畜類め、繁りやがれ! 11

Original text:LHS廚さん


 


------------


漆黒に近い道をアタシは走る。

赤い非常灯と行き着く先にあった明かり。

包帯を巻かれた初号機……その眼はどこに居てもアタシを見ている。

リツコの説明。

半分だけ引っ張り出されたエントリープラグ。

皆の叫びを無視し、底の部分にある非常ハッチを開ける。

正方形のハッチが水圧に負けて吹き飛び。

中からシンジが出てくる。

エントリープラグの部品によって首を括った状態のシンジが。

皆が声をそろえて叫ぶ。 『何故殺した?』

アタシの絶叫。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

第十四使徒戦より四日目。


「……アスカさん、アスカさんってば!!」

……夢?

―――――――――――――――――――――――――――――――――

初号機が固定された第5ケージを正面に臨む予備作業管理室。

あの日以来。
アタシ達の誰も、ここからは離れることが出来ない。

気味が悪いと承知しているのに。 あの『眼』の届く範囲から離れられない。

「マユミ、御免……変な夢、見ちゃって」
「先程、リツコ博士とマリイさんが第二の病院からお帰りになられました」
「『マリイ博士がこの前の使徒に汚染されてないか、確かめさせろ』……か。
 全く。 デコ娘だってここに居たい筈なのに……。 結果は?」
「全部のテストが真っ白、だそうです……戦自の方々から庇われたんでしょうね。
 マリイさん本人より、リツコ博士のほうがかなり憔悴してましたよ」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――


「心当たり、あるの?」
「多分……零号機にはレイが、弐号機にはアスカが乗っているだけだったからよ」
「?」

「マリイ博士、彼女にとってレイ、アスカの二人は恋敵で仲間、友人。
 それなら、初号機には誰が乗っていたの?」
「あ……恋焦がれるシンジ君がいる!」
「可能性と考察を基に考えれば、多分そういうことよ。
 使徒は人の心を知ろうとしている……この前貴女が査問で言われた通りかもね。
 その気持ちに使徒が感化された……そういう事なんじゃないかしら」
「なるほどね……ありがと!」


ミサトが胸の十字架を握り締めた時は、自分の行動に自信を持とうとしている時。
どうやら納得したみたい。 その切欠として与えられたのが本当の答えではなくても。


にこやかに作戦部ちょさんが出て行った後。
隣で眠る若き博士を見ながら、私は一人思う。


『本当は……多分こうなのよ、ミサト』


 エントリープラグを抜いた瞬間に急に参号機がおとなしくなったのも。
 参号機の中に居ながらこの子が使徒に汚染されなかったのも。

 全部、『彼女』のおかげ。


 でも、彼女は一つだけ我侭をやった……それが、貴女が疑問に思っていた事。

 参号機の中の彼女が、ユイさんを求めたのよ。

 使徒に汚染され、もうすぐ自分が破壊される、殲滅されると理解したから。
 だから、『シンジ君』じゃなく『自分の飼い主』との最後の逢瀬を。
 使徒の行動をねじ伏せてまで『山岸カズミ』は求めたの……多分ね。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

洞木家の三姉妹の内、一番年上の姉は戸惑っていた。


「エスカレータを降りて右に曲がって……右の壁に【G14】の字を確認したら……」
「ね、ねぇ、本当に判ってるんでしょうね?」
「あね、五月蝿い……三つ目の赤のラインにそって……三ブロック……と、動く歩道に」


「架け橋」歩道群。


「うわ、凄い、底が見えないわ。 ……一番底まで」
「だからあね、五月蝿い……通路の番号は『31−6−975』……間違いなし」


―――――――――――――――――――――――――――――――――

予備作業管理室。

「う……皆さんお風呂入ってきた方が良いんじゃないの?……今日なんでしょ? シンジ君の……え、えぇっと……」

コツ、コツ、という音。
この音を出すのは確か……。

「サルベージ、ですわ。 初めまして、洞木コダマさん。
 まぁ、わたくし達もお風呂へ行きたいのは山々なんですが。
 自然に出て来てくれるんじゃないか、と思えてしまうんです……約束ですから」
「約束?」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

『それでは皆さん、個別の写真は全員取りましたし、いよいよ本題の『集合写真』です』
『良いのかなぁ……僕だけ服を着てて』

『そこまで言われるなら……脱いじゃう?』
『え?!』

『まぁ、確かに私達が裸でシンジが服着てる、って言うのも……』
『不公平、って言うならアタシ達と一緒になってもらって』
『あの二人剥いた時みたいに、剥いちゃおうか』
『え? え?! 剥いちゃうんですか?!』

『……早くしないと貴方達は学校あるんだし。 私も仕事、始まっちゃうんだけど』
『『それもそうね』』

『ははははは……もう』

『その代わり、といっては何ですが……約束してくださいまし』
『何を?』

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「皆さんの目の前で約束して頂いたのですわ……。
 『自分で考えて、決めて、そして…わたくし達と、一緒に……生きましょう』って」
「……あのバカが……臆病で、自分では何も決められなくて、夕食の献立から何から
 なんでも他人に任せていたあいつが、言ったんだから……」


電源が切れて外の画像が見えなくなったエントリープラグの中で、
勇気を振り絞ったようなアイツの声が、確かに聞こえたんだから。
加持さんみたいに、カッコ良かったんだから……。


『僕はEVA初号機のパイロット、碇シンジなんだぁぁ!!』

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――


  第二発令所。


プログラムにあるたった一つのバグ……それも、意図的に作られた。
これが動けば……彼は死ぬ。
その思考に『外に出ようとする』方向性を与えるはずのプログラムは。
彼に意図的な思考のループを生み出させ。

……搭乗者「たち」を、EVAから出せなくする……それは、『二人』以外には死と同じ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

『まさか、そこまで驚かれるとはね』

眼を真ん丸にして、口を微妙に開き、呆然とする彼女は。
年相応な少女のものだった……。

『何故、ですの? 失礼ながら司令さんは……不能?』
『いいえ? 良いも悪いも……純粋に、「女として見なかっただけ」よ。 つまり』
『何故それでもいい、と思われますの?!』
『自分でもよく判らない。 でも、納得できたのよ。 一時は。
 私を『赤木ナオコ』の娘と知ってて、それでもそう扱ってくれた。
 ……つまり、親の七光り……を感じなくていい付き合いだった』

眠っていたシンジ君が私の手をむずがりはじめた。
動かすのは止める……でも手のひら自体は彼のつむじを覆ったまま。
こんなところも、父親そっくり。

『加持君はいい男だった。 私を『赤木ナオコ』の娘とみようとはしなかった。
 その事をちゃんと知ってたのに……その代わり、『ミサトの親友』としか、ね。
 でも、私をちゃんと見てくれてた。

 司令は私にその事を意識させることさえなかった……ただし、視界にすら入ってなかった。
 彼の眼はユイさんにしか向いてない。 だから私を』
『自分のモノにすらしなかった……ユイさんが自分のであるのと同じで自身もまた……』

『では、何故シンジさんに惹かれ始めてますの?』
『彼は、私に興味を持っていない。 でも、それは私を知らないから』
『つまり、自分色に彼を染めるつもりですの?』
『と言うより、染めて欲しいのかもしれない。 誰かに『征服』された方が楽だから』
『司令さんの色に今の貴女は染まっている、とも言えますよ?』
『だったら……少なくとも、『女として』抱いて欲しかった、と言うのは変?』

当然と言えば当然と言える問題に、はっきり答えられる経験を彼女は持っていなかった。

『……それは』
『もう疲れちゃったのよ。 そういう意味で主張しようとし続けるのって。
 加持くんはどこまで行っても『ミサトの男』。
 司令は私を自分の行動の付属物としてしか見ない。
 本部の皆……が見るのは『技術主任・赤木リツコ』。
 時田とか言うあの男が見ていたのは『NERVのヒスおばさん』……。
 彼なら……』

―――――――――――――――――――――――――――――――――

全裸で〔彼ら〕の元に引っ張り出された二人。
年上の彼女の髪には、もう以前の色は無く……東洋人らしい艶やかな暗めの茶色に戻っている。

[君達に対する陵辱の数々]
[我々もこのような事は望んでいないのだがね]

『私は知ってることしか話せませんが?』
『同じく、ですわ。 少なくとも、アメリカ支部以外は殆ど知りませんが』

[強情だね]
[だが、君達を我々の元に差し出したのは]

『碇司令、だと言うことはわかっています』

[ほう?]
[では尚更、彼に義理立てする必要はあるまいに]

『(小声)義理立て……違うわ。 諦めがついたのよ』

[何かね?]


『……いえ。 知っている事だけなら、普通に説明します』

―――――――――――――――――――――――――――――――――


サルベージ当日・第二発令所。

「姉、やっぱりここにいたんだ」
「……うん」

「コダマ姉、来てるよ?」
「バレンタインデーの事、みんな気にして無いのに」
「マリイ姉もマユミさんもアスカさん達も…もう良い、って言ったじゃない」

「そこまで落ち込むなり、罪悪感を感じるのなら、お茶でも下さいますか?」

「マリイ(姉)さん……」
「気がすむまで考えるのは良いのです。 でも、今の貴女は悩んでるだけですわ。
 何日掛かっても後悔だけで考えていない以上、答えは出ません。
 レイさんのように気分を改めて……そのレイさんは?」
「さっき呼ばれたの、司令さんに」


―――――――――――――――――――――――――――――――――
執務室。


「……なんだと?」

私が知っている限り、驚愕の意味でこの人が席を立つのは、初めて。

「お前が私の庇護の元から離れられると思っているのか?」
「はい」

今まで信頼を感じていたこの人の表情が。

「シンジを受け入れてどうなる。 お前が私以外を求める必要は無いのだ」
「彼は私を求めてくれました。 『私』はそれで十分です」

かすかな恐怖と、沢山の『他人』という意思を伝えてくる。

「お前が、シンジを受け入れる必要は無いのだ」
「それを決めるのは『私』。 もう、司令ではないんです」

この人は『私』を求めてはいない。
なにより。 変わらなければいけない存在は『アスカ』だけじゃない。

「お前は……お前は……ユ」
「いま、知らないのは彼だけです。 シンジくん以外の「メンバー」に話しました。
 地下の水槽……私になれなかった『私』の事、『彼女』との関係……そのすべて」
「「何?!」」
「新しい絆、みんなは全てを知った上で、受け入れてくれました。
 受け入れてもらった存在は……『彼女』じゃない」

だから、その先は言わせない。

「受け入れてもらったのは……この私……『綾波レイ』です!」


そう一言叫んで、退席した。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

少し青みがかった映像の中。

総司令執務室の前で。

綾波レイは泣いていた。


『何があったの?』
『自分が信じられなくなったんです……怖いんです……赤木博士』
『何があったの?』
『つい最近まで絶対のように信じていた人に、嘘をついたんです。
 「私の本当の姿を、彼女との事を皆が知っている、それでも受け入れてくれた」って。
 あの人が私を見てないと知った時からの、黒い気持ちを、叩き付けてしまったんです……』

泣きじゃくる幼子を抱きしめる大人。

『なら、あなたは元に戻りたい? 「三人目」になったら……』
『いやです! それでは『私』では無くなってしまう!』

白衣の襟をしめるようにつかむ幼子。

『それに、私は誓ったんです!「司令の聖杯」にはならないって』
『なら、その思いを受け入れるしかないの。 純粋な人間にやましい事の無い人間は居ないと言っていいの。
 私だって、司令とのしがらみを捨てるまでは……あなたを邪魔だと思った時もあるのよ。
 人形だとか、人じゃないとか、色々に理由をつけて、私のほうが異常なく「上」だって。
 でもね、そんな黒さも受け入れる努力をするのが人間なの。 ……だから』

姉のような、母親のような表情で。
『大人』は。

『その思いと想いが自分自身のもの、自分だけの物と思うなら。
 今のあなた自身がそんな自分を必要と思うなら。
 貴女が……『今の綾波レイ』が……きめるの。
 だからこそ、貴女が自分の意思で受け入れて、乗り越えなさい』

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

最初にこれを見つけたのは『母』の中にあった『バカヤロー!!』を回収したときだ。
まさに、その真下に隠されていたもう一つの紙にあったの。 あのコードが。

『裏コードより強力よ』


この一言とともに書かれていた『蟷螂の斧』と言うアカウント。

MAGIに登録されている全てのアカウントに付けられている束縛を総て無視し、
如何様にもデータをいじる事が出来る……おまけに、そのアカウントの通り道を追跡しようにもMAGI自身がその痕跡を作業した端から削除していくという、まさに最終兵器のようなadministrator権限。

どれほど強力かと言えば、これが在ればMAGIの完全初期化も可能なのだ。
(MAGIの破壊は、流石に難しいようだけど)

勿論、それが出来るのは本部のMAGIだけ。
仮に実行したとしてもすぐに松代のバックアップが補修してしまうでしょうけど。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


私は、知りたかった事を一つだけこのアカウントで調べることにした。
母が、ユイさんのサルベージプログラムに仕掛けをしたのかどうか。

 

……結果は、黒だった。
それが、今私の手の内にある。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 


「どこ」ともいえない場所。

--


『良いじゃない、アンタは十分頑張ったわ』

……そう、なのかな。

『今の鈴原さんは理解してくれたようですが。最初出会った時、あなたを殴ったそうですね。
 つまり、貴方を理解しない人達にとって、貴方と使徒はさしてかわりません……。
 大切な人を傷つけたこと、そういう存在であること自体は変わらないのですから。
 そんな見方も確かにあるとは思います。 でも、彼らはいくらでも狡くなれるのです。
 「パイロットに選ばれたのだから、貴方が自分達を『傷つけずに』守る事は当然の義務」だと……自分勝手に。 あの日いきなり……貴方は乗せられたのに』

……そうだけど。

『本当に嫌なら還る必要なんて、ないんです。 ボク達が傍にいますから』
『だから安心してもいいの。 ……それは『私』に心を預けること……気持ちいい事に』

気持ち、いい事……?

『だって、ノゾミちゃんからあたしまで、貴方が教えたことなんだもの』
『好きな人と……とても気持ちよくて、大切な事を教えてくれたのはシンジだよ』
『私達は貴方の物……マリイさんも言ってたじゃないですか』

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

第一層。(MAGI各端末の周囲で)

「私って、なぜ呼ばれたのかしら?」
「保護者ですよ。 ノゾミちゃんはここにいる事自体、異常と言うべきですから」
「その事もだけど……私には、アスカちゃんやシンジ君があんなのに乗る事も、 妹がその仲間の一人になるかもしれないという話自体からおかしい、と思うけど?」
「ですが、誰かがやらなければならない事なのです……非常に残念ながら」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

最上層。

「……まだレイは彼女達に『事実』を伝えてはいない、と俺は考えている」
「……」
「だが、忘れるな、碇」
「……何だ」
「この『嘘』は簡単に『真実』に出来る。 レイの意思で」


―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

……結果は、黒だった。 その手段が、今私の手の内にある。

ユイさんが求めているのは『知識』……というより『刺激』。
それなら、手に入る刺激がすべてありふれている物だったら。

思考に必要な経路をすべてループさせ、他からの刺激をすべて排除する。
バグを基にしたのか、意図してプログラムしたのか。
そして……本当にこれが使われたのか。
もし母が本当に……これを使ったのなら。  あの自殺にも、ある程度の答えが出せる。

どちらにせよ。 これはもう。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
 

手元にあるPDAに映る文字。
今は亡き『おんな』の誘惑。

Do you execute it ?

 

勿論。

「NO……と」
「何か?」

疑問を向けた後輩を軽くいなして。

私は言う。

「作業開始!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――

真っ白な、世界。


皆がいるのに、そう思えない世界。

そこに、太陽みたいな穴が現れて。

虹のようなものが流れ込んでくる。

でも違うのは。
色の数が七つじゃないこと。
僕にはとても、眩しい、そして嬉しさを感じさせる光だった。

赤い光は怒ったみたいに気持ちを叩きつける『バカシンジ!』
緑の光は母をイメージさせる優しさの『シンジ』
蒼の光は透明な感じがする『シンジ君』
琥珀色の光はかなり控えめに『……シンジさん』
茶色の光は茶目っ気たっぷりに『シ〜ンジ♪』
一番細い白金の光は宝物を見せるように『シンジさん』
色が無い付き合いが短い分、さらに光ろうとしている白い光は『シンジさん!』

光の糸達は時に共同、時にじゃれ付くように邪魔しあいながら、それでも。
僕が見えているように、確実に近づいてくる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


  伸び始めている棒グラフ。
どう読んでも判らない表示の数々。

『作業をセカンドステージに移行』
『了解!』

作業が進んでいている、としか考えられない少ない言葉。

信じられるのは、茶髪に白衣のあの人の。

「早く出てきなさい、シンジ君……!」

彼女の一言だけだった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

先行して伸びてくる光にまぎれる様に。
三本の光がおそるおろる伸びてくる。

今までの光と違って、三本は色を変えたりして目立つ努力をしていたし、その流れにはルールが感じられた。

ピンクと藍色、ベージュの三色に変わる光は堂々と。
赤紫と濃い鼠色の光は興味いっぱいに。

三本の中、ただ一本……金から色を一度変えたっきりの……こげ茶の光はしずしずと。
でもその一本が一番、何かに気づいて欲しそうだった。

そんな中、最初の光たちがぼくに届こうとした瞬間。


幾本の光たちはいきなり進路を変えて、巻き取られるようにループし始めた。
後から来た三本も巻き込んで、僕の目の前で、くるくると輪を描く。

それはまるで、届かせてはいけない、と言う神様の意志が働いたみたいだった。

 


―――――――――――――――――――――――――――――――――


僕をにらみ叫ぶアスカ。
『アンタ』
電話機から聞こえるマリイの声。
『わたくしの』
がっつくアスカを見て呟くヒカリ。
『物』
ボトルにさしたストローをいじりつつアスカ。
『だから』
プリズム使徒の時、プラグスーツを着て立ち上がったレイ。
『貴方は』
プラグの中、壱中の制服ではない頃のマユミ。
『ここに居られる』

微妙に怒ったような微笑を浮かべるレイ。
『気持ち』
初めて学校に着た日、マユミに理由を話しているマリイ。
『一緒』
ボトルにさしたストローをいじりつつアスカ。
『だから』

 

一気に色が景色となって周りに付く。 朝日のように眩しく、鮮やかに。
中心に生えている、木の下に立っている、一人の女性。

『あなたは、ここにこれたの』

 

「……母さん?」

―――――――――――――――――――――――――――――――――


「失敗なんか、させない!」
「グラフを反転!」

緊迫度が増していくのが手に取るように判る。

音が無いだけ、ディスプレイの中にはっきりと見える泡。

妹たちが怖がるのを抱きしめるだけの、無力な私。


「みんな、こんなに貴方を求めているのに、何故、帰りたくないの?シンジ君……」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

白い筒に刻まれたとびら。

ぱきんと音をあげるように。
新しい声を産声としてあけるように。
羊水をこぼしながら、開いた。


山岸さんとヒカリは気絶した
アスカちゃんと霧島さんがなんで、とさけんだ
マリイさんがまだ取り戻せると信じなきゃ、と調べ始めた中。

白衣の彼女は『シンジ君!!』と叫んで部屋を飛び出していった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

吸い込まれるかもしれなかった、懐かしさと恐怖が入り混じった抱擁は。

『さぁ、私と一緒に……誰?!』


僕の手のひらにいつの間にか握られていたのは。
『暗闇使徒』の時に見た夢に出てきた、小さく赤い珠。
そこから伸びた

『あなたは……コさんの、……さん!』

あの、一本のこげ茶の糸が止めてくれた。
一瞬だけど触れた糸からは、『シンジ君!』と言う励ましのような気持ちが感じられて。


これが最後のチャンスだと思った僕は、精一杯の力を込めて、母『らしい』人の胸を両手で突いて離れた。
その力はどんどん加速が付いていって、あの大きな木すら、遠くなり、見えなくなって行く。

『そう……まだ、お預けにするのね……いいわ、あの子達を……』


―――――――――――――――――――――――――――――――――

ディスプレイにうつる、紅い、心臓のような珠。
博士がそこに取り付いて、こぶしを振り上げようとしたその時。

ずるりと。

彼は戻ってきた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

『私を、抱けますか?』
『なに?』
『私、母さんと貴方がキスしているの、みました』
『それで? 従わせたいなら無理やりでも自分の物にしろ、とでも言うつもりか?』
『少なくとも、今の私は、貴方に……』

―――――――――――――――――――――――――――――――――

L.C.Lと微妙によく似た、EVAの『体液』に濡れた髪。
滴が数滴付いた、男の子とは思えない睫毛。

「もしもし?」

あの時、しっかりと感じてた……ふっくらとしている手。

「おーい、リツコぉ?!」

視線を下に下げると、まだ充血していない、あれ。
司令のと、違うのは、当たり前として……これで、あの子達が

「いい加減にしろぉ!!」

すっぱーん! と資料を丸めた棒で叩かれた私は振り返り。

『『……』』

何対もの、嫉妬にくるまれた瞳と対面することになったのだった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

この数日、聞こえなかった音が再び聞こえるようになった。
本来その音を作らなければならない人物とは、微妙に違うけど。

「ヒカリちゃん、おはよう」
「お早う御座います、葛城さん。 すぐご飯できますけど、食べてから出勤しますか?」
「うん、そうするわ」

とたたたんとたたたん、っと妙に大きく響く包丁の音。
むすっ、としながら、それでもちゃんとそれぞれの席に座っている一同。

「箸の持ち方は、これでよかったです?」
「えっと、ですねマリ」
「あ、アスカさん、おかずの器を箸で動かすのは」
「無礼なんだよぉ」
「いーじゃないよ、これぐらい」
「……お豆腐のお味噌汁、おいしい」


理由は、何となくわかっている。 リツコだ。
昨日、今日と二日間にわたって検査日程をとっているのが、一昨日の……あの取り乱し様とあいまって。
……それに……まぁ、実質『お預け』になっているわけで。
『出来ない』ことに対するいらつきは、皆結構たまっているようだ。


それでも暴走、って言うか暴発しないのは……うん、餌付けの力は偉大だ。
まぁ、彼女自体が一番デンジャラスそうなのは、おいておこう。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


  洗面台にためた水でジャブジャブと顔を洗う。

顔を伝う水の冷たさと同じくらい、あの時はひやひやした。

 

恋する女は綺麗、と歌ったのは誰だったか。

ただ、この曲を創った人達は『嫉妬』は計算に入れてなかった。

本心からそう思える状態だったな……。


 

リツコが冷静さを欠くようになったのはあの旅館の時以来。
何かにせかされるように、シンジ君を求めるようになっていった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「シンジ君! 逃げちゃ駄目よ!!」

いつもの冷静が家出したらしい親友は、初号機の前まで何度かよろけつつも走って、
あの紅いコアに手を付いて……ロジックなんか放り捨てて殴り掛かろうとした。

「シンジ君をかぇ……?!」


拳を振り上げつつあげた、その叫びに合わせるかのように……シンジ君はポン、と出てきた。
最初から居た整備関係の技術部員も、あわてて追いかけた私やアスカ達も。
固体の中から人が出てくる、と言う非常識じみた現実に呆然として。

さっさと立ち直り、自分が着ていた白衣で彼をくるむリツコにも驚いて。

しばらく無言が続いた。


その静寂を破ったのは、シンジ君が握り締めていた、アルミ製の名刺入れ。
手のひらから滑り落ちたそれが、かちーん、と金属音を響かせたとたん、状況は一気に進展した。

アスカは真っ赤になった顔を隠しもせずに掴みかかろうとして、ぐったりした彼を前に戸惑い。
発令所に残った三人はスピーカー越しに「あぁぁぁ!!」とか「ずるぅぅい!」とかの三重奏。
マナちゃんは『がうがう!』と噛み付こうとする赤毛娘を抑えるのに必死になって。
最年少の娘はいきなりな修羅場にはらはら。
マヤちゃんを始めとする『興味』組はどきどき。
サツキやアオイ……『愛情』組はむかつきを隠そうともしない。

 

 そんな中、我関せずを通しながらも微妙に赤みを帯びた、今までの彼女とは似ても似つかない、まさに『恋する女』なレイがそそくさと。

パスケースを拾おうとして。  こけた。
中身からこぼれだす、数枚の防水加工された写真。

何が見えたのか、私は秘密にしようと決めた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

久しぶりな温かいご飯を口に放り込み。
鮭の切り身を箸で切り分け始めた時、葛城家の電話が鳴った。

まぁ、留守録をセットしてあるからとらなくていいか、と言う私の至福の時間は。


『あー、俺だよ、葛城。 シンジ君だけど、今日の学校とかが終わった頃に俺が送っていく事になったから。
 でさ、彼を下ろした後、一緒に呑みに行かないか?
 この前アスカと一緒に行ったレストランの主人がさ、いいワインを手に入れたって……』

この台詞が流れた瞬間。
ぶっ壊された。


ぎん!!、と。
期待と威嚇と脅迫じみた説得を篭った眼差しが注がれる。

「行ってらっしゃい、葛城さん」
「最上さんもお帰りになるでしょうから、思いっきり遅く帰ってきて下さいね?」
「って言うかさ、この部屋の保護者にサツキ呼ぶから今日帰ってこなくていいわよ?」
「ヒカリさんの話では確か、あの周辺はそういう意味での歓楽街、と言う話でしたわね」
「お互いカップルだもんね。 私達だけが楽しんじゃ、駄目だよね」
「……ノゾミちゃんのご飯も、美味しかったわ……」

 

微妙にずれた台詞が混じりつつ、私は自宅を追い出されることになった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


  とあるレストランを監視する我々のグループ。
業務用の冷蔵トレーラーを改造した車の中は、何時もと明らかに違う。

「なぁ、赤木博士が妙なのはやっぱり?」
「そりゃ、一昨日のあの行動を見りゃな」
「冷徹なキャリアウーマンがいまや恋する三十路……まぁ、なぁ」
「最近のシンジ君は女子の間で人気らしいし」

「最上二尉が早退したのって、まさか……」
「しょたこん、って話は聞いていたけど……」
「ええ!? 俺狙ってたのになぁ」

まぁ、こんな具合だ。
諜報部の車の中とは信じられないと言い切れる程に、今日のここはやかましい。
シンジ君の事に対する反応は、鉄の心で任務に集中しなければならない筈の我々の部署にすら、確実な影響をもたらしている。

「鳥居二尉は知っていた?」
「どっちを?」
「エリコちゃんが『シンジ君が赤木博士の恋の相手』だった、ってこと」
「正直知らなかった。 シンジ君に好意を寄せ始めたのはサツキとアオイ、後は……嘘?!」

カメラのズームに合わせ、くだけ気味だった面子が一斉に緊張する。
画像に写るのは、加持一尉と……葛城三佐?!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

加持さんの車で帰ってきたはずなのに、場所が変わっただけで、それ以外は数十分前と同じ。
サツキさんとアオイさんが台所でケーキを切り分けて、リツコさんがコーヒーを淹れている。

遠くで微かに聞こえるのは、ヒカリたちの家に、さらにその隣……リツコさんとサツキ……さんが同居することになった家をまた繋ぐ作業。


僕自身にとって、特に変わらない。 でも、他の人たちには異常すぎる状態。

「これが普通になってるって……すごく、怖いと思うな」

微妙に残る、体のだるさは。 三人の女性を相手にした、その証。

 


ドアの開閉音。

 

「いいコーヒーの匂いやなぁ」ってトウジの納得する声。
呆然としたらしい、少しの『間』があって。
どたどたどた、と二箇所から相次いで聞こえる足音。

「しーんじぃ……アオイとサツキはいいとして。何で、リツコまでここに居るのかなぁ……」
「隣に……引っ越してきたから」

「工事をしている、という事は四号室の住人となった訳ですわね?」
「……うん……」

少しの沈黙。
「そちら(台所)の三人はもう良いんですね?」という一方的な確認。
一斉に行われ始めるジャンケン。

一人一回で良いから満足させなさい!と言うアスカに引き摺られて、僕は部屋に放り込まれた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

センセのふすまが閉まると同時に、ぎゃあぎゃあと委員長たちの声。
「わーっ」とか「そこはっ!?」とか響かせるハーレム王の情けない声を背に。
それが別の意味に変わる前に、ワイらは葛城家を退散した。


「ハーレムってのは、男の夢って思ってたけどさ……本物を見ると、意外と怖いな」
「搾り取られるっていう感じなんやろうか。……干からびん事を願おうな、ケンスケ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――

「碇シンジ。 性別は男性……って当たり前のは皆ぶっ飛ばして」
「はぁ?」
「徒競走は2-A男女込み26人中男子としてはビリやったけど、クラスとしては23位。
 水泳は全滅……綾波が……教えてようやく10メーター……あの妙な泳ぎ方で。
 惣流が来る前にやった3.5キロの男子マラソンは……って、何や」
「やっぱり気になってたんだろ、綾波」
「う、うっさいわい! もう過去にしたんやからええやん」
「はいはい……それで?」
「確かあのマラソン、センセは三学年の男子67人中……」
「66位。 一人病気で不参加だから……実質ビリっけつ。 で?」
「あれだけ相手にしとるのに。 カスカスセンセのスタミナの元は? ってな」
「ネルフ印のって冗談は……。 また二人疎開したけど今なら記録のび……?」
「あ、あれ……」

てててててて、とバスケットを抱えて自分たちと逆の道を突っ走る少女。
沈みつつある夕日の赤に彼女の髪が染まり、とても映えていた。
クラスの誰よりも早く、大人への階段を真っ先に突っ走る……級友の妹。
もちろん行き着く先は。


「「大丈夫だよな、センセ(シンジ)の理性……」」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

エレベーターに乗る。
葛城さんの話の通りだと、このマンションには葛城さんたちが住む部屋と、姉達が住み始めた数部屋以外に誰も住んでいる人が居ない……らしい。
久しぶりに会えると言うこともあって、ボクの心ははしゃいでいるし。
何より見る人は居ない。

「よし!」

姉がやったと言うオールヌードはやっぱり恥ずかしいけど、それでもパンティを脱いで『写真を脱いだ、あの時のままでボク、生活してたんですよ?』なんていうのは、戸惑うシンジさんが見れて面白いかも。


そう思い込むと、そっと、ボクは姉譲りの腕を振るった料理が詰まったバスケットを下ろし、ごみ捨て用に用意しておいた小さい紙袋に一枚の布をつめた。
スカートがはねてお尻が見えてないかを確認した、その時。
エレベータが行き先に到着した際に感じる、あの妙な感覚とらわれながら、ボクはバスケットを胸に抱えて。

「いくら姉たちでも、こんな真昼間からしHちゃってなんかいないだろうし……。 これで一歩ぜんし……ん…」

二人の男の人と鉢合わせをした。

「え、あ、あの、き、君は……?!」
「洞木ノゾミですっ!」

気が動転したボクは、何故か自己紹介をして……相手の反応を見ずに、必死に葛城家まで進む。
覗かれてもいいか、と姉みたいに開き直って行動するには、ボクはまだ幼いみたい。
でも……ちょっぴり妙な気分になったのは、内緒。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


  あれから約10分。
あたし達がお茶を用意している間にも、あの部屋からは声が聞こえてくるの。
いやん、だとかだめぇ、とか、彼女達の声に主役が切り替わってしまってるけどね。

「そういえば、主任はシンジ君が初めてだったんです……よね」
「まぁ、ね……。 お尻以外入れてくれなかったのよ、『あの人』は」

がたたん!

よろける音にあわてて振り返る一同の目の前で、ノゾミちゃんが真っ赤になって突っ立っていた。
彼女の胴体がほぼ隠れる、かなり大きな竹細工バスケットを抱えたままで。

「あ、あの、おしりを使うのって、その、ぽ、ぽぴゅらーだったり、するのですか?」

その質問にきっちり固まる主任とアオイ。
あ……なるほど。
すっかり失念してたけど。本来なら『喰える』年齢以前の問題だもんね。
ノゾミちゃんがそこまでいってる事、思いつかなかったし、知りもしなかったのか……この二人。

「えっと、私よりも先に、どこまで行ったのかな、ノゾミちゃんは」
「っ?!」
「そこまで言っちゃったら、シンジ君と何も無かった、と取るのはかえって変ですね」

この後、時々もれる艶やかな何人もの声をBGMに、告白タイムになだれ込む事約一時間。


シンジ君は、ようやくあの小部屋から、幾つもの赤紫色の『愛された証』を引き連れて、やってきた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

シン、となった部屋から最初に出て来たのはアスカ。
暴走寸前になった頭を振り振りベランダの窓を開けに行って、そのまま涼み始めた。

次に出て来たのはヒカリちゃん。
真っ赤になって固まりかけた妹に気付き、世話をしようとする彼女の喉元に付くのは、なん、と言うか……微妙に手加減された鬱血。
多分、明日には形から『それ?』と責めるのは不可能になってるでしょうね。
ぐろっきぃマナちゃんは真っ赤になったまま、荷物の集められた隅っこへ。
マユミちゃんは……くぐもって聞こえる彼の声によると。
完全に潰れたらしくて、出て来ない。


一寸、怖くなっちゃったわ。
一時間で1、2、3、4……って、流れ作業じゃないんだし。
そんな扱いうけるのって……。


「……もしかして、一時間で全員の相手しちゃったの!?」


さすがにそれは無い、と身振りで答えるのはマリイちゃん。
その後ろを霧島さんがバッグを抱えながらこそこそとお手洗いへ。

「いえ、違いますわ、リツコ博……さん。 全員の相手は別の意味で出来ませんでしたの。
 ジャンケンの結果、レイさんとわたくしは休憩を彼が挟むまで我慢、あとマナさんが『始りました』ので……」
「……だから、気をやったのはマナさんを入れてとりあえず四人、彼が「入った」のは「三人」」
「でも、その三人をシンジ、きっちり満足させちゃったのよね……律儀に一人づつ、相手にしちゃって」

数分遅れでシンジ君が出てきた。
服を着る余裕も無いみたいで、そのままお風呂へ。

「マナちゃんも……皆揃って避妊には留意してるんだね。 こっそりピル手に入れて使ったりしてるんだ、って思ってた」
「この中で、いくら欲しいからと言って無責任に子供を……そう思えるものはいませんわ。
 わたくしだって、子供が育てられる可能性があるとすれば、知識というよりお金。
 つまり、その力で育児を他の人にやって貰う……という理屈だけです」
「そんな育て方は、いや?」

勿論、と殆どの頭が縦に揺れる。

「ボクだってそうです。 だから、シンジさんとの関係は、えっと……スマタ、でしたよね。 あそこまでなんですから」

―――――――――――――――――――――――――――――――――


  もぐもぐもぐ、と口が動く一同。
タッパーに伸びる、とりわけ用のスプーン。

「ノゾミちゃん……このゴマご飯、美味しい」
「あーレイさん、ご飯と言うのは炊きたての純粋な白米にだけ与えられる称号ですわ。
 今回のようにゴマ等を混ぜたり、一度でも冷ました物は全てメシ、と言わなければならないと」
「まぁまぁ……マリイさんもそう言う事を考えずにご飯食べよ、ね?」

気絶している二人は取り敢えずそれぞれの部屋へ(体はちゃんと拭いてあげた)。
で、シンジ君とあたし、ヒカリさんとマナちゃん、主任とアオイ、レイちゃんとノゾミちゃん。
それぞれが居間に置いたコタツ型テーブルでノゾミちゃん持参のバスケットの中身、ゴマ飯(?)と御味噌汁等の夕食と相成ったわけだ。

シャケの焼き物も美味しいし、御味噌汁の香りも、まぁ、良いんだけど。
ただ、ねぇ。

「……しかし、そう言われましても」
「喋りでもしないと、その……」
「最初というか、結ばれている時はそれ程という事も、無かったんですが……」
「……ごめん。 あの部屋、換気扇とかも無いから、その、籠もっちゃって……」

シンジ君の部屋から漏れ出て、この居間全体に微妙に漂って来る「男女の臭い」。
彼の部屋は元々納戸……物置のような使い方をする部屋だったわけで、当然換気扇のような物はなく。
数分で根負けしたあたし達は、三号室……マナちゃん達の家に移る事にした。

「まぐまぐまぐ……」

レイちゃんだけは、別に問題無かったみたいだけど。


 



Menu


From:ハーレムエロ探求スレッド