Requiem fur Schicksalskinder

第4話



著者.しあえが











「……号機、起動しました。シンクロ率62%、ハーモニクスも2で安定しています」
「一安心ね」

 マヤの報告を聞きながら、リツコはコーヒーの最後の一口を飲み干した。肩越しにミサトに振り返ると、大学時代からの腐れ縁の親友が大きく肩で頷き返した。やたら自信満々な表情を浮かべたミサトに、ちょっと思うことがないではないがまあ、無事に済んだのだから良しとしておこう。ミサトとは対照的に肩をすくめると、リツコはモニターに映るアスカの顔を見つめた。

「さすがはアスカ……という所かしら」

 強化テクタイトの風防の向こうでは、起動した初号機が眼を爛々と輝かせ、蒸気のように鬼気を立ち昇らせているのが確認できる。今すぐにでも使徒と一戦を交えることもできそうな整い方だ。
 マヤの後ろからモニターをのぞき込み、各種数値を確認して満足げに頷く。

「これなら問題ないわね。メインパイロットの交換、いけるわ」

 最初は起動するまでに少し時間がかかり、やはりダメかと諦めかけたが、蓋を開けてみればシンジに匹敵するシンクロ率で起動している。ユーロエースの肩書は伊達じゃない、という事だろう。なにより、先にアスカに予備パイロットがいるみたいな事を言ってはいたが、機体とパイロットの交換しての起動テストをちゃんとして、満足いく結果になったのは初めてだ。そういう意味でも、非常に意義のあるテストとパイロット交換だったと思う。
 ……素直に機体を凍結されたアスカを3号機のパイロットにして、シンジを初号機パイロットのままにした方が余計なテストがなかった分、手間はかからなかったが。まあ、それについてはミサトに貸し1ということにしようとリツコは誓った。

(それにしても……)

 まだまだそんな年のつもりはないし、未婚で出産経験のないリツコではあったけれど、モニターに映るアスカのうっとりと満たされたような表情を見てると、胸の奥が温かくなるのを感じる。

「母さんもこんなこと思ったりしたのかしらね。アスカの顔、恋する乙女ってところかしら」
「え、リツコ、何か言った?」

 肩をすくめて視線を再度モニターに向けると、追ってミサトもモニターを見つめ「なるほど」といわんばかりに頷いた。マヤが頬をほのかに紅潮させてクスッと笑う。

「アスカ、もう良いわよ。上がって頂戴。今日はこのまま帰ってもいいから、体を冷やさないようにしてね。
 じゃあ、ミサト。私は松代に向かうわ。あなたも明日の3号機の起動試験に遅れないようにちゃんと来てね」


 ―――1時間後。
 もう周囲は暗くなり、月が天に昇っているような時間……。空を見上げると藍色の空にまばらに星が瞬き、薄い雲が漂っているのが見える。人気の少ない町中をヘッドライトの光輝が走る。エンジンモーターがかすかな唸り、タイヤを軽快に回転させる振動をミサトは心地よい一体感と共に感じていた。
 遅い夕食をネルフ施設外のレストランで済ませたミサトとアスカが帰宅しているところだった。ミサトの運転するアルビーヌ・ルノーの助手席に座ったアスカは、夜景を見るでもなく手元の携帯ゲームをしており、意味ありげに横目で自分を見るミサトを無視し続けている。時折、ドリフトしながらカーブを曲がったときは不機嫌そうに眼を上げるが終始無言のままだった。
 しかし、ミサトが今日の起動試験を話題に口を開いたとき、その沈黙は破られる。





「よく初号機を動かせたわね」
「まあね。バカシンジに動かせて、私にできないなんてそんなことある訳ないわけないじゃない」
「うん、まあそうかもしれないんだけどさ。リツコの話だと、初号機ってかなり特殊な機体で、そもそもなんで動いてるのかわかんないところもあんのよ。それでまあ、ほぼほぼシンジ君の専用機みたいなものだったし。でも特定個人にしか動かせない兵器なんて、兵器としては失敗作もいいところでしょ。ちょっち良い機会だから、松代のテスト前にアスカにやってもらった訳だけど……実は動かなくても仕方ないと思ってたのよ。……杞憂だったわね」
「うん、ミサトの言いたいこともちょっとわかるわ。初号機って2号機と違う感じがしたの。なんか、乗った時に最初ザラリと舐めるように見られたみたいな感じがして、ちょっと……ね」

 アスカの例えにミサトはちょっと眉を顰める。リツコが初号機に関して何か秘密にしていることがあるのは知っているし、できれば知りたいと思っている。アスカとの会話から何かわからないかと期待しているところはあるが……。

(これじゃあ、何もわからないわね)

「違和感はすぐ消えて、代わりにフワっと抱きしめられたみたいな感じがして、LCLじゃなくて草刈りした後の土の匂いみたいな、台所の洗剤みたいな感じの匂いがしたような気がして。それから急に普通にシンクロできたわ」
「土の臭いに台所ねぇ。シンジ君みたいな感じ?」

 悪いなぁ、と思いつつ台所仕事をほぼほぼ押し付けているシンジがそんな感じがしたな、とミサトは思う。最近は加持と一緒に土いじり迄するようになって、シンジからは土の臭いと洗剤の臭いが混じったような感じがふっとするのだ。

(あらあら、と言うことは? シンジ君の匂いがするって言いたいのかしら? えーだとするとアスカってば、ますますシンジ君にラブってるじゃない)

「あ〜そうそう。シンジに抱きしめられてるみたいな感じが、し……て……」

 言いながら自分が何を口走ったのか気づき、口をパクパクさせ、瞬間湯沸かし給湯器のように発熱して湯気を出すアスカ。
 にま〜っとアスカに見えないように笑みを浮かべると、ミサトは下手な煽りをかけてきた青二才の運転するスポーツカーをぶち抜きながら言葉を続ける。

「まあ、仲悪くて喧嘩してるよりはいいか。
 ……本当はね、あなたとシンジ君が関係を持ったって知ったとき、無理やりにでも引き離そうと思ってたのよ」
「ミサト……」

 真面目な事を言おうとしている事を悟り、瞬時にアスカの顔色、脈拍が正常に戻る。わずかに流れた冷や汗をのぞき、直前までリンゴのように真っ赤になっていたなんて、信じられないような変わりようだった。

「実際、アスカそうされても仕方ないような事してたでしょ。シンジ君とそのまま付き合う訳じゃなく、夜の盛り場うろついてさ。加持みたいな奴にまでお誘い掛けたって話だしね」
「……だって、不安だったんだもん。シンジ、私に好きって言ってくれない。自分からキスも、抱きしめてもくれない。誰でも良かったんじゃないかって、だから……だから……」
「まあ、済んだことだけど、ちょっと大変だったんだから。どこから聞きつけたのか、ユーロの連中が横やり入れてきそうになったし」
「そうなの?」

 初めて聞く情報に、不安で青い瞳が陰る。

「2号機と一緒にアスカをユーロに戻せ、とかね。向こうの支部司令が結構、強硬に主張してきてたのよ。仮設5号機がなくなったからってのもあるとは思うけど……」
「そう……。あの人達、そんなこと言ってたんだ」

 あからさまに落ち込む……どころか怯えた姿を見せるアスカに、ミサトも目を丸くする。

(無理もないわね)

 断片的にアスカが向こうでどういう教育を受けて育てられてきたかは聞いてはいる。パイロット候補たちの凄惨な競い合い……いや、殺し合い。脱落した敗者がどうなったのか、すべて把握はできていない。養子になった者、施設に預けられた者はまだいい。消息が追跡不能の者がいる。決して表ざたにできない深い闇がそこにはあった。

(マルドゥック計画……。余裕があったら加持君が調べそうな胡散臭い話よね)

 あるいは不用意なネズミをおびき出す罠だろうか。

「あー、その、アスカ。このまま、家に帰る?」
「当たり前じゃない? 何言ってるのよミサト」
「……ちょっと回り道になるけど、シンジ君のマンションの送ってあげようか? (家主の)シンジ君はいないけど、あそこはがあなたの居場所でしょ」

 それはそれで寂しいけどね。とミサトは言いながら項垂れる。あの時はそうするしかないと思って、シンジとの同居を解消したけど。でも、あのゴミだらけで隙間がなかった家に、シンジとアスカが飛び込んできて強引に場所を作り、そして二人がいなくなった今はぽっかりと隙間が空いている。

「……良いの?」
「どうせ鍵番号知ってるんでしょ」

 ミサトの言葉にアスカは答えなかったが、頬を染めて、もじもじとするアスカの姿にミサトは再び百万の頷き以上の答えを得ていた。



 アスカをシンジのマンション前に降ろすと、タイヤがアスファルトを切る音もけたたましく猛ダッシュ&ターンするアルビーヌ・ルノー。それを見送ると、ゆっくりとアスカはマンションに入って行く。慣れた動きと歩みでエレベーターに乗り込み、目的の階数を押して、階数表示が変わるのをゆっくりと見つめている。
 エレベーターから降りると、左右どちらが通路側だったか惑うことなく正しい方向に向き直り、これまた軽やかに足を進める。

(シンジ……)

 ミサトの言うとおりシンジはいないが、初号機にシンクロしたことで軽い高揚を得ているアスカは、シンジの匂いに包まれて眠りたいと思っていた。具体的には、何度も彼と肌身を合わせたベッドで眠りたい。
 その時を思うだけで全身が熱くなるのを感じる。顔を上気させながら、目をつぶっていてもわかる距離を駆け抜け、目的の部屋にたどり着くと、これまた目視もせずにキータッチをしてカギを開ける。

「ただいま!」

 シンジはいないけど、数日前から住み着いた迷い猫がいる筈だから「挨拶」することには意味がある……はずだった。

「あれ?」

 部屋の中はシンとしていた。明かりも点いてなく、人気のない雰囲気がいかにも肌寒い。念のため、慌てて各部屋の明かりをつけ、見て回ったが、シンジの部屋は勿論、開いていた部屋にもどこにも誰もいなかった。

「え、あれ? コネメガネ……いないのかしら?」

 出かけているのか……と最初は思ったが、それにしてはあまりに生活臭がなさすぎる。

『じゃあね姫』

 唯一、ダイニングの机の上に書置きがあるのを見つけられた。それだけが真希波・マリ・イラストリアスという謎めいた美少女が存在していた証。だが、素っ気ないたった一言だけが書かれたそれは、否応もなくアスカに不安を感じさせる。いればいたで、全裸にメガネという煽情的を通り越して痴女な姿でシンジにしなだれかかり、始終モーションをかけてシンジの困り顔をみてケラケラ笑うような……ハッキリ言えばお邪魔虫の泥棒猫だったけれど。

「コネメガネ……シンジ……」

 会えるよね。いなくならないよね。
 嫌いなはずなのに、無性に寂しくて怖い。もう会えないなんてことになったら、どれだけ悲しくて辛い事になるんだろう。こんな風に私を変えてしまったのはシンジ。そして、馴れ馴れしく接近してくるマリ。
 人肌の心地よさと充足感を知ってしまった今、逆にそれが感じられないのはとても寂しいことだ。

「シンジぃ。早く、帰ってきてよ。帰ってきて、抱きしめてよ。好きって言って、キスしてよぉ……」

 奇妙な違和感が膨れ上がる。家主のシンジに対する別れではなく、自分だけに対する別れの言葉。
 書置きを握りしめながら、アスカは崩れるようにその場に座り込んでいた。既に薄れかけているマリの残り香、消えてなくなるまで……。



 ―――翌日。
 気持ちの良い晴天。目にも鮮やかな青い空に白い雲がまばらに浮かぶ夏日。
 こんな日に緑豊かな野山を散策したら、とても満ち足りたものになるだろう。だけど……。

「松代で事故!?」

 シンジの部屋のベッドの上で、膝を抱えて座り込んでいたアスカは絶望と共に目を見開いていた。
 非常招集を伝える携帯電話が転がり落ち、まだ何かを叫ぶように伝えていたが、アスカはもう聞いていなかった。すぐに、ネルフから迎えの人間が来るだろう。震えながら立ち上がると、なぜか壱中の制服に着替える。

「大丈夫、よね。無事じゃなかったら、タダじゃ済まさない。バカシンジ」











「あれが……使徒?」
「そうだ。目標だ」
「何言ってるのよ。あれは3号機じゃない。シンジが乗ってるのよ!?」
「目標は接近中だ。君が倒せ」
「でも!」

 モニターに映るは鬼気を纏いし漆黒の鬼。わずかに開いた延髄部のプラグ挿入口に、青い粘液状のモノに絡まれて今だ内部に押しとどめられているエントリープラグが見える。つまり、あそこにまだシンジが乗っている。
 それなのに! 彼の父親である碇ゲンドウは冷徹に、微塵も感情や情愛、躊躇などを感じさせることのない声で殲滅を命令するのだった。正直、シンジが話す父親評は大げさで、実態は違うと思っていた。甘かった。シンジの言葉以上に冷徹で血も涙もない男だとアスカは思った。

「司令、シンジがどうなっても良いっていうんですか!?」
「くどいぞ。二号機……いや、初号機パイロット。第2の少女。お前の役割はなんだ?」

 岸壁の岩肌の様な強固な拒絶を感じた。あんまりと言えばあんまりな言葉に物理的な衝撃さえ受け、指先が震えるのを感じる。LCLに浸かっているのに全身を生温い汗が包み込むのが分かる。
 小動もしない目でアスカを睨みつけてくる碇ゲンドウの姿に、アスカは絶望しか感じとれなかった。知らず知らずのうちに涙があふれて、鼻の奥がツンと痛くなる。闇よ覆うなかれ。心を晴らしたまえ。脈拍が狂おしいほどに速くなり、息がまともにできなくなるのがわかる。

「わ、わたし……私の仕事は」

 今よりも大人になった自分とシンジ。手をつなぎ腕を絡めデートをしている。遊園地に行ったり映画を見て、買い物をして、ランチを楽しんで。そして、美しい夜景や夕焼けを横目に見ながら、お互いの瞳を見つめ合い……。それより少し大人になった自分に、はにかみながらシンジが何かをつっかえつっかえ伝えてくる。真っ赤な顔をして頭を掻きながら、小さな箱に入った指輪を……。私は少し怒って泣きながら、でも満面の笑みを浮かべて、「うん」と体当たりするようにシンジに抱き付く。
 また違う情景では、ウェディングドレスを着た私がレイやマリ、ヒカリとその姉妹、鈴原とその妹。相田。それに知らないはずなのに知っている黒髪眼鏡の女性や栗色の髪の女性、金髪デコ眉の女性達に祝福されながら(一部呪いの言葉を受けながら)ブーケを投げて……。
 今のミサトと同じくらいの年齢になったシンジと二人で子供をあやしている。一目でそれが自分とシンジの娘だとわかった。だって黒髪以外は昔の自分にそっくりだから。でも、絶対にありえない光景。戦闘用のクローン生物として作られた自分には染色体に手が加えられて生殖能力がない。子宮はあるが卵巣はない。当然、セックスはできても子供なんか作れない。でもこんな光景を見るということは、私は子供が欲しくて仕方ないのだろうか。たぶん、きっとそう。私はシンジの赤ちゃんを産みたいんだ。

 夢の中では、女の子をやさしい目でシンジが見つめて、頭を撫でて……。嫉妬した私が「私も撫でろ」と二人目がいる大きなお腹を揺らしながらシンジにもたれかかると、苦笑しながらシンジは……。
 そんな幸せな情景が、ステンドグラスが割れるように粉々に砕け散った。

 やっぱり、人並みに夢なんて見るべきじゃなかった。

「エヴァに乗って……使徒を……倒すこと」

 バカシンジ……私たち、幸せになれなかったね。











 暗い面持ちでマヤがリツコの側に立たずんでいる。時々ついていけないと思うことはある。それでもマヤは飼い主に従う子犬のようにリツコの後ろを着いていく。昔からそうしていた。きっと、これからも変わる事はないだろう。
 「あの…」検査が終わった検体について思うところがあるが、だがリツコに強く言うに言われず無意味に瞬きを繰り返している。そんな後輩の姿に嘆息するとリツコはシンジのバイタルを監視する装置から目を上げた。

「細胞組織の侵食は消えたものの、使徒による精神汚染の可能性も否定できない。このまま隔離するしかないわね」
「まさか、処置ってことはないですよね」
「貴重なサンプル体よ。ありえないわ」

 そうあってほしい。
 内心は別として突き放すように言いながら、リツコはマヤ以外の誰にも分らない角度で項垂れた。シンジの事も、自らの手で恋人を傷つけたアスカの事も、負傷を押して抗議の末に逮捕拘留されている親友の事も心配ではあったが、それ以上に気になるのは一人の男の事だった。

「碇司令も、人の親だったって事ね」

 解放されたエントリープラグから引き出されたシンジは使徒に汚染され、そして心臓が止まっていた。

『初号機、いえ3号機パイロットの心肺停止を確認。死亡しています』
「シンジ……。なぜ、こんなことに。ユイ、お前は……」

 目の前の光景が嘘だというように色眼鏡をむしり取る。見開かれた眼は血走り、焦点が合っていない。横から声をかける冬月だったが、応えることなくその場に碇ゲンドウは昏倒した。脳溢血を起こしたのだった。人事不省に陥ったゲンドウはそのまま緊急搬送され、冬月は我知らず天を仰いだ。

 冷たく突き放し、まともな親子関係を欠片も構築していなかったのに、息子に対する思いがあったという事なのだろうか。ならもっと不器用なりにやりようがあっただろうに。どこまで愚かなのだろう。今の千分の一、いや万分の一でも良いからシンジとまともに交流ができていたら、こんなことにはならなかったはずなのに。
 自身もまともとは言えない親子関係だっただけに、リツコは唇を噛みながらそう思った。今更、何もかもがすべて手遅れではあるが……。
 幸いなのだろうか。
 十数分後……懸命な救命措置でシンジは息だけは吹き返しはした。しかし5分以上の心肺停止状態が続いていたのだ。かろうじて完全な脳死にこそ至っていないが、完全な植物状態だった。しかも使徒の浸食を受けている。初号機の起動と初心者が使徒の撃破と比べたら可能性はあるかもしれないが、奇跡的な回復はまずあり得ない。
 甘い夢を期待するべきではないだろう。リツコは目を閉じ、しばし物思いにふけった。それはシンジとゲンドウに対する、リツコなりの別れだったのかもしれない。

「先輩、これから……シンジ君は、私たちはどうなるんでしょうか?」
「なるようになるしかならないわね。当面、新しい司令が着任するまでは副司令が暫定的に司令の任に着くようだけど。それから先は何もかもが闇の中。五里霧中よ」
「新しい司令ですか……。誰になるんでしょうか?」
「わかってるのに聞くの? ユーロネルフの現支部司令が新しい総司令になるでしょうね。碇司令の政敵で、アスカの「育ての親」になる人よ」

 政治、交渉ごとに辣腕を振るう有能な人間という評がある一方、金髪が好みで些か以上によろしくない趣味を持つ漁食家であるとも聞く。まさか自分がターゲットになるはずもなかろうが、髪を染めなおそうかとリツコは思った。











 それから……。
 6号機と第5の少年の活躍もあり、かろうじて第12の使徒迄の殲滅に成功した人類だったが、式波アスカ・ラングレーの武力を用いない戦いはここから始まることになる。


 1年ほどが過ぎ、成長して更に女性らしいスタイルとなり、あれほど望んでいた大人に更に近づいたアスカであったが、そのことに微塵も喜びを見いだせなかった。理由は目の間にいる強面で、いかにも強引で傲慢な雰囲気の白人男性にあった。舐めるような視線がプラグスーツ越しに全身に向けられるのを感じ、思わず怖気が走る。

「シンジを……破棄? 司令、何を言われてるのか理解できません!」
「間違えないでもらおう。アレは第三の少年では、人間ではない。第9の使徒だ」
「違います! 彼は人間です。使徒ではありません!」

 処置なしだ。とでも言わんばかりに肩をすくめ、首を振る。その芝居がかった動きは、殊更にアスカの怒りを招くことになったが、男は全く気にしなかった。

「死海文書によると使徒は全部で12体。そのことごとくが殲滅できたが、いまだ補完はなっていない。つまり、倒されていない使徒がいるということになる」
「それが、シンジの事だっていうんですか!?」

 ネルフを抜けたミサトと加持、そして敢えてネルフに残って協力しているリツコ達の助力によって既にアスカは人類補完委員会、その背後にいたゼーレという組織とその目的については把握していた。だからこそ、男の言っていることが絵空事や妄想の類じゃないということも、口惜しいが分かっている。彼の言い分は正しい。

(でも、だからってシンジを処分なんかさせない。第一、人間が新しい使徒に成り代わる補完なんて必要ない!)

 今思えばまったく不用意に行動したカヲルは、DSSチョーカーを作動させられ13番目の使徒として処分された。レイは第12の使徒を倒すために、零号機もろともに自爆して果てた。

「そもそも、人類の補完をする必要があるのですか? 私は知っています。全ての使徒を倒した時、人類は新しい使徒として再構成されてしまうということを。なら、シンジを、第9の使徒を処分なんてする必要ないじゃないですか」
「ふむ、やはり君は何も知らないようだな」

 ニヤリと笑うと、男は唇を舐める。その艶めかしい舌の動きに、アスカは悪臭が漂ったような気がした。

「第9の使徒を、ただ殲滅するのではないよ。エヴァを疑似シン化形態にして、エヴァによる殲滅を行うのだ。本来、神が用意したシナリオは二つ。使徒に滅ぼされるのか。逆に使徒を滅ぼし、人類が新たなる使徒へと転生するか。
 だが第三の道がある。それこそが、真の補完計画。神へいたる道。ゼーレのシナリオ、神への抵抗、神殺しだよ」
「なにを……言ってるのよ?」

 一見、正気を失ったような男の物言いに言葉もないという様子のアスカだったが、実のところ男が何を放しているのかアスカはよくわかっていた。ミサトや加持、リツコが調べた調査報告を目にしていたからだ。噛みしめた唇から鉄の味がするのを感じる。だが、胸に感じるこの痛みと腹の底から湧き上がる焦燥に比べれば、肉体の痛みなんて毛ほども感じない。

「いずれにしても第9の使徒殲滅は決定事項だ。ただのパイロットの言うことにかかずらわってる場合ではないのだよ。……使徒の殲滅は近日中に執り行う」
「まって、待ってよ! ううん、司令待ってください! お願いします! 私の話を聞いてください!」

 這いつくばり、頭を地面に擦りつけるようにするアスカの姿に、男は軽く口笛を吹いた。
 あのプライドばかりが高い『第2の少女』が……。ジャパニーズDOGEZAをするとは。勿論、彼はアスカとシンジが恋人同士の関係になっていたこと、肉体関係があったことも聞き知っている。

 アスカを見ている内に、ふと、男の心に邪心が芽生える。いや、もともとあったモノがこの機会に鎌首をもたげて起き上がってきたのだ。もう、アスカは少女とは呼べない肉体になりかけている。髪の色は更に色が薄く、完全な金髪となり日本人の血が混じってるためか白人に多い独特の体臭もなく、きめ細かい肌は滑らかで東洋系の面立ちが混じったその美しい容貌にはむしろ得も言われぬ魅力が満ちている。



 そう、以前からやりたいと思っていたことを実行するのに、これは実に都合がいい事かもしれない。
 もちろん、第9の使徒は殲滅するのは確定事項だ。だが、それを多少遅らせるくらいは問題ない。近日中に行うとは言ったがエヴァを意図的にシン化覚醒させることがまだできないため、計画は実行できないでいる。今のペースだとダミープラグで疑似シン化状態で起動させるのに、基礎研究だけで1年以上かかるかもしれないという事だったが……。
 意図的に疑似シン化状態にできるカヲルを殲滅したのは早まったことだったかもしれないが、ユーロ時代から絶対に殺してやると思っていただけにDSSチョーカーを作動させるのに微塵も躊躇はなかった。いずれにしろ第9の使徒殲滅にカヲルは反対しただろうから、多少遅いか早いかでしかない。
 ともあれ、今はアスカだ。

「ふむ、そこまで言うなら多少は考えなくもないが……」
「本当ですか!?」

 上から下まで、ジロジロとアスカの体を舐めまわすように見つめる。良い女に育っていると心底から思う。プラグスーツ越しに丸みを帯びた肩や縊れた腰、たわわに実った果実の様な胸など思い出すだけで涎が出てきそうだ。あの体を思うままに弄ぶのも悪くはない。この調子なら、アスカはこちらの要求した事にはどんな理不尽な内容でも『Ja』と応えるだろう。

「たしか日本か?あるいは中国のことわざで『魚心あれば水心』と言うんだったかな?」
「え、どういう……ことですか?」
「恋人に対する君の思いの強さを教えて欲しいのだがね」
「シンジの思い? あの、その、まさか」

 問い返しながらも、アスカは男が何を望んでいるのか悟ってしまったのか、その瞳に絶望を映し出していた。



 こんなドレスに身を包むのは、どれくらいぶりだろう?
 たしかユーロ空軍のトップエースとなった数日後だった。広報用の写真を撮る為とパーティに出席するためだった。幼いながらも、上流階級の社交界デビューさながらな格好をさせられ、それも1日で礼儀作法を叩き込まされて各界の名刺や著名人に挨拶をさせられた。肩ばかり凝って、こんなに退屈でつまらない時間があるのかと思ってしまった1日だった。
 あの日、思ったものだ。二度とドレスなんて着てやるもんか、と。もっとも、シンジに見せるためのウェディングドレスなら来ても良いか、くらいには態度を軟化させていたけれど。

 しかし、その思いも空しくアスカは男に要求されるがまま豪奢なドレスを着て、男と会食をしている。死んだ目をしながら愛想笑いを浮かべ、おべっかを使い、到底笑えないジョークに笑みを浮かべなくてはいけない。周囲にネルフ司令と自分がどういう関係にあるのか知らしめるために。
 だが、そんなものは前哨戦に過ぎない。真の地獄は食事の後。











「最高級のスイートを取ってある。日本のモノにしては中々だ」

そう嘯いていた男に促され、あいまいな笑みを浮かべながらアスカはエレベーターに乗り、ホテルの最上階へと上がっていた。
部屋に入った男は、最初こそソファーに座るよう促してワインを勧める等して余裕を見せていたが、それもほんの数分ほどしか続かなかった。ほんのりと汗の匂いをまとった金髪が揺らめくと同時に、男はアスカにとびかかった。




「ちょ、いきなりなにするのよ! うぐっ、やめろぉ!」

 悲鳴を上げるアスカ。
 人生でも最大級の嫌悪で胃が裏返りそうになり、こめかみに欠陥を浮き上がらせながる。息が重い。怒りと共に視界が赤く染まっていく。男を殴り、投げ飛ばし、関節を極めてへし折ってやりたい。実際、それは赤子の手をひねるよりも簡単にできる。骨が折れる音がしても手は止めない、そのままねじり、肉がはじけて血液と共に骨の砕片が飛び出すまで……。

(できる……わけがないでしょう。何考えてるのよ私は)

 しかし、それをしたら即座にシンジは処分されてしまう……そう思い込んでいるアスカには、男を拒絶する選択肢はあり得なかった。一瞬、アスカから湯気のように立ち上った殺気にひるみ、動きを止めた男ではあったが、アスカが身を捩って睨みつけながらも無抵抗なことに自信を深める。
 再会してからずっと夢見ていた。アスカという瑞々しい果実を味わえることに、その期待と興奮に、醜くゆがんだ笑みを男は浮かべるのだった。

 空調のきいた清潔な部屋の中に、気のせいか熱が籠り始めている。抵抗こそしないが非協力的なアスカをどうにか膝の上に座らせると、男は背後から包み込むように抱きしめ、豊満に育った果実を握りしめる。羽二重餅などや水蜜桃、いろんな比喩が男の脳裏にスクロールするが、どれも性格とは言えないだろう。唯一無二、アスカの体はアスカの体としか表現のしようがない。
 弾力を確かめるようにぎゅっと力をこめ、手の平に返ってくる感触に思わず歓喜の声を漏らす。我を忘れそうになりながらも、アスカが嫌悪と苦痛に呻き声を上げる寸前、力を緩める。ビクン、ヒクンと釣り竿にあたる魚の気配を読むように、男はアスカの反応を読み取ろうとする。
 これでも色事に関しては百戦錬磨の男は、それだけでアスカの強いところ、弱いとこを探り出す様に……。

「くくく、第2の少女……いや、これだけ育ったらもう少女とは言えないかもしれないな。存分に堪能させてもらうよ」
「うううっ……さっさと、終わらせなさいよ。ホントに気持ち悪いんだから」

 憎まれ口をたたくアスカの姿は、これまで男が蹂躙してきた女性たちととても似かよっていた。戦闘生物として調整されたと言っても、所詮は小娘だ。ますます自信を深めると、男は執拗に、リズミカルにアスカの胸を揉みしだく。

「う、うううっ。き、気持ち……悪い」
「だんだん息が荒くなってきているようだが」
「あ、あんたがくっつくから、暑いのよ」

 あからさまに赤くなった顔を背け、アスカはそれだけ言うので精いっぱいだ。男はアスカの言葉に少し眉を顰めるが、それが彼女なりの精一杯の強がりだということはよくわかったので、『言葉遣いに気を付けろ』と敢えて注意はしなかった。代わりに、行動でその小生意気な性格を矯正してやろうと心に誓った。

「あっ……あっ……あっ。ああっ、や、ふざけるな! 畜生! あんたなんか、あんたなんか地獄に堕ちろぉ!」
「まず口の利き方から教え込むべきか。だが普通、思い人以外に触られてこれほどまでに反応することはないと思うがね。君がそれだけ淫乱なのか、それとも第三の少年はそれだけ稚拙だったのかな?」
「あんたの愛撫なんて気持ち悪いだけよ! シンジの事を悪く言わないで! あいつは、シンジはアンタなんかと比べ物にならないくらい、優しくて気持ち良いんだからぁ!」

 どこまでその強がりが続くだろうか。男は内心ほくそ笑む。
 所詮は中学生の乳繰り合いだ、色事に関しては圧倒的に差があるだろうことを男は自負している。

(教えてやろうじゃないか、第2の少女。お前はもう、私のものだということをな)

 強く、強く、弱く……。緩急をつけ、時に手を止めて不意を突くように。ときおり、衣服越しでもわかる固く凝った乳首を探り当てて布越しにきつく摘まむ。その都度、アスカは睨みつけていた目をきつく閉じ、「ヒィ……」と息を詰まらせてヒクヒクと全身を震わせる。

「どうしたのかね。まだ5分と触っていないぞ。もうグロッキーか?」
「あ、あうっ! は、はぁ、はっ……。あ、あんたが……気持ち、悪くて、吐きそうな……だけ、よ」
「ほほう。それなら我慢比べ……いや、勝負と行こうか」
「はぁ、はぁ、はぁ。しょ、勝負……?」

 やはり勝負事と聞けば耳を傾け、乗ってくる。アスカの人となり、性格、考え方は手に取るようにわかる。何人もの女性を慰み者にしてきた男は、肌身を重ねた女の考えることが読心術レベルの精度で把握することができる。ある意味、特殊能力と言えるだろう。アスカを抱くのは勿論、今日が初めてになるが、多くの彼女の姉妹たちに接してそのカウンセリング結果を知っているのは勿論、実際に10人近く味わってきているのだ。そう、彼女の事はよーく知っている。
 勝利が確定している勝負にアスカが応じることを予想し、ニヤリと笑みを浮かべると、男は言葉をつづけた。

「これから5分間君を愛撫する。それで君が達するか、気絶したりしなければこれ以上君を辱めるのはやめてやろう。もちろん、第9の使徒の処分はしばらく保留にする。だが、君が5分以内に達したり、あるいは気絶したりすれば……君は身も心も私の所有物になってもらおう」

 しばし逡巡しつつも「良いわよ。やってやろうじゃないの」と受け答えするアスカ。あまりにも予想通りの行動をする彼女に、男は既に勝利を確信していた。




「……いや、いやぁ。わたし、気絶なんかしてない。イってなんかない。さっきのは、何かの間違いよぉ」

 組み伏せられ、大きく足を広げられた姿勢を取らされたアスカが力なくつぶやく。だが、一度絶頂を迎え、あろうことかそのまま意識を失うほどの快感にさらされた体は痺れたように力が入らず、男にされるがままになっている。

「往生際が悪いな。なんならさっきの君の姿をMAGIに確認させても良いんだぞ」
「確認って、まさか録画してるの!?」
「折角だからな。この思い出を永遠に残しておきたくてね」
「違う、嘘よ! そんなこと、あるはずがない! 放して、放してぇ! もう嫌、嫌だってばぁ!」

 目を見開き、早回しのビデオ映像のような動きで首を振りながらアスカはわめいた。だが、男はそんなアスカの反応も予想通りだったため容易に押さえ込む。そのままがっちりとホールドしたアスカの腰を持ち上げ、ゆっくりと自分の方に引きつける。ギュッとシーツを握りしめ、アスカは目を見開いた。記憶にあるシンジのよりはるかに大きく、グロテスクな形状に歪み、鉛のようにどす黒い色をした男のペニスは、まるで怪獣のようにアスカには思えた。

「あ、あああああっ、無理、無理無理……! 止めなさいよこの変態! 馬鹿ぁ! そんなの無理だって、入るわけない! 死んじゃう死んじゃう死んじゃうっ!」
「ある意味、そうしてやろう」

 腰を引き、一瞬動きを止めて力を溜める。先端をアスカの秘所に押し当ててじっくりと狙いを定める。

「いやいやいや、あう、うううううっ。助けて、シンジ、助けてよぉ」

 もう全身性感帯になった様に敏感になったアスカは、どこをどうされても過敏に反応してしまう。
 眉根にしわを刻み込み、歯を食いしばり、左右にイヤイヤするように激しく顔を振るアスカは、恐怖と男に対する拒絶で失神寸前だった。泣きそうな顔をしているアスカを、じっと男は見つめる。大きく広げさせられた太もも落ち着かせるようにゆっくりと男は指を這わせた。

「待って、お願い、やっぱり無理よ。私、私はシンジの、シンジだけ……」
「ふふ」

 潤んだ瞳で見上げるアスカに、男は優しく……気持ち悪いほどやさしく微笑む。
 そのまま無言で身動き一つしない。

 1分……2分……。

 まさか本当にやめてくれた? さすがに怪訝に思ったアスカが、身じろぎしつつ恐る恐る声をかける。

「やめて、くれるの……?」
「ふふ、フハハハハハ」
「え? えっ、えっ?」
「やめるわけがないだろう」

 とびっきりの邪悪な笑顔を浮かべてそう言うと同時に、男は股間を押し付けた。脱力したアスカのヴァギナを押し割り、愛液で濡れそぼった膣内にペニスを埋没していく。

「やめてぇ! そんなにしないでぇっ!!」

 目を見開き、全身を足掻く額と痙攣をおこして悶えさせるアスカ。望まぬ侵入だが体は敏感にオスの蹂躙に反応してしまい、膣内を悩ましく収縮させて受け入れてしまう。

「ううっあっ! あっ! あ、ああっ! はぎっ! ひぅっ! あああ〜〜〜〜〜っ!! ダメ、ダメダメ、ダメよ! いやぁ、シンジ、シンジぃ! 助けて、助けて、助けてぇ!」

 絶叫と共に吹き出した蜜が甘くかぐわしい雌の匂いを漂わせる。
 ペロペロ、シペシペと音を立てて唇を舐めまわしながら、男はクローンの姉妹とはまるで異なる『本物のアスカ』の具合に堪能するのだった。腰の後ろにつーんとした感覚が浮かび、内臓ごと引き出されるような快感が男の背筋を貫く。同じくらい……いや、それ以上に快感に襲われたアスカは息も絶え絶えに声を震わせて哀願し、男の力に屈していた。

「……息が、うう、苦しい。……も……もう……こんなの、あり得ない……ああっ、あああっ! なんで、なんで、あぁぁ……動か、ないで! もう、抜いてぇ」

 ビクン、ビクン。さっきから痙攣が止まらない。
 男が動くたびにアスカは軽く達して喘ぎ声をあげる。汗が飛び散り、ピストン運動に合わせてうねるように腹が波打つ。より密着を求めて男は角度を変えて、更に深く、強く腰を打ち付ける。


「あっ! あぁん! あっ、あ、あ、あっ! 吐きそう。苦しい、くるひぃ……。やだ、もう、やめてぇ。あんたなんかとセックスなんて、したく、ない。あり得ない、なんで、私が……!」

 アスカは爆ぜるように啼き声を上げつつ、脳まで焼き狂わせるような快感を懸命に堪えようとする。
 涙が滝のように溢れ、どれだけ嫌でも男の好意に反応してしまった体は、無意識の内に腰を振ってしまう。

「あっ、あッ……ひぐぅぅ」

 腰の動きは止まることなくアスカを依然、狂わせていく。
 強く突き、深くゆっくりと動かしたかと思えば、「の」の字や「8」の字を描くように腰をグラインドさせる。懸命に逃れようと腰をもじもじとさせるが、かえって男の獣欲を掻き立て逆効果だ。体が芯から熱くなってジンジンとうずく。感電しているようにビリビリ震えながら、アスカは声を上げ続けた。

「あ、ああああッ!」

 男の指が、舌がアスカの前進を愛撫していく。胸を揉まれ、乳首をつままれ、あるいは舌と唇が涎を擦りつけるようにしてアスカの全身を濡らしていく。

「ンン――――ッ! くぁッ! ああぁぁ―――っ!!」

 そして、挿入されてからおよそ10分間に及ぶ攻防の末、遂にアスカは限界を迎えた。
 背中をブリッジするようにのけぞらせ、全身を硬直させるアスカ。男を跳ね飛ばさんばかりの勢いで、雷に打たれたようにビクン、ビクンっ!と総身をくねらせる。

「くぅ……ああっ!」

 その瞬間は唐突に訪れた。股間から快感が突きあがり、稲妻のようにアスカを貫いた。無意識の内に男の体にしがみつき、全身を粟立たせたアスカは絶叫を上げた。

「アッ、イッ……! んんん! あっ!? ふぁ、あ、あぅ、ああああぁっ! あ、あ゛あ゛あ゛あ゛―――――っ!!!」

 アスカが絶叫を上げると同時に、男も感極まったような情けない声を上げると、密着するほど深く腰を押し付けると、ドクドクと熱い欲望のエキスを、遂に征服したアスカの美肉に注ぎ込んでいく。

「うあっ、ああっ、ああああ〜〜〜〜」

 送れること数秒、アスカはまた悲鳴に近い声を放ち、体内に精液が満たされ、染み込んでいく会館に全身を揺らした。もはや何度絶頂を迎えたのかわからない。一滴のこらず放出を終え、ため息とともに男がホールドを緩めると、アスカは崩れ落ちるように全身を弛緩させ、ベッドに崩れ落ちた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ああぅ、ううぅ」

 忘我の境地に達したアスカ。その目は開いているが虚ろな瞳は何も見ておらず、大きく上下する胸は懸命に空気を求めて喘いでいる。そんなアスカの……愛人の姿に満足げに男は頷くと、緩く開いて空気を求めるアスカの唇に、優しくキスをするのだった。

「名無し共とはまるで違う。想像以上だよアスカ」











 アスカを抱く。その目くるめく夢のような行為が、1回や2回で終わるはずがない。たとえ今度何度も何度も繰り返せると言ってもだ。
 男は執拗にアスカを求めた。
 様々な体位で、思いつく限りの手練手管を駆使してアスカを翻弄する。




 後背位、側位、対面座位、騎乗位、駅弁、etc……。
 ありとあらゆる行為で何度も何度もイかされ、気絶すほど責められては、執拗な攻めで無理やり覚醒させられるのを繰り返す。際限のない淫欲地獄へ落とされたアスカは、男になすがままだった。
 胸を揉まれながらこれでもかと腰を揺さぶられ、凄まじいエクスタシーの嵐に翻弄される。
 歯形がつくほどきつく乳首を噛まれて無理やり目を覚まさせられると、そのまま現在進行形で続けられているピストン運動のもたらす快感に声にならない悲鳴を上げる。

「だめぇ、もうこんなのダメ、ダメェ……。反応、するな。私の、体なのに! どうして、どうして、反応……! シンジ、助けて、助けてよぉ」
「私の事を第三の少年より愛してると言ってみたまえ。私も鬼じゃないからな。多少は手加減してやるよ」
「うう、さい、てい……。あんた、絶対、地獄に落ちるわ、よ。ぜったい、絶対に……そんなこと、言うもん、ですかぁ」

「ならこのまま最後まで楽しみたまえ。ふははは、どこまで君の正気が保つか楽しみですらある。覚悟しろ、これから毎日犯して、妻としてふさわしい精神に作り替えてやる」
「ああ、ああっ、イク、うううううう、くあぁぁ! 絶対、絶対に……負ける、もんですかぁ。あんたの妻になんか、なるもんですかぁ!」

 男を咥え込んだ膣肉が別の生き物のように蠕動し、絶妙の力加減で締め付ける。ある意味予想外のアスカの反撃に、さすがの男もそのまま達してしまいそうになり、奥歯を噛みしめて快感をこらえた。
 そんなアスカを捕えると、顔を引き寄せ男は唇を奪う。シンジだけ、シンジしか知らないはずの唇が、肉食獣の様な獣性を持つ男に蹂躙される。
 
「ううううっ! キス、いや……んぶっ、んっ、んん、ん!」

(小癪な奴だ。これは、思っていた以上に楽しめそうだな)

 男の抱擁から懸命に逃れようとくねる体を抱きしめ、焦点の合わない虚ろな目をしたアスカの唇を奪う。むせるほど唾液を注ぎ込み、舌を絡めるディープキスをしながら男は、アスカの重みを全身で受け止める。
 キスをしながら、再び、最後の一滴まで心置きなくアスカの膣内に射精すると、男は搾り取るように締め付けてくるアスカの感触を楽しんだ。甘い喘ぎと共に何度目かわからない絶頂で全身を震わせるアスカを見つめる。おそらく、第三の少年……シンジも見たことないだろう悦楽の極地にいるらしいアスカの表情を楽しんだ。

「ん……は……あう。お、終わった……の?」
「まさか、な」
「う、嘘、でしょ。あんた、異常よ。あ、あり得ない、こんな……こんな……何回、何回すれば」

 夜は短い……だが、朝になるまでまだ数時間はある。存分に楽しもう。











 さすがに空が白み始めたころ。
 二人の交合は終わりを迎えていた。

「あう……うっ……は、はぁ……」

 すっかりボロボロになり、人形のような瞳をしたアスカが呻き声を漏らしている。男に抱きしめられたまま、眠りに落ちているのかそれとも単に気絶しているだけなのか。

(これなら今後も楽しめそうだな)

 アスカは強い。クローンの姉妹たちと違う。
 今はボロ雑巾のように擦り切れてはいるが、数日休めば前以上に猛々しく回復するだろう。だが、回復したとしても今日打ち込んだ快感は毒となってアスカの体内に流れ続けている。
 再び塗ら突いた股間から、マグマが暴発するような感覚が男を襲う。
 このまま、再び意識のないアスカを犯してやるのも一興だが……。

「まあ良い」

 焦ることはない。第三の少年が人質として有効な限り、アスカの体を思うさま堪能することはできるのだ。そして、快感という鎖で縛り、男の存在を楔として打ち込んでいけば……。

「いずれは第三の少年も不要になる。その時こそ、アスカ。お前は私のモノになるんだ」

 オリジナルのように逃がしたりはしない。















 豪華な部屋のベッドの上。男のプライベートルームに今夜もアスカの悲痛な呻き声が響く。

「うっ、うっ、うっ、ううっ!」

 ベッドにうつぶせになって横たわるアスカ。その上に重なるようにして男は背後からアスカの中に突き入れていた。ヴァギナに突き入れている時よりはゆっくりとだが、カリ首から根元まで出し入れを繰り返す動きに、アスカは完全に翻弄され、脂汗で全身をてからせている。アスカだけでなく、男の方も股間が溶けるような快感に身を委ねている。二人の体から汗がぽたぽたと雫になって飛び散り、撮影しているカメラのレンズにキラキラと星屑のように映りこんでいた。
 犯されるアスカの目が飛び出しそうなまでに見開かれ、苦痛交じりの呻き声が止まることなく続く。

「やはり、初めてはきつかったかな?」
「うう、ぐぅぅ……当たり前、でしょ。わかって……るなら、もう、やめ、なさいよぉ」

 嫌味なほどに爽やかに男は囁き、それに対して罵るアスカ。
 よくよく見てみれば、男の腰の位置や突き入れる角度が普通とは違うのが分かる。

「あぐ、ぐぅ、ふぅ……もう、あぐぅぅ〜〜〜」

 自分の思い通りにならない体を鞭打ち、アスカは必死になって逃れようとする。力の入らない両足、無理やり突き出すようにあげさせられた尻肉。
 男の歪に歪んだペニスは、アスカの肛門を出入りしていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。あううぅ、この、異常者」
「そう言うが、君のアナルは喜んで私を受け入れているようだがな」
「うるさい。死ね、変態、死ね……うぐぅぅ!!」

 男の重みがダイレクトに伝わり、意に反して求めるようにヒップを突き出してしまう。
 事前に十分にほぐし、イルリガートルで欠片も残さず排出させられ、そのうえで拡張器を半日に渡って刺しっぱなしにされたアスカのアナルは、男の言う通り第2の性器となって男を受け入れられるように作り変えられていた。しかも、たっぷりとワセリンを塗られて準備を整えられているのだから、アスカの強がりと否定も空しく響く。

(いやあ、こんな、こんな変態みたいなことしてるのに……! どうして、どうして私、感じちゃってるのよぉ!?)

 男が言う通り自分は本当に変態なんじゃないだろうか。
 しかも相手は、好きじゃないどころか、嫌い抜いてる男なのに。

(シンジぃ……)




 想い人のそれとはまるで違う、労わりも何もない、快感だけを追求したようなセックス。快感に体を震わせながら、全身を包む疲労感に身を委ねそうになる。アスカはこんなことで感じてしまうのは屈辱だった。男の言葉を認めてしまっている様で嫌だった。異様に膨れ上がったペニスがズブズブとめり込み、スムーズに動いている。抵抗なく突き込まれるたびに熱い吐息が漏れ出る。

「はぁ、はぁ、はぁ、ああ……。もう、うぐぅぅ」

 熱が籠っていく。蒸気のように熱が全身を包み、どこまでも気だるい空気がまとわりついてくる。肺腑を絞るようなため息を漏らし、切なげに眉根を顰めるアスカ。
 何も入れられてないヴァギナから、糸を引きながら愛液が滴り落ち、シーツに染みを作っている。
 シンジと恋人同士だった2年前とは比べ物にならないくらいに育った胸が、押しつぶされてもなお、圧倒的な肉感を誇示しつつ揺れている。

(あんな、白く濁ったのが……私の、中から)

 拒絶するようにアスカは目を固く閉じたが、一度網膜に映った映像は消えなかった。閉じた瞼の闇の中に、今見たばかりの光景が浮かび上がった。慈悲深い闇すらもアスカを救ってくれない。むしろ闇の中だからこそ、想像の中の自分がどうなっているのかが、鮮明にわかってしまう。そのイヤらしさにますます股間がうずくのを感じる。底の見えない快感は休むことなくアスカを責め立てて、薬物を注射するようにアスカの芯に注ぎ込まれていく。

「ひぃ、ひぃ、畜生……! あ、あうぅっ!」

 当たり前だが、肛門とは本来排泄物を吐き出すための器官だ。男を拒絶するためには、全力で力み出そうとしなければ出ていかない。その為には、どれだけ嫌でも、男を喜ばせるようにしないといけない。激しく打ち合わさって肌が赤く染まり、芳しい量の愛液がとろとろと垂れる。

「お、お腹が……くる、しい……」

 アスカの苦悶の表情を愉しみながら、男は更に深くペニスを突き入れる。筆で書いたようなすっきりした眉を「八」の字にゆがめ、さめざめと涙を流しながらアスカが呻く。ただ尻穴を犯されているのではない、そのままアスカの嫌悪するアブノーマルな行為で絶頂を迎えさせられようとしている。
 エラの張ったカリ首が肉壁と襞を巻き込みながら尻穴をうがち犯す。堪えきれずに必死に食いしばった口から、抑えきれない呻きが漏れていく。男はまるでアスカの内心が読めているかのように、適時、激しく早い動きとゆっくりとした動きを織り交ぜてくるため、その都度アスカの意識は鮮明になってしまう。もどかしいが強烈な感覚にアスカは、子犬のように啼き声を上げた。

「う、うううぅぅっ! ふ、深いぃ! かっ、きゃうぅ!」

 尻からつま先まで無慈悲な快感が突きぬけていった。
 根本まで肉杭がアスカの中に沈み込んで奥にまで届く。内容物が押し込まれる圧迫感とともに、アスカの口から断末魔にも似た呻きを溢れさせる。一拍間をおき、男は再び肉杭を亀頭だけ残るようにアスカの中から引き抜く。そして再び、奥まで突き入れる。
 この繰り返し内臓が裏返しにされるような感触に、アスカは獣のような呻きを漏らすことしかできない。

「ひゃうぅ! はぁぁ、ああっ。だめ、ああ、おあ、おぐぅ……」
「なんて可愛い声を出すんだ。そんなにアナルセックスを気に入ったのかな?」
「そんな、わけ……やめ、なさいよぉ! もう、これ以上は」
「ハハハハハ、やせ我慢は体に毒だぞ。もっと力を抜け。そうすれば気持ちよくしてやるぞ」
「あ……あぁ……あっ、あう、くぅ……。気持ちよく、なんか、なるわけない。絶対、あんたを、許さない……から。いつか、絶対に、殺して、やる」

 懸命にそれだけ言うのが精いっぱい。うっすらと浮かんでいた脂汗が一粒、また一粒と流れ落ちてアスカの苦悶の表情を淫靡に彩る。押し寄せる激痛にも似た快感が、次第に大きなうねりとなり今にもアスカを押し流そうとしていた。
 こうなると一刻も早く終わってほしいと思うアスカだが、すると男は微速度カメラで映した映像のようにゆっくりとした抜き差しを繰り返し、アスカを官能の高みへと持ち上げようとする。ゴリゴリと腸内を擦るゆっくりすぎる動作は、アスカの官能をいや増しこそすれど、決して彼女の待ち望む終わりを与えてはくれない。

「良い顔をしているなアスカ。ほら、前を、鏡を見てみろ。口では怖い事を言ってるようだが、すっかり雌の顔になってるぞ」
「あぁ……ち、違う、ダメ……見るな、ああ」

 どれだけ嫌っても、呪っても、突きたてられた男の怒張が、無理やりアスカの体に火をつけてしまう。思わず顔を背けるアスカだが、男はそれを許さなかった。男にとっては、まさに絶頂を迎えようとするその表情こそ、今回のセックスのメインディッシュなのだ。それが見られないのでは、今回の攻めが無意味になってしまう。

「ほら、往生際が悪いぞアスカ!」
「い、やぁ……ハァハァ、あぐぅ」

 頭を掴んで引き上げると、無理やり鏡をのぞき込ませる。このまま固く目を閉じ、男の言うことを無視してやりたい。顔を背けたいと思うアスカだが、徹底的に逆らった時、男がどうするのかもわかっていた。
 それでも溢れる敵意はどうしようもない。剣呑な気配を感じとった男の顔からニヤケ笑いが消えた。スーッと鋭くなった目を鷹のように光らせ、ドスの利いた声でアスカを脅しつける。
「アスカ、お前は第三の少年がどうなっても良いというんだな!?」
「う、ううぅ……。わかった、わよ」

 言いかけていた罵声を飲み込み、不承不承だがアスカは瞼を開いた。涙を払うように数回、瞬きし……。
 白い喉元を反らし、シーツを指の関節が白くなるくらいぎゅっと掴む。重たげな吐息を漏らすと虚ろな瞳を鏡に剥ける。
 綺麗だけど、泣きじゃくった、哀れな顔が見返してくる。

「そうそう、そうだ。そうやってちゃんとその可愛い顔が、アクメで歪むのを見続けるんだ」

 己の顔を見続けろ、そう告げてアスカが顔を反らさないのを確認すると、両手で彼女の乳房を救い上げるように掴み上げる。ヒィっ……と息をのみ、アスカが全身を強張らせるのと同時に、固くとがっている乳首を指の間に挟み込むようにして捻るように擦り上げる。

「あぐ、ああぅ……はぁ、はぁ……んああぁ」

 稲妻のように閃光がアスカの脳裏に瞬き、全身を貫くように快感が脳天から足のつま先まで一直線に走り抜けた。
 汗と滲みだした涙、食いしばった口元から唾液がこぼれ降りる。
 肉感的な体に断続的に小さな痙攣が始まる。まるで酸欠状態のような息苦しさを覚えて、喘息官女のように懸命にアスカは喘いでいる。体のあちこちが悲鳴を上げ始めている。アスカは自分が追い詰められているのが分かった。

(耐えるのよ、アスカ。負けちゃ、駄目! ぐぅぅ、でも!)

 ペニスが曳くつくアヌスをこじ開け、腸の柔襞を擦り上げる快感に、二度三度と絶頂の予感が押し寄せてくる。歯を食いしばり、男への憎悪を掻き立ててそれを誤魔化していたアスカだったが、遂に限界が訪れようとしていた。
 なんとも妖しく濡れ光るアスカの肉体が、体内にたまっていた肉の喜びとともに弾けようとしている。

「うああ、あっ、ぐぅっ! このままじゃ、ああぁ!」
「このままじゃどうなるのかな?」

 力強く腰を突き入れ、半狂乱状態になっていくアスカを、男はニヤニヤしながら眺めていた。

「くくく、アスカ。もう限界か? じゃあ、そろそろ」
「もう、やめっ! あぐ……ああぅ……シンジ、お願い……はぁ、はぁ……助けて……ああぁぁ」

 アスカは目を見開き、切羽詰まった表情で鏡に映る自分を見つめた。喘ぎながら必死になって首を左右に振る。その滑稽とも受け取られる動きに、男は何がおかしいのか遂に笑い始めてしまった。

「どうしたんだアスカ。そんなに首を振ると、目が回らないかね?」
「ンああぁ! ああぅ、あっ……ぁ! あ、ああああぁっ!」

 汗に濡れ、顎を震わせて啼き声をあげるアスカ。痛いほどに締め付ける肛門の感触から、もうすぐそこまで絶頂の濁流が押し寄せているのが分かる。そしてそれは男も同じだった。ますます気が狂ったように悶え、うめき声をあげるアスカを見据えて男は宣告した。
「そろそろ、終わりにしようじゃないか」
「あぅっ……ううっ! く、ひぐぅ! うう……うは、ぁ……んぐっ……んぅ」

 男の股間は汗とも愛液ともつかない粘液ですっかりベトベトなり、アスカは断末魔の叫びにも似た咆哮を上げていた。




「あぐ、あああ、うぐぁぁぁぁ―――!!」

 クソをひりだす様に大きく下腹が波打ち、握りしめるようにしていたつま先まで快感で打ち震える。
 開かれた唇からは燃えるように熱い吐息が漏れ、限界まで追いつめられてアスカは絶頂を迎えた。絶頂の連続に体を震わせ、顔をよがってグチャグチャにしながらもアスカは嫌悪感に泣き、官能の波に啼いた。

「う、ああああぁっ! だ、だめぇ―――!!」

 叫び声も空しく、男が呻き声を上げると精液が体内に広がるのを感じる。じわりと熱い精液が触れた瞬間、アスカの意識がスパークするように瞬いた。男が達すると同時に、アスカも言いようのない解放感と安堵感が体を包み、絶頂を迎えたこと感じとっていたのだった。

「ああ、あっ、ああ、ああぁ、あぁぁ」

 初めてのアナル体験。
 本来なら羞恥に耐えかね、正常な状態でいられないはずなのにむしろその所為で意識して、快感を強く感じてしまう。

「はぁ、は、こんなの……って。嘘、よぉ。あり得ない、あり得ない。お尻で、なんて……いやぁぁ。ああぁぁ」

 自分が壊れだしているのが分かる。
 男がペニスを引き抜くと、汚物も含めて色んなものが一緒になって溢れ出る。
 屈辱だけ。嫌悪しか感じないはずのに。

(嫌なのに。死にたくなるくらい嫌なのに)

 どうしてこんなことになってしまったんだろう?

(なのに、なんで……なんでこんな気持ちになるのよぉ?)

 膣を普通にペニスで犯されて感じるのとは違う何かが、アスカを熱く蕩かせていくのだった。

「盛大にイったようだなアスカ。口では拒絶しているが、体はそろそろ私の事を夫と認めてくれているように思えるが、君はどう思うかな」
「そんなわけ、そんなわけ……ない。あるはずない! 消えて、どこかに消えてよぉ!
 もう、こんな、こと……最低よ。うぐ、ふっ……うえぇぇ、ええ、うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 男のあんまりな言いようにアスカは青い瞳から涙をこぼすと、力なく瞼を閉じて嗚咽を漏らした。
 男はアスカをつき転がす余蘊して立ち上がると、泣きじゃくるアスカを不気味な視線で見つめていた。顎を撫でながら、男は考えた。何かが足りない気がする。

「おお、そうか」

 うんうん、とうなずきながら再びアスカに重なるように身を寄せ、抱きしめる。
 顔に吹きかけられる生暖かくて腐ったような息の臭いに、本気で吐きそうになるアスカ。

「今日は前の方を使ってなかったな」







「いやぁ、あぐっ、はぁ、くぅぅ……。やめ、なさい、ああっ! 感じて、なんか! 苦しい、だけ、だから! だから、もう、いい加減にしてよぉ!」

 先ほどと違い、仰向けにされたアスカに男がのしかかっている。
 逃げようと体をくねらせるアスカだったが、痺れたように力が入らず、体を撫でまわされるたびに小刻みに震える。悔しそうな顔を浮かべると、アスカは男から顔をそむけた。

「ああっ……こんなの、違う、違うんだからぁ! 助けて、シンジ……くっ!」

 意識の上で男を拒否していても、事前に十分にほぐされた体だけに、敏感な部分への刺激に対して正直な反応を見せてしまう。いや、どんなに拒絶しても、成熟した大人となった体は、相手が誰だろうと構わずに受け入れようとしてしまう。先程から、男に触れられるのを待ち望んでいるかのように乳房が重たく揺れる。
 苦しそうに眉根を寄せて、懸命に快感を拒絶しようとする。気を緩めれば正気が快楽という奔流に飲み込まれてしまう。その時、アスカは男に『敗北』してしまう。必死に堪えることが彼女にできる唯一の抵抗だった。だが悲しいかな、空しくも儚い抵抗でしかなかった。
 ―――事前に薬まで使われて狂わされた体は淫靡に高ぶり、嫌悪する相手との性交でも愛液と涎を絶え間なく溢れさせるのだった。

「ふふん、相変わらず美味しそうだな」

 男が乳首を口に含み、コロコロと舌先で転がし、甘噛みすると、それだけでアスカは腰をくねらせてしまった。ピンク色の乳首は火傷したように熱くなり、それを良いように嬲られてすすり泣きに似た悲鳴を上げる。男に犯されるようになってから作り替えられてしまったように、アスカの体は、特に乳首は敏感になってしまっている。
 嫌悪感を上書きするほど強烈な快感に翻弄され、ポロポロと涙を流しながらアスカは甘い啼き声をあげる。

「ンンッ……ああぁぁ! し、シンジ!」

 耐えるためにはシンジの事を思い浮かべないといけない。でも、そうすれば男に犯されているところに、シンジが来て見られているような錯覚を覚えてしまう。最低限の照明に照らされて、白く艶めかしく濡れ光る背中が恐怖か、はたまた快感でヒクヒクと震え、玉のような汗が一面に浮かぶ。

「どうしろって、言うのよぉ! ああ、シンジじゃない人に触られたくない! だから、イヤ、嫌だってばぁ! 感じたくない、シンジ、シンジぃ」
「悶えながらそんなことを言われてもね」

 犯されるのを、精液を注ぎ込まれることを感じとり、アスカの体はフェロモン全開になる。芳香が立ち上った。

(あ、ああっ。……いやっ。助けて)

 耽溺しながら男は張りのある白い乳房を執拗に、少し力を込めて揉みほぐす。たっぷりとした重さと存在感のある淫靡な乳は、処女の様な硬さがないがただ柔らかいわけでもなく、手の平に吸い付いてくるような触感があった。

「ううっ……はぁ、くっ、ひぅっ! ンンッ……は、いやぁ」
「随分と気持ち良さそうだなアスカ。どんな具合か感想を言ってもらっても良いかね?」
「ああっ、吐きそう、よ。……き、気持ち、悪い」

 丹念にもみほぐし、たっぷりと感触と反応を楽しんだ男は薄ら笑いを浮かべると、俯き加減に喘いでいたアスカを引き寄せた。数度の絶頂を迎え、何度も愛液を飛沫として吹き出しながらも、今日はまだ犯されていないヴァギナが誘うように、求めるようにヒクヒクとしている。

「はぁはぁ……ん、ああ……あぅ、はぁ、はぁ……ンン、くぅ……はぁはぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はっ……ああっ」

 壊れた蓄音機のように喘ぐばかりのアスカ。
 もう悪態をつく気力も体力もないのか、ぐったりとしているアスカに見せつけるように男はペニスを誇示する。
 これまでに何度もアスカを犯し、絶頂させ、つい先ほどまでアスカのアナルバージンを貪っていた男の象徴だ。
 シンジのとは比べ物にならないくらい歪で禍々しいそれは、熱く脈打っており、生殖能力のないはずのアスカも絶対妊娠させてやると言わんばかりの生命力に満ち溢れていた。

「では、抱かせてもらおうか。ずいぶん待たせてすまなかった……な」
「ひぅぅ。いやぁ……」

 無抵抗なアスカを抱え上げ、熱い分身を男は突き入れる。

「はぐっ!」

 何度も犯され続け、完全に男の形状と大きさに慣れさせられたアスカの美肉は抵抗なく受け入れる。意志に反しておねだりしているように粘膜と膣が動き、蜜を漏らしはじめる。び肉を伝って流れる熱い滴の感触に、感極まったような悲鳴をあげた。

「ンぁあ! ひぁぁっ! やだ、どうしてっ」

 ずぶずぶと沈み込む様に飲み込まれて最奥に亀頭がこつんと触れた瞬間、アスカは全身を折れそうなくらいにのけぞらせ、絹を引き裂くような長く尾を引く悲鳴を上げるのだった。

「ひぃ! あは、ん、ああ! きゃあああ───!!!」







初出2021/07/04

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