とある夫婦の話


Original text:kuzukagoさん


大学を卒業すると結婚して一緒に暮らし始めた僕とアスカ。
お互い別の仕事に就いていたけれど、仕事の帰りに待ちあわせて外で夕食を取ることが日課になっていた。
その席上で、お互いその日にあった出来事を報告しあう。
その日の話題はアスカの会社の同僚の話だった。
彼女の同僚が会社でアルバイトしている若い学生に好きだと告白されたのだと言う。
「信じられない。普通そんなことする?彼女だってもう結婚しているのよ」
「その学生ってどういう子なのかな?」
「あたしも知っているけど、ちょっとカッコよい男の子よ。でもそれとこれとは別でしょ」
「でもその彼女もどうするのかな。連絡するのかな?」
「わからないわ。でもヘンなことは出来ないと思うけど」
「ふーん、でもその男の子も可哀想だね」
実らない想いだってわかっていて告白した男に少し同情を覚えて僕は言った。
「思い切ったのに。一度くらいデートしてあげても・・・」
アスカがマジマジと僕の顔を見つめていた。
「どうしたんだ、アスカ?」
「・・・別に。シンジがそういう風に考えることが少し意外だったのよ」
アスカは顔を伏せて、目の前の料理にナイフを入れた。
少しの間、会話が途切れ、僕達は皿を空けることに専念していた。
「ねぇ、シンジ。もし、もしもよ、その手紙を貰ったのがあたしだったらどう思う?」
「え?」
「一度くらいあたしがその子とデートしてもいいと思うの?」
「・・・僕は、嫌だな」
昔の僕なら「アスカがしたいのなら、いいと思うよ」と答えてアスカの機嫌を損なうところだが流石に僕も成長している。
アスカは「そうなんだ」と見るからに上機嫌になって、「あら、これ美味しい」と料理をパクついている。
その様子を見ながら僕は少し考えていた。
(アスカが他の男とデート・・・か)

「いい夜風ね」
二人で寄り添って夜道を歩く。
アルコールで火照った体が冷やされて気持ちがいい。
アスカの頬も紅く染まり、僕を見る目も潤んでいる。
どうせ明日は休日。これは家に帰ってもすぐには眠らせてもらえそうにない。
「教えて、シンジ。あたしが他の男と浮気したら、シンジはどう思う?」
いきなりアスカが言い出したことが、食事中の話の続きだとはすぐにはわからなかった。
「それは・・・困るな」
「えーっ、困るだけ?」
「えーと、怒る」
「ふーん、シンジに怒られちゃうんだ」
といいつつ、アスカは嬉しそうだ。
「アスカこそどうなんだよ。他の男と浮気したいのかよ」
「あたし?するわけないじゃないの」
今まで以上にピタリと僕の腕に擦り寄ってくる。
「あたしはシンジだけよ。他の男なんて気持ち悪い」
やっぱり僕のアスカはとても可愛い。
「でも」とアスカは僕から少し体を離して言った。
「あんたが浮気したら話は別。あたしも浮気するからね」
「僕も浮気するわけないじゃないか。こんな可愛い奥さんがいるのに」
「そうよねぇ」
再び僕に擦り寄う可愛いアスカ。



◆ ◆ ◆



それがわずか数日前の出来事なのに・・・。
今、アスカは僕の目の前で化粧をしている。
僕はそれを見ているだけだ。
上機嫌に鼻歌すら歌うながら、綺麗になっていくアスカ。
昨日までの不機嫌ぶりは少しも伺わせない。
ねぇ、アスカ、なんで上機嫌なんだよ。これからアスカは・・・。
「ねえ、シンジ」
化粧を済ませたアスカがこちらを振り向き、立ち上がるとくるりと一回転する。
「どうかしら、この服装。決まっている?」
クリーム色のジャケットに同色のタイトスカートを合わせたアスカの格好は確かに良く似合っていたが、僕は嫌味を口にせざるを得ない。
「・・・会社に行くみたいだ。もう少しセクシーな方が喜ぶんじゃないの?」
「そうかしら?でもあの子はこの服装の方が喜ぶと思うのよ」
「あの子」は、アスカのこうした姿を普段、会社で見ているはずだ。
凛として仕事を進めていくカッコいいアスカ。そのアスカに惚れたのだ。
確かにその格好のアスカと一緒に居る方が喜ぶかもしれない。
こんなことになってしまったきっかけは、僕の浮気の発覚。
綾波と会っていたことが見つかってしまった。
アスカは怒り、罵り、そして「あたしも男と会うからね」と言った。
その相手として、アスカは彼女に告白してきた同じ会社のアルバイトの子に連絡した。
驚いたことに、前にアスカの同僚の話として聞かされた話は全てアスカ自身の身に起きたことだったのだ。
「こんなことがなければ、二人で会おうなんて思わなかったわ」
そんなこと今更言われても詮無いこと。
ただ一縷の期待を込めて、玄関先でパンプスを履いているアスカに「食事だけして、帰ってくるんだよね?」と声を掛ける。
「さぁ、どうかしら?」アスカは笑っている。
「どちらにせよ、連絡はするわ。じゃあ、留守番お願いね」
こうしてアスカは出かけて行った。僕以外の男と会うために。

時計の針は0時を過ぎていた。
アスカはまだ家に帰ってこない。
携帯に掛けても留守電サービスに繋がるだけだ。
(アスカ何処に居るんだろう、帰ってこないつもりなのかな)
後悔と心配に苛まれながらリビングでアスカの連絡を待つ。
(何故、こんなことになってしまったんだろう)
テーブルの上に置いた携帯が鳴った。
「アスカ!」
ワンコールで飛びつき、電話の向こうの彼女の名前を呼ぶ。
「ごめんよ、アスカ。僕が悪かった。帰ってきてくれよ」
「・・・そんな大きな声出さなくても通じているわよ」
「今、何処に居るの?」
「ホテルに泊まるから、今夜は帰らないわ」
「・・・一人なんだよね?」
アスカはすぐには答えず、受話器を耳から離したようだった。
アスカの泊まるホテルの部屋の音が伝わってくる。
小さく絞ったテレビの音声、バスルームから聞こえてくるシャワーの音。
シャワーの音。
「アスカ!まだ彼と一緒に居るの!?」
「ん、電話に出ることはできないけど、ね」
「止めてくれ、アスカ。帰ってくるんだ!」
「言ったはずじゃない。あたしも浮気するって」
アスカは軽やかに笑った。
「あ、彼がシャワーから出てくるみたい。じゃあ、また明日ね」
「ちょ、ちょっと待って!アスカ!」
「一つ教えてあげる。あたしが先にシャワーを浴びたから、今のあたしはバスタオル姿よ」
それが電話が切られる寸前に受話器から聞こえてきたアスカの最後の声だった。

ツーツー
回線の切れた携帯を握り締め、僕は立ち尽くす。
慌ててリダイヤルすると、数回鳴った後、「この番号は現在〜」
切られた。切られてしまった。携帯が。僕とアスカを繋ぐ絆が。
僕はソファに力なく腰を下ろす。
僕は出かけたときの、アスカの姿を思い出す。
女らしく、それでいて一部の隙も無いアスカのスーツ姿。
あの服を脱いでしまったんだ。他の男の前で。
顔を上げると、時計が目に入った。
電話が切れて3分ほどしか経っていない。
しかしバスルームから出てきた男がアスカを抱き寄せ、唇を奪うには充分な時間である。
今頃、アスカはその男の唇をうっとりと目を瞑って受け入れているのだろうか?
アスカが男の首に腕を廻している光景が脳裏に浮かぶ。
僕よりも若い学生風のその男が、若い情欲のままにアスカの唇を貪っている。
止めろ!僕のアスカから離れろ!
僕は居たたまれなくなって、立ち上がるとキャビネットからウイスキーを取り出す。
氷も入れず、水にも割らないまま、立て続けにカップに注いだウイスキーを空ける。
なのに少しも酔った気がしない。
(もう、二人は・・・ベッドの上だろうか)
僕の脳裏の男とアスカは、ベッドの上でお互い見つめ合っている。
アスカは、外国人の血が入っているためか、日本人の同年代の女性達と比べて胸と腰のメリハリが付いた所謂、そそるカラダつきをしている。
バスタオルを剥ぎ取られたアスカは、僕以外の男に見せたことのないはずのその裸を、恥ずかしそうに、今、他の男の目に晒しているはずだ。
そんなアスカを見て、男が腰に捲いたバスタオルの前を膨らませている。
僕は目を瞑った。
目から涙が溢れ出た。

「ねぇ・・・しよ」
ベッドの上で全裸のアスカが四つん這いになって妖しく微笑む。
同じく全裸の男がベッドの上で両脚を前に出して座り込んでいる。
何故か二人とも同じ部屋に居る僕の存在に気づかない。
僕も動けず、声を出せず、見ること以外のことが出来ない。
開いた僕の両脚の間に、アスカが身を屈める。
「うふふ、これがあたしを悦ばせてくれるのよね」
男の下腹部のモノにアスカはその白くて細い指で触れている。
「うっ」
指で摘まむようにして軽く前後に動かされるだけで、男は呻く。
「駄目よ、まだ出しちゃ」
アスカが男の股間に顔を埋める。
舌の先だけ出して、ペロリと男の尖端を舐めた。
「ああっ」
「もう少し、我慢してよね」
アスカが口中に男のモノを収めていく。そして頭を前後させる。
僕のアスカが男のモノを舐めている。
たっぷりと溜めた唾液でクチュクチュと音を立て、舌で男のカタチをなぞっている。
男はアスカの揺れる頭を抱え込んで言われた通り、我慢している。
これがアスカ・・・僕の妻・・・。
アスカの片手が自分の下腹部へと伸び、そこで指を動かしていた。
アスカはまどろっこしい前戯は好まない。
自分の指で男を受け入れる準備を済ませておく。
またそれで充分なほど、アスカは濡れやすい。
「そろそろ、いいわ」
身を起こして膝立ちになったアスカが男の肩を軽くこずく。
男はそのままベッドの上に仰向けになった。
勝気なアスカはセックスでも上に乗ることが好きだ。
アスカがゆっくりと男の上に腰を下ろしていく。
柔らかく濡れたアスカの襞に男の硬くなったモノが潜り込んでいく。
彼らは避妊具をつけていない。
「はぁあぁ・・・中が一杯・・・」
男の全てを受け入れるとアスカは呟いた。
そんな呆けた表情のアスカを僕は見たくなかった。
アスカが男の上でリズミカルに尻を弾ませ始める。
アスカの尻の肉と男の腿の肉がぶつかり合い、パンパンと音を立てる。
セミロングの髪とFカップの膨らみがその動きに合わせて上下に揺れる。
今頃、痛いくらいにアスカは男を締め付けているのだろう。
男はそれに負けじと、下から腰を突き上げる。
「アスカ、ごめん、僕はもう!」
「いいわ、出して、○×△!」
アスカが知らない男の名前を叫んだ。

窓から差し込む朝の日の光で僕は目を醒ました。
夢・・・。
立ち上がった僕は、ズボンの前が冷たいことに気づいた。
・・・何年ぶりなんだろう。夢精だなんて。
しかもその夢の内容が・・・。
僕は自嘲する。
「最低だ、俺」

アスカが帰ってきたのは、それから少ししてからのことだった。
「・・・おはよう」
アスカは無言だった。
僕もこれ以上、何を話せば良いのかわからない。
男に抱かれて、朝帰りしてきた妻に掛ける言葉なんて誰も教えてくれなかったし、想像してみたことも無い。
先に口を切ったのは、アスカだった。
「どうするの、あたしと別れる?」
僕は首を横に振った。
「なら、一緒に暮らしていけるの。他の男に抱かれたあたしと」
「・・・もう二度と会わないと約束してくれるなら」
「そんなこと出来るわけないじゃない。同じ会社なんだから」
「・・・僕も綾波とはもう会わない」
「当たり前でしょ、そんなこと」
二人の間に沈黙が下りた。このままでは本当に終わってしまう。
「・・・僕はアスカを愛しているんだ」
「あたしもシンジを愛しているわ。だから許せないのよ」
「・・・僕は昨晩、夢を見たんだ」
「どんな夢?」
「アスカが他の男に抱かれている夢」
自分でも何を言いたいのか判らなくなっていた。
「・・・で、どう思ったの?」
「正直に言うよ。哀しくて、辛くて、そして・・・興奮した」
「興奮?あんたバカァ?自分の女房が男としているのを夢に見て興奮するなんて」
「正直に思ったことだけを言っているんだよ。でも、アスカと別れたいとは思わなかった」
「・・・」
「バカにしてもいい、他に男がいてもいい。だけど僕はアスカと一緒に居たいんだ」
「・・・ホント、バカね」
「うん、僕は馬鹿だ」
「もう、レイとは会わない?」
「会わない」
「あたしが他の男と付き合ってもいいの?」
「嫌だけど・・・いい」
「なら、教えてあげる」
アスカの口調の変化に僕は気づいた。
「昨晩、ホテルには一人で泊まったの。誰も一緒に居なかったわ。
バカ、あたしが本当に浮気をするわけないじゃない」
にこやかに笑うアスカ。
僕の良く知っているアスカがそこにいた。

おしまい



◆ ◆ ◆



というわけで終わりなのですが
蛇足な文章も一つ。
上から続くかもしれないし、続かないかもしれない。



「で、彼はそれを信じたのかい」
カヲルはベッドの上から天井を見上げて言った。
「信じるしかないでしょ。証拠はないんだから」
濡れた髪を拭いながら、ベッドに腰掛けた女が答える。
「それが夫婦円満に繋がる嘘と言うものなのよ。あなたも結婚すればわかるわ」
「むしろ君達を見ていると、夫婦生活というものに夢を見れなくなってしまいそうだよ」
カヲルの下半身を覆っているシーツが彼が身を起こしたことで滑り落ちる。
背を向けた女の首筋を覆う髪を掻き分け、剥き出された白い肌に唇を寄せる。
「ああん、痕をつけちゃ駄目よ」
「ばれてもご主人には僕達の関係については認めてもらえるんだろ」
「いらない波風立てる必要なんてないじゃない。年下のくせして」
「フフ、歳相応に見えないとはよく言われるよ」
彼女のカラダを覆うバスタオルの合わせ目に指を掛け、はらりとそれを落とす。
「ああ、カヲル」
振りむいた女がカヲルの肩に顔を埋める。



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Original text:kuzukagoさん
From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(4)