-授業参観-


Original text:FOXさん


 「惣流・アスカ・ラングレーさん!」
 凛とした女教師の声が教室に響き、綾波レイはその身を固くする。
 「お立ちなさい」たしか葛城ミサトという名前の教師……がさきほどまでの快活なものとはまったく違う口調で呼びかけ、窓際の席の少女が弾かれたように立ち上がる。

 ……あ、あの娘は、この学園を見学に来たわたしの案内役をしてくれた女子生徒。
 とても快活で、とても美人(最初に紹介されたとき、レイはその姿に見とれてしまったくらいなのだ)で頭も良さそうな、この学園を代表する生徒。
 それは彼女に連れられて施設を見学するときに明らかになった。暖かく親密な口調でレイに語りかけるアスカと通り過ぎる誰もが……女生徒も男子生徒も、そして教師も含めて……彼女を賞賛の眼差しで眺めていたのだから。

 しかし、立ち上がった彼女には、紅茶色の髪をしたヨーロッパの血を引く美少女には、そのときの活発な印象はみじんもない。
 教室の後ろに置かれた席に座ったレイからでも震えていることが分かるほど、怯えていたのだ。

 「惣流・アスカ・ラングレーさん。これはなにかしら?」女教師は静かな口調で小さな紙切れを見せた。
 それは女子生徒の手から手へ教師の目を盗んで渡されていったメモだった。
 「今日の放課後、ヒマ?」一文字一句、はっきりとミサトは発音する。まるでそれが汚らわしい単語であるかのように。
 「惣流・アスカ・ラングレーさん。答えて」
 「……ごめんなさい……葛城先生」アスカが消え入るような声で謝罪する。
 「惣流・アスカ・ラングレーさん。私はこれがなにかたずねているのよ」女教師は重ねて聞いた。
 「……申し訳ありません」アスカは謝罪を繰り返す。
 「私の質問に答えないつもりなの?」

 惣流・アスカ・ラングレーが葛城先生の質問に答えられない理由は、病弱で学園生活の経験がほとんどないレイにさえよく分かった。
 彼女はそのメモの「宛先」である誰かをかばおうとしているのだ。そのメモが「手紙」であることを認めてしまえば、この厳格な教師はその相手も叱責の対象とするだろう。
 だから、アスカはひたすら謝罪を繰り返し、その罰が及ばないようにしているのだ。
 綾波レイはアスカが同性の友人からも信頼されている理由が分かったような気がした。

 しかしそれは、アスカにとって屈辱的な懲罰を与える理由になるには十分だった。
 「授業中の規則違反」「教師への不服従」により、アスカは罰を受けることになる。
 葛城ミサトは静かに宣言した。

 「惣流・アスカ・ラングレー!教壇の前にお立ちなさい」教師のその一言に室内がざわめいた。
 「……はい」アスカは青ざめ、うつむいたままで歩き始める。
 女子生徒は悲痛な声を、男子生徒はどこか邪などよめきをあげるなかを。
 そして教壇の前に立つと皆の方を向き、葛城ミサトのあとに続いて謝罪の言葉をよく通る声で述べた。
 「わたくし、惣流・アスカ・ラングレーは、学園の規則に違反したばかりか、敬愛すべき先生のお言葉を無視しました。これは本学園の生徒として許されない行為であることを認めます」

 そのとき、まっすぐ教室の壁を見つめていたアスカの視線がレイのそれとぶつかった。
 レイの存在を認めたアスカの瞳が揺れる。
 「ど、どうか、この不出来な生徒にば、罰を……お与え……くださ……い」
 「惣流・アスカ・ラングレーさん」うってかわって穏やかな口調でミサトは言った。「罰を受ける姿勢をお取りなさい」

 それからの光景は綾波レイの想像を超えていた。
 学園を代表するアイドルはぎゅっと唇を噛みしめてから、そのスカートをゆっくりと持ち上げ、下着に護られたお尻をクラスメートたちに披露したのだ。
 そして、ミサトが指さした教壇にうつぶせに上半身を預ける。もちろんそのあいだも自らのスカートを持ち上げる屈辱的な姿勢を保ったままだ。

 「週番!」ミサトが呼びかけた。
 男子生徒がひとり、慌ててアスカのそばへ走り寄る。その表情には隠しようもないほどの喜びが、それもとても卑劣なものがあることにレイは気づいた。
 「惣流・アスカ・ラングレーさんをお手伝いなさい」
 「はい!先生!」そのメガネの少年は歓喜に震えつつ、お尻を突き出した美少女の下着、少女らしいデザインの純白のそれに手を掛け、膝のところまで引き下ろす。
 そのあいだもアスカは声ひとつ漏らさない。しかしレイは、その彼女のまなじりに涙が浮かんでいることを知る。

 ……あの、あのアスカさんがこんなことをされるなんて。
 レイは全身の震えを止められない。
 ……あのアスカさんにとって、これはとても屈辱的なことにちがいないわ。クラスメートたちに、それも男の子にお尻を見られてしまうなんて。
 しかし、抜けるように白い肌を持ったアルビノの美少女は、もはやこの光景から目を離せない。

 「週番」の少年に肩を教壇に押さえつけられて、膝にショーツをからみつかせたまま踵を浮かせている少女に葛城ミサトはゆっくりと近づいていく。
 その右手に細い鞭を持って。

 「惣流・アスカ・ラングレーさん。このような違反に対する罰は?」儀式めいた教師の声に答える美少女の声は涙を必死でこらえたものだった
 「じゅ、じゅうご……かい……の鞭打ち……です」
 「そう。では、数えなさい」

 ひゅっ、と風を切る音。
 健康的な、思春期の少女のむっちりした美臀を硬い棒が打つ音。
 惣流・アスカ・ラングレーは深く息を吸い込み、「い、一回!」と叫んだ。
 クラス中に通る声で。涙の成分を含んだ声で。



◆ ◆ ◆



 「で、いかがでしたか?本日の授業見学は」
 「とても素晴らしいものでした」綾波レイの養父であるゲンドウ氏は深くうなずく。「充実した施設、優れたカリキュラム、厳格で教育愛に満ちた教師。そして優秀で従順な生徒」
 老教師は大きな笑みを浮かべる。
 「ご理解いただけて光栄です。どのように優秀な生徒であっても、必要なときには罰を与える。まだまだコドモですからね。身体で覚えなければならないことは多いのです」
 「分かります」ソファーに腰掛けたゲンドウは隣に座るレイの頭を子犬のように撫でた。「この娘は病弱で、休みがちだったもので、つい甘やかしてしまったのですよ」
 「ご心配なく」老教師は微笑し、そして命令する。

 「綾波さん。お立ちなさい」
 少女は慌てて立ち上がる。彼女の耳には「あの」惣流・アスカ・ラングレーが八回目の鞭打ちで完全に屈服したときの声がこびりついていた。
 あの、甘く、媚びるような鳴き声が。
 「綾波レイさん。あなたは来週からこの学園の生徒になります」老教師の声には絶対に逆らえないなにかがあった。「制服の採寸をします。来ているものをお脱ぎなさい……さぁ!」

 少女は衣服を脱ぎはじめた。
 紅の瞳を虚ろに揺らめかせながら。
 教室中どころか、廊下の端まで届く声で、謝罪の言葉を叫び、媚び、泣き叫び、最後にはメモの宛先が親友のヒカリであることを暴露してしまった惣流・アスカ・ラングレーを目の前にしてしまった綾波レイが、その命令に逆らえるはずがない。

 カーディガンを脱ぎ捨て、ブラウスのボタンを涙をこぼしながら外していく。
 スカートを落とし、言われるがままソファーに腰を落としてソックスを脱ぎ、浅ましくショーツの奥底までさらけ出すポーズを披露してしまう。

 そしてそのショーツの恥ずかしい染みを発見された少女の意識は完全に飛んでしまった。
 だから養父と老教師の会話の意味など理解できない。

 「しっかり躾て差し上げます。そうですな、来月の帰宅休暇のころにはお養父さまのことを想像しながら夜な夜な自慰に耽るくらい、あなたを恋い慕うようになるでしょう」
 「……たった三週間で?」
 「それでも長いくらいです。あの惣流・アスカ・ラングレーくん。彼女は入学二週間後の休暇で帰宅する際にはもう、リムジンの後部座席でパパのペニスを銜えるのに夢中になるくらいに調教されておりましたよ」
 「そうですか。それは楽しみだ」

 少女の内股を撫で上げるゲンドウ。
 綾波レイは身を震わせながら吐息を漏らす。
 あの惣流・アスカ・ラングレーと同じ音色で。




Menu


From:雑談スレ2