INNOCENT TABOO case Asuka & Rei



露出散策、人妻と少女の疼き乳首

――日常を過ごす周囲に溶け込みつつ、気付いた誰かをぎょっとさせる。
それはささやかな悪戯心の充足よと、上品な口元に笑みの粒子を含ませる妙齢の美女。
常から14歳の息子が居るとは思えない瑞々しさを保ち続ける“ユイおばさま”だが、こんな顔を覗かせると本当にチャーミングだなとアスカは思う。掛け値なしに。

(……あたしだって、負けてないわよね)

ともすれば、その1人息子と同い年の“ピチピチの美少女”である自分すらも自信を失いそうになるほどだ。
……ほらまた、と。アスカの視界の端に引っ掛かる景色は、コーヒーを運ぶのも忘れて足を止めてしまっていたウェイターの、慌てる様。
ふふふとユイの意味ありげな流し目を向けられて、真っ赤な顔で奥の席へと飛んでいく。
大学生くらいかと見えるから、アルバイトなのだろう。

(いい歳して、ウブ気取ってんじゃないわよ)

げぇっと顔を顰めて、ドーテイかしらと思わず呟きそうになったところではたとアスカは気付いた。
頭を抱えたくなった。
それこそ、“チャーミングな女の子”がしてみせる思考とは違うのじゃなかろうか。
自分自信への信頼に疑問を挟まざるをえない。
がっくりと俯くと、コーヒーショップのピカピカに磨かれたテーブルには、外出用の笑顔が引きつって映っていた。

「あらあら、可愛いわねぇ」

アスカの煩悶を他所に、美しい人妻はのほほんと。
香りの高い湯気を上らせるコーヒーを楽しむ傍ら、でもと残念そうに続ける。

「気付いてはくれなかったみたいね。それとも、私みたいなおばさんじゃ守備範囲外だってことかしら」
「……きっちり見惚れてはいたみたいですけど」
「じゃ、アピール不足だったのかしらね? もう少し、積極的な組み合わせを着てくるべきだったかしら」

ユイはそう言って自分の胸元に目を落とした。
カップをソーサーに戻す腕につれて、花や葉の模様にレース地をあしらった藤色のカーディガンが控えめに包んだ、成熟した女性の膨らみがそこに。
向かい席のアスカもまた、あまりに恐ろしいものをおっかなびっくり見るように、幼馴染の母親であるユイの胸へ目をやる。

「…………。こっそり、気付くような人にだけ、ってコンセプトじゃなかったんですか?」
「ふふ。いつ気付いてくれるかしら、どうかしらって、ドキドキしながら待つのも素敵なんだけれど、ねぇ」

膨らみのちょうど頂に、春向きの薄いレース生地は小さく窓を開けていた。
そこから覗いているのは、同じ色で揃えられたカーディガン下のノースリーブでもない。
ノースリーブに更に秘密めいた小窓を開けての、ブラジャーすら覆わないユイの胸の尖りだ。
いかにも男に吸わせるための、ぽってりと屹立した姿を見せる、葡萄色の乳首。それが右も左も。

「ンンゥ……ン、ふふふ……」

手入れの行き届いた爪先でなぞるように掻いた主の昂ぶりを示してか、柔らかいレース生地に埋もれいても、乳輪ごとツンと起ち上がっているような、淫らな自己主張。
同じ女性であるアスカでさえ、目が吸い寄せられる。
甘ったるい吐息が帯びていたのは、視線に敏感な花が醸すような、ある種の蜜のしめりに似て感じられた。

「ユイおばさま……」

テーブルに肘でも乗せてカップを両手で持ってしまえば、それだけで全くの自然体を装える。
しかし、明らかな露出のために服に手を加えている彼女の意図は、目敏く気付けた者には明白だ。

「私は裸よ、何も着ていないのって、そうやって全身で男のひとの目に愛してもらうのも……うふふ、好きなんだけれど」

自然主義者としてのヌーディストであるのと同時に、倒錯した性としての側面をも受け入れて露出を愉しむ美夫人の見せる、その微笑み。

「通じ合えた人とだけ、こっそりと……うふン、ンン……っ、ふふふ、楽しむのもね?」

昼のコーヒーショップの客席に、何食わぬ顔をして。
言葉の合間には、アスカの耳朶をたまらなく熱くさせる独特の息遣いが、甘く匂うように。

(おばさまったら)

娘と連れ立ったショッピングに休憩を取っているだけのような風情の彼女は、疎らであっても決して居合わせていないわけではない他人達の最中で、露出させた乳首を破廉恥にいじくっているのだった。

「ンッ、ンン……。ふふっ、ふふふ……分かるかしら、アスカちゃん」

時ならぬ公然オナニーをはじめた年上の連れ添いに、年頃の少女としては気が気でならない。

―― その一方で。
アスカの目は、グミの実を思わせるそこを親指と人差し指の先で摘み、くりゅくりゅと転がし、時に捻り倒して乳輪に埋めてしまうかの如き美女の手つきに、魅入られてしまっているのだ。

……あの指遣いは、知っている。
ああやってコリコリに膨らんでしまった乳首を捻られると、どうなってしまうのかよく分かる。
ビリッと電流みたいに、辛く甘く、背筋に走るんだわ。
私なんて、ぜんぜん我慢できなくて、もっと大きな声を上げちゃうもの……。

そうやって思い出して、我が身に重ね見てしまうものだから。
何時しかとろんと目を潤ませてしまったアスカを、実の娘も同然に可愛がる隣家の一人娘を、ユイは嬉しく導いて行きたくなるのである。

「あのね、アスカちゃん。ほんとうはアスカちゃんの分の着替えも用意してきてあるの」
「え……?」
「アスカちゃんの分の、ちょっと大胆なカーディガン」

ぼうっとしていた頭に沁みるように、ユイの声が提案する。

「この後、わたしの行きつけのお店でスカートを選んであげる約束だったでしょう? その時に一緒に、ね。どうかしら?」
「でも、あたし……まだちょっと……」

踏み切れずに迷うアスカにまた、一瞥するだけで素晴らしい興奮を味わえているのだと分かるバストの先端を、ほらと示して見せて。

「今ならきっと、アスカちゃんの唇でここにキスして貰うだけで――天国に逝けちゃうわね」

『んふン……』と身じろぎの度、カーディガンの小窓からはぷっくらとした乳暈に付随して、周囲の火照った乳肌さえも透け窺える。
そこへたおやかな指を揃えて挿し入れ、もっとと暴くように拡げ見せさえ。
官能の悦びに張った乳房の様は、やわらかにアスカを諭しているかのようだ。

「おばさま……」

慈母を思わせる優しい両の腕に抱かれて、その二つの魅惑的な膨らみに包まれたまま裸同士の愛撫とキス、囁きを何度も受けた。
居た堪れなく恥ずかしくあっても、最後は蕩ける夢見心地へいつもいつも連れて行かれる。
その碇家の寝室のムードの延長線上に、今のアスカは捕らえられていた。

「あん、おばさまっ」

ついと淫母の手がテーブル越しに伸びる。
さわと一撫でくれたユイのタッチは、アスカの清楚なブラウスにしっかりと可愛い乳首を見つけ出して、アスカ自身に教えるものだった。
あなたの躯はほら、こんなに固くしてしまって、もういつでも感させて貰えるよう準備を整えているのよ、と。
指のなぞりが、ブラウスに微細な皺を寄せていく。円を描いて囲い込む。
『いやぁ』とか細く身をよじっても、周囲から絞る動きに追い詰められてブラの内側に圧着させられたのは、つんと発情した尖りだった。
いつの間にか小さくとも見事にしこり立たせていた、アスカの可愛らしいニプルだった。

「私と同じ。自分の胸がドキドキしてるの、アスカちゃんも分かるでしょう? 迷ってるアスカちゃんに、ハートが教えてくれているのよ」

耳を傾けて、素直な心で聞いておあげなさい。
そう教えるセクシィな声は、常に耳元に熱っぽく説いて、アスカやいま1人のライバルに次から次へと想像したこともなかった性の境地を見せてきたものだ。

「あ、ああ……。あたし、あたし……」

自覚させられると、何者にも指一本触れさせず淫らな期待を浮かべてしまっていた己がブラジャーの下を、これ以上無視は出来なくなっていた。
内腿の付け根もいかにも様子が怪しく、テーブルの下でもじもじとさせてしまう。

(やだ、アタシ……濡れちゃってる、の?)

確かめなければ。不意に浮かんだその考えに、アスカは躊躇った。
だが、何もかもを心得たかに見えるユイが静かな首肯をくれるのである。

「大丈夫よ。知っているのは私だけ。私が見ていてあげるから」
「良い……の? こんな、こんなところで……」

ユイの手がにカーディガンに開けた穴から淫ら胸を慰めているのを、熱に浮かされたサファイアの瞳は瞬きも忘れて熱視する。
もはや、湯気も収まったコーヒーに興味が向けられる気配は無い。

「あっ、あ、ああ……」

そのカップを忘れた手がそろそろと、テーブルの縁から下へと下ろされていく。
ふるふると小刻みに震えながら、腰掛けた姿勢のままでスカートの裾を手繰り寄せていく。

「やだ、こんな、こんなに……しちゃって……」

『あたし、あたし……』と途切れ途切れの息で、確認の結果が赤面せざるを得ないものであったことを訴える少女は、もうその手をテーブルの上に戻すことは出来なくなっていた。

「それじゃ、お会計を済ませてくるから。そうしたら、約束のスカートを見に行きましょうね?」

隣、背後の席、客として居合わせる他人の存在に、身を焼きそうに恥じ入りながら。
それでもテーブルに隠れた下で熱くなったショーツの割れ目を慰める手を止められなくなったアスカは、こくんとユイにただ頷き返した。



◆ ◆ ◆

「目を背けちゃダメよ。これが今日のレッスン」
「でも、おばさま……」
「折角アスカちゃんの秘密のおしゃれに気付いてくれたのよ? ちゃんと気付いてくれて、そして理解してくれたの。だからもう、そんな人は私たちと同じ、秘密の愉しみを分かち合える、同志なの」
「ああっ……」

消え入りそうになって顔を背けようとするアスカを、並んで歩くユイが穏やかに嗜める。
羞恥に火照る顔を上げて、アスカはちらとユイの向こうを確かめた。
途端、視線がかち合う“彼”は、うだつの上がらない風体の中年男性だ。
アスカたちが歩くペースに合わせ、歩道脇の車道を自転車でゆっくりと進んでいる彼は、休日の夕暮れをビデオレンタル屋に向かう途中か、帰り途だったのだろう。
店名入りの青いビニル袋を前籠に入れたまま、時折ぶつかりそうになる電柱を寸前寸前でかわしつつ、既に10分もアスカたちに並んでいる。
きっととっくに、ビデオ屋に行くか家に帰るかは彼の中ではどうでも良くなっているに違いない。
なぜなら、彼が街中で偶然に見付けた飛び切りの美女と美少女の二人連れは、一見そうとはとても思えない良家の母娘のようでいながら、揃ってスケベに乳首を露出させた変態痴女コンビだったのだから。
藤色と純白と、色こそ違え揃いの上着に胸の部分二つ穴を開けたそこから、熟れ熟れに経験豊富そうな人妻のものと、初々しいピンク色の小粒のと、二組の乳首が顔を覗かせていたのである。

「へへっ。お嬢ちゃん、お母さんもだけど大胆だねぇ……」
「いやだ……」

平然と笑顔を返すユイとは違い、アスカはあまりの恥ずかしさに目尻も赤くさせてしまっていた。
しかし、手に下げた買い物袋で胸を隠すことは許されていない。
歩道の端を歩き、車道側に立つユイが半ばその背で庇うようにしてくれてはいるが、後はきちんと背筋を伸ばして歩くのだと言い含められていた。

「なぁ、おじちゃんにちょっと触らせてくんないかな〜?」
「…………」

しきりに声を掛けてくる男に、ユイはたまに歩む先を寄せてやって胸を触らせてもいる。
今まで経験したことも無い極上の美女の乳房、モミモミと堪能し、乳首はじかに手触りを許されてすらいる。
片手運転になるたび転びそうになっている男だが、見るからに有頂天。
懲りることなく、次はアスカだとヤニ下がった顔のまま。

「な〜、お嬢ちゃんもあれだろ、露出狂ってやつなんだろ〜? 可愛いチクビちゃんじゃない、ちょっと触らせておくれよ〜」

男の他も幾人か、街を行く親子連れの秘密に気付いたらしい者は居たが、大抵はなにか信じられないモノを目撃してしまったかの顔で、そそくさと離れていった。
鼻の下を伸ばして凝視してくる学生も居たにせよ、この中年男ほど露骨にコースを変更して、ずっと付いて回っているのはむしろ少数派だった。
第3新東京市民のモラルの高さは、しかしユイの思想にとっては満足出来ないものだ。
もっと注意深く気を配れば、人気の無い場所を待って遠巻きに後を付ける危険な若者なども居るのかもしれないが、こちらはいずれ頃合を見てタクシーを拾うなり、安全に撒く目算がユイにはある。
故に、今はアスカであった。

「ほら、胸を張って」
「キャッ」

ぽんと背を押される。
つまり、ユイの陰に庇われていた中から、アスカは男の視界に飛び出してしまう。

「やっ、あ、あっ……!?」

ユイにしてみればまずはのつもり。初心者向けのあまり人目に付かないソフト露出にならば、『アスカちゃんの肌なら、白い生地の方が分かり難くなるでしょう?』と着せられている純白レースのカーディガンだったが、既にその薄桃色にしこる小粒二つを見つけられてしまっていては、意味も無い。
間違いなく、彼の目は押し出されたアスカの胸にぽっちりと、可愛い乳首を捉えただろう。はっきりくっきり、至近距離から。
だからこその、『うひひ』とも『うはぁ、はぁ』とも付かぬ、下卑た歓声だ。

(は、恥ずかしい。恥ずかしいよぉ……)

この時ばかりは、クラスの平均以上に発育した自慢のカップが恨めしかった。
もっと控えめな、ぺったんこの胸だったなら、こんなに先っちょが尖ってしまっているのも目立たずに済むのに。
そんな風に妙な恨めしささえ抱いてしまう。
ユイの唆しに丸め込まれてしまった自分を、なんて馬鹿なのと罵って――いつも“レッスン”のたび一度は迎える後悔の時に、泣きそうになる。

(バカっ、バカっ、バカっ。アタシの馬鹿……!)

頭の中をそうやって呪詛一色にしてさえいれば、紛れも無いヘンタイの露出狂になってしまって、ヒリヒリとむず痒いような乳首を夕方の風に晒してしまっている自分の様を、忘れていられるとばかり。
への字に結んだ口元は、一言も漏らぬべくきゅっと引き締められて踏ん張っている。
ぐんぐんと、足は自然早くなっていく。
ユイの隣に庇われていた時は、早く帰りたいと一心に祈っていても、それでも一足一足が臆病に。庇護する影から、一歩でも前へ出てしまうのを怖れていたのに。
そうして、自転車相手に勝てる筈も無い早足比べになってしまったアスカの後ろを、小ぶりのヒップがくりくりと忙しく振られる様子に苦笑を漏らしつつ、ユイが続いた。



◆ ◆ ◆

――結局、二度さわられてしまった。

タクシーから降りて、やっとコンフォート17マンションのエレベーターまで帰り着いた時、安心のあまりアスカはへなへなとしゃがみ込んでしまった。
隅に蹲り、膝を抱え込んでしまった彼女にユイが掛けるのは、やはり慰めの言葉ではない。

「今日は、どうだったかしら?」
「もう、嫌ぁ。こんなこと、二度としたくない……」
「そう? ……そうかしら」

ユイの目には、清楚な白いカーディガンに開いた“小窓”から覗く、つんと硬くなったグミの実のピンク色が映っていた。
着替えを手伝ってやったときよりも、ずっと尖って自己主張して見える乳首だ。

「あなたの可愛いここ――

アスカの庇う隙間に手を伸ばし、摘み上げる。
はうと鋭く息を詰まらせたロウティーン少女の敏感さは、官能の焔を子宮に宿していてこそのものだった。

「今日一日で、何人の男のひとの目を愉しませてあげられたのかしらね?」
「い、言わないで……」
「そうしてあなたは、何人の男のひとに気持ち良くしてもらったことになるのかしら」

ゆっくりと、あまりに感じやすくなった胸をこねくすぐられ、挟み転がされ、こじられて。 ぽっちりとした、アスカの未だ見ぬ赤子に与えられるべきミルク飲み口は、途端に尾てい骨からを蕩かす官能の、甘い震源地と化した。
膝はガクガクと、とうに下着も透けんばかり。

「っ、アアッ、はおっ……ッ、ッ」

こうだらしなく悦ばされてしまう程になった躰でもせめて、それを哀れっぽい牝啼きの声でまで証明するのは防がねばならない。
恥ずかしがりやの横顔がそっぽを向いて堪えきろうと―― しかし許されない。

「あ、ああんっ。だめっ、だめです。今、今はそこはだめぇ……」

構わずユイはスカートの下をまさぐった。
濡れている。
じゅんと愛液を沁み込ませて、アスカの下着は、アスカの高鳴った体温を帰りの道程分、たっぷり吸い込んでいた。

「あ、ああ……」

こうなっては抗弁も成り立たない。
後は何を言われるにしても『あなたも、ちゃんと歓んでいたんじゃない』と、露出を受け入れていた淫らさが前提にされるだろう。
その証拠をしっかり確かめられてしまった落胆が、理性との狭間で慄える唇から『あ、あああ……』と哀しくこぼれ出る。
その耳元にチュッと、淫母の優しく淫蕩なキスが与えられた。
慰めるのか、また唆すのか。もはやアスカには境目の見えない熱情でチロチロ耳朶を舐められながら、薫るほどの甘い吐息で歌うように、

「今年の春、一緒に進級のお祝いをしてあげた時には想像も出来なかったわよね。まだアスカゃんの身体は、天使みたいに清らかだったんだもの」

マンション上層階へと吊り上げられる振動も殆ど無い、静かな密室で。ユイは囁いた。

「はじめては、うちのシンジ」

何がとは、他ならぬユイなら、確認に問うまでもない。
中二のこの歳になるまで鉄壁のガードを誇ったアスカが、肌を許した異性。
日常に起こりうる罪の無い接触の域に留まらず、明確な肉欲でもってアスカの素肌を探り、官能を呼び覚まし、その徴を彼女に刻んでいった男性―― その経験以外にない。

「……それからムサシ君、ケイタ君」
「ああっ」

羞恥と屈辱に身をよじる美少女は、続けられた二人の名に激しく首を振った。

「あいつらには、あいつらには許してないわ。あいつらが勝手に、勝手に……触ってきただけよ。ア、アタシは……!」

ただ必死になって否定を繰り返す。
シンジにだけ、そう事ある毎に口にしてきたアスカだから、譲れない一線なのだろう。
それ以外の者の指と唇で愛されることがあっても、ユイのような同性ならばともかく、男のものを受け入れるわけにはいかない。
それが、ずっと守ってきた恋心を守るための絶対条件。シンジへの想いに証を立てる唯一の術だと、そう考えているのに違いない。
ムサシやケイタといった少年達と“レッスン”を共にして、恍惚の声を上げることがあったにしても、だから認められず、認めようとしない。
この愛しい少女に、素晴らしい性の秘蹟を伝えんとするユイには、意固地になってしまっていると残念に映りさえする。

「ここで、ここでよ……?」
「やっ、あっ」

紛れも無い悦びの蜜汁を垂らす内股へ吸い付くような手のひらを這わせ、その奥についと指先を伸ばし、ユイは告げた。

「男の人と繋がるばかりがセックスじゃないの。教えてあげたでしょう? 女の子の身体はどこでだって愛を感じ取ることができるのよ。それこそ、視線だけでも。ムサシ君もケイタ君も、ちゃんとあなたにセックスの素晴らしさを教えてくれた筈だわ」
「そんなこと……」
「気持ち良く、してもらったわよね? あの子たちにも、ちゃんと」
「…………」

全てはユイの見守る前で行われたことである。
卑しいポルノモデルのようにシンジと少年たちの前でスカートを捲り上げ、デジカメに撮影させながら濡らしてしまっていたことも。
更にはそれだけに留まらず、ライバルの少女達に煽られるまま下着をも脱ぎ捨てて、剥き出しの性器にムサシやケイタの代わる代わるの覗き込みで息を吹きかけられた―― それだけで立っていられなくなるほど、下半身を蕩かせてしまったことも。
お尻だけを丸出しにしたレイと共にお互いのアヌスを清めあい、刺激しあって、シンジ相手の指使いを学ぶ最中、実践によるお手本をと称したムサシたちに、後肛への指ピストンの気持ち良さを教え込まれてしまったこともあった。
そういったアナルプレイのような意識上の敷居が高い“レッスン”に臨む場合に、緊張の解けない二人へのアシストだからと言って、念の入ったペッティングを施されてしまったことも、もう一度や二度ではない。

分かったでしょうと、これ以上を否定しきる退路もないアスカに畳み掛けるかに、背徳の導き手が愛撫のまさぐりを進めさせる。
カーディガンの胸を覆う手は上着から引っ張り出す勢いで露出乳首を摘み上げ苛め、そして挟んだ指の腹でくにくにとこね続けていた。
少女の急所を襲った手は、じっとりとしたクロッチに皺とスリットを探り、淫核のあるかないかのしこりをピックアップ。指先に転がさせる感触をくりゅくりゅと育てていた。

「だったら同じことよ」
「あぅ……ッ、おばさ……ぁ、あ、あ……」
「今日の人たちも、ね。熱い眼差しを注いでくれて、あなたの乳首を可愛がってくれたでしょう?」

視姦による悦び。得てなどはいなかったと、確かな興奮の徴を暴かれ『あっあっ』と喘ぎも忙しなく蕩かされてしまっているアスカに、否定はできない。
それこそ嘘だ。誰だって騙すことは出来やしない。
―― 自分でさえも、だ。

「……それに、アスカちゃんのオッパイをとっても柔らかいって褒めてくれてたあの人。私の胸でも喜んでくれてたけど、あなたの乳首に、この可愛い蕾ちゃんにさわれた時が、一番嬉しそうだったわ。それが、あの人とあなたの今日のセックスだったの」
「そんな―― ンッ、んんンッ。ンンン……!」
「あなたとのセックスで、あの人はきっと幸せな一時を過ごせたわね。もちろん、アスカちゃんにとっても、素晴らしい一時だったでしょう?」
「アッ、ああん!」

強くクリトリスの辺りを揉まれると、のけぞった喉が年上の女性の胸で一際高く咽びを吐いた。
火照った肌の発汗に混ざって、立ち上る中学生少女の瑞々しい蜜の薫り。
目的の階に到着したエレベーターがドアを開けると、吹き入った新鮮な涼風がかえってその甘ったるさを際立たせる。

「今日一日分、随分いっぱいの男の人たちと、アスカちゃんはセックスの勉強が出来わ。……だから、今のあなたはとっても素敵――

息切れにも似た悩ましい声を洩らし続けるアスカに、うっとりと注ぐ眼差しは一時も逸らされることなく。恋人同士かに見紛わせる重なり合ったシルエットで、二人は動きを止めた箱からまろび出た。
よろと足取りの縺れるアスカを抱えるようにして、ユイがアスカを「碇」の表札の掛かった部屋までを導いていく。
その間もスカートの下にくぐらされた手は少女の淫核揉みに夢中になっており、片側にしかユイの愛撫が与えられない乳首には、アスカ自身の朦朧となった手付きが対となって添えられていた。

「はあっ、あっ、ああんッ、ンアアァァァ……!」

少なくとも通路でだけは、辿り着くまで部屋の外でだけはと拳を握り締めていたアスカは、通い慣れた碇邸の空気をかいだ途端、切ない絶息でアクメを迎えた。
そのままスカートも乱れきったまま、玄関から上がった廊下にうつ伏せのお尻を震わせて伸びてしまう。
そして廊下の板張りに押し潰してしまったむき出しの乳首で、また立て続けの愛らしい悲鳴を響かせた。

「ああーっ、あっ、ああっ。胸ぇっ、むね、アタシのちくびがぁ……ぁ、信じられないぃひぃいい!!」

床の冷たい感触にいじめられただけで。たちまち二度目に向かって、刺すほどの鋭い痺れが背を弓なりにさせる。
乳首がこんなに好くなるなんて、そんなこと知らない。経験したことが無い。

(……う、嘘ッ。こんなのっ、まるでアソコを……ううん、クリトリスを責められたって、こんなに、こんなには……!)

こういきなりは、意識が跳んでしまいうになることなんて無かったのに、と。
怖いとすらアスカは思った。
自分でも信じられないほどに全身が敏感に、発情してしまっているのだ。

―― では何故。その理由を想像することは絶望ですらある。
原因たりえるものは唯一つ。他に思いつくものが無い。
援助交際の相手を歓楽街で見繕うバカな娘達だってやりはしない、乳首露出の浅ましい姿で街をうろつき、たっぷりと視姦されたことに……自分は興奮してしまっていたから。だからなのだ。

(アタシ、ほんとに……変態に、露出狂の痴女に……なっちゃったの?)

そうに違いない。なんと言うことなのか。
ああと、アスカの心は情けなさに呻いた。

「ふふ。ずっと我慢していたのね、アスカちゃん。でも、もう良いのよ。今日はよく頑張ったわ……」
「おば、さま……。ああっ、あたし、どうして……?」

訊ねたかった言葉は半分も形にならなかった。
乳首絶頂の甘美な余韻にひくひくと、すっかり虚ろになってしまっているすぐ隣に跪いて、ぽつり、

「……私もね、我慢していたのよ」

無防備に喘ぐ小柄な背中へ、ユイが呟いたから。

「ああ、なんて可愛らしい乳首ちゃんかしら……」
「ふわぁぁ……ァ、おば、さまぁ……、ぁぁ」

振り返らせて、『チュッ、チュ』と啄ばむように両胸を吸ってくる唇が、なんでこうも頭の中を真っ白にさせてしまうのか。
くたりと、アスカは完全に手足から力を失ってしまった。
ユイがゆっくり仰向けに寝かせ直して、覆いかぶさって来ても、まともに声も上げられない有様だった。

「道の途中、あなたが顔もここもすっかりピンクにしてしまっているのを見て、何度、このままキスして吸ってあげたいと思ったことか……」

素敵よと、妙齢の美女は繰り返した。
きっと、視姦される悦びに目覚めて、そのおかげでまた―― あなたの魅力が引き出されたのに違いない。
そう告げる声にもボウッと焦点を失った眼を返すしかないアスカを、情欲に昂ぶりきった淫堕の貌で見下ろして。

「私が男だったら、きっと今のアスカちゃんに挿れたいって思ったわね」

目尻をとろんと、蕩けきったユイの黒い瞳がまるでその闇の中に吸い込むように、組み伏せられたアスカを映していた。

「おちんちんを刺し込んで、何度も何度も可愛い声を張り上げさせてあげて、そして赤ちゃんの素をいっぱい注ぎ込んであげたいって」
「あ、ああ……」

狂気すら窺える。このひとは、私をどうしてしまうつもりなのだろうと、怖ろしく。
ただ、慄えているしか出来ない。

「赤ちゃんを……産ませたいって、きっと願ったわ」

『アスカちゃんの、ここを―― 』と、倒れた拍子の乱れのまま半ば以上めくれてしまっていた裾から、太腿に、ショーツのサイドが掛かる腰に、そして向き出しにされたお臍周りのすべらかな腹部に、手が差し伸べられていって、

「ここをぽっこり膨らませてしまうくらい、いっぱいザーメンを注いであげたいって。……女の私でも思うもの」

耳に先ほどからトクントクントクンと、鼓動の異様な高鳴りが気になってならない。そんな全力疾走の後かの勢いで火照る肌の上を、はっとする位に冷たい手の平でゆっくり撫ぜまわされる。
アスカはその、ユイが愛でさする手付きの下に、沸々と燃えて蜜を溢れさせている己が子宮の存在を強く自覚した。

(あ、赤ちゃん……。赤ちゃんが、セーエキで……セッ、クス……って、セックスって……)

圧し掛かる熟女はアスカの下肢を割り開き、彼女がうわ言で口にする通り、男女の交媾を行うような姿勢に腰を押し付けてきていた。
重ねられた胸では、お互いの上着に開けられた穴から飛び出る乳首同士が、ぐにゅくりゅと密着とすれ違いを繰り返している。

「ひぅン、んふゥっ! ぅ、おばさまぁ……ぁ、おばさまぁァ……」
「あ、ああ、アスカちゃん……!」

犯されると、ダイレクトに意識させられるポーズだった。
びしょびしょのショーツ一枚張り付いただけの陰部同士、ユイはピストンの腰使いを開始している。
猛烈な相互摩擦がラブジュースを絞り出してはまた薄布に吸わせるが如き『ジュッ、チュ、ジュッチュ、ニチュ……』といった濡れ音で、美女と美少女の二人を更なる悩乱に追い上げていく。

「だって……ッ、今のアスカちゃん、オッパイの先っちょもこんなに熱く……っフッ、ふぅンン、ン! と、トロトロにしちゃってるお股も、とっても……とっても……ぉあああ、あ、美味しいんだものぉ……ッ」
「んアッ、アッ、おばさまっ、あ、アタシ……ぁァ、あつい、熱いのアタシ……ちくびが、アソコがぁッ、ぁあああ……!」

犯す、射精できたなら、孕ませてしまいたい。
そう告げて、玄関先からベッドルームに移るのすら待ちきれないレズビアンセックスを仕掛けてきたユイに、こうやって抱かれていると、

(あ、アタシって、もう……昔のあたしじゃ、ないんだわ……)

確実に三度目のクライマックスに誘われている躯が、複雑ながらの納得をアスカに飲み込ませるようだった。
露出行為に乳首を硬くして、そして股を濡らしていたことについても、否定しようという気概―― 気力が、子宮を燃やす官能の前でドロドロに熔かされていく。

「ふわっ、あっ、おばさ……っンッ、は、はげしッ」

がに股になってユイの腰のぶつけを受け入れている、浅ましい姿を思う。
これがどうして淫乱でないと、女同士も平気な変態でないと言えるだろうか。

「あっ、ああっ、あっ、あっ……イクっ、い、イきそ……っ。ちくび、いいから……」

つい今しがたまでは口に重たかった素直さが、すらっと滑り出た。

「いぃひ、ぃ、イキそうなのっ、おばさまぁ……!」
「ええ、ええ……私も、わたしももう……」

ペニスを刺し込んでみたいのだと言っていた。
そして精を注いで、妊娠させてしまいたいのだと。
長い睫毛に過ぎた快楽の涙を散らし、一心に目を瞑って自分との擬似交媾に浸っている。その美しいひとの貌は、気持ちよさに霞んだ視界では、廊下の照明が逆光に浮かばせる輪郭だけの、黒い影だ。

(し、シンジ。シンジも……あたしを、アタシを……っ?)

重ね見た幻の面差しは、更にライバルであるレイにも、霧島マナにも、そしてあの気に入らない少年達のものにも変わっていった。
ムサシに、ケイタ。あいつらも、私と躯を繋いで、膣に挿し込んだペニスから白濁をしぶかせたいのだ。
ドロドロと滾る精で、ヴァギナから逆流するほどお腹の中を一杯にしてしまいたいのだ。
きっと、

(あ、あたしを、妊娠、させたいって。赤ちゃん孕ませたいって……!)

キモチイイの一言だけが果てしなくリピートし、混濁していく世界。
秀麗な天才少女の美貌を白痴で歪ませ、瞳を裏返しそうなほどの陶酔に眩む彼女がその瞬間に見ていた相手―― 自分を犯す、セックスの相手が、誰だったか。誰を見てしまっていたのか。
潤むサファイアの双眸から涙があふれ出た。

「ハァッ、アッ、シンジっ、ごっ、ゴメンっ。んんんんっ、んンァ、アアアア―― !!」

自分でも何を言っているのか分からないまま、ユイと固く抱き合って絡めた下肢を揺すりたてていたアスカは、玄関の厚いドアすら突き抜ける叫びを残して、そして満たされた気だるさに身を委ねていった。



◆ ◆ ◆

「ハッ、ハッ、ハッ……」

わなないた一拍を置いて、もう一人分の荒い息遣いが頭の横へと崩れる。
嬌声を重ねてクライマックスを迎えていた美夫人だが、それでも年下の華奢な少女への配慮は忘れていなかったらしく、汗まみれの体をどかして、二人気だるく廊下に並び転がる形となっていた。
手を伸ばして、顔に張り付いた前髪をよけてくれる。
そのまま優しく頭を撫ぜ、髪を梳いてくれるのは、“レッスン”の度にシンジたちに念を押していた後戯のマナーを実践しているのか。単に思いやりを示せる余力があるからなのか。
それが「大人の女」なのだろうかと、アスカはぼんやり考えた。

帰り道での異常な緊張状態からすぐさま入れ替わるように、これも異常なほどの興奮に誘われて及んでしまったレスボスの交情。
シンジのものに穿たれて満たしてもらったわけでもなく、性器に与えられていたのは、何も知らなかった頃の自慰とさして変わらない刺激だけだった筈だ。
それでも自分は、かつてなかったほどの昂ぶりで絶頂を見た。

―― 何故だろう。
―― やはり、なのだろうか。

ユイに導かれ、深い性愛の世界を垣間見るたび、わけも分からない反応を示す自分に戸惑わねばならなかった、その怖れ。
自分はこうではない筈だと思いたいのに、常にユイに暴かれて、現実には裏切ってくれる。そんなカラダ。
おぼろげに手にした一片の納得をそこに当てはめてしまえば、明日からはもう、理解できない不安からは解放されるのだろう……。

頬に当たる板張りが、薄寒くも心地良い。ユイの体温が残した余韻が甘ったるく、寝そべった端々までを覆っている。
そのまま身を任せていれば、帰宅したシンジが目を丸くするまで眠っていてしまいそうな、そんな途切れ途切れの意識の中、

(……ヘンタイ、なんだ。アタシ……)

そう思うことは、ひどく物悲しく、そして幾らかの安堵を得られることだった。




 

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Original text:引き気味
From:『INNOCENT TABOO』 寝取られ風味、淫乱美母ユイスレ3