< 注意 >



この話には痛い描写が含まれています。
烏賊同文。








─ 異種遭遇 ─

「DEMON SEED」



書いたの.ナーグル








「出ていくというのか?」
「さっきからそう言ってるでしょう。もうこの家にいるのはたくさん」

 豪奢で華美な、それでいて趣味の良い調度に囲まれた中で彼女は、アスカは吐き捨てるように言い放った。まだ十代半ばだというのに、その物腰、口調、なにより言葉に含まれる決意は年齢以上に大人びていた。
 いや、確かに見た目だけなら…18歳といっても通用する、かもしれない。実際には、まだ15歳の小娘なのだが。
 まだ赤みの強い豊かな金髪は蜂蜜の川のように背中に流れ、強い意志を感じさせる青い瞳は凛と輝く。きめ細かい白い肌は興奮で桃色に紅潮し、薄黄色のドレスはまだ発展途上だが、メリハリの利いた肢体をより美しく見えるように包み込んでいる。中世ヨーロッパで統一された調度類の中に彼女が立っていると、文字通り、物語や歴史書の中からお姫様が抜け出てきたようにも見えた。ただし、竜や魔法使いにさらわれて勇者の助けを待つのではなく、自ら剣を取って先陣を切るタイプのお姫様だったが。

「今まで育ててくれたことは、もちろん感謝してる。でも、だからってなにもかも、勝手に…。
 私はパパの人形じゃない! 生きてるの! 自分の意志があるの!」

 彼女の目の前には、一人の男がいる。紫煙を吐き出すと、つまらなそうに呟いた。

「だが、半人前の小娘だろうが。おまえは自立して生きているわけではない。まだ16…いや、15か。まだハイスクールを出てもいない。親の庇護下で、親に従って生きる年齢だ。そうだろう? だいたい、ここを出ていってどうやって生きていく気だ」
「生きてやるわ。どこででも」
「蝶よ花よと育てられたおまえが、厳しい現実の中で生きていけるのか?」
「…一人じゃないわ。生きていけるわ」

 少し考え込み、ためらいがあったが、しかしアスカははっきり言った。一度こうなったら、どうにも強情な娘だということを彼は知っている。もはや言葉による説得を聞く状態ではない。

 決意は固いと言うことだ。

 そのことを敏感に感じ取ったからだろうか、アスカの目の前に威厳を持って座る男性…アスカ曰く『パパ』は忌々しそうに顔をしかめ、言葉を探るように手を顎に当てた。どうやって説得しようかと、まだ考えあぐねている…そんな感じに見えた。アスカがなぜ怒っているのかは、当然ながら分かっているし、怒るのも無理はないと思う。だが、それを認めるわけにはいかないのだ。

「…大層なことを言うな。なるほど、確かにおまえは秀でた能力を持っているよ。さすが、あいつの娘だ」
「ちゃかさないで。私は本気よ」
「ちっ」

 アスカに歩み寄る様子はないようだ。我が娘ながら、なんとも強情で頑固な奴だ。そう言わんばかりに厳しい顔をする。乱暴にほとんど吸っていない葉巻をクリスタルの灰皿に押しつけて揉み消し、何とも言えない目で愛娘を睨む。
 直接思い止まれといっても聞きはしない。なら、搦め手で行ってみるべきか。
 『ふぅ』と大きく息を吐き出して声を落ち着ける。

「出ていくと言うが、分かっているのか? この婚約は、我が惣流家の発展にとって欠かせない。あそこまで大仰に周囲に宣伝までしたのだ。今更反故にはできん。
 今おまえが出ていけば、いや、逃げ出せば…。私はもちろんこの家で働いている皆が路頭に迷うことになるかもしれんぞ」

 その中にはアスカを実の子のように慈しんだ人の良いメイド頭、色々遊び相手になってくれた庭師、どこか軽薄なところがあるのが、その実正義感の強いボディガード兼運転手。口うるさいが心底自分のことを案じてくれた執事もいる。高飛車で我が儘、傲慢な所はあるがそのじつ、心優しく他人の不幸を無視できない。それがアスカという娘だ。
 きっと絶望に顔を染め、『ちくしょう…』と口汚くののしりながらも家に残る。

(許せ…アスカ)

 勿論、娘の気持ちは分かる。嫌で嫌で仕方がないだろう。20以上も年の離れた、悪趣味な御乱行で名高い貴族の子弟との婚約なのだから。そもそもこの婚約も、アスカを見初めたその貴族からの肝いりの指定だ。先日の夜会の時に顔合わせをしたが、相当に向こうは気に入ってくれた。勿論、慣れない美酒に酩酊したアスカを介抱するという名目で、彼とアスカが一時所在不明になったことは知っている。
 何があったにせよ…自分を恨むだろうことは想像に難くない。現実に、目の前で自分を敵を見るような目で見ているのだから。
 しかし、これでより大きなコネを作ることができるのだ。正式に結婚し、アスカが跡取りの子供を産むようなことにでもなれば、惣流家が政府内で振るうことができる権勢は計り知れない。政敵の、忌まわしき仇のキールを追い落とすことが出来るかも知れない。しかし、駄目になったら?

(後に退けんのは私も同じなのだ。アスカ)

 アスカは力無く項垂れるはずだ。
 かつての『彼女』と同じように。そして…彼女と同じように、いずれ彼の前から姿を消すかもしれない。それでも、彼は娘を売り渡す(彼はそう考えていないが)ことに迷いはなかった。これが惣流家の、なによりアスカの幸せのためなのだと堅く信じて。


 しかし…。


 彼の言葉に、アスカは目を伏せ…猛々しくも挑戦的に睨み返した。

「わかったわ…なんて言うと思ったら大間違いよ」
「なに? 分かってるのか、アスカ? ことは私たちだけではない、使用人達も…」
「みんなも納得してくれた。みんな、みんな私を応援してくれている。パパ、あなたの思うとおりにはならない」

 愕然とした表情で彼は娘の顔を見つめた。
 嘘や強がりを言っている…わけではない。あの真っ直ぐで濁りのない瞳は、雄弁に娘の気持ちを言い表している。

「馬鹿なっ!」
「馬鹿はあなたよ、パパ。なんでも思い通りにできると思いこんでいた…。確かに、この家の中では絶対者だったわ。パパに逆らえる人なんて存在しない。でもね、それは絶対的な事じゃなかったのよ。
 …ママみたいに、我慢できなくなったら、出ていくことだって、できるんだから」

 それは決別の言葉だった。
 娘は出ていく。それは何者にも変えられない。だが、彼はあきらめることはできなかった。認めることはできなかった。

「くっ、おい娘を、アスカを押さえろ!」

 反射的に卓上のスイッチを押し、別室に待機しているボディーガードを呼び寄せようとする。だが、扉を蹴破るようにして室内に入り込む黒スーツの男達は勿論、通話機からの簡潔な返事一つない。

「なっ!? おい、どうした! 返事をしろ!」

 父親の狼狽ぶりを複雑な思いで見つめつつ、アスカは静かに口を開く。

「呼んだって無駄よ。パパが無体な徹夜仕事を強要するから、みんな夢の世界でお休み中」
「なに、どういうことだ?」

 こんな小さな男だったんだろうか? あの絶対者として自分に接していた父親は。

「マユミを甘く見すぎていたわね。私もつい最近知ったんだけど、あの子はね、一種のテレパスなのよ」
「テレパス? いや、だがそれがどうした?」
「…顔見知りのあの子が、黒服達に睡眠薬入りのコーヒーを飲ませるなんてお茶の子さいさいなのよ」

 もっとも、多少の精神感応ができる程度…共感能力つまりは感情移入能力が高い程度なので、そう大した能力の持ち主とは言えないが。そこまで望むのは酷だろう。それでも、相手の警戒を多少緩和する程度のことはできる。たとえそうでなくとも、あの柔和な顔のマユミが睡眠薬入りのコーヒーを薦めるなんて、誰が想像するだろう。

「なんだ…と。馬鹿なっ! あの小娘、よくも恩を仇で返すような真似を」
「読み損なったわね。パパが私を留めようとして打つだろう手段…それくらい簡単に分かるわよ。それに、ね」

 やおら目つきを鷹のように鋭くし、大きく右腕を振りかぶる。そして一切の躊躇いもなく振り抜いた。父の深いしわの刻まれた頬に、螺旋状に回転しながら右拳がのめり込み、椅子や背後の調度品を巻き添えにして彼の体が宙を舞った。

「ぐ、ぐぉおおっ!?」
「なにが『恩』よっ! あんたがあの子にしたことを考えてみなさいよ!」
「ひぃ、ひぃぃ…」

 さらに腹に蹴りを一撃。

「あの子が、マユミがどんな辛い思いをしてきたのか…知らない訳じゃないでしょうが!」
「ぐ、ぐぇぇぇ、た、助け…」

 もう一撃、さらにさらにもう一撃。

「それに私が、私が! 私がなにをされたのか、あいつがなにを考えていたのか…分からなかったわけないでしょう!?」

 肉を打つ鈍い打撃音が、アスカの涙声の罵声と、必死に助けを求める中年男のあぶく声が絶え間なく室内に響く。

 やがて、アスカの激情もいくらか和らいだ頃、ようやくアスカは手を止めた。ドレスは皺くちゃになり、全身から流れ出た汗が染みこんでまだら模様を浮かべている。そして整ったアスカの顔は涙と鼻水で彩られ、ヒックヒックと肩と背中はしゃくり上げ続けていた。

「う、ううっ…ごめんなさい、ごめんなさい。パパ、殴ったりして、ごめんなさい。
 でも、でも…許すわけにはいかないのよ。
 私だけなら良かった。それなら、辛いけど惣流家に生まれた宿命として受け入れもしたわ。でも、あの子まで…たった一人の、私の友達まで巻き込むなんて。そんなこと、そんなこと許すわけには行かないのよ」

 大好きだった父親…。厳しいところもあったが尊敬できる人物。絶対者でもあった。
 だが、どこで間違えたのだろう?
 家名を高めること、権力をつかむことが幸せと思いこんでしまって。ついには心の底から愛していたはずの家族さえも、道具として扱ってしまう。たとえ、失われた母を取り戻すためだったとしても…。その苛立ちがあんな事をさせる原因だったのだろうか。考えたって答えは出ないだろうが、それでもアスカは考えた。自分も、彼のようになってしまうことがあるのだろうか。

(そんなことない、そんなわけ、あるはずない)

 すがりつくように自分を見上げる父を一瞥し、アスカは静かに部屋を後にした。扉を抜ける寸前、こんな言葉を呟いて。

「さよなら、パパ。私、ずっとあなたの娘でいたかったわ。本当よ」























「この、調子に乗るなぁ!」

 ヒカリに気を取られた一瞬の隙に武器を奪われた。事実上、その時点で終わってしまっていたのだが、アスカは諦めなかった。習い覚えた拳法の蹴りを繰り出し、掴みかかる生物の腕を小手回しではねのける。生物の一体が頭部を粉砕されて動かなくなり、一体は頭から床に激突して動かなくなった。
 素晴らしい奮戦だが、しかし、多勢に無勢はいかんともしがたい。

「ぐぁっ! 髪を…」

 背後から忍び寄った生物の腕が伸び、捕まえてくれと言わんばかりに靡いていた髪の毛を無造作に捕まれた。鋭い痛みがアスカの全身を引きつらせ、頭皮を引っ張られて動きが止まってしまう。そしてその隙に生物の腕がアスカの体にとりついた。

「や、やだぁ! 離して、はなしなさいよ!」

 遂に取り押さえられ、アスカは悔しそうに無念の叫びをあげた。彼女のように気の強い女性なら、なおさら取り押さえられて見下ろされると言う状況を屈辱として感じる。あの日以来、自立を決意したあの時から、その思いはますます強くなっている。
 押さえ込まれてもなお、渾身の力を振り絞って暴れようとするが…。

「くっ、この! ぐぅっ! くぅ…」

(ビクともしないなんて…)

 銃でかなりの数の生物をうち倒したが、それでもヒカリを襲っている2体を含めて5体の生物が残っていた。つまり、アスカは3人がかりで押さえつけられているのだ。3人がかりとは言え、スーツの力で通常の数倍の力を発揮できる彼女が動けないと言うことは、彼らは見た目を遙かに超える剛力を持っていると言うことになる。
 さしものアスカもこれではどうすることもできず、遂には後ろ手にねじりあげられて顔を床に押しつけられてしまった。

「くっ、ちくしょう、こいつら…」

 顎を動かすこともできないくらいにがっちり押さえ込まれ、アスカは自分がどうやっても逃げられないだろう事を悟った。
 認めたくないが、自分も目の前のヒカリと同様に服を剥がれ、犯されるだろう。…三文小説やドラマのような展開が待っているのだ。

 血が滲みそうなくらいに歯を噛み締め、アスカは自分を押さえる生物を睨み付けた。聡明な彼女にはいたいほどわかる。99%以上逃げられる可能性はない。だがそうとわかっていても、アスカは諦めきれなかった。
 今更綺麗な体ではない、それでも、彼女は大人しく蹂躙されるなどとても耐えられない。特に、愛する人ができた今では。

(そうよ。あいつ以外…嫌なのよ。たとえ、あいつが見てるのが私じゃなくても、それでも。
 なんとか、振り払うことは…)

 表面上は大人しくしつつ、目だけを動かして周囲と生物を観察する。そしてまだ何とか動く腰を振り、大げさにならない程度に手がふりほどけないかと力を込めるが、やはりビクともしない。

(わかってはいたけど…ああ、どうすれば)

 今の彼女は、網にからめ取られた元気だけはいい小鳥。
 どんなに強がっても、もう決して逃げられない。




 やがて泣き叫ぶヒカリの痴態を観察するだけでは我慢できなくなったのか、リーダーらしい特に肥大した生物を取り憑かせた生物がアスカに近づいてきた。

「ひっ…なに?」

 鼻腔を刺激する腐敗臭がいっそう強くなる。反射的に目を見開いたアスカの目に、不気味な影が飛び込んできた。
 垢と脂肪がまとわりついた粘つく体をしたゾンビだ。
 他の連中と違い、1関節分長くなった指には吸盤ではなく小さいが鋭い爪を生やし、頭部には人間の大脳部分が残っているように見えた。なにより枯れ木のように痩せて骨盤や肋骨の形が浮き出てる他の寄生体と違い、でっぷりと太った脂肪の塊のような姿が特徴的だ。

(脳が残ってる? つまり、人間の記憶も持ってるって事?)

 悪い想像をしてしまう。
 相手に人間並みの知性があるとすれば、よほど考えて行動しないとかえって状況が悪くなるだろう。下手に計略をかけて一旦戒めから逃れられても、再度捕らえられたときはもう同じ手は利かないはずだ。

 アスカは冷静にそう考えたつもりだったが、実際はそう考えることで、すでにアスカの行動はかなり制限されてしまった。

 だが、幸いというかアスカは短絡的に行動しなくて良かったのかもしれない。
 その生物は人間部分の口(他と違い、腐乱した唇がまだ残っている)を歪めると歓喜に溢れんばかりの声を漏らした。

【お、おおおぉ、おぉん。う、うつくし、おんな】

「しゃ、しゃべった…言葉を」

 とどのつまり、人間並みの知性をしっかりと持っている。ただ記憶を利用してるだけかもしれないが、それでもこいつは知性と呼べる物を持っている。当たって欲しくない予想が当たり、ビクッと体をすくませるアスカ。

 そんな彼女に、生物は遠慮なく顔や手を近づける。

「なにを…あっ」

 明らかに欲情してるとわかる動きで、アスカの露出した部分、頬や髪の毛を遠慮無しに撫でさすった。粘つく垢がまとわりつく嫌悪感、同時に鼻をつく悪臭にアスカは顔をしかめた。そんなアスカの様子が気に入ったのか、それとも髪や顔を撫でるだけのことがよっぽど気に入ったのか、アスカの目の前でぶらぶら揺れていた生物の生殖器がむくむくと肥大化していった。
 いくらなんでも若い娘が目の前で見る光景としては、あまりにも救いようのない光景だった。べたべたした粘液の感触と汚臭、そして情けなさに、アスカは眉根に皺を寄せてうめくように呟いた。

「この野郎…。あんた達になんか、絶対に許さない!」

 自分が最も相手をしないタイプの人間によく似た寄生体。脂肪ばかりが多く、異臭を放つ清潔と言う言葉からほど遠い、自我が極端に肥大したわがままな人間そっくりだ。あの呪わしい、自分の初めてを奪った男にそっくりだ。立場を利用して強引に薬を混ぜた酒を飲ませ、介抱すると称して屋敷の裏庭で事に及んだあの男に。
 それが自分に手を触れることなど、決して許されることではない。まかり間違ってもそれが自分を凌辱するなど…。火のように熱く、厳しい目でアスカは睨み付け罵声を浴びせる。

「来るな! 放せ! 撫でるなクソ虫! デブ、化け物! 地獄に帰れ馬鹿野郎!」

 悪罵の意味が分かっているのだろうか。それともアスカの状況に相応しくない強がりが嬉しいのか、面白そうに生物は身を仰け反らせた。もしかしたら、気の強いアスカを屈服させるまでの過程を思い描き、愉悦に身を揺すっているのかも知れない。気の強い女性であればあるほど、征服する課程は面白いらしいから。

【おお。おおきぃ、いいこを…うむ。たのしぃ】

 生物はアスカのプラグスーツを破かんばかりに大きな胸と丘陵のように滑らかな曲線を浮かべる腰を見つめ、さしもの彼女も蒼白になる一言を漏らした。

「いいこって…ちょっと待ちなさいよ。馬鹿、コラ! 冗談じゃないわ!
 誰があんたらみたいな不気味な化け物を身籠もるって!」

 わずかにアスカの声に恐怖という色が混ざる。
 初めてアスカが見せた怯え、弱気───アスカの語尾が震えたのを合図に、生物たちは一斉に腕を伸ばした。

「きゃああ────! 駄目駄目駄目、駄目だってば───!
 やめろ、はなせ! 馬鹿、こら! なんてことすんのよ! 手を放しなさいよ!
 いい加減にしないとただじゃ済まさないわよ!! 一体私を誰だと思って…、
 あ、駄目ぇ!」

 アスカを包むボディ・アーマーとプラグスーツを引き裂かれる。赤いスーツの切れ端が飛び散り、アーマーの肩当てがむしられ、胴体部の装甲のつなぎ目が切断される。生物にとってはリンゴの皮を剥くより気安く、たやすい作業だ。

「きゃあ! やめてぇ!」

 ベルトを引き毟り、拘束をゆるめることなくプラグスーツに爪や歯をたててビリビリと引き裂く。鋭い歯が総毛立った体をなぞる。そしてビィーッとシーツを裂くような音がしたと同時に、アスカの体から重苦しく、胸や腰を締め付ける感覚が無くなっていった。堅い音を立ててボディ・アーマーが抜け殻のように床に転がった。
 本来なら解放感に喜ぶはずなのに彼女の心は晴れない。

「そっ…そんな、こんな簡単に。なんで素手てボディアーマーを引き裂けるのよ!?」

 アスカの疑問に敢えて答えるなら、生物の筋力が異様に強力であることがひとつ、そしてもう一つは汗のように滴る体液が非常にゆっくりとだが、繊維を腐食させるからだ。生物の体液は有機体には一切の影響を与えないが、ある種の高分子化合物、つまりプラスチックを腐食させてしまう。
 物の数分としないうちに、3体の生物の前には、わずかにプラグスーツの残滓のみを身につけた姿のアスカが仰向けに横たわることとなった。万能ツールでもある腕輪、予備弾倉を隠してあるベルトなどもむしり取られ、装身具として残っているのは髪飾りのようにも見えるヘッドセットのみ。

「くぅ、来るな! 来るな、来ないでよ! 近寄るな! 触るな!
 あんた達なんかに、あんた達なんかにぃ!」

 千切れたプラグスーツの切れ端をバスタオルのように胸に抱き、アスカはそれで胸と股間を隠しながら尻ではいずりながら背後に下がれるだけ下がる。───口調はまだ、強気だが、微妙に震える豊かな髪は彼女の不安を如実に語り、知らず知らずの内にぽろぽろと流れる涙が全てを雄弁に物語っていた。
 やがて背中が壁に当たり、退路が無くなったことを彼女に告げる。そろそろ、アスカの物語は次の章に移る頃合いだ。

「い…や」

 絶望という光を目に浮かべ、アスカは自分を見下ろす生物を見上げた。
 薄暗いはずの照明がやたら眩しいのは何故だろう、やたら生物の姿がぼやけるのは。頬に熱い物を感じるのは?

【お、おかぁ。こどぉ…づく、りぅ】

 前と横を生物にふさがれ、背後は高張力鋼の壁が塞ぐ。
 どこにも逃げ場はなかった。

【よろこ…ぶ、きも…いい。こど…も…いい】

 袋の鼠と言う言葉が、これほど的確な状況もそうそうないだろう。小馬鹿にするように、あるいはアスカの心を折ろうとするかのように生物は屈辱的な言葉をかけ続ける。要約すれば子供を作ろう、気持ち良いことをしようと。助詞も助動詞もないいいかげんな文法だが、誰にだってわかる。

(こんな、こんなことって…)

 絶望に耳をふさぎたかった。消えてしまいたかった。狂いたかった。
 だが、自分はそう強くないが、狂ってしまえるほど弱くもない。中途半端なのだ。
 そしてとても頭が良い。この先の展開は読めてしまう。

「う、ううっ、いや、いやよ…」

 結局、抵抗するだけ無駄だろう。
 だからアスカは抵抗するのをやめた。結果が見えているのなら、如何に被害を少なくするかが大事だからだ。そしてチャンスができるを必死に待ち、その時に全てを賭ける。もしかしたら、ヒカリや自分に実害が出る前にそのチャンスが来るかもしれない。戦いの経験が多い彼女ならではの考え方だった。他の隊員だったらとてもそこまで割り切れないだろう。
 とは言うものの、アスカだって勿論納得しているわけではない。その覚悟が徹底していないことは、その緊張した体から見ても明らかだ。

(ただじゃ絶対に犯させない! 絶対、絶対にお前達を皆殺しにしてやる!
 ううっ、ヒカリ、マユミぃ…お願い、勇気をちょうだい)

 涙をにじませ、両腕で胸を隠しながらアスカは悲痛な覚悟を決めた。
 明日のために、今という時間を切り捨てる。








 アスカから逃げる気配が無くなったのを確認して、唾液を絞らない雑巾のように舌から垂らしながら、リーダー格の生物がアスカにゆっくりと腕を伸ばした。他の生物たちは不満そうだが、大人しく一歩後ろに下がる。序列ははっきりしているらしい。

【いい…おおっ】

 手で隠されていても、隠しようのないアスカの胸の谷間に、お預けを喰らったイヌのように、ハアハアと荒い気を吐く。むわっとした、生臭い歯槽膿漏の人間のそれとよく似た悪臭がアスカに襲いかかった。

「…ぅぅぅ」

 とっさに息を止めて顔を背けたが、それが気に入らなかったのか生物はうなり声をあげるとアスカの顎を掴んだ。

「あぅ」

 形の良いあごを捕まれ、強引に顔を向けさせられる。まだ残る矜持で僅かばかりに抵抗するが、するだけ無駄だった。

「ぐああっ!?」

 指が顎にめり込んできた。骨が軋むような苦痛がアスカを呻かせる。
 たまらずアスカは生物と正面から向き合うことになる。生物の顔をまともに見なくて済むよう、カーテンのように彼女の目の上にまばらにかかった髪の毛は、せめてもの救いだろうか。
 いや、慰めというにはささやかすぎる。
 アスカはまた口惜しそうに歯を噛み締めた。
 それでも彼女は涙のにじんだ目をしっかりと見開き、険しい顔で生物を睨み付けた。

【きぃ…すぅ】

 その強気の態度が気に入ったのか、それとも気に入らなかったのか。
 人間の男性性器が勃起状態になり包皮の中から飛び出すように、赤黒く、柔軟で長い物体が生物の─── 寄生された人間体の ─── 口から吐き出された。

 著しく変容を遂げているが、それは舌だ。

(な、な、な、なによそれ〜〜〜!?)

 虚をつかれたアスカは驚き、目を見開く。反射的に座り込んだ姿勢から立ち上がろうとするが、わずかに固まったアスカに向かって、生物の舌は遠慮なく襲いかかった。
 蛇か何かのように生物の舌が伸び、アスカの頬や口元、唇をべろべろと舐め回す。雨上がりの大地のようにうっすらと汗が浮いた産毛のあわだつ肌に、黄色味がかった廃油のような汚液が擦り付けられていく。これが唾液などと、とても信じられない。

「うあああ、気持ち悪い」

 さすがに驚きの声を漏らし、顔を背けるアスカだったが、動揺したのは最初だけで、すぐに毅然とした態度をとった。瞼まで舐められたので片目を閉じ、片目だけで睨む。それは、巨大すぎる彼女のプライドによるただの強がりかも知れないが。
 ともあれ、一見して微塵の動揺を見せることなく、目を見開いて生物を睨み付け、硬く口を閉じて絶対に顔を舐められる以上のことはされまいと態度で示す。

【べちょ…ぐちょ、ベロベロ…ねちゅぐりゅ…にちゅにちゅ…じゅる】

(犬かあんたは。ふんっ! 勝手にしなさいよ)

【んぶっ、はお、びゅろ、べちょる、ぴちゃぺちゃねちゅねちゅ…】

 しかし生物はしつこすぎるくらいにアスカの顔を舐め続ける。内心、勝手にしろと思ったことをアスカは後悔した。
 顔中に嫌な臭いのする粘液を塗りたくられ、さしものアスカも息苦しくなった。鼻で息をしていたのだが、なぜか体全体が火照り、大量の酸素を求めて震える。胸を隠していた手はもじもじと動き、何かを探すように指をこすりあわせる。

(う、うぐ、体が…熱い…、息が)

 眉根に少し皺を寄せ、空気を求めてほんの少しだけ口を開いた。

「はぁ………あ、あぅ! おぐぅぅ!」

 目ざとくその隙間を見つけると、舌が別の生き物のようにそこに入り込み、硬く閉じられた歯茎を舐め回した。とっさに歯を噛み締めたから、舌を舐められたりはしなかったが、それでもかまわないとばかりに生物の舌はアスカの頬と歯の隙間を、まるで粘液を擦り付けでもするように舐め続ける。

(く、臭い…あうぅ。でも、口を開けたら開けたりしたら…)

 口は必然的に開けられず、かといって鼻腔からは悪臭が襲いかかる。
 息苦しさと精神的な嫌悪感のせめぎ合い。
 それでもアスカは我慢を続けたが、頬を横から強い力で押さえつけられ、結局、痛みと息苦しさのあまり口を開ける。

「くっはぁ、………う、うくぅ」

 開いた隙間に舌が強引に潜り込んできた。柔軟なサラミソーセージのような舌がアスカの口腔内を蹂躙する。焦らされた分余計に楽しもうとするかのように上顎をなぶり、舌に絡みつき、ドロドロとした糊のような唾液を擦りつける。

「う〜〜〜! うっ、ふっ、ううぅ〜〜〜! ぐふぅぅ〜〜〜〜〜! うううぅううぅ!?」

(いやぁ! なんなのこれぇ!? く、くさい、苦い、気持ち悪い!
 吐きそう…)

 いずれはこうなるだろうと覚悟はしていたが、予想以上の苦しさと形容しがたい味にアスカは目を白黒させて呻いた。
 調子に乗った舌は、喉の奥まで潜り込もうとしている。噛み切ってやろうと顎と舌に力を込めるが、柔軟で硬い生物の舌には、文字通り歯が立たない。僅かに食い込むがそれ以上は決して歯が通らない。それどころか、その行動はかえって生物の舌と自分の舌が激しく絡み合うだけの結果を生んだ。まるで蛇の交尾のようにアスカの舌と生物の舌が絡み合う。
 隠微な音が漏れ、それに重なるようにしてアスカのうめき声が響いた。

 にちゅ、ぶちゅ、ぐちゅ…。

「はっ、うう、うぶぅ、おぅ…あうあ、ぐうぅぅ」

 そのうち、腰を床に付けてかがみ込んだ生物は、舌だけでなくぶよぶよにふやけた唇をアスカの唇にまで押しあててきた。アスカは逃れようと上体を逸らすが、見た目に反して思いも寄らない素早い動きで背中に手を回され、強引に引き寄せられてしまう。

「あう、ううっ、んんん〜〜〜〜!!」

 ディープキスでもしているかのように、生物は激しく唇と唇を擦り合わせる。堅めの泥水のような脂肪の塊や、腐った肉片や垢がアスカの口腔内に紛れ込んでいく。

「ぐぐ、う、うふ〜〜〜、うんん!」

(き、キスは嫌ぁ!
 冗談でしょう!? なんで、なんでそんなことするのよぉ!!
 あああああ、イヤぁイヤよぉ! 唇だけは、唇だけは絶対に守りたかったのにぃ)

 アスカの瞳から、涙がこぼれた。

 凌辱されることは避けられなくても、唇だけは好きな人との想い出のために、キスされることだけは避けたかった。それなのに…。

 もちろん、それは傍目から見ればキスとはとても言えない所行だし、今更キスぐらいでという部分もあったが、アスカには耐えられなかったのだろう。キスをされているように感じて、腕で生物の胸を押し、いやいやと首を振って拒絶の意を表した。だが生物は逃げるアスカの頭をしっかりと捕まえ、髪に指を絡めるように自分の唇に押しつけると、彼女の両手の抵抗を無視して存分に唇を重ね続けた。
 それが彼女の抵抗を打ち砕く最も最良の手段だと気がついたように。

「う、うううぅ。うふ…うぅん」

 その内、アスカの抵抗も弱くなる。爪を立てて引っ掻いていたがそれも既に止まっている。血が滲むどころか、皮がめくれ、肉を抉られてもまるで堪えた様子もなければ無理もないかも知れない。

(うう、うううっ、汚されちゃった…ううっ)

 観念したのか、本当に覚悟を決めて逆転の可能性に賭けるのか、涙をこぼし続けながら、おずおずと生物の舌を受け入れた。少なくとも抵抗はしなくなった。
 引っ掻いたり、押しのけようと生物の弛んだ胸板に押し当てられていた手も力無く垂れ下がり、全身を弛緩させて生物からの口辱を受け入れる。

「あう、ん、んん、あふぅ。ふぅ…ん」
【うぶうぶぅ…ごぉう】

 覚悟を決めて、抵抗をやめた…いや、それにしては少しばかり様子が変だった。
 アスカの眼はぼんやりとして幾分理性の光を失い、鼻から浅く早く吐き出される息には微妙な艶が混じり始めていた。





「うぅ、うぅぅぅ…。ふぅ、あむ」

(いやぁ、もうイヤぁ。なんなのこれ?なんなの?)

【うぅぅ】

 しばらくして…。吐きそうになるアスカ吐瀉物をすすり上げるというショッキングな出来事の末、およそ5分近くアスカの口を味わってようやく生物は満足したのだろう。
 ずるりと粘つく糸を引きながら、生物の口がアスカの唇から離れた。

「げ、げはっ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。
 う、うげぇ…!」

 口から引き抜かれた舌にわずかに遅れ、生物の舌から雑巾でも絞ったように大量の唾液が滴り、アスカの胸にローションのように降りかかる。同時にアスカは前のめりになり、大量に飲まされてしまった生物の唾液を嗚咽と共に吐き出した。朝食抜きだった所為もあり、どんなにえづいても彼女の唾液と胃液、そして黄色がかった生物の唾液だけしか出てこない。乳房にかかった唾液は重力に引かれて、滝のようにアスカの全身を流れ落ちていった。
 その汚液でテラテラと照明に美しい肢体を輝かせながら、アスカは惨めさに泣いた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。うああ、ああぁ、えう、くぅ。
 イヤぁ、イヤぁ。こんなこと…」

 アスカの唇のうまさに満足したのか、生物は一時アスカの体を解放した。自らの舌を口腔内に戻し、立ち上がると鼻歌を歌うように体を揺する。弛んだ脂肪の塊のような体がタプタプと揺れ、見ようによっては滑稽だ。だが、誰も自分を拘束していない…つまりは逃げるチャンスだというのにアスカは動かなかった。ぺたりと座り込んだまま、息苦しさともう一つの何かで顔を紅潮させて荒い息をつくだけ。胸にかかる生暖かい感触よりも、今の彼女はもっと気になることがあったのだ。

(は、はぁ。か、体が熱い…。なんでなのよ? 気持ち悪いならともかく、なんでこんな…こんな!?)

 生物の唾液の持つ媚薬としての効果。
 もちろん、アスカはそんなことは思いもよらない。ただ自分の身体の変化に戸惑い、欲情を感じ始めているという事実に唖然としていた。

「あ、ああ。なんで、なんでよぉ? いやなのに、こんなにいやなのに!
 …くぁ!」

 ちゅるんと音を立て、粘液にまみれた胸を揉まれてアスカは軽い呻き声を漏らした。肥大した生物の手にすら余る大きな彼女の胸は、油のような淫靡な粘液で輝き、揉まれて形を変えながら扇情的に揺れる。
 生物の手が、93のEというサイズだけなら5人の中で1番大きな胸を揉む。ヒカリと違い、既に男性経験のあるアスカの胸は大きく、柔らかく、多少手荒なことをされてもアスカに苦痛を伝えない。

 ぐいぐい、もにゅ…ぐに…。

「くぁ、はっ、はぁぁ。や、やっ、ふ、ぐぁ!」

 生物の手の中でアスカの美乳は柔軟に形を変えていく。生物の垢や脂肪が付着して汚れていたが、石鹸ででも洗ったように艶々と光り、健康的で張りのある美乳が扇情的に誘うように揺れた。

「いや、いやっ、やめ…やめなさい…よっ! ああっ!」

 絞るように下からつかまれ、アスカは思わず悦楽の呻きを漏らした。粘液で滑りながら、トコロテンが飛び出すように生物の親指と人差し指の間から、アスカの美乳の先端が顔をのぞかせる。

「は、はう」

 そのたびに痛々しく充血した彼女の乳首が生物の指や手の平で擦られ、アスカもそれに合わせてすすり泣くように声を漏らした。まるで一流の演奏者がつま弾く楽器のようにテンポよく、美しく啼く。

「あ…あ…あ、ああっ! はぁっ…あっ…くっ…ヒッ…ふぁっ…や、だめ…あふっ…んんっ…だめ…ホントに、ダメ!
 そんなふうに、胸を、胸を揉んじゃイヤぁ!!」


 堅い床につかむ物はなく、プラグスーツの残骸はあまりに小さく頼りない。
 すがりつく物を求め、無意識のうちにアスカの腕が宙をさまよった。
 右手が振り解こうとするように生物の腕をつかみ、左手を自らの口元に当てる。

「ひぅっ、うっ、うぁ! ────っ! ─────っっ!」

 小指を噛み締めながらアスカは必死に耐える。自分がこんな弱々しいとは。それも懇願の泣き声を堪えることしかできないなんて信じられない。恐ろしいほどの快楽に流されてしまいそうだ。まだ胸を揉まれているだけだというのに、こんなに感じるとは…。

(む、胸が、胸がこんなに感じるだなんてぇ…!!!)

 生物は女の体のことを熟知していた。
 ぐっと中程を掴み、ほんのわずかに芯が残るだけのアスカの胸を揉む。アスカの苦痛限界まで押しつぶすとぱっと指をはなし、すぐに僅かにずれた部分をまた同じように押しつぶす。丁寧に丁寧に、見た目に反した細やかさで、粘液がローションのようにまとわりついたアスカの胸を揉む。

「や、や、やはっ、はぅ、んんっ、くぅ、はぐっ、ああっ! だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だ、だめぇ…」

 焦点を失った目をしてアスカは全身を細やかに震わせる。

「あ、あ、ひぃあ───っ!」

 満足げに生物は呻いた。
 アスカの様子に満足した生物は、次の段階に移るため、腰を落として座り込んでいるアスカの背中に手をまわして引き寄せ、痛々しいほどに硬く凝った乳首に口を近づけた。手による愛撫だけに飽きたらなくなったのだろう。しかし、どうにも弛んだ腹部が邪魔で上手くいかない。
 姿勢が悪いことに気がついた生物は、ピンク色の乳首を口に含むために、アスカを軽々と抱え上げると、正面から向き合うようにして自分の膝の上に座らせた。奇しくも10数分後のヒカリと同じ対面座位にしたのだ。そのまま生物はアスカの足の隙間に強引に体を割り込ませて、彼女の足がハサミのように自分の胴体を鋏むようにさせると、左手でアスカの背中を引き寄せた。右手は重力にひかれて重そうに揺れる乳房に手を伸ばし、同時に、だらしなく開かれた口は乳首をくわえた。

「いっ………きゃふ!
 あ、あ、そんな舌でそんな…はぁぁあああっ! あっ、ああっ!!」

 首を後に仰け反らせて短い悲鳴をあげるアスカ。そのまま後に倒れ込んでしまいそうだったが、生物の腕はがっちりとアスカの背中を支え、アスカの乳首を逃がさない。くちゅくちゅと唾液を塗りたくって乳首を愛撫しつつ、不健康な歯で甘噛みする。チュウチュウと音を立てて執拗に愛撫を繰り返し、乳首にある小さなぶつぶつの一つ一つまで丁寧に凌辱していく。手は胸の麓から順々にゆっくりと丁寧にマッサージのような愛撫を加えながら頂上を目指してくる。中年男の執拗な愛撫にも似た、あるいはそれ以上の執拗さを持った手と舌による悦楽の2重奏がアスカの意識を浸食する。

(こ、こんなことって! ああ、声を出してはだめぇ!)

 ジンジンと疼くような快感に、言葉とは裏腹に歓喜の声を上げそうになる。だがふくらはぎを痙攣させながらも、無意識の内に生物の腰を足で締め付けながらも、必死になってアスカは声を堪える。声を漏らしたら負けを認めたような気持ちがして、戸惑いつつも必死になってアスカは耐えた。

「───っ! ───っっ!! あっ、────っ!
 ……うぅ!」

 とは言うものの…アスカの敗戦は決定的だった。
 まだ強固なプライドは残っているが、すでに彼女には当初の覚悟は微塵も見られない。だがそれはある意味無理もないことだろう。着実に、獲物を狩るハンターのように、生物はアスカの弱いところを刺激してくる。
 まだ前戯の段階とはいえ、胸だけを攻められてこんなに感じる。アスカにはそれが恐ろしくてならない。もっと先のことまでされたら、その時は一体どうなることだろう。

(いやっ、こんなことで! どうして、どうしてぇ?)

 今までの性体験 ── 6人ほど ─── で、彼女は胸を揉まれて感じたことがなかった。
 一人を除いて全員が大きな胸にやたら固執し、何度も何度も愛撫されたが、ただ何かをされてるくらいにしか思わず、男が赤ん坊みたいに胸に執着することを奇異の目で見ていた。
 それなのに…。

【きも…ちいぃ?】

 生物の言葉に、アスカは固く目を閉じた。あまりにタイミングの良すぎるその言葉は、アスカにどんな影響を与えたのか。

(なによこいつ、どうしてそんなこと聞くのよ!?)

 思わず頷き返しそうになり、思い出したように頬を染めながらそっぽを向く。惨めな気分にすすり泣きそうになりながら、アスカは必死になって胸の刺激に耐えた。まるで蛭かミミズが何匹も胸の上を這いずり回っているかのようだ。
 グッと顎に力を込めて奥歯を噛み締め、ともすれば、浮遊感にも似た感覚と共に意識がどこか遠くへ持って行かれそうになることに耐え続ける。

「……………ぅ……………ぅっ。あぐ、あぐう…」
【ううっ】

 反応がないことでつまらなさそうに、少し乱暴にアスカの胸を揉む。痛々しいほどに堅くとがった乳首が、生物の舌先で転がされる。

(はあっ、だめ、だめ! そんなにされたら、ああ…)

「ひ、ひぃ! あ、あは…はぁ! うあぅ!
 やめて、やめ、ああ。ち、ちく、しょう…こんな、奴に」

 ちゅるっちゅるっ……。

 揉まれた胸が元の形に戻るときに粘液が弾ける音が、ムッとする熱気に包まれた室内を支配した。とうとう耐えきれなくなり、アスカの口からまぎれもない快楽に溺れそうな女の声が聞こえる。

「あ、あはぁっ! ひっ、ああぁ───っ! あ、うぅんん〜〜!」

 アスカの胸は完全に生物の支配下にあった。
 声を殺すなんて到底無理。荒く息を吐き、身も世もなくすすり泣きながら甘美な悦楽に耐えることしかできない。

 乳首を舌で転がされ。

「あ、あ〜〜ああ〜〜、いやぁ…」

 唇で挟み込まれて刺激を加えられ。

「ふ、ふ、ふぅ…。んん、はっ」

 苦痛を感じるギリギリ限界まで噛みつかれ。

「かっ! きゃ、きゃあ!?
 んあああああ、ダメぇ! そ、そんなことしないで! 噛まないでッ!」

 精神が剥き出しになったような乳房を、いや乳房だけでなく、太股や首筋、身体中を女の体を知り尽くしたように揉まれ。

「あん、あん、やめて…しないで、そんな…そんなこと、どうして…、私どうしちゃった…の…よ?」

 そしてとどめに乳首を強く吸われた。口腔内で乳首が右に左にと舌で舐られる。

「う……ぅぅっ…くはっ! あ、あああ、ダメダメぇ!
 や〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 その一つ一つの動作に一々アスカの体は敏感に反応した。



 ビクン



 最初の口辱から数えて10分ほどが過ぎて、唐突にアスカの体が中心から震える。
 芯から体を震わせる恐ろしい感覚。驚愕にアスカは目を見開いた。限界まで溜まっていた涙がまたこぼれ落ちる…。この感覚は知っている。





























『良いのか、アスカ? 傷の舐め合いにしか…いや、一方的な物にしか、ならないぞ』
『いいの、かまわないわ』

 ベッドの中、お互い一糸纏わぬ姿だのに、男はこの期に及んで躊躇していた。ずっと彼に抱かれ、耳元で愛を囁かれることを夢見ていた。そう思いこもうとしていた、憧れと恋心を取り違えていた相手、「加持リョウジ」
 隊長であるミサトの婚約者であり、家を飛び出したアスカ達の一時的な保護者になっていた男でもある。

『自棄鉢になるな』
『じゃあ、加持さん。私、どうすればいいの?
 あいつは私の気持ちに気づいてもくれない、振り向いてもくれない、昔のことを思い出してもくれない。あいつの目に、私は映ってなんかいないのよ』

 答えは分かっているが、敢えて尋ねる。予想通り、加持は言葉に詰まってしまった。途端に胸の奥が鈍い痛みでうずく。彼を苦しめるつもりはなかったのだ。

『ごめんなさい、本当はわかってる。わかってるから。
 だからお願い。今だけは、1時間だけで良いから、私の加持さんでいて…』
『アスカ。だが、だからといってこんなことは良くないぞ』
『そんな風に言うならまた男漁りをするわ。加持さんが本気で怒るようなことだってする。
 私を怒ってくれたのは、私のことを案じてくれたの男の人は加持さんだけよ。だから、ね? 良いでしょう? 今だけは、私を本気で愛してくれても』

 心まではいらない。体だけで良いから。それもほんの一時だけで。

 たくましい加持の胸にすがりつき、彼の胸に唾液の痕を付けながら舌を這わせる。

『アスカ…』
『ね? ミサトには秘密。そしてもう二度とこんな事して、なんて言わない』

 困った顔をしながらも、彼は、加持はアスカを抱きしめ、そして決して満たされない心と体を満たしてくれた。ほんの一時だけだったけれど。
 2時間後…。加持が静かにベッドから抜け出したとき、余計に惨めで心に空虚な風が吹いたけれど。
































 今アスカの体を振るわせている感覚は、加持の手により初めて感じたそれと本当によく似ていた。違うところと言えば、あれよりも強烈なことくらいだ。

 涙に反応した生物がアスカの胸から口をはなし、汗の玉がいくつも浮かんだ白い胸の谷間を見つめる。アスカの荒い息に合わせるように、ぶるぶると豊かな乳房が揺れた。
 再び乳首をくわえ込み、笑っているように生物の口が動く。

「う……うそ、そんなの、うそぉ」

 ビクビクッとアスカの体は断続的に痙攣を始めた。彼女の意に反し、体は勝手に支えを求めて生物にしがみつく。太股がカニのハサミのように痛いくらいに生物の腰を締め付け、腕はすがる物を求めて生物の頭をつかみ、胸に押しつけるようにしがみ付く。恥辱と快楽ではぁはぁと荒い息をもらしながら、アスカは現実を否定するようにいやいやと首を振った。

(嘘よ嘘よ嘘よぉ。私は感じてなんかいない、イかされそうになってなんか!)

 今までの凌辱でも充分すぎるほどに感じていた。居眠りのように一瞬、自分の状況を忘れる程度に意識を失いもした。幾度か軽くアクメに達しもした。だが、これは、この感覚は違う。
 再び硬く閉じられた彼女の目から涙がにじむ。だがそれは屈辱による物だけなのだろうか。

「うそよ、そんな、胸だけで、わたしが…。こんなのに、こんなの相手にぃ!」

 そういいつつ、堕ちていきそうな意識を支えるため、アスカの手足はしっかりと生物を抱きしめている。
 自分自身の体に裏切られたように感じ、アスカは苦い涙を流した。
 そして目と鼻の先に押しつけられたアスカの乳首を、生物の舌がべろりと舐めた。
 地震の縦揺れのような衝撃がアスカの中心を走り、あっけなく堤防が切れた。

「きゃあぁぁ! はぁっ、はひいぃ! ふああっ!
 あ、あああ──────っ!!」


 アスカの目が見開かれ、切ない、断末魔の悲鳴のような声が室内に響き渡った。












 ぶるぶるとアスカの四肢が震え、ぴしゃぴしゃと痙攣にあわせてアスカの股間から愛液の滴が漏れて床にこぼれる。体質の所為か、アスカはとにかく湿りやすい。自分でも病気なんではないかと思うくらい濡れてしまうのだ。

「は、はひぃ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 覚悟はしていたが、こんな腐った怪物の手によってイかされてしまったことで、アスカは人魚のそれのように美しい涙を流した。かつて自分が愛していた…と思いこんでいた男との性行為の時よりも、はっきりと感じてしまっている。初めての時は痛く、感じたのはその男との行為からだけだった。その時、世の中にはこんなにも素晴らしいことがあるのかと思ったが…。
 色々あってその男性とは結局結ばれることはなく、既に想い出なのだが。それを汚されたように思え、アスカはまた無念の涙をこぼした。

「あ、ああっ。ううっ、加持さん…加持さん…わたし、わたし…汚されちゃった…汚されちゃった。大事な思いで…汚され…ちゃった」

 と、俯いて涙を流すアスカの胸を、生物はどんと手で突いた。
 腰に力が入らないアスカは、あっさりと転がされ、どさりと音をたてて仰向けの状態で床に転がる。
 ふわりと金色の髪の毛が絨毯のように床に広がり、形の良い胸は崩れることなくこんもりとした丘を形成し、その胸の谷間はとても深く、男を誘うように静かに揺れた。胸が彼女の呼吸に合わせてゆっくりと上下する。まるで誘っているかのようだ。



 生物は考えを改めた。
 このまま一気に犯し、精液を放ってやろうと考えていたが、それはあまりにも勿体なさ過ぎる。人間の脳部分が残っている彼は、他のと違い生殖以外のことも考える。
 無造作に生物は立ち上がると、水膨れをした染みが浮いた臀部をアスカの腹の上にどんと下ろした。

「かはっ! ぐうっ、ああぅ……」

 突然のことにアスカは肺の中の息を全部はきだし、ぱくぱくと口を開けたり閉じたりしながら空気を求めた。
 身を折って苦しみに喘ぐアスカの心を恐怖が覆った。
 恐らく生殖が目的である以上、あまり手荒なことをしないだろうと思っていたが、今の行動は下手をすれば肋骨が折れ、内臓が破裂したかもしれない行いだ。
 アスカのこめかみに興奮ではない、恐怖による汗が流れた。

(まさか、あんまり反抗的だから、死なない程度にいたぶる気じゃ…)

 自分でも、多少自分は気が強すぎると思っている。
 そうされてもおかしいことはないのではないか?
 まだ腰は微かに震え、胸の感覚は輪郭がぼやけているようものだが、アスカの体から高ぶりが一気に失せた。ただ、震えながら生物を見上げる。

 震えるだけで身動きしなくなったアスカに、生物の手が伸びた。

「あ、ああ?」

 顔を捕まれると最初は思って、蜂に刺されたように体を硬くするが、生物の手はアスカの胸に伸ばされていた。プリンのように盛り上がる乳房をぺたぺたと手の平で軽く叩き、固さと指のめり込む深さを確かめるように二度、三度と揉む。
 あれだけなぶってまだ足りないのかという思いと、最悪の予想が外れたことにアスカは少々複雑になった。

(なにをしようってのよ? あれ…?)

 その内、生物が何をしようとしているのかがアスカにはわかった。
 先走りの粘液でテラテラと光る赤黒い肉棒が目の前にさらけ出され、グロテスクな姿をアスカの目に突きつけていた。大きさは女性が受け入れられる限界に匹敵し、肉芽のような突起が竿の部分の至る所にくっついている。挿入されたとき、あれが膣内部の襞に絡まり、人間ではあり得ない部分から快感を呼ぶのだろう。そして亀頭部分は肉で作ったツクシか松ぼっくりそっくりだ。

(ううっ、なんて、なんてグロテスクな…正気を疑っちゃうわね)

 異様な生殖器を ――― アスカになんと考えられてるのか知る由もないだろうが ――― 生物はアスカのむっちりとした胸の谷間に押し込み始めたのだ。土砂に潜り込むドリルのように、肉の隙間に生殖器が沈み込んでいく。

(バストファック?)

 日本語(?)で言うところのパイズリである。
 怪訝に思うアスカを無視し、彼女の胸を両脇から挟み、肉棒を支えながら生物は腰を微妙に前後させた。しばらくその行動を続けていたが、唐突にやめると何か言いたげにアスカを見下ろした。どこか、散歩を期待する犬のような目をして。

「私に、自分で……やれってこと?」

【あ、あぅぅ】

 イヌのように生物は首を振った。
 こんな時にも関わらず、アスカは呆気にとられた顔をした。
 まさかいくらなんでもそんなことを要求されるとは思いもよらなかった。馬鹿馬鹿しいという思いと、化け物相手に冗談じゃない! という憎しみがわき起こるが、ここで意地を張って抵抗しても結局最終的にはやらされることになるのは目に見えていた。あるいはもっと酷いことに。
 鈍く光る生物の目ははっきりとそう語っていた。

「やれば良いんでしょ、やれば…(覚えてなさいよ)」

 アスカの腕が自分の胸を両脇から支える。アスカの胸の中心に、しっかりと生物の肉棒が挟み込まれた。白い餅の中に赤黒いソーセージを埋め込んだようにも見えて、ある意味正視に耐えない光景だ。

「くっ……」

 ゆっさゆっさとアスカの胸が前後に揺すられた。布団で簀巻きにされた程度にきつく締め付けられた肉棒の先端が、アスカの胸の隙間を前後する。柔らかく、しっとりとしたアスカの胸は濡れた布のようにしっかりと肉棒に絡みつく。その抵抗をくぐり抜けながら、土手の穴から蛇が顔を出すように、出たり引っ込んだり出たり引っ込んだりを繰り返す。
 既に枯れ果てた老人であっても、硬く鋼鉄のような固さを取り戻すようなアスカの胸の愛撫だ。前後左右、上下、全てにピッタリとまとわりつき柔らかい刺激を加え続ける…。
 生物の体全体がぶるっと震え、先走りと言うには多すぎるの粘液がアスカの胸と顔を汚した。

「きゃっ!?」

【お、おぅぅぅ】

 気持ちが良いのか、生物はだらしなく歓喜の声を漏らした。天を仰いで呻き声を上げながらよだれを口元から垂らす。
 先走りの体液の据えた臭いと味に顔をしかめつつも、屈辱的行為には変わりないがアスカはほんの少し余裕を取り戻した。今までは一方的にやられるだけだったが、少なくとも今主導権を取っているのは彼女だ。
 涙の痕の残る顔を歪ませ、不敵に口元を歪め、舌を伸ばして鼻先に着いた先走りを舐めとるアスカ。

「ふん、このくらいで」

 そう言いつつ、嵩の開いた松ぼっくりのように肥大化した亀頭をぺろりと舐める。亀頭の突起や襞の間をアスカの舌がかきわけ、先走りとアスカの唾液とで、肉棒の先端がてかてかと光った。

【お、おぅぅぅ】

(まだまだ…)

 わずかに頭を持ち上げると、より深く生物の肉棒を受け入れ、常に先端がアスカの口元に届くようにし、鞘の部分を胸で、亀頭を舌で忙しなく愛撫する。
 最初のやり方よりも胸から受ける快感は少ないが、それはそれで微妙な快感を味わえる。それにそれだけでなく、反抗的だったアスカが汗を浮かべつつ自分から肉棒に舌を這わせている。舌が亀頭に絡む快感もそれはそれで耐え難い。怪物でなくとも、性欲のある男なら誰しもが興奮せざるをえない状態だろう。
 血が集まり硬くなった突起をかき分けて尿道口を舐め、首を傾げて竿の部分を横から加えつつ、カリの部分の粘液をこさぎ取るようにアスカは唇を擦りつける。彼女の口元がべちょべちょと粘液で汚れていく。だのに彼女は委細構わず、眉一つ動かさないで肉棒に舌を這わせ続けた。



ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ…。



 たるんだ尻たぶがアスカの腹に当たる音と、ゆさゆさと胸が揺れる音の合間に、舌鼓を打つ音が淫猥に聞こえる。
 生物は満足げに呻いた。
 アスカの顔にも満足そうな笑みが浮かぶ。

(こ、このまま胸でイかせれば、満足して犯さないかも知れない…!)

 つまり、アスカの行動はそう言うことだ。希望的観測にすぎないが、かと言ってやらないままでいたら確実に犯されてしまう。

(そうよ、たとえ一回で満足しなくても、それなら何度だってイかせてやるわよ)

「ぴちゅ、ぺちゃくちゅ、ぺろ…。うん、ちゅっ」

【あぐぐぐぅ、おぅぅ】

 生物の声に明らかに変化が起こった。
 呻くと言うより、明らかに啼いていると言っていいような抑揚が加わる。限界が近いのだ。アスカはそう悟った。

(早く! イくなら早くイきなさいよ!)

 腕に力を込めながら心の中で毒づくアスカ。
 実は一方的に責めているようでアスカも限界が近かった。重い生物を上に乗せたまま、休むことなく腕を動かし続け、呼吸が足らなくなるのも構わず舌を這わせているのだ。限界が近づくのも無理はない。それでなくとも先ほどのまでの責めで、胸全体が性感体になったようなアスカだ。愛撫をするということは、同時に愛撫されていることにもなる。

「んちゅ、っぐ、はぅぅっ(イって、早く、早く!)」

 快楽という刺激でジンジンと痺れる胸は、アスカの脳髄に狂わんばかりの悲鳴を伝える。

 本当に限界が近いのは、果たしてどちらなのか。
 興奮した生物が腰を動かし、予想以上に肉棒が前に飛び出してアスカの鼻に突き当たる。粘液が鼻には言ってむせることも構わず、アスカは口を開けて亀頭をくわえ込むと、本音が8割ぐらい混じった切ない声を漏らした。

「は、あむ、うう! は、早くイってぇ!」

 腰の突き上げは激しくなり、アスカの手の動きも早くなる。胸はタプタプと音をたてて揺れ、肉と肉が擦れる音が激しくなる。すぼめられたアスカの口がちゅぅとストローのように肉棒を吸い上げた。

【お、おぅ!】

 生物の体がビクリと揺れ、一拍置いて大量の精液が吐き散らされた。

「おぐぶぅぅ!? うっ、ぐぐぅ!?
 …ぷぁっ! きゃぁっ、髪に」

 肉棒はアスカの口に収まりきれず、口腔内に一部の精液を吐き出したあと、途中で飛び出してとアスカの顔と言わず髪と言わず一面に精液を振りかけた。しかも放出しても力を失うことなく雄々しくそそり立って、ピクピク震えながら精液の残滓をアスカの顔に擦り付けた。

「ああぁ、こんな、こんなに…」

 生クリームケーキに顔を突っ込んだかと思うくらい、顔中を黄色みがかった白濁した液体で汚してアスカは茫然自失していた。かろうじて先にイったのは生物の方だったが、アスカの方も限界に近い。胸はジンジンと痺れ、まだ一度も触られていないにも関わらず、彼女の淡い陰りの奥の性器とその周辺は熱くたぎっていた。
 生物を参らせるなんてとんでもない。ほんのちょっと一撫でするだけで、また絶叫をあげて痺れるような快感に身を震わせることになるだろう。
 口に残った精液を吐き出し、顔に着いた精液を拭いながらアスカは呻き声を上げた。

(そ、そんなまだ元気だなんて…)

 かなりの犠牲を払ったつもりなのに、生物の肉棒は一度放出したせいか、かえって耐久力を増したようにアスカの眼前で勢いを増す。固さ、太さ共に先ほどより数%は増している。幻惑されたようにアスカは指一本動かせなかった。この生物を満足させるためには、あと何回こんな事を繰り返せばいいのだろうか。10や20で収まるとはとても思えない。

 人間がそれ以外に向けているエネルギーをほとんど性行為に振り分けている生物だ。絶対に彼女は途中で力尽き、嵐のような凌辱に身を捧げることになるだろう。そしてその後は? 反撃の機会がきても、彼女はそれを生かせるのか?

 無理だ。
 理屈でなく、本能でそれを悟るとアスカは嫌々するように首を振った。

「い、いやぁ、助けて」

 遂に矜持が崩れたのか、アスカは肘をついて上体を起こし、できる限り生物からはなれようと力を込める。だが上に乗られたままの姿勢では逃げることはできない。

「どいて、どいてぇ…」

 弱々しく生物の腹を押し、なんとかどけようとするがピクリとも動かない。
 アスカの言うところの無駄な抵抗だのに、彼女は構わず体力を無駄に消費させ続けた。

 なぜなら彼女には理由があった。
 アスカの子宮の中で、確実に何かが盛り上がりつつあったのだ。それが完全に表に出たとき、自分は自分でなくなってしまう。
 もう誰にも止めることのできない何かを恐れ、全身をぶるぶると震わせるアスカ。
 熱い欲望の波はその時を求めて体内で暴れる。



コノママダト、ウケイレテシマウ。ナニモカモ、スベテヲ。



 そして心の底から歓喜に震えながら、生物の肉棒を己の性器で受け止め、雌の喘ぎを漏らすだろう。
 すでに強烈にせめぎあっていた二つの感情の均衡が、先ほどまでの愛撫で崩れ始めている。張り詰めた糸のように危険な状態だった。

 しかし、運命は過酷だ。
 ようやく腰を上げた生物は、震えるアスカの肩をつかむとごろんと一回転させた。照明に照らされた白く艶めかしい背中がひくひくと震え、玉のような汗が一面に浮かぶ。それを一滴、生物の舌が舐め取った。

「ひ、ひぃぃ! や、やめてぇ! やめて、お願いします!」

 ガチガチと歯を噛み鳴らし、肩越しに生物を見ながら完全な懇願口調で必死になって慈悲を請う。

 生物は無言でアスカの腰を両脇から掴むと、ぐいっと自分の腰の高さまで持ち上げた。力の抜けたアスカの上半身はその動きに着いていくことができず、膝をついて尻を高く掲げさせられると言う屈辱的な姿勢をとらされる。

「ひ、ひゃだ…ぁ、ぁぁっ」

 頬を床にくっつけたまま、アスカは抵抗もできずに絶望の涙を漏らした。自分をこんな運命に追いやった物事、周囲、全てに呪詛を向ける。

(こんな所をパトロールさせたミサトの馬鹿、救難信号を捕まえたマユミの馬鹿、あっさり捕まったヒカリの馬鹿、今ここにいないマナの馬鹿、レイの馬鹿…。なにより、みんなの警告を無視した、自分の馬鹿)









 昔から無鉄砲なところがあった。
 居候先に迷惑をかけたくなかったから、早々と自立できる職業を選んだ。つまり、職業軍人だ。高校を卒業すると同時に宇宙軍大学に入学した。まずこの進路決定からして、振り返れば無鉄砲だったと思う。もっと他に進路はあったはずだ。
 別に、平凡な生き方でも良かったかもしれない。
 敢えて軍人の道を選んだは、やはり自分があの男の娘だったからかもしれない。今度は、軍人として父を越え、見返してやりたいという思いがあったからかもしれない。

(様子を見に行くなんて、言わなきゃ良かった…! ごめんなさい、ヒカリ。ごめんなさい、マユミ。ごめんなさい、みんな)

 結果として、ヒカリ達まで巻き込むことになってしまった。
 悔やんでも悔やみきれない。

(これは、罰なの…?)




































「……あうっ!」

 唐突にアスカの体が震えた。
 生物の肉棒がとんとんとノックするようにアスカの秘唇をつついたのだ。挿入にまでは至らなかったが、ほんの僅かに先端部分が堅く閉ざされていたはずの唇を割った。既に充分すぎるほど濡れてほぐされたアスカの性器は、受け入れる準備は完全にできている。くちゅりと水音が響き、甘い匂いのするアスカの愛液が一滴こぼれる。

【手を…つぅ】

 それまで何回か入り口をつつくことを繰り返していたが、どうにも姿勢が良くないのか、生物は忌々しげに生物はアスカの尻を叩いた。まるで躾の行き届いていない牛か何かを鞭で追うような仕草だ。

「それだけは、それだけはイヤぁ」

 犬のように四つん這いの姿勢で尻を向けろと強要させられたことを察し、無念の泣き声を漏らすアスカ。ここまでされても、まだ譲れない気持ちが彼女の中にある。必死になって抗う。
 が、眼前でヒカリが正常位で犯されて快楽のむせび泣きを漏らしているのを見た瞬間、彼女の動きは唐突に止まった。








 喘ぎと一緒にだらしなく開けられたヒカリの唇から、涎が一筋糸を引いて垂れる。投げ出された足がブルブルと震えている…。

くちゅ……ぴちゃ……ぬぐぅっ……ぐちゅっ……

「…うう…くふ、あ、いい!」

 本当に気持ちよさそうにヒカリは啼いている。
 あんなに嬉しそうな、気持ちよさそうな顔をしているヒカリの顔を見たことはない。








(なんで、なんでヒカリそんなに気持ちよさそうなのよぉ?
 相手は、相手は鈴原じゃないのよ!?)

 ヒカリが居るから、ヒカリが側にいたから必死に耐えていたのに。できれば、我が身を犠牲にしても助けてあげたいと思っていたのに。
 当のヒカリはアスカのことも忘れ、自分から腰を振り動かしている。
 裏切られたように感じ、アスカは息をすることも忘れた。





(ヒカリ、信じられない! 普段自分でしつこく不潔不潔って言ってるのに!)

 でもとても気持ちよさそう。

(相手は化け物なのよ?)

 何がいけないの?気持ち良いことの何が?
 どうせ犯されるなら、せめて楽しみましょう?

 自分の内から聞こえる現状を甘んじて受け入れろと、全てを諦めきった後ろ向きの声と、愛しい秘めた恋の相手の顔が浮かびせめぎ合う。

(駄目よ、こんなの…)






ぴちょり





 親友の狂態と己の葛藤にアスカの動きが止まっている間に、生物の肉棒がアスカの性器に押しつけられた。遂うっかり呆然としてしまったが、彼女はまさに犯されようとしていたのだ。ぼんやり考え込む余裕などあるはずもない。

「ひぃぃぃっ!! いやぁぁっ!
 か、加持さん!」

 自分が犯されかかってることを思いだし、アスカは焦りからか体を捩って抵抗した。構わず生物は腰を前に押し出していく。今度は先ほどと違い、位置も高さも全て合っているのかずれることもなく、じりじりと肉棒はアスカの中を浸食していく。

「あ、あああ、いやいや。
 いやぁ! 助けて、ああっ、し…シンジ!」


 どこか頼りない、気弱な笑みを浮かべた男…小隊仲間の碇シンジ少尉の顔が瞼の裏に浮かぶ。いつも優しさで自分を包んでくれる。加持に向けたのが父性への憧れだとするなら、彼に向けたのは文字通り恋心。子供なんていらないと、自立した女を目指していたけれど、シンジが相手なら…多少は考えを修正しても良いと思う。
 1級の美男とかいう訳ではないけれど、側にいてくれるとそれだけでホッと落ちつくことができる。そんな人物。
 彼は覚えていないだろうが、昔、自分と彼が4歳の時、一度だけ出会ったことがある。
 あの時、シンジが不器用ながらも蓮花の花で髪飾りを作ってプレゼントしてくれたときは、本当にうれしかった。
 彼と軍隊で再会したときは本当に驚いたけど、昔とまるで変わってない彼と接して、アスカは張りつめていた心が癒されるのを感じた。この再会を運命的な物だと思っていた。

(あ、ああっ。シンジ…いやっ)

 うっかり想像してしまった想い人の顔が、かえって彼女の心と体を痺れさせる。想像することで今の自分を見られているように感じてしまう。死にたい程恥ずかしい。

「あ、あ、あああっ! い、いやあ…やめてぇ」

 じわじわと肉棒に貫かれていく感覚に、アスカは悲鳴を上げた。必死になって前に這いずろうとするが、腰を捕まれていては逃げることはできない。
 その一方で覚悟を決めていた彼女の体は、無意識のうちに疲労を少なくする───あるいはより深く快楽を得る───ために、体の中心から力を抜き、足を緩く開いて挿入時に痛くならないようにする。
 抵抗の無くなった秘唇に亀頭部分が潜り込んだ。亀頭に大きくこじ開けられた秘唇は痛々しいほどに充血している。


じゅる

 亀頭全体が飲み込まれ、締め付ける。

「ひぃぃ、イヤぁぁぁぁ───────!!!」






 潤滑の愛液をこぼしながらアスカの性器が割られていく。
 ぬるぬると光る体液を擦りつけながら、その隙間に肉棒は少しずつ埋め込まれる。堪能するようにゆっくりゆっくり…。気が狂いそうになるくらいゆっくりと…。
 彼女の膣は突撃する肉棒をほんの僅かに拒絶するが、それはかえって肉棒を肉杭へといきり立たせる。アスカの体内で、生物の性器は一回り大きさを増した。

「あうう、もう、うあああ、だめぇ! やめてやめてぇ───!!
 やぁぁ─────!!」

 まだ亀頭部分しか入っていないのに快感と拒絶が入り交じった声を漏らすところは、ヒカリと一緒である。しかしながら既に処女でないアスカはヒカリと違い、苦痛を感じることはなく、身を捩らせながら体の中心を灼熱の杭で抉られていくことに喜悦の声を漏らすのだった。
 意志に反しておねだりしているように粘膜と膣が動き、蜜を漏らしはじめる。太股を伝って流れる熱い滴に、アスカは感極まったような悲鳴をあげた。

「ンぁあ! ひぁぁっ! やだ、どうしてっ」



ぴちゃぴちゃ、ぐちゅぐちゅ…。



 湿った音が響き、聴覚をもアスカを責め立てる。目はヒカリの狂態を映し、鼻は体を痺れさせるような甘ったるい空気をかぎ続ける。そして触覚はアスカを狂わせんばかりに猛る。痛覚までもが今は役割を変えたようだ。
 感覚の複合作用に連鎖的に感覚が高まっていく中、アスカはコンマ単位で肉杭が自分の中に潜り込んでいくことを感じていた。亀頭がすっかりと潜り込み、つづいで魚肉ハムのような鞘の部分が、秘唇を巻き込みながら彼女の中に埋没していく。霞がかかったように痺れた体は、股間からもたらされる快感に浸る。

「うああああっ、ぐああ────っ!!
 ああああぁぁぁ、ダメ、ダメだめぇ! それ以上は来ないでぇ───!」

 気力をふりしぼり、まだ諦めずに肘をついて逃げようとするが、やはり一歩も動けない。それどころか逃げようとする動作は、かえって彼女の腰を右に左に動かす結果を生んだ。今のアスカは第三者から見たら自分から腰を振っている雌犬だ。
 当然、キリをねじ込むようにますます肉杭はアスカの体内に埋没していく。

「あああっ! 入れちゃダメぇ! いやっ、壊れるっ!
 それ以上入れないでぇ!!!」

 肉棒が半分ほど入ったところで、虚ろになった青いの瞳の奥で光が瞬く。
 全身に及んだ痺れで力が入らなくなった腕が上体を支えきれなくなり、前のめりに崩れ落ちる。床と胸に挟まれ押しつぶされて形を変えた双乳がヒクヒクッと震えた。

「ひぃ! あは、ん、やぁ…あん、ああっ、ふぁ、いっ、あ。
 きゃあああ───!!!」


 首だけを仰け反らせ、開かれた唇の端から涎を垂らしながらアスカは切ない、尾を引くような悲鳴をあげた。まだ全ての肉杭が入れられたわけではない。その途中であったにもかかわらず、アスカの体は限界を迎えたのだ。

「はぁ! はぁ! はぁ!
 は、はぁ、はぁぁぁぁはぁ……」

 しなやかな肢体をよじらせ、四肢をヒクヒクと痙攣させてアスカはため息をもらした。小刻みの痙攣はまだ続き、結合部からはアスカの愛液がじゅぷじゅぷと音をたてながらこぼれ出る。

(い、イかされた。犯されて、イかされた…)

 もう枯れてしまったと思われた涙がまた溢れ、アスカの顔を濡らす。そのまま気絶してしまいたかったが、もちろんアスカは気絶できない。
 そう、もちろん生物は満足していない。それどころか、まだ全てをアスカの中に埋めてもいなかったのだから。

【ううぅ、きもちぃぃ】

 だらしなく顔を緩ませながら、脱力したアスカの中に根本まで肉杭が突きこむ。

「はぁう!
 ……う、あ、ああ…っ」

 すでに心も体も完全に抵抗する気をなくした彼女の体は、それをあっさりと受け入れた。
 ぎちぎちに広がったアスカの膣は今にも裂けそうにも見えたが、弾力のあるそれは窮屈ながらもゆっくりと肉杭の太さと大きさに適応しはじめていた。ほんの数十秒生物がじっとしていただけでただ硬くきつく締め付けるのではなく、蠕動するように艶めかしく動き、優しく、だがしっかりと締め付け始める。

【おぉぉぉぉぉ…】

 先のパイズリも充分すぎるほどの快楽だったが、アスカの膣内はそれ以上だ。
 生物の僅かに残った人間部分は、それだけを考えるとただ少しでも長くこの快楽を味わっていたいと、口の端から涎を垂らしながら浅く腰を前後させ始めた。
 その動きと共に力無く倒れ、虚ろだったアスカの目と体に力が戻った。びくりと体を振るわせると、前方に逃げようとするように必死になって地面を引っ掻き始める。

「あうぅ!
 うう、はあっ!はぅ…はっ、はっ、はっ、はっ」

 ずりゅ、ずりゅっと生物が体を揺するのに合わせて肉杭が膣の襞をこすりながら出入りする。生物の亀頭の襞と絡み合うことで、お互いの快楽は乗算でいや増す。また蛇口をひねったように生物の体液混じりの愛液が、アスカの結合部分からこぼれた。

「くぁ…あっ、…はん。ぃや…おねがい、ああ、やぁ…」


 一度絶頂を迎えたたことで敏感になりすぎた体を更に責められる。涙声でアスカは苦痛のような快楽に拒絶を訴えるが、生物はひたすらに腰を打ち付け続けた。右手で大きく肥大したアスカの隠核をつまみ、こねくって刺激を加える。ただ生殖行為で犯したいのではなく、もっともっとアスカを感じさせたいのだ。

「あっ、あぁんっ! んっ、んっ、んっ、ふぁぁっ!!」

 パンパンと肉と肉がぶつかる音が響き、それに混じって弱々しいアスカの泣き声と呼吸音と水音が聞こえる。
 啼きながらもアスカはアナルと腹筋を使い分け、絶妙とも言える圧力で肉杭に刺激を与えた。彼女なりの抵抗だ。早く生物をイかせることで、なんとか体力の消耗を最小限に留めようとする、快感に溺れてるなりの悲しい抵抗だ。皮肉なことに、それはアスカ自身の快感もいやます…。

「は…はん…はあ、いい……んくぅっ!」

 はかないアスカの抵抗に、再び状況が変わる時が来た。本人はしらねど、名器中の名器とも言うべきアスカの中はさすがの生物にもきつかった。人間の性豪と言われる人間の10倍近い耐久力を持つ生物だが、いい加減限界だった。必死に堪えながら名残惜しげに少しずつ腰の回転速度を速め、頂点に向けて加速をしはじめる。
 パンパンと生物の腰とアスカの臀部がぶつかる音がテンポよく響き、それに合わせるようにアスカの口から艶めかしい嬌声が溢れた。
 激しく打ち合わさって肌が赤く染まり、芳しい量の精液がとろとろと垂れる。

「あっ、ああっっ! イクっ、イクっ…!!
 くるっ! 来ちゃうぅぅっ!!
 いやぁ! ああ、はぁっ、もうこれ以上は勘弁して、勘弁してぇ!!」


 激しい、おのれを弄ぶ腰の動きとそれに伴って膣を抉る肉杭に、アスカも同じく限界を迎えようとしていた。人間相手に言ったことのない、懇願口調で許しを請い、涙を溢れさせて苦しげに啼き声をあげるアスカ。膣を抉られ、腰を打ち付けられることで肥大したクリトリスにも微妙な刺激が加えられる。
 発狂しそうな快感の中、アスカは肩で荒い息を吐きながら苦痛を堪えるようにぐっと唇を噛み締めた。硬く閉じられた目から溢れるように次々と涙がこぼれ落ちた。
 生物がうめく。

【おぅ、おぅ、おぅ、おぅ、おぅぅ〜〜〜!】

「…いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや、イヤぁ!!
 イかされるのはイヤぁ、中で、ああっ、な、中で出されるのはっ、もっと、もっとイヤぁ…」



ビクンッ



「うあっ、ああ! あぅぅん! 許して、許して!
 ああっ! ああぁぁっ!」

 アスカの願いも虚しく生物の体が痙攣し、同時にアスカも体内に熱い飛沫を受けて絶頂の声をあげた。顔に悦びと惨めさ、敗北感を混ぜた表情を浮かべて。

「いやぁぁぁぁ……な、中で、こんなぁ」

 半開きになったアスカの口から、啼き声が漏れる。アスカの体内で肉杭はいまだびゅくびゅくと痙攣し、熱いほとばしりを浴びせる。それを締め付ける深く根本まで突き刺さった結合部から、出口を求めて溢れだす精液が音をたててこぼれ落ちた。

【お、おれぇ…ぉのぅ、おん…なだぁ】

 もうアスカは全てが自分の物になった。
 誰が言ったわけでもないが、生物はそう確信した。そしてそれはアスカも感じていたことだろう。体だけの問題ではない、心の矜持までを…無下に手折られた。


「ひっく、ひっく、ひっく、ひっく…。
 あ、ああああぁぁぁぁ〜〜〜〜。
 もうダメ、もうお終いよぉ…。こんなこんなことされるなんて、もう私お終いよぉ。
 言えない、言えなくなっちゃった。好きって…大好きって…もう、言えない…」

 事が終わって力が抜けたのか、脱力しつつもまるで幼児のようにしゃくりあげるアスカ。筆で書いたようなすっきりした眉を「八」の字にゆがめ、さめざめと涙を流す。ただ犯されたのではない、絶頂を迎えさせられ、無意識とは言え自分から生物にすがりついてしまった。
 そして事はそれだけではない。
 涙を流しながら自分の未来が閉ざされてしまったことにアスカは嗚咽を漏らした。

 妊娠してしまったかも知れない。
 どうなるかわからないが自分は怪物の子を産むことになるかも知れない。喩えそうならず、生まれるのが人間の子供だったとしても同じ事だ。
 この時代、人間の活動領域に比べ人口はかなり少なく、喩え強姦によって身籠もった子供であっても中絶はできない。どんなに抗議しても、腹から取り出されて、試験管の中で育てられるだけだ。
 怪物なら怪物だったで、研究のためとかで結局出産を強要されるだろう。実際に、そう言う事例があったのだ。

 過去の出来事は決して切り落とせない。
 また一滴、アスカの目から涙がこぼれた。





 だが全ては終わったと思うのは早計だ。まだ生物の肉杭はアスカの中に埋め込まれたままなのだから。そしてそれは前よりも激しい勢いで膨らみ始めていた。

「ああ? う、うそぉ」

 むくむくと体内で大きさと固さを取り戻す肉棒に、アスカはとまどう。嵐のような攻めだったというのに、まだ生物は満足していないというのか。一体どこまで底なしなんだろう。恐ろしい予感に、アスカは総毛立つ。

(まさか、し、死ぬまで!?)

 逃げないと…!

 だが、肉欲に突き動かされている生物はアスカを逃がさない。アスカの背中越しに抱きつき、重力に引っ張られて釣り鐘のようにぶらぶらと揺れていたアスカの乳房を掴むと、ぐいぐいと絞るように揉みながら再び腰を前後し始めた。寄生生物の本体から6本の触手が伸び、自分ごと絡み取るように彼女の胸、腹、尻、太股などに絡みつく。そのまま思い思いの方法で触手はアスカの体を締め付け始めた。
 ヒカリと同じく、やたら強調するような具合に胸を根本から締め上げられ、アスカは小さくうめいた。

「あう、あううっ。ひい、ぃやめ…てっ」

 既に3回も、通常の10回分にもなる絶頂を迎えたアスカの膣は煮えたぎるような熱さを湛えたまま、肉杭と愛撫を受け入れるしかない。肩越しに生物の舌が伸ばされ、アスカの舌と絡められた。おずおずとそれに反応するアスカ。

「んふ、ああぁ。
 いぁ、やあああぁ、いやぁ。シンジ、シンジぃ…あたし犯されてる、犯されてるのよぉ。
 ああああぁぁぁぁ…」

 指がアスカの乳首をつまみ、コロコロと転がし、ひっぱり、何かを絞り出すように乳房全体を揉む。

「あふっ! ふぁぁっ、あぐっ! もっ、ダメっ! 揉まない…でっ」

 恥も外聞もなく、先ほどまで僅かに残っていた精神の梁も何もかもなくし、惨めに涙を流す一人の女となってアスカは啼いた。全身の急所を全て同時に責め立てられているようで、もうどうにも堪えきれない。
 アスカの全身が啼こうとしている。膣は締め付け、胸は震える。
 肉棒を粘膜が締め上げる感触はアスカにも返ってくる。強く、強く締め上げる。ズンッと鐘を突くような衝撃が返ってくる。自分自身にも裏切られたように感じてアスカは涙を流して、また許しを請う。

「…おねがい。やぁ…いやよ、これ以上はもう耐えられないのよぉ」

 返答のように肉襞がかき回される湿った音が聞こえた。

ぐちょぐちょ。



 張りのある無駄な贅肉のない太股を痙攣させ、栓が壊れたように結合部から愛液が漏れこぼれる。アスカの下半身はまるで入浴直後のように液体で濡れそぼっていた。

「はぁぁぁぁ…。
 はんっ!はあんっ!あああんっ!!」

【おんっ!おあんっ!おあああおんっ!!】

 いつの間にか声まで揃え、2人の意識は重なり合う。とある訓練から他人と感覚のシンクロ能力を持っている彼女だが、それが無意識の内に発動して生物と同調し始めているのだ。
 お互いの快楽を感じあい、性感の塊と化したアスカはもう何も考えられなかった。心はとにかく拒絶するが、体は狂ったように貪欲に快楽をむさぼり、声を漏らし続ける。

「いやぁ、いやぁ、いやああぁぁっ。なんで、どうして、嫌なのに!
 あぁぁっ、また…来るっ!」

 胸をキュッと揉まれて絶頂を迎え、乳首を指で転がされ、つままれてまた絶頂を迎える。生物の腹で背中を擦られただけで、髪を撫でられただけでまた絶頂を。
 みっしりと生物の肉杭はアスカの膣を隙間なくはまりこんでいる。ほんのちょっとの動きであっても、それはアスカを高みへと運ぶ。圧迫感に耐えかねたのか、アスカは口から舌を漏らしてまで許しを請うた。
 だが入れれば入れただけ相手を欲情させる極上のアスカの性器は、心とは別に貪欲に肉杭をもとめ、解放しようとはしない。心と相反して吸い込むようにまとわりつき、彼女と生物両方を甘美な刺激の虜とする。

「お腹が、お腹の中がぁ! もうお腹一杯よ!
 だから許し…っ!」

 許すはずがない。
 だが趣向は変えよう。ニタニタと口元を歪めながら、生物はズルリと肉杭をアスカの体内から引き抜く。ゆっくりゆっくり。
 エラの張ったカリ首と言うより、返しの部分に肉壁と襞を巻き込まれ擦り上げられ、堪えきれずに、必死に食いしばった口からアスカはまた声を漏らした。今までの激しく早い動きと違い、いちいち丁寧に感じてしまう。もどかしいが強烈な感覚にアスカは子犬のように啼き声を上げた。

「あはぁっ! かっ、ぁあん」

 そしてカリが出口まで来たところで、再びアスカの中へと沈めていく。隙間から互いの精液が混じった汁が漏れ、内臓奥深くから絞り出すような呻き声がアスカの口からも漏れた。

「ふぐっ! うく、うううぅぅ…」

 根本まで肉杭がアスカの中に沈み込み、子宮の奥にまで届いてアスカの口から断末魔にも似た呻きを溢れさせる。一拍間をおき、生物は再び肉杭を亀頭だけ残してアスカの中から引き抜く。

「な…中で擦れっ…くぁぁぁぁ」

 一連の動作で、アスカの弱いところがわかったのか、生物は集中的にそこを責めた。亀頭を擦り付け、先端から触手を飛び出させてアスカのGスポットを丹念にいたぶる。
 あの気丈なアスカの口から、許しを乞う喘ぎ声が上がる。

「だ、だめぇ! そこは、そこはぁ!
 はぁぁ、ああっ。だめ、だめだめっ、ああ、奥まで…届いて、すご…凄いっ!」

 もはや生殖行為ではなく、アスカをいたぶることを目的にしたように執拗に。

「いっ! いやよぉ! もう、これ以上はぁ!」

 アスカの声を無視し、生物は貪欲にゆっくりとした動きを続けた。微速度のカメラのようにゆっくりとした抜き差しを繰り返し、アスカを官能の高みへと持ち上げようとする。ゴリゴリと膣内をこするゆっくりすぎる動作は、アスカの官能をいや増しこそすれど、決して彼女の待ち望む絶頂は与えない。
 最奥にまで深く肉棒を突き刺し、ゆっくりと膣口まで引き抜いていく。感極まった別人のような喘ぎ声が暗い室内で木霊する。

「あはあっ! あへひぃ、うあっ…ひっ、ひいぃぃっ!」

 抑揚を付けた動きで肉棒がアスカのGスポットをつつく。浅く少しだけ素早く。突かれるたびに、抜かれるたびにアスカの口から声が漏れる。そして少々強くGスポットが突かれた時、再びアスカの体が大きく震えた。背骨を折れそうなくらいに仰け反らせ、床に落ちていたプラグスーツの切れ端を関節が白くなるくらいぎゅっと掴む。


「うくあっ! あぐ、あひあはぁぁ───!!」


 わずかに開かれた唇からは燃えるような熱い吐息が漏らし、限界まで追いつめられてアスカは絶頂を迎えた。ただし、先も述べたが中途半端な絶頂だ。とはいえ、涙で頬を濡らしたその顔は、これ以上ないほど艶めかしい。

「あっ、ああぁぁぁ…」

 くたりと脱力して床に横たわりながら、アスカは羞恥と恥辱のあまりぽろぽろと大粒の涙をこぼした。だが終わったわけではない。生物はまだ満足していなかったので、またゆったりと腰を使い始めた。同時に偽の絶頂を迎えた彼女の体はまたビクンと震えた。


「やっ、なに? まだなの? まだなの?
 ああ、か、体が! 体が変! 止まらない! ああ、熱いのが止まらない!」

 アスカの視界が真っ白に染まった。だが、それは穏やかに静まることなくアスカの視界を染め続ける。
 光が広がっていくと共に、途切れることのない絶頂感にアスカはガクガクと頭を揺らし、髪を振り乱して愉悦の声を上げ続ける。
 いわばイきっぱなしの状態になったわけだが、そんな状態にも関わらず、彼女の膣はゆっくり動く肉杭を、より奥深くに引き込もうという蠕動の気配すら見せ始める。

【おぅ! おぅぅ! おぅ!】

 たまらず生物も悲鳴をあげる。
 ゆっくりとした動きで散々にアスカを虐めた彼だったが、そろそろ彼もまた限界が、それも最大級の限界が近づいていた。ゆっくりだった抽送をリズミカルに、だが早くし、全体でアスカを感じ取るようにぎゅっと背中越しにアスカを抱きしめる。腐ったパン生地のように弛んだ体全体でアスカの体を感じるために。

「あっ、いや、だっ、めぇっ! あぅ、やめてぇ」

 絶頂の連続に体を震わせ、顔をよがってグチャグチャにしながらもアスカは嫌悪感に泣き、官能の波に啼いた。
 ここまで犯されてしまったからこそ、それ以外の行為は、普通の性交を思い出させるような行為は全てが嫌なのだ。



「ああっ、なんで? なんでぇ?」

 アスカは焦燥感で満ちあふれた悲鳴をあげた。官能の渦は変わらず彼女を玩んでいるが、性欲と性感は収まることなく高ぶり続け、一向に楽にならないのだ。
 アスカは無意識の内に悟る。今までの絶頂が嘘のような、巨大な官能の渦に巻き込まれることを。そしてそれこそがこのもどかしい感覚からの解放の時。

「ううぅ、早く、早く! 早くイかせてぇ…」

 もはや羞じらいも何もなくし、感じていることを隠そうともせずアスカは生物に催促した。これ以上は狂ってしまいかねない…。狂うのは恐ろしい…。
 しかし、生物は一向にイかせてくれない。

(早く、早く…これ以上、苦しめないでっ…)

 ガクガクと全身を震わせ、意味のならないうめきを漏らしながらアスカはその時を待った。地獄のような快楽という責め苦から自分を解き放ってくれる、瞬くような絶頂の時を。

「いや…あうっ、あうっ! はあぁぁ──っ!!」

(もう! もう、早く来て。このままじゃ、狂う、狂っちゃう…!)

 自分から腰を振り、性器を擦り付け、触手だけに任せず自分でもクリトリスをいじり回し…。
 そしてじりじりとした焦燥の末、それはやって来た。
 互いの性器が溶け合ったように熱に包まれ、何百回目の抽送になったかわからない。

「あううぅぅぅ!?」

 唐突にアスカの膣内が、きゅうと締まった。断続的な痙攣と蠕動が激しく肉杭を締め上げる。縋り付くような目でアスカは背中越しに生物を振り返り、伸ばされる舌をおずおずと受け入れた。腐った生物の姿形なんてもう気にしない。心の底から快感をむさぼる。
 ヒカリに続き、美しくも淫乱な聖女の誕生だ。

「はむ、あふ、ちゅぱ、ふぅ」

 力の入らない体に活を入れ、生物の腕の中で体を捩りながら後背位から必死になって正常位へとアスカは体勢を変える。姿勢が変わったことで、より深く生物の肉杭がアスカの体内に打ち込まれた。限界まで足を開き、一杯に生物を受け入れる。

「あひっ! ひぃっ! もう…だ、めっ! ああ、早くっ! もっと、深くっ!」

 そして白痴めいた動きで自分から生物にしがみつくと、アスカは貪るように生物の舌を求めた。自分から生物の舌に舌を絡め、歯茎を舐めてもらって愉悦の声を上げる。

「もっと、もっとついて! 忘れさせてっ! んくっ、ふぐっ! くっ、あああぁっ!」

 アスカの限界を悟り、生物もまたアスカを抱きしめ、槍のような最後の一差しを撃ち込んだ。もっと味わっていたかったが、生物もまた限界だった。
 最後の一突きの直後、ぶるぶると生物、アスカの体両方が痙攣を起こした。電流が全身を走り、頭蓋の中で雷のような光が瞬いた。
 エクスタシーを迎え、生物の体を持ち上げるくらいにアスカの体が反り返り、硬く閉ざされた瞳からは悲しみではなく歓喜の涙が、大きく開けられた口からは泡まじりの叫び声が響いた。

「くあっ、がっ!
 わ、わたしっ!
 …っちゃう、イっちゃうっ!
 こんなっ! っひ! ああぁっ、あああぁぁ───っ!!」

 今の彼女は将来を期待された一軍人としての誇りも、なにもかもない。友を守ろうという固い決意も、二度と誰かに利用されるだけの生き方はしないと決めた決意も…全て失われた。

 ただ官能の渦に翻弄される弱い1人の人間だ。
 一瞬だけ、アスカの脳裏に過去の栄光、将来の夢、愛しい想い人、仲間、その他様々のことが浮かび、完全に砕け散った。


「駄目っ! 駄目ぇっ! またっ!
 来るっ! ひっ! ひああっ、やあっ! 来るぅぅっ!!
 ひぃぃぃっ、い、イっちゃう!
 助けて、あっ、助けてぇっ! あああっ、ああ────っ!!」




 灼熱の精液が迸り、半秒遅れてアスカの叫び声が響き、遂に彼女の意識は閃光と共に闇の奥底へと堕ちていった。しかし、彼女の意識がなくなってもそこだけは別の生き物のように、きつくきつく丁寧に膣は肉杭を締め上げ、まるで精液の最後の一雫まで吸い上げようとするかのようだった。
 同時に深く繋がっていた部分を痛いほどに締め付けられて生物は歓喜の声を漏らした。

【おお、おおおおぉぉぉぉ】

 びゅくびゅくと音をたてて精液が結合部分から溢れ、アスカの内股を伝って床にこぼれた。
 先ほどの放出を遙かに超える大量の精液がアスカの中を満たす。飲んでも妊娠してしまいそうな猥雑で大量の精液だ。まず間違いなくアスカは身籠もった。理屈でなく、生物はそれを感じていた。

 なのに、アスカは血の混じる濁った精液が放たれ、子宮で溢れる音をどこか遠くのことのように聞いていた。悦楽の余韻に身を浸したまま、まるで他人事のように。

(ああ、もう、もう…)

 どうしてこんなことになってしまったんだろう?
 なぜ?
 どうして?
 もう、どうにもならないのだろうか?

 ムッとする臭いの汚液の水たまりの中に、アスカは力無く倒れふし、そして完全に意識を失ってしまった。
 そしてヒカリ同様、自分に覆い被さる新手の生物をどこか他人事のように受け止めていた。
 正常位で犯され、無理矢理口にくわえさせられても、ぼんやりとした表情のまま、手足を投げ出して。





そして話はそれぞれへと続く




後書き

 ちょろっと以前のバージョンより書き足しました。某氏の意見を採り入れました。
 で、どうだね、繰り返しになるが萌えるかね悶えるかね!? 昨日のチャットの妄想も混ぜてみたぞ混ぜてみたぞ!?
 本当にLAS人というのはこれで萌えるのかね!? 萌えるのかね!? (゚∀゚)
 ってまあ、書いてて使い物にならんようなのを書く気はないんですが。さて、噂に名高い「とるーぶるー」をインストールしよう。

2003/08/30 Vol1.04