巫女媛哀譚〜マユミの章





一.

―― 月明かりすら届かぬ新月の夜。
峻険な箱根の山深く、厳かな静寂に包まれているべき神域の眠りを破って、綾波神社の本殿を赤々と炎が呑み込んでいた。
天まで届こうかという火柱が渦を巻き、堂々たる威風を誇った鳥居も黒く崩れ落ちる。
舞い散る火の粉の下、手に手に松明を掲げ、火を放って回る黒装束の影達。そして切れ目無く浴びせ掛けられる火矢、漂うガソリンの香り。
数多の災禍に耐え、新世紀はじめの大震災すら乗り越えてこの山紫水明の地を見下ろしてきた社が、今まさに攻め滅ぼされようとしていた。

人里からは遠く離れ、綾波神社の名を知る物は決して多くはない。寧ろ歴史の陰の中、人々の安らかな暮らしを守るべく魑魅魍魎との抗争を繰り広げてきたこの国の霊的守護の要として、注意深くその存在は隠されてきたのだ。
しかしそれだけにこの地の守りは厚く、そう易々と陥ちる綾波神社ではなかったのだが――
参道の玉砂利を血の海に変えて、倒れ伏す守り手の神官達は一様に何故という憤りを絶息の苦悶に貼り付けていた。
巫術対抗紋を織り込んだボディアーマーを着込み、携行するサブマシンガンが放つのは、神官達の繰り出す式神すら屠る抗魔刻印の入った銃弾。踏み躙るままに神域を血で穢す彼らこそは、昨日までは頼もしい味方だった筈の宮内庁鎮守職の面々であった。
分けても最精鋭、鎮守職長官直下のこの強襲部隊を率いるのは、綾波神社とも縁深い―― 未だ年若い一人の少年だった。



◆ ◆ ◆




「梃子摺らせてくれたね。山岸さん」
「碇君、どうしてっ……!」

裏切られたという悔しさからか、綾波神社の巫女達の中でもとりわけおっとりしていると評判のマユミが、眦をきつく吊り上げてシンジを睨んでいた。
使役する霊獣を操ってはシンジの手勢を相手に獅子奮迅の活躍を見せたマユミだったが、ついに力尽きた姿はあまりに痛々しい。
鮮やかな緋の袴はあちこちが引き裂かれ、神殿に放たれた火矢をも浴びて、白い常衣にはちらほら焦げ目が残る。トレードマークの眼鏡も埃に塗れ、艶やかな長い黒髪も土埃に随分と汚れてしまっていた。
ぎりぎりと噛み締めた唇にも血が滲んでいる。
仲間を逃げ延びさせるための殿(しんがり)となり、終いには禁術まで用いて抗ったものの、代々陰陽頭の血筋、六分儀の本性を露にしたシンジの前にはひとたまりもなかったのだ。
今はその代償として四肢の力は萎え切り、シンジの召喚した怪異に群がられ身を戒めらていても、払い除けようとする余力さえ残ってはいない。
地に頬を擦り付ける形でシンジの前に屈服させられ、見下ろすシンジを睨み返すのが精一杯の抵抗だった。

「さて、話してくれるかな? あまり手荒なことをしたくないんだよ。他ならぬ君だからね」
「くぅ。どうして……信じていたのに。信じたかったのに……」
「その気持ち分かるよ。でも僕は知ってしまったんだ。信じたら……負けだって。それが父さんが僕にした唯一の教育だったかな」

淡々とした口調に、底知れない情念のうねりが覗いたような気がしたが、すぐにまた仮面のような無表情がシンジを覆ってしまった。

「もう一度聞くよ。綾波をどこに隠したの?」
「誰があなた達に……!」
「そう……」
「分からないのですか! レイさんの、アスカさんの悲しみが。どんな思いで貴方から身を隠そうとしているのか……! 貴方さえそのままで……あの頃の碇君のままでいてくれれば、私たちは……!」

地面に身をよじり、叫ぶ。
罵るというよりは訴えかけようとするマユミの胸には、今も突然シンジが連れ去られる以前、箱根の山々を皆と駆け巡って修行を積んでいた、懐かしい日々が息づいているのだ。
共に暮らしていたシンジは、誰にでも優しく微笑みかける柔和な少年であった―― それはほんの二年前の事でしかない。

(お願い。あの頃の碇君に戻って……!)

一縷の望みは消えてはいない。が、シンジは必死の声にも心動かす気配を見せず、『じゃあ、仕方ないね』と素っ気無く返しただけだった。

「君の身体に聞くことにするよ」

冷たい氷の視線がマユミを睨む。
息もできず身をすくめるマユミを一瞥し、シンジはマユミを背後から押さえ込んでいる蛙に似た姿のあやかしに目を向けた。

「やれ」



◆ ◆ ◆




人の子ほどの背丈もあろうか、ゲコゲコと喜びの声を上げる怪蛙。その股間に大きくそそり立った生殖器を巫女衣装に擦り付けるようにして、マユミの背中へ圧し掛かっていく。
黒く伸びたシンジの影から這い出し、傷付いた身を投げ出すマユミを取り囲んで生贄への欲望に目を赤く光らせていた邪怪達も、ぞわぞわと一斉に蠢き出した。
蛇や蒜、蛙に守宮といった地這いの眷属に姿を借りた怪異の群れのおぞましさに、元来は気弱な少女であるマユミがか細く悲鳴を上げる。
容易く乙女の蹂躙される様が見通せる光景に、脇に控えていたいま一人の少女が慌てたように声を上げた。

「し、シンジっ……!? い、良いの?」
「何がさ、マナ」

やはり白い巫女装束に身を包んでいるマナは、綾波神社神官の家系霧島の娘として、本来はマユミと共にシンジ達を迎え撃つ側にいる筈だった。
しかし、とある任で第2新東京市に赴いていた最中にシンジとの再会を果たしていた彼女が選択したのは、鎮守職の裏切りを前に姿をくらまし、自らも寝返って先導の役を担うという背信であったのだ。

「みんなを甘く見てやしないかい? 僕らは先を急がなくちゃならないんだ」
「で、でも……」

その後ろめたさからか、マユミとは目も合わせられないでいるマナだ。
それでもこのままマユミを嬲り者にさせるわけにはというのは、彼女の本心だった。
シンジはその想いを理解してくれる。同じくマユミを大切に思ってくれている筈だと信じながら―― しかし、それでも今の彼は決して聞き容れてはくれまいと、半ば以上確信しながら。
そしてその通り、シンジはあやかし達を止めようという素振りを見せてはくれなかったのだ。

「話す気があろうと無かろうと、少しでも多くの手掛かりを吐き出して貰うよ」

それにと、

「どの道、彼女をこのままにしておくわけにはいかない。山岸さんは怖い人だからね。倒したつもりで油断して、後で背中からばっさりなんてゴメンだよ」
「シンジ……」
「面倒が無いようにするだけさ。……殺すよりずっとましだろう? マナ」

冷え冷えとした瞳が、マナにそれ以上を言わせなかった。
すまないけどと、マユミにも声を掛ける。

「山岸さん。巫女商売は今日で廃業にしてもらうよ」

貌を蒼白に、マユミが思わず身を縮めようともがいたのは本能からの怯えだったのだろう。

「そ、そんな……」

あの優しいシンジがとは、とても信じられない思い。
犯す―― と言っているのだ。よりによって怪異どもに、自分の純潔を穢させると。
シンジの、そしてマナの見る前で処女を奪われる。それは巫女としての資格を喪うという以上の恐怖だった。

「い、いやぁぁ! やめて、やめて下さい―― !!」

叫ぶ。踠く。女として最悪の事態からなんとか逃れようと。
しかし、力の全てを使い切った今のマユミはただの無力な少女に過ぎない。
そんなか細い腕での抵抗など気に掛けるでもなく、背にしがみついた異形の蛙は上機嫌に喉を鳴らしながら、マユミの首筋へと伸ばした舌を這わせていた。まるでその肌からマユミの味見をするかのように、ねっとりと。

「ヒッ、やっ、気持ち悪い……やめてぇ!」

撥ね退けようとするよりも先に、その腕を妖蛇が身を絡めて封じ込む。
反対の腕も、そして足も、蒜や蛇といった細身のあやかしが、縄のように絡め取って戒める。
皮膚の上を直に這い回る鱗と濡れた軟体の感触にぞわと鳥肌立ったマユミの白い肌を、さらに次から次へと蠢いて進んでくるのだ。

「い、いやぁっ! 来ないで! 離してぇっ!!」
「ああっ、マユミ……!」

うつ伏せの尻を緋袴越しに何かが撫で回していた。
手足は瞬く間に怪異の群に覆い尽くされ、腋の下から回された蛙妖の前脚で、胸を捕まれるようにして身を引き起こされる。

「いやぁ!」

尻餅を突く形になったマユミの胸に、触り易くなったとばかりに四方から伸びた前脚や触手が殺到していた。
襟首から長い舌が忍び込み、背筋にべろべろと涎を擦り付けながら下へ下へと、帯の下をも潜って双臀のあわいを付け狙っている。
腋下に開いた身八つ口の隙間から進入した蛇神が、肌襦袢の上から胴に巻き付こうとしている。
襟元から胸は真っ先に暴かれて、ふるんとまろび出た雪白の美乳の先端に、先を争うようにあやかし達が吸い付いてきていた。

「あぅううン! やだ、やだぁ……」

右の乳首には、まさしく飛び付いて仲間達より先んじた掌大の蛙妖が張り付いて、桜色の乳輪ごと咥内に納めチュウチュウと吸い立てている。

「ひいっ!? 離れてっ、離れてください……あ、あああ!」

蝦蟇蛙に似たそのヌメヌメとした感触に悲鳴をこぼして、それでもなんとか剥がそうとするのだが、蛙妖は執拗にマユミの乳房に陣取って離れない。
敏感な突起をしゃぶられるおぞましさに泣き声を上げるその端から、殺到していた大蒜の中でもとりわけ太った一匹が反対の乳首を勝ち取って噛り付く。
チクと一瞬の痛みを伝えたのは、小粒な尖りの根元に浅く食い込まされた歯であり、こうなってしまうともう後は身をよじろうが引っ張ろうが、体の前後の吸盤共々へばり付いて離れないのだ。
ニュルニュルと咥内全体を蠕動させながら、その執拗さはまだ出る筈も無いマユミの母乳を吸い出そうとするかのよう。
競争に敗れた仲間の蒜神や蛙神達もそれで諦めるでもなく、夜の闇に白く曝け出された巫女乙女の乳房へとまとわり付いていく。

「来ないでっ、……あっ、あぅあああ、ひぃぃいいンんぅ……! わ、私のおっぱい……離してぇ!」

何枚もの舌で乳房全体を舐め上げられ、巻き付いた触手にぐにぐにと揉み立てられて、形の良い乳房は左右ばらばらに形を変えながらマユミの悲鳴を搾り取っていく。
半狂乱になってもがき暴れるのだが、ボタボタとそれでふるい落とされるあやかしよりも、尚暗がりから這い出して群がろうとする数が勝っているのだ。
白の常衣は肌襦袢と共に肩から滑り落ちて、なだらかな曲線を描くマユミの裸の上半身を怪異の群れがびっしりと覆う。
僅かに覗く肌には吐き出された粘液がこびり付いてぬめと輝き、さらにはその媚薬効果によって発情を促されているためにか、うっすら艶かしいピンクに染まり始めていたのだった。

「ああぅ……、ぅあ、あああ!」

いけない……と、恐怖に竦み上がったマユミの理性も自らの異常を察知してはいた。
群がる小妖達の間にこじ入るようにして上半身に絡み付いている、一際太さと長さで目立つ芋虫の如き触手。ぐるぐると豊かな胸の隆起そのものをくびり出すように揉みしだかれると、その度に乳房の芯にじんじんと疼くような熱がこみ上げてきている。
肌の上を這いずる粘液に塗れた鱗の感触も、蛙神達の乳房をねぶるざらざらの舌も、おぞましさに摩り替わるようにして何かが背筋に妖しくざわめき出しているのだ。

(そんな、私……。う、うそよ……)

感じてしまっているの!? と、それはまさしく恐怖だった。
おぞましい穢れ神達に身を貪られて、その陵辱に喜んでしまうなどと、そんな事はあってはならないのだ。

(あ、ああ……。碇君が、マナが見ているのに……!)

焦りと恐怖にわななくマユミ。
その巫女仲間の誰もが羨ましいと褒める長い黒髪を掻き分けて、醜怪な蛙面が彼女の赤く上気した頬に生臭い息を吐き掛けている。
ほっそりとしたうなじを涎塗れに舐めしゃぶった挙句、まだ誰にも許していない清らかな唇を狙っているのだ。
口を固く噤んで必死に首を振るその怯え具合を愉しむように、ねとねとと舌の先を揺らめかせる。

「むぅっ、む、むぅうう―― !」

唇の間を先端がこじ開けるようにして、マユミの口の中におぞましい粘液の味が広がり始めたその時、『待て』と、シンジの声があやかし達の動きを止めたのだった。

「最後にもう一度だけ。……素直に話すんだ、山岸さん。どの道僕らは綾波を逃がさない。強情を張ったところで無駄な犠牲になるだけさ」

それは冷たい仮面の下から微かにシンジが覗かせた、かつて大切にしていた少女への思いやりだったのかもしれない。
そう、きっと綾波やアスカ達も責めはしない。だから話してしまえば良いんだ。そうすれば―― せめての尊厳は約束しよう、と。
厳しい眼差しを向けながらも、どこかそこには縋るような響きが込められていた。
その気配はかつての優しいシンジのものだったろうか。
その事を確かに感じ取れる自分に、シンジとの絆がまだ生きていることを嬉しく思いながら、しかしマユミはゆっくりと首を横に振って見せた。

―― そう」



◆ ◆ ◆




「いぐぐぅ……ん、んぁはっ、あはぁぁあああ!」

葉脈のようにモコモコと、マユミの緋袴には、その下に潜り込んで柔肌を荒し回る蒜神、蛇神達の動きが浮かび上がっている。
羞恥か、それとも妖気にあてられてか。真っ赤に染まったマユミのおもてからは、珠のように浮いた汗が、顎へと伝って滴り落ちていた。

「いぃふ、うぅうん! うんっ、んぐっ、ヒぃいやぁぁぁ〜〜!」

しきりに噛み殺そうとしてはいたが、堪らず上げる叫びにはもはや愉悦の色が明らかとなっていた。

「穢れ神どもも浮ついているな。さすがは山岸の末裔媛、例え化生の身であっても酔わずには居られないか」
「はぁっ、あっ、はぁぁあああ……!」

忙しなく熱い息を切らし、喘ぎ咽ぶマユミからは、もはや焼け落ちる本殿から逃れた綾波の媛巫女一行の手掛かりは得られそうに無い。
大きく開かされた肢の間、緋袴の股をこんもりと盛り上げて蠢いている様を見れば、その袴の裾に満足げに打ち振られる尾を覗かせた蛇妖によって、マユミの処女秘唇が貫かれていることは明白かと思われた。
後はただ、シンジもマナもあやかしの餌となってマユミが生気を貪られる様を見守るだけ。

「ああ、マユミ……」

今や小山のように絡み合う塊と化したあやかし達の中に手足を沈めて。緋袴の腰に入ったスリットや裾、完全にはだけられた常衣をまとわり付かせた解け掛けの帯の隙間など、あらゆる場所から怪異の触手が潜り込み、清浄なるべき巫女乙女の肢体を嬲り、弄んでいる。

「ふぐぅ、ぁ……うああ!」

桜色の唇を割って潜り込んでいるのは蛙神の舌であったか、それとも性器であったか。人の男のそれにも似た先端に喉奥を小突かれ苦悶の涙をこぼすマユミに、ヒクヒクと膨らんだ亀頭の先はくじるように咥内を犯しながら、また幾度目かの生臭い迸りを浴びせ掛けていた。

「えう……う、うぉおえ……。も、もう……い、いゃぁ……あ、んむぅぅ〜〜!」

おぞましいその噴射を浴びているのは、丸太でも突き込まれたかのように押し広げられた感覚のある秘部も同じことだが、痛みの代わりにその生臭さと苦さを味わされることも、処女を奪われたのと同じ以上に苦痛だった。
漸く満足したのか蛙神のそれは抜け出していったが、嗚咽と共に粘りを吐き出そうとする口元には、尚も二本三本と鎌首をもたげた触手が突き付けられていて、マユミは延々と代わる代わるに口を犯されては、精を吐き出され続けるのだった。
飲み干せぬ白濁は口の端からねととこぼれ落ち、やはり執拗に弄ばれている乳房の狭間へと流れていく。

(ああっ、また……)

膣に潜り込んでいた蛇もどきの触手が一瞬蠢動を止めて、また子宮口に熱い何かを放った。
処女膜を破られた当初は灼けるような痛みしか無かったのに、膣襞に染み込むようなその粘液が掛けられる度に痛みは薄れ、尾てい骨に響くような快美感が広がるのだ。
思わずキュウゥと、自分を犯す肉筒を締め付けてしまう。もっとと催促するかのように。

「あう、ふっ……う、ううン……くァ、あくぅぅ……!」

マユミの細い腰は絶え間なく左右にうねり、逃れようともがいているのだとも、又は怪異との交合に悦がりくねっているのだとも付かない有様。
ただ、きつく眉根を寄せ、切々と悲鳴を啼き漏らすに懊悩の貌からは、かつては親友として共にあったマナを赤面させるばかりか、その胸を妖しくざわめかせてしまう淫靡な気配が醸し出されていた。

(マユミ……。ああ、ごめんね……。もう私には、皆を裏切った私には助けて上げられないけど……)

マナはそこに、暗闇に咲く花の香りを嗅ぎ取っていた。
友を裏切り、その身を闇に沈めたマナだからこそ分かる、昏い悦楽の予感。
彼女の鳶色の瞳には、シンジの喚んだ怪異に弄ばれるマユミの姿が、やはりシンジの為にと進んで邪淫の儀式に身を捧げた自分自身に重なって見えていたのだった。

(私と、私と一緒に墜ちよう……。ね、マユミ、ずっと一緒だから……)



◆ ◆ ◆




「どれ……」

無造作に歩み寄ったシンジの手が、粘液に塗れてあちこち黒く変色した緋袴に掛けられた。
その薄い布の裏側に潜り込んで、しきりに卑猥なうねりを見せる蛇神や蒜神、触手の束達。
蛇身に絡み取られたマユミの両肢ははしたなく開かされていて、暴れる内に捲れ上がっていた袴は、粘液に塗れてヒクヒクとのたうつ太腿の、半ばまでを覆うだけになっている。
そのあやうい蔭りをかろうじて隠すたわみを掴んで、

「ああ!? やめて、お願いです! 見ないで、碇君―― !」

ビリリ!

乙女の身を不浄から守る神聖な巫女装束。その無残な名残が儚く毟り取られると、ほんの少し生え初めた和毛を冠したマユミの秘唇が、おどろおどろしい肉筒を深々と咥え込まされている様が露となった。

「いやぁぁっ……。見ないで、見ないで下さい、碇くん……。ううっ……お願いだから、私を見ないで……マナ……」

蹂躙される羞恥地帯に集まる二対の視線を感じて、そのあまりの羞恥にマユミは泣きながら顔を伏せてしまった。
耐え難い責めを受け続けてきたマユミの性器は赤く充血し、見るも無残に腫れ上がっている。
花びらのようなラヴィアを割って今も触手は苛烈な抽送を繰り返しているが、そこからマユミが受け取っているのは、最早陵辱と呼ぶには甘美に過ぎる、狂おしいばかり肉悦そのものであったのだ。

「これでもう神獣は喚べないってわけだ。山岸さん」
「ああ、ひどい……。こんな……こんなのって、ひぅン! ……こんなの……、あ、あぁう……。いやあぁ……」

ぐぷりと蜜壷を貫かれて飛び散る喜悦の飛沫。汗を滴らせながらうね踊る優美な曲線。
密かな恋心すら抱いていた相手に自分の処女喪失を無造作に扱われて、堪らなく悲しい筈なのに、腰は抽送を受け止める浅ましいダンスを止められずにいるのだ。

(私、こんないやらしい女の子じゃないのに! どうして……ああ、どうしてなの……!?)

首筋から耳まで真っ赤に染めて。死にたくなるような恥ずかしさに苛まれながらも、マユミの性器はトロトロと喜蜜を垂れ流し続けている。
膣内をこそぐ、鱗の一掻き一掻きが気持ち良くてならない。
子宮口を小突かれて、さらにはその奥もチロチロと、人外の交合でなくば踏み込まれようの無い胎の深くまでも蛇神の舌に愛撫される。
まさに魔悦――
たった今処女を喪ったばかりの少女であっても、ビクンビクンと背を仰け反らせては快感を訴えずにいられない劈くばかりのの官能に打ちのめされているのだった。
どれだけ押し殺そうとあがいても、『あん……あぁん』と、どうしても甘えたすすり泣きが口を突いて出てしまう。
そんな自分を二人は軽蔑しているだろうと思う。
それなのに、

(見られてる。見られてるのに……!)

その視線を意識するほどに、背筋を後ろ暗い快感が這い登っていくかのようなのだ。
マユミは視姦という言葉さえ知りはしない。それでも媚毒に侵された快楽神経は、己が醜態を曝け出して得られる倒錯の官能にまで少女を目覚めさせようとしている。
無垢な心と、狂い出した肉体との狭間で苦しみつつも、尚も執拗に乙女を貪り続ける怪異の前にマユミの抵抗も今や熔け陥ちる寸前となっていた。

「わたしっ、犯され……犯されれぇ……! うんっ、はうゥンん! お腹のなか、あっ、ああっ、いやぁあ!!」
「そうさ、山岸さん。君は侵されているんだ」
「やっ、やううぅう―― !」

初々しい鮮紅色の粘膜を主であるシンジ視線に捧げるように、左右から小さく噛み付いた蒜神によって少女の性器がつまびらかにされていた。

「胎の中から穢れ神どもの陰の気に芯まで侵食されて、君の躯は神性を宿す資格を喪うのさ。―― 徹底してね」
「……ひどい、ぃぅあぁう! また……ぁ、入っる、ぅ……う、いやあっ! いや、やめてぇぇ……!!」

処女果実の摘み取られた秘苑からは、蜜源を蛇首に突きこねられて立ち上る、甘い淫花の香りが漂っている。
膣への狭道は手首ほどもあろうかという蛇の腹に塞がれてしまっているが、それでもその香りに惹き寄せられた邪怪達は、媚粘膜を拡げられたその隙を秘肉を貪る好機だと、先を争って潜り込もうとするのだ。

「いっ、いやぁ、あ! み……みみずっ、きもちっ、気持ち悪いの! たすけ、助けてぇえ……!!」

大きく肢を開かされた、その白い内腿の付け根を目指して這い上る、蒜神、蛇神、みみず神。
自らの身の潜り込み先を勝ち取った軟体の邪怪は、マユミのぬめぬめと愛液にてらつく秘唇の襞に張り付き蠢いて、真っ赤な顔を振り乱す生贄少女にまたナイーブな性感帯を荒らされる狂乱をもたらす。
更に後から後からと花弁を割り拡げた中に殺到し、意思持つ性具と化して蜜壷をほじくる蛇怪と媚肉の隙間にも、美しい巫女姫の胎内の暖かさを求めて次々と頭をめり込ませていく。

「ンぁ……あ、潜らないで……戻って、戻ってっ……」

淫らな軟体に少女の羞恥地帯は完全に乗っ取られてしまって、性器を―― 自分で触ったことすら無いような奥まで一時に巨大な舌で舐めしゃぶられているようなおぞましさ。
その生理的嫌悪感に、意識の糸は今にも千切れ飛んでしまいそう。
いっそ正気を失ってしまえた方が、幸せかとすら思えてしまう。
だが、そのおぞましい軟体にくすぐられて、異常に敏感になってしまっている秘粘膜からはマユミにはどうしても認め難い、燃えるような快感が立ち上るのである。
処女を突き破られた苦痛は今しがたのものであった筈なのに、今は自らの中に入り込んだ蛇の腹でくじられる度、腰骨を溶かすような快美感が突き抜ける。

(ああっ嘘です……! こんな、ふぁああ……あ、私は、私はこんな、いやらしいことは……!)

―― ヒあ! ああーっ! そんなとこっ、お尻は……んぅうン! お尻は、ほじくらないでぇ〜〜!!」

マユミにしてみればそこは排泄のための場所。汚いだけとしか思えないのに、蛇怪か妖蛙の舌か、ぬめぬめとした触手がすぼまった入り口を舐めたくっている。
肉絨毯と貸した上で淫らに踊る白い双臀。そのあわいに秘め忍ぶ美少女の菊花は、真上にぱっくりと開いた淫裂から湧き出す愛蜜に塗され、白い肌を波打たせる愉悦の脈動をも受けて、ヒクヒクと淫猥に息衝いていたのである。
その淫ら極まりない眺めが、邪妖の気を惹かない訳が無かったのだ。

―― い、挿入れられちゃう!?

ずにゅり、にゅぐぐぐ……

「ああ、やめて! や、いやぁああ!? また入って……私の中……! いや、いや! お尻はいやぁああ!!」

さんざんに舐ってマユミを慄かせた挙句、すぼまりをこじ開けるように濡れた触手が侵入を開始する。
目に見えなくとも―― そして知りたくもないというのに、否応無く意識が集中してしまうそこに、自分以外の体温が不気味に生暖かく、奥を目指してくるのだ。

(あ、あ……チロって、舌に――

妖魔の責めが、人の出来る範疇を越えてマユミの全てを貪ろうとしている。
身体の外も、そして内側までも。

「いや、ああ……舐めてる! 私の中、あ……舐めてるぅぅううう!!」
「穢れ神どもとのまぐわいはどうだい、山岸さん? もう随分と嬉しそうに咥え込んでるじゃないか」
「ひっ、ひどいです。そんなこと……うっ、ううっ……。言わないでくださ―― あ、ああああー!」

全身に加えられる苛烈な愛撫は、少女に悲しみに暮れる暇すら与えない。
半狂乱の体で首を振りたくるマユミを見下ろして、シンジの乾き切った眼差しが破瓜の血をまといつかせたまま犯される女陰に向けられていた。
無残に暴かれた秘裂の際で、痛々しいほどに肥大化した淫核。その薄桜色に勃ち上がった乙女の弱点にも、当然の如く魔手は及んでいて、糸のように細の伸びた蒜神の舌に縛り上げられ、快絶と絶叫の発生源となっている。

「あう、あうぅうう! ……ひぃいいぃィィイ〜〜〜ンんん!!」
「ふん。これで間違いなく、だね。君にはもう清めの気を喚ぶことは出来ない」
「……あぁ、ああン!!」
「こいつらの穢れに巻かれて、生気を搾り取られるまま気が触れて果てるか。或いは――
「ひどい……、ひどいぃっ! あなたを、あなたを信じていたのに……!」
「信じる、か。何のあてにもならない、つまらない感情さ」
「いぅ、……うぁああ、あぁ、あぁあ……! 人でなしっ、碇君の……ばかぁ……!!」
「…………。お前達、手ぬるいぞ。もっと山岸さんの陰(ほと)に、穢れを注いでやれ」
「いやっ。あああ、んぐぅうう―― !」

またも胎内に爆発するおぞましい飛沫。
腸内にも淫妖の白濁は振り撒かれて、唇を割って突きこまれた触手にも精を飲まされる。
主の声音に不興を恐れてか、それまでに増してマユミの肢体を犯す蠢きは加速して、泣き濡れて目を赤くさせた美貌にも、蛙神に吸い立てられている乳房にも、びしゃびしゃと生臭い白濁液が浴びせられる。

(こんなの……嘘よ……)

密かに想い慕っていた当の相手に凌辱を仕掛けられ、まさに純潔を踏み躙られている秘め割れも冷たい視線に曝されている。
それも何の感慨も抱かぬ様子で―― さながらマユミの穢れされゆく様を、検分するかのように。

(もう……いや……)

マユミの泣き濡れた貌が、絶望の縁を見下ろしていた。


 
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Original text:引き気味
From:021229-隠れ屋チャット・漏れの思いついたネタを酒の肴にしてみるスレ(第二稿)