そうして彼女は嘘をついた 間奏

149 名前: 間奏♯ 投稿日: 2002/11/13(水) 00:58
「ん……んん……ん……」

 ……彼女は彼の股間に顔を埋めていた。
 口の中いっぱいに含んだ肉茎を、舌を這わせ、唇を窄めて、根元に指を巻きつけ、彼女は愛撫していた。最初は萎えていたものが彼女の中心を穿つに相応しい硬度を得るのに、おおよそ十五分かかっている。頭に載せられて引き離そうとしていた厳つい手は、最硬にまで屹立した辺りからむしろ抑え込むように力がいられていた。
(…………熱い……)
 精一杯の口唇による奉仕の最中、彼女の中にあったのはそれだけだ。身を切るような切なさも、その熱さの前に熔けてしまったかのようだった。いや。この熱が彼女の中の狂おしい想いを満たしていたのか。すでに己の奥底までもにこれの熱さが伝わっている。花弁を濡らし、下着に零れる蜜はそのためであった。
「くっ……」
 微かなうめき声。
 口の中に苦い味が広がっている。先走りのそれだと知った彼女は、口中から肉茎を抜き出し、竿の筋を下から唇を這わせながら舐め上げ、やがて頭部に口付けた。そして、鈴口に舌をねじ込む。
(出して……熱いのを……熱いのをください……!)
 両手でそれを挟みこみ、やわやわと指を動かしながら上下させた。
 彼はその手が動くたびに声を上げる。
「おっ……く」
 ふっと……彼女は何かに気づいたかのように唇を離した。
「……………?」
「……まだ、もう少し……」
 不思議そうな顔をして彼女を見つめる彼にそう呟きながら、彼女はベンチに坐る彼の膝の上に自分の腿を乗せ、胸にしなだれかかる。
 そして。
 すでに愛液に濡れた下着越しに、自身の秘花を彼の肉茎に押し付けた。
「かけて……」
「……………」
 彼が答える前に、彼女は再び動き始めていた。すでにブラジャーを外していた柔らかな乳房を白衣越しに彼の厚い胸板に押し付け、唇を首筋に当て、舌を這わせる。片手でベンチの背を掴んで自身の位置を定め、もう片方の手は彼の男の象徴を弄んでいた。唾液と先走りに濡れたそれを愛液に汚れた下着に擦りつけるように動かし、内腿に当ててその感触を楽しむ。指は当然のように優しく上下させていた。
「はあっ……んん……んっ……」
「うっ……うっ……ュウッ……」
 突然、彼女は動きを止めた。
 今、彼は確かに誰かの名前を言おうとした。それをどうにか噛み潰した。いや、誰かなどと言う必要はない。彼女はその名前を知っていたから。それは彼が最も愛していて……彼女にとってどうにもならないほどの憎悪の対象だった。

「わたしを、見て……」

 彼女は両手を彼の首に廻し、自分の唇を唇に重ねた。
 彼は彼女の背を抱き寄せ、それに応じた。


 その眼差しは、何処か遠くを見ていた。


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