-MODEL- Ver.R(3)


Original text:FOXさん


 「ちょっと来なさい、アンタ」
 絨毯に投げ捨てられた「4」のカード3枚をじーっと睨みつけていた少女は勢いよく立ち上がり、隣に座っていた少女の手を取った。
 そのまま引きずるように部屋の外に出る。
 「あ、アスカ、どうしたの?」
 「トイレ」慌てる少年への答えは簡潔でかつ怒りを内包したものだった。
 足音も荒く廊下へ出てドアを閉める。ぐるりと振り返る。
 「ちょっとアンタ。こういうヤツ、強いはずじゃないの?」
 「どうして?」
 押し殺した声で詰め寄ってくる紅茶色の髪の美少女に「碇」レイは首をかしげた。
 「だって!だって!アンタ、徹底的なポーカーフェイスじゃないの!普段から、文字通り」
 「……だから?」
 「だから、だからぁ」アスカは紅茶色の髪を掻きむしった。「どーして簡単に降りちゃうのよ!さっきのだって、黙ってたら絶対アイツが降りてた。だってだって、アタシだってアンタの手札はフルハウスだと思ってたんだから」
 「でも、ただのツーペア。スリー・オブ・ア・カインドには勝てない」レイは静かに言った。
 「ええ、ええ、そうよ。両方とも降りずにオープンすればね。だけどね、あそこでアンタが自信たっぷりにしてたら、絶対アイツのほうが降りてた。シンジってそーいうやつなんだから」
 レイは内心で溜息をついた。それはポーカーフェイスどうこうではなく演技力の問題なのだが。
 「いい、このままでは明日のおやつは全部アイツのモノになってしまうのよ!アンタ、コトの重大さが分かっているの?」
 「分かっているわ。負けが込むたびに貴女がレートを上げていったから……」
 「ちょっと待って。それじゃアタシが弱いみたいじゃない」
 「今日はことごとく負けていなかった?」冷静なアルビノ少女の言葉に惣流・アスカ・ラングレーは地団駄を踏む。ただし書斎にいるらしい碇シンジの父親を気にしてか、器用にもほとんど音は立てなかった。
 「違うわよ!シンジがバカ憑きしてるだけ。もうじき風向きが変わるわ、もうじき……」
 「チップ、ほとんど残っていないわ。もう逆転は不可能だと思う」
 「……んなことは……な……いわ……よ」
 「あなた、自分の言葉を信じていない顔をしている」
 「う、うるさいわね……とにかく、全力を尽くして逆転するのよ」
 現状を理解しているとは思えないアスカの言葉をレイは責める気にはなれなかった。そもそも彼女をアスカたらしめているのはこの根拠のない自信なのだから。
 だがレイは失念していた。アスカをアスカたらしめているもう一つの要素を。
 アスカがその言葉をレイに投げかけるまでは。
 「じゃ、いいわね、いまからキーワードとサイン、教えるから」
 「……なんの……こと?」首をかしげる相手にアスカはにんまりと笑ってみせた。
 「ったくニブいわね、あんたは」


 十数分後。
 「あーっ、こらぁーっ、ちょっとシンジ、ドアを開けなさいー」
 惣流・アスカ・ラングレーは碇シンジの私室のドアをがりがりと猫のように引っ掻いて叫んでいた。ただし小声で。
 「そんなに怒らなくたっていいじゃない、ちょっとした冗談よ、ジョーク、ジョークなんだってばぁ」
 しかし少女二人を部屋の外へ押し出したドアの向こうの相手は無言のままだった。それゆえにドア越しに伝わってくる怒りのオーラにはただならぬものがあった。
 「ちょっと、ちょっとレイ、アンタもなにか言いなさい。アンタも共犯でしょ」
 レイはものすごい勢いで首を振った。そのまま後じさってアスカと距離を置く。
 「な、なに、その態度!自分も被害者だって言いたげなその態度はナニ?」
 「被害者だもの。わたしも。あなたと一緒に閉め出されたのだから」
 「う、うそ、うそつけぇ!この裏切り者ぉ」
 「あなたが悪いのよ。イカサマなんてするんだから」
 「うわぁ、まるで自分が無関係のようなその物言い……」
 「立案者は貴女。『キーワード』に『サイン』まで決めたのも貴女。ちがう?」
 「う、う、うううううっ、言わせておけば、言わせておけばぁ……アンタだって途中まではノリノリだったじゃないの」
 「そんなことない」
 「いーえ、アタシには分かるんだから、これでも付き合い長いのよ、アンタとは」
 「半年も経ってない……」
 「う、うるさい、だいたいね、これは共犯者がいないと成立しないテクニックなのよ。それで一方的にアタシだけをワルモノにするなんて認められるわけないでしょうに」
 「……テクニック。ものは言いようなのね」
 「そうよ、そう、これはテクニック!なんだかミョーにひん曲がった確率を元へ戻すための!」
 やはりこういう論法を繰り出すのはアスカらしい。レイはおかしな納得をしてしまう。
 だが、
 「あーすーかー」
 ドアの向こうから聞こえてくる怨嗟の声にレイとアスカは凍りついた。
 「ひどいよ……ひどいよ……まるで自分が勝つのが正しいみたいな言い方じゃないか……」
 「え、えと、でも、いつもアタシが大勝利なのが普通だし……」
 「ひどいよ……ひどすぎるよ……」
 「……謝って。碇君に」
 「なんでなんでなんで?ちょっとしたジョーク……」
 「……謝って。すぐ」レイの紅瞳に真剣な色彩を発見したアスカはたじろいだ。
 「わーったわよ、ったくもう、言っとくけどね、アンタも謝るのよ」
 そうして少女はドアのすぐ傍まで近づくと、ウインクと咳払いをひとつしてからドアの隙間越しに呼びかける。
 「あ、あのさ、シンジぃ、聞いてるよね?」その声は隣にいるレイも驚くほど甘くとろけるように愛らしい声。「うーん、えっとね、アタシもちょっとやり過ぎちゃったって反省してるの。もちろんレイもすっごく反省してるから、アタシよりも何倍も」
 猫なで声で呼びかけつつじろりと投げかけられる視線にレイは震え上がった。
 「ごめんなさい、シンジ。アタシ、反省してるから。だから……ね。お願い。許してくれると嬉しいんだけどなー」
 ……いくら何でもこんな作り声で謝らなくってもいいのではないか。
 レイは溜息をつく。自分にはとてもできそうもない「碇シンジの操縦法」にどこか感心してしまうと同時に、シンジがこの甘ったるい台詞を多少は疑って欲しいものだとも思ってしまう。
 だが、ドアの鍵は小さな音を立てて解除された。
 にっこり笑う惣流・アスカ・ラングレー。ちいさくVサイン。
 碇レイは内心で溜息をついた。
 ……碇君、きっと将来苦労すると思う……。

 数分後、レイとアスカは二人並んで碇シンジのベッドに腰掛けて彼の「お説教」を聞いていた。
 あくびを押し隠しつつ、シンジにばれないようにときどき「はやく終わらないかな」とささやきあって。
 「だいたい変だと思ったんだよ」数分に渡る演説ののち碇シンジは溜息をついた。「いきなりアスカが花の話題なんか振るんだもの。『バラは好きよね』なんて怪しすぎる」
 「なによぉ、似合ってないって言うわけ?」
 「突然すぎるよ。バラとかチューリップとか……レイ、これってなんのことなの?」
 「それは『ツーペア以上持っている?』って意味の質問……『チューリップ』は『手が悪い』という意味で『ユリ』は『お芝居だから信じるな』って……痛い」
 「も、もういいじゃない。レイもアタシも謝ったんだから」となりのレイに肘鉄を秘かに浴びせたアスカは輝くような微笑をシンジへ向ける。「これからは正々堂々とやるから。ええ、約束するわ」
 うーんとシンジはうなる。美しい幼馴染みになんども辛酸を舐めさせられてきた少年が、少女の言葉をやすやすと受け入れることができないのは明らかだった。
 「ほら、レイも謝る」脇腹をつつかれた。
 「ごめんなさい。碇君……」
 「ほら、アンタの妹分もそう言っているわけだし……」
 「……もう、アスカの陰謀に加担したりしないから……痛い」
 「な、ナニを言うかぁ!レイ!アンタだって同罪じゃない!この、この裏切り者ぉ」
 「あ、アスカ、ちょっと、ちょっとやりすぎ!」レイの肩を掴んでぶんぶん揺さぶるアスカをシンジが慌てて制止する。
 しかし「主犯」の少女も制止するシンジもどこか楽しそうで、シャギーを乱れさせて揺すられる少女の頬にもはっきりと分かる笑みがあり……。



◆ ◆ ◆



 「いい夢を見ていたようだね?レイ」
 耳元で囁かれるねっとりとした声が、少女の幸福感をたちまちのうちに凍えさせた。
 紅の瞳からこぼれそうになる涙を必死にこらえる。
 「マッサージ器がお気に召したようだね」男の声はひどく偽善的だった。
 「ああ、ああ……」少女のさまよう視線がベッドの上に置かれている業務用マッサージ器にたどり着き、こらえていた涙がどっと溢れ出す。
 「おやおや、よほど恋しいようだねぇ。よしよし」なれなれしく髪の毛を撫でられる。しかし少女はもう抵抗できなかった。
 「また使ってあげるからね。楽しみにしていなさい。しかしその前に、この可愛らしい姿のレイをたっぷり愛してあげようね」
 レイは唇を噛みしめる。男の淫らな指遣いに、言葉に自身の身体が反応しないように努力しようとする。
 それすら男を楽しませてしまうことは分かっていても、彼女は彼らの行為を受け入れるつもりはないのだった。

 ぎゅっと目をつぶり、無反応を貫こうと努力する囚われの少女の姿に、老人は笑みを止めることができない。

 この勇敢な少女の素肌の感触を楽しみ、我慢しても漏れ出る悲鳴と吐息を味わえるのだから。
 快楽に溺れまいとしてもしだいに淫らにひくついてゆく少女の肢体を抱きしめ、舐め回すことができるのだから。
 無慈悲な器具や残酷な指遣いで、少女を望まぬ絶頂へ追いやり、絶望的なアクメに震える様子を鑑賞することができるのだから。
 立て続けに与えられたエクスタシーに翻弄される少女のプライドが崩壊してゆくさまを揶揄することができるのだから。
 男の性的拷問を心より先に身体が受け入れてしまった少女に、淫らなキスどころか、フェラチオ奉仕まで命ずることができるのだから。
 失神する以外の休息を許さずに覚え込ませた肛門性感を刺激して、狂乱に追い込んだ少女に淫らきわまりない屈辱的な言葉を好きなだけ叫ばせることができるのだから。

 「さぁ、始めようか」鷲鼻の老人はにやりと笑ってリモコンのスイッチを入れる。くぐもったモーター音とともにレイの両腕はゆっくりと持ち上げられてゆく。無意識のうちに抵抗しようとするけれど、ほっそりとした手首に固定された枷につながれたワイヤーに逆らうことはできず、数分後には天上からのワイヤーに両手を大きく開いて拘束され、ベッドに膝立ちの姿勢とされてしまう。
 その膝もがっしりとしたバーに枷で開脚姿勢を強制されており、少女の秘口も菊門も男の悪戯な指から逃れることはできないのだった。
 そして、少女をさらに絶望させたのは失神している最中に着せられていた「コスチューム」だった。
 「おお、おお、このナイロンの手触り、実に素晴らしい。それにこの胸の膨らみ!こんなに揉みがいがあるとはねぇ」
 そう、少女が身につけているのは紺色の水着。ファッション性とも機能性とも無縁のデザインで惣流・アスカ・ラングレーがひどく着用を嫌がるスクール水着。
 そう。
 集団でレイを陵辱したのち、男たちはこんどは「一対一」で美しい虜囚を弄んでいたのだった。

 少女らしからぬ卑猥なショーツと碇ユイに買ってもらった愛らしいワンピースだけを身につけさせ、ベッドにうつぶせに固定して愛らしいアヌスを邪悪な器具で犯し抜いた冬月。
 シーツを噛んで悲鳴も懇願も押し殺そうとした少女の努力はまったく実らなかった。
 碇ユイを、惣流・アスカ・ラングレーをアヌス奴隷へと突き落とした「スティック」が娼婦ショーツをずらして露わになったアナルへぬるりと挿入されたとたん、レイは手足の枷をぎりぎり鳴らして泣き叫び、悲鳴を上げ、そして気をやった。
 ワンピースのファスナーを下ろされて、剥き出しになった背中をさわさわと指で愛撫され、汗の雫を舐め取られても、嫌悪の悲鳴も制止の声も上げることはできなかった。
 排泄器官を敏感で淫らな性感帯へと変えてしまう凶器が与える刺激に翻弄されて「ああ、ああ、おしりぃ、おしりがおかしくなるぅ、たすけて、たすけてぇ」と息絶え絶えに叫ぶしかなかったのだから。
 一時間近く冬月の繊細で残酷な指遣いでアナルを掻き回されたころには、大事なワンピースに何度失禁してしまったのかレイは一切気にしなくなっていた。
 二時間の「制限時間」を終えるころには尻穴に紐でつながれたステンレスの球をくわえ込むことを覚え、それをぽこりぽこりと引き抜かれるたびには移設の悦びに震えつつ冬月のペニスを熱心に舐めしゃぶるようになっていた。

 体操服をまとった伸びやかな肢体を無慈悲に縄掛けして、たっぷりとした量感を持ったバストをぎりぎりと残酷にくびり出させ、レイの双胸をじわじわと犯したキール。
 ブルマーの股間に食い込んだ瘤付きの縄にアナルとクリトリスを刺激されたレイは、涙をこぼしながらソファーに腰を落としたキールの膝の上で弄り回されることしかできない。
 体操服の上からでもはっきり分かってしまうほど勃起した乳首をさんざん悪戯されて、男にのぞき込まれながらイキ顔をさらしてしまう。
 鋏で上衣を切り刻まれ、縄のおかげで鬱血してしまったバストをこね回されるとレイはこどものように泣いた。さらにはゴム手袋を装着したキールが奇怪な「お薬」を柔らかなバストに執拗に塗り始めるとがたがた震えて慈悲を乞うしかない。
 しかし「気分紛れに」ブルマーに護られた可愛いお尻と縄のあいだにぶるぶる震える玩具を挟み込まれてしまうと、レイの言葉はたちまち意味をなさないものとなった。
 少女はアナルの快感にひくりひくりとのたうちながら、その薬剤がバストを侵してゆくのを受け入れるしかない。
 二時間の制限時間が終わるころには少女は「パイズリ」を習得していた。
 キールの手でニプルをつままれ、彼の肉茎を中学生らしからぬ豊乳で挟み込むよう強いられても少女はそれを拒否しなかった。
 それどころか乳首からの甘い刺激に涙し、ひどく敏感になったバストに刺激を与えようと不自由な上半身を動かしては老人のペニスと絹肌を擦り合わせようと努力してしまう。
 やがて放出された男の精液が少女の美貌に浴びせかけられても、彼女はその匂いにうっとりと酔ってしまうのだった。

 デニムのミニと活動的なTシャツ姿のままM字開脚姿勢で拘束した少女をベッドに転がしていたぶったのはバイザー状のグラスを片時も離さない男だった。
 男はレイに「女の悦びを与えてやる」と宣言すると、業務用のマッサージ器を取り出したのだった。
 電池ではなくコンセントから給電されてぶるぶる振動するそれをミニスカートの上から下腹部に押しつけられたレイは声にならない悲鳴を上げる。
 子宮すら揺すぶられるほどの衝撃を器具が押しつぶしたクリトリスに与えられると、拘束具をぎしぎし鳴らして彼女は暴れ、そして強引にエクスタシーを迎えさせられてしまう。
 「それ」がミニスカートの奥まで入り込み平たい円盤がショーツに直截当たると、レイは愛らしい容貌を涙と涎と鼻水で穢しつつイった。抵抗できるわけなどなかった。
 強力なモーターによる刺激に抵抗できるわけなどないのだから。
 やがてその器具は二つになり、少女のクリトリスとアナルの両方を交互に、あるいは同時に責めはじめる。
 もはやレイの唇から漏れる悲鳴は言語として理解できるものはなにもなかった。
 発情しきった獣のようにひんひん啼くよりしかなかったのだ。

 そして最後はこの男、鷲鼻の老人だった。
 男はスクール水着に包まれたレイの瑞々しい中学生ボディを心ゆくまで堪能した。
 手触りの良い水着を撫で回して少女のプロポーションを指で楽しみ、柔らかなバストを好き放題に弄り回し、布地の上から屹立した乳首をくすぐった。
 あるいは直接指を侵入させてすっかり敏感になってしまった双丘をふにふにと悪戯し、ニプルがさらに硬くなったとからかった。
 水着の上からまだ硬いヒップとすっかり熱を帯びた少女自身を撫で回してレイに悲鳴を上げさせ、さらに隠すことができない腋下を撫で回して彼女の汗を賞味した。
 しだいに上がってくる彼女の体温に、甘い吐息に目眩に似た悦びを覚えつつ、老人はスクール水着のヒップの布地をぐいと絞り、淫らなTバックとしたのちに人差し指で彼女のアナルをくすぐってやるのだ。
 くりくりと腰を振って、無意識のうちに「もっともっと」と督促しはじめた少女戦士に老人は笑いながら提案する。
 「スティックがいいか?それとも珠を入れてほしいか?」と。
 卑劣な質問を無視しようとする少女の努力が持ったのは、男が人差し指を第二関節までレイのアヌスへ沈めるまでのこと。
 くい、と指を曲げた瞬間にレイは叫んでしまうのだ。
 「スティック、スティックでぐりぐりしてください!お腹の裏のところをくすぐってください!」と。
 そうしてレイはTバックになったスクール水着の後ろからねじれた棒を尻尾のように突きだしてひくひく蠢動させるようになる。
 男にスティックを弾かれると愛らしい声を上げて、うっとりと微笑むようになる。
 唇を奪われても抵抗などできるわけもなく、老人との唾液交換に、舌を絡め合っての濃厚接吻を受け入れてしまう。
 男がお臍の辺りの布地をぐいと持ち上げて指を侵入させ、そのままレイの下腹部をぬるぬる弄ると淫らな声で「いい、いい、おしりも、ソコも、胸も……キスも……すてき」と啼いてしまうようになる。
 なんの抵抗も、公開も、悔いもなく、拘束されて男たちの玩具になり、快楽を与えられ、快楽を教えられることに喜びを感じてしまうようになる。

 奇妙な香のたゆたうなかで、戦士レイは堕落してしまうのだ。



◆ ◆ ◆



 「……優等生、優等生、起きるのよ」ぴたぴたと頬を叩かれる感覚にレイは目覚める。
 ぼんやりと視界がよみがえる。目の前にいるのは制服姿の惣流・アスカ・ラングレー。誰をも魅了するような愛らしい笑顔を浮かべてレイをのぞき込んでいた。
 いつのまにか清潔なパジャマに着替えさせられていた。素肌にも男たちの陵辱の跡は残っていない。
 レイは状況を認識してしまう。
 目の前にいるのは敵である渚カヲルの淫らな少女奴隷であると。彼女は老人達に弄ばれて意識を失ったレイを介抱し、身繕いさせたのだと。
 「なにしに……来たの?」声が掠れる。無様な敗北の結果を全て見られたと思うと情けなくて恥ずかしくて頬が赤くなる。
 「それはもちろん……」アスカは優雅に一礼する。面を上げた口元には意地悪で淫らな笑みが浮かんでいる。「カヲルさまの花嫁候補の仕上がり具合の確認でございますわ。ふふ、順調みたいね。バージンだけどおしりはすっかりエッチになって……」
 「言わないで!言わないで……いわないで」涙が溢れてきて、強気の口調はたちまちどこかへ行ってしまう。
 「ふふっ、おじさま『たち』にお尻のバージン捧げられるね、もう」乱れたレイの髪を撫でてやりながらアスカはうっとりとした表情で言った。「そのときはね、アタシが介添えするんだってユイおばさまが言ってた。アタシがカヲルさまにお尻のバージンをさしあげた時みたいに」
 レイは息を呑んだ。ここにいるアスカがもはや彼女ではなく、彼女の姿形をしただけの淫人形にすぎないと分かっていても、少女の言葉はあまりに背徳的で衝撃的だった。
 だがレイの驚きなどまったく理解できず、夢見るような表情でアスカは言葉を続けるのだ。
 「……ふふ、レイはね、なんにもしなくていいの。ううん、きっとなにもできないはず。アタシの時みたいにただのお人形にされちゃってるから。そんなレイのお洋服をぜーんぶ脱がせたあと、お尻の穴をぺろぺろ舐めてあげるから。あは、アタシにお尻の穴を舐め回されて、アンタが何回イっちゃうかちょっと楽しみかも。それからアンタを抱っこして、ドッギィファックなポーズに固定してあげるから。そのときにお尻の穴の拡張具合を確認するのもアタシのお仕事なんだって。ふふっ、レイのお尻の穴をアタシの指がぎゅーって拡げるんだぁ……ああ、なんだかぞくぞくしちゃうね」
 「お願い、お願いだから、お願いだからアスカの顔でそんなこと言わないで、アスカの声でそんなこと言わないでぇ……」レイは泣きじゃくる。あまりにこれは無惨だった。同時に絶望的だった。アスカをこの場へよこしたカヲルは、レイに「未来のレイの姿」を教えるために彼女をよこしたのだから。
 「ナニを言ってるの?レイ、アタシはアスカよ」
 「嘘つき!違うわ、貴女はアスカじゃない、アスカは、アスカはそんな弱い子じゃない、アスカは……」
 「分かってないわね、レイ」アスカは笑みを浮かべた。「ここにいるのがアタシの姿をした誰かの場合と、あたし自身のときとどっちがアンタのダメージが大きいと思う?」
 「ひどい、ひどい、ひどい……」カヲルはレイを徹底的に貶めるつもりなのだ。肉奴隷に堕ちた親友の姿を見せつけ、さらにその親友に自身の堕落したさまを見せつけて。
 「あはっ、すっかり泣き虫になっちゃいましたねー。レイたんは。ダメでちゅよー。泣いたってレイのお尻の穴は数日のうちにオチンチン入れてもらうのが大好きになっちゃうんですから。そしてそのあとは、カヲルさまの花嫁になるんだからね……ふふふっ」
 ぶるぶる震えるアルビノ少女はもう言葉も出ない。だが、アスカはその姿にさらに満足したようだった。
 「ふふ、ね、ユイおばさまが言ってるわ。『レイがカヲルさまのモノになるときってやっぱりウエディングドレスを着せてあげたい』って。アタシも賛成だよ。きっとレイって可愛い花嫁さん姿になるんだろうな。あ、もちろんブーケも持つのよ……そ、そう、ユリ……なんていいかな」
 アスカの言葉にレイはなにも言わなかった。ただ微かに表情を変化させてアスカを見上げていた。
 「じゃ、またくるわ。おじさまたちがアンタのお尻を十分拡張したころに……ね」
 少女は軽く手を振って立ち去る。くすくすと邪悪に笑いながら。
 レイはただ、ベッドに身体を投げ出したまま黙ってそれを見送るだけ。


 ……ユリの花。
 レイは考えていた。
 ……唐突に現れた「キーワード」。その意味は「お芝居」。
 ……そもそもあれがキーワードなのかどうか考えるべきだ。あの状態でアスカがカヲルの制御下にないなど考えられないのだから。
 ……でも……でも。可能性はなくもないのだ。
 ……カヲルがその「人形」のもがき苦しむさまを観察したいがために、あえて自由意志を残しておくことはいままでもあったのだから。
 ……でも、でも、でも……。
 ……そうだ、でも。

 「まだ、チャンスは……ある」小声でレイはつぶやいた。
 たとえほんの少しでも、まだチャンスはあるのだ。
 神に等しい存在である「彼」の裏をかくことはまだ可能なのだ。
 たとえアスカの言葉が、レイを元気づけるためのものに過ぎなくとも、アスカが自身の意志で行動できるというだけで確率はわずかに上昇するのだ。

 くすりと微笑んで、少女は眠りに落ちる。
 奇妙な香のたゆたうなかで、わずかに残る希望にすがって。




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