Jack:  くすくすくす。もう、賭けるものはなくなっちゃったね、ええとミス……「A」

 Minny: おしりがかわいいね。

 Yonna: おっぱいもいいぉ。

 ゲーム画面のなかで3Dのクマにウサギ、それからネコが踊っている。
 モニターの上に付いたレンズの無機質な光が、どこか面白そうで、意地悪そうにこちらを見つめているように感じてしまう。
 「ああ……どうして……勝てないんだろぉ……」
 つぶやく少女の口調は悔しさよりもどこか悪戯っぽさが漂っていた。



-濫用-





 それは当然の話。
 だってこれはただのお遊びなのだから。
 彼女の身に危険が及ぶことも、彼女のプライバシーが暴かれることもないことを、彼女自身が理解しているから。
 このゲームコンソールでは登録する「ペルソナ」の声も顔も、そして姿もユーザーの意のままに設定できるのだ。
 好奇心旺盛だけれども聡明な少女は、声については自分のものとはまったく異なる音声合成の「少女ヴォイス」を選び、決して素顔も分からないようにモザイク処理を行っている。もちろん解像度も落としてネットで流通するアングラビデオ程度のレベルへ設定していた。
 そのうえ接続しているサーバーは海外で、自分の居住地についても上海だと偽ったうえ、会話は英語なのだ。
 自身の正体が発覚することなどありえないと少女は確信していた。
 そうでなければこんなことをするはずもない。
 「ポイント」欲しさにスポーツゲームのビデオチャットに(顔を隠しているとはいえ)実映像を、それも破廉恥な裸身を曝すことなど。
 そう、技術の濫用はどこにでもある。
 本来プレイヤーがマッチプレイや打ち合わせを行うためにサーバー上に設置する「プライベートルーム」を使っての、いかがわしいボイス/ビデオチャットなど最たる例だろう。

 Yonna: ねぇ、Aクン、提案があるんだけど。

 「なに?」少女は頬を上気させてマイクへと応える。

 彼女がいま行っている「ゲーム」はビデオチャット可能なボーリング。正確なスローとボールを放すタイミングが必要なもの。
 彼女はそこで「ポイント」を賭けていたのだ。
 ある時はピンの数の大小を競って、ある時は勝敗そのものを掛けの対象として。
 本来、ここでやりとりされるポイントはあくまでもゲーム世界で使われる(たとえばサービス課金に充てるとか、電子的なアイテム購入に充てるとか)疑似通貨だ(こんなところでキャッシュにせよ電子通貨にせよ「身元が明らかな口座」を示すような者は「おつきあい」から外されるか、あるいはただのカモにされてしまう)。
 しかしそれを通貨に交換してくれる業者があることを少女は知っていた。
 さらに、真面目に掛けをするよりも、もっと「美味しい」方法があることも。
 「元手」すら不要な賭場があるのだ。
 女性参加者が自分の性別を明かし、「少しえっちな」チャット内容を許容すれば。
 普通なら3Dや2Dのペルソナを実映像にすれば。
 あるいはもっと露骨に、肌を露わにすることを厭わなければ。
 ここはまさしくその手のプライベートルームだった。
 声と顔を隠しての実映像での参加なら、衣服を担保としてポイントを貸してくれるのだ。
 それも衣服を一枚脱ぐたびに少女が丸一日アルバイトしても稼げないような額に相当するポイントが。
 ここの存在を知った少女はその管理人とコンタクトをし、「おとなしい」ゲームに数週間加わってポイントのやりとりののち「本会員」に昇格した。
 ちなみに少女がこの情報を入手したのは良識家で生真面目な癖に耳年増な親友からだった。
 もちろんその情報源であるおさげの少女はその手のゲームをプレイしたことすらないと頬を染めてなんども主張していたけれど。

 Yonna: 勝負の結果は出ちゃったから、こんどはAクンの一投ごとの得点にポイントをかけたいんだ。

 「たとえば?」

 Yonna: ルーレットみたいなものかな。Aクンが投げる前に僕たちがその得点を予想する。3点に5ポイント、6点に8ポイント、10点に3ポイントって感じに。Aクンが投げたときの得点が当たれば賭けたポイント合計の半分が賭けたプレイヤーに、残りはAクンに。

 「もし、誰も賭けていない点数が出たら?」

 Yonna: そのときは全部がAクンのものだね。

 少女は少し考える。
 ……このルールなら元手なしでゲームが続けられる。
 ……今日はなぜか全敗で実入りなしになりそうだったけど、このルールで2ラウンドもこなせば300ポイントくらいは稼げるかも。
 ……それだけあったら今月の携帯電話代をまかなえそう。
 ……このメンツ、月に二度も集まらないから……このチャンスを逃すと大もうけできなくなる……。
 ……オコサマなアイツったらユイおばさまと約束した上限に電話料金が届きそうになったら、電話してこなくなるんだもの。ったくもう、甲斐性ってモノがないんだから。普通さ、コイビトとはずーっとずーっと、いつでも話したいって思うんじゃないの?そりゃ、メールでもいいけど……やっぱり……ね。
 結論は明白だった。

 「ふーん。構わないけど。他の二人は?」

 Jack:  いいね、面白そう。

 Minny: いいけど、ひとつ追加条件が。

 「どんな?」

 Minny: サブコントローラーをニプルにあててプレイしてほしいな。

 ……うわぁ、このヘンタイたちったら、このサブコンの振動機能でアタシがくすぐったがるの見たいんだ。
 しかしクォーター少女は結局その条件を飲んだ。
 「えっと、どうしようかなー」と彼らをさんざん焦らしたのちに。

 「あ、ああん、もう、ボールが転がってくだけで、コレって振動するんだぁ」
 スレンダーボディをベッドに突っ伏しそうになりながら少女は笑う。ゲーム内の低解像度なウインドウの中では、ミルク色の裸身がくりくりと小振りなヒップを振ってまだ幼い少女がこの快楽を楽しんでいた。

 Jack:  かわいいー。すんげーえっちだ。

 「もう、スケベなんだから」くすくす笑いながら少女は意図的にお尻を少し上げてみせる。
 もちろんこれは計算のうちだった。こうして「煽って」あげれば彼らはどんどん賭け点を上げてくれるのだから。
 この1ラウンドだけで相当な額を稼ぐことができていた少女は、男たちの欲望をコントロールしてさらにお小遣いを稼ぐつもりになっていた。

 Minny: じゃ、次のスローいきましょうか。

 「うん……え?」上気した表情でディスプレイをぼんやり見上げていた少女の珊瑚色の瞳が見開かれた。
 「ね、ちょっとコレ、なに?」

 Jack:  なにって、Aクンがつぎになに投げるか賭けてるんだけど。

 「でも、だって、これ、『0』に誰も賭けてない……」

 Yonna: ああ、そうみたいだね。

 ……バカじゃないの、この人たち、ここでアタシがガーター出したら賭け点全部アタシのモノじゃない!
 「いいの?マジでいいの?」

 Jack:  もちろん。

 「ふーん。じゃ、いくわ……よ」にやりと唇を曲げてから少女はスティックを握ってスロー、タイミング良くボタンを押す。
 画面の中でボールは急角度にねじ曲がり、レーンをあっさり外れた。
 「ひ、ひぃぃいいっ!」
 ぽとりとシーツの上へ落ちたコントローラーがくぐもった音を立てていた。

 Yonna: だめだよぉ、落っことしちゃ。

 Minny: ガーターだとすごーくブルブルするんだよね。このボーリングゲーム。

 Jack:  でも、賭はAクンの勝ちだね。

 「は……は……これ、こんなに凄いんだ……え、あ……」
 自慰でも感じたことのなかった刺激に息を荒げていたディスプレイのオッズに少女は驚く。
 「また……『0』に誰も賭けて……ない」

 Yonna: 受付終了。さ、Aクン、投げて。

 Jack:  ちゃんとサブコン押しつけとくんだよ。

 Minny: はやく、はやくー。

 「え、あ、え……」少女の視線がふらつく。「彼ら」の意図が分かってしまったのだ。
 ……「ガーター投げろ」って言ってるんだ。このひとたち。
 ……ぶるぶる震えるコントローラーで胸を刺激する女の子の様子を鑑賞したいんだ。
 ……冗談じゃ……ないわよ。アタシ、えっちなサービスでショーバイするつもりなんてないんだから。
 ……でも、でも、ガーター出したらアタシの完全勝利になって……ポイント全部もらえるんだよ……ね。
 少女の心は揺れ動く。
 ……ああ、もうそろそろバカシンジに電話してやらないと、またアイツったら弱気の虫が出てきちゃうかも……。
 少女が「下僕」と呼んではばからない少年とはここ数日会話を交わしていない。
 彼はチェロのコンテストに出場するために一週間ほど京都に滞在していたのだった。
 旅行前のたわいない会話に、ともすれば弱気になってしまう少年がかけてくる電話に叱咤激励するうちに、二人の携帯電話料金は「上限」に達してしまっていた。
 「オーケー、じゃ、いくわ……よ」
 ……そうよ、これはアイツのため、シンジのためなんだから。
 少し唇を噛んでから少女はスティックを握ってスロー、タイミング良くボタンを押す。
 「ひ、ひ、あ、ああっ!」
 敏感なピンク色の果実をモーターにびりびり虐めてしまった少女はシーツに突っ伏した。

 「……あ、ふあぁ……これ、これ、指よりいいかも……」

 Yonna: すごいよ、Aクンったら全勝しちゃった。

 Minny: 大もうけだね。

 「あ……ほんと、ものすごく勝っちゃってる……アタ……シ」

 Jack:  すっかりこのゲームが好きになったみたいだね。Aクン。

 二ラウンド終了時、少女は蕩けきった笑みを浮かべて甘泣きしていた。
 画面に表示された彼女のスコア表はすべて「G」で満たされていた。
 しかし少女の表情にあるのは満足の色しかない。

 Minny: ね、Aクン、いまキミのサブコンどこにあるか見せてよ。

 「え、え、うん……」
 少女は犬這いの姿勢のままのろのろと向きを変える。
 「ほら、ここぉ……」
 ゆっくりと左脚を上げながら振り向いた。

 Minny: ちゃんと入れてるんだ。

 Yonna: これって防水だったっけ?

 チャットウインドウに映っているのはとっても淫らな少女犬。
 四つん這いのままカメラに向かってお尻を突き出し、さらに犬がオシッコをするように足を上げて、恥ずかしい部分を電子の眼に曝す美少女。
 彼女の秘花にはサブコンが浅く差し込まれたままになっていた。

 そう。
 いつしか「胸にサブコンを押し当てる」ルールが「太股のあいだに挟む」に変わってしまったのだ。
 刺激に敏感な身体が無意識のうちに開脚してサブコンをシーツに落としてしまうと、彼らは「落ちないようにしないとゲームを最初から無効にしちゃうよ」と脅迫する。
 媚態を異性に鑑賞される状況に、淫らな声や反応に彼らが反応するさまに少女の身体はひどく熱を帯びていた。
 そして判断力もひどく鈍ってしまっていた。
 ……どうせネット越しだし、せっかくこれだけ稼いだのが無駄になるなんて……。それに、いままでだってすっごくエッチで恥ずかしいコト、見せちゃったんだから……そんなに……変わんないよ……ね?
 羞恥心と抵抗心のハードルを言葉巧みに下げられて、さらには愛おしい少年のためという大義名分までかかげてしまった少女は、「サブコンを落とさないための方法」を自分から提案してしまったのだ。
 「あ、あのね、じゃ、アタシのココにサブコン……いれちゃ……ダメ?」と。

 指でこわごわいじるか、あるいは下着越しに碇シンジから分捕ったキャップ付ペンでそっと擦るようなオナニーしか経験の無かった少女は、電気でぶるぶる震える玩具が与えてくれる快感に酔ってしまった。
 四肢から力が抜け、お尻だけを突き出したままくたりとシーツにうつぶせになって、お尻を振りつつ全身を痙攣させてガーターを狙い続けていたのだった。
 最後の五投に至っては、男たちがなにを賭けていたとしても少女はガーターを狙うことしか考えられなくなっていた。

 だから、「ボーリングは飽きたから、対戦式のレースゲームをやろうよ」と提案された少女は頬を染めたままこくりとうなずく。
 彼らがなにをしようとしているか分かってしまっても。
 いや、むしろ分かってしまったゆえに。

 「あ、ああ、あ、くぅうううぅッ、あ、だめ、だめだめ、その岩にぶつけちゃやだ、やだ、や、ぁああああ」
 ぶるぶるっと少女は全身を痙攣させた。
 ゲームの画面では赤いサルの乗ったカートが競合車に挟まれてゆっくりゆっくりとコース外を進むことを強いられていた。
 そしてカートがダートを揺すられながら進むと、少女は幼い性感をブルブル震える玩具に高められて愛らしく淫らに鳴いた。
 ときに大きな障害物に乗り上げると、細い腰をかくかく振りながら非難の声を上げて快楽に酔った。
 少女はもうコントローラーを握っていることもできなかった。
 ベッドに仰向けに身体を投げ出し、可愛らしいティーンズバストの先端をかちかちに尖らせ、大きく脚を開いたまま踵を力なくシーツの上にばたつかせて、ネットワーク対戦がもたらしてくれる快楽に酔っていた。



◆ ◆ ◆



 「そうなんだ。予選はけっこういい得点取れたのね。よしよし、さすがアタシが見込んだだけのことはあるわ」
 「なんだよ、その『見込んだ』ってのは」
 「だってだって、アンタのチェロの最初のファンはアタシなんだから」
 「……アスカ、今日はなんだか優しいね。ありがと」
 「え、な、なに言ってるのよ!アタシはいつもとっても優しいガールフレンドなんだから!」
 帰り道、中学校の制服姿で駅舎のコンコースの柱にもたれかかったまま携帯電話に話しかけていた少女はどきりとする。
 昨日の淫らきわまりないゲームに参加した引け目のせいかも。少女は秘かに思う。
 「彼ら」がログアウトしてから数時間経ち、朝の光がカーテンの隙間から差すころ、少女は自らの痴態に青ざめ、悔し涙と自己嫌悪にどっぷりつかってしまった。
 なぜあんなに彼らの淫らで卑怯な言葉に乗ってしまったのかも分からなかった。
 いや、金銭欲と好奇心、さらには快楽が判断力を鈍らせたのだとそのときの自分でははっきり理解できた。
 もう二度と参加なんかしないと少女はなんどもベッドのなかで誓ったのだ。
 これは自分自身への冒涜であり、決してまだ言葉にしたことはないけれど幼いころからの想いを忘れたことはない……むしろその想いは強まっている……碇シンジへの裏切りなのだから。
 「なんだか、アスカの顔を見たくなってきちゃった」
 「な、なに甘えたこと言ってんのよ!しっかりがんばる!きりきり演奏する!そうでなきゃアタシ、許さないからね!」
 言葉は厳しいものの少女の口調は甘く、ノーメイクでも通りがかる人々が振り返ってしまう美貌を上気させて、彼女は恋人を叱りつけた。
 「じゃ、電話代高くなるから切るわね。次はアタシがかけるから、じゃ!」
 再会したときの(少女への)ご褒美を強引に約束させ、幸福感でいっぱいになった少女は頬を染めたまま電話を切る。
 溢れてしまう笑顔を無理に押さえつけて平静を保ち、歩き出そうとする。
 そのとき響くメール着信音。
 「もう、シンジったら、電話直後にメールを打ってくるなんて……え……あ……」
 少女は凍りつく。どっと汗が噴き出す。

 画面に映っているのは全裸のクォーター少女がベッドに這ってゲームに興ずるムービー。
 比較的ちいさな画面にもかかわらず、画質はきわめて高く、そして一切のモザイクもかけられていないことは明らかだった。
 「うそ、うそ、うそ……」がたがた震える少女、柱にもたれたままずるずるとしゃがんでしまう。
 携帯の画面のなかでは愛らしい少女がベッドに仰向けになったまま腰を不器用に揺すって泣いていた。
 新型ゲームのサブコントローラーをまだ幼い秘花に差し込み、クリトリスを両手でちくちく弄って、独り遊びに耽っていた。

 「『Aクン』だよね?キミ」
 いつのまにか目の前に三人の男が少女を見下ろしていた。
 にやにや笑うその表情からも、全身からも一見してヤクザと分かる凶暴さが放射されていた。
 「惣流・アスカ・ラングレー、一四歳。第三新東京市立第弐中の生徒さん」男の一人がメモを取り出して読み上げる。「クォータージャパニーズで、ご近所でも評判の学業優秀、スポーツ万能な美人中学生なんだって?」
 「どうして……どうし……て」
 あのゲームに関しては自分につながるような情報は一切登録していないはずなのに!そもそもどうしてモザイクも外されて、解像度も最高にした映像が存在するの?
 答えなど出るわけもない。震えることしかできない少女に男たちのにやにや笑いは大きくなる。
 「趣味はファッションにテレビゲーム、それからネットでえっちな自分を見てもらうこと……かな?」
 「いや、いやぁ……お願い、お願い……」
 しゃがみ込んでしまった少女の腕が掴まれ、強引に立たされた。
 「もう、なにもかも知られちゃってるんだよ。アスカちゃん、逃げ場なんかないんだよぉ」サングラスをかけた男がにやにやとささやきかける。「お家も、パパとママの勤め先も、電話番号も知ってる。クラスの名簿も持ってるし……碇シンジ君の電話番号も、彼のご両親の勤め先だって分かってるんだ」
 「ああ……ああ……パパぁ、ママぁ……シンジぃ、シンジぃ……」一四歳の女子中学生は自分が決して脱出できない罠へ落ちたことに気付いて泣きじゃくることしかできなかった。
 その泣き顔が男たちの獣欲を……「調教」のときには必ずこの美貌を涙で濡らしてしまうまで虐めてやろうと決意するほど……さらに高めてしまうことすら気付くことはできずに。
 「さ、ここじゃなんだから、事務所で話をしようか」
 爬虫類のような眼でアスカを見下ろしていた男が指し示す先には黒塗りの高級外車がエンジンをかけたまま駐まっていた。


 そして車内で少女は教えられた。
 「ゲーム」での偽装された「ペルソナ」を見ていたのはアスカだけであったこと。あれはサーバー側でいじった画像をアスカのゲーム画面に映していただけのことで、「参加者」たちは少女のあられもない姿も声も聞き放題だったこと。
 「いいレートでポイントを電子通貨に変換するアングラ業者」も罠のひとつだったこと。
 電子通貨の口座が分かり、コンソールの通信IDとハードウェアのシリアルが分かってしまえば、個人特定など実に簡単であること。
 そして彼らは「商品確保と調整」を請け負う一種の「代行業者」であることを。

 さらに少女は教えられる。
 彼女に与えられる未来を。それが少女の想像したとおりであり、さらにそれよりも悪いことを。
 スモークガラスに囲まれた車内でスレンダーな肢体にまとった制服を剥ぎ取られ、スポーティなショーツと靴下と髪飾りだけを許されて、後ろ手錠でまったく逆らえないまま、全身を撫で回されながら教えられるのだ。

 惣流・アスカ・ラングレーは商品にされてしまうのだと。
 人々の淫らな欲望のための商品にされてしまうのだと。
 「少女のかたちをしたセックスペット、それも最上級品」となって人々を楽しませるのだと、もちろんその過程も商品として流通するのだと。
 「大丈夫。素直におじさん達の言うことを聞いてくれたら、アスカちゃんはいつも通りに生活できるよ。毎日三時間の『課外活動』を受けてくれたらね」
 ぎゅっと閉じた彼女の膝小僧をさわさわ撫でていた男が笑った。
 「ま、すぐに大好きになっちゃうから、その『課外授業』ってヤツ」運転手がげらげら笑った。「お家へ帰るよりも、チンポくわえていたいって泣いて頼むようになるかもなぁ」
 「そうかもしれへんなぁ。中坊くらいにプロがよってたかってセックス覚えさせるんやから、そりゃハマって当然かもねぇ」別の男が煙草の煙を少女に浴びせかけ、咳き込むアスカのおとがいを掴んでまっすぐのぞき込む。
 「まぁ、楽しみにしとき。アスカくらいの美人やったら、みんな大喜びで調教に参加するやろから、一四歳の中学生のくせして何十本もチンポを楽しめるんやで……」
 「やだぁ、やだぁ……許して……やだよぉ……」
 「ええ顔で、ええ声で泣くねぇ。アスカちゃんは」
 げらげらと笑う男たち。
 そして惣流・アスカ・ラングレーは宣言される。

 今日のうちにアスカは処女を奪われるのだと。
 牡たちの指で舌で、そしてクスリと無慈悲な言葉で聡明で強いはずの意志が快楽と被虐に塗りつぶされた少女は、泣きながら真珠入りのペニスで貫かれ、無惨に揺すられて泣き叫ぶのだと。
 けれども早朝の「お開き」のころには、少女はペニスでごりごりと狭い肉襞をえぐられる感覚に苦痛とは別の感情をいだくように「されてしまう」のだと。
 もちろんその様子は克明に記録され、選ばれた市場に流されることになるのだと。

 アスカが「課外授業」が嫌いで仕方がない時期もまた、彼らにとっては楽しみであること。
 送迎の車の中で彼女が示す抵抗もまた楽しいのだと。
 引きずり込まれて泣き叫ぶ少女の汗の匂いを楽しみ、抵抗する肉体に快楽を思い出させていく時間は実に素晴らしいのだと。
 それに少女にはさまざまな「枷」を付けさせられるのだから、抵抗なんてする体力はないはずだろう。
 ぶるぶる震える「アタッチメント」が各種取り付け可能な鍵付きの貞操帯で、アスカの肉体と心は学校でも、家でも造り替えられていくわけだし、おそらくクリトリスに付けられた「リング」だけでアスカはその活発さを失うはずだ。
 剥き出しにされた幼い肉芽がショーツに擦れるだけでアクメを迎えてしまうし、ショーツを脱げばこんどは彼女にあこがれを抱く異性にそれを見とがめられないよう、彼女は常に淑やかに振る舞うことになるのだ。
 あるいはお尻の穴にがっちりはめられたプラグだって立派な枷だ。
 いくら「ダイエット中」を装って食事を減らしていても、腹部をしだいに圧迫していく重みは惣流・アスカ・ラングレーから活発さを除いてしまうだろう。
 それどころか椅子に座るときでさえ、あやしい刺激に身構えねばならないのだ。
 いままでのところ「それ」を装着された「商品」たちは自分から事務所へ足を運ぶようになる。
 特にゼリー状の「お薬」を注入された美女たちは泣きながら彼らに願うのだ。
 「はやくこれとって、はやくこれぬいて、あたまのなかがコレのことだけになってるの、いうこときくから、これだけは、これだけはゆるして」とうわごとのようにつぶやくのだから。
 そう、「クラブルーム」の外でもそもそも「教育」は続いているのだ。

 さらに少女が知人や友人、家族に助けを求めることは「あり得ない」と男たちは断言した。そうした際の「実例ビデオ」を見てしまって、そんな行為に走るものはそういないと。
 「カレシに振られた腹いせにえっちなチャットにはまったあげく、チャットで繰り広げていた『パパくらいの年頃の男たちとの複数プレイ』妄想を彼らに実現させて『もらった』女子校生が、委員長を勤めるくらい真面目な妹にふと事態を漏らしてしまったことによる悲劇」の映像は確かにインパクトがあるからねぇと男たちは笑った。
 女体の「底」が完全に露わになる格好で緊縛された美少女三姉妹……高校生のスポーツ少女、中学生のクラス委員長、カメラが「おじゃま」したときは姉を手伝ってのエプロン姿も愛らしい小学生の三女……が床に転がされ、長女を間に挟んで並んで犯される映像の凄惨でかつエロチックな情景を見せつけられては抵抗する気力など無くなってしまうだろう。
 麻薬をたっぷり投与され、残酷に器具と指とで性交可能なまでに肉体を開かされ、人としての威厳などまったく失った「アヘ」顔で狭隘な孔に初めてのペニスを迎え入れさせられた妹たちに挟まれて号泣する姉がいつしか自分も犯してくれと、妹だけにペニスをくれるなんてずるいと懇願するさまを見せられたものはおそらく、それを自身と重ねてしまうはずだから。

 「ヒカ……りのこと……、ヒカリのこと……なの……」がたがた震える少女に男は言った。
 惣流・アスカ・ラングレーの場合、もはやネットの上で所有権が競りにかけられている。
 二週間後には「お客さま」が決まるから、楽しみにしておくんだよ。と。
 男の指がアスカのショーツの中へ侵入する。
 一四歳のクォーター少女はしゃくり上げながらゆっくりと自ら足を拡げるのだった。



◆ ◆ ◆



 「あ、あの……キールさまでいらっしゃいます……か?」
 空港の送迎ロビーに現れた少女に男は破顔する。
 ジュニアハイスクールの制服を身にまとった少女……西洋人形のような面持ちに少女モデルのようなプロポーションで周囲の不作法な視線を浴びせられ続けていた……は、滑らかに一礼すると親愛の情を込めた瞳で彼を見上げた。
 「惣流・アスカ・ラングレーと申します。父がお世話になっております」
 周囲に通る澄んだ声にその振る舞いは教育の行き届いた良家の子女そのものだった。
 「アスカ君か、父上の代わりに迎えに来てくれたのかね」
 「はい、キールさま」少女の英語は完璧だった。
 「なるほど」キールは笑顔でうなずくと携帯の電源を入れて短縮番号を押す。そして三コールで出た相手に「商品を受け取ったよ。三日で帰すのは惜しいできばえだね」と小声で告げた。
 「あの、こちらにハイヤーを待たせております。どうぞ、こちらに」再び軽く会釈して、優美な足取りで進み始める少女の姿に、周囲の人々の不審の念は完全に払拭されるのだった。

 「アスカ」リムジンの中のキールは実に尊大だった。「シートに横になってスカートの中を見せなさい」
 「はい、ごしゅじんさま」アスカもまた変化していた。
 どこか虚ろで従順な、意志を持たない人形少女に。
 仰向けに横たわり、ちいさく吐息を吐きながらジャンパースカート型のスカートを腰のところまでずり上げ、片膝をシートに乗せ、もう一方の脚は床に落とす。
 ポケットからちいさなチェロ型のマスコットの付いた携帯が転がり落ちるが、彼女はそれを気にする様子もなかった。
 破廉恥なポーズが完成し、従順に露わにされた女子中学生の下半身には赤い革製の下着……貞操帯が装着されていた。
 「さぁ、アスカ、ご挨拶だ」
 男に命ぜられた少女は頬を染めて宣言する。
 「はい、あたくし、惣流・アスカ・ラングレーは今日より三日間、キールさまのペットになることを宣言いたします。まだ調教いただいて二週間の未熟なペットですが、どうかこの身体をお好きなようにお使いください……」
 聡明で男子顔負けの行動力を誇る活発な美少女はもうそこにはいなかった。
 そこにいるのは早熟な好奇心が仇になって被虐の心を植え付けられ、ペニスの快楽を、男の味を全身に染みこまされてしまった淫らで愛らしい少女奴隷だった。
 そう、彼女はもう戻れなくなっているのだ。
 自らの「宣言」に心を昂ぶらせてしまうほどになった少女が戻れるはずもないのだ。
 「あ、あの……」アスカは唇をわななかせて言葉を続けた。「こ、この、この貞操帯、クリトリスのところには、ぶつぶつざらざらしたものが付いていて、アスカのいやらしいクリトリスを常に刺激してるんですよ」
 ほっそりした指がゆっくりと下がり、とんとんとショーツのクロッチにあたるところを叩いた。
 「ご主人さまに可愛がっていただくアスカのヴァギナは、シリコンの調教具が入ってて……アスカを虐めるんですぅ。なにかのはずみでうねうね動いて、シリコンのくせにアスカに気をやらせるんで……す」
 とろんとした瞳で老人を見上げる少女の指がさらに下へと動いた。
 「アスカのお尻の穴にはプラグが入って……ます」
 「これは何日前から付けているんだ?」
 真っ赤になって彼女は答える。「あ、あの、三日前から……あ、あのどうかご慈悲……を」
 わななく彼女の唇が奪われる。
 長い唾液交換ののちにキールは奴隷に笑って見せた。
 「外してあげるよ、もちろん。鍵は航空便で届いていたからね。でも、ひり出す様子はネットの友人たちにも見てもらうよ。もちろんPVでそうだったようにこどもみたいに泣かせてあげるからね。この美人顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら『お願い』する映像はそれはそれは評判だったからねぇ」
 「ああ、ああ……御主人さまぁ……」
 貞操帯によって排泄も性交もコントロールされている奴隷中学生は予兆に全身を震わせる。

 ……初めてのお客とその友人達の目の前で、自分は情けなくも「お漏らし」させられてしまうのだ。
 ……三日間の「禁欲」と貞操帯によってどうしようもなく昂ぶってしまったアタシの身体は、この老人に貫かれただけでアクメを迎えてしまうにちがいなく、その圧倒的な快楽は「惣流・アスカ・ラングレーを買っていただいた方のペニスには絶対従属」という「決意」としてアタシの心に刻印されちゃうのよ。
 ……このあと三日、「ご主人様」に飼われてるあいだに、アタシはもう「普通の女の子」じゃなくなるんだ。
 ……ううん、「完成」させられちゃうんだ。
 ……「ヘンタイ奴隷人形アスカ」に生まれ変わっちゃうんだ。

 オークションで競り落とした「一四歳のマゾ姫」が紺碧の瞳に涙を溜め、しかし期待に満ちあふれた表情で男を見上げていた。
 キールはにやりと笑うと少女のブラウスのボタンをむしり取るように外し清楚なブラをずらす。
 甘やかな吐息とともにまろび出た柔らかで弾力を持った可愛らしい膨らみとどうしようもなく尖ってしまったピンクの果実を舐め回すと同時に、彼女の素晴らしいロリータボディをいやらしく撫で回す。
 アスカはうっとりと瞳を閉じ、「ご主人様」の愛を受け入れる。

 だから気付かない。
 ポケットから落ちた携帯に誰かが電話をかけてきたことを。
 マナーモードから留守番電話に切り替わったそれに、相手が真摯なメッセージを吹き込んでいることも。

 「あ、あのさ、アスカ、あっ、僕、シンジだけど……ごめん、なかなか電話できなくって。でさ、モントリオールから帰ったら、アスカに言いたいことがあるんだ。その、ずっと言おうと思ってたけど、勇気がなくって……だから、帰ったら言うよ。電話じゃなくって直接に。じゃ、アスカ、身体に気をつけ……」
 制限時間に達したメッセージは一方的に切られ、点滅を繰り返していた携帯電話の表示は「着信1:録音有り」へと変化して沈黙する。

 「……あ、ああ、ご主人様、アスカのオッパイの先、こりこりされると、こりこりされると、アスカ、だめになっちゃうんですっ。ああ、ああ、そんなに強く揉まないでぇ、ああ、お許しを、まだ、まだすごく敏感なんです、あ、ああ、だめ、だめ、だめ、らめぇぇ」
 まだ芯の残る早熟バストを強く揉みしだかれつつ、敏感な先端をねろねろねぶられる感覚の「すばらしさ」に目覚めはじめる美しい少女奴隷にとって、もう携帯電話のことなんてどうでもよくなりつつあるのだから。



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Original text:FOXさん