めざめ


Original text:FOXさん


 ふぁ、と欠伸をしてしまった少年は年長者が自分を見つめていることに気づいて赤くなる。
 「す、すみません。冬月…先生」
 「かまわんよ。疲れているのだろう」
 「でも……せっかく時間をとって教えてもらっている……のに……ごめんな……さい」そういうさなかにも押し寄せる眠気で欠伸しそうになった少年はあわてて口を手で覆った。
 「訓練が長かったからな……今日は、特に。さ、眠気覚ましにもう一杯コーヒーはどうかね?」
 「あ、ありがとうございます」新たに注がれ、湯気の出ているカップを華奢な両手で包み込んでそっともちあげ、少年は薄いカップのふちに唇をつけた。
 その姿を白髪の老人は柔和な笑みを浮かべて眺めていた。
 しかし、少年は知らない。
 「補習の際は『先生』と呼ぶように」と冗談めかして少年に命じた男が観察者の視点で眺めているものを。

 男は見ているのだ。

 少年のしなやかな指を
 カップに口付ける桜色の唇を
 こくりと動く(まだ尖りもはっきりしない)ほっそりした首を
 上目遣いの黒目がちな瞳を

 もちろん、少年に気づかれないように細心の注意を払って。

 数分後、少年はその苦く濃い液体をカップの底まで飲み干した。
 そしてにこりと微笑んで「すみません、続きをお願いします」と宣言するとペンを握りなおす。

 それから数分は老人にとってスリリングでとても楽しみな時間となる。
 その数分の間、少年は立て続けの欠伸を何とかかみ殺そうとし、「先生」に気づかれないように努力しているのだから。
 その数分の間、少年は断続的な睡魔と闘いながら、切れ切れの意識のまま「先生」を見上げて会話を続けようと努力しているのだから。
 その数分の間、少年はとろりとひどく蠱惑的に取れる表情を浮かべては、はっと我に返って赤面する「そそる」反応を繰り返していたのだから。

 そうして数分ののち、彼の肉体は降伏してしまう。
 耐え切れない睡魔に、親切な表情で提供されたカップ三杯のコーヒーにたっぷりと入れられた睡眠導入剤の効果に。

 「えと……ここ……の……助詞……は……」
 ぽとりと指からペンが転げ落ち、彼の全身からふぅっと力が抜けた。
 「おや、どうしたかね」その細い肩へ手を回し、引き寄せると男は白々しく少年を見下ろした。
 ぱた、と少年の両手が力なく落ち、なんの抵抗もできないまま男に全身を預けてしまう。
 「おやおや、すっかり疲れているようだね。しかたがないな……シンジくん。しばらく横になって休んでいなさい」
 とても優しい声で、勝利感と征服欲に満ちた声で、しらじらしく「先生」は宣言する。


 そうしてNerv副指令の大きなオフィスの隅におかれているソファーに少年は貴重品のように運ばれて、横たえられる。
 少年の頬を唇を卑猥に撫でまわし、それから立ち去った男が厳重に鍵のかけられたロッカーから持ち出した「それら」を手に戻ってくる数分のあいだ、少年は穏やかな寝息を立てて身じろぎひとつしていなかった。
 その様子を満足げに見下ろす老人の唇に浮かぶ笑みは、彼よりも年下の上司が浮かべるそれとまったく同じだった。
 「さぁ、着替えを持ってきてあげたからね」
 熱に冒されたような震える声で男は宣言し、テーブルに「それら」を丁寧に広げる。

 いかにも「お嬢様」なブラウスは純白でたくさんのフリルがついていた。
 紺のスカートは膝まで隠せるおしとやかなものだけれど、しかしブラウスの胸元の純白を強調するような少し大人びたデザインだった。
 そのスカートに隠されるひざ上までの長さのソックスは純白でつやつやしたシルクだった。
 ソックスの隣にそっと置かれた下着は純白だがひどく小さく丸まってしまうほどだった。

 たっぷりと時間があることを確信しきっている男はそれらを楽しげに眺めてから次の段階へと移るのだ。
 十四歳の等身大人形と化した少年のシャツのボタンをひとつづつ外し、シャワーを浴びてほどない素肌から香る石鹸の香りを楽しみつつ、彼を剥いてゆく。
 「さぁ、『ばんざい』だよ」
 「ほら、うつぶせになって」
 「靴下も脱ごうね」
 「これもだ。これもいらないよ」
 まったく意識を回復できないまま、黒革のソファーの上でうつぶせになったまま少年の腰に老人の指がかかるとするりと白いブリーフを下ろされ抜き取られ、彼は全裸にされてしまう。
 そして、彼は変身するのだ。

 彼の知らぬ間に。
 彼の望まぬまま。


 「ああ、今日の君はとても愛らしいよ…ユイ」

 ソファーにくたりと横たわる「美少女」の足元にぬかづいて老人はとろけるような笑みを浮かべる。
 少女が身にまとっているのは紺のスカート。膝までのおしとやかで清楚なデザインは老人が「彼女」のソックスに包まれた膝小僧を無残に広げて大開脚にしているために台無しで、それどころか両脚の付け根のふくらみをかろうじて窮屈に護っている純白ショーツと青白いほっそりした太股を卑猥に強調するだけだった。
 そのふくらはぎに、内股に、膝裏に老人は頬ずりし舐めまわしキスを浴びせかける。
 そのたびにショートカットの「美少女」は無意識のうちに甘い吐息を漏らすのだ。黒革の肘掛に頬を押し付けて。

 天井に壁に取り付けられた四台の閉回線カメラのレンズに青い媚態を克明にとらえられている「少女」、その映像を見た誰もが断言するだろう。
 そこにいるのはNerv総司令の碇ゲンドウの妻だった女性、その少女時代に生き写しだと。
 Nerv決戦兵器エヴァンゲリオン初号機パイロット碇シンジの母親、その少女時代そのものだと。

 そう。
 そこにいるのは「少女ユイ」だった。



◆ ◆ ◆



 最初は老人の夢想にすぎなかったのだ。

 少年の、碇シンジの映像を当時の「彼女」のスキャンに重ねて驚いたり、好意的な笑みを浮かべるだけだったのだ。
 だが少年の父親が少年の同僚であり、淡い恋愛感情の対象であったと零号機パイロットとひどく爛れた関係となり、それを隠そうともしなくなった(冬月の目には碇ゲンドウがぶつけてくる独りよがりな感情も欲望もすべて受け入れることを綾波レイが嬉々として選択し、それ以来お互いに依存しきっているように見えた)ために、そのひどく行き詰った関係から少年が年長の同性に救いを求めるようになってからは状況が変わってしまったのだ。
 当初はただの相談にちかい雑談を副司令室で交わす関係に過ぎなかった。
 保護欲に駆られた冬月が勉強を教えたのも親切心と必要にかられてのものだった。
 だが、副司令室でうたた寝をする少年をのぞき込んでいるうちに好奇心に駆られ、彼の髪をわざとかき乱し、「彼女」のようにしたときに何かが起きてしまったのだ。


 副作用のない睡眠導入剤を入手するのはまったく簡単だった。
 彼の、碇シンジの警戒心を解き、信頼を獲得するのも簡単だった。
 自分を「先生」と呼ばせるのは少し時間がかかったが、それもすぐのこと。
 コーヒーに薬品を溶かしこむことにまったく躊躇しない自分に驚いたのもごくわずかなあいだだった。

 だが、ただの悪戯ですませるつもりだったのだ。
 でも、うっとり眠る少年に毛布でくるんで「男の子」の特徴を隠し、その隣に腰掛けて彼女のつもりで声をかけ、ときおり頬を撫でつつ現状報告する程度ですんだのはたったの一週間だった。
 次の週には少年の……唇を奪い、「ああ、ユイの唇は柔らかいな」とつぶやいていた。
 さらに次の週にはソファーに横たわる少年に少女趣味なワンピースをあて、少し下がってその様子にどきどきしていたのだった。
 そうなるととまらなかった。
 少年を「彼女」にするため、下着までそろえた自分の行動力に老人は驚き、「ユイになった」碇シンジを想像して自分の肉体が硬く屹立していることにさらに驚いた。

 だから彼はさらに準備を進めた。
 睡眠導入剤の入手先……Nerv保安部の不良職員に命じ、執務室に隠しカメラをセットさせた。
 彼らが別の隠しカメラやマイク、閉会路に枝分かれなどをつけていないことは確実だった。
 彼らがMAGIのオペレーター四人娘を睡眠薬で肉人形にしていることを冬月が穏やかに指摘すると、彼らは全面的に降伏してしまったのだ。
 美しく若々しい「Nervの四輪の花」が定期的に開いている「飲み会&お泊まり会」でいつも口にするお気に入りのワインに混入されている薬剤についてほのめかすと彼らは何も言わずに冬月にその「サンプル」を提供した。

 厳重なはずのセキュリティをあっさり解除して美女たちが意識を失っているその部屋へと侵入し、高嶺の花の美女たちを一糸まとわぬ姿に剥いて、あるいは着衣を卑猥にずらして好きなように犯している映像を見せられただけで、彼らは冬月の戯れについて秘密を守ると誓っただけでなく、全面的な協力も約束した。

 侵入者たちによって一体ずつ「調査/確認」を受けた伊吹マヤ、最上アオイ、大井サツキ、阿賀野カエデの名前を持つ美人形たちが、ピンク色に染まったみずみずしいボディをなんの抵抗もできないままM字開脚のポーズでずらりと並ぶ映像に、彼らの前で冬月はふんと鼻を鳴らした。
 そして甘くみだらな夢に戸惑う寝顔と本気汁でぬるぬるになった淫花を四台のカメラに同時に視姦された眠り姫たちが「せーの」の号令とともにずぶと犯される映像を老人に示されて「なるほど、こうやって並べてみるとそれぞれ違いがよく分かるな」と冷ややかにコメントするだけでその睡眠導入剤の効能……肉体刺激に反応はするが記憶がすっぽり欠落すること。あるいは「夢」の形で記憶を補完しようとするので、むしろ記憶の欠落について認識すらしない場合があること……を争って告げたのだった。

 今度はおしりをちょこんと突き出した格好でカーペットの上にずらりとぴったり並べられ、お尻の肉付き加減からそれぞれの毛並みに生え具合、ひくついて蜜をこぼす花弁の発達具合にその蜜の糸の引き加減、さらにはきゅうきゅうひくひくとうごめく菊花も全部カメラの前にさらけ出し、親友同士の違いが比較可能にされてしまっている美人オペレーター四人娘の映像が大写しになると彼らは驚くしかなかった。
 「コピーをとるときは注意することだね」淡々と告げた老人はふと思い出したように、「そういえばこの素晴らしいヒップの大井君だが、彼女には薬がちゃんと効いていないように見えるのだが」と指摘すると彼らはこびを含んだ笑顔で副司令の慧眼を褒め称え、そしてサツキにはあえて半量の中和剤を投与して夢うつつのままで玩具にしているのだと告白する。
 いやむしろ、大井サツキに関してはほとんど完全な解毒状態だと彼らはにやにや笑って言うのだ。にもかかわらず、彼女はとても素直な人形ですよ。身体が覚えてしまったんでしょうねぇ。夢の中にいた方が幸せだと分かっちゃったみたいですな。
 そうそう「マヤが一番しまりがいいな」って言うと、サツキの奴ったらあの数の子天井でぎゅんぎゅん締めてくるんですからねぇ。意識なんてないはずなのに。
 そういや、このあいだ夜勤明けの食堂で一人いたときに「パーティ御用達のワイン」のミニチュアボトルをあげたんですよね。そしたらその場でこくこく飲み干して、一分も経たないうちにテーブルに突っ伏してしまったんです。大股開きになってましたから、向かいの席でちょっとかがんだら染みつきのパンティ丸見えでしたね。仕方がないから男子トイレに連れて行って「看病」してあげましたよ。でも不思議なんですよね。あのミニチュアボトルには薬も入れていないし、もともと彼女はウォッカ好きなのに。
 それどころか「パーティ」が終わったあとに記憶の欠落に悩むマヤに「欲求不満が溜まってるからじゃない?あんまり考え込むとストレス溜まっちゃってもっとひどい夢を見るかもね」となだめる「役」まで果たしているのだと言って冬月を苦笑させるのだった。



◆ ◆ ◆



 十数年にわたって恋した女性の、その彼女が乙女だった頃の姿をした「人形」を見下ろす冬月はとても満足そうだった。
 それは当然のことだろう。
 彼はようやく願いを叶えたのだから。
 だからそれは当然の行為。
 それで夢を満たそうとするのも。
 それで欲望を満たそうとするのも。

 そこにいるのは「少女」ユイとされた少年。
 碇シンジは望まぬままに姿かたちを変えられて老人の欲望の対象にされる。
 碇シンジは夢心地のまま淫らな欲望を身体に覚えさせられる。
 碇シンジは夢魔の手によって「おんな」にされる。


 きゅうっと整った形の鼻をつままれると「ユイ」はつややかなリップを塗った唇を開けてしまう。
 そのかわいらしい口が犯されることも理解できずに。
 まずはいやらしいディープキスで「ユイ」は口を犯された。
 ぬるぬると舌を絡めるキスも「ユイ」は夢の中なら得意になってしまっていた。
 真珠色の歯をひとつひとつ舐められて、口蓋をれろれろとつつかれると細い腰をくぅっと持ち上げて「ユイ」はあえいだ。
 キスに続いて「ユイ」の顔中をなめ回した男は、唾液でつやつや輝くちいさな唇にグロテスクな革製拘束具をこぽりと装着する。
 「ユイ」が夢うつつのままくぐもった声でかすかに抗議の声をあげても男はいっさい気にしない。
 「大丈夫だよ。怖いことなんてちっともないんだよ。ユイ」
 男の掌がさすさすと少女の小振りのヒップをなで回し、スカートの中へと侵入する。ショーツの「前の膨らみ」を淫靡に指で挟んでゆっくりと上下に動かすと「ユイ」は甘い声とともに服従してしまう。
 真っ白な歯を使えなくなった「ユイ」の口はいまや男のために準備された欲望放出器官になった。
 とろとろとたらされる老人の唾液をこくりこくりと飲み干し、愛らしい舌を男のごつごつした指で摘まれて玩具にされる。
 ぽっかりと開けられた口腔から突き出した舌をぱっくり銜えられてちゅうちゅう吸われても少女は抵抗できるはずもなく全身を震わせて快楽を表現してしまう。
 夢見る「ユイ」はとても素直だった。

 連日の睡眠学習で夢魔への服従をマスターした「ユイ」はかわいらしい少女スタイルのままで男の望むポーズをとらされる。
 下半身を嘗め回され「クリトリス」をかちかちに勃起させて笑われてもぐらぐらと首をゆするだけ。
 ほっそりとしたヒップをぴったり窮屈に包み込むショーツをずらされて、後ろの窄まりを悪戯されても「ふぅぅぅ…っ」と眉根を寄せて「くりとりす」をぴくぴくさせてしまう。
 真っ白なブラウスのボタンを3つ外して、「まったく育っていない」バストのしかしびんびんにとがってしまった先端をぬるぬる舐められ、吸われ、甘噛みされても抗議の声すらあげることはできず、その代わりに小さなショーツの中に「本気汁」を放出してしまって老人を狂喜させてしまう。
 やがてソファーに腰掛けた男の下半身に整った顔を伏せる姿勢をとらされて「ユイ」は雄の器官への奉仕を余儀なくされる。
 ショーツをずらして菊門にゼリーとともに滑り込んだ直径1センチもない卑劣な器具によって、夢の世界でもどろどろに発情させられた「ユイ」は何も知らないままに冬月のフェロモン臭を子犬のように鼻を鳴らし、すんすん鼻を鳴らして胸一杯に呼吸してその匂いを「覚え」させられつつ柔らかで暖かな舌で雄器官に奉仕するのだ。
 やがて年の割には信じられない量でほとばしった樹液を喉を鳴らして飲まされても、「ユイ」は幸福感一杯の表情で夢を見ていた。



◆ ◆ ◆



 「……あ、あああっ!す、すみません。すみません。ぼく、僕、完全に寝ちゃっていて」
 がばと身を起こした少年は赤くなり、青ざめる。
 ソファーの上で毛布までかけられて眠っていたのだ。こんなに無礼で失礼なことはないだろう。
 だが「先生」は寛容だった。
 「仕方がないことだ。シンジ君。訓練が大変なのは君の責任ではまったくないのだから」
 「でも、でも……」何か奇妙な記憶にはたとたどり着いた彼は、さらに青くなって毛布に包まったまま冬月に分からないようにスラックスのベルトを外し白いブリーフの中を確認し……ひそかにため息をつく。
 さっきの夢の中で彼はとてつもない快楽を得てしまったのだ。そして、夢の中でもはっきりと感じるほどの壮絶な放出を…してしまった記憶があるのだ。
 だがそれは夢だったらしい。
 碇シンジはそっと安堵する。


 だから気づかない。
 口や顎の奇妙な疲れも。
 喉奥の違和感も。
 知らぬ間に清められた口腔のハッカ臭も。
 下腹部が丁寧にアルコールで清められていることも。
 アナルの違和感と排泄感に似た、しかし何かまったく違う悦楽の記憶も。

 だから少年は分かるはずもない。
 来週の今日には「ユイ」がその処女を夢の中で冬月に捧げ、散らされることを。
 再来週の今日の夜には「碇シンジ」が自身が異常ではないかという恐怖にとらわれながら浴場で尻穴自慰を始めてしまうことに。

 だから自分の体と心に起きている変化も理解できない。
 「補習」の時に「先生」と気がつけば密着していて、それどころか男の体臭に全身がかっと熱くなり、陶酔状態になっても。
 シャワー室で冬月と一緒になり、「偶然」冬月がシンジの脱衣かごに入れてしまった彼の下着を手にしたとたん、その匂いに目眩を感じるほどの陶酔感と幸福感を得てしまい、若茎をかちかちに勃起させて動けなくなってしまっても。

 さらにその次の週には冬月の作成した「ライブラリー」を見せられて、夢見る必要もないまま「ユイ」にされてしまうことなど想像できない。

 四人の美人オペレーターたちと同様に素晴らしい夢に心を浸食され、快楽を身体が覚えてしまった碇シンジは「ユイ」になることで魂が融けてしまうほどの悦楽を得てしまう自分を嘆くこともできないまま、冬月におぼれてしまう自分を理解できないだろう。



Menu 感想はこちらへ


Original text:FOXさん
From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(4)