主役不在の部屋、或いは主役だけの部屋

Original text:引き気味


『 competitive show 』


 カメラを通して、どれだけの数の目が今自分たちにいやらしい視線を注いでいるのか。
 それはアスカには分からない。
 もとより耳に取り付けたヘッドセットが邪魔をしている。こうやって昼日中のカラオケボックスを随分な利用の仕方をしている、この一部屋の中の物音ですら、禄に聴こえてやしないのだから。

 ともすれば、悪態をついてテーブルの脚あたり蹴り飛ばしたくなる。そういう気持ちを抑えて。
 アスカは改めて視線を走らせた。
 テーブルを挟んで片側の席には誰も座っていない。その代わりに並んでいる、何台もの配信用カメラ。
 その全てが、リモートでアスカに指示を出している相田ケンスケが用意したものというわけではないのだろう。
 いつの間にか余計な知識を身に付けてしまっていたものだが、明らかにあのカメラマニアが機材として選ぶとは思えない、安物のwebカメラも混ざっている。
 三脚を立てず、テーブルの端にクリップで留めるだけといった雑なセッテイングもしない筈だ。
 (どう見たって……)と、確信があった。
 ――つまり、ある意味では安堵できる要素がそこにあった。
(あのヘンタイメガネなんかにこれだけ、揃いも揃って餌食にされてたとか。冗談じゃないわよ)
 部屋の中にはアスカの他にも3人。一目で分かるほど飛び抜けた綺麗どころが揃っていた。
 要するに、アスカと同じでその見た目の良さが災いしたということなのだろう。同じ立場であるらしい犠牲者が全部で4人、市中のなんてことない有り触れたカラオケボックスに集められているというわけだ。
 まず間違いなくアスカと同様、どれだけ破廉恥で、どれだけいやらしい内容の脅迫であっても抗えない状況に追い込まれているのに違いない。
 そしてその中の一人。最後に部屋に入ってきた女性と目が合った瞬間、アスカも向こうもお互いが真っ青になったのである。
(まさか――ユイおばさままでだなんて! こんなの、考えたくもなかったわ!)
 よもや小さい頃からのご近所付き合いの、幼馴染の母親までもがこんなところに現れるとは。

(ああもうっ、最悪ッ。サイアク、サイアク、サイアク――! おばさまが居るなんて。おばさまが見てる前でだなんて……!)
 いつまでも若々しい美人ぶりで評判の、碇家の母親。ユイおばさまとアスカも親しく呼ばせて貰っている彼女もまた、敏い人なのだ。カメラで撮られている前で下手な反応をすれば、どうなるものかも分からない。示し合わせることなく、咄嗟に見知らぬ者同士であるかのように余所余所しく振る舞うことは出来たが、
(だけど……アイツは知ってたってことよね)
 歯噛みするしかない思いだった。
 アスカの自宅についてもぞっとする程詳しく調べ上げていて、いつの間にか浴室の内部まで盗撮映像に収めていた相田ケンスケだ。
 その上、ユイの息子である碇シンジとは3馬鹿トリオとまで呼ばれる――表面上は――仲の良さ。
 自宅に上がり込む機会だって幾らでもあったに決まっている。
 さてはそうして隙を突いて、盗撮カメラなりの小細工を仕掛けていたのか……。
(あのド変態みたいなのが他にも居るってのも最悪。あのド変態に、おばさままで私と一緒みたいな酷い目に遭わされてたってのでも、やっぱり最悪だけど……!)
 本来であればこんな卑劣な罠に嵌められるような人では無いのだが。それはお互い様なのだろう。
 ここずっとを可能な限り思い返してみても――アスカ自身が余裕の無い中ではあったのだ――学校で見かけるシンジの様子に、おかしいところは無かったように思う。
 であるのなら、アスカも知るあの芯の強いひとも、周囲に異常を悟られないよう振る舞いに細心の注意を払っていたということになろうか。
 胸にこみ上げる痛切な感情こそは、まさしく同病相哀れむというやつだった。
(おばさま……)
 四人がけのソファー席の内、彼女は一番奥に座っている。
 アスカとは間に、丁寧にブラシを通しているらしいウェーブのかかった艷やかな黒髪をツーサイドアップにした、少しだけ年上の高校生であるらしい少女を挟んでだ。
 皆アスカと同様、どの席へとまで事前に指示が出ていたのだろう。ユイも今しがたは、先に部屋に入っていた自分たちの前を居心地悪そうに通らせてもらっていた。
 そこでバッグから取り出した、いかにも使い慣れない様子のヘッドセットを耳に装着して。丁度ぎこちなく位置を確かめ直しているところのようだ。
(後で……どうにかして、話を聞かなきゃ)
 取り付けさせられた盗聴マイクで、喋る会話内容からトイレの音までチェックされている立場ではある。
 いつどこであの陰湿なカメラマニアの盗撮映像に監視されているかも分からない。
 しかし、彼女もそうと知ってしまって、手をこまねいているわけにもいかないのだ。
 そうやって二人知恵を出し合うことが出来ればこれ以上無く頼もしいはずの、その横顔をちらちらと盗み見ている内に。それに気付いたらしいツーサイドアップの彼女に、勘弁してよとばかりの悲しそうな目を向けられてしまったのだった。
「ち、違っ」
 そういったつもりではなかった。
 しかし、つい言い訳しかけたのも拒絶するように、顔を背けられてしまう。
 当たり前だろう。
 誰がこんな惨めな目に遭っている所を、これからもっと誰にも見られたくない目に遭わされるところを、他人に目撃されていたいものか。
 唇を噛み締め、アスカも俯くしかなかった。

 そんなところを不意打で。『ザザ、ザッ――』と酷い雑音が、鼓膜のすぐ傍を埋め尽くしたのだった。
「……ッ!?」
 すぐに雑音が切り替わる。ヘッドホンから聞こえてきたのは憎むべき強姦魔、相田ケンスケの声だ。
『さて、いきなりの所から入るリクエストだけど――』
 まずは立って。そうしたら、と声は命令してきたのだった。
『スカートを捲ってさ、パンツ見えるようにしてよ。カメラに向かってよく映るようにね』
(っッ、だろうと思ってたわよ! いかにもワンパターンスケベの考えることだわ!!)
 今日という日までに、慣れが出来てしまうほど繰り返させられた事ではある。日頃相田ケンスケの向けてくるハンドカメラだのの前でやらされている内容からしたら、まだ序の口ですらあった。
 しかし何時になろうとどれだけ繰り返させられようと、女の子にとっては慣れただけ許せるようになるということではないのだ。
 それなのに何時も、従ってしまう以外になにも出来ないのが呪わしい。
 罵倒の文句を脳裏に並べ立てながら、アスカはソファーから立ち上がった。
 ケンスケの声が途切れるのと同時に、またヘッドセットは雑音を耳に流し込んできている。十中八九、禄でも無い魂胆あっての真似だろうが、今はせめてもの慈悲として受け取るしかない身だ。
 すぐ横の少女たちも左右でよろよろと立ち上がっている。
 アスカと同じ命令をされたのだ。
 それを努めて意識しないように。出来れば目も瞑ってしまいたかったのも――そういった反応の一つ一つに、目の前に置かれたあのカメラレンズの向こうに座る卑怯者が喜ぶだろうからと、我慢して。強張った顔に何の表情も浮かべまいとだけ考えながら。
 アスカは、制服の野暮ったい青地のスカートを前から捲っていって見せた。
 両隣の少女も、そして奥のユイも同じようにしたのが分かる。
『OK、言われた通りの履いてきてくれたみたいじゃない?』
 中学の制服を来た女の子が披露してみせるには、行き過ぎが寧ろいやらしいというより似合いもしない不格好さになってしまっているのでは。そうとすら思え、気が進まなくてならなかった黒レースのスケスケのショーツ。アスカの年相応に生え揃いだした薄い茂みをも透かしているそれを、ケンスケの声がからかう。
『大丈夫、みんな喜んでくれてるよ』
 それではっきりはした。やはりというべきか、これは相田ケンスケ一人だけの仕業ではない。何人居るのかもわからないレイプ魔達によってアスカ達は、あられもない格好をこうして今、絶賛共有されてしまっているというわけだ。
『ええと、なんだって? ……あはぁ。毛を残してやってるなんて随分優しいじゃないかってさ。俺はまぁ、ツルツルに剃ってやっても面白いとはまだ思わないんだけどな』
 クックッと喉に引っ掛けた感じの嫌な笑い方を添えて、ケンスケが教えてくる聞きたくもない中身。
『お姉さま、つっても惣流には誰のことか分からないだろうけど……。その“お姉さま”ちゃんの飼い主ドノが言う事にゃさ、女のそこはツルツルにしてやって、そんでそこに――』
 誰が飼い主か分かるように、サインを入れてやるんだってさ。
 そんな、聞くだけでぞっとする内容を。笑い話じみた風に軽く言ってのける。
 口にするどころか実行しさえする人間が居て。ここの四人の中にその被害者が居て。そいつは現在進行系で今、アスカを幾らでも好きに脅すことが出来る材料を増やしていっている真っ最中だということになる。
(……ぁ、ああっ。なんてことよ……)
 お姉さま“ちゃん”と相田ケンスケは言った。ならば、少なくとも。女の一番秘めておきたい場所に残酷な烙印を刻まれてしまったのは、碇ユイでは無いのだろう。
 それだけが、それぐらいが救いだった。
 いよいよとなったら殺してやる。そうとすら心を決めていたアスカの目論見も、こうとなってはだ。
 これ程に危険な人物、そして何人の手に自身の弱みが渡ってしまったかを思えば、さしもの勝気さも到底奮えそうにないのだった。

『じゃ次ね。惣流も勿論予想済みだろ? こういうの場合の、次ってのはさ』
 いよいよ気は重くなるばかり。だのに一層調子を上げて、愉快げに指示をしてくるこの声の相手の憎々しさときたら。
 カメラ越しに視姦してくる連中に命じられた通り披露してやっているその下着を、今度は脱ぎ下ろしてみせろ、と。
 思春期の十四歳の女の子に向かって直に秘所を晒せという重ねて恥知らずなこの命令であっても、それでもアスカはまた黙って従うほかないのである。
「……っッ」
 だから出来るだけ無造作に見えるよう、躊躇が手付きに出てしまわないように務めながら。横からスカートの中に差し入れた手でするすると。その、僅かには温もりをも連れて行ってしまう布切れを膝に引き下ろしたのだった。
 淡々とした調子に見えていればと、それだけを考えて。錯覚のような空気の流れが、男の目になど絶対に晒したくなかった部分を撫でていくまでに。

「…………」
 目もくらみそうな恥辱で頭に血を上らせつつ、ただスカートの裾を持って立つ。
 そこにカメラの並んだ向こうにあるのは只の壁だが、実態とすればあの相田ケンスケを入れた何人かの卑怯者達が、そこのシートに座っているのに等しい。
 自分の髪と同じで、西洋の人種と混じっているのが出た紅茶色のブロンドヘアーの、恥毛を。カメラ越し、何人なんだかも分からない連中が下卑た笑みで眺め回しているというわけだ。
 まだ薄くしか生え揃っていない分、ズームでもすれば簡単にアスカの秘裂の様子や、わずかに覗いている桜色の花弁までもを見て取れる、そこを。
(ああもう! とんだラッキーよね。どうせ相田のやつと同じ、救えないレベルでモテない連中なんでしょ? アタシみたいな美少女とか、おばさまみたいな美人にパンツ脱がせて見物できるとか、ほんとだったら一生掛かっても無理ってヤツらが……!)
 ヘッドセットからの雑音が、こうなってしまえばたった一つの頼りだった。
 視界の中に察知してしまう細かな動きを意識上に乗せないようにしていれば――。何台も並べられたカメラのどれかが首を巡らせて、RECランプの赤い光の灯った正面に自分を捉えようとしていたり。一眼レフのカメラが大砲のように砲身を伸ばして、どこをズームアップしようとしているのか。少なくとも、それらの生々しい息遣いじみたモーター音を聞かずには済むのだから。
 そして当然、ひとしきりの鑑賞に満足がいったなら、次に来るのは更にというエスカレートだ。
 アスカにもよく分かっていたし、呼び出された時から覚悟はして来たつもりだった。
『じゃ、今度は後ろ向いてよ。それでシートの背もたれに肘突いてさ、お尻をこっちに向かって突き出すように……分かってるだろ? もちろん隠しちゃ駄目だからな』
 ニヤニヤと頬を歪めて言っているのがありありと伝わってくる。
 そんな姿勢を取ってしまえば、こうして正面を向いて立つよりずっと露骨にあからさまに、後ろからの目に彼女の性器が丸見えになってしまう。
 足の開き加減によってはその部分の唇に似た見た目どころか、スリットの内側に息を潜める粘膜構造までもが目の当たりにされてしまう恐れがあった。
 瞬間、カアッと頬を火照らせ、脳裏に過ぎってしまったのは。ケンスケに要求されるがまま躰を許すしかなかったここ数ヶ月で、処女を失う以前とすっかり変わってしまった自分のそこ、その有様だった。
 ぴっちりとスリットを閉じていた蕾の頃の清楚な自分など、とうに記憶の中にしか残ってはいない。
(分かってるのよ。もうまともに……可愛いお嫁さんだとかになれるなんて、思ってないけど――!)
 スカートの裾を落として覆い隠そうという儚いぐらいの抵抗であっても、勿論許可しないというわけだ。
 真っ当に考えて到底頷ける事柄ではない。が、どこまでいってもアスカには従う以外の選択肢が無い。
 この場に集められた美しい生贄達の、誰もがそうだ。
 今度は、さっき立ち上がった時よりも四人それぞれの動きはばらばらだった。
 突き出すようにして性器を丸出しにしろなどと、これに思い切ってしまうのは流石に少女たちにとって容易いことではない。
 アスカであっても、奥歯をギリリと噛み締めながら二の足を踏んだ。
 悲しいかな。こんな空気の中でも率先してしまえるのが心の強さだと、単純に美点めいて受け止めることは出来ないのだ。
 ツーサイドアップの彼女とは違う方の、隣に居る少女がそうだった。
 幼い顔つきではなかったが、この中では一番背が低く、スラブ系だろうか――アスカとは違う形で異国情緒がある色の薄い白金の髪をショートにして、頬に僅かにソバカスの跡。褐色の肌で、額になにか丸く大きめの絆創膏を貼っているのもスポーティーな印象の、本来は活発な子なのだと思わせる佇まい。
 しかし先程立ち上がった拍子に、気まずくて反対側の少女には顔を向けないようにしていたところへちらりと見えてしまった彼女の顔。それは、目が一番死んでしまっていたのだ。
 その彼女が、力なく肩を落としたまま後ろへ向き直って、アスカが言われたのと同じ姿勢を取ってみせた。
 靴底が分厚くデザインされたブーツを履きっぱなしでソファーの上に登り、どこの学校の制服なのかも分からない短いスカートをもそもそと手繰り寄せて、つるりとした褐色のヒップを丸出しにしてしまう。
 それらの一連の哀れな動きの中に、彼女の下腹部に有って然るべき翳りを見て取ることは出来なかった。
 それどころか、先に耳元で聞かされたようなおぞましい文字めいた、入墨のようなものすらその場所に垣間見えてしまって。
「――――!」
 思わず息を呑んだ気配は、誰の唇から漏れたものだったのか。
 アスカもぎくしゃくと後に続いた。

『ははっ。さすがのエリート様でも、ここで先頭切ってとはいかなかったみたいじゃない?』
 揶揄する声は、これも幸いなことにアスカに聞こえるのは相田ケンスケ一人分のものだけだ。
(――死ね。死ね、死ね、死ねっ、死ねッ!)
 後ろを向いて、カメラレンズから隠れたと思ったその時には、アスカはもう下唇を噛み締めてしまっていた。
 見られずに済むと思った途端、涙も滲んできていたのだ。
 ぎゅっと瞼を閉じて、睫毛を震わせる。
 一思いにと勢いを付けて上半身を伏せさせ、膝でソファーに登る。肘を背もたれの上に。胸の膨らみを自分で抱きしめるような格好。
 ローファーは脱がなかった。
 そうやって壁との間の僅かなスペースに身を乗り出すようにしつつ、お尻を突き出して。一思いにスカートの後ろ裾を、背中からやった手で跳ね上げさせ、そこをご注文通りの丸出しにしてやる。
 案の定、恐れたそのまま、背後に向かって剥き出しになっているその場所には。少女なら誰でも決して人目に触れさせるわけにはと考える粘膜の花びら同士が、息を潜めて口を閉じ合わせていたのを、膝を突いたその姿勢によって解けさせられた――外気に染み込まれた感触があった。
 薄く解けただけの隙間も見逃さず入り込んできたのは、最悪の見物人たちによる視姦もまた同時にだろう。相田ケンスケと同じ人種なら見逃す筈がない。
(良いわよ。好きなだけ眺めなさいよ! どうせもう……あのクソ馬鹿死ね変態メガネにズコズコ好き放題突っ込まれて、中古になっちゃった私のアソコよ……!)
 ショーツを履いていたとは言っても、そもそもが一応は程度のもので。所詮、黒レースのスケスケのやつでしかなかったのだ。
 アダルト女優みたいに太腿まで下ろして丸出しにするポーズを取ってしまったところで、(どうせ、変わらないわよ!)と。癇癪じみた現実逃避をそう泣き喚いてしまわないのは、ボロボロにされたプライドの最後のカケラにも似たものだった。
『いやいや、色気もへったくれもないねぇ。幼稚園児がジャングルジムに登るんじゃないんだからさぁ』
 ヘッドホン越しの苦笑いを聞いた時には、半分近くベソをかきそうになってはいても、それと共にしてやったりの気持ちですらあった。
(誰が、アンタみたいなのを喜ばせるような真似、好き好んでなんか……!)
 しかし、『悪い意味で男心を理解しちゃってるよね。さっすが天才』と当て擦ってみせた少年は、『下見てみろよ』と付け加えたのだった。
 アスカは目を瞬かせた。
(なんですって……?)
 慌てて、であってもなるだけさり気なく目元を擦り、涙を拭った視線に探させる。
 ソファーが壁からいくらか離されていた、その隙間の床の方に。丁度アスカの顔を斜め下から捉える形で設置されていたのは――。
 そこにもまた、無機質な輝きのカメラレンズが彼女の泣きべそ顔を捉えていたのだった。
「ヒッ――!?」
 声だけのケンスケは、いよいよ腹を抱えんばかりに大笑いしていた。
『最ッ高! 良い顔芸見せてくれるじゃん、惣流ぅ〜。くっちゃくっちゃに顔歪めちゃって、もうギャン泣きまで後一押し〜みたいなとこだったのにさ、スカートはペシッって、いかにも私平気ですって感じに頑張っちゃってて』
 傑作だったよと。
『文句無しで、一番人気だったぜ? いかにもイジメてやりたくなる強がりが、バカで健気なお嬢さんじゃないかってさ。好評沸騰中』
 ケンスケたちの手元では、四人があられもなくヒップを突き出した画像に添えられて、それぞれの顔をきっちりとフォローしたワイプ窓も表示されているというのだ。
『横の“お姉さま”は、なんつぅかもう表情筋死んじゃってるって感じだし。惣流と、反対側の“Rちゃん”ぐらいかな。楽しい反応見せてくれたのは』
 “Rちゃん”とは、警戒心の強い猫のようなツリ目がちの瞳で、アスカのことも拒絶していたツーサイドアップの彼女のことか。そちらに触れた後には『惣流の気になる奥様の方はさ』と。気掛かりでありつつも、また聞きたくもないという気持ちもあったユイのことについてまで、べらべらと。
『手強いよね、すぐに気付いてんだもん。いや、さっすがだわ。動じまいって頑張っててさ、大した誤魔化しぶりなんだぜ? ほんとさすが、オトナの女〜って感じかな』
 『でも、スカートの中身は惣流とどっちがマシかって感じのチョー紐な感じのマイクロショーツだったりでさぁ』と、余計なところまで言い添えてくる。
 要は、アスカが油断して晒していた鼻をグズらせる惨めな顔も含めて、四人が四人全員、性器開陳ポーズを取らされた最初から全部反応を見られてしまっていたのだった。
「ぅ、ゥううう――っっ」
『今頃になってさぁ〜。顔なんか隠すなよ、無駄なんだって』
 今度こそ涙声を抑えられなくなったアスカに向かって、ひひひとケンスケは機嫌よく次の指示を告げるのである。

『ほら惣流、皆さんお待ちかねの挨拶タイムだよ。自己紹介よろしく。AV女優のインタビュー真似させて、何度も練習させてやっただろう?』
「そんなの……嫌、イヤぁぁ」
 とうとう堪えることにも限界が来たまま、グズりながら嫌がるアスカの『……だって、おばさまも居るのよ?』と縋ってみせた震え声。
 だろうとも、まるで真剣に取り合ってみせようという態度を見せないのが、アスカにとってまさしく一生の一大事だった処女をいとも容易く奪ってみせた、この同級生の少年だ。
 家族ぐるみで付き合いのある二つの家庭から同じタイミングで罠に掛けられた彼女たちを、一箇所に集めて嬲ってやろうという邪悪な企画。その、これからこそが本領であるのだから。
『あっちのさ、碇のとこの母さんも。気になんかしないって。どうせあっちはあっちで、いっぱいいっぱいに決まってんだし』
「…………」
『だって惣流の方こそ、気にしてないじゃないか』
 『……え?』と今更にそこに思い至る。自分の隣の彼女たちも、今――そういえば、そうに決まっていたのじゃないかと。
 アスカの様子を見て取って、ケンスケが雑音と自分の声とを切り替えて流し込んでいたスイッチを、また別のチャンネルに切り替えてみせたようだった。
「……っッ、この声っ!?」
『――仙石原の、こ、コンフォート17に。夫と、中学二年生の息子と、三人で暮らしています。ぃ、碇……ユイ、37歳、です』
 聞いたこともないくらい酷く動揺したその声。自分の名前を言わされるところでは流石に口ごもって躊躇していた、それは。いまこの時、この場所、自分のすぐ近くで言わされているのに違いないのに。アスカは全く気付いていなかった。
『……な?』
 途端に左右が気になった。
 両隣の彼女たちの唇もやはり、そんな風にどもりながら絞り出しているところなのか。
 そこを視界に入れようと一瞬反応してしまった自分の瞳の様子も、面白おかしく鑑賞されてしまっているのだろうが。
(ぁ、ああ……っ!)
 この瞬間にでもソファから跳ね起きて、部屋から出ていけたなら。
 けれどそうしたところで破滅から逃れることは出来ないし、まだしも今は段階を踏んで地獄に引きずり込まれているそれが、容赦なくすぐにでもというバッドエンドシーンへ変わるだけのことだ。
 既にユイという身近な人間もが巻き込まれてしまっている。逃げ場があるとも思えない。希望的観測と変わらない夢は見られない。
(きっと、そんなことしたら……)
 すぐ横で何かを言わされている彼女の、死人のようになってしまった目を思い浮かべてしまう。
「ぁ、あたしは……」
 相田ケンスケが繰り返して促すのに、抗えるアスカではなかった。
「……市内の、第一中学校に通ってます。惣流……、ぁ、アスカ・ラングレー、14歳。ひ、非処女……です」
 情けなさ、惨めさでプライドはズタズタだ。
 最悪の記憶である初体験についてすら口にしなければならないのだ。
「……初体験は、一学期の最後の日で。今のご主人さまにお仕置きされて……っ、っッ。ろ、ロストバージン、しました。それから夏休み中、ずっと……調教してもらってました――」
 目の前が真っ暗になる程に血の気の引く思い。
 でありながら、最低の恥辱が頬を熱くさせていて。ガクガクと震え始めた脚では言い付け通りの姿勢を保つのにも一苦労だ。
 そうやって、太腿の間でピンと張って足に絡んでいるレースショーツ程度によろめきそうになっている、赤毛の恥毛を晒した中学生少女の、泣き声が混ざり始めた肉奴隷プロフィールの自己紹介を。
 俯いてしまった形の良い顎にポタポタと涙を伝わせる、ハリウッドの美少女子役じみた碧眼の女の子の、後ろからズームアップした画像で眺める範囲ではまだまだ十分処女と変わらない、綺麗なピンク色をした秘唇の様子を。
 相田ケンスケとその同類達が、丸出しのヒップを並べさせられた他の生贄達と合わせて鑑賞しているのだった。

『ご、御主人様に飼って頂く前の、経験人数は……。夫と、ぉ、夫と――』
 ――いかにも聡明そうな怜貌を耳たぶさえも赤くして。今日までの結婚生活で堅く守り通していたかつての過ちについて告白させられる、美しい人妻。
 彼女にとっては娘のような年齢の少女たちと並べられてしまえば一際目立ってしまう、その熟しきった性器の色具合。よく発達したラヴィアが覗く秘唇の両側に完全に生え揃った黒い恥毛の、大人の女らしい繁茂の様子。小娘にはこの色気は醸せない、みっしりとした質量感のあるヒップの曲線美を。

 ――馬鹿な男に熱を上げてしまったばかりに、姉も同然に自分を慕ってくれた後輩を地獄の性奴隷調教に巻き添えにしてしまったという褐色少女の、ぽつりぽつりと語らされていく人身売買転売履歴と、
『あたしの……これ、出来損ないのペニスみたいなこれを、喜んで咥えてくれて……』
 その後輩少女をレズセックスの慰め合いで喜ばせていたという、標準サイズを外れたクリトリス巨根がにょっきりと垂れ下がった無毛の秘部。そして、後ろから見物されてしまえば好気の目に留まるのは避けられない、ヴァギナの両側に取り付けられた淫猥なリングピアスを。

 ――そして、同じ境遇にある少女達に向かってすら強い拒絶で壁を作っていた、あのツリ目がちなハイティーンの少女は。
 家柄と才能を鼻にかけた嫌な女でした、と。そして『雑魚マンコ』がどうのと、抵抗力の脆弱極まりなかった性的な責めに対する屈服を克明に語らされ、やはり涙声になっていた。
 カメラレンズ越しに眺めているのだろう者達と目を合わせまいとしながら、かつては完全に見下していたらしい飼い主に対する謝罪を繰り返させられている。
 まったく異性経験の無かったところから処女を奪われ、誇りを踏み躙り尽くすセックス調教を施されたという。その境遇は、アスカの辿ったこの数ヶ月と似たものだと言えよう。
 主人からの注意が入るのか、その度ごとに顔を歪めてカメラにまっすぐ向き直る彼女の、屈辱塗れの歪んだ美貌。
 ツンと上向きの小生意気そうなヒップを突き出したポーズで眺めることが出来る、秘部の様子は、おそらくはアスカがこの先に辿る過酷な運命を示すものだったに違いない。





Menu 感想はこちらへ

From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(5)