも動かない。動くわけがない。

「ふぁぁぁん! や、やめて…よ。そ、そんな、そんな……こと、しないで。
 いひ、ひゃぁ…んあぁっ、うああぁっ。いや、やだ、や…です。や、やぁぁっ。や、やぁぁ…もうやだぁ…。やめてぇ…やめてくださ、い。お願い、お願いします…」
【ぶちゅ、くちゅる、ちゅぶちゅぶ、ずちゅる、ちゅぅ〜】

 それでなくとも愛撫に弱い彼女にとって、生物の愛撫は拷問同然の責め苦なのだ。さらにレイプされているという事実に、体の熱が高まると共に足の指先まで痺れさせるような浮遊感がいや増していく。
 自分が感じていることに恐怖を覚え、マユミはただひたすらに悲鳴を上げ続けた。ちゅばちゅばとすすりあげる大きな音が響き、それに絡みつくようにマユミの悲鳴が続く。

「あ、ひ…いや、そんなに、ああっ…、そんな風に、あっ、あんああっ! なんで、わたし、こんなこと…くぁあっ、感じたく……ない。ゆるし、ゆるして…ください…。
 ああっ、また…ひぁ、ひああっ。そんな、また、また、ひぃん」

 はぁはぁと熱く荒い息を吐くと共に胸が激しく上下し、もどかしげに指が空を引っ掻く。
 それが例え軽い愛撫の段階だったとしても、生物の分泌する媚薬の助けを借りなくとも、敏感極まるマユミの体は反応してしまう。数年ぶりの性行為は、心が望むと望まざるに関わらず、肉の快楽を知ってしまった体を高ぶらせてしまう物なのだろうか。

(………なんで、なんでこんな…こんなに、感じて、しまう…の)

「やだ、やだぁ…。感じたくない。こんなの嫌なの、に。犯されたく…な、い。
 ど、どうして、どうして…なんですかぁ。だれか…助け、て…くだ、ひゃい…」

 ちゅうちゅうと音を立てて生物は乳首を吸い、肉の腐った指先は恐ろしいほどの丁寧さで胸全体を揉みほぐしていく。ローションを塗ったように粘液と汗でぬらぬらした光沢を持った胸は、指先が表面をなでさすることでブルブルと快楽の喜びで震えた。吸われることと揉まれること、2つの快感の波が共鳴しあいマユミをよりいっそうの高みへと持ち上げていく。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………いやぁぁ。こんなの、だめ…いや、なの」

 見開かれた瞳からは涙が溢れ続け、嫌悪に満ちた悲鳴が室内に響く。先ほどから、間段のない小さな痙攣がマユミを震わせ続けている。生物の一流ピアニストの演奏のような愛撫が、軽いアクメで途切れることなくマユミを捕らえて離さないのだ。

「あぁぁぁ…たす……け…………て、もう、壊れ…ちゃいます。むね、胸はもう…あ…………ああぁぁ。あふっ、くっ。いや、いやいやっ。いやぁぁ…。ふぐっ、ううぅ、死んじゃいます、死んじゃいます…。いやなの、いやなの、こんな…ひどい、こと、いやなの」

 押しのけようと力無く押してくる手を無視し、右の乳首を丹念に口腔愛撫し、続いて左の指先で乳首を可愛がる。手はある時はランダムに、ある時は一定のリズムで愛撫し続ける。揉まれ、豊かな弾力で元に戻るときの粘液が弾ける扇情的な音が、『ちゅるぬちゅ』と乳首を吸う音と見事な和音を生み、マユミのすすり泣きに負けないほどの勢いで耳を楽しませるのだ。

 ぐにゅ、もにゅもにゅ、ぬちゅぬちゅ。

「い、いや、いやいやぁ…はぅ、はぅん。……だめ、です。助けて、ああっ、アスカさん、マナ、はぁ…ぁぁ。もう、はあっ、だ、だめぇ………ぁぁ、いやぁぁぁ、いや、いやぁ、いやぁん」

 全く素晴らしい胸だ。大きさ、形、柔らかさと弾力…いずれも一級品だ。健康的な桃色の乳首は、舌先を楽しませる小さなブツブツ一つ一つにまで品を感じさせる。乱暴な愛撫にも控えめな愛撫にも問題なく応える。そしていちいちその愛撫に応えて可愛らしく身をよじり、耳を楽しませてくれる。
 出るはずのない母乳の味を感じるような気さえする。それは母乳本来の血の味ではなく、麻薬のように心を虜にするような甘い甘露だ。生物は、マユミを官能で溺れさせるつもりが、自分が溺れてしまいそうな気持ちさえする。

「ひぃぃん、や、あぁぁぁぁ。あ、うぅんん〜〜、ゆる…し……て。ご、ごめん、なさいっ。あやまり、ますから…もう、許して、助けて…。
 うん…ううぅん。あくぅ、あぅ……きゃん!」

 名残惜しげに生物はしゃぶっていた乳首から口を離す。ちゅぷんと可愛らしい音と共に解放された乳首が、唾液の糸を引きつつぶるぶると左右にゆれた。Fカップの乳房の稜線を撫で上げ、ふわりと膨らんだ乳輪の中に、スイッチを押し込むように親指で乳首を押し込んだ。

「ふぁぁ、い…あ……あぁ……ぁ……」

 それが合図だったかのようにビクッ、ビクッとマユミの体は震え、生物の胸を力無く押していた腕は、線が切れたように力無く投げ出された。指先が隠しようのない快楽の余韻を求めて、しがみつくようにもぞもぞと動いた。

「や、やめっ…ああん、あうっ、うああっ。い、いっ…ちゃ…ぅ。
 許し……て………。こん、な……の」

 最も敏感な胸の弱点を責め立てられ、マユミの意識が惚けていく。意識を失っていくのではない。かえって意識はハッキリしていくような気分だ。だが体は動かない。全身に広がる正座したときのような痺れに似た、だが心地よくも気怠げな感覚の中、まるで夢でも見ているように力が入らない。
 ムッとする雌と雄の匂いが混じり合う中、胸の谷間に粘液と汗を、舌先を尖らせて生物はゆっくりと舐め取っていった。

 ぴちゅ、ぴちゅ、くちゅ。

「はぅ、ひゃううぅん」

(こ、壊れる…壊れる…。やぁ…だ…いやなのに。胸、ばっかり、こんなこと。イヤらしいこと、考えることも…イヤなのに。イヤなの…に)

 抵抗という言葉を忘れ、手足をだらりと投げ出したまま肩で息をする彼女の顎に、生物の腕が伸びる。しかし、汗で張り付いたほつれ毛を直す体力さえもなくなった彼女は、顔を背けるくらいの抵抗しかできない。
 あっさりと生物の腕がマユミの顎を掴み、無理矢理顔ごと上半身を引き起こすと、美女が愛玩動物を愛でるように、口元の黒子を人差し指でゆっくりと撫でる。

「ふぅぅ、んん、もういやぁ…助けて下さいぃ…。
 あぐぅぅ」

 肩が痛みで軋み、マユミは力無く哀願を続ける。緩く開いた口の中に生物は指を差し入れてきた。

「あん、ぐっ…ひぃっ!」

 息苦しさと吐き気に目を白黒とさせ、舌で押し返そうとするが、その様が愉快だというように生物は歯茎や頬の裏に指を這わせていく。抵抗にならない艶めかしい動きで、舌が生物の指に絡みついた。

「ひゃぶ、ちゅる…んんんっ。おっ……えぶ」

 生物が指をかき回すたびにだらだらと唾液が溢れ、顎を伝い、首を伝い、上から見ると三角形になっている胸の谷間にまた溜まっていく。
 生物の口が開き、大量の涎を垂らしながら細長いナマコの様な舌がゆっくりと引き出されていく。

「ひゃ、ひゃにを? あう、んんんんんっ!?」

 まるで肉棒を秘肉に沈めるように、赤黒い舌がマユミの口に差し入れられた。歯茎や舌をなぞりながら喉の奥まで入り込んでくる。同時に薄い唇が舐め回すようにマユミの唇に押し当てられた。殴られたような衝撃がマユミの全身を貫いた。

(き、キス…なの!? や、やだっ)

「ひゃ、ひゃだ――――っ!」

 例え既に義父の手で汚された体だったとしても、マユミも譲れない一線という物がある。たわいないことのように思えるかも知れないが、今後、唇だけは生涯愛する人にしか許さないようにしようと、固く誓っていたのだ。ある意味、それは本当のマユミのファーストキスだった。
 それをあっさりと奪われてしまった。そのショッキングな事実が、彼女に火事場の馬鹿力を発揮させた。

「ひゃだ! やっ! …おぶっ!?」

 絶対防衛線である唇を侵略され、反射的にマユミは生物の胸を突き飛ばした。思ってもいなかったマユミの行動に完全に不意をつかれ、バランスを崩した生物は背中から倒れてベッドの下に転がり落ちた。突起まみれの舌が、口からずるりと引き抜かれる光景に吐き気を覚えながらも、マユミは必死になって這いずった。

「あ、はぁ、はぁ、はぁ…。に、逃げないと。早く…ああ」

 しかし、腰の上に乗っていた生物はいなくなっても、すっかり脱力した手足はまるで言うことを聞かず、その動きは哀れなほどに遅々として進まない。弱い攻めとは言え、塵も積もれば山となるという言葉どおり、マユミは腰の辺りが痺れ、まるで溶けてしまったような感覚に襲われていた。

「早く、早く! だめ、動いて、動いてぇ!!」

 ゆっくりと生物は立ち上がった。怒りに燃えた目が四つん這いになって逃げようと、必死になってあがくマユミを睨み付ける。
 もし口が利けたら、『無駄なことを』とでも呟いただろう。既に媚薬としての効果がある体液は大量に分泌されている。それを愛撫にかこつけて、刷り込むようにマユミに塗りたくったのだ。そして、僅かとは言え先ほど直接喉奥に注ぎ込んでもいる。腰が抜けているのでなくとも、マユミはせいぜい扉の所までしか逃げられなかっただろう。

【ごるるるるるっ】
「いや、いや! こんなのいやっ! いやぁぁ、うぇぇぇん、ひっく、えっく、だめなの、私は助けないと、みんなを…」

 数秒間の抵抗は全くの無駄に終わった。マユミはベッドの上から逃れることも出来ず、無駄にシーツに皺を作っただけだった。
 その抵抗とも呼べない行為に体力を使い切ったマユミをあざ笑いながら、生物はゆっくりとマユミに近寄っていく。抵抗されたことは腹立たしいが、これはこれで良いかも知れない。豊かな尻を振りながら、まだ逃げようと足掻くマユミの姿に、生物は嗜虐心を刺激されるのを感じた。

 子供の頭を撫でるように、優しく尻に手を乗せて撫でてやる。丸みを帯びた臀部は柔らかく、それでいて筋肉がしっかりとついている。それはつまり、あっちの方も期待できると言うことだ。ひくつく菊座を見つめながら生物は口元を歪めた。

「ひ、ひぃぃぃっ! いやぁぁぁっ!」

 細腰に手を回し、背後から覆い被さりながら生物は右腕をスカートの隙間から差し入れる。

「ひぃっ! ……ふぁ?
 はぁぁぁ、そ、そこはいやぁ…。やぁぁぁ、やぁぁぁ…。そんなのやだぁぁぁ」

 指先が薄布に包まれた盛り上がりに触れた瞬間、先ほどとは違う形でマユミの体が震えた。呼吸が乱れ、胸の動きが早まる。背筋と首を仰け反らせ、瘧のように体が震えている。

「はぁ、はぁ、はぁ…。あ、ああっ……も、もう…んぁ…あっ。やめて、ふぇぇぇ、うぇぇぇん。やぁぁぁ」

 乱暴に指先を擦り付け、それから引き戻した生物の指先には、明らかに生物が分泌した粘液とは違う液体が付着していた。

【…か、かはっ】
「は、はぅ」

 仰向けになったままのマユミの細腰を左右からしっかりと掴むと、生物は軽々と持ち上げる。無理矢理「へ」の字のような姿勢をとらされ、強引に体を折り曲げられたことで、苦しげな声がマユミの口から漏れた。押しつぶされてひしゃげた胸が鈍く痛み、屈辱と苦痛の涙を流してマユミは悲鳴を上げる。

「やだ、離して! 痛い、痛いです! あぐ、あぐ…あうあぐぅ。
 こ、こんな格好、いやぁ。恥ずかしい…です」

 その非難と抵抗にめげず、湿気た紙のようにぐちゃぐちゃになったタイトスカートをめくりあげていく。苦痛に身悶え、苦しげな息を吐くマユミはろくな抵抗もできない。ほどなく、スカートは捻り鉢巻のようになってマユミの腰の周りに絡みついていた。
 生物は剥き出しになった太股の間に頭をつっこんでいく。
 ぬるく熱を持ったスカートの中は、生物にとっては快適な空間だ。立ち上る女の匂いを肺一杯に吸い込み、生物はストッキングとパンティーに包まれた秘所へと口を寄せる。
 ほどなく、布が裂かれる音が響いた。続いて、恥蜜をすする音が室内一杯に木霊する。

 ずび、ずびちゅちゅちゅ。

「ああ、あはっ、はぁん! ……んんっ、ぐぅ」

 ハスキーな嬌声をあげるマユミ。
 生物の力の掛かる場所が変わったことで、どうにか体を擦らし、肘をついて胸への圧力を軽減することは出来たが、今の自分の姿を客観的に見ることがあったら、どんな風に感じるだろう。
 身悶えている彼女は、気にすることもないのだろうが。
 無理に体を動かしたことで、半ば引き裂かれていたブラウスはほとんど脱げてしまっている。全裸とも言い難い姿で四つん這いになり、シーツの上に乳房をさらけ出したマユミは痺れるほどエロチックだ。体をかきむしるような快感に汗にまみれた体を悶えさせ、その度に重力に引かれて量感を増した乳房がたぷんたぷんと大きく揺れる。

「ふぅううううううっ。うっ、うぅぅぅ!
 いやです! こんなのダメなの! イヤなのに、イヤなのに、また、また…ぁ?」

 泣きじゃくる顔もまた魅力的だ。特に、心でどんなに嫌がっても肉の快楽で落ちていく可能性がある女は格別だ。こんなにも魅力的な女はそうはいない。そんな女に種付けできる機会が回ってきたのは、生物にとってこの上ない幸運だ。
 だから、彼女を犯すことも出来ずに死んだ仲間のために、全身全霊で楽しまないといけない。

 丁寧にむだ毛処理のされた淡い恥毛に触手を絡ませる。わさわさと毛をかき分け、内股一杯に唾液をなすりつけていく。そして舌は裂け目をなぞるように丁寧に上下する。ざらざらした舌は潤った割れ目の上を通過するたびに、僅かに酸味のある液体をすくい取っていった。

「ふあぁぁん、はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁぁ。あう、あうぅぅぅ。ひぃ、っぐ、うぐっ」

 だが、快楽に翻弄される体とは裏腹に、マユミの心は醒めていく。氷の柱に全裸で抱きついたように冷える。

(か、感じ…ない。負け、ないから。感じたって、泣かなかったら…イかされなかったら、私は負けたわけじゃ、ないもん。そう、ですよね…アスカ…さん)

 突っ込みどころが多々ある思考だったが、ある意味、不幸慣れしたマユミだからこその反応だった。体の高ぶりが一定値を越えた瞬間、心は冷静さを取り戻し醒めていくのだ。幽体離脱でもしたように、快楽に機械的に反応する自分の体を、どこか遠くから見つめる。本を読んでいるときのように、客観的に自分をとららえてしまうのだ。何をされても、人事のように。
 数年ぶりの性交の刺激と、異生物による強姦というショックで最初の内こそ戸惑い、泣きわめいたが、徐々にマユミは自分を取り戻していった。そう、これは今まで過去に彼女を襲った悲劇と、さほど変わらない。だったら、耐えられる。

「あう、あぅ、ああぅ! うっぐ、ひっく」

 嗚咽を漏らす体を激しく揺さぶられて汗が飛び散る。涙の跡の残る目には奇妙な二重の光が見える。惚けたのとは違う虚ろな光と、その奥で揺らめく意志の光。
 媚薬で高ぶった体や、秘裂を執拗に舐める舌からの刺激が消えて無くなるわけではない。ロデオの馬のように体を震わせ、泣き声をあげるもう1人のマユミの横に、犯されても決して諦めない本当のマユミがいる。いや、ある意味既に諦めているのかも知れない。

(体は…どんなに汚されても、心までは決して汚されたりは、しない…から)

 それは、あまりにも敏感で、強すぎる刺激を受け続けると、発狂してしまうかも知れない彼女のもつ防衛機能なのかも知れない。一定以上の刺激はブロックしてしまうのだ。そうして、犯されることを何でもないことのように受け流してしまう。背後からじゅるじゅると秘所を啜り上げられ、頭を打ち振って涙と涎とを散らし、恥も外聞もなく泣き叫ぶのは自分であって自分ではない。便宜上作り上げた、もう1人の自分だ。偽りの自分…。
 しかし。

「い……やぁ……た、すけ…て。シン……ジ……さ……ん」

 涙に濡れた瞳が、フォトスタンドで生真面目な顔をする隊員仲間、シンジの顔を見つめた。これから、自分は写真のシンジに見つめられる中、生物に犯されるのだ。

(見ないで…こんな姿の私を)

 閉じた瞼からまた涙がこぼれ落ちる。それは一瞬漏れた彼女の本音だったのかも知れない。








【ぐるぅ? るるるぐ?】

 一方、生物は戸惑いを覚えていた。遺伝子に刻み込まれた記憶は、こうすればつれ合いの雌は溢れんばかりの蜜を漏らす…と伝えているのだが、今のマユミの控えめな秘肉からは蜜は溢れてこない。むろん、軽いアクメを絶え間なく迎え続けている彼女からは愛液が流れ出してはいるのだが、それはあまりにもごくごく少量だった。蛇口から一滴一滴零れるように。

「きゃっ!? っぐ、はぅぅっ。あぁ、あん、ああん」

 マユミの口からは喘ぎが続いている。しかし、一声ごとに量が少なくなっていくようにも感じられる。そう、どこか演技臭くも聞こえるのだ。舐めるのをやめ、確かめるように生物は指で柔肉をつつく。

 ぐ…ぐぐっ…ぐっ。

【ぐるるっ? ぐがっ】

 生物は再び戸惑った。知識の通りなら、喜びの蜜をたらしながら指をくわえ込むはずなのに…。確かに先ほどまでは愛液が溢れていたはずなのに。しかし実際には二枚貝が口を閉じたように進入を拒んでいた。秘貝という言い回しもあるというが、まさにそんな具合に閉ざされている。試しにその上にある、菊の花もつついてみたが、カチカチに硬直した菊座は文字通り指を跳ね返してしまった。
 勿論、強引に捻入れれば、根本までだって飲み込むだろう。しかし、生物にとってそれではダメなのだ。

【はぅ! ぶぢゅ、るちゅ、くちゅ、えお】

 壊れたような勢いで生物はマユミの秘所に鼻を埋め、その状態で首を振り、舌を鳴らして愛撫を繰り返す。

「あっ、あっ、ああっ! あっ、あああっ、いやぁぁぁぁぁ!」

 執拗にクンニリングスされてマユミの体が跳ね上がり、髪を振り乱して断末魔のようなあえぎ声を上げ始める。しかし、声と反応だけなら満足のいく物なのだが、いっこうに濡れてくる気配はない。

 相手が強姦目的の人間ならマユミが感じていようがいまいが、気にせず強引に突き入れて勝手に欲望を吐き出して終わってしまうだろう。そうなればマユミの考えとしては負けなかったことになる…らしい。実際には自分で自分を言いくるめ、真っ直ぐに立ち直るために、何日も何日も時間が必要になるのだが。

 だが、いずれにしろこのままマユミが肉欲に溺れなければ、生物は彼女を犯すに犯せないのだ。
 確実に寄生体と同種の雌を身ごもらせるため、あと、とある理由から生物の生殖器は大きい。巨大とさえ言って良いだろう。そんな物を強引に突き入れたら、女性は体を痛め、母体としての健康を損ねてしまう。出産は、一度だけで済ませるわけではない。故にこそ、生物は負担を最低源にするために、意志はともかく体を十分にほぐしてから犯すのだ。そのあとで輪姦とかしたら意味がないだろう、という気はしないでもないが。

 ともあれ、後の世の生物学者が評して曰く、【犯すために生まれた】生物である彼らが、濡れない女がいた場合の対策を持っていないはずがない。




「はぁ……くぅっ!?」

 突然、明らかに驚きを交えた悲鳴を上げる。なにかが、細く柔らかい何かが、じりじりと胎内に潜り込もうとしている。予想外の刺激に、ぼやけていた意識が急速に覚醒した。

「え、あ、やだ? な、なになに!? なんなんですか!?
 ひぃぃぃ、い、痛い! 痛いです! やめて、やめさせてっ!」

 反射的にきゅうと膣口をしぼめ、その何かを抑えようとするが、その細い何かは構わず強引に先へ進む。肉をかき分け、奥へ奥へと。肩越しに振り返っても、股間をのぞき込む生物の頭が上半分くらいしか見えない。何をされてるかは、結局わからないままだ。

(や、やああああっ。なにを、なにを入れようとしてるの?
 指!? 舌!? 違う、どれでもない。なんなんですか!?)

「く、くぁぁぁ」

 意識の戻った目から、投げやりになってから流すのを忘れていた涙がこぼれた。逃げようと四肢に力を込め、前に這いずろうとするが生物の腕はがっちりと腰をつかみ逃がそうとしない。

「やぁ、やめてぇ…!
 な、中が引きつって痛いんです。それに、なにか、爪みたいなのが、いたくて」

 感触だけで判断すると、それは指よりももっと細く、小さめのストロー程度の太さしかないようだ。そして大変柔らかく弾力に富んでいる。しかし、なにより特筆すべきなのは、それは自分で前に這い進む能力があることだ。
 奥から押し込むだけなら、先端を飲み込ませたところで堅い抵抗に遮られてそれ以上奥には進入できない。カテーテルなどが挿入できるのは、堅い材質であることと、先端がやじり状になっているからなのだが…。
 しかし、巣穴に潜り込む蛇のようにそれは身をくねらせ、何かを引っかけながら奥へ奥へと潜り込んでいく。

「い…やぁ……来ないで…。はいって、来ないでくださぁい」

 明らかに様子の変わったマユミの懇願に、生物はニィと口元を歪めた。汗とは違う、香るような甘い匂いが彼女の全身から立ち上る。
 生物の視線が異物を吐き出そうとするようにひくひくと蠢く秘所を、そこに潜り込み、今もぐいぐいと奥に潜り込んでいく黄色い管を ――― 目と目の間から生えてる異質な触手 ――― を見つめた。その触手は、食料としての獲物を関知するための敏感な感覚器官であると同時に、マユミのように抵抗の激しい女性に対する最終兵器となる。

「あぅっ!? …ぃ、いいっ、ひっ、はぁあんっ はぁはぅ、入って…くる」

 快感と恐怖が彼女の体から力を奪っていく。頬を濡れたシーツに押しつけ、擦り付けるように顔を左右に振って身悶えた。上半身は完全に崩れてしまい、下半身の方も生物に支えられていなければ膝立ちでいることもできなくなっていた。

「こんな、こんなの…ダメぇ」

 ミミズのように表面に細かい毛を生やしているため、順序よく震わせれば勝手に前へと進んでいく。たとえ濡れていなくとも、未成熟な処女であったとしても、元々かなり細い触手は大した抵抗も受けないのだ。

「あああぁぁぁぁ、あああぁぁぁぁ」

 そして進入した触手のすることは?

 心を引っ掻く爪痕が告げる。接触していることで、不完全ながらも生物の考えていることがわかる。詳細はわからなかったがマユミの心が凍った。

〔いいものをくれてやる…〕

 ドクン。ドクン。ドクン…。

「抜いて、抜いてくださ…え!? え、え、え、ええっ!?」

 触手が膨らみ、何かが送り込まれた。

 柔らかく締め付ける秘裂を押しのけ、柔肉の重みを跳ね返して奥へ奥へと進んでいく。マユミが目を丸くして硬直している間も、小指の先ほどの膨らみは奥へと進み、終着点である膣の最深部、子宮の入り口に到達する。見えないはずの触手の口が開き、熱い粘液が迸るのをマユミはハッキリと感じた。

「んっ、あぁん…ううっ、うくっ。な、なにを出してるんで…きゃあああぁ、まだなの」

 粘液が胎内を汚す感覚にマユミは嗚咽を漏らした。数珠のような膨らみが幾つも連なって送り込まれていく。一回一回の量はそんなに多くはない。ほんの数滴が良いところだ。しかし、それを何度も繰り返せばどうだろう。それも、わずかに飲み込んだだけでマユミの体を痺れさせるような、媚薬でもある液体を直に膣内に送るとなれば。

「はう、あう! まだ、まだ…とまらないのぉ。あく、あうう、溢れちゃう…ああぁん」

 今、どれくらいの量を生物はマユミの胎内に送り込んだのか。いつか、マユミの閉ざされていた淫唇は湯だったように弛緩し、淫靡な蜜を漏らし始める。ぱくぱくと息をするように、マユミの呼吸に合わせて緩く開閉を繰り返していた。

「はぁん…んぁぁ、いやぁ…あっ、あっ、ああっ」

 入り口からは岩から滲みでるように漏れた半透明の液体が太股を伝い、ベッドの下へ流れ落ちる。深く息を吸い、ゆっくりと吐き、マユミは下腹が僅かずつ膨れていくのを見ていた。
 下腹に熱さが溜まっていく感覚と、全身を引きむしるような排尿感がマユミの心を溶かしていく。真っ赤に染まる、心も体も。
 振り仰いだ彼女の目は、机の上の写真立てを見つめる。みんなが見ている。シンジが見ている。内気な彼女が精一杯の勇気で、遠回しな告白をした相手が…じっと自分の狂態を見ている。イヤらしい彼女を見ている。

「ひ…! い、いやあぁぁっ…。やめて、お願い、助けてぇ…。シンジさん、シンジさ…」

 ごぶりっ…鈍い水音と共に、必死の抵抗で固められていた恥肉の水門が内からの圧力でこじ開けられる。最初はぼとぼとと…おくれてシャーと粘りのない音を立てて、生物の送り込んだ体液と…マユミ自身の催したものがこぼれ落ちた。羞恥にマユミの顔が真っ赤に染まり、マユミの理性は砂の城のように崩れていった。

「はぁぁぁぁ、あ、あああっ。溢れ、漏れ…漏らしちゃった…。
 いやぁぁ、いやぁぁぁぁぁっ。み、見ないで、こんな恥ずかしい私を、ああ、見ないで下さい…」

 一度たがが外れたら止まらない。ボタボタと粘つく液体を排尿することで除去しながら、マユミは歯を食いしばって小刻みに体を痙攣させる。とは言っても、既に膣の奥に送られた分はどうにもならない。屈辱混じりの悪寒で全身にじっとりと汗を浮かべたまま、悩ましげな嗚咽がもれた。胸を伝って流れた汗が乳首から一滴、一滴としたたり落ちていった。
 生物の指がヒクヒクと蠢き、愛液と粘液尿で濡れたスリットに伸びる。

【ぐくくくっ】

 ずぶり。

「ひぎぃぃぃぃん!!」

 先ほどより1オクターブ高い悲鳴を上げてマユミは体をくねらせた。一瞬体を跳ね上げて痙攣したあと、シーツに顔を埋めるように突っ伏した。

「あぐ、ふぐ、ぐうううぅぅぅぅ」

 苦痛に匹敵する刺激に必死に声をこらえようとするが、狂気じみた呻きを止められない。手はシーツを掴み、引きむしるように力が込められる。その一方、暴れ疲れたのか全身から空気を抜いたように力が抜けていく。

 ずぶちゅ、ずぶちゅ。

 意図も容易く第2間接まで生物の指を飲み込んだ秘所は、淫靡な音を立てながら貪欲に生物の蹂躙を受け入れていく。指を締め付ける甘美な刺激に、生物は執拗に指を前後させる。貪るようにしがみつく柔肌の感触、指のささくれにまで絡みつくような襞のぬめぬめとした感触。得体の知れない快感に、マユミの体は完全に支配されていた。裏切り者!とマユミは自分自身を叱咤したい気持ちで一杯だった。情けなくて、また涙が溢れる。

「ひぐっ、うぐっ、ふぐっ、ううう…………っ。こんなこと、私は……ぁぁ、はあああぁぁ」

 愛液と粘液、尿でぐっしょりと濡れそぼった股間の茂みはぺったりと肌に張り付き、薄明かりの中で濡れ光った。マユミにとっては不幸なことだが、その意志に反し、敏感…というより、淫乱な体はどうしようもないほどに喜びに満ちあふれていた。

「いやっ、ああっ、ああああっ、ふぁぁぁぁ、ああっ…んあっ、くぁぁ、ひぃ…ん」

 離そうとしないため、人差し指を半ばまで突き入れたまま、僅かに顔をのぞかせた淫核を親指の腹でなでさする。にちゃにちゃとイヤらしい音をたてる愛撫と共に、ぷっくりと膨らみ空気中に露出していく。淫らな体に似合わぬ上品な淫核だ。しかし、それ故に面積当たりに集中する神経の量も多い。

「ああああああっ、ぐぁあっ、ぎぃぃ!?」

 唐突に遅い来る強烈すぎる刺激に、マユミは叫び声を漏らした。ここまで強烈だと、もはや痛みと変わらない。ショックで死にかねない、強烈な快感だ。声にならない悲鳴を漏らし、空気を求めて喘ぐマユミ。しかし生物はやめようとせず、小指の先程度の大きさの淫核を執拗につつき、つまみあげて右に左に上に下に弄ぶ。いつしかトロリとした…マユミ自身の愛液が溢れだし、生物はそれを長い舌で舐めとりながらにやついた。

 叫び声に甘い喘ぎが混じっている。
 この女は感じている。体だけでなく、心の方も。快楽にのまれた体が、精神に作用し始めている。生物が彼女を犯す準備は、ほとんど完了していると言えるだろう。

「はぁはぁはぁはぁはぁ…触らないで、ぐ、くぅぅ。き、ひ、酷い…です。あう、あうあうあぁぁ」

 トロリとした愛液に手がぐっしょりと湿っていくのもまた格別だ。今、手を濡らしているのは、先に生物が流した汚液以外のもの、マユミ自身から溢れる愛液の割合が大分増している。

【くっ、くぅくぅ。ぐげ、ぐげげげげげっ】
「ああああぁぁぁ……だめ……だめぇ……。負けちゃう、いや、負けたくない。いかされたくない」

 指先の関節を曲げて鈎状にし、愛液をこそぎ出すように執拗に前後させる。濡れそぼった秘裂は激しく前後する指先をしっかりとくわえ込み、おしゃぶりをしゃぶる赤子のように離そうとしない。

「いやっ、あっ、あっ……くぅぅっ! ああっ、んああっ…くっ。ひぃあああん。
 やめて、もうやめて! こ、これ、これ以上はっ、あああっ、あっああ―――っ!!」

 悲鳴めいた叫びが熱を帯びた空気を震わせ、悩ましげにくねっていたマユミの体が堅く硬直し、レンズの下の目が大きく見開かれた。

「あっ、ああっ! あぐぅ、い、いっ! あぅぅ、んんっ」

 体中に電気が走っているようにマユミの体がびくびくと震える。そしてマユミの体から唐突に力が抜けた。

 イってしまった…本能でそれをさとり、生物は指を引き抜いた。秘所と指の間に愛液の橋が架かり、それを旨そうに生物を舐めしゃぶる。やっと準備が整ったことを悟り、生物は愛おしげに左手で雄々しくそそり立つ肉杭を撫でさすった。


「ち、違う…わたしは、気持ちよく………ない! 感じて、ない、ですっ! だから、濡れてない、入りません…やめて、助けて」

 マユミがどんなに否定しようと、虚ろになった瞳と力の入らない体が全てを物語っていた。溢れ続けるとめどない愛液もまた、それを裏付けていた。

「やだぁ、いや、いや、いやぁぁぁ。感じてない、感じてません、だから、やめてぇ」

 それでもマユミはそう呟き続ける。そうでないといけないのだ。今まで彼女は暴力で犯されても、心まで絶頂を迎えたことはない。体は汗みずくになりながらも、いつもどこか冷めた部分を残していた。
 しかし、これは…違う。下拵えをされたとは言え、ただ指先での愛撫で体はおろか心の方まで浸食されてしまっている。今犯されれば、体はあっさりと受け入れる。ただ陵辱されたのとは意味が違ってしまう。心まで、生物の物に……されてしまう。

【おおっ、おぅ】
「いやぁぁぁぁっ、だめぇぇぇぇ。はっ、はぁぁ…。
 はぁ、はぁはぁはぁ、はっ、あぁぁ。や、やだっ…犯され、ちゃう。もう、もう嫌なのに。嫌なのに…私、まだ、受け入れる準備なんて、出来てません…。無理です、無理……ひっ!」

 マユミのつぶやきの意味がそもそも分かっていないのだろう。生物はマユミの背中から覆い被さると、包み込むようにしっかりと抱きしめた。ぬめついた腹がしなやかな背中に押しつけられ、熱く燃える肉杭が太股の間に差し入れられた。揺れる肉杭が太股に触れ、糸を引きながらメトロノームのように左右に揺れる。

「やだ、やっ。離して、はなせえぇ! は、離して下さい…離して…。
 アスカさん、アスカさん! 助けて、誰か助けて! MAGI! ミサトさん、リツコさん! お母さん! お母さん! ああ、お母さん、お母さん…」

 四つん這いの状態で体をよじり、マユミは逃れようと床の上で体をよじる。しかし、強靱な生物の腕に囚われていては、蜘蛛の巣に囚われた蝶も同然だ。
 身動きできないマユミの秘所に、鉄の固さを持つ肉杭が押し当てられる。マユミは全身の細胞という細胞が全て溶けて崩れてしまったような錯覚を味わっていた。もはやマユミの体は生物を拒否することを忘れている。

「は、はぁぁっ! シンジさん!」

 ―――入ってくる。

 熱と硬度にマユミは思わず息をのみ、尻を振って逃れようとする。空気を求める魚のように喘ぐマユミの腰を掴み直し、生物は改めて腕に力を込めた。有無を言わせぬ素早さで生物は一気に貫いた。

「あああああっ! きゃぁああああああああああああっ!」

 ぐぶちゅちゅちゅ…。

 淫靡な音が切り裂くようにマユミの鼓膜を震わせた。

「いやぁぁ!! やめてやめて―――っ!」

 女の喜びに目覚めたマユミには、その荒波のような快感に抗うすべはない。
 マユミがどう思うと、散々に焦らされた体は言葉に出来ないような濡れようだった。突起まみれの亀頭が子宮の奥をこづいた瞬間、ビクリと小さく痙攣して軽く絶頂を迎えてしまう。そして膣内の隅々に染み渡る愛液の洪水で肉杭の蹂躙を歓迎する。あらゆる方向から肉杭を締め付け、マユミの拒絶の悲鳴とは裏腹に正直な感想を漏らしていく。

「はぁぁ、はぁぁ、ふぁ、あぁ、ふぅぅ」

 挿入されて押し出された愛液が溢れ、結合部分から涎のようにだらだらとこぼれていった。煮詰めていくように快感が高まっていき、再び体の震えが大きくなっていく。

「だめ、もう、奥に届いて! あああっ、まだ、まだなの!? まだ奥に!
 抜いて、抜いてぇ! イヤなんです、これ以上、されちゃうと、私、私!」

 限界まで大きく開かれた足は太股、ふくらはぎ、指先までもが快感で打ち震える。股の間の秘裂は痛々しいほどに大きく開かれ、そこにくわえ込まれた肉杭がじりじりと埋め込まれていく。

「いやだ、いやぁ! こんなの、こんなのやだぁぁ! あっ、くぅぅ! はぁ、はぁ、あぁぁ―――っ!」

 腰がぶつかり、奥の奥を刺激された瞬間、「はぐぅ」と別人のような重々しい声をマユミは漏らした。足の痺れにも似た快感が呼ぶ激しい波。苦しそうに眉根を寄せ、心と体を翻弄する肉欲の荒波をマユミは必死にこらえる。
 肉杭を呑み込んでおきながら、明らかにサイズはそれより小さいため、きつく…だが隙間なくピッタリと締め付けてくるマユミの膣。それだけでなく、ぷつぷつと小さく柔らかいものがあるため、僅かに身じろぎしただけで、マユミが深く息を吐いただけで、それが間断無いパルス信号のように刺激を与え続けてくる。

【ふぅぅぅ、おぅ、おおおおぉぉぉ】

 だらしなくマユミの背中にと髪の毛に涎をこぼしながら、生物は喜びに体を震わせた。

「えぐっ、ふぐっ、ひっ、やだ、やだ…いやです。こんなの…。
 んんっ!? ふぁっ、あはぁぁぁぁぁ」

 ゆっくりと胸を愛撫していた手を、肋骨の浮き出た脇、きゅっとくびれた横腹、肉付きの良い腰へと滑らせていき、腰の動きがスムーズになるように、がっしりと生物は掴む。

(あああ、まさか、まさか…)

 生物のしようとすることを悟り、マユミは絶望の涙を再び溢れさせる。快楽に何もかも委ねることが出来たら…。キラリと目の端に涙を浮かべ、絶望的な戦いを行わなければならない自分の運命を呪った。

「いやぁ、いやぁぁ。汚されちゃう、ひぃぃ!」

 子宮に掻き分ける圧力に、膣一杯に広がる肉杭の感覚はゆっくりゆっくりとマユミの全身に広がっていく。まだ乱暴に激しく突き動かされていれば、あまりの刺激の速さに意識を失って当面の責め苦から逃れることもできた。しかし、全てを味わい尽くそうとするように、生物はゆっくり突き刺し、かき混ぜながら蹂躙していく。絡みつく肉襞を掻き分け、全体急所とも言うべき膣の味を堪能する。

「ああっ、あああっ、あっ、ああぁ、い、いああっ! こんなの、耐えられ…ないっ!」

 嫌と言うほど、陵辱されているという事実を突きつけられてしまう。
 奥まで挿したらゆっくりと引き抜いていく。肉杭一面に生えた突起や亀頭のカリ部分が襞を掻き分け、愛液をこそぎ出しながら露出していく。愛液を絡めてぬらぬらと光る肉杭は、凄まじいばかりに淫蕩な姿をしていた。

(け、削られるっ! くるしいっ! どうしたら、この、波に! 耐えられ、るのっ!?)

「ううっ、うっ、ううう―――っ」

 痛みをこらえるときにするようにシーツを噛みしめ、痛みで誤魔化すように額を押しつけながらマユミは悶えた。それでも内側に巨大な剛直を収めた白い腹は波打ち、鼻に掛かった甘い吐息が抑えようとしても止めどなく漏れてしまう。

「ふぅぅん、ぃ、ぅぅん、んんっ、んんっ、んんん―――っ」

 限界はすぐそこまで来ていた。いままで色々と期待や信頼を裏切られることはあったけれど、これほどまで大きな裏切りは初めてだ。
 まさか、自分自身の体に裏切られるとは思ってもいなかった。喜びに震え、蠕動しながら食いちぎらんばかりに生物の肉杭をくわえ込む。襞をからみつけ、すっかりと馴染みきった膣は生物を放そうとしない。うねるように蠢き、じゅぷじゅぷと結合部分から聞こえる湿った音は嫌でも現実をマユミに突きつける。

(わ、わたしは、そんな、女…じゃ…。ああっ、何も考え、られないっ! 激しすぎる! 壊れる、壊れちゃう! やだ、そんな腰を、ああっ!
 私、そんな淫乱な、淫らな女じゃ、ない、はず……なのに)

 自分を犯しながら義父が叫んでいた『淫乱女』という言葉がリフレインする。その言葉を心の中で否定することだけが、彼女が出来た精一杯の抵抗だった。それなのに…。

「はぁ―――、は、はふっ、い、うく…。くはぁぁぁっ!
 もう、もう限界、です…っっ! ゆるし、てっ!」

(違うの!? わたし、やっぱり淫らな女なの!? 強姦されてるのに、こんな怪物に陵辱されてるのに!)

 生物はぐいぐいと押し込み、引き抜き、かき回す。膣内一杯に広がるにゅるにゅるとした感覚に、生物もまた射精感を感じていた。腰の後ろにたまる熱い圧力が、出口を求めて暴走しようとしている。

 これで最後と言わんばかりに勢いをつけて生物は腰を叩きつけた。

 ぐちゅっ。

 両手をついて体を仰け反らせ、マユミは悲鳴を上げる。身も世もなく泣き叫ぶ甲高い悲鳴が暑苦しい船内に響き、ゾクゾクした震えが背中を鳥肌たせる。まとわりつく生物の体の感触にも関わらず、嫌悪感をも凌駕する快感にマユミは全身を擦り付けるように体を震わせた。

「あああっ、あっ、はぁっ。はげし…す…きぃぃ―――っ! ひっ、やぁぁぁ――――っ!
 なんなのこれ、ああっ、やだ、やだ、あっ、あぁぁ――――っ!?」

 痛々しいほどにか細い体は震え、剛と柔のアンビバレントの極みな結合部分からとめどなく愛液が漏れ落ちた。霞がかったように目が虚ろになり、電流を流したような小刻みな痙攣がマユミの全身を犯す。

「うぁぁ! ああっ、はぁぁぁ―――っ! もう、もうだめです〜、し、死ぬ…死んじゃいます…ひぃんっ」

 糸が切れたようにマユミの体から力が抜けた。全力疾走後のような荒い息を吐き、目を伏せて喘ぐ。彼女との心地よい余韻に身を浸しながら生物は考える。



〔でる…種…つけ……耕作…できている〕

 呆けていたマユミの意識は一瞬で覚醒し、その顔が恐怖に凍った。

「はぁはぁ、はぁ、はぁ…はぁ、んっ……ええっ!? まさか、そんな、嘘、ですよね!? そんなの、そんなこと! 嘘、やだ、だめだめっ」

 生物の考えが一瞬マユミの心に浮かぶ。意味することを悟ったマユミは信じられない物を見たような顔をして、肩越しに生物の方を見る。背中の上で顔をゆるめて涎を垂らす生物の目が、全てを物語っていた。
 抱きしめる腕に力がこもり、突き入れたまま腰を動かしてないのに、膣内の肉杭がビクビクヒクヒクと痙攣する。絶頂を迎えた直後で、敏感になっていたマユミの体はたまらずその刺激で新たな絶頂を迎えてしまう。

「あっ、ああっ! だっ、あっ、くっ……ひぃぃ! ひぃぃん、ひっ! あっ、いやっ、いやいやっ! ……い、イくっ! くぅぅぅぅっ! また、イっちゃう!
 いやぁぁぁぁ―――っ!!」

 呼び水となる愛液の洪水のただ中に、生物の汚れた精液が大量に、大量に吐き出された。奥の奥、膣内に射精されて壊れたような悲鳴が室内に響き続けた。

「きゃぁぁぁぁ! きゃあっ! きゃぁぁ――――――っ!!!
 き、えぐっ、ごふっ! はぁ、はぁ…い、いや、いやぁぁぁぁぁ…。だ、出されちゃったぁ。中に、中にぃ」

 ごぶごぶっと、壊れたポンプのような音を立てて収まりきれなかった精液が肉杭と襞の隙間から外に噴き出した。太股を伝う感触でそのことをマユミは悟る。熱い滴りに、マユミは涙を溢れさせた。

(こんな、こんなに…いっぱい。だめ、あああっ。できちゃう、赤ちゃん…妊娠しちゃう。いやだ、いやです。私の子供、私の赤ちゃんでも…でも、そんなの、そんなのいやっ!)

 ゆらめく脳裏に、ありし日の母の姿が走馬燈のように浮かぶ。母は、母はどんな気持ちで、妹の出産を決意したのだろう。

(お母さん…)

 半分意識が飛んだマユミは、生物が手を離しても這い蹲ったままだ。彼女の様子に満足げな生物は、最後の一滴までもマユミの胎内に絞り出すと、ゆっくりと肉杭を引き抜いた。ドロリとした白濁した粘液が肉杭から糸を引き、マユミの秘所からはチューブを絞るように汚液があふれ出した。白く濁った肉杭に何を思ったか、生物は背中に広がるマユミの髪で自らの汚れを拭う。

 意識のないまま上下するマユミの背中を見下ろしながら、生物は少し逡巡する。目的は達成した。時折ある、本能や僅かばかりの理性を凌駕する奇妙な命令も今はない。あとはマユミの体を丁重に王のいる部屋まで運べば彼の仕事は終了する。働き蟻ならぬ、いわば種付け蟻である彼の仕事は、それ以上でもなければそれ以下でもない。もう間もなく、彼の寿命が終わるとすれば…マユミという極上の素材を持ち帰ることで彼は有終の美を飾ることが出来ると言える。そうすれば王はきっと報いてくれる。新たな世代は、彼の遺伝子の一部を反映している。

 しかし…。

【ふん…。ぐおおおおおおん!】

 何かに挑みかかるように生物は両手を突き上げ、ライオンのような雄叫びをあげた。マユミの体を抱え上げ、まだかろうじて張り付いていたブラウスやスカート、至る所に穴の開いたストッキングを引きむしる。

「ふぅ…。ん、んんっ」

 剥きたて卵のようにぷりぷりした裸体を回転させ、正面から向かい合わせる。絶頂の余韻に浸り、脱力しきった体は一切の抵抗を示さない。諦めきったのか、それとも今の環境を受け入れてしまったのか。
 汚れきった眼鏡を、生物は握りつぶすようにして外した。ぼんやりとした目がじっと生物を見つめる。

〔俺の…だ。王の…では…ない〕

 マユミの心に伝わる生物の意志。それが意味することは今の彼女にはわからないが、なにか裏切りのようなことを考えていることだけは感じられた。彼ら、社会性昆虫と同じ習性を持つ生物に支配者を裏切らせるのだから、マユミは随分と罪作りな体をしているらしい。

「あ、ああ…」

〔犯す…………犯し尽くす………………………〕

 生物の圧倒的な意志を感じ、弱々しく首を振って拒絶する。生物の胸を押し返そうとするが、それすらも生物は楽しむ。
 両足を広げ、足の間に体を割り込ませると、まだぐっしょりと濡れた秘所に再び固さを取り戻した肉杭の先端を押し当てた。どろどろとマグマのように熱い秘所は、あっさりと亀頭部分を飲み込んだ。

「ふぁ、ふぁぁぁ。あっ、あああっ、ああぁぁ」

 反射的に力の入った指先が生物の腕に爪を立て、幾筋も赤い筋を付けていく。首を仰け反らせて悶えるマユミ。吸い込まれるような快感に誘われるまま、そのまま生物は一気に体重をかけた。

 ずぶじゅっ。

「あああっ、あああああ――――――っ!!」

 じたばたと暴れるが、脱力しきったマユミは自分の体をまともに支えることも出来ず、生物が身を乗り出すにつれ、上半身はベッドの下にずり落ちていく。

「あああっ、あっ、いやぁ―――っ! ああ、ダメ、だ、ダメですっ! また、イっちゃう、それ以上動かないでぇ―――!」

 下半身をベッドの上に残し、頭を床に擦り付けるという不安定な姿勢でマユミは世を儚むような、切なく長く尾を引く悲鳴を上げ続けた。床の上に広がった髪はマユミが頭を振るたびに、右に左にはね、たっぷりと含んだ汗と粘液を飛び散らせる。

(ああっ! ああっ! 嫌なのに、嫌なのに! からだはっ)

【うほ、うほぉぉっ!】

 盛りのついた猿のような声を上げ、生物の腰の動きがよりいっそう激しく、リズミカルになる。ただ突くのではなく、円の描くように腰を回し、あるいは痙攣したように激しいピストン運動を行う。

「うんっ、あふっ、んはぁっ…あ、あああっ!」

 白い太股に挟まれた垢じみた灰色の臀部が揺れ動き、アンバランスな美醜の極みを見せつけた。

「うあっ、あっ、はぁっ! はっ、はっ、はぁっ、ああ〜」

 何か探し求めるように両腕が周囲をかきむしり、物の区別無くきつく握りしめた。たぷたぷとマユミの豊かな胸が揺れ、色っぽく艶めかしいマユミの視線に誘われるように、生物の腰の動きはますます激しくなっていく。

「いやぁぁぁぁっ!! また、また、イかされちゃう、イかされるっ!」

 いじめてくれと言わんばかりのマユミの懇願を新たな糧にし、魔宴とも言うべき性の舞踏は終わりそうにない。

































「はぁぁぁ……。ぅぁっ、ぁぁ…………はうっ」

 あれからどれくらい弄ばれ続けたのだろう。
 時間の感覚はほとんどない。
 またビクビクとマユミの体が震え、根本まで挿入された肉杭をきつく、やさしく膣全体で締め付けた。僅かに遅れて、生物の腰の動きがまた一段とペースを早める。充血しきり、元の姿と見分けもつかないくらいに潤った秘所は、それでも深く柔らかくピストン運動を受け止めるのだ。

(また、また、中で…一杯、どこまで、底なし…なんですか…。もう、限界…はやく)

 とろけるような官能のうねりに意識を朦朧とさせながら、マユミは意識を保つためにぎゅっと強く手を握りしめた。堅い金属の感触がかろうじてマユミの意識を、こちらの世界へ保つ指針となる。もう、何回自分が絶頂を迎えたのかマユミにはわからない。愛液と精液の混合物は、白い腹部を黄色く彩り、半ば渇いてゼリー状になっていた。

「ああ、はぁ、はぁはぁ、は、あぁぁ。熱い…熱いの。もう、だめぇ……」

 拒絶の声も、悩ましい表情と合わせてかえって生物を誘っている。生物は再び深く、深く肉杭をマユミの秘所に突き立てた。痛々しいほどに足を押し開かれ、体を曲げられたマユミの体が抗議の悲鳴を上げる。

「うぐっ、ぐぎっ、ひぃぃ」

 天を仰いだ生物の首がぶるぶると震え、食いしばった口から水気の少ない妙に粘ついた涎が垂れた。骨が軋み、痣が残るほど強く太股を握りしめ、ほとんど痙攣のように小刻みに腰を打ち付け続ける。
 永遠とも思われた壮絶な生物のスタミナも、遂に尽きる時が来たのだ。

【おああああっ、ぐぉあっ、あっ、あおおぉ、おお……】

 結合部から遂に朱混じりの精液が吹きこぼれ、生物の体から波が引いたように緊張が消えていく。ごふっ、ごふっと荒い息を吐きながら、遂に生物は前のめりに崩れ落ちた。両者の体が重なるやたら粘ついた音が響き、両者の荒い息が世界の全てのように和音を響かせた。

「はぁはぁはぁ、はぁ、あぁぁ……ああっ、あぅ(やっと、やっと)」
【はふっ、はふっ、はふっ、はふっ】

 犬のように舌を出し、マユミの胸の谷間に顔を埋めたままゆっくりと生物は玉の滴となった汗を舐め取る。張りのある乳房に手を添え、弾力を確かめるようにゆっくりと撫でさすった。

「はぁ、あぁぁ…な、なんて………しつこい…の」

 そう呟きながら、ゆっくりとマユミは生物の頭を撫でさすった。優しく、しかししっかりと胸に抱きしめる。思ってもいなかった積極的なマユミの行動に、胸の谷間に顔を挟まれたまま、生物は嬉しそうに鼻を鳴らした。

「あ、あぅ。また…」

 フンフンと鼻を鳴らす音と、ぴちゃぴちゃと舌なめずりする音が、程なくマユミの神経を逆立たせるように響く。
 嫌悪と限界を迎えた体を責めさいなむ快楽に顔をしかめつつも、マユミはじっと生物の頭を観察した。もごもごと動く頭は完全に胸に挟み込まれ、その目は一部も露出していない。

 ゴクリ…。

 舌を噛むことでぼやけて鈍る意識を奮い立たせる。これからの作業は、僅かなミスも一瞬のタイミングの狂いも許されない。思いの外大きな音を立てて唾を飲み込むと、ゆっくりとマユミは金属の留め金をずらした。カチリ…と妙に渇いた音に全身を鳥肌たせる。

「う、うう……(お願い、気づかない…で)」
【ぐふ、ぐふ、ぐちゅ、れろ、むふー】

 幸い、舌での愛撫に夢中になっていた生物はその音に気がつかない。奇妙に鼓動を早めるマユミの心臓に対しても、愛撫に対して緊張していると思ったのだろう。完全に無防備に、柔らかい頭部をマユミの目の前にさらしている。

「あ、ああっ。そのまま、そのままです…よ。動いちゃ、ダメ…はぁ」

 ゆっくりゆっくりと右腕が動き、冷たく無骨な金属が右腕に重くのし掛かる。深く息を吐きながら、マユミは動揺を押し殺すためにきつく手を握りしめた。

(か、覚悟…してくだ…さい。よくも、今まで、好き勝手、に…!)

 今まで彼女が執拗な愛撫に耐えて意識を保ったのは、全てこのため。性交の悲鳴に紛らせながら、密やかに腕を伸ばし、床に転がっていた銃を手に取るためだ。そして生物が完全に油断しきり、この様に隙を見せるのを待つためでもあった。
 銃口が至近距離から生物の頭頂部に狙いを定め、マユミの冷たい汗がこめかみを流れ落ちる。

(私の心の奥にまで踏み込んできた! 最低、悪魔! 思い知りなさい!)

 マユミは歯を食いしばり、引き金に掛かる指先に力がこもる。

(写真とは言え、シンジさんに私のこんな姿を見せた! 許さない、許さない! 絶対に、許さない!)

【ぐあっ!?】

 唐突に生物は顔を上げると、マユミの顔をのぞき込んだ。そして混じりっけのない殺意を帯びた瞳、自分の頭部に狙いを付ける銃口に恐怖と驚きの混じった目を向ける。

(気づかれた!?)

 あまりに剣呑な気配を出しすぎたのか、それとも緊張しすぎて不自然なほどに体を硬直させてしまったからか。いずれにしても、生物は銃をはねとばそうと腕を伸ばしてくる。
 マユミの体は恐怖に震え、指先が凍り付いたように動かない。マユミの心を死の予感がよぎる。今度自由を奪われれば、生物は容赦しないだろう。死ぬまでマユミを陵辱しかねない。

「いっ、やぁぁ―――――――っ!!」

 バスン!

 鈍く重い音が響き、壁一面に大輪の紅い花が咲いた。
 生物は傷一つない顔に笑みを浮かべながら、血の滴で顔を真っ赤に染めたマユミの顔を見下ろした。生物の容赦のない一撃がマユミに傷つけたのか、あるいは目をつぶって撃った弾が間違ってマユミに当たったのか―――いや、違う。

【うぉ、おおぉ?】

 のろのろと首を回し、生物は筋肉と骨と血管の切れ端をのぞかせた左腕とかつて呼ばれていた残骸を見つめた。糸ミミズのような極小の触手が赤黒い肉の中でじたばたと暴れていた。噴水のように血が噴き出し、滴ったそれは血のカスケードとなってマユミの体を赤く染める。

「うぁ、うぁぁ、ご、ごめんなさい」

 思ってもいなかった悲惨な結果に、マユミは歯をガチガチと鳴らしながら場違いな許しを請うてしまう。ふと気がついたように、生物はマユミにぎょろりとした視線を向けた。

「ひっ――――」

 冷たいガラス玉のように視線。痙攣するようにマユミの指が引き金を引き絞った。

 バスン、バスン、バスン、バスン、バスン!

 次々と撃ち出される弾丸が生物の頭部に次々とめり込んだ。瞬時に生物の頭部は血の詰まった水風船のように弾け飛び、マユミの怒りを象徴するような血の雨をまき散らした。

「ふぐっ!? ふぐっ、うぅ、ううぅ―――――っ!」

 顔と言わず体中に生物の残骸が降り注ぐ。ゼンマイが切れたからくり人形のようなでたらめな動きをしながら、生物の体は激しく腰を前後させた。マユミの胎内に挿入されたままだった肉杭は、信じられないほど大きく膨れ上がり、血が混じった精液を絞り出すように吐き出し続けた。
 自身の死を感じた瞬間の、最後の生命反応だ。可能性があろうが無かろうが、構わず精液を吐き散らし遺伝子を残そうとする。

「うあぁ、うあぁ! やめてやめて! 抜いて! もういじめないでぇ――――っ!!」

 苦痛に目を血走らせながら、マユミはなおも引き金を引き続けた。全ての弾丸を撃ち尽くしてもなお、何度も引き金を引き続ける。胸に、たるんだ腹に、肩や腕に次々と弾丸がめり込み、生物の全身から大量の血が噴き出した。ドクドクと血が流れ出すのに比例するように、生物の動きが緩慢になっていく。遂に前のめりに倒れ込むと、大きく溜息を吐く様に体を動かし、それっきり動かなくなった。
 同時に、力の抜けたマユミの手からこぼれ落ちた銃が、音を立てて床に転がった。

「あ、ああぁぁぁ。し、死んだの…? わ、私、ころ、殺しちゃった…んですか?」

 肯定するように、マユミの胎内で肉杭はドンドン萎びていった。もはや圧倒的な圧迫感は微塵も感じられない。

「ご、ごめんなさいごめんなさい。殺したく、なかった。でも、でも、仕方なかった…。仕方なかったんです。ご、ごめんなさい」

 必死に謝りながら、マユミは自分の意識が闇の奥に沈もうとしているのを感じていた。陵辱と今の銃撃が終わったことで、酷使されていた精神の糸が切れようとしているのだ。

(あ、ああっ…終わった、終わったの?)

 今はとりあえず。
 無意識の内の仕草で、冷たくなっていく生物の体を抱きしめながら、マユミは意識を保つという勝ち目の全くない戦いを放棄した。今はただ、ほんの僅かな時間で良いから休みたい。

(眠りたい、このまま闇の奥へ落ちていきたい…。でも、でもでも)

 アスカが、レイが、マナが、ヒカリが助けを求めて待っている。自分が今受けたのよりもっときつい陵辱を受け、今にも死にそうになっている。

「いか…なくちゃ。助けに、行かなく…ちゃ」

 強く言い放った彼女の言葉とともに生物を押しのけようと肩にかけられた腕に力が入り、急速にその力が抜けていく。つぶやきは途中で夢の中のつぶやきへと変わった。静かにマユミの体から力が抜けていき、ゆっくりと彼女は目を閉じた。ほんの少し、僅かな合間の休息をとるために。生物の死骸を抱き枕に、血と汚液で全身を化粧したまま。

(助けないと…シンジ…さん。私に、勇気を、一生懸命生きる、あなたの…勇気を)









そして話はそれぞれへと続く




後書き

 何も言うな。(・ω・)

 さて、次回はマユミ嬢の友達救出作戦&過去編その2。
 マユミの知られざる過去がまた一つ明らかに。 ひーさーんーだーぞー。
 っておいおい、一体どれくらいマユミの描写を増やすつもりだ私。
 しかしあれだね、好きだからいじめたいって奴かね。
 次回は準備みたいな物だから、すけべ描写は控えめか。
 引き続きネタ募集だぜ、セニョール。

2003/10/04 Vol1.02