Back Seat

Original text:引き気味


Epilogue

自分を前途洋々たるエリートなのだと信じていた少女がやがて最後に辿り着いたのは、ネルフのトップとその援助者達に使い回される、共用性奴の身分だった。

世間はまだ彼女を人類の救世主だともてはやしている。
数年前には、全世界中継による華々しい結婚式も挙げた。
夫となったのは、世の男どもの憧れを娶るに相応しい―― 新世紀を担うべきパワーエリートの青年だったが、勿論、彼もまた老人達の作る「サロン」の一員として、餌を投げ与えられた存在だった。
世界中の女性視聴者が陶然となった純白のウェディングドレスをまとい、笑顔を振りまいたその夜に、アスカはそのドレスから胸とスカートの一部を取り去り、自らの女性を露にした姿で地下の「サロン」に跪いて、永遠の隷属を誓う奴隷宣誓式に臨んだのである。
首には家畜用の首輪。「夫達」の前を四つん這いで順繰りに引き回され、差し出したヒップの奥に白濁を注いでもらう。
最後に昼の主人たる青年の前に戻った花嫁奴隷は、その手に持った焼きゴテを右の尻たぶに受け、一生拭えぬ性奴隷の焼印を刻まれた瞬間、『ああ……!』と感極まり、果てた。

その後、アスカを煉獄に導いたあの老人の精を受けて、幾度目かの妊娠を果たしたアスカは、その腹の子が女の子であると診断されて、ようやく出産を許された。
やがて誕生する娘には、生まれながらの社交界の華としての栄光と、その暗部で身を喘がせる、肉悦の人生が決まっている。
数年後には、何時になっても容色衰えぬ母親と、年輪を重ねるごとに艶やかさを増すアスカの付き人―― 未だ独身の洞木ヒカリに導かれて、幼い内からの調教が始まるのだ。
既にヒカリの生んだ腹違いの姉たちは、ネルフ主催のパーティーに必ず添えられる華として、存分に権力者達の性欲をもてなす役目に付いている。
同じく洞木の姓を持つ、また母親の異なる姉たち―― 戸籍上は伯母と姪との間柄に近いだろうか―― も居る。
大勢の家族と、大勢の主人たちに可愛がられて、幸せな人生を歩むだろうとアスカは思う。

その父たる老人は、未だ権勢の頂点に君臨している。
もはやネルフよりも高みから世界を見下ろす彼の老人とは、専属の地位を解かれたアスカもパーティーで時折顔を合わせることがある。

『また、いやらしくなりおって……』

そう言って、こちらも衰えると言うことを知らぬ肉棒をしゃぶらせるが、もう滅多に、アスカがその馴染み深い精を飲ませて貰えることは無い。
今の老人は、次世代のチルドレンとして「生産」された少女達に執心なのだ。
人造の巫女たちは、一様に青い髪と赤い瞳を持っていたが、その顔立ちは、かつて最初の適格者であった碇ユイに良く似ていた。
素地となって彼女たちを生み出した、世界最後の使徒のサンプルがそうさせたのだろう。
そのどこか懐かしい顔立ちを見ると、アスカも忘れた筈の胸の痛みに切なくなる。
そんな様子を見て取った老人は、長年の忠誠に報いるように、巫女たちに「先輩」への敬意を示せと命じるのが常だった。
老人の左右に侍っていた少女たちは、身に付けた薄絹の前を開けると、髪と同じ色の飾り毛を頂いたスリットの上から、少女にはあり得ざる男性の徴をそそり立たせてアスカに挑みかかる。
大勢の招待客たちがそれぞれ気に入りの娘たちを傍らに抱いて見物する前で、彼女は前を後ろを貫かれ、薔薇色の唇に初々しい若茎を咥え、さらには両のしなやかな掌にしごいて―― 熱く、熱く浴びせかけられながら、叶わなかった恋の幻を見るのだった。









































―― というユメを見たわ」

ぼそりとレイは話を結んだ。

「な、な、なーっ!?」
「あや、綾波ぃ……」

イヤーンと変な格好で固まってしまったシンジとアスカ。シンジは呆然と―― しかしどこか鼻の下を緩めに。アスカはギリギリと歯軋りしつつ真っ赤であるが、レイは普段と変わらず平然とクールだ。……いや、ちょっと頬に朱が差しているかもしれない。
いずれにせよ、昼も早から珍しい長広舌をぶってくれたレイは、満足したように昼食を再開させた。

「な……なんっちゅーコト、言ってくれやがんのよ! ファーストぉぉ!!」
「待って、待ってよアスカ! そんな、振り上げたりして―― 僕の作ったお弁当をどうするつもりなのさ!」
「アンタはっ、アタシの名誉よりも、昼飯の方が大事なのかーっ!」
「いや、だって。アスカ絶対、その後で僕の分のご飯を奪いに来るじゃないか!」

弁当箱片手にぷるぷると血管をこめかみに震わせるアスカを、羽交い絞めで必死にシンジが止める。

「何よっ、可愛い同居人がお腹を空かしていても良いって言うの? 甲斐性無しなんだからっ。そーゆー時はそっと押し出して、『僕、もうお腹一杯だから、アスカが食べてよ』とかでしょうがっ」
「なに言ってるんだよ、もうっ」
「そうですよ、アスカさん。折角農家の方が作って下さった食べ物ですのに、粗末にしては勿体無いオバケが出ますよ」
「まぁ、なんっつーの? 死んでも隠しときたかった秘密が赤裸々にされたアスカさんの狼狽ッぷりは仕方ないとしてぇ。……シンジ! アスカさんが出てったら、今度はわたしと暮らそ!」
「へっ? な、なに言ってんのさ、マナ!?」
「そうよっ、誰が出てくってぇのよ! あそこはアタシとシンジの家よ。アタシと、シンジのーっ!」
「えぇ〜? だってアスカさん、世を儚んじゃったりするわけでしょ? 『ゴメン、シンジ。こんな汚れたアタシに優しくしてくれて……。きっと貴方には私よりも相応しい、素敵な女の子が待ってるから……』とか言っちゃってぇ。……あ、勿論、それわたしのコトね。ねー、シンジ」
「ねー、ぢゃないーっ! ―― っ、つーかシンジ! あんた人のお尻にナニくっ付けてんのよ!」
「あ……いや……その……。だって、綾波の話が……」

ポッと頬染めてみたり、

「うわ、シンジって結構マニアック? も、もちろん大丈夫よっ、わたし、シンジがどんなシュミでも合わせて見せるから!」

『今度一緒にビデオでも見る? ムチとか縄とかの』とかマナが囁いてみたり。それでまたシンジが顔を赤くするものだから、アスカも別の意味でレッドゾーンに突入するのである。

「あの……、それでしたら私が良い本を。その、マルキド……マルキド―― とか、その……」
「黙れ、影薄っ!」
「ひんっ……(⊃Д`)」
「ちゅーか、シンジがアレなことになっとるんなら、さっさと振り払えや」
「文句は垂れてもくっ付いたままか。よっぽど惣流の方がスケベだよな」
「そ、そそ……それってつまり、シンジとアスカさんは公衆面前プレイを楽しむ仲ってこと……!? 酷いよ、シンジ! わたしのハダカまで見といて!」
「あわわ……。あ、あれはマナが……!」
「バーカーシーンージー!」
「なんやなぁ。人がメシ食っとる前で、あんまりゴチャゴチャ埃立てんといて欲しいわ……って、おわっ!? どないしたんや、イインチョっ!?」
「ふ、不潔やぅ……」
「あ、あかん。逝ってもうてるがな!」
「衛生兵! 衛生兵ー!」

かくして、この面子が集まった場合の多くのケースと同じく、しっちゃかむっちゃかの騒ぎとなって昼食時間は潰れるのである。
今日も第3新東京市は―― 特に、碇シンジ少年の周辺は生暖かく平和だ。

だが、それが良い。





[ふぃん]



Menu