「わたし…私は、あなたの……ご……ごしゅ…。
 ご主人、様…の……し、所有物……です。
 淫らで、ふしだらな、ご主人…さまだけの…。に、肉…奴隷……です。
 わ、わた、わたしの…イヤらしい…オ○ンコを朝まで、か、可愛がって…下さい」

 屈辱に顔を歪ませ、山岸マユミは言った。

 暴力と脅迫で無理矢理言わせられた言葉。
 だが言葉を口にした事実は、繊細な彼女の心を野獣の鈎爪のように切り刻む。

 悔しさと怒り、悲しみ、なにより身を裂くような羞恥に、彼女の豊かで艶やかな黒髪が痙攣したように揺れる。
 握りしめられた指先は血が滲みそうなほどきつく手の平に食い込み、涙で濡れながらも、普段の彼女らしくないきつい視線は、射殺さんばかりに目前の男を睨み付けるのだった。
 しかし、睨まれた当人は至って涼しい顔をしてこう嘯く。

『おねだりなんて淫乱だね。そんなに良かったのかい?
 …エッチだね。シンジとは比べものにならないくらい良かったんだろ?
 そうだよね、あんなにアンアン甘い声を出してよがってたし。
 気持ちよかったよ。ああ、朝までまだ時間はたっぷりある…。もう一回だ』

 涎の後が薄く張り付く乳房の頂点が、男のグロテスクな口腔内に捕らわれ、ヌルヌルと生暖かい舌がチュパチュパと音を立てて舐め始める。
 最前の愛撫の余韻が残る桜色の乳首が転がされるたびに、マユミの口から甘く切ない喘ぎが漏れた。

「ああう、あふ。んくぅ」

 たちまち体の奥底から沸き上がる甘美な快感に翻弄されながらも、マユミはこんな事態に陥る原因を空しく考えていた。

(あ、ああ…どうして…どうして…なの?)


 どうしてこんなことになったのだろう?


 ほんのわずかな勘違い。
 巨大なダムに出来た蟻の巣穴のような小さなきっかけ。










─ 雪山での惨劇 ─




書いたの.ナーグル








 セカンドインパクトで季節は消失し、続くサードインパクトで急激に四季が蘇った。
 四季を知らないセカンドインパクト世代への対策として、林間学校の一環として雪山へのスキーが企画された。

 初心者で恐怖心が特に強かった彼女はゴーグルを付けることを選んだ。つまり、眼鏡を外さなくてはならなくて近くのものがよく見えなくなっていた。
 だからすぐ近くで『碇』と呼ばれた青いスキーウェアを着た影を、碌に確かめもせずに恋人である『碇シンジ』だと思いこんだ。

「あ、あの…シンジ、さん。今日は、よろしくお願いしますね」

 いつにない積極さで腕を組むシンジを、環境が変わったことで興奮したと思った。

(あの時、すぐ気づくべきだったのに)

 シンジにしては背が低かったことに。
 シンジにしては腕がだらしなく、しなやかさが微塵も感じられなかったことに。

 無言のシンジ(と思っていた男)に手を引かれるまま、山上に行き、コースを外れて林の中に迷い込み…。



 気がつけば激しく吹雪く雪山の中、彼女と彼は2人ッきりで右も左も分からなくなっていた。




 痛いほど顔を打つ雪に顔をしかめながら、マユミは喘ぐようにシンジに提案する。

「吹雪いて、来ちゃった…どうしよう。シンジさん、どこかでやり過ごさないと…!」
『うるさい、黙れ! お前がふらふら勝手に行くから、こんなことになったんだ!』

 その子供が癇癪を起こしたような声に、ようやくマユミは目の前にいるのがシンジでないことに気がついた。いや、最前から奇妙な違和感を感じてはいたが、まさか自分が間違えるはずがない、間違えていてはいけない…という思いに捕らわれ、確かめることが出来なかった。

「あ、あなたは…え、シンジさんじゃ、ないんですか?」

 だから違っていると分かりきっていても、こう尋ねずにはいられない。

『何言ってる! 僕をシンジなんてやせっぽちと一緒にするな!』
「そ、そんな…」

 わかってはいたが勘違いの事実を突きつけられ、マユミは吹雪の中に倒れ込みそうな目眩を感じた。
 今自分と一緒にいるのは、どんなときにも(少なくともマユミの前では)諦めず、困難と向き合う恋人、シンジではない。
 名字こそ同じだが、見た目も性格も大違いであるシンジのイトコ…。

 あまり人の悪口に詳しいマユミではないが、彼に関しての悪口なら簡単に二つ、三つと思いつく。それほど嫌われている。
 甘やかされて育った性格は我が儘で自己中心的、いくつもの苦難を乗り越え内罰的ではあっても前向きな好青年のシンジに、憎悪と言って良いほどのコンプレックスを持ち、いつもつまらないことで突っかかる。
 シンジに友人がいることが気に入らないのか、転校した初日からトウジやケンスケと衝突し、仲の良いガールフレンドがいることはもっと気に入らず、かつ自分はもっともてると思っているのかいきなりアスカ達を口説きにかかる。


 マユミにとって、たまたま同じ列車に乗っただけですぐに自分とは違う駅に降りるはずの男。
 言葉を交わすことなど一生無い、物語の中の群衆以下の存在のはずだった。




『くそ、この僕がこんな寒い思いをするのも、全部お前の所為だ!
 責任とれ!』
「せ、責任って…。だいたい、あなたが私を勝手に引っ張っていったんじゃないですか」
『嘘をつくな! 仮に僕が引っ張っていったって言うなら、何でついてきたんだ!』
「そ、それは…」

 シンジと間違えたから…だが、それを認めることは出来ない。
 よりにもよって、愛するシンジとその対極に当たる男を間違えたなど…。

「と、ともかくっ! このままだと、遭難しちゃいます。今は言い合いをするよりどうにかすることを考えないと」

 ギャーギャー喚くイトコ君をなだめすかし、吹雪を避けるところを探しているうちに山小屋を見つけたのだった。
 しかし、通常なら常備されてるはずの薪やストーブの油など、暖をとるためのものはない。吹雪を避けられても周囲の寒冷な空気は、容赦なくマユミの体温を奪い、手足を痺れさせる。
 冷たい毛布に身を包んんだ状態で、遂に命の危険をマユミが感じ始めたとき、何事か考え込んでいた彼はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら言った。

『こうなったらアレしかないんじゃないか?』

 唇を紫色にしたマユミとは対照的に、たっぷりとした脂肪のおかげか彼は大分余裕があるのかその赤ら顔はますます色艶を増していく。
 その様子に言いしれぬ恐怖を感じ、思わずマユミはたじろいだ。

「あ、アレ…?」
「雪山で遭難した男女がするって言う、アレだよ。本ばっかり読んでる本女なら分かるだろ」
「………ま、まさか!」
『なんだよ知ってるならすぐ反応しろよ。よし、そうと決まったら早速』
「ひっ」

 マユミの返答を待ちもせず、言行一致で早速スキーウェアを、その下に着ていた衣服を脱ぎ捨てる。
 醜く弛み、汗疹のようなブツブツが一面に浮かぶシンジ以外の男の裸に、マユミは恐怖に喉をかすれさせて後ずさった。

『なんだよ? この期に及んで』
「嫌です! シンジさん以外の人に触られるなんて、そんなの絶対に…え?」

 マユミとしては当たり前の拒絶を口にしたつもりなのだが、一瞬彼女は言葉を失った。
 その変化は劇的だった。
 血の臭いを嗅いだ鮫のように目の色が変わり、下顎を突き出して顔を歪める。
 マユミの拒絶が信じられなかったのか、それともシンジの名前を聞いたことで沸々と心の奥底で煮えたぎる暗い怒りを掻き立てられたのか。
 答えは分からない。分かる意味も必要も―――ない。

『ぐぅ、くそぉおおおっ! 山岸のくせに!』

 ただ彼女が彼の逆鱗に触れ、言語に絶する災難に襲われることだけが全てだ。

『くそ、くそっ! どいつもこいつも馬鹿にしやがって!
 どいつもこいつもシンジ、シンジ、シンジだ!
 アスカも、レイも、霧島も、あげくに山岸も!
 このぼくをっ! お前みたいに根暗な女、本来なら僕に抱かれることに涙を流して喜ばないといけないんだ!』

 あまりにも身勝手で一方的な言葉に呆気にとられ、いや、その歪んだ本音に抗議しようとしたマユミは反応が遅れた。見た目に反して素早い動きに逃げることもできず、彼女は彼に捕まってしまう。
 マユミの袖を掴んで引き倒し、仰向けに倒れた彼女の腰に馬乗りになると一息にスキーウェアのファスナーを引き下ろす。大きく開けられた胸元の隙間から、文字通りこぼれ落ちるように豊かな双丘がまろび出た。体の線が大胆に分かるセーター越しに、微かにマユミの芳香が立ち上る。

「ひ、やっ、やだっ! や、ちょっと! だ、ダメです!
 離して、やめて下さい! いや、触らないでっ! あっ、ああっ、シンジさん!」

 あまりにも急な展開にようやく思考が追いつき、じたばたと身をよじって暴れるが、彼女に倍する体重にのしかかられては如何ともし難い。
 空しく甲高いマユミの悲鳴が山小屋の中に響き、彼のサディスティックな感性をズキズキと刺激する。鼻息も荒く柔らかい胸元に顔を埋めると、トリュフを探す豚のように匂いを肺一杯に吸い込んだ。


『ふんが、ふがっ、い、いい匂いだぁ』
「そんなこと、言わないで下さい。シンジさぁん!
 助けて、助けて…っ」
『ぶふひひひ、やわらかいぞ…こ、これが女の、へへへ、山岸の胸か』

 そのまま柔らかなマユミの胸を、セーター越しに両手で愛おしむように包み、おっかなびっくりと弾力を楽しむように揉みしだいた。
 その必要以上に優しい愛撫にマユミの顔が恐怖に凍る。
 背筋を走る嫌悪というには強烈すぎる感情に、なにより……セーター越しに撫でられた胸から感じる、ゾクリとした感触のために。

「いやっ! いや――――っ! やめて、やめてぇ―――!」

 マユミの口から甲高い断末魔のような悲鳴が溢れる。
 彼女の決して長くない生涯でも、ここまで必死の叫び声をあげたことは一度もない。あまりに悲痛な叫びが吹雪の轟音を一瞬聾して、僅かに外まで響く。
 それは恋人とあらゆる意味で対極にある男から愛撫されて、一瞬でも快感(?)に似たものを感じてしまったことに対する、自分自身への原始的な恐怖の悲鳴だった。

(ち、違う! そんなことあるはずがないわ!
 こんなことされて、シンジさん以外の人に触られて…!)

 感じるなんて、あるはずがない。あってはならない。

「いや――――っ! 触らないで、気持ち悪いんです!
 お願いだから触らないで下さいっ! どうしてそんなことするんですかっ!」

 マユミの必死の悲鳴に彼は胸の谷間から顔を上げると、露骨に顔を歪めてマユミの整った顔を見下ろした。

「……ひ、ひぃっ」

 マユミの全身が凍り付く。
 口元から粘つく涎が垂れ、彼女の左の頬を汚すが、それでもマユミは指一本動かすこともできなかった。彼の全身から感じる、敵意と振り上げられる右手から目をそらせない。



 パシン!
 バシ、パシッ!

「あうぐっ! いた、いや、やめて!」

 遠慮や手加減などまるで考えない一撃で、眼鏡が吹き飛ぶ寸前になる。かろうじて弦が耳に引っかかった。
 続いて二度、三度と繰り返される殴打にマユミは悲鳴を上げることも出来ず、体を出来る範囲で小さくさせて嵐が通り過ぎることを待つことしかできない。無抵抗になった彼女を、上気した顔で彼は見下ろした。

『さっきからうるさいんだよ。人が優しくしてやるって言ってるのにギャーギャー騒いで…。
 シンジなんかとつき合う程度の女だからだろうけど、下品なんだ。慎みがない、最低なんだな。
 だから僕が教育してやらないと…』

 なんて理不尽なことを言うんだろう。
 そうは思うが、マユミは一言も言い返さない。いや、言い返せない。
 そんなことをすれば、この狂気にとらわれた短気な男は、よりいっそう暴力の度合いを強めるだろう。シンジに対するコンプレックスが奇形じみた大きさに肥大し、わずかでもシンジに関する事柄には狂犬のように噛みつく。
 人付き合いが苦手な彼女でも、そのことは簡単に分かった。

(この人は、狂ってる…。シンジさんへの嫉妬で…。現実と想像の自分と違いに…)

 その立ち枯れた木のようにねじ曲がった精神は、今の極限状態に置かれたことで、完全に暴走してしまった。ほんの僅かなきっかけで、今以上に際限のない暴力を彼女に振るう。それを正当なことと考えながら。
 そして内気で内省的、言葉を返せば乱暴なことが苦手…と言うより嫌悪している彼女は、これから起こることが嫌と言うほど分かってしまった。
 彼女は精神的な苦しみには多少耐えられても、肉体的な苦痛に弱い。
 どんなに抵抗しても、結局は、彼の暴力に屈することになるのだ。
 まだ解決する手段があるかも知れないけれど、屈従することに慣れた彼女の心は、あっさりと抵抗を無駄なものと認識してしまう。手足が勝手に萎えてしまう。
 もう、抵抗することは…できない。

「う、うううっ。あうっ、叩かないで、叩かないで下さい…酷いこと、しないで」

 マユミは疼く頬を冷たい床に押しつけたまま、ひっくひっくとしゃくりあげ、目を逸らして哀れっぽく懇願した。おずおずと外れかけた眼鏡を条件反射で位置を直しただけで、もう先ほどのように暴れたり、悲鳴を上げることはない。
 出来ることは懇願だけだ。
 9割9分無駄と分かっていても、そうするしかない。

 しかし、当然彼の指先は…。

『そうかそうか…そうだよね。やっと聞き分けが良くなったんだね。
 僕の良さが分かってくれたんだ。嬉しいよ』

 遠慮なくマユミの体を撫で回すのだった。

「ひっ………………ひゃうっ。は………はぅ。むー」

 芋虫のような指先が胸を揉み、その双丘の頂を恐ろしいほど優しく撫でさする。指先が頂を通り過ぎるたびに、マユミの口から啜り泣きにも似た泣き声が漏れた。

『え? もしかして感じてるのかい? 気持ち良い?』

 勿論そんなわけない。そんなことあるはずがない。

 勝手な勘違いをしてるんじゃない!

 今すぐ突き倒し、そう罵ってやりたい。
 だが、気弱な彼女は一言も言い返せず、成すがままに彼の指先に翻弄され続けた。

「……………うっ………………く…ぁ……や…だ、さわら……ない、でっ」

 頬を濡らす涙を、でろりとしたナメクジのような舌が舐め取る。マユミの体がビクリと竦むが、彼女の反応はそれだけだった。

『……うわあぁ。美味しい…涙って、美味しいんだな』

 ぴちゃぴちゃくちゃくちゃと下品に舌を鳴らしながら、彼は感慨深げに呟く。
 もう一刻の猶予もない。
 先ほどから、彼の分身は信じられないほどの大きさに膨れ上がり、ズボンの下で窮屈さに悲鳴を上げ続けている。
 早く開放しなくてはいけない。既に先走りの液はパンツをぐっしょりと濡らし、ズボンにまで染み込んでいる。正直言って気持ち悪い。

 地味な雰囲気からは予想もできない豊満な肢体にぐびりと大きく喉を鳴らし、彼はじっくりと震えるマユミの姿を視姦した。
 スキーウェアは無理矢理に脱がされ、後ろに回されたマユミの両手を拘束するように捕らえている。そのためマユミの体は反り返り、ただでさえ豊かな胸元を殊更強調するようにつきだしていた。
 淫靡な視線に敏感に反応し、マユミは途切れ途切れに泣き声をあげる。

「あう…ううっ。こんなの……いや…」
『ま、待ってなよ。すぐ、気持ちよくしてやるから』

 心臓が破裂しそうな興奮に震える指先を酷使し、いそいそとスキー靴を、ズボンを脱がしていく。それがシンジとお揃いになるようにマユミが選んだ者という事実は、彼は知らないし知っても気にもしない。
 ただどこか儚げながらも極上の美女であるマユミの衣服を脱がしていくという事実だけが全てだ。

『く、ぶくく、抵抗しないって事は、僕のことが好きだって解釈で…良いのかな?』

 適当な言葉で自己肯定しているが、実際は自分が暴力でマユミを陵辱しようとしている事実が、また彼の心を揺さぶる。
 自己嫌悪に?
 違う、激しい高ぶりでだ。
 自慰行為などでは決して得られない達成感と征服感に彼は酔った。

『し、シンジには、勿体ない。そうだ、僕のだ。全部、全部』
「……勝手なことを、言わないで下さい」
『黙れ』
「す、すみません。謝りますから、だから、叩かないで…」

 恐怖に凍り付き無抵抗のマユミから服が脱がされる。それはとても残酷で、それでいて美しくもグロテスクな光景だった。
 芸術神に愛されたとしか思えない半裸の美女と、彼女に蛇のように絡みつく醜悪極まるグロテスクな淫鬼。
 彼女の必死の意志に反して、無惨にも衣服は引き剥がされていく。

 木地が伸びるのも構わず乱暴にセーターはまくり上げられ、剥き出しにされた豊かな両胸が、飾りのない地味なブラジャーに包まれたまま寒さに震える。形状記憶合金のワイヤーが入っているブラは、形良いマユミの胸を雪抱く峰のようにそそり立たせていた。

「ああ、こんなことって…」

 そっとブラジャー越しに双丘をなぞる指先を感じマユミはすすり泣いた。

『し、ししし、下も脱がないと』
「やっ! そこは!」

 いやらしく尻や太股をなで回され、最後の抵抗とばかりにマユミはじたばたと藻掻く。だが、ほんの数センチ刻みで尻を振るくらいしかできず、ズボンは片足だけを引き抜かれ、白い足は無理矢理大きく開かされる。
 ひんやりとした空気とじっとりした男の呼気に、マユミの体が一瞬すくんだ。
 涙の浮かんだ瞳は潤み、鼻孔から笛のような恐怖の息が漏れる。そしてじっとりとした汗で半裸の体は濡れそぼっていた。

「あ、ああ…いやぁ……。恥ずかしい、恥ずかしすぎます…。見ないで、見ないで下さい」
『…………これが、これが女の子の』

 ブラと同じく地味なショーツの上から、彼は穴が空きそうなほど僅かな盛り上がりを見つめる。気のせいか、雪明かりしかないにも関わらず密やかな割れ目までも見えるような気がした。
 今までは某相田から法外な値段で買った(合成)写真でしか知らなかった。
 しかし、今ほんの目鼻の数センチ先に、その現実は存在する。

『へ、へへ。ヒクヒク動いてるぞ…』

 健康的で血色の良いと言えば聞こえが良いが、実際は些か余分な栄養が行き届きすぎ、輪郭が真円に近くなった頬をゆるませながら、彼…碇シンイチ(仮名)は言った。血走った目は瞬きする間も惜しんで見開かれ、鼻先は食いつかんばかりに股間に押しつけられていた。

「や、やだっ…。そんな風に、息を、ああ…」

 いやいやと首を振ってマユミは悶える。
 薄いクロッチ越しに、控えめな割れ目にそって唇が進む。その上のごくごく控えめな膨らみが鼻先でつつかれる。それは子供の小指の先ほどの大きさしかないが、明らかに固く屹立していた。

(これがクリトリスか…)

 実物を知らないが妙に豊富な性知識が彼の脳裏で雷光のようにスパークする。
 女性の最も感じる箇所。そこが固くなっている…。具体的にどれくらい大きくなるかはまるで知らない。指くらいと言う話もあれば、ほんの小さな小豆くらいと言う話もある。個人差というものに彼が思い至るかどうかは知らないが、それでも彼にはわかったことがあった。

 マユミが感じ始めている?
 もう止まれない。
 止まれるはずがない。

『う、うぶ、れろ、くちゅ、ぶちゅ』

「いっ、やぁぁ――――! そんな音を立てて、やめて、乱暴しないでっ!
 許し…ゆるしてくださいっ」

 M字型に開かれた股からゆっくりと言葉に出来ない感覚が全身に染み渡っていく。切なげに眉を八の字に歪め、マユミはおぞましさに身をすくめた。

「うぁ、あっ、はっ、はぁ、はぁ、はぁ、くぅっ」

 たとえ嫌悪が強くても、こうまで執拗に念入りに愛撫されては、僅かずつながらも官能の澱みが芯に溜まっていく。腹部の奥、まるで子宮に火でもつけられたようにじんわりとした熱が広がり始めていた。
 大きく見開いた目から次々と銀の滴がこぼれ落ちる。

「い…や。あううう、うううっ、うぁっ!」

 口から溢れるねっとりとした唾液はぐちょぐちょに下着を湿らせ、その下の股間の膨らみから密やかな割れ目、そして上品に生えそろった陰りが浮き上がっていった。

「うん、ううんっ!」

 すらりと伸びた太股からつま先まで、遠慮なく芋虫のような指先が這い進む。
 シンジはこんな気が狂いそうになる淫らな触り方は決してしなかった。常にマユミのことを思いやり、本当に優しく全身全霊で愛してくれた。
 しかし、これは一方的だ。

「やめて……。ああ、やめて、お願いします。こんなの、耐えられない!」

 濡れて伸ばされたショーツは、無体な酷使に引きちぎられた。
 唾液とそれ以外の秘密の蜜で塗れ光る茂みと、それに縁取られる秘裂がヒクヒクと誘うように震えた。
 白く静脈が透けて見えるような肌に羞恥から血の気が浮かび上がる。
 そして…。






 控えめな吐息が漏れる。

「あ、あふぁ……は、くしゅん!」

 剥き出しになった素肌を鳥肌たせ、寒さに震えるマユミ。
 当然ながらマユミは生理的反応、つまりはくしゃみを漏らした。本音を言えば寒さと嫌悪のあまりそれどころではなかったのだけれど。
 可愛らしいマユミのくしゃみに、彼は涎でべとべとになった顔を上げると、にやにやとイヤらしい笑みを浮かべた。

『ん、ああごめんごめん。お互いに暖めあわなきゃいけないのに、裸のままほっといてしまったよ。でも、それもこれもみんな君が悪いんだ。
 だって、こんなスケベな汁を溢れさせるんだから』
「違う…そんなことない…」
『嘘つきだね君は』
「違う、違います」

 ぶるぶると震えるマユミの上に覆い被さり、気味が悪いほど優しく抱え上げる。

「や、やだ!」

 マユミの泣き声が一際甲高くなる。
 無理もないだろう。
 シンジにもまだされたことのない、背中と膝裏に両手を差し入れて抱え上げられる…通称『お姫様だっこ』で抱え上げられたのだから。

(酷い、酷い、酷いよ…。こんなの、酷すぎる…)

 一部のキリスト教圏の国では、新婚の夫婦が初めて家にはいるとき、夫が妻を今マユミがされているように抱きかかえて家に入るというのがあるが…。
 古風で、妙な知識を持つマユミはそれに憧れていた。

(いつかシンジさんと結婚したとき、そうして貰おうと思っていたのに…)

 そのささやかで可愛らしい夢はあっけなく崩れ去った。
 そして改めて涙を溢れさせる直前、マユミの体は床上に転がされた。

「きゃうん!」

 そこには、かび臭くて冷たいながらも幾重にも毛布が敷かれて、ちょっとした布団のようになっていた。じっとりと肌に吸い付くような冷たさと、きめの荒いチクチクした毛布と広がった自身の髪の感触にマユミは身を竦ませる。

「やだ、やだ、いやです、いや…っ」

 涙に濡れた目で見上げる陵辱者の目は、不気味な光を浮かべていた。
 そして先走りで黄ばんだブリーフを引き裂かんばかりに屹立する男根。
 マユミは陵辱の瞬間がもうすぐだと悟った。

『毛布の上で愛し合えば寒くないよ』
「いやぁぁぁぁ、やめていやぁぁ…。こんなの、絶対にいやぁ…」
『我が儘言わない。あんまり我が儘言うと、外に放り出しちゃうよ』
「その方がマシです! こんな屈辱、いっそ殺して下さいッ!」

 寒さでくじけそうな意志を奮い立たせ、マユミはそう言いきった。暴力や乱暴な怒鳴り声は恐ろしいけど、それでもこのまま犯されるよりは何倍もマシだ。
 それは土壇場になって取り戻せたマユミの精一杯の勇気。

 しかし…。

『……………なんだと?』

 全ては

『そんなに僕が嫌なのか! じゃあ殺してやる! 犯して犯して犯しまくって、絶対にイかせてやる!
 死ぬ死ぬって叫ばしてやるっ!』

 遅きに失していた―――。







「あ、あーっ!」

 強引にブラジャーがむしり取られ、こぼれ出る放漫な胸がぶるぶると震える。
 すくい上げるように手を添えると、ぐにぐにと餅でもこねるように彼は乱暴に愛撫した。乳房の重みを確かめるような執拗な愛撫。

「はぁっ…」

 乱暴ではあるが予想外に優しい愛撫にとまどいながらも、そのもどかしさに思わずマユミは甘い声を漏らした。
 乳房全体の大きさに反比例して小さな乳首を人差し指の先でとらえ、ころころと弄びながら乳肉を揺らしていく。

(ん、感じてる…うそ、そんな)

 いじられ、だんだんと勃ち始める乳首を信じられないものでも見るように見つめ、マユミはこれからどうなるか暗い思いに駆られた。現実を拒絶するようにマユミは堅く瞼を閉じた。
 そのままマユミは艶めかしく額にしわを寄せて耐えるが、ほどなく乳首は痛いほどに勃ってしまった。じんじんと痺れ、まるで待ち望むように男の舌の温もりに震える。
 舌が涎を控えめな乳輪にすりつけ、乳首を転がしながら甘い味を堪能していく。

「くっ、はぁ……」

 緩く開いた口元から唾液と、隠しようのない喘ぎが漏れた。
 組み敷かれた全身から官能の脂汗を流れる。

「い……や、ぁ…。ど、どうし…て」

 既にマユミは声を殺すこともできなくなっていた。押さえようと、耐えようとしても体の奥からビクビクと全身を痺れさせる電流のような刺激がわき上がる。それは乳首を甘がみされたり、緊張で固くなった体を指先がなぞるたびに強くなっていく。

「ああ、あああっ。あぁっ、んぐっ」
『ふぶっ、ん…むちゅ、ちゅぐちゅぐ』

 ちゅくちゅくと水音が響く。
 首と背骨がそわそわと仰け反らせ、頭頂部を毛布にこすりつけるようにしてマユミはあえいだ。快感は鉄槌のように打ち込まれていく。もう、どうにもこらえきれない。毛布の下でそわそわと動くマユミの爪先、形良く爪を切られた指先が何かにすがるように僅かに開き、折り曲げられた。
 足指だけでなく、体の下で毛布をつかみしめる両手の指、堅く閉じられた瞼がひくひくと震えた。

(まずい、だめ…そん、なっ、ああっ)

 シンジに抱かれているとき、始終感じた感覚。シンジの腕に抱かれているときは、これは喜びの感覚だった。全てを委ねられる甘美な一時。
 だが、今のこれは、同じであっても、いや同じだからこそマユミの心と体を責めさいなんだ。
 一度意識してしまうと、どうしてもシンジのそれと比べてしまう自分に嘆いた。

「いや、いやよ、いやっ。違う、違うわっ! 全然違うっ!
 感じてなんか…はっ!?」
『…………へぇ』

 明らかに官能で身をくねらせるマユミを組み伏せたまま、彼は愛撫の手を止めた。
 口とは裏腹に、彼のつたない愛撫で彼女が感じているのは明白だ。

(もう、今すぐにでも挿れたかったけれど)

 意地悪く彼はニキビ面を歪めた。
 こうなればまず、徹底的に彼女の心を折ってやろう。無惨に、冷酷に。

『……ちゅぶ』
「ひぃ、やぁぁぁ…」

 再びピンク色に光る乳首を口に含むと、ゆっくり…ゆっくり動かし始める。前後左右に、上下に、円を描くように、かき回すように。

「そんな、そんないやらしく…。あ、あはぁぁ」

 頬がついに赤く染まり、苦痛に耐えるように食いしばっていた口からは、虚しく喘ぎ声があふれる。

「違う、違う、違います、感じ、んああっ、感じてなんて、あ、あああぁぁぁ」

 乳房を揉みしだく指先がくにくにと動き、痛いほどにきつく屹立した乳首を軽くかみつく。マユミの腰が跳ね上がり、一瞬、甘いミルクの味を感じたように彼は思った。

「う、あっ。……ぐっ、くぅ…………っ!
 うっ、ううっ、むぅ……んん」

 ビクンビクンと大きくマユミの体は震え、押し殺した悲痛な声が小屋の壁に反射する。そして数秒間の痙攣の後、ぐったりとマユミの体から力が抜けた。
 大きく肩を上下させながら、マユミは息を乱して喘いだ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……あああっ、ひどい…。こんなの、酷すぎます…」
『そうかなぁ。喜んでたように思ったけど』
「そんなこと、ない…。ああ、お願い、髪を、いじらないで」

 気味が悪いほど優しく髪の毛を指で梳りながら、その豊かで艶やかな黒髪を楽しんだ。なにより、髪をさわられることでヒクヒクと痙攣したように震えるマユミの反応を楽しんだ。

「やだっ、いや…触らないで、触らないで…。お願い、許して…。何でもしますから、でも、それだけは!」

 腕は拘束され、体は押さえつけられている。唯一自由になる頭を振り、弱々しくマユミは拒絶した。
 だが彼はそわそわと、ことさらゆっくりなぶるように腕をおろしていく。
 押さえつけられ、強引に開かれた下半身の中心へと。


「ひっ!」
『お、おおっ? なんだ、これ。おい、これなんだよ』
「…あ、ああ。違います、汗です、何かの間違いです」

 鼻先に突き出された男の指先から逃れるように、マユミは顔を背けた。
 その指先は、汗ではない液体で塗れ光っていた。とぷとぷと泉が湧き立つように溢れる甘い蜜。

「あうっ、ううっ。酷い、酷いわ…。こんなの」

 そこはマユミの意志に反してぐっしょりと湿っていた。
 直前の彼の舌による愛撫で溢れた涎の所為だけではない。
 まごうことない彼女自身から分泌された愛液で濡れた淫裂はひくひくと、鋳型を求めるように蠢いていた。

『…いま、すぐに』

 ぐびりと唾を飲み込むと、恐る恐る赤黒い亀頭を淫裂に押し当てる。
 絶頂の余韻でハァハァと荒い息を漏らしていたマユミの体がビクリと硬直し、次いでブルブルと小刻みに震え始めた。

「ああぁぁぁ、いらない、欲しくない。いやよ、いやぁ」

 マユミの哀願を彼はどう捉えているのだろう?
 明らかに拒絶である。だが、彼は都合良くそれを懇願と受け取った。
 門の鍵穴が鍵を求めた懇願であると。

 腰がずり上がり、僅かに亀頭の先が淫裂を押し開ける。
 たちまち赤黒い肉棒は淫らに塗れ光る。

「いや、いやです…助けて、シンジ……さん」

 骨まで凍り付きそうな寒さにも関わらず、じっとりと浮かんだ汗で切りそろえられた前髪が額に張り付く。ずれた眼鏡と乱れた髪を直してやりながら、彼はニヤニヤと最低最悪の笑みを浮かべた。
 マユミにはっきりと自分の顔を見せるためだ。
 マユミの嫌がる顔を見ていると、もっともっともっともっといじめてやりたくなる。
 自分を拒絶させてやりたくなる。
 そして抗わせたあげく、受け入れさせてやる。

 泣き叫ぶ顔が見たい!
 シンジの名前を叫ぶマユミを犯してやりたい! その名前が自分のものに変わるのを聞きたい!
 自分からおねだりするくらい、あるいは妊娠するまで射精してやりたい!



 敢えて唇を奪わず、顎の艶黒子にキスし、首筋に唾液の痕を伸ばしながら彼は腰をより一層押しつけた。

「――――――――――――――――っっっ!!!」

 マユミの背骨が折れそうなほどに仰け反る。
 もしその場に人がいたとしたら…。
 今正にマユミの秘所に、愚劣な男根が挿入されたことが分かっただろう。
 もし最初から今までずっと見ていたのが女性だったとしたら、マユミが犯された瞬間、自分も犯されたように重苦しい感触を下腹部に感じたことだろう。

 マユミの声にならない悲鳴と眼鏡の下で見開かれた目が、無惨な現実を如実に示していた。

『ぶ、ぶひぃぃぃ! なんて、なんて気持ち良いんだ!
 締め付けて、熱くて!
 うあああ、ダメだよ、出る出るぅ!』

「いや、いや、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 きゃぁぁぁぁ────!!」

 マユミの悲鳴に合わせて、キュ、キュッと音さえしそうな勢いで締め付けてくる。子宮の奥に突き当たるまで挿入された肉棒はそのままじっと動かない。いや、動きたくても動けない。
 膣壁全体がまるで得体の知れない生き物が噛みつき、逃がそうとしないでいる。ある時はきつく、またあるときは優しくそれでいて一部の隙もなくぴったりと。
 その見た目によらない熱さと狭さ、それでいて優しい締め付けに彼はもう昇天寸前だった。

(これがセックス! 凄すぎるっ)

 まだ出したくない。
 それが偽らざる彼の正直な気持ちだ。だが、初めてのセックスに彼の限界はあっさりと突破された。
 まるで腰から全身が溶けていく…。

『ううっ』
「……ひぅぅっ!?」

 ガクガクとおできの浮いた腰と剛毛の生えた足が震え、魂が抜けていくような情けなくも長い息を漏らして彼は脱力した。桃色に染まったマユミの太股を抱えていた手からも力が抜けていき、ぐったりと毛布の上に座り込む。
 同時にマユミもぐったりと脱力し、魂が抜けていくように長く荒い息を吐く。
 じわじわと膣内に広がる熱…。それもねっとりと粘つき大量の…。

(だ、出されちゃった…中で、中で……。シンジさん以外の、人の…)

 結合部から生ぬるい粘液が溢れるのを感じる。絶望でマユミは目の前が真っ暗になった。その闇は深く、彼女自身の髪に負けないほど黒い。
 止めどなく涙が溢れ、固く閉じられた瞼からポロリポロリと次々にこぼれ落ちていく。

(シンジさん、シンジさん…わたし、わたし…)

 抵抗する気力も何もなくなったのか、ぐったりと脱力したままひくりひくりとしゃくりあげるマユミ。

『うおおぉ、うおおぁ。す、凄い…吸い付いてくる……』

 マユミに負けず劣らずにぐったりとした彼は、うわごとのようにつぶやいた。柔らかなマユミの体をきつく抱きしめ、双乳に頭を預けてとても幸せそうだ。なんどもなんども白い乳房に口づけし、醜いキスマークをいくつもいくつもつけていく。

「う、うあ、もうやめてぇ…。きついの…。く、苦しいんです」

 今も挿入されたまま、吐きそうに青い顔をしてマユミは哀願した。
 嫌悪と、先程と比べものにならない快感にろくに息をすることもできないでいるのだろう。

 だが彼は執拗だった。

 これで終わるわけがないだろう。そう言わんばかりに、マユミの中で肉棒はむくむくと大きさと固さを増していく。いや、一度射精したことで鍛えられでもしたかのように、その大きさと固さは先ほどよりも一割り増しになっていた。

「ま、またっ! ああ、いやよ、ああっ!」

 蜜肉を再び押し開く、肉棒の堅さと太さ、そして熱を感じ再びマユミは息をのんだ。M字型に開かれた足が指先まで正座したときのように痺れる。

「ひぁ…きゃぁぁぁぁっ!」

 ぞわりと動いた肉棒を膣は反射的に強烈に締め付け、マユミは悲鳴を上げた。心とは裏腹に、体は喜びに打ち震えているのが辛かった。まるで子種を授かるためにさらなる射精を促すように膣と子宮はヒクヒクと蠢き、締め付ける。

『ああ、おお、拷問だ…これ、やめられない…ああ、拷問だ』

 根本まで打ち込んだ肉棒をゆっくりと引き抜いていきながら、彼は恍惚とした表情を浮かべた。

「やめて、やめて、あっ…ああっ。シンジさん、シンジさん」

 そして醜く広がったカリが特徴的な亀頭部分を残し、全てが引き抜かれる。じっと見下ろすと、内側から押し広げられた淫裂はまるで別の生物のようにきつく亀頭を包み込んでいた。

『……ふんむ』

 ぐちゅる

「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!!」

 僅かに腰を押し出すと、マユミの愛液と彼の精液がぐちゃぐちゃに混じり合った薄い白濁した液がこぼれ落ちた。ビクン、とマユミの体が痙攣し、押しつけるように腰が跳ね上がる。図らずもより深く結合するように腰が跳ね上がり、そのためまたマユミは甲高い悲鳴を上げて体を震わせた。

「くぅ…んんっ……あっ!
 シンジ、さ…んっ」

(抜いて…抜いてぇ…こんな酷いこと、早く終わりにして…)

 先程から絶頂を迎えては軽く意識を失い、また絶頂で意識を取り戻す。文字通り、息も絶え絶え野様相でマユミはただ愛しい男の名前をつぶやくことしかできなかった。
 それが限界を迎えた男に、憎悪という新たな活力を蘇らせているとも知らずに…。
 いつしか吹雪はやみ、月が高く昇る。だが陵辱は続く。


「うあ、や、やあ、ああ、ああ、ああ、ああーっ」

 正常位で犯される。浅く早く何度も何度も突き入れられ、二人の汗が毛布をぐっしょりと湿らせていく。

「はぁ、はっ……はぅ。ん……くぁっ」

 あぐらをかいた上にマユミを座らせ、自らに抱きつかせながら激しく彼女の体を上下させる。

「あう、あう、ああうっ。だめ、んむ、んっ、むぅ〜〜」

 再び正常位でマユミを毛布に押しつけ、申し訳なさそうに包皮から顔を出したクリトリスをつまみ、リズミカルに腰を動かしながら、淫らに動く舌がマユミの唇を汚す。

「ひゃぅっ!! やっ、中で……そんな、そんな…中で大きく!」

 騎乗位でむせび泣くマユミの中に再び粘つく毒液をたっぷりと吐き出したにもかかわらず、その硬度と太さを維持する肉棒。マユミは悲痛な悲鳴を上げた。

「ふぅん……ん……あふぅ……んちゅ、くちゅ」

 虚ろな目をしながら、マユミはどろどろに汚れた肉棒をペロペロと舐め回していた。もはや正気が失われたのか、突き出された肉棒の根本に手を添え、涎の筋をつけながら丁寧に丁寧になめとっていく。




 そして空も白みかけた頃。

「ああ、し…死ぬ。死んじゃう、しんじゃいます。ああん、はぁ、く、ううっ!」

 犬のように四つん這いにさせられた上で背後から深々と肉棒を挿入される。そのまま重く揺れる乳房を背後から荒々しく揉まれ、羞恥と快感で乱らに燃えた。うつむき、前髪で隠れた顔はどんな表情を浮かべているのだろう。

『そら、そらそら! いいだろ、どうだ!? どうだー!?』
「ああ、ああはぁ、い、良いです。凄く、ああ…気持ちいいです」

 もう何度絶頂を迎えたのかマユミはわからない。
 5回から先、数えることもできなかった。ただ全身という全身を犯されたことだけは覚えている。
 膣、肛門、口、髪、手、胸、尻、腹、太股…。
 体中に男の精液を浴び、骨がバラバラになりそうな疲労と快感に支配されていた。もはや脳裏にシンジの優しい顔を浮かぶことはなく、憎悪とも恐怖ともつかぬ男への感情だけが彼女の全てを占めていた。

『ああ、ああ、もうさすがに限界だ。出す、出すぞ!』

 無限とも思えた男の精力にもついに終わりの時が来たようだ。呪わしくも心待ちにしていた瞬間を告げられ、マユミの体が歓喜に震えた。
 痛々しく晴れ上がり、最初の慎ましさが失せた淫裂からは大げさなほど淫らな水音が響く。

 じゅぷじゅぷ

「はうっ! あ! んんああぁぁ! 私、私…っ!」

 激しい動きにマユミの華奢な体は跳ね上がる。彼の腰が機械仕掛けの人形のように激しく動き始めた。

『い、いくのか? いっちゃうのか? いけ、いけっ!』

「はぁ、んあっ! わたし、ああ、くあっ!
 シンジさん、わたし、わたし…ああ、こんなの、いやなのに、なんで、どうしてっ!」

『ああ、イくっ!』

 男の顔がくしゃくしゃに泣いてるように歪み、一部の隙もないほどその腰がマユミの尻に押しつけられた。同時に何度も出したにもかかわらずまだ大量の精液がマユミの体内にほとばしる。

「はぁぁぁっ! イくぅ!
 あぁぁぁぁぁぁ―――っ!!!」

 身体に染み渡る熱い迸り。それを感じ時、マユミは断末魔のような悲鳴を上げた。
 自分が自分でいられなくなった瞬間。
 甘美な快感に包まれながら、自分がもう昨日までの自分のままではいられなくなったことを、マユミははっきりと悟っていた。

(ああ、シンジさん。卒業したら、結婚しようねって、約束してたのに…。
 ごめんなさい。ごめんなさい)

 シンジのイトコの手にしっかりと抱きしめられたまま、マユミは安寧に満ちた闇の中に落ちていった。









 数時間後。捜索隊が身支度を整えた二人を見つけ、表面上、無事に下山することができた。
 友達、もちろんシンジは心から彼女の無事を喜んでくれた。
 そのまま、何事もなく日々はすぎていく。

 表面的には。






 そして。




 男の手の中でマユミは快感に身を震わせる。
 避妊してるからと言っても、なんの遠慮もなく射精する男への憎悪が胸を焼くが、それが表面化することはない。

「お願い、欲しいの…!
 もっと、もっと気持ち良くしてくださいっ!
 私をめちゃくちゃにしてぇっ…!!」

 そう、なにも考えていられないほどめちゃめちゃにして欲しい。
 あの日以来、なにもかも上手くいかなくなった。特に脅されたり、呼び出されたりしたわけではない。何もなかった。
 だがマユミはもうそのままではいられなかった。罪の意識にさいなまれ、シンジとは疎遠になり、いつしか恋人としての関係は終わりを告げた。
 厳しい顔をしたシンジから別れを告げられた日、彼女はたぐり寄せられるように、シンジのイトコの住むアパートに足を運び、そして彼に抱かれた。

「あっ、あっ、あっ、いいっ! いいの、たまらないの! もっともっとついてっ!」

 心の底から憎み、呪う相手に抱かれないと快感を感じられなった彼女と、そして、主導権を握ってるようでいてその実、彼女の身体に溺れて命をすり減らしても陵辱をやめることができない男。
 恐らく、後数日で彼の酷使された心臓は張り裂けるだろう。


 復讐が成就したとき、彼女はいったいどうなるのか。

 それはだれにもわからない。


The End ?




後書き

 あれ?(;゚∀゚)

 なんでこうなるかな私。
 結局これか私。普通にシンジ×マユミでラブラブ和姦な話のはずではなかったのか?
 なぜか(たぶん)シンジのイトコ君初主演の陵辱劇かよ。ゴクリゴクリ。駄目だよ旦那。これじゃ駄目だよ。しーしーごくりごくり。
 じつは、ラストでマユミがニヤリと笑いながら『お腹の子の栄養』とか言って、これまたなぜか突然現れたシンジと一緒にイトコ君を食べちゃうグロテスクな展開を考えていましたが、予想以上に気持ち悪くなったんであえなくそれは没になったりしました。。
 てか、わざわざ書きかけの話なのにグロテスクだけは勘弁して、とメールを貰ったってのも理由の一つだったりしますが。

 ('A`)そんなに嫌かな、グロ。

 いやまあ、書いてて楽しくなかったから渡りに船だったけど。グロは難しいナリ。
 ともあれこんな話最後まで読んでくれて、あなたもかなり(検閲削除)ですね!


2004/03/20 Vol1.00