< 注意 >



この話には痛い描写が含まれています。
烏賊同文。








─ 異種遭遇 ─

「REPULSION」



書いたの.ナーグル








「あ、ああ。助けて、誰か」

 ガチガチと歯を噛み鳴らしながら震えるヒカリを、ゆっくりと生物は引き寄せた。ゆっくりと。
 恐怖に全身を硬直させ、抵抗することもできないヒカリは、半ば自分から飛び込むようにその胸に抱きすくめられる。肌に吸い付くような、生物のぬめつく肉の感触にヒカリは鳥肌を立てた。こんな気持ちの悪い感触は生まれて初めてだ。まるで…まるで…。

(ああ、なんなの、これ…腐った生ゴミみたいな、ううん、もっと、もっと気持ちが…悪い)

 吐き気に顔色をなくすヒカリを、恐ろしいほど優しく生物はなで回した。
 緊張で固くなった体をほぐすように丁寧に丁寧に。プラグスーツ越しに感じる生物の指の感触はおぞましく、その優しさはかえってヒカリの心を千々にかき乱す。やがて生物の指がヒカリの背中に回された。

「あ…」

 一瞬、何かを言いかけてヒカリは沈黙する。そこには…ボディアーマーを固定しているバックルがある。何かの拍子にそれを外されたら…。

(だ、だめよ、そんな。そんなことになったら…わたし、わたし)

 悪い考えを持った瞬間、悪いことは連鎖的に起こってしまう。出来の悪い喜劇のようだが、それは現実に起こってしまった。生物にとっては必然として、ヒカリにとっては悪夢のような事実となって。
 カチリと音がしたと思うと、あっさりとボディアーマーの拘束がゆるめられた。硬質プラスチックの重みが一瞬で消え失せ、圧迫から解放された体が弾けるようにさらけ出される。

「あ、や」

 戸惑うヒカリの『ひぃっ』という短い悲鳴が終わる間もなく、するりとボディアーマーは脱がされてしまった。同じく腕あて、脛あてが外され、彼女の体を守るのは、体の線をくっきりと浮かび上がらせるプラグスーツだけとなる。本当は知っていたのではないかと疑いたくなるほど手慣れた動きだった。
 動きやすくはなったが…勿論ヒカリに安心できるはずが無い。

 体の線がくっきりと浮かび上がるプラグスーツは、見ようによってはとても扇情的だ。
 潔癖性のきらいのある彼女は、このような無防備な姿をさらすことは、それも怪物の色情狂じみた目に晒すことは、精神的にとても耐えられたものではない。その怯える姿は、生物の目には余計に扇情的に見えた。喩えるなら熟れて収穫を待つ苺だ。そして苺は大好物。

 上から下まで、たっぷりとねぶりあげるように生物は視姦する。
 ほどよく盛り上がった胸は、肩を抱くヒカリの腕に押しつぶされて、たっぷりとした量感を感じさせる。ひきしまった腹部、なだらかな腰が彼女が震えるたびに同じようにフルフルと震える。
 つまり、出るところは出て、引っ込むところはきちんと引っ込んでいるわけだ。モデルのようにグラマーというわけではないが、理想的なプロポーションの持ち主といえる。それはつまり、ヒカリが男を誘うのに十分な魅力を持つ…裏を返せば繁殖のため妊娠する準備が整ったことを意味していた。



 生物も震えるヒカリに興奮したのか、唐突に本当の口を開くと、そこから止めどなく大量の粘液を垂れ流した。それは当然のごとくその下で逃げることも忘れているヒカリの顔に、いや身体中に全身に降り注がれた。

「んきゃっ!?」

 俯瞰で見下ろされるヒカリの顔がたちまちぬめり、わずかに黄色みがかった油のような液体が全身を濡らしていく。

「や、やだ! うう、くさっ…やっ!」

 スーツ越しどころか素肌に直に、それも頭から感じるねっとりとした感触となま暖かさに、ヒカリは甲高い悲鳴をあげた。廃油のような臭いが、華奢な彼女の心をパニックに陥らせる。
 彼女の心の様子を体現するように、水分を含んだ前髪がしおれるようにうなだれ、肌に張り付く。恐怖は全身を包み込み、まるで自分の体が自分の物ではないみたいに、ブルブルと震えるのを止められない。

「いや───! 不潔、汚い! やめてぇ───!」

 ようやく思い出したのか、悲鳴をあげながらも逃げようとするヒカリ。腰に回されていた生物の腕をはねのけ、倒れ込みそうな前傾姿勢で逃げ出そうとするが…。
 同時に生物の触手が動き、ヒカリの左手首に巻き付いた。直後、偶然にもヒカリの最後の防壁、体を包んでいたプラグスーツのスイッチを切ってしまった。瞬時に肌に張り付いていたプラグスーツの拘束が緩む。だぶだぶになったプラグスーツが、だらしなく彼女の体にまとわりつき彼女の動きを阻害した。
 彼女にとって、全てが悪い方向に転がり始めた。本格的に…。

「きゃあっ!」

 足にプラグスーツが絡まり、ヒカリは数歩よろめいた後、前のめりに倒れ込んだ。とっさに手をついて顔面直撃は避けたが、痺れるような痛みに一瞬動きがとまってしまう。
 すかさず彼女をからかうように玩んでいた生物はヒカリの腰を掴み、その肩を押さえつけて動けないようにすると、改めて唾液を彼女の頭にシャワーのように滴らせた。

「やだやだっ! えぶっ、ごほっ、ぐっ、くはっ苦しっ!
 お願い、許して」

 ドロドロの粘液が髪を伝って滝のように流れ落ちる。顔と言わず体と言わず、彼女の全身は半透明の粘液でドロドロに濡れた。滴る液体で目を開けることもできず、ヒカリは苦悶に身を捩る。焼け付く肺は空気を求め、要求に応えるべくできる範囲で上半身を仰け反らせる。が、それにより床にぺったりと張り付いたプラグスーツと彼女の肌の間に、大きな隙間が生まれた。

「ぷはっ、はぁ!」

 豊かな胸の谷間が露出する。ただ空気を求め、目を開けられない彼女は気がつかない。

 もちろん、それを見逃す生物ではない。
 できた隙間を首を伸ばしてのぞき込み、そして嬉しそうに生物は人間体の舌を潜り込ませていった。長く長く、5〜60cmはありそうな長い舌が、『ジュルルルル』と湿った音をたてて処女の柔肌を蹂躙していく。しっとりと艶やかな肌と、対照的な生暖かくごつごつした舌の動きと共に、言いようのない感覚が首筋から鎖骨、乳房と伝わり、ついには乳房の先端に達する。緊張に堅くしこり、戦慄に震える桃色の乳首から、まるで火箸を押し当てられたような鋭い感覚がヒカリの全身を駆けめぐった。
 いや、ある意味それよりもっと鮮烈で、甘やかな、形容できない不思議な感覚だ。

「ひ、ひぃっ! なに!? なになになに!?
 あ、あ、あ、ああ、ああ、あああっ、んああああぁっ!?」

 胸の谷間を割るように出し入れされる舌は、ヒカリのDカップ・トップ86の胸に絡みつき、蜂蜜のように粘つく粘液の痕を付けながら散々に玩び始めた。奥にまだ芯が残る未開発の乳房に絡まり、縄で締め付けるようにグッと押しつぶし、毛穴一つ一つまで堪能するように蠕動しながら責めつける。からみつく蛇のように、乳首をサクランボでも味わうように先端で転がす。プラグスーツと柔肌の間の舌の動きは、鍋で煮られる蛇かウナギのように忙しない。
 そう、実際にプラグスーツの内側に大きなウナギが何匹も何匹潜り込んだようにも見えた。
 外から見える光景はかなり複雑だ。
 蠢くプラグスーツに嫌悪すればよいのか、それとも中でヒカリの体がどう弄ばれているのか想像して、息を荒くすればよいのか。当のヒカリに聞いてみたいところだが、ヒカリには応える余裕など微塵もなかった。

 当たり前である。実際、本当にウナギであってもヒカリは耐えられないに決まってるのに、真実は生物の…それも元人間の舌なのだ。初なヒカリの精神に耐えられようか。

「はぁ、くぁっ! イヤイヤ! イヤァァァ────!」

 そして生物の手が形のいい尻を、細くくびれたウェストから肩、うなじに渡って感触を確かめるように撫でさする。鳥肌だった毛穴一つ一つを確かめるような執拗さで。こんな怪物でなければ、まるで恋人同士のじゃれ合いの様に優しい愛撫だ。あくまで想像だが、元になった人間はまめな男だったに違いない。
 男性経験のないヒカリに、その愛撫は刺激が強すぎる。

(こんな、こんなの…初めて触るのが、こんなのだなんてぇっ! やめてやめてよぉ! 体が痺れるのをとめてぇ!)

 きつく閉じられた瞼の裏に、本当に愛している男の顔が浮かぶ。自分では結構自信がある胸を、形の良い尻を、可愛い可愛いと妹や姉から言われたお下げの髪を、アスカ達にも負けないと、もっとも自信を持っている太股を…。触って良いのは、愛撫して良いのは、愛して良いのは彼だけだったはずなのに。

「鈴原…!」
















 士官学校時代から、いやそれ以前からずっと浮いた噂一つなかった。
 母親を早くに亡くして、やたら責任感の強い性格になったためだと妹は言うが、本当は違うことを彼女は知っている。確かに、責任感が強くて生真面目な性格であることは認める。実際 小中学校時代は1年をのぞいてずっと学級委員を務めていた。でも、本当は…自分は臆病なだけだと思う。

 臆病だから変化を、変化をもたらす混沌を恐れる。
 規律を守ることを皆に徹底させ、クラスの悪ガキのするスカートめくりなどのいたずらには目を三角にして怒り、教師にすぐ報告した。そうすることが正しいことだと信じていた。
 正論とは、言われる方にとってはこれほど頭に来ることがない。そして彼らは加減や節制というものを学ぶ課程にいた小学生だ。

【あいつはうざったい】
【鬱陶しい】
【規則を守れ。それしか言わない】
【バケツの水をこぼしたら不潔って言われた】


 12歳になる頃には男子のみならず、女子にまでも敬遠されるようになっていた。学級委員になったのだってなんて事はない。要は余計な頼まれ事をされるのを嫌った周囲が、無理矢理押しつけていたにすぎない。はっきりとした形があるものではないが、それは間違いなくいじめだった。休み時間はいつも1人。影が薄くて孤独になっているのとは違う。
 姉や妹が要領よく立ち回って、クラスの人気者になっていたのとはあまりにも対照的と言えた。
 それでも小学生のときは良かった。
 男子を異性として意識することもなかったし、少なくとも家に帰れば家族がいたから。


 そして運命の車輪は回転する。


 彼女は15の時、初恋をした。
 同級生だった彼は、陸上部のエースで成績はいつも学年3位以内、汗くささというものが無く。甘いマスクに惹かれた女生徒がいつも周囲でキャーキャーと黄色い声を上げている。そんなテンプレートで設計したような人気者。
 小学校時代のことが尾を引き、中学、高校でも堅物として通っていたヒカリも、彼の何気なく見せた笑顔に心を奪われた。
 それが社交辞令にすぎなかったとしても。


 あとは流れるようにお定まりのパターンだ。


 数少ない友人に頼んで、告白の場をセッティングしてもらい、人気のない目立たない場所で精一杯の勇気を出して告白。
 しかし…。

「はぁ? なんで俺がおまえみたいに地味な女とつき合わなきゃいけないんだよ」

 やぼったいなりに一生懸命おめかしをした彼女に向けられた言葉はそれだった。
 あっけなく初恋は破れた。

(ああ、やっぱり…)

 半分、そうなるだろうと思っていたからショックは小さかった。その夜、ベッドの中で一人泣いたくらい。しかし、彼女にとっての悲劇はこれからだったことを、そのときの彼女が知る由もなかった。



『洞木が裸で×××に迫ったそうだぜ』
『うわ、最低。ほかにやりようなかったのかね、あのガリ勉は』


(なによ…この噂は!?)

 翌日、ヒカリは自分が身の程を知らない痴女だと噂されていることを知る。
 単に振るだけでなく、彼はヒカリの告白話に色々と脚色してあること無いことを学校中に広めたのだ。

 ショックが尾を引き、数少ない取り柄だった成績もずるずると落ちていき、比例して教師からの評価も下がっていく。学校も休みがちになり、ついには周囲に当たり散らして、姉からもどうしようもないと匙を投げられる所にまで落ち込んだ。そしてヒカリはそのことを全く気にかけなかった。
 それどころか、自分がここまで落ち込んだのは、明るい姉と妹がいたからだ。などと責任転嫁をするどうしようもない人間になっていた。そしてそんな自分自身を自嘲していた。

『あんたこのままじゃ、本当にダメになっちゃうわよ!
 一度の失恋くらいで、私なんて…私なんてねぇ!』
『お姉ちゃん、元気出してよぉ』


「いいよ、もう。どうだって」



 姉はあのときなにを言いかけたんだろう。
 無口だった父親は、ヒカリのその言葉を聞いた日から、一見して姉と妹だけを気にかけるようになる。家族からも邪険に扱われるようになったヒカリは、10代半ばにして生きていくことを苦痛に感じるようになっていた。
 そうなると負の感情はさらなる災厄を呼び集める。

 学習端末を隠され、壊される。
 体育の時間の時、誰しもが意識して彼女と組もうとしない。
 露骨な陰口。
 階段を下りようとしたとき、後ろから突き飛ばされた。
 カンニングをしている、売春をしている、などとあること無いこと噂される。

 本格的ないじめが始まった。女子のいじめは、男子の直接的ないじめよりもある意味強烈だろう。男子が肉体的に傷つける割合が多いとすれば、女子のいじめは精神をささくれ立った木の幹のように傷つける。

(死にたい。なんで私は生まれてきたの?)

 想い出の中の母は優しかった。母の所に行きたい。日々思いは募っていく。





























「んんっ、ああぁっ!?」

 意識が薄れた一瞬、過去の出来事が走馬燈のように脳裏を流れた。
 その回想を突き破るように溶けた鉛が全身を流れる…そんな鋭い刺激がずしりと響く。それが快感だと自覚することもなく、苦痛に耐えるように必死になって歯を噛み締めるヒカリ。

「くぅ〜〜、くぅ〜〜っ、うあっ、あぁぁっ」

 粘液で汚された顔を真っ赤にしながら、口と同じく硬く目を閉じる。どういう意味があるのか、当人も分かっていないが必死になって声を漏らすまいと堪え忍ぶ。そんな耐えるヒカリの姿はとても艶めかしく、美しい。彫刻を作るとしたら、『耐える女』が適当だろう。
 しかしヒカリの思いとは裏腹に、緩んだプラグスーツ越しからでもわかるほどに隆起した彼女の乳首は、彼女が敏感に感じていることを如実に物語っていた。

「うううっ…うぐっ、だめっ」

 文字通り、細胞の一つ一つまで快楽に身悶えている。しかしヒカリは、そんな自分の体からのわき上がる正直な言葉を否定するように、くねくねと体を捩らせて生物の腕を払いのけようとなけなしの抵抗を行う。だが、どうにもその動きは淫猥で、かえって生物の愛撫を求めているようにも見えた。もちろん、単なる強姦ではこうはならない。
 生物の放つ粘液が人間に性的興奮を促す作用のため、つまり媚薬としての効果があるからだ。
 そして、本当の意味で人間に性的興奮を呼び起こす薬物というものは、第2宇宙歴2015年という時代にも存在しない。
 つまり、ヒカリには…いや、人類には全く免疫がないのだ。

「はああっどうしてっ、なんなのこれ! 離してぇ!」

 数分間もの愛撫にも関わらず、形ばかりとは言えいまだ抵抗をやめようとしないヒカリに焦れたのか、生物の本体から蛸のような触手が伸び、ヒカリの耳をなぞった。意識が胸を舐める舌と腰と尻たぶを揉む腕に集中していた彼女は、不意打ちに思わず甘い声を漏らしてしまう。

「ふ、ふぁぁあん。あっ?」

 チクリ

 続いてわずかな鋭い痛みが走り、ヒカリは目が滲みることも構わず目を見開いた。
 滲む目はぼやけ、なにかぼんやりした物が生物の口に巻き戻っていくのが見えただけだ。しかし、すぐに見えなくとも何をされたのかわかった。

(か、体が…うまく動かせ…ない?)

 ビクビクっと体が細かく震える。手足が何となく重く、正座した後の足みたいに痺れて上手く動かせない。痺れが刺されたところから全身に広がり、絵の具が水に広がるように身体中に溶け込んでいく。無理に動かそうと努力すると、痺れた足みたいにジンジンと痺れてくる。そして直後、苦痛にも似た快感という名の感覚が全身を駆けめぐった。

(これは…まさか…)

 そう、強力な媚薬兼麻痺毒だ。命に別状はないが、しばらくまともに動くことはできないだろう。その一方で体の感覚ははっきりと残っている。いや、体が動かなくなった分、かえって感覚が鋭くなったかもしれない。その事実に思い至り、ヒカリは絶望に顔を曇らせた。

 ゆっくりと生物はヒカリから手を離す。
 もう拘束する必要はなくなったのだ。あとはまな板の上の鯛ならぬヒカリを美味しくいただけばいいのだ。膝をつき、四つん這いになっているヒカリの肩に手をかけると無造作に転がした。

「あ、ああっ!?」

 手足を死んだ虫のように中途半端に縮めた姿勢のまま、ヒカリは仰向けに転がった。
 開かれた足を閉じたいと思っても、ぴくりとも動かすことができず、思いの外濃い茂みと、その奥の赤い秘肉が生物の目の前にさらけ出されている…。

「ひ、きょうよ…こんな、こんな…」

 こんな…なんと言いたかったのだろう?

【おぅぅ…】

「や、やぁっ!」

 生物は呻き声を漏らしながら生物はヒカリの肩をグッと掴んだ。すでに粘液でドロドロになっていたプラグスーツはあっさりとずらされ、彼女の臍の少し下辺りまでが露出される。白く誰も触ったことのない処女地が晒され、ヒカリが嫌悪と屈辱に呻いた。
 はっきりわかるくらいに隆起した乳首が寒そうに震えて生物を誘い、狂態をさらしたという事実がよりいっそう彼女を責め立てる。

「あくぅぅぅ! やだ…助けて」

 剥き出しにされたヒカリの胸が、唾液で濡れ光りながらフルフルと震える。
 つんと天を指す桃色の乳首に誘われるように、ぶよぶよした生物の手が伸びた。手に丁度収まるサイズの彼女の胸が鷲掴みにされ、苦痛を感じるギリギリの所まで双乳が押しつぶされて、すぐに解放される。押しつぶしながら、人差し指で右に左にとヒカリの乳首を転がす。単調な繰り返し。

 ヌル……ヌル……。

 ぬめった胸は全体が赤く染まっていき、1割ほどおおきく膨らみ始める。
 舌とは違う粗野な、だが大胆な攻めは初なヒカリの官能を掘り起こしていく。感じ始めている…。その事実に、硬く閉じられたヒカリの目の端から涙がこぼれ、そして顔がより赤く染まった。

(やん、やだぁ…不潔、不潔よぉ)

 それは強烈な快感こそは生まなかったが、ゆっくりと、大地の奥深くからわき上がる泉のような、持続力のある根の深い疼痛感を伴った感覚をヒカリの体に生じさせていた。自分の体の反応と、気持ち良いと思い始めていることに、ヒカリは切羽詰まった声を漏らした。

「はぁ、あ、は…ひっ、くぅ…ん」

 怪物に撫でさすられてることが、好きな相手に愛撫されてるように感じる。一度そう思うと、まるで火がついたようにその気持ちが止まらない。骨まで溶けそうな感覚が彼女の体を支配する。もう、当初感じていた嫌悪感はなかった。いや、なくなったわけではないが、体が嫌悪を感じないのだ。

 ジュンと熱い滾りがこぼれそうになる。意識した途端、ヒカリの性器が熱く潤う。
 自分で自分が信じられない。

「ひ、ひぃ! ううん、だめ、ああ、そんなこんなことで、わたしわたしは!
 かはぁ、あああっ、くはっ、ひゃぅ! ひ、ひぃ! だめっ、だめぇ! こんなこと不潔よぉっ!」

 生物の愛撫に併せるようにヒカリは悲鳴をあげた。
 ぎゅっぎゅっと下から乳首に向かって絞るように揉み上げられ、時折飴をしゃぶるように生物の舌が硬く凝った乳首を玩び、ほぐしていく。時折赤子のように吸い上げられもした。醜悪な生物の口腔内に飲み込まれるヒカリの乳首…。唇に挟まれた瞬間、ちゅうちゅうとヒカリを発狂させかねない音が響いた。

『ちゅっ…ちゅっ…』
「はっ、はっ、はぁぁぁ〜〜〜〜。や、やめてぇ…」

 生暖かい口腔にとらえられ、身の毛のよだつ感触と共に吸い上げられたとき、猫のように体を仰け反らせてヒカリは長い長い悲鳴を漏らした。切ない、生殺しのような、だが確実に人を殺す蛇の毒がヒカリの全身を犯していく。肩で息をしながら、秘唇が軽い痙攣を起こすのを否定するように目を閉じる。

(胸を、胸を揉まれているだけなのに! 吸われてるだけなのに! ああ、私、私こんな化け物相手に…。不潔よ、私…不潔よぉ)

 かつて、密かに慕う相手を想像して自慰に耽ったときよりもヒカリの体は熱い。焚き火の側に置かれた蝋燭のようにとろけていく。溶けていく。それがいやじゃない。一度意識した高ぶりは、もう止まりそうになかった。
 生物が何かする度に、はしたない獣のような悲鳴を漏らすヒカリ。今の彼女に、部隊長としての威厳と誇りは欠片もない。今の彼女は弱い、年齢相応の一人の女性でしかなかった。

「ふ、ひぅ! あ、ああぁ!」

 性的興奮と刺激から2割ほど大きさを増したヒカリの双乳が面白いように形を変える。不気味な弾力を持った指が緩く、そして大胆にヒカリの胸を揉みし抱く。執拗な愛撫を繰り返しながら、小さな吹き出物のような物がたくさんついた舌が、思い出したようにヒカリの右の乳首に絡みついた。

「やだ、そんなところ舐めないでぇ!」

 敏感な蕾の小さいブツブツの一つ一つまでを丁寧にしゃぶられ、もじもじと切なげに足を擦り合わせるヒカリ。彼女としては蹴り上げるくらいのつもりで足を動かしているのだが…。
 足の踏ん張りが完全になくなったと見て取るや、生物はヒカリの両足首を掴むと、腰が頭の上になるように転がしてしまった。
 突然の行動と、後頭部が地面にくっつく不自然な自分の姿勢に苦しげにヒカリは呻く。そして間際で股間をのぞき込まれてることに気がつき、羞恥に体を震わせた。スーツがまだ残っているといっても、ほんの数ミリの特殊繊維だけだ。快楽ではない、怒りと羞恥に彼女の顔が染まる。

「あうぐっ…。なにをするつもりなの?」

 もちろん生物は答えない。ただヒカリの不安を心地よく感じているのか、笑っているかのように口(?)らしきところから、小さな触手を複数本出したり戻したりを繰り返した。

「やっ…ちょっと、ああっ! だめ、そんなの駄目───! いやぁぁぁ!!」

 そしてヒカリのお腹の辺りで丸まっていたプラグスーツに指をかけると、ずるずると粘液の糸を引きながら脱がし始めた。必死になってヒカリは抵抗するが、麻痺した体は思うように動かず、かろうじて掴んだ指は粘液で滑ってあっさりと外されてしまった。

「いやぁぁぁっ! 助けて、誰かぁ!! アスカ、お姉ちゃん…お母さんっ!」

 スーツの股間部分に一瞬だけ、小さな橋が架かったがそれもすぐに消えた。ふんふんと鼻息も荒く、生物が丸見えになったヒカリの性器をのぞき込む。ヒカリはなんとか動く腰を振って暴れるが、膝の辺りにまでまくり上げられたプラグスーツが、彼女の動きを封じることに一役買ってしまう。

「いやぁ、いやぁ、いやぁ…お母さん、お母さん…いやぁ…」

 生物の頭を太股で挟み込んだ姿勢のまま、開くことも閉じることもできず、ヒカリはまともにのぞかれている事にパニックに陥ってしまった。
 まだ彼女以外の誰も見たことのない部分が明かりの下に晒され、淡く陰った奥にある秘所に生暖かい息が吹きかけられる。
 そして間違いなく、濡れていることも見られている。
 しかし、ヒカリには恥ずかしがる暇も禄になかった。

「はふぅっ」

 べろりと舌が性器の周りを舐める。
 思ってもいなかった不思議な感覚に、ヒカリは背骨をそらせて一瞬硬直した。感じたわけではない。ただ驚いたのだが、それでもヒカリは体が勝手に反応したことに真っ赤になった。顔だけでなく、しつこく愛撫された胸と全身を淡く桃色に染めて。

 じゅぶり

 そして真打ち登場とばかりに、湿った音をたてながら再び生物の口から触手が吐き出された。さながら蛸かイソギンチャクの触手のような触手は、躊躇せず目と鼻の先にあるヒカリの股間に襲いかかった。そして彼女にとっては排泄器官にすぎない部分を貪欲にむさぼる。柔らかい触手が排泄器官を貪るように舐め回すという倒錯した状況にヒカリはただ呻いた。

「ひぃっ!?
 あっ…ああっ…ふあっ、やだ、いや、そんなところ、きたな、あっ…」

 じゅぷじゅく、べちょ。

 ヒカリを黙らせるように触手の動きがよりいっそう激しくなる。
 端から見たら、イソギンチャクが取り憑いたようにヒカリの性器の周辺が触手と粘液まみれになった。溶けたアイスクリームがまとわりついたような有様の触手が蠢くたびに、ヒカリの股間から泡混じりの粘液が滴り、湿った音が響いた。

 ぴちゃ…ぴちゃぴちゃ…くちゅねちょ…じゅぶ。

 同時にヒカリはかろうじて動かすことのできる上半身と首を右に左にねじりながら、出したことのない様な大声をあげた。横にアスカが居ることも忘れたように。

「…ひぃ……うああぅ、い、いやぁぁぁ!!! あ、ああっ、ああああああぁぁ─────っ!!!」

 触手の動きはますます激しくなり、執拗にいじり回してくる。今までのヒカリの自慰が1とするなら、100にも相当するような快楽の波がヒカリを乱れさせる。苦痛にも似た絶対の快楽に痙攣したように歯を噛み鳴らし、泡を吹きそうになりながらヒカリはすすり泣いた。
 そして膣内奥深くに侵入する細い触手達。
 太さは小指よりもずっと細いため、処女膜を傷つけることはない。ただ、触手がもたらす膣奥深くから響く快楽が、ヒカリの精神により深い一撃を加えていく。

「きひぃっ! あ、あはぁ! いやー!
 ああああ、いやなの、もういやなのぉ! 助けて、アスカ助けて、鈴原ぁ!


 自分もふれたことのない隠核が、痛々しいほどに膨れ上がり、自分から皮をめくって姿を現している。そしてそれを容赦なく、だが恐ろしいほどの正確さと丁寧さで生物の触手が嬲る。猫の舌のようにざらざらした触手が赤く充血した大淫唇を這いずり回り、肥大化して、包皮を自分からめくって大気中に姿を現したクリトリスを、甘噛みするように押しつぶされる。秘所を中心に広がる熱く激しい快楽、そして想像だにできなかったシチュエーションにヒカリの意識は焼き切れる寸前だった。

「お願い、良い子になるから、神様、神様助けて下さいぃ!!
 はぁあっ、んっ…んんっ! お願いします神様ぁ!」


(ああ、もう、いやぁ…。私、私こんな怪物にこんなコトされてるのに、こんな不潔なことされてるのにぃ!)

 潔癖症であるせいか、普通よりも激しい快楽に翻弄され、瘧にかかったように全身を震わせた。それでも快感を、込み上げてくるものを否定するように首を左右に降り続ける。

 そして最初の波が来た。
 膣の入り口付近でヒカリの愛液を啜っていた触手の一本が、襞をめくり深く奥に入り込んだのだ。小指ほどの太さの触手は、襞に絡みついてくちゅくちゅとひどくいやらしい音を立てる。声にならない叫びを漏らし、体を震わせるヒカリ。潜り込んだ触手は激しく前後にピストン運動を繰り返し、ヒカリの蜜を堪能し続けた。
 そして触手の一本が、ふるふると別個の生き物のように息づき震えていた隠核に甘えるように絡みつく。小指の先ほどの肉芽に神経が無数に存在するそこは、例外なくヒカリにとっても急所だ。

「…!!」

 二重の攻めに目を見開き、声を出すこともできずヒカリは体を硬直させた。一見して、死後硬直でも起こしたように全身をガチガチに硬直させ、息をすることできす僅かに震える。人間なら驚き、慌てたかも知れないが生物は委細構うことは無かった。
 動かないのなら、これは幸いとかまわずちゅぱちゅぱと音をたてながら分泌された愛液を啜りあげる。限界ぎりぎりの快楽に硬直していたヒカリの体が、心が更に高みへと押し上げられていく。そして数瞬後、限界は突破された。

 じゅぼっ…と鈍い音をたててヒカリの体内で愛液を堪能し、中指ほどの太さに肥大した触手が引き抜かれた。
 壁が…限界という名の壁が崩れる…。

 玩ばれた性器がヒカリの膣全体が震えさせる。
 遂に耐えられなくなったのか、瞳を虚ろにしてヒカリはせっぱ詰まった声を漏らした。

「……か、あっ!!」

 一拍置いて、

「はぁ、あああああぁぁぁ〜〜〜〜!!」

 悲鳴と共に栓の抜けたヒカリの秘所から大量の愛液が漏れ、ヒカリの下腹を濡らした。
 ヒカリの意識は波に玩ばれるヨットのように一度高く持ち上げられ、そして奈落の底へと叩きつけられた。全身の骨という骨が、臍を中心として発生する熱で溶けてしまったような快感。
 初めての…本当の絶頂だった。

「はぁ…あぁ、あはぁぁぁぁ………」

(……だ、め。もう、わたし)




























 闇の中で子供が泣いている。
 眼鏡をかけた、地味な雰囲気の黒髪の少女。

 あれは自分だ。
 いじめられ、生きていくことを苦痛に感じるようになったどうしようもない女の子。

(ああ、あれは私だ…。どうしようもなくなっていたころの)

 どこからか声が聞こえる。

(あの声は…アスカだ。泣いてるの…アスカが? どうして?)





『死なせないわ』

 立ち直れたのは、16歳の秋、卒業が目前に迫った微妙な時期に転校してきた彼女のおかげだ。
 惣流アスカ・ラングレー。
 ヒカリの親友。

 その美貌、知識、ユーモア、家柄など様々な点でヒカリと違う、交わることのない自分とは違う世界の人間だった。実際、転校前はさる名門お嬢様学校に通っていたそうだが。
 たちまちクラスはおろか学年、学校中の人気者となり、よその学校や高校にまでも知れ渡る…と書けば周囲の熱狂ぶりがわかるだろう。その一方、飾らない気さくな言動、芯の通ったまっすぐな信念はこの時から変わってない。
 ラブレターの束を読みもせずゴミ箱に捨て、友人に告白させるものに『あんた馬鹿って伝えといて』と酷評する。自分で告白してきた者達はそれなりに評価するが、自分がもてることを鼻にかけてるようなのは、トラウマが残りそうなくらい手酷く振る。
 ヒカリを振った男を、

『あんたみたいに人を見る目のない、中身のない男なんて冗談じゃないわ』

 と痛快なまでに切り捨ててしまう、そしてそれが許される…あらゆる点でスーパーと言うにふさわしい。
 クラスが同じになったと言うことだけで、ヒカリにとっては奇跡のような相手。

 それが親友にまでなる…ある意味、それはヒカリをいじめていた相手のおかげなのかもしれない。




(もう、我慢できない…生きていたくない)

 自分だけでなく妹にまでいじめの手が伸びたことを知り、妹に謝ることもできず、いじめた相手に立ち向かうこともできず、無力さを思い知った。そして彼女は、衝動的に屋上の手すりから下をのぞき込んでいた。

(このまま飛んだら楽になれる…)

 あまりにも甘い毒の誘惑。
 一歩、ほんの一歩踏み出せば、5秒と掛からず楽になれる。

「もう、良いよね。生きていたって辛いだけだから。
 ゴメンねお姉ちゃん。ノゾミ…巻き込んでゴメン。お父さん…馬鹿な事したって怒るのかな? でも良いよね。
 お母さん…今、そっちに」

 そんな彼女に、我が身も省みずにしがみついて引き戻した少女…惣流アスカ。

『馬鹿! あんた同じクラスの洞木でしょ!? なにしようとしてるのよ!?』

 馬乗りになり本気で怒鳴るアスカ。
 本気で自分に向き合ってる…自分を見ている…そう感じ取る間もなく、反射的にヒカリは声を荒げてアスカに掴みかかった。

『ほっといてよ!
 私なんて、生きていたって、いじめられるだけで、痛いだけで、苦しいだけで…辛いことばっかりなんだもん!
 あなたに関係ないでしょう! 死なせてよ!』

 凶暴な感情に支配されたヒカリは、普段の大人しく地味な容姿からは信じられない様子で襲いかかる。目を血走らせ、泡を吹きながら爪を立てる。だが、顔をひっかかれ、首を絞められながらもアスカははなさない。否、離してたまるもんか。

『死なせないわ! 絶対に死なせない! あんたみたいに甘ったれた奴は絶対に!
 世の中にはねぇ、生きていたい、死にたくないって思っていても死んじゃう人だっているのよ!!』
『良いじゃない! 辛いことばっかりなら! 生きていればいいことあるなんて、そんな無責任な白々しいこと言わないでよ!』
『確実にあんたより不幸でも、それでも必死に生きようとしている奴もいるのよ!! 恥ずかしいと思わないの!?』
『知らないわ! 関係ないじゃない! よくも邪魔して! あんたなんか、あんたなんかっ!』
『この…いい加減にしろっ!!』

 そして、アスカの怒声と共に鳩尾に打ち込まれた拳が、ヒカリの意識ごとその暴走の芽を刈り取った。あとで良く思い返したものだが、家族以外の誰かに本気で殴られたのはあとにも先にもあれが初めてのことだった。

(あ、ああ…)

 喉の奥からあふれ出る酸っぱい臭い…。汚れないと良いけど…そんなことをのんきに思いながら、薄れていく意識の中、途切れ途切れに呟くアスカの声が、痛いほどヒカリの心に残った。

『生きていれば、どこだって、いつだって幸せになれるわよ。太陽と月と、この大地がある限り…。
 知り合いの、受け売り、だけどね』








 そしてヒカリは変わった。変わらないわけがない。

『ヒカリはまずその格好から直さないと』
『え、うん。…って髪、切るの?』
『伸ばしすぎて痛んでるのよ。肩ぐらいからバッサリと切った方がいいわ。それからその野暮ったい眼鏡も変える。
 コンタクトにした方がいいんじゃない?』
『え、え、あ、うん』

 いきなり名前で呼ばれたことに戸惑うこともできなかった。それが、ただ心地よい。
 言われるままに、無造作にゴムで止めただけだった髪をほどき、肩の後ろに流す。眼鏡を外してコンタクトに換える。悪かった姿勢を矯正してもらう。

 それだけでヒカリのイメージは一変した。美人と言うほどでもなかったけど、姉妹や父親が彼女を見て一瞬驚き、顔をゆるませるような、そんな変わり方だ。
 アスカと一緒に、今までしたことのなかったようなこと…休日に町に遊びに行く、音楽を聴く、映画を見る…そんな他愛のないことでもヒカリにはとても新鮮なこと。そしてアスカという一級の美少女と一緒にいるということは、ヒカリに自信を与えた。
 そしてアスカを通じて、彼女の親友というより、心の友といえる人と友達になる。彼女…マユミはとても気の利く優しい少女で、自分なんかがアスカの側にいて良いんだろうか?…と思い悩んだヒカリの気持ちを、まるで心を読んでるように察して、いたわってくれた。

『洞木さん…。そんなに不安なんですか?』
『いつも不安になるのよ。私みたいなのに、どうしてアスカは親しげに接してくれたのかって。いつか、私を…裏切る…んじゃないかって。足下が定まらないのよ。不安なの。怖いのよ、アスカがいなくなるんじゃないかって、また、私の側から…誰も、いなくなるんじゃないかって』

 ただマユミは優しくヒカリを抱きしめ、『大丈夫です』と静かに告げた。記憶の影に消えた母を思い出すような包容に、気がつかない内に涙が溢れた。スポンジが水を吸うようにヒカリの不安を、焦燥を、恐怖を引き出し吸い取り、代わりにいたわり、温もりを注ぎ込んだ。



 飛び級で大学まで卒業しているアスカが、自分が通うような普通の高校に通ったのは、マユミが卒業するまで一緒にいたいから…だったと言うが、それも納得できるほど彼女と一緒にいると心が和んだ。

 そして数ヶ月後、高校を卒業したとき…。

『私も…士官学校に行くわ』
『止めたって、無駄…って顔してるのね。いっとくけど、士官学校ってきついわよ。普通にOLしても良いんじゃないの? 普通の大学に行くとか』
『わかってるわ。でも…! 結局、いずれは兵役に就かないといけないのなら、要領よくやりたいの』
『意外に権力志向が強いのね。まったく、ヒカリと言い、マユミと言い…』


 もうヒカリは無力にいじめられるような少女ではなくなっていた。

































 ヒカリが実際に意識を失っていたのはごく僅か、ほんの数秒程度だろう。
 だがその間にプラグスーツは完全に脱がされ、彼女は粘液に包まれて生まれたままの姿となって冷たい床に横たわっていた。両手を開き、無防備に足を広げて胸と秘所をさらけ出した姿で。淫靡な音をたてつつぬめる彼女の秘所が誘うように緩く息づく。
 朦朧とした意識の中、ヒカリは自分の腰に優しく腕が回されたことを感じた。一瞬、夢を見ているのかと思い、愛しい男性が自分を抱いているのかと考える。だが、ぼやけた視線の先で蠢く薄茶色をした肉塊とその頭部で動く赤黒い生物を見た瞬間、彼女の意識は覚醒した。
 そう、ここは彼女の夢見た夜景の似合うホテルでもないし、目の前にいるのは二度目の恋の相手…無骨で美男子ではないけれど、優しく不器用な小隊の同僚ではない。

「きゃぁっ! いやぁぁ───っ! ヒィ───!

 自分の置かれている状況を思いだし、慌てて上半身を起こそうとする。とっさに生物の肩に手をかけて体を引き剥がそうとするが、まだ麻痺の効果の残る体では何の効果もない。いや、たとえ麻痺して無くても異常な筋力を持ったこの生物相手では、やはり意味はなかっただろう。今の彼女は、蜘蛛の巣に完全にからめ取られた一匹の蝶だ。

「た、たすけて、いやいや!
 誰かぁ───! アスカぁ───! 綾波さ───ん! 霧島さん、山岸さん! 誰でも良いから助けて!」


 一度絶頂を迎えたことで意識がかえってはっきりしたのか、思い出したようにヒカリは激しく暴れた。引っ掻き、蹴飛ばし、叩く…つもりで暴れる。実際は撫でさするも同然で可愛いものだ。
 そんなヒカリの抵抗を楽しみながら生物の腕は彼女の腰を掴み、舌が改めてヒカリの乳首に絡みつく。ぞわりと染み渡る快楽に、まだ熱く火照っていたヒカリの動きが止まった。

「あ、い…っ」

 思ってもいなかったことに、乳首と舌がじゃれ合う感触に、喜びの声を漏らしてしまうヒカリ。ハッとした顔で自分の口を押さえようとするが、一瞬とはいえ快楽に溺れたことはまぎれもない事実だ。こんな状況だというのに感じてしまったことは。

「そんな、嘘よ…。私、感じてなんか、気持ちよくなんかぁ」

 誰に対しての否定なのか。自分自身か、それとも同じように凌辱されているだろうアスカに対する否定なのか。
 そのヒカリの精神の間隙を突き、生物…寄生された人間部分の肉棒がヒカリの腰に押し当てられた。生物の尾が延髄から突き刺さり、脊髄を取って一度肛門から抜けて睾丸の間に突き刺さったそれは、性器を人類のそれとは似ても似つかない形に変化させていた。
 形も、大きさも、まがまがしさも。
 特に亀頭部分の変化は著しい。喩えるなら虎かライオンなどの肉食獣の松ぼっくりじみた形状に変化していた。しかも簡単に抜けないようにかえしが有り、竿の部分にはナマコのように柔突起が幾つもはえている。

 とにかく、少し硬いゴムのようなざらざらとした襞が無数に存在する亀頭部分が、舐めるようにヒカリの秘唇にこすりつけられた。ヒクヒクと動くヒカリの性器の入り口がごりごりと擦られ、乳首程度の固さの柔突起に愛液がこそげ取られる。すでに愛液の飛沫で濡れていたヒカリの性器は、絡み合い淫靡な水音をたてる。

「ひっ、はひぃ」

 ビクンとヒカリの体が硬直する。ヒカリの顔を絶望の闇が覆った。快感に悶えながらも生物が何をしようとしているのか本能的に悟ったのだ。

 犯される!

 貫かれるのだ。

(いやいやいや、それは絶対にイヤぁ───!!)

 初めての相手は、彼でないといけないのだ。
 自分の気持ちに気づいてもくれない朴念仁、自分からではなく、絶対に彼から告白させて、その上で柔らかいベッドの上で愛されるはずだった。
 そして除隊後、一緒に何かの店…小さなレストランを夫婦で一生懸命切り盛りして幸せな家庭を作る。子供を4人…男の子と女の子を2人ずつ…。

「鈴原ぁっ! 助けてぇ!」

 最後の抵抗とばかりに右に左に体を揺するが、それはただ秘唇の割れ目で生物の亀頭を玩び、喜ばせるだけの結果を生んだ。膝をついて中腰になった生物は、右手でヒカリの腰を掴んで持ち上げると、彼女の尻が自分の太股に寄りかかるように引き寄せる。そして左手はヒカリの肩を掴み、無理矢理接合する瞬間をのぞかせるように彼女の上半身を引き寄せる。

「やだっ、そんなこと…鈴原、鈴原…はやく、早く助けにきてよ…」
【ぐぐぐぐぐぐぅ】

 準備ができたと見たからか、言葉? あるいは叫びらしき物を漏らし、生物は腰を軽く引く。
 むりやり背骨を曲げられ、その場面を見るようにし向けられたヒカリは『ひーひー』と浅く速い息を吐き、なんとか逃れようとした。不自由な動きで這いずって逃げようとするが、腰と肩をがっちりと捕まれた彼女は逃げることはできない。
 ただ、無力に自分の秘唇に、まだ誰にも許したことのない場所に生物の肉棒が潜り込もうとするのを見せつけられる。

「や、やだやだ! お願い、もう許して、これ以上はこれ以上は! ダメダメ、駄目ぇ!!」

 大きく開脚させられ、太股で生物の腰を挟み込むようにさせられる。こうなっては手を離されたと言っても、足を振った程度では腰の位置をずらすことさえできない。余裕を持って生物はヒカリの振り回される両手を掴み、腕を引っ張ることでじりじりと彼女の体を自分に密着させていく。

「いぃいやぁ──────!!! はーなーしーてぇ───!」

 麻痺の効果がなくなったのか、肩が抜けそうになるまで上半身を仰け反らせ、じたばたと足を振ってヒカリは暴れるが、前述したとおり逃げられそうにない。生物は一切意に介さず狙いを定め───。

「ひぃ! ひあっ、やだぁ───!
 鈴原、鈴原っ! いや、嫌いにならないで、嫌いにならない…あっ!?

 ヒカリの動きが止まる。
 生物の熱を秘所で感じたせいか、彼女の荒い息と悲鳴に合わせ、秘唇がひくひくと蠢く。拒絶で満たされた心とは違い、生理的欲求で呼吸しているみたいに。あるいは侵入者を待ち望んでいるように。
 そして口づけするようにピッタリと亀頭の先端が押し当てられ、ついで割れ目を割って僅かに先端が潜り込み───。

「たすけて…。か、神様」

 凶器のような肉棒がヒカリの中に埋没していった。




「きゃあああぁぁぁぁぁ〜〜〜っ!!!
 いやぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!
 ひぃいいい〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
 あああああ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」



 まだ亀頭の先端部分が入っただけだというのに、ヒカリは目を見開き涙をあふれ出させながらこれまでで最大の絶叫をあげた。ぎしぎしと軋むそれは充分に濡れているヒカリの性器でも受け入れるのは難しい。その大きさ、太さのいずれも桁外れだ。

「イヤッ、やだっ、こんなの、こんなこと絶対信じない!
 こんなことあるわけないもん! こんな事になるために、私生きてきたわけじゃっ、ない!
 ぐぁぅ! うぁあああっ!!」


 否定の言葉を繰り返し、苦痛に身を捩らせながらヒカリは泣きわめいた。
 今まで生きてきたのが、怪物に無理矢理犯される為だったなんて信じられない。

「ああ、ああああっ、嘘ぉ…こんな、こんなぁ、痛い、痛い…」

 軋みながら肉棒が自分の中に侵入するごとに、ヒカリの呟きから力がなくなっていく。ごりごりとカリと言うにはえぐすぎる部分がヒカリの膣内を抉っていく。苦痛と絶望感からヒカリの全身から少しずつ力が抜けていく。抵抗しようと力を込めるだけで、恐ろしいまでの苦痛が全身を走る。その一方で、体を抉られていく体の中心は異常なまでに硬直を始めていた。

「い、痛い…痛いよぉ。動かないで、あがぁ、あ、ああっ!」

 力を入れることで苦痛はますます強くなり、よりいっそう肉棒を締め付ける。
 まだ、入り口だけだが、亀頭を絞り上げんばかりに締め付けるヒカリの膣壁に、生物は嬉しそうに口を開き、よだれを垂らした。

【うぉっ!】

「いやっ、いやっ、いやぁ───っ! お母さんっ」

 途中、僅かな抵抗感があったがそれも一瞬で崩れた。プチプチと何かが千切れるような感触があり、それを最後に充分すぎるほどに濡れていたヒカリの膣内に、生物の轟直が一気に埋め込まれた。ビタンと湿った音をたててお互いの腰がぶつかり合い、僅かに遅れて…精液に混じって薄く、赤い鮮血が流れた。ヒカリの処女の証、無下に手折られた花は散ってしまった。

「痛いっ! 痛い痛いっ!!
 ああ───!」

 一方、ヒカリは処女を奪われたことを悲しむより、苦痛の方がより大きく心を占めていた。受け入れようとせず、とにかく抵抗していたのだからある意味それは当然だろう。今自分がどこにいるのか、自分の名前が何というのか、そう言ったことすら思い出せないほど痛みだけが全てを支配する。

「い、痛いっ! 痛い痛い痛いっ!」

 目を見開き、断末魔の悲鳴を上げるヒカリ。全身を突っ張らせ、骨が折れそうなくらいくらいに上半身を仰け反らせる。
 一方、締め付けられる自分の肉棒にもたらされる快楽に、これ以上ないくらいに涎を垂れ流しながら、汗が浮かんだヒカリの胸を生物の舌が舐め回す。

「いやぁ!」

 火箸を突き混まれたような苦痛がヒカリの体を貫いた。
 ヒカリは顔をくしゃくしゃにし、わんわんと幼児のように泣きじゃくった。そんなヒカリの様子があまりにも哀れだったからか ─── 勿論そんなことはないだろうが、生物は少しでも苦痛が和らがせようとに気を使う紳士のように、ヒカリの上半身を包み込むようになで回し始めた。胸を撫で、波打つ腹をさすり、涙の流れる顔を丁寧に舌で舐める。

「ふあっ、ううっ、こんな、酷い…酷すぎる…。お母さん…」

 そうこうする内にヒカリに変化が現れた。だらんとマネキン人形のように投げ出されていた足が、あるいはつっぱねるように生物の胸を押していた手が、意に反するように生物の体にしっかりとしがみついたのだ。種を明かせば、胴体以外の部分に力を込めることで、痛みを忘れようとしていたのだが、それは見ようによっては彼女が自ら望んで生物の肩に縋り付き、足を腰にしっかりと絡めたようにも見えた。
 そのまま両者ともしばらく動かず、ただすんすんとすすり泣くヒカリの声だけが響く。

「ヒック…ヒック…ヒック…あうぅぅ」

 だが、数十秒後…。わずかにヒカリの痛みも薄らいだのか、その泣き声が少し途切れた。生物の目が陰険な光りを帯びる。再び生物は活動を開始した。
 静かにしっかりと締め付けるヒカリの膣に、おかえしをしようというつもりなのか。

「えぐっ、えぐっ、うそよぉ、こんな不潔なこと、わたし、わたしが…。
 違う、違うわ。私の、初めての時は、初めての時は、好きな人と、鈴原と…。
 うぇ、ちょっとまだ、そんなやめてよ! い、いたい! あああっ!」

 繋がったままのヒカリの体を転がし、腹這いにさせると、膣の締め付けに刃向かいながら、ゆっくりと体内の肉棒を引き抜いていく。一度傷つけられた部分を擦られ、愛液を掻き出されてヒカリは喉を引きつらせて痛みに喘いだ。こじ開けられ、また鮮血が結合部分から滴った。

「ああ、抜いて、そのまま抜いてぇ!」

 弱々しい懇願。
 涙に濡れて懇願しながらも、ヒカリは僅かに安堵していた。まだ妙な感覚は残っているが、内側から体を引き裂くような圧迫が無くなっていくことで、ほっとため息をつく。そして体内に入っていた肉棒がほとんど抜けたとき、反射的にヒカリは力を抜いた。どっと冷たい汗が全身に滲み、絞り出すように深い息を吐き出した。

(ああ……抜けて、いく。終わった…)

 その瞬間。
 カリの所まで抜けていた肉棒が、再び子宮に突き当たるまで撃ち込まれた。血と愛液でドロドロになっていたヒカリの膣内を滑り、肉棒の先端が奥にごつんと当たる。腰がぶつかるバチンという音が響いた。


「ぐあぅ!」


 感電したようにヒカリは全身を震わせた。息が詰まるような苦痛に、呻くこともできない。
 それを無視し、ただ無秩序に締め付けるだけの抵抗が無くなったことを喜ぶように、生物は執拗に腰を動かし続ける。
 腰がリズミカルに律動を繰り返す。
 浅く浅く、深く深く。『の』の字を描くように腰を回す。膣壁の一部、Gスポットとも呼ばれる神経の固まりがある部分を亀頭でつつく。それは数分前まで処女だったヒカリにとって、とても理性を保てる物ではない。


「ぐふ! やめ、いやぁっ!」

 じゅぷじゅぷと泡を立てながら生物の肉棒がヒカリの膣内を前後する。しかも生物の性器はヒカリの体内で極小さい、ミミズのような触手を10本ばかり先端から飛び出させ、内側からなぶり始めたのだ。

(あああ、なになになにこの感じ!? な、なめてる! あそこの奥まで舐めてる!)

 本来なら感じることのできない子宮の内側の感覚に、ヒカリは床に爪を立てるようにして身悶えた。苦しい、きつい、痛い…そして、切ない。

「んっあっ、やっ、やめて! あんっ」

 宇宙線焼けでわずかに紫がかった黒髪を乱し、前後に体を揺すられてブルブルとヒカリの双乳が震える。それに刺激されたように生物の腰の動きがいっそう激しくなる。既に処女であったことに対する、当初あった遠慮のようなものは微塵も見られない。

(こんな、こんなの!)

「あっ、ううぅ…ヒック、ヒック。あう、いじめ…ないで」

 そのうちヒカリに変化が起こり始めた。
 最初あった処女膜を破られた物と、異物を挿入される苦痛がゆっくりと、だが完全に消えていく。それどころか圧迫感と疼痛感が段々と心地よい物に思えてくる。それがとても恐ろしくてならない。
 生物の体液の持つ媚薬としての効果、そして先に散々行われた執拗な愛撫の効果が恐ろしい勢いで発揮され始めた結果だ。即効性はないが、体を異様に高ぶらせ執拗に尾を引く結果を生む。

「う、うそ…ひぃ、やは、は、はふ!」

 硬直して暴れるだけだったヒカリの体から力が抜け、まるで刺激を一心に受け止めようとするかのようになった。生物の腕に支えられながら、手をつき体を反って甲高い嬌声を上げる。二の腕に挟まれ、絞られたように突き出た乳房が痛々しい。

「あふ、あふぅ〜〜っ。ううっ、うんっ」

 硬く目を閉じ、涙を流すだけだったヒカリの顔にも変化が起こっていた。頬がてかてかと艶を帯びだし、ほんのりとピンク色に染まる。そして硬く食いしばっていた口はゆるく開いて、とぎれとぎれに小さな、だが間違えようのない喘ぎ声を漏らし始めていた。

「ひゃん…あふ、ううん。んっ、はっ、はぁっ!
 ふあ、ふひゃん! やっ、きゃふ、あ、あああ、あはぁぁぁ…」

 自分の身体が意志に反して濡れていく。
 彼女の膣は当初は硬く硬直して締め付けるだけだったが、今は前後する肉棒を逃がさないように優しく、だがしっかりと波打つように締め付けている。そして自分もそれを喜んでいる。緩く開かれた口から涎が垂れ、甘い嬌声が溢れて止められない。
 その事実にヒカリは戦慄した。犯されただけでも発狂しそうな事態なのに、そのことを自分が受け入れ始めている。感じ始めている。
 否定したかった。自分自身の体が呪わしかった。
 だが一度自覚した事実は、考えれば考えるほど縛鎖となってヒカリの全身を責めさいなんだ。

(はっ……いや、うそよ…そんなの…助けて、す、鈴原っ)

 びくんびくんと秘所は痙攣を繰り返し、手足もそれと共に硬直と弛緩を繰り返す。
 生物を拒絶することも忘れ、彼女の体は力無く震えた。

「もうだめ、誰か、誰か、怖いの、誰か助けて」

 再び彼女の体が奥底からわき上がる何かで満たされ始めた。臍から下が溶けていくような不思議な感覚が全身に広がり始め、ただ前後する生物の動きと、内側から自分を抉る生物の肉棒、それがもたらす快楽のことしか考えられない。躯の芯を熱いなにかでドロドロに融かされ高みへと意識が持ち運ばれていく。

「…うう…くふ、あ、いい!」

 突然、生物の腰の動きが止まった。
 反射的にヒカリは呟く。無意識の内に、続きをせがむようにキュゥと膣が肉棒を締め付けた。

「やぁぁあああ、こんな、はぁ…ことっ」

 望んでいるわけではない。心は望んではいないのに…。無意識の内にそう言ってしまう。
 無論、生物は疲れたから止まったりしたわけではない。より深く、芯から快楽を味わうためだ。
 再び彼女の腰と足を掴むと、ヒカリのことなどお構いなしに姿勢を変えた。あぐらをかくように座りこむと、ヒカリの上半身を軽々と引き起こし、向かい合うように自分にしがみつかせた。いわゆる、対面座位の体勢だ。
 しがみつくにはこれ以上ないくらい適した姿勢になったことで、ヒカリは反射的に生物の上半身に抱きついた。背中に回された腕はきつく結ばれ、大きく左右に開いた足は、くさびを打ち込まれたようにきつく生物の腰を挟み込む。
 むろん、心の底では嫌悪感は消えない。凌辱されてる事実も消えない。今も自分の肉壁が生物の肉棒を激しく締め付けているのを感じている。この事実はもうどうやっても否定することはできない。

(だったら、だったら…)

 切なくてたまらない。この憤りにも似た感覚を沈めてもらいたい。
 艶めかしく開いた口からのぞく舌が、ねっとりとした糸を引きながら艶めかしく蠢く。

(ううぅ、鈴原、鈴原ぁ)

 ならばせめて自分を犯しているのが、愛しい男だと思うことにした。そうでなければならないのだ。鈴原トウジ軍曹でなければ。
 鈴原トウジ…彼女を初めて女性としてではなく、単なる同僚として接してくれた異性。勿論、他のムサシ、ケンスケ、といった隊員達も十分紳士的に接してくれるが、どうしても女性だから、と不必要に気を使う。そこにどこかよそよそしさを感じてしまう。しかし、彼は…だからよく衝突し、喧嘩することもあったけれど…。

 今彼女を抱きしめているのは鈴原トウジ。
 舌を這わせているのは鈴原トウジ。
 猛々しい剛直を挿入しているのは鈴原トウジ。

 なんと愚かしく、だが悲しい行為だろうか。

「す…鈴原…し……て」

 覚悟を決めたせいか、体全体からほんのりとメスの匂いを発し、硬く締め付けるだけだったヒカリの体が受け入れるように弛緩していく。
 潔癖性特有の堅い美貌を崩したヒカリの変化に面食らったが…気持ちがよければそれで良い生物は、より深く感じ取れるようにヒカリを受け入れた。力を抜いたヒカリに、怒濤の嵐のような快感が襲いかかった。

「あ…はぁ…ん」

 あぐらをかいたその上にヒカリを座らせた状態で、生物は激しく腰を動かす。粘液を泡だてながら、狂ったように激しく肉棒がヒカリの性器に突き立てられ、花びらにも似た秘唇をめくりあげながら肉を貪る。屹立して普段より一回り以上大きくなって包皮から露出しきっている肉の若芽が玩ばれ、むさぼられて痛々しく腫れ上がっていく。最初の頃の面影は欠片もない。既に、溢れる愛液には赤い血液の色は混じっていない。1年以上前からそうであったように貪欲に快楽だけを貪る器官と化していた。

「あ、ああ、鈴原ぁ。き、気持ち…いい…ああ、痺れ、ちゃう」

 その性器から伝わる快楽と、たくましい上下運動でヒカリの首はガクガクと揺れ、大量にこぼれた汗が虹の滴を作りながら飛び散る。チャームポイントであるそばかすの上を、玉の汗が伝い落ちた。


「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」
【うぉ、うぉ、うぉ、うぉ、うぉ】

 しゅるしゅると生物本体から触手が伸び、なよやかなヒカリの全身を軽く締め上げた。胸を強調するように締め付け、太股や首、秘所まで嬲るように全身を愛撫する。そしてヒカリの嬌声を聞きながらずるずると愛液を啜り続ける。太股を震わせながらヒカリが首を仰け反らせた。筋の浮いた首筋を汗が流れ落ちる。

「きひぃっ!
 …す、鈴原。もっと、もっと優しく、ああ…わたしっ!」

 すっと伸ばされた生物の腕が、揺れるヒカリのお下げの髪に向かった。興味を持ったのかしばらくいじり回していたが、偶然、髪を左右のお下げでまとめていたゴムが外れ、粘液で湿った状態ながらもふわりと彼女の背中に流れた。
 僅かにウェーブがかった髪の毛を背中に張り付け、「ああ」と甘い息をヒカリは漏らす。ただそれだけの行動でもヒカリの快感を呼び覚ますのだ。

「ひあっああぁっ、凄いっ、ああ、凄いっ!
 鈴原、凄い! たくまし…いぃっ。お願いっ、もっと、もっとぉ。
 ああん、もっと続けてぇっ!」

 髪型が変わったのと同じく、人格までも変わったのかもしれない。
 すっかり快楽の虜となったヒカリは、荒々しい息を吐きつつ別人のようにおねだりを繰り返した。嵐のような悦楽に翻弄され、ヒカリの口からひっきりなしに甘い嬌声が噴きこぼれる。秘所はきゅうきゅうと生物自身を締め付け、彼女自身もっと激しい快楽を貪ろうと、自分から激しく腰を動かし続ける。
 じゅっくじゅっく…と湿った肉の音が一人と一体の結合部分から響いた。

「あひっ! …あひっ! ……ああっ!」

 ドロドロにとろけきったヒカリの中をむさぼりながら、生物もまた耐えきれなくなったのか震えるうめきを漏らす。だが少しでも快楽を味わいたいので必死に我慢する。一端動くのをやめ、奥まで肉棒を差し込んだまま荒い息をはき続ける。

「なに、なんでやめるのよ? ああ、だめぇ!
 体がかって…にぃ!」

 喩え動かなくても、芯に肉棒を感じるヒカリはもどかしそうに体を震わせた。ほつれて目の上に張り付いた髪の毛を鬱陶しそうに払い、肩を揺すって生物を促すが生物はやはり動く様子が見られない。仕方なく、ヒカリは1人で腰を左右に動かし続けた。
 そこには洞木ヒカリという、清楚で生真面目な女戦士の姿はもう無かった。

 くちゅくちゅと先ほどに比べれば控えめの音が響く。

「やぁん、あふぅ。あぁぁぁぁ……。気持ち、気持ち…いい…。
 なんなの、これぇ」

 そんなヒカリの姿に生物も堪えきれない。だが最大限の自制を振り絞って動くことを堪えながら、じっくりとヒカリの体内の感触を楽しんだ。別の生き物のようにキュッ、キュッと締まる膣を感じ、細胞の一つ一つまでが歓喜に打ち震えている。

 眼前では汗が浮かんだヒカリの胸が上下に、はたまた左右に揺れ、それに合わせてピンク色の乳首が鳥よけのおもちゃのようにブルブルと動いていた。


 生物は静かに観察を続ける。
 確実に身籠もらせるため、最高の状況で射精するために。
 そのときのために、股間の間でもりもりとなにかがせり上がるのを堪える。だが、ヒカリの秘所は生物の限界を超えるような快楽を与えてくる。そういつまでも耐えられはしない。



(あつい、せつない、もどかしい)

 そのうちヒカリはじれったい思いにかられた。狂ってしまうような刺激の連続と肉棒が体内をえぐる感触に溺れ、快感は先ほどから寸刻みで高まっているのに、待ちこがれている解放の時がなかなか訪れない。このままでは狂ってしまう。

「うううっ、鈴原ぁ。お願い、もっと、もっとぉ。大丈夫だから、大丈夫…ああ、もっと強くして。ん、ん〜〜〜っ! ふぅああ…」

 手足をしっかりとしがみつかせ、ピクピクと全身を痙攣させるヒカリ。なにも見えていない光の目が、虚空をさまよう。生物の遺伝子に刻まれた記憶が告げる。

【おおおおおおぉぉっ】

 遂に生物は動いた。
 動きの制限されるあぐらから、再度膝を突いた中腰の姿勢になると一度肉棒をヒカリの中から抜いた。

「あんっ!」

 抜かれるとき、返しのようになった部分に入り口を限界まで開かされ、ヒカリの口から極上の砂糖のように甘い声が漏れる。
 体を転がされながらも、ヒカリは甘美な期待に体を震わせた。遂に再開されるのだ。

「はぁぁぁ、鈴原、鈴原ぁ…好き、好き。大好きよ」


 ヒカリの右足を肩に抱えると、躯の芯に愉悦を送り込み続けようと生物はよりいっそう激しく、だが緩急と突然の変化を加えながらヒカリの秘所を突いた。十数分前とは別人のもののように開いたヒカリの秘所は、まだきついが生物の肉棒を優しく受け入れていく。抵抗無くつるりつるりと肉棒は出入りし、スイッチを入れたようにヒカリの上半身が仰け反った。

「ああ、あっ、ああっ! んんぐうぅっ」

 ヒカリの腰と生物の腰がぶつかり合い、パンパンと手を打つような乾いた音が響く。
 ぐちゅぐちゅと淫らな音を立てて、どこにそれだけのと驚くほどの愛液が漏れ、床に小さな池を作った。

「いや…そんな、ああっだめぇ。
 狂っちゃう…狂っちゃうわ! ああ、こんな不潔なことなのに!
 鈴原、私不潔なの、ああ、壊れちゃうよ!」


 パンパン、ぬちゃぬちゃと音が大きく響き、強姦されていることを忘れたヒカリの声もよりいっそう大きくなった。一声毎にオクタープが上がっていき、同時にチカチカと彼女の瞼の裏で何かが瞬く。

「ひっ、ひぃ…ああ来る、来ちゃう!」

 遂にヒカリの上半身だけでなく、全身が足の先までガクガクと痙攣を始める。
 なにかが、火山の溶岩のように何かが吹き出す寸前になっている。よくわからないでいたがヒカリは確信した。
 空気を吹き込まれ続け、肥大しきった風船の爆発はどうなることか。
 想像するだけで気絶しそうになる。

 しかし、ヒカリは甘美な夢に包まれたまま堕ちることはできなかった。意識が闇のそこに堕ちていこうとする寸前。

 彼女は、最後に起こるであろう事と、自分を犯しているのが怪物であることを思いだしてしまったのだ。悪魔の計画は、常に人を絶望に陥れることから始まる。


(出すのね、出しちゃうのね、熱いの、とっても熱いのを…。
 って…だ、だめ! このままだと妊娠しちゃう…いくら鈴原との子供でも…だめよ、早すぎる…。
 …………鈴原? す、鈴原? え、鈴原が私を?)

 彼のはずがない。鈴原トウジは今惑星カレスにいるはずなのだ。そもそも今自分を犯しているのは…。

「鈴原!? あ、ああっ」

 見開かれた彼女の目に映るのは、不気味に蠢く肉塊。
 そしてその愚劣な肉棒が出入りする小刻みに痙攣する自分の秘所。開いた唇はドロドロに溶け、見慣れた小さい状態でなく、なにか別の生物のように肥大し、肉棒を受け止めて愛液の涙を流し続けている。


 自分は…犯されている。
 快楽に身もだえしながら。
 誰に?
 名前も分からない、異形の生物に。


「あああっ、あ、だめぇぇぇ」

 そしてヒカリは絶頂に達した。
 きゅっと膣がすぼまり、奥までくわえ込んだ生物の肉棒を激しく締め上げる。

「や、やっぱりいやぁ! こんなのはいやぁ! 子供なんて、そんなの!!
 いやぁっ、いやぁっ! んあっ…ああぁぁぁっ!!!」

【フゥオオオオッ!!】

 後方に仰け反らせた首をガクガクと振り、絶望と嫌悪と官能にヒカリが絶頂に達する瞬間、生物もまた呻き声を漏らし全身を震わせた。もう我慢する必要はないのだ。ボコボコと脈動するようにヒカリの体内に埋め込まれた肉棒が内側からの圧力で歪にゆがむ。
 ミルクのような精液の中を、ゼリーのような卵が漂う。それは確実にヒカリの最深部へと届く。
 通常の人間の数倍に発達した精巣から、大量の精液が怒濤のようにほとばしった。


「あ、ああっ、はぁあっ!? すずはら、鈴原ぁ〜〜〜〜〜!!!」


 膣の奥深くに水流が当たる感覚と灼熱感。小さな粒…空豆ほどの小さな粒が子宮の奥まで注がれる感じるはずのない錯覚めいた感触。
 確信はない…でもわかる。
 これは卵だ。
 今、自分は生物の子供を体内深くに宿したのだ。

 ヒカリは最後の一線まで全て崩壊したことを悟った。
 糸が切れたようにヒカリの体から力が抜けていく。



ゴボッ‥‥ゴボゴボッ

「ああ、中に、中にぃ…。できちゃう、赤ちゃんできちゃう」

 恐ろしいほど大量の精液がヒカリの膣内に注がれ、収まりきれなかった精液が黄色い糸を引きながらヒカリの膣から漏れだした。床に愛液のそれとは明らかに違う、濁った水たまりを作っていった。

 半開きになり、焦点の合わなくなったヒカリの目は、それを見ていない。感じていない。
 新手の生物が自分にのしかかったことも見ていない。

「あ……ふぅ」

 引き起こされ、乳房を荒々しく揉まれても、四つん這いにされて獣のように後から突きこまれても、かすかに吐息のような声を漏らしただけ。ただとめどなく涙があふれる。
 いずれ正気に返り、また泣き声を上げるのだろうが、今の彼女は人形同然だ。
 恋心もなにもかも全てを無くしてしまったことに絶望する生きた人形だ。

 尻を高く掲げさせられ、激しく突き立てられても少しずつ前に這いずりながら、「あ、あ、あ、あ」と断続的に声を漏らす可哀想な人形。淫らな人形。


 そして物語はもう一つの局面を迎える。


 ガラス玉のようにうつろなヒカリの目には、同じく繰り広げられるもう一つの地獄絵図が映し出されていた。




そして話はそれぞれへと続く




後書き

 ちょろっと以前のバージョンより書き足しました。某氏の意見を採り入れましたがどうだね、ん?
 萌えるかね、このイインチョは萌えるかね? イインチョがこんなことになってハァハァかね?
 まだだ、まだ終わらんよ!(・A・)

2003/10/30 Vol1.05