視野のほんの端をそれが通り過ぎたとき、少年はなぜか振り返ってしまう。
 はっと目を見張り、急激に高まる鼓動を意識する。
 だからふらりと歩き出す。
 「お、おい、碇、どこへいくんや?」という友人の驚きの声すら無視して。
 それほどまでに少年は彼女に……夏らしい薄手のスカートに襟を立てたシャツ姿の女性に……惹かれるものを感じていた。
 少年は彼女に従って階段を上り、本来の目的地とは違う方向への電車に乗る。
 彼、碇シンジは分からなかった。
 なぜ声をかけることもできずに、彼女のあとを追おうとするのか。
 軽やかで、でもどこかおぼつかない足取りのその女性の後ろ姿に、どうしてここまで落ち着かないものを感じてしまうのか。
 だから少年は気付かない。
 彼自身の瞳にひどく飢えたものがあることに。
 同じような瞳をした男たちが数人、少年と同様に彼女のあとを歩いていることに。
 やがてホームに列車が滑り込むと、彼女はやや混雑気味の車両に消えた。
 碇シンジもそれに続く。他の男たちと同様に。
 ふだんなら彼の行動に細かく口出しする惣流・アスカ・ラングレーが、体調不良で学校を休んでしまった親友の洞木ヒカリのお見舞いのためにさっさと帰ってしまったために、少年達だけでどこかへ遊びに行くはずだったことなど碇シンジの頭から消え失せていた。
 ベルとともにその列車は走り出す。
 碇ユイと碇シンジと、その他の乗客達をのせた列車はゆっくりと加速していく。



-MODEL- Ver.Y(3)





 どうして、どうして僕は……母さんを尾行しているんだろう?
 碇ユイから三メートルほど離れたところで少年はため息をついていた。
 いつしか車内は帰宅する人々で混み始め、ちょっとしたラッシュ状態となっていた。その乗客の隙間から、碇シンジはちらちらと彼女をのぞき見ていた。
 どこか買い物に行こうとしてるだけ……だろ?それなのに黙って後をつけるなんて……ああもう。
 確かに雰囲気はいつもとちょっと違うけれど、それは僕が母さんの外出姿に見慣れていないからで……。
 どうしよう。向こうが僕に気付いてしまったら……。
 「まっすぐ家に帰らずに、なにしてるの?」って注意されちゃうよな……。
 いや、そもそも尾行していることを不愉快に思うに違いないよな。
 まったく、どうしてこんなことをしちゃったんだろ。
 揺れる電車のなかで、我に返った少年はまたため息をついた。
 でも、母さんって……こんなに……って、なに考えてるんだ?僕!
 いや、でも、なんだか綺麗だし、それに、その、胸があんなに大きかったっけ?それに、おしりも……そのせいかな?なんだか……どきどきする雰囲気が……。
 ちょ、ちょっと待てよ!ほんとになに考えてるんだよ!
 碇シンジはなんども頭を振った。
 母親に対して「綺麗」はともかくそれを色っぽいと感じてしまう自分が信じられない。それはもはや家族の情愛に対する裏切りであり、冒涜であるように彼には感じられたのだ。
 次の駅でこっそり降りよう。少年は決心する。そして今日のことは忘れよう。そうしよう。
 小さくついたため息が途中で止まる。目を見張らせる。

 碇ユイは頬を染めてうつむいていた。
 かすかに躰を震わせてうつむいていた。
 いつしか彼女の背後に男が密着していることに碇シンジは気がついた。
 そのどこにでもいそうなありふれた背広姿の男の掌は、青みがかった軽やかな生地のスカートを高く持ち上げたユイのヒップをさわさわとやわやわと撫で回していた。
 碇ユイは頬を染めてうつむいている。
 逆らうこともなく、振り返ることもできずに、かすかに躰を震わせてうつむいていた。
 碇ユイは満員の車内でその美しく熟れた肢体を痴漢に玩ばれていたのだった。


 碇ユイは左肩にかけたトートバックの取っ手を右手ぎゅっと握りしめ、同時に奥歯を噛みしめる。
 しかし吊革に掴まった左手を離し、男の手を振り払おうとはしなかった。
 そのまま背後の男に腰回りを撫で回されるままとなっていた。
 ……ああ、ああ、わたし、どうして……逆らえないの……。
 全身が熱を帯び始めていることも、頭の芯が痺れてしまっていることも自覚していた。
 恐怖と屈辱で心臓が破裂しそうになっていることも気付いていた。
 そして期待で喉がからからになっていることにも気付いてしまう。
 無法でぶしつけな指に逆らえない自分が情けなくて惨めでたまらない。
 ……声を、声……こえ、ださなきゃ……。「おやめなさい」ってはっきり言わなければ……。いえ、手を払うだけでいいの。いま、吊革を掴んでいる手で、バックをぎゅっと握っている手で。
 だが、彼女はそうしなかった。
 すぐ目の前の座席に腰掛けている小学生らしい少女……ついさっきまで隣に座っていた同級生に「ほな、また明日なぁ!」と元気よく関西なまりで挨拶した活発そうな少女……にこんな無様で淫らなさまを知られたくなかったこともある。
 あと二駅もすれば降りるのだから、それまでの辛抱だと思ったこともある。
 しかし、それ以前に彼女は悲しく理解していた。

 自分は「受け入れて」しまったのだと。
 見も知らぬ男の指に与えられる快楽に、熟れた身体が抵抗できなくなったのだと。
 先に屈服してしまった肉体に、心もねじ伏せられつつあるのだと。

 公衆の場で玩ばれる屈辱に、甘い悦楽を自身の心が得ていることを碇ユイは知ってしまっていた。
 だから、美しい人妻はうなじをピンクに染め、瞳を潤ませたままつり革をぎゅっと握りしめていた。
 噛みしめた唇からときどき甘い吐息をもらしながら。
 その彼女がひくりと全身を強ばらせる。
 さらになれなれしさを増した男の指がユイのヒップへ指を食い込ませ、柔らかで弾力的な感覚を楽しみ始めたのだった。
 ぐいぐい、ぐりぐりと好き放題に美尻をこね回されたユイはうつむくことしかできなかった。
 乱暴な指遣いが不意にやみ、代わりに伸ばした指先がたっぷりとした量感を持ったヒップを下からゆっくりと撫で上げて、その芸術的なかたちと谷間にこもってしまった熱気を味わわれても、震えながらそれを受け入れることしかできなかった。
 それどころか、男がスカートの生地越しに彼女のアナルに指を食い込ませたとたん、碇ユイは背筋を這い上がる感覚に意識をフラッシュさせてしまう。
 耳元で「奥さん、ウシロのアナもいけるんですねぇ」とささやかれると、怒りの表情を浮かべるどころか真っ赤になってうつむいてしまったのだった。
 心のなかで「だめ!こんなのだめ!こんなのだめ!」と絶叫しつつも。
 だから彼女は男の玩具にされてしまう。
 ぴたりと背後に密着され、つり革を握った左手に脂ぎった指を絡められた。ああ、と震える唇。
 逃げようがなくなったところでヒップを鷲掴みにした指がゆっくりとスカートをたぐり上げてゆく。膝丈のスカートに守られていたはずの太股が、車内の冷気に曝されてゆく感覚にユイは全身を熱くしていた。

 ……ああ、スカートの裾が太股のところまであがっているわ。
 ……だめ、だめ、下着が、もう少しで……見えちゃう。
 ……あぁ、こんな……無様な……わたしのお尻、うしろから……まるみえにされて……る。

 がくがくと膝を震わせる人妻の様子を楽しみながら、男は彼女のスカートの裾をそのウエストに挟み込んでしまった。これでもう、彼女がちょっと身を揺すったくらいでは恥ずかしい車内露出から逃れることができなくなった。
 そこで改めて男はささやく。
 「奥さん、お尻を突き出しなさい。ワタシに密着するくらいにね。そうしないと奥さんのパンティ、丸見えになっちゃいますよぉ」と。
 粘っこく卑劣なささやきに、その美しい人妻はおずおずと従う。
 吊革につかまったまま背後の男と指を絡めたまま、つやつやしたナイロン地のショーツに包まれた美尻を言われるがままに突きだして、その卑劣漢の下半身に「隠してもらう」のだ。
 だから男の指先がむっちりした太股を撫で回しても、やがて薄いピンクのショーツを触れるか触れないかのタッチで悪戯しはじめても、彼女は抵抗などしない。
 ついに痴漢の人差し指と中指がショーツのクロッチの部分に達し、その熱気と湿りぐあいを見聞されるようになってもどんよりとした瞳で車窓を流れる町並みを見つめていた。
 そのままずるりと前進された指に硬く自己主張を始めてしまった秘密の尖りを探し当てられてさすられ、とんとんと叩かれると、熱い吐息と切ないあえぎがつやつやしたルージュから漏れるようになっていた。
 さらにショーツがゆっくりと引き絞られて、清楚で上品な高級下着が卑猥に濡れそぼったTバックに姿を変えても、美しい被害者は夢見るような表情で男になかば抱きかかえられた姿勢を崩さない。いや、むしろ綺麗に揃えられた足元はじりじりと電車の揺れに合わせて開き、男の指が自在に動けるようなポーズを取ってゆく。
 碇ユイは堕落しきっていた。
 ぬぷりと侵入した人差し指に淫花を掻き回されると、可愛らしい髪飾りを付けた目の前の女子小学生にトロトロに蕩けただらしない貌を披露してしまう。
 親指でごりごりと菊門の入り口をこじられてはもうだめだった。
 くたりと全身を弛緩させ、そして痙攣させてしまう。
 声を押し殺すには、全身全霊を傾けた努力が必要だった。もっとも、彼女の痴態に気づいている者達にとっては、そのような努力などまったく意味を成さないほど、惨めに無慈悲にユイは絶頂の快楽を全身で表現してしまっていた。
 いつしか左右からも、さらには斜め後ろからも伸びてきた何本もの手に、何十本もの指に悪戯されても、彼女は逆らおうとは思わない。
 だから耳元で先ほどからささやかれていた「奥さん、もう我慢できないんじゃないですか?ちょっとどこかで『一休み』しませんか?」という言葉にがくがくとなんどもなんどもうなずいてしまう。
 前と後ろの穴を男に掻き回され、それをひくひく締め上げつつ同意してしまう。
 かすかに踵を浮かせ、かくかくと震えながら男の指に掻き回されている碇ユイは分かってしまう。
 自分が淫らきわまりない存在であることを。
 そうなって当然のふしだらな牝であることを。
 悪夢のような交わりから逃れたとたん、今度はそれを恋しがるような女であることを。

 ……いやらしくて当然なのだわ。淫らで当たり前なのだわ!
 ……だって、だってユイは、イヌとのせっくすがだいすきなオンナなんですもの。
 ……兄弟のシェパードに共有されるメスイヌなんですもの。
 ……それだけじゃないわ、それだけじゃないの……あんな子にも、アスカちゃんのお友達も誘惑してしまう悪魔ですもの。
 ……そんなオンナなのだから、ええ、そうなの。みんなの見ているまえで……チカンの指にアソコやお尻のアナを弄られて発情しても……仕方ないでしょ?

 ユイはさらにしっかりと痴漢と指を絡ませる。目の前の淫らきわまりない行為に言葉を失い、頬を染めたまま彼女を見つめている女子小学生にうっとりと微笑みながら。



◆ ◆ ◆



 碇ユイにとって、それはもはや日常だった。
 放っておくといつまでもぐずぐずと新聞を読んでいる夫を見送ったのち、これまたいつまでもぐずぐず惰眠をむさぼろうとする息子と、その彼をいささか乱暴な手段でたたき起こしに来た惣流・アスカ・ラングレーを送り出しつつユイは微笑する。
 「さ、早くなさい。まったくどうして毎日毎日こんな調子で……ごめんね、いつもいつも」前半は息子に向けた、後半は息子以上に愛おしい少女に向けた言葉を二人にかけたのち、彼女はそっとドアを閉める。
 だがそのときのユイはかすかに肩を震わせていた。
 そう、背後からそれが聞こえたから。
 四つ足の獣が威張りかえって進んでくる音が。
 欲望にまみれた「はっはっ」という荒い息づかいが。
 近所でも評判の美貌から涙がこぼれた。
 ゆっくりと振り返る。
 そこには二頭の真っ黒なシェパードがいた。それは彼女がボランティアとして通っている老婦人から一時的に預かったものだった。
 一頭は【リッキー】、もう一頭は【ジョー】。
 普段は吠えもしない仲の良い兄弟犬が、獲物を見る表情で彼女を見上げていた。
 ああ、と碇ユイは溜め息をつく。なんどもなんども首を横に振り、後じさる。
 すぐに背中がドアに当たり、彼女の逃げ場はなくなってしまう。
 ゆっくりと【ジョー】が近づいてくる。それを【リッキー】が面白そうに眺めている。
 「あ、ああ……あ……こないで……ね、おねがいだから……ね」
 ユイの言葉はどこか虚ろで、そして奇妙な媚態があった。
 もちろん黒いシェパードは立ち止まらない。すんすんと鼻を鳴らし、ユイの足元までにじり寄ってくる。
 真っ赤な長い舌が伸びた。
 「はぁぁッ!」
 ミュールを突っかけたつまさきを舐められ、その生暖かく同時に冷たい感触に彼女はがくがくと震える。
 「やめなさい!やめて!離れなさい!」
 黒い獣は耳を貸さない。
 発情しきった牝の臭いを敏感に感じ取っていた彼はそのまま面を上げ、後足で立ち上がるとワンピース越しにかりそめの女主人の下腹部に鼻面を埋めた。
 「やめなさい!【ジョー】、およしなさい!」
 鼻を鳴らして蒸れきったオンナの部分の匂いを嗅がれる。
 ウエストに爪をかけたままごりごりと鼻面を押しつけられる。
 「離れて!離れなさ……い」
 ユイの声がとぎれたのは、「彼」の斜め下からの獣欲にまみれた視線に捉えられたからだろうか。
 それとも、その下半身からにょっきりと顔を出した肉色の性器を目の当たりにしたからだろうか。
 その近所でも評判の良妻賢母の下半身から力が抜け、ドアに背中を預けたままずるずるとしゃがみ込んでしまう。
 無様に玄関に腰を落としてワンピースの裾を乱れさせ、むっちりとした太股と、恥ずかしい染みを付けたショーツが剥き出しにしてしまう。
 その染みを気取った足取りで歩み寄ってきた【リッキー】に検分される。
 くんくんと鼻を鳴らされ、触れるか触れないかの距離で熱を帯びた下着の底を丹念に嗅ぎとられる。
 「だめぇ!だめよ……」
 よわよわしくつぶやいて犬を押しのけ、脚を閉じようとするユイ。しかしその動きは【ジョー】の鋭い一喝で止まった。成人男性でも一瞬青ざめるほど強い調子の吠え声には、ユイにとって絶対の威厳と権威があった。
 だからその美しい女性は涙を浮かべて、無礼な畜生を押しのけようとした手を引っ込めてしまう。
 閉じようとした太股をむしろさらに拡げ、シェパードが好きなだけユイの恥ずかしい部分の匂いをかげるようなポーズを取ってしまう。
 はっはっ、と荒い息とともに【ジョー】が好き放題に彼女の美貌を舐め回すのも許してしまう。それどころかうなじを耳を舐め回されるたびに彼女の体温は上がり、くいしばっていた唇が少しずつほころんでしまうのだ。
 だから彼女は受け入れてしまう。
 【リッキー】の、漆黒のシェパードの厚く長い舌がずるりとショーツの中へ侵入し、彼女の愛雫を好き放題にすすり取ることも。
 ヒトの舌でも指でもあり得ない動きで奥までずるりと入り込み、柔らかく強引に襞の中まで舐め回されることも。
 つやつやしたリップを塗った唇を半開きにして、彼女にのしかかり両肩を押さえつけてその美貌をいやらしく舐め回す黒犬の長い舌を迎え入れてしまうことも。
 黒い兄弟の荒々しい息づかいと碇ユイの甘え声がさほど広くもない玄関を満たす。
 十数分にも渡る濃厚で卑猥なベーゼを交わし、腰をひくひくさせていくうちに、彼女はついに完全に崩れ落ち、地面に横たわってしまう。
 そこで血走った四つの瞳に見下ろされ、快楽に蕩けた表情をたっぷり観察されてしまう。
 そしてヒトにあらざる言葉で尋ねられるのだ。

 ……ユイ、いつまでお高くとまってるんだよ?
 ……して欲しいなら、ちゃんと頼まないとダメじゃないか。

 ああ、と息子の同級の女子生徒からも憧憬の眼差しで見つめられる女は顔をそむける。
 子宮がトロトロに煮えたぎっていることを十分に自覚しつつも。
 だが、その一言で彼女は打ちのめされてしまう。

 ……おい、いつまでニンゲンのフリをしてるんだい?ユイ
 ……プードルみたいにお洋服着てるんじゃねぇよ。ユイ

 その乱暴で不遜な言葉が頭の中でなんどもこだまする。
 ふらりとユイは身を起こす。
 うつろな表情でエプロンをほどく。
 どこかぎくしゃくと背中へ手を回し、ワンピースのボタンを外す。ゆらゆらとふらふらと肩を抜き、豊満なヒップを、きゅっと締まったウエストを、すべすべした背中を露出させて頭からその若々しいワンピースを脱ぎ捨てた。
 そしてブラジャーのホックを外そうと四苦八苦する。
 なぜなら彼女はしだいに不器用に……指をうまく使えなく……なってしまっていたのだった。
 そう、まるで獣のように。
 それでもユイは成し遂げた。たくましく優しい黒い兄弟に励まされることによって。
 喜びの涙をうっすら浮かべた碇ユイは蠱惑的なヒップからどろどろに濡れそぼった下着を乱暴に脱ぎ捨てた。
 そうして彼女は犬這いの姿勢を取る。
 「【リッキー】と【ジョー】のお嫁さん」に戻ったユイは鼻を鳴らしてさらにヒップを高くかかげた。
 【ジョー】に無造作にマウントされた。滑らかな背中に犬の前脚がのしかかる。
 「あ、はぁぁ……ン」さらに高くヒップを持ち上げ、夢見るような表情でユイは鳴いた。
 無意識のうちにひくりひくりと花びらを蠢動させ、「それ」を心待ちにしていることをアピールしてしまう。
 そこを硬くたぎった獣のペニスにずぶりと貫かれた。
 リビングにつながる廊下、そのひんやりしたフローリングに頬を押しつけて、碇ユイは歓喜の声を上げる。
 もはやそれは人の言葉として表現できる音色ではなかった。
 「あ、おお、あはぁ!お、お、ぉおおおッ」という欲情にまみれた獣じみたものだった。
 だが彼女は気にしない。するはずもない。
 できもしない。
 ただかくかくと腰を振って、ごつごつとした犬のペニスに子宮をこづかれる喜びを素敵なソプラノで唱っていた。
 家中に響き渡る声で、感謝と欲情にまみれた表情で鳴いていた。
 目の前に【リッキー】が勃起した性器を突き出すと、くんくん鼻を鳴らしながら舌を伸ばし舐め回しはじめる。

 玄関の鍵をかけることなど思いもつかなかった。
 送り出した夫や息子、それに娘同然の少女が戻ってくることもまるで考えられなかった。
 ヒトでなくなった彼女にそれを望むのは酷というものだろう。


 碇ユイの中にたっぷりと精を放った獣たちのペニスを形の良い唇で奇麗にしおわったころには、時計の針はいつも一一時を過ぎている。
 屈服の姿勢……仰向けになり、滑らかで真っ白な腹部を露わにした惨めな開脚姿勢……でフローリングに横たわり、唇から獣の淫汁をたらりたらりとこぼしている彼女の瞳に、しだいに知性の色が戻ってくる。
 「あ、ああ……わたし……わたし……」
 自身を抱きしめて泣きじゃくる。
 ……自分がなにをしたのか、なにに溺れたのか、なにをねだったのか。
 そのすべてを明白に思い出した彼女は声を震わせて涙するしかない。
 よろよろと立ち上がって浴室へふらつきながらすすみ、熱いシャワーで獣たちの匂いをおとすことしかできない。
 だが、
 シャワーとソープで痛くなるくらい肌を擦り、泣きじゃくりながらしゃがみ込んで指でどろどろした液体を掻き出して背徳の跡をなんとか清めたユイは浴室のドアを開けたところで凍りつく。
 脱衣所には黒いシェパードが、先ほど好き放題にユイを犯した黒犬の【ジョー】が悠然と座っていたからだった。さらに【ジョー】がその前脚で押さえているのは、きちんと畳んで脱衣籠に入れてあったはずの清潔な下着やシャツなのだ。
 「あ、あの……ね、じ、ジョー、おどきな……さい、ね?」
 肌に水滴をまとわりつかせたままの彼女は伏し目がちで、そのの言葉はどこかおどおどしていた。
 答えは激しいひと吠えだった。
 「そ、そんな……ね、わたし、それを着たいの……ね?」
 そろそろと伸ばすユイの手は、【ジョー】の再びの吠え声でぴたりと止まった。
 「お願い……お願いだから……」いつの間にか彼女は膝をついた懇願の姿勢を取っていた。
 答えは否やだった。
 うなり声とともに彼女の着替えを踏みにじる。
 【ジョー】はこう彼女に命じているのだ。
 生まれたままの姿でいろ、と。
 オマエは犬なのだから、メスイヌらしい格好をしろ、と。
 碇ユイは涙ながらにその命令に従うしかない。
 なぜならその着替えを諦めて寝室のドレッサーに向かうと、そこには【リッキー】がにやにや笑いを浮かべてベッドに寝転がっていたのだから。
 その邪悪な笑顔はこう語っていた。
 ……オマエのすることなんて、全部お見通しなんだよ。
 ……どうしてもニンゲンのフリしたいのなら、そのままの姿でするんだ。オレたちがいつでも「できる」姿でな。

 それが碇ユイの日常だった。

 彼女が愛する家族が帰ってくるその直前まで、素肌になにも身につけることも許されないまま犬たちの性欲処理のはけ口とされることが。
 全裸で怯えながら家事を行っているうちに、足下に身をすり寄せる悪戯な毛皮の感覚に悲鳴を上げ、ときには舌で舐めあげられる恐怖に身を震わせることが。
 食べるものこそ違えど、「兄弟」と同じく床に置かれた皿で昼食を採っていることも。
 食後の親密すぎる「兄弟」とのスキンシップ……絨毯に押し倒されて全身を舐め回されたり、マウントの姿勢でまた硬くなったペニスをこんこんとお尻にぶつけられたり……に悲鳴をあげつついつしか体温を上げてしまうことが。
 「底なしの獣欲を発散させるため」となんどもなんども自分に言い聞かせながら、さっきまで食器を洗っていた手で【リッキー】の、【ジョー】のペニスをしごき、どろどろに汚れたしなやかな指を自身の舌で清めることが。
 兄弟の艶やかな黒い毛並みを維持するために、一緒にシャワーを浴びることも。もともとシャワー嫌いの彼らにシャワーを浴びてもらうために、彼女がソープ嬢さながらのサービス……優しく抱きついて全身を使ってシャボンを塗り拡げ撫で回し、さらにはペニスへの濃厚なタッチや口唇奉仕もまじえた……を行っていることも。
 二匹の黒いシェパードの兄弟を「【リッキー】さま」、「【ジョー】さま」と呼んでいることも。

 そう、碇ユイは「二匹の王様」に仕える性奴隷としてその午前を過ごしていたのだった。


 だから、携帯電話に「彼」からのメッセージが入って来たときは心から喜んでしまう。
 その電話をとった瞬間ぴたりと狼藉をやめた黒い兄弟達にかすかに皮肉な笑みを浮かべながら、彼女はいそいそと身繕いをはじめる。
 「彼」が好む知的で女性らしいファッションの選択とメイクに嬉しく心を悩ませながら。
 碇ユイの真の支配者である渚カヲルが、彼女にどのように恥ずかしく淫らな快楽を与えてくれるかを想像しながら。
 娼婦のような下着の底がもはやぬるぬるになっていることを自覚しながら。

 だから駐車場でその命令を受けたときには彼女は耳を疑ってしまったのだ。
 涙ながらに懇願したのだ。
 「お願いです、わたしにそんなこと、させないでください。それよりも、それよりも、わたし、わたしカヲル様のおちんちん欲しいんです。今週はぜんぜん、ぜんぜん……【リッキー】さま……と【ジョー】さまとしか……お願いです!お願いですから!」
 もちろんその願いは叶わない。
 それどころか「ご主人様」が彼女がいまからどのような淫らな行いをせねばならないか説明を受けているうちに、碇ユイの精神はとろとろに蕩かされていく。
 ゆっくりとおぼつかない足取りで、彼女は駅へと向かうのだ。



◆ ◆ ◆



 「……起きて、洞木さん、洞木ヒカリさん」
 優しい声で呼びかけられ、優しく揺すられて洞木ヒカリは目を覚ます。
 そうして自分が悪夢の中にいることを知る。
 ヒカリの視野の中で美しい笑顔を見せているのは碇ユイ。ヒカリの無二の親友である惣流・アスカ・ラングレーの「もう一人のママ」であり、ヒカリの同級生である碇シンジの美しい母親。
 「あ、どうして、どうして……あなたがここに?」少女の声は震えていた。
 ユイはヒカリのベッドに腰掛けたまま、さらにその笑みを大きくする。そして少女の黒髪をそっと撫でた。
 それだけで洞木ヒカリは動けなくなる。抵抗しようとする気力も萎えてしまう。
 「それはね、【マックス】くんのため、あなたのためよ」碇ユイの微笑みはいつしか魔女のそれと化していた。「あのときの、たった一度きりですって?【マックス】君、ヒカリちゃんのことがだいすきなのに、あなたってとっても残酷な女の子なのね」
 ヒカリの純潔を洞木家の飼い犬【マックス】に捧げさせた介添人は、綺麗にマニキュアを塗った指でそばかすの浮いた少女の頬を軽くくすぐる。
 「どうしたの?ヒカリちゃん、怖いの?」
 どくん、と少女の動悸が大きくなる。しかし同時に恐怖もこみ上げてくる。
 彼女は思う。どうやって碇ユイはこの家に入ってきたのだろう?そもそも、自分が今日学校を休んでいることをどうやって知ったのかしら?
 「鍵なんて、そんなのはなんの意味もないの。簡単なのよ」ヒカリの内心の言葉にくすくす笑ってユイは答えた。「あなたのことも教えてもらったわ。学校をお休みしたことも、『風邪気味』なんて嘘なことも」
 「い、いや、やだ!いやです!あんなの!【マックス】と、犬とだなんて!もういやです!ゆるして!」
 「なにを言っているの?ヒカリ」ユイの声はあくまでも甘く、そして冷酷で淫靡だった。「彼はあなたのことが大好きなのよ。それにあなたも誓ったのではなくって?【マックス】くんのペニスにずぶずぶ貫かれて、子宮にたっぷり精液を注ぎ込んでいただいたとき、あなたは誓ったでしょ?『わたしは【マックス】のお嫁さんになります』って、あれは嘘なのかしら?あれはそのときの快楽欲しさに言った嘘なのかしら?」
 がたがたとヒカリは震え出す。
 おぞましい記憶に、そしていままで拙い自慰では得ることもできなかった圧倒的な快楽の記憶に。
 碇ユイと並んでそのペットに後ろから犯された経験に思考を灼熱させてしまう。
 そんなヒカリにユイは言う。
 「ほら、ご覧なさい。つれない花嫁に旦那さまはおかんむり」
 「いや、いや、いやぁぁぁぁ!」ユイの視線の先、ベッドの足元に茶色い塊が目を輝かせてうずくまっていることにいまさら気づいた洞木ヒカリは悲鳴を上げる。ピンクのパジャマ姿のまま立ち上がり、逃げ出そうとする。
 だができなかった。
 軽くユイに手首を掴まれただけで、少女はくたりとベッドに倒れ込んでしまう。
 「だめよ、ヒカリ」ヒカリを再びベッドに横たわらせ、幼児にそうするように両足首をひょいと高く持ち上げてパジャマのズボンを脱がしてしまったユイは言う。「『誓い』はその効力を発しているわ。あなたはそれから逃れられないのよ。あなたは【マックス】の花嫁なのだから、彼の欲望を満たすためにその可愛らしい身体を捧げなければならないの。ああ、もちろん心もね」
 「や、や、あたし、あたし、やぁよぉ……」でもユイの人差し指でつつつ、と内股をさすられたヒカリはかすれた悲鳴を上げて大きく脚を開かされ、左右の膝をベッドのそれぞれの縁からだらんと垂らした恥ずかしいばかりの開脚姿勢を取ってしまう。
 さらに、パジャマの裾をずり上げて、真っ白な肌と胸の可愛らしい脹らみも露出させる。
 「さぁ、旦那さま。花嫁を召し上がれ」
 「だめ!やめて!【マックス】、お願いだからやめて!」
 だが飼い主の悲鳴などまったく聞き入れず、低い吠え声と同時に黒い大型犬は愛しい花嫁に近づき、シンプルなショーツに鼻面を寄せた。
 「いや、いや、いや!ああっ!」無礼なペットを押しのけようとした両手はユイによって封じられた。
 「受け入れなさいな。ヒカリ」彼女をのぞき込むユイの逆しまの笑顔はあくまでも美しい。「それはとっても、とっても素晴らしいものよ」
 「い、いやぁ、やだ、やだ、あ、あ、お、い、あ、ぁぁ」ヒカリのつま先がぎゅうぅっとすぼまり、まだ細い腰が持ち上がってがくがく震えるブリッジが完成する。
 真珠のような歯が食いしばられ、愛らしい眉がきゅっと寄って、苦悶と悦楽が混じり合った表情になる。
 「舐めないで!舐めないで!【マックス】、まっくすぅ!」
 返事はさらに粘っこいちゅぱちゅぱという音だった。
 幼い頃から洞木家の一員であり、ヒカリをなによりも愛している獣が一心不乱に少女の大きく開かれた太股の付け根を舐め回している音だった。
 「あ、う、ひぁ、犬に、犬に、まっくすに、まっくすになめられてるよぉ!こんな、こんなことってぇ!」
 涙をこぼしつつ洞木ヒカリは淫らな腰振りダンスを止めることができない。
 暖かく、ざらざらとした大きな舌に健康的な太股を舐め上げられては逆らうことなどできない。
 なんとかかろうじてショーツに護られている秘密の部分に湿った鼻を押しつけられてぐりぐりされると、唇からいやらしいあえぎ声が漏れ出すのを止めることもできない。
 そのまま犬の舌がぺたぺたとのたくりながらコットンショーツ越しにヒカリの花びらを、尖った牝芽を捕らえたときには「だめ、だめ、犬に、犬の舌で、わたしだめになっちゃうよぉ!」と絶叫してしまう。
 ショーツがマックスの唾液と彼女の愛液でどろどろになったころには、少女の表情にはどこか安らかで壊れたような笑みさえ浮かんでいた。
 もちろんそれだけで「夫」の愛撫は終わらない。
 女子中学生の健康的な太股をがっしり押さえるとショーツの横合いから舌をくぐらせて、昨夜【マックス】のペニスを受け入れたばかりの陰裂を舐め回し、さらにその奥までざらざらと擦りたてて、ついには菊門まで舐め回して彼女を失禁にまで追い込んでしまう。
 もちろんその牝のフェロモンたっぷりの液体は彼にとってこの上ない甘露だった。「やめ、やめてぇ、もう、もうゆるしてぇ……」という声など耳にはいるはずもなく、よく動く舌でその液体を心ゆくまで味わうのだ。
 【マックス】がヒカリの聖水を一滴残らずすすり上げ舐め取るころにはもはや少女は一切の抵抗を放棄した、従順に彼の欲望と好奇心を受け入れる存在となっていた。
 だから彼は昨日そうしたかったとおりにヒカリの腰を、ショーツから覗いた可愛らしいお臍を舌でくすぐり、さらには滑らかな腹部へ、水着のためにまったく日焼けしていない滑らかなお腹を舐めしゃぶり、さらには成長途上の双胸の脹らみへ、無毛の腋下へと唾液を塗り込めてゆく。
 「あらら、【マックス】くんたらヒカリちゃんの身体ぜんぶに印を付けちゃったぁ」
 ユイに笑われてもヒカリは腰を弾ませてひんひん啼くことしかできない。
 柔らかな胸の膨らみがペットのよく動く舌で「彼」の思うままにぷるりん、とかたちを変えてしまうほどの勢いで舐め回されては。
 ピンクに尖ったふたつの果実を交互に舐められ、あまつさえその牙で甘噛みされてしまっては。
 自分が卑猥な腰遣いでペットの硬いペニスに自身の下腹部を擦りつけてしまっていることなど気づきもしない。
 やがて少女の足元から這い上がってきた雑種の大型犬は愛しい花嫁とまともに向かい合う姿勢となる。
 「……あ、あ、ま、まっくすぅ……だめ、らめ、だめだったらぁ……」
 ヒカリの制止の声など彼は気にせずにその愛らしい顔を舐め回す。うなじを、頬を、喉元を。そのたびにヒカリの抵抗は弱くなってゆく。
 そうなったところで半開きになった柔らかな唇を舐めてやる。
 涙をこぼしながら顔をそらされてしまう。むっとした彼は耳たぶを舐め回してうなり声を聞かせてやる。それはいままで彼が出したことのない声だった。
 「あ、あ、だめぇ……」ヒカリはぶるぶる震え出す。
 一声吠えて【マックス】は命じる。
 「ほらぁ、旦那さまはヒカリちゃんと『ちゅー』したいんですって」くすくす笑いながらユイがその言葉を翻訳した。
 「ああ、ああ、まっく……す……」涙をこぼしながらそっと洞木ヒカリは瞳を閉じた。「ただのとろいオジさん犬」と思っていた【マックス】の恐ろしいうなり声に少女はすっかり支配されてしまっていた。
 そっと突きだした唇が熱く、生臭く、大きくぬるぬるした舌に奪われた。乱暴に舐め回される。
 「う、ふぅぅぅン!」半開きになった桜色の唇の中にずるりぬるりと侵入された。
 口内を好き放題に分厚い舌が動き回っていた。
 そのまま唾液を流し込まれる。
 少女の小さな舌をマックスは強引に吸い上げ、自身の自在に動く舌をからみつける。
 たぷたぷ、ちゅぱちゅぱ、ねぷねぷと淫らきわまりない水音とともにちいさな口のなかを掻き回される。
 「ふ、ふぅぅン、むあぁぁ、くふぅぅぅッ!」
 つい昨日まで夢見る乙女に過ぎない洞木ヒカリにとって、ペニスで貫かれた衝撃よりも、全身を舐め回される快楽よりも、ペットとの「いやらしい」キスは、いや、舌をつかってのセックスは衝撃的だった。
 少女らしい思いこみと夢想でイメージされていたキスなどとは質量ともにまったく異質な行為に、一四歳の少女の理性は崩壊してしまう。
 それがおぞましく、不潔で、抱きすべき行為であることを理性の片隅は理解していたものの、その快楽はそんなことなどどうでもよいと思わせるのに十分だった。
 いやむしろ、そのわずかな嫌悪すら快楽のスパイスとして少女に作用してしまっていた。
 だからユイがベッドに軽く押さえつけていたヒカリの両手を開放すると、少女のしなやかな腕は愛おしい「旦那さま」にひしと抱きついてさらに熱烈な口唇性交を開始してしまう。
 自ら舌を伸ばして犬のそれとつつきあいっこし、ときにはねっとりと絡め合って甘え、だらだらと流れる涎を喉を鳴らして飲みはじめた洞木ヒカリはほどなくそれに溺れてしまった。
 そのほっそりした腰が少女の意志とは無関係にひくりひくりと淫らなダンスを踊り、ショーツに護られた下腹部を犬のペニスに擦りつけはじめても、少女はそれに気づかない。
 「ん、ふぅぅ……ん、んむぅッ、ふぅ……ン、まっくすぅ、まっくすぅ」ととろけるように甘い声をあげるヒカリの下半身が卑猥に蠢いていつしか犬のペニスと角度を合わせようとしているさまを、ベッドに頬杖をついたユイに実に楽しそうに観察されているなど知るよしもない。
 だから碇ユイの「【マックス】くん、あなたのお嫁さんは十分に仕上がったみたいよぉ。じゃ、【マックス】くんのおちんちんでヒカリちゃんをずぶずぶ犯してあげましょうね」との言葉に青ざめ、ほっそりとした指でコットンショーツがくるんと剥かれる感覚に涙してしまう。
 しかしそんな生真面目な女子中学生の理性もユイの確信に満ちた言葉でぐらぐらと崩れ去る。
 「ヒカリちゃん、あなたは【マックス】くんのお嫁さんなのよ」
 「セックスを拒否するお嫁さんなんているわけないでしょ?」
 「【マックス】くんはあなたを愛しているのよ。その愛に応えるのはヒカリちゃんの義務なのよ」
 「それにね」美しい魔女はちゅっとヒカリの耳たぶにキスをして言うのだ。「あなたはもう【マックス】くんに純潔を捧げたのよ。夢みたいにとろとろに気持ちよくなったあなたは、四つん這いのセックスで『ペットのいぬ』に操を捧げたのよ。道を行くすべての人々に祝福されて……ね」
 「あ……あ、あああ……っ!あ……」
 ヒカリの華奢な全身が痙攣し、その表情がだらしなくとろけた。そのままぎゅっとペットにしがみついて泣きじゃくる。
 ユイに耳元で囁かれたその呪文に「そのとき」の圧倒的な快楽を呼び覚まされた洞木ヒカリが、もはや逆らうことなどできようはずがなかった。
 獣に組み伏せられて、その舌の魔力に屈した少女は、その開花寸前の肉体に獣のペニスを受け入れようとついに決意してしまった。
 「さぁ、ヒカリ、受け入れるの。あなたの愛おしい旦那さまのおちんちんを……」
 「あぁ、まっくすぅ……まっくすぅ……」ユイに励まされた彼女は涙混じりで「夫」を見上げ、崇高な決意とともに膝を緩める。
 涙まじりの微笑みとともに、かすかに腰を浮かせる。
 くすくす笑ってユイが手を伸ばし、まだ飾り毛もまばらな花びらをくちりとくつろがせ、「夫」のペニスをあてがった。
 満足げな声とともに犬が腰を押し出し、まだ未成熟な陰花を押し広げてペニスを突き立てた。
 「ああ、ああ、まっくすが!まっくすがはいってきてるぅぅッ」
 まだ一度しか性交経験のない学級委員長の苦鳴はむしろ「彼」の欲望を激しくたぎらせるだけだった。
 洞木家でこどものころから飼われてきた愛犬は容赦なく愛おしい少女の牝孔のさらに奥へ、がちがちのペニスをねじ込んでゆく。
 同時にぬめりをもった液体が迸る。
 悲鳴を上げる少女。しかし【マックス】はびゅるびゅるとペニスから汁を放ちつつ、それを潤滑液として少女の中へさらに深くそのやや細めの先端をずぶずぶと押し入れてゆく。
 そうしてついに犬のペニスが少女の体内へすべて侵入したときにそれは起こる。
 「あ、あ、おっきく……なって……る。う、あ、お、ぉ、あ、おぉぉ……」
 「大丈夫よ。ヒカリちゃん、あなたが彼に純潔を捧げたときも同じセックスをしたのよ。大丈夫よ。心配しないで気持ちよくなりなさいな」
 「う、うううッ、あ、オナカのナカ、おっきくぅ……」
 「ヒカリちゃん、息を止めちゃだめよ。ゆっくり吐くの、ほら、すぅーって、ほら、ゆっくり……ね。そうして、【マックス】くんの瘤付きおちんちんであなたのソコ、栓をしてもらうのよ」
 ヒカリがユイのささやきに蒼白になったところで、魔女はにっこりと教授する。
 犬のペニスはまず牝の体内に潤滑液をまぶしつつ侵入し、根元まで入り込んだところでようやく「本物の」射精が行われるのだと。
 そのときに確実に牝の子宮を精液で満たせるように、牡のペニスは根元が硬く脹らみ、射精が終わるまで絶対にペニスが抜けないようにするばかりか、精液が漏れ出さないための栓として機能するのだと。
 「ほら、どんどんおっきくなってきたぁ」くすくすとユイがマニキュアを塗った指で少女の下腹部をさわさわと撫でた。「ふふっ、外からでも分かるわ。ヒカリちゃんの狭いオンナノコを【マックス】くんがぐいぐい押し広げてるの」
 「あ、お、ふ……ふぁぁ……。でてる、でてる、まっくすのが、わたしの、わたしのおくにぃ……」
 ユイに撫で回される部分のさらに奥、まだ未成熟な子宮にどくどくと犬の精液が注がれるその灼熱の感覚に少女は悶え泣く。
 その濃く熱い液体がピンクの内壁にびゅるびゅると叩きつけられる感覚に、次第に水位を上げていく悪魔の汁に子宮を押し広げられてゆく気配にヒカリは甘美に絶望する。
 がっちりと彼女の肉襞に楔を打ち込んだ【マックス】がくいくいと腰を振るたびに未成熟な子宮を強引に突かれ揺すられて、「あ、お、おお、おなかの中の、あたしのオナカのナカ、引きずり出されちゃうぅぅッ!」と経験したこともないボルチオ感覚に悲鳴をあげた。


イラスト:目黒腹蔵さん「Max, mon amour 〜花嫁悦落〜」


 そして、少女をさらに追いつめたのは、大きく膨らんだマックスの「根元」の部分がことあるごとにヒカリの肉芽をこすり立て、ぐりぐりと揺することで得られる感情だった。
 毛布をしっかりかぶり、声が漏れないように行っていた毎夜の自慰で、クリトリスへの甘い感覚を会得していた少女が硬い毛むくじゃらの犬のペニスにその敏感な性感帯をこすり立てられてはひとたまりもなかった。
 「ああ、ああ、ああ、まっくすぅ、まっくすぅ」
 洞木ヒカリはがくんがくんとなんどものけぞり、歓喜の声でディープキスを中断させていた。
 しかしその両手はしっかりと毛むくじゃらな夫の身体を抱きしめ、華奢な脚も犬の腰に巻き付いてうごめき、さらに快楽をむさぼってしまう。
 「きもちいいの、まっくす、これ、これすごくいいの、ああ、ああ、あああああっ!」
 家中に響く声で少女が叫んだそのときに、

 「ぴんぽーん」と玄関のベルが鳴る。

 洞木ヒカリは絶頂のさなかに大きく目を見開き、口にぎゅっと手を当ててなんとか絶頂を押さえ込もうとする。
 しかしそれは、まったく無駄な努力だった。
 押し殺した声は少女の体内でバウンドして、そのオーガズムを何倍にも増幅する。
 無意識にくねったその腰遣いは「夫」をさらに喜ばせて、そのお返しにさらにいっそう熱心に子宮を突かれ、敏感なクリトリスを擦り立てられる。
 ベッドの上で口をふさぎ、ぎゅっと歯を噛みしめてヒカリの精神は熔解してゆく。

 さらにもう一度、ゆっくりとベルが鳴る。
 ヒカリはがくがくと震えた。まだオーガズムから戻ってこれないのだ。

 さらに、二度、三度。
 そのたびに少女は腰をかくかくと揺すって絶頂を迎えてしまう。

 「あら、どうしましょう?お客さまだわ」ユイがにこやかにささやいた。「ヒカリちゃん、応対しないの?」
 唇から涎を垂らしながら、ヒカリはなんども首を振った。
 「そう、だけど……」
 軽快なポップスがユイの言葉を遮る。机に置かれたヒカリの携帯電話からだった。
 そのディスプレイには「ASKA」の表示が点滅している。
 「む、ふぅぅぅうッ!ひぃぃぃン!」それを目にしたピンクに染まった少女の全身が跳ね上がった。
 「アスカちゃんよ。お客さまは」
 カーテンの隙間越しに外を窺っていたユイの言葉を裏付けるように携帯電話が留守録モードに切り替わる。
 「ヒカリ?アタシだよ。いま、ヒカリん家のまえなんだけど……いないのかな?今日、ヒカリ、お休みだったでしょ?だから……」
 「出なくていいの?」ユイに携帯電話を差し出される。ヒカリは泣きながら首を振った。
 「あら?どうして?アスカちゃんはヒカリちゃんの大事なお友達でしょ?それとも、アスカちゃんがそう思っているだけ?」
 ヒカリはなんども首を振った。涙をこぼしながら首を振った。
 「じゃあどうして?『ちょっと具合が悪いの』って言えばいいだけじゃないかしら?」
 そんなこと、できるはずがない。実はかなりの心配性のアスカにそんなことを言ったら家の前からけして動こうとはしなくなるにちがいないのだから。それにごくわずかな会話の間でさえ、自分が淫らな声を抑えていられるかヒカリには自信が無かった。
 だが、ユイはヒカリの優しい心情を理解しながら言葉を続けるのだ。
 「ふーん、じゃぁどうして?どうしてアスカちゃんに応えてあげないの?……あ!」ぱっと美夫人は表情を輝かせる。いたずらに、意地悪に。
 「……そうなのね、【マックス】くんとのセックスを中断されたくないのね?」
 「ち、ちがいますっ!ちがう……う、あ、だめ、まっくす!あ、お……」
 ぶるぶるっとヒカリは震え、愛らしい表情がいやらしいものへと変化する。とても敏感な反応を示すようになった花嫁に【マックス】がさらなるピストンで応えたのだ。
 だから少女は親友の声が流れるなか、歯を食いしばったままなんども犬にイかされてしまうのだ。
 「今日はヒカリがいなかったから、クラスのみんな、なんだかダラけちゃって。ジャージなんてもう、最っ低だったんだからぁ。ヒカリぃ、ちゃんとあの野蛮人に鎖つけといてよね……」
 「あ、お、ああ、あ、イっちゃう、まっくす!すごいの、まっくすぅ!あたし、あたし、だいすきだよ。まっくすのこと、とってもだいすきだよ!」
 好意を抱いていたゆえに姉のような態度で接していた男子の名前など、視野を真っ白に染めて犬と抱き合う少女の耳にはもはや入らない。
 ただ声を押し殺しさえすればなにもかも赦されると、なにも畏れることはないと誤解してしまった一四歳の学級委員長は両手で口を押さえたまま、犬のペニスを蜜襞できゅうきゅうと締めつけ絡みつけて射精と快楽をむさぼってしまっていたのだから。
 だから、そっと窓から覗いていたユイに「あらあら、アスカちゃん、帰っちゃったわ」と報告された瞬間、「ああ、ああ、ああ、だめだよぅ、まっくす、まっくす、わたし、わたしダメなおんなのこになっちゃった!わたし、お前の、犬のおちんちんですごく幸せになっちゃうダメなおんなのこになっちゃったのよ!」と叫びながら絶頂を迎えてしまう。


イラスト:目黒腹蔵さん「Max, mon amour 〜愛玩動物・調教飼育〜」


 「もうすっかり仲良しさんね、【マックス】くんとヒカリちゃんは」
 なにか言いたげな雑種の大型犬にユイは破顔する。
 「本当よ、あなたたち、とても幸せそうな『つがい』よ。だってほら、ヒカリちゃんはキミに夢中でしょぉ?」
 洞木家の老ペットは口を複雑に歪めて笑った。
 「あ、まっくすぅ、だめだったらぁ、もっと、もっとわたしときす、するのぉ」
 彼に身体をすっかり預けている洞木ヒカリが唇を尖らせる。少女と犬の舌のあいだにはどろりとした唾液の橋が架かっていた。
 【マックス】は可愛い花嫁の要望に応えてやる。少女の可愛い唇を割って舌を突っ込み、整った歯並びを舐め回す。少女も顎まで唾液だらけになりながら一心不乱に獣と舌を絡めた。
 少女の上気した表情はさらに淫靡なものになり、全身の力がくったりと抜けた。だがそのしなやかな右手は夫の性器を柔らかく愛撫するのを止められない。
 愛犬と相思相愛となれた幸福感に溺れてしまった少女は「彼」の前脚が少女の細い足首を掴み、引き寄せてもまるで気にしない。
 それどころか人間のカップルがそうするかのように「彼」と手を重ねてふんわりと微笑んでしまう。
 ピンクの可愛らしいパジャマのズボンも白いショーツも脱ぎ捨てて、たらりと犬の精子がこぼれる薄い毛並みの秘花をさらけ出させる姿勢を【マックス】に取らされていることなど理解もできない。
 「あらあら、また漏れちゃってるわ、さっき【マックス】くんに『きれいきれい』に舐めてもらたのにね」
 「だってぇ、まっくすのせーえきでわたしのおなかのナカ……まだたぷたぷいってるんですよぉ……ああ、ほんとに……わたし……しあわ……せ」
 子宮に獣の精液をため込んだまま犬の粘性をもった分泌液で秘洞が「封印」されていることすら、自分が【マックス】にとっての所有物と認識されていることさえ幸福の一要素となっているヒカリはくすりと笑う。
 「よかったわね、ヒカリちゃん。これからは好きなだけ【マックス】くんと愛し合えばいいのよ。たとえば彼の精液でお腹の中をいっぱいにしてもらってから学校に行ったり……」
 ああ、とヒカリは幸福のあまりヒカリは涙をこぼした。優しい夫はその涙を丹念に舐め取ってやる。
 「だけどね、ヒカリちゃん、これだけは覚えておいて」ユイは悲痛な表情を作り上げて、悦楽に濁った女子中学生の瞳をのぞき込む。「あなたたちを嫉妬する愚か者や、あなたたちの崇高な愛を引き裂こうとする分からず屋もいるのよ。『獣と恋人になるなんて、穢らわしい』って」
 「そんな……そんなのいやです!わたし、わたし、まっくすをあいしているんです。まっくすとわかれたくないんです!だって、まっくすはやさしいし、たくましいし、すごくすごくすごくすごくキモチいいんだもの!」
 聡明でなによりも潔癖症だった少女の必死の、しかし壊れた言葉にユイはうなずく。
 「分かっているわ、あなたの愛は本物ですもの」ぐすぐす泣きながら「夫」にさらに躰を密着させる少女をユイは励ます。「がんばるのよ。だってあなたたちの愛は正しいんですもの。分からず屋で無知蒙昧で下劣な『敵』にあなたたちが負けるわけなどないわ」
 「う、うん!そうよね、そうだよね……」
 「そうよ、あなたたちは正しいんですもの」うなずく少女へのユイの口調はあくまでも優しく、同時に断言的だった。そしてその口調がある美少年のそれと同じであることを洞木ヒカリは知らない。
 「じゃぁ、もしあなたの妹さんやお姉さんが【マックス】くんとあなたとの関係に気づいたら……」
 「教えて……あげるの。これが穢れていないことを、これがとっても崇高な愛だと教えてあげます!!」
 「そうよ、それがいいわ。それが正しいことなのよ」ユイは微笑む。「もしね、あなたの『敵』が手強いときに相談すればいい人を教えてあげる」
 「は、はい!」
 碇ユイはつやつやした唇をどこか邪悪に歪めながら「連絡先」を教えるのだった。
 これで洞木ヒカリがその「契約」を完全に結んでしまったことに満足しながら。



◆ ◆ ◆



 ブレーキの音とがたん、という揺れ。
 アナウンス。
 圧搾空気とともにドアが開く音。

 うっとりとした表情で碇ユイは男達に支えられ、ふわりとプラットフォームへと足を進めた。

 ……ああ、当然だもの。
 ……カヲルさまに命じられたとおり堕落してしまうわたしには当然の罰なのだわ。

 午前の獣たちとの狂乱と、昼過ぎの洞木ヒカリへの淫靡きわまる誘惑との記憶、さらには男達の指遣いで完全発情状態になったユイは男達の欲望を受け入れることを自らのつとめと理解してしまっていた。
 うつむきながら、頬を上気させ、うなじを染めてユイは改札口へと連れ出されてゆく。

 そのときだった。

 「母さん!」
 やや細いながらも鮮烈な声をかけられると同時にぎゅっと右手を握られる。
 急に意識が明瞭になった。振り返る。
 そこにいたのは碇シンジ、とまどいと少年らしい決意が入り混じったまま母親の手を握っていた。
 「行こう」ただ一言だけ告げ、少年はけだものたちの群れから美しい母を連れ出す。
 男達はプラットフォームに取り残される。
 彼らの表情もまた、悪夢から覚めたようだった。


 「大丈夫だから、ね?もう、大丈夫だから……」
 「シンジ、シンジ、シンジ……」
 周囲の好奇の視線に碇シンジはいささかとまどっていた。
 当然だろう、美しい女性……その衣服は乱れ、彼女が車内で淫らな狼藉にあったのは明らかだった……が中学生にすがりついて泣きじゃくっているのだから。
 少年はそっと美夫人の衣服を直しながら、優しく声をかける。
 数分経ってようやくユイは泣きやんだ。しかしひどくうちひしがれ、消耗しきっていることに変わりはなかった。少年は少し唇を噛むとそっと母親を人目から離れたところへ連れて行く。
 「さ、母さん、落ち着いて」
 まだ自分よりも背の高い母親が、その瞬間はひどく華奢で保護欲をかき立てる存在であることに彼はふと気づいて驚いてしまう。
 ……ああ、母さんってひどい悪戯をされたんだ。
 ……いつも凛としているのに、女の子みたいに泣いちゃって。
 ……可哀想に、すごく可哀想に。
 しかしその母親を「可愛い」と思ってしまっている自分を彼はまだ気づかない。
 最初は手を引いていただけの少年の手が、そっと美母の腰に回っていることも気づかない。
 お互いの躰が不自然に密着していることも、当然気づくはずがない。

 とりあえず途中下車をした改札を通り過ぎ、通りに出たところで碇ユイはふと立ち止まった。やむなくシンジも立ち止まる。
 「母さん?」
 ユイはゆっくりと周囲を見回していた。
 なにかひどく混乱しているようだった。同時になにか葛藤しているようだった。
 ほっそりとした躰ががくがくと震えていて、慌てて少年は母親を支えた。
 そのからだがひどく熱を帯びていることに少年は驚く。
 「ね、ねぇ?大丈夫?」
 「あ、あのね、シンジ」彼を見つめる瞳にはどんよりと膜がかかっていた。「母さん、その……、チカンに下着を汚されちゃったみたいなの」
 「え、えっと……」
 「替えはあるの。大丈夫よ」ユイはにっこりと微笑む。ふっくらした唇が濡れ輝いていて、そのさまに少年はどきりとしてしまう。「ただ、その、場所が……」
 「じゃぁ、駅のトイレで……」
 「だめ、だめよ。シンジ」くすりと母親は笑う。「だって、ちゃんと汚れが取れているか、シンジに確認してもらわらないとダメだもの」
 「え、ええっ!」
 「だ・か・ら……」
 碇ユイは頬を染め、少年にすがりつく。
 「ここできがえたいの、ね?いいでしょ?しんじ?」
 粘っこく甘い声で少年の耳にささやき、その視線で指し示す。
 「ね?ここにしたいの。ね?」
 舌足らずに彼女は提案する。

 「休憩:四〇〇〇円/三時間」
 「宿泊:六八〇〇円−」

 と表示された薄汚れた看板のまえで碇ユイは提案する。
 熱を帯びた躰を、柔らかでしなやかな躰を碇シンジにぴったりとすり寄せて、雄の本能に響く濡れた声で提案する。
 「ね?いいでしょ?ここ『で』したいの。おねがい。ね?」



◆ ◆ ◆



 「ねぇ、アスカちゃん。どの絵がいいかな?」
 「お、お願い……ですぅ……。もう、もぉ……」
 「ほら、僕の質問に答えてよ、ね?」
 ずん、と後ろから突かれたクォーター少女は紅茶色のセミロングを振り乱して悩乱する。かすれた声で悲鳴を上げ、しかしそれでも膣壺に頬張った「御主人様」をきゅうきゅうとくい締め、その形と硬さを味わってしまう。
 ごりりとこじられ、青い瞳から涙をこぼしながらよろよろと前へ進む。
 四肢をぴんと伸ばした犬の姿勢で。「御主人様」である渚カヲルにバックスタイルで貫かれたまま。
 惣流・アスカ・ラングレーは自慢の長くてすらりとした脚をぴんと伸ばし、踵を浮かせた状態で深々と同級生に後ろから犯されていた。
 渚カヲルはお気に入りの玩具が快楽に逃れることを許さなかった。
 彼のペニスが与える快楽に少女が屈服し、ぐったりと上半身をフローリングに倒れ込ませることなど許さなかった。アスカが特上の快楽に全身を震わせて、両腕の力を失ってもそのほっそりした腰をしっかり抱えてハードな後背位でのまじわりを続行する。
 だから赤い首輪だけを身につけることを許された少女は、涙と涎と淫液をフローリングにこぼしながら、よちよちと四つん這いで進むしかないのだ。
 淫らきわまりない甘え声を上げ、ときに「イクぅぅぅッ!御主人様、はしたないアスカはまたイきますぅぅぅッ!」と泣き叫びつつ。
 渚カヲルがその広大な部屋のあちこちにおいたスケッチブックへと。

 そのスケッチブックの登場人物は、もちろん惣流・アスカ・ラングレーのよく知っているものだった。
 ひとりはアスカが母親同然に慕い、女性として目標にしている人物。
 そしてもう一人は少女の幼なじみ。兄弟同然の存在であり、下僕であり、もっとも頼れる男の子であり、恋人であるはずの人物。
 それは碇ユイ。
 それは碇シンジ。
 スケッチブックの中のふたりは、母親と息子として描かれていなかった。

 あるスケッチでは、シャワーを浴びた母親がその絶品の素肌を息子の目にさらし、頬を染めて「確認」を受けているものだった。
 玉のような肌に傷がないか、裏も表もあられなく調べるように「お願い」した母親が卑猥なポーズを取っているものだった。
 もちろん息子も平然としていられるわけもなかった。
 「苦しそうなズボン」は母親の手でやさしく降ろされ脱がされて、いきり立った若茎の先端からは透明な汁が滲み出ていた。
 少年が美しい母親をねじ伏せて、硬いペニスをねじ込むまでほとんど猶予がないのは明らかだった。

 またあるスケッチでは、全身を清めている母親の姿を鑑賞しているうちにがまんできなくなった少年がシャワールームへ乱入し、ユイの全身をその掌で指で清めているものだった。
 マジックミラーのまえでわざわざ開脚姿勢まで取っていた淫母の静止と非難の声はあくまでも形だけのもの。
 熱く強烈なシャワーをクリトリスに浴びせかけられたとたんにぐにゃぐにゃになり、息子の意のままのポーズでシャボンを塗りつけられて悶え泣く。
 そして息子の指が淑やかに窄まった菊門に悪戯しはじめると、「ああ、ああ、そこはお父さんにもあげたことがないのよ!ああ、ああ、シンジに、シンジにバージンホールあげちゃうなんて!」とうっとりと泣き叫ぶのだ。

 さらにあるスケッチでは、過労のあまりベッドで浅い眠りに陥った美しい母をその息子が悪戯していた。
 最初はその美しい表情を観察しているだけで満足していた碇シンジが、碇ユイの腰回りや胸の膨らみ、さらにはスカートの裾からのぞく太股に興味を持たないはずがない。
 ゆっくりと服の上から撫で回し、そっと表に、裏に返してスカートの奥をのぞき込む。
 吐息を立てる唇をそっと奪い、その奥までぬるぬる舐めて母に唾液をのばせたのち、彼女をM字開脚にして履き替えたばかりのユイのショーツの匂いを嗅いだ少年は、クロッチに再び染みを発見して歓喜する。
 ベッドの下の引き出しに手錠と目隠しを発見した碇シンジは、もう己の欲望を抑えることはできない。

 あるいは母を優しく慰める碇シンジの目の前に、さきほどの男達が再び現れるスケッチもあるのだ。
 お互いを人質に取られた母子が抵抗できるわけなどない。
 椅子に縛られたシンジの目の前で、碇ユイは犯される。
 いや、「犯してください」と懇願させられる。
 さきほど整えた衣類をストリッパーよろしく脱ぎ降ろし、暴漢どもと息子の前でオナニーショウを披露する。
 男達のズボンのファスナーを震える指で下ろし、柔らかな唇と舌で奉仕することを望まされる。
 だれかが浴室で見つけてきたローションをとろとろ垂らされて、全身を淫らにマッサージされて発情した美夫人は煮えたぎった膣洞に、ローションを注入されて半狂乱に気持ちよくされた後孔に、桜色の唇すべてに男どもの精液を流し込まれる。
 そうして満足しきった男達は、少年の拘束を解いてやるのだ。
 涙ながらに母親に駆け寄った全裸の少年は、母親の名を呼びながら暴発寸前のペニスを母親の女陰にねじ込むのだ。
 「いまなら中出ししたって大丈夫だよ。だって、もうとっくに孕んでるからなぁ」と男どもに嘲笑われて。


 そのどれもが碇ユイを、碇シンジを著しく貶めるスケッチだった。
 そしてそれを「選んだ」とたん、それが現実となってしまうことを惣流・アスカ・ラングレーは知っていた。
 だから彼女は快楽になんども負けそうになりながらも「決定」を先延ばしにしているのだ。
 だがそれももはや時間の問題だった。
 「ね、早くしてよ、アスカ」
 カヲルの手がアスカの腰からお臍へとゆっくりまわってくる。
 「早くしないと……」くすくす笑って少年の指が、それ自身が芸術的な指がアスカのお腹を撫で回す。
 まるで妊婦のようにぽこんと膨らんだお腹を。
 「アナルプラグ、抜いちゃうよ」
 少年の言葉にアスカは狂ったようにいやいやをする。
 一リットル近いグリセリンを注入されて一時間近い犬のポーズでの性交。
 少女の忍耐力は限界だった。
 もし、プラグが抜かれたら少女は腸内でぎゅるぎゅる沸騰している一リットルを瞬時にフローリングへと漏らしてしまうだろう。
 そして、その処理をさせられるのは彼女が慕い、愛する碇ユイなのだ。
 誇り高い彼女が涙をこぼしながら唇と舌でアスカの「後始末」をさせられるさまは、少女の反抗心を打ち砕くに十分だった。
 いや、それよりも問題なのは、碇ユイが犬の姿勢で屈辱的な行為をさせられているのを観察しているうちにアスカ自身があやしく昂ぶってしまうことなのだ。
 「お掃除」のあと、カヲルに促されて「牝犬ユイ」に命令してしまう自分がたまらなくいやなのだ。
 それがカヲルによる強制だと心の中で言い訳しながら「さ……ユイ……ちゃ……ん、さいごに……アタシ……の、マエとウシロの孔、綺麗に舐めるの……できるよ……ね」とベッドに腰掛け、淫液でどろどろになった内股を大きく開いて命じる自分が許せないのだ。
 瞳をどんより濁らせて「わん」としか言わなくなった美しい女性に舐められ、すすられていくうちに泣きながらエクスタシーを迎えてしまい、ときに失禁してしまう自分が許せないのだ。

 だから彼女は決めねばならない。
 とっても綺麗でだいすきな「もう一人のママ」を屈辱から救うための決断をせねばならない。
 その彼女を悪夢の相姦快楽へと陥れる「コース」を。
 自分が恋する少年を淫魔としてしまう「コース」を。

 惣流・アスカ・ラングレーの涙がぽたぽたとフローリングにこぼれる。

 だがそれは、少女のミルク色の内股を伝って床にこぼれる淫蜜よりもはるかに少ない。


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Original text:FOXさん
Illust:目黒腹蔵さん