畜類め、繁りやがれ! 09

Original text:LHS廚さん


「飲んでなかったぁ?!」
「コップ落としたからもしかしてって……後ろから……」
「何で教えてくれなかったの!」
「いやだから、一口いったと思ってたから」

ばっくんばっくんと動悸が収まらないあたしの前で、アスカちゃんとマナちゃん。

「トイレに行ってきた帰りに、気付いたんです。 その……『覗き』……に。
 私の行動も知っていると思って、まさか、こんなにも驚かれるなんて……」

しゅんとするヒカリちゃん。

「動悸、大丈夫ですか……あ、これお水です」
「すいません、隣の部屋へ彼ごと移動してればこんな事には……」

お水をくれたり、背中をさすって介抱してくれるノゾミちゃんと
おそらくメンバー中最初にあたしに気付いて……恥ずかしくて集中出来なかったらしマリイ博士。

気絶していたマユミさんが目を覚ました頃には。
快楽の解決と供給だけを願うあたしに正常な判断は出来なくなっていた。

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もう、いいや。 
その言葉が、全てを決めた。


なるようになっちゃおう。 毒食わば何とやらだし。
監視カメラ経由でマヤ達の『おかず』になってやろう。


『恋愛』とは……多分まだ言えない程度の『好き』だけど。

これからの数時間を使って『SEXから始まる恋愛』を実践してみせよう。

『燻ぶり』レベルにすら治まろうとしてくれない性欲を起爆剤にして、あたしは出鱈目な思考を壊れたままぶつけた。 彼の台詞に合わせて。


「僕らの関係、その……知っ「もう一人位、貴方の隣に入れる?」……え?」

 

そうと決めたら、後は実践あるのみ!
『そんな事でいいの』とか叫ぶ理性に蓋をしてしまうと、あたしはあっさり全裸になった。

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間違いなく、僕は混乱の極みだった。

「本気ですか?」 「うん」

だって、サツキさんとは仕事以外では全く付き合い無かったんだよ!
もし、相手がリツコさんやマヤさんなら、定時訓練中に、まぁ、それなりに話したりするから今までのことがあるし『もしかして僕ってモテるの?』って思えたりもする。

似通った条件だったマリイでも、出合った時から『好きです』って言われてたから。
その日の内に告白までされたから、その、受け入れることが、出来たんだ。
だって……『抱いて』って言われても納得できる『前提』があったから。

でも、僕の彼女に対する態度は本心から「な、何で僕なんですか?」って言うしかない状態だよ。


今まで会えなかった隙間を話しかけてくる事で埋めようとしてくれたマリイさん以前に。
訓練の時にした会話以外では……うわ、本当に自己紹介での会話以外記憶にない気がする。

それでも。

「えいっ♪」
「う、うわ……っ」


抱きつかれたサツキさんの体は暖かくて、髪の匂いも違って、十分に成熟した肌はしっとりとしてて。

今まで印象に残っている……リツコさんのタバコやミサトさんのお酒……そのどれとも違う、汗と大人の匂いが混じった
僕が抱いた――と言ってもこの一週間ぐらいだけど――抱いたどの体とも違う、豊満で柔らかい肉体。

……あ、そっか。


「僕より大きな人に抱き付かれたのって、初めてだからかな……って!?」


ま、まぁおちんちんが勃起しちゃってるのはしょうがないとしてっ。
みんなの前で夢中になっちゃう前に……彼女を必死に引き離し、僕の向かいに座ってもらった。


「あんっ」


口止め料、なんて何も知らないマユミやノゾミがなら兎も角アスカ達には通じない。
その言葉自体に意味が無い事は僕だって知ってるし、何より『まだ』のサツキさんにとって……。

だ、だから、その、『ひと時の気の迷い』や『遊び感覚』でしちゃいけないわけで。

新しい体にむさぼり付くと思っていたらしい最年長者は、僕の態度にきょとんとしてる。
やっぱり……僕が性欲の塊で、がっつくように抱く、と思われてたのかな……。


「みんなの前で、怖気ついたりした?」
「そう思われても良いですけど……いいんですか? 貴女の初めての相手が僕で……」

いきなりこんな発言が飛ぶとは思わなかったのだろうか。
ヒカリたちも含め、きれいにみんな固まってくれた。

「な、な、な、何で判ったの?!」


「まぁ、それなりに経験積んでますし、何となく判っちゃうんです、僕。
 それに、僕だけじゃないんですよ? ここに居るのって」


僕自身よりアスカ達から『これ以上増やしちゃ駄目!』って拒否の言葉が来る、と思った。
でも、その期待は裏切られたんだ……なんか、変な意味で。

 

「マリイやアスカさんはどうか知らないけど、シンジが受け入れるのならいいよ?」
「同じく。 シンジさんのモノですもの。わたくし達」


……え?
独占意欲の強い、アスカは?


「アタシは、ちょっとだけ不満。 シンジに抱かれる時間減っちゃいそうだしさ。
 まぁ、胸は『デカパイ三姉妹』がいるし、何より処女だからテクなんかまず無いわけで、サツキが主張できる長所って取りあえず『大人の体』以外はなさそうだし……。

 アタシも『シンジのモノ』だし……惚れさせられちゃった弱みもあるもの。
 Hの方だってさ、一人加わったからってシンジが手を抜くなんてありえないし」


アスカ達はもう、僕がサツキさんを受け入れてしまうのは当然と思っているみたいです。

となると、当然ヒカリたちの方も……。


「多分、もう一人ってアオイさん……。 噂では彼女、『ショタのアオイ』って言うそうだし」
「『ショタ』? ……マユミさん、意味知ってますか?」

「『ロリータ・コンプレックス』の逆で『ショタ・コンプレックス』の略。
 正式には『正太郎コンプレックス』のことですね。

 インパクト以前のアニメ『鉄人28号』の主人公の名前が由来の日本製心理欲求表現用語です。

 基本的な意味は
『大人の女性が年端の行かない少年と本気の恋愛、または性的な関係を持とうとする事』。
 また、そうなりたいと言う『性癖』を持った人もそう呼ばれるそうです」

 

いや、豆知識を披露されても……。
僕は別にメンバーを増やしたいとは思っていないのに、何で皆は彼女を受け入れちゃうの?
その後、電話先のレイまで。

『……それでいい』
「へ?」
『シンジ君が、私を求めていれば、何人いてもいいわ』

……これで終わっちゃった。


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後で聞いた話だと、『僕の相手を一人でする自信が、みんなに無かった』んだそうだ。
一人で僕の相手をすると気持ちよすぎて、かえって気持ちいいと思えない。
複数なら、丁度いい気持ちよさになるらしい……ちょっと複雑。


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「ん……んっ?!」

芝居とか、じゃ無く。
本当に彼女には経験が無い……ノゾミの方がよっぽど経験を積んでしまってるみたいだ。
今更だけど、僕がしてしまった事の罪深さがひしひしと伝わって来る。
そして、もちろんそれを糧に更なる興奮を得てるのも、僕。

「あ、ほら。 それじゃ痛いって言ってます」
「え? あ、ご、御免なさい」
「ここはこうやるのですわ……。 特に筋をなぞるみたいにすると……」


ここ数日で、『イメージ』を直接手に入れていってる皆も僕を苛めるコツを掴んだみたい。
僕自身の弱いところに来る刺激に、微妙に跳ねていくんだ。
それだけじゃ嫌だし、つまらないから僕の方も彼女を追い立てる。

蛍光灯の明かりの下で見たサツキさんのは……一人Hをした事が多いせいか、襞も全体的に厚みがあって
右側より左側が感じるみたい。

「やっ、集中、でないよ、シンジ君」
「だって、みんなして僕をいかせようとしてるのに、僕は何もしちゃいけないの?」


他のみんなも見物人に納まっている気もなかったり。


「シンジってさぁ……微妙に女の子っぽいんだよね」
「え?」

濃紺の瞳に僕を写しながらアスカは胸を左肩にすり寄せてくる。

「サツキは信じられないかもしれないけど、性欲とかはしっかり男なのに……射精自体には興味が無いみたいよ。
胸や顔にかけるのっていいと思う男が多いらしいけど、誰かの腰に埋め込んでいれば良いや、って感じで。
ペニスが無かったらレズの攻めって感じなのよ」

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「何悩んでるの、ヒカリ」

湿った下着――特にショーツ――を纏うというのは気持ち悪いのだけど、
散々待たせた彼にこれを脱がせるのも乙な物かもしれない、だって彼は申し訳ないと思いながらサービスしてくれると思う。

「シンジの体調……だって、金曜が私、土曜は初号機の中、日曜は私とアスカ。
 月曜が私、アスカ、マユミさん。 火曜日が妹にマナ、レイ、マリイ……。
 で、今日でしょ……。 正直そろそろルールを作らないと、って」
「SEXが面白くなってきたって言うのにぃ?」


溜息をついてから私は我侭しか知らないかも、と思える仲間に真実を伝えた。
『主人』は自分の体力の限界と言うものに気付いていないんじゃないかな、って。


「……と言う訳なの。 姉さんのコレクション本を読むと、顔射、って言う『男の夢』なんだって。
 私達が達した直後、精液を顔にかけようとするんだって。 『AVからの情報』らしいんだけど。
 射精ってそういう楽しみ? も有るらしいのに」

「確かにね。 ジャージとカメラ眼鏡の二人だけか『その手の』情報源の筈なんだよね。
 根本な男の本能?……で中出しの時はタイミング合わせてイッてくれるけど……」


二人がNervの医療データベースから『男の限界』を模索するようになる。


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『青信号』と書いて『GOGO!』と読む。
今のアスカは、まさにそんな感じで

「ほらほらぁ。 早くしないとシンジをおいてイッちゃうぞ?」

言葉の裏に籠められた爛れた欲望の素。
卵の白身にも見える幾筋の、微妙に違う味だったり混じり合ったり泡だったりする雫を纏って。
僕は今日の三人目・マナの中を往復してる。


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今入ってるマナの中は、奥は優しく締まるのに対して、入り口はぎゅって締まってくる。
全体が絞られるように締まるアスカに嘗め回される締まりはみんな違う。

さっきまで僕の下でアスカが喘いでいるのを目を背けずに見守って……というよりお預けの形に
なってしまっていたせいで、リズムを一寸変えただけで、彼女なりの『快楽を楽しむ締まり』
だったのがぎゅっ、と『おしまいの締まり』に変わって。


「はん! ま、まだ、感じていたいのにぃ!!」

淫蕩な顔から涎や涙を振りまいて、僕をおいて目的地へ一人で突っ走っちゃう。
……あ、気絶しちゃった。


「まだ、僕には余裕が結構あるのになぁ」
「じゃあ、次はボク達ですぅ」


ノゾミの声に頷いた三人がマナの体液にねっとりと濡れた肉の杭に群がる。

マユミの、少し平たい感じがする舌に裂け目を撫でられ、絶妙な連携プレーをこなす
洞木姉妹の二枚の舌が飛沫をあたりに飛ばして、部屋の中に漂う匂いを更に濃厚にしていくんだ。

 

まだ最後の……つまり破瓜に怖さを感じ尻込みしてる『三人目のハーフ』の前で「メンバーの中では小さいほうなの」と嘆く
――13歳で87のCは十分な大きさだし、整った形は刺激的だと思う――
アスカの胸にぽむっと顔を埋める。

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顔を埋めたのは、不意に浮かんで来た不安にまた沈んでいきそうだったから。
こう言ったりすると変と言うか、嫌味に聞こえるのは十分判るんだけど、
僕は自分が少しもモテるとは思ってない。


今まで自分は他人に受け入れられることが無い、と思っていたから

だから、時々今の自分がもしかしたら皆に騙されてるんじゃないか、なんて
非常に失礼な事すら考える。

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「……成る程、確かに一度そんな噂、聞いた事ありますわ?」

お昼が一段楽した時、僕は皆に自分の事を改めて説明した。

母を目の前で失ったこと。
マリイが僕の事を気になりだした発端となった『放置』。
自転車の事。

『来い』とだけ書かれた手紙。
殆ど何も知らない状態で初めて迎えた使徒との戦い。。


「最初はその手紙に見えない紙を破いて、無視しようと思ったんだ……」

ここからは、アスカ達にもまだ話してない。

「驚いたな…。 町外れに着いた時、丁度そこが使徒と国連軍の戦闘の現場になったんだもの」


そう前置きしてから……僕はこの町に来てからを話し出した。
話が少しも進まないうちに、今までの『自分が必要とされていると思えない世界』が
EVAのことを外しても、十分に『僕が必要とされている世界』になってる事を思い知る。

 

『貴方は死なないわ』
自分を捨ててでも助けてくれる……大切な人に対する想いを理解させてくれたレイ。


『馬鹿……無理しちゃって』
女性に対する憧れ……『好き』になる事を教えてくれたアスカ。


『…私、霧島マナは、本日六時に起きて、シンジの、為に……』
『そうよ! 私は碇君が好き! 私にとってこれはデートなんだから邪魔しないで!!』
『恋愛の切欠としてはいけませんの? 一目惚れは』
こんな僕でも好きになってくれる人がいることを教えてくれたマナ、ヒカリ、マリイ。

 

『誰よりも好きな人に、シンジさんに、捧げさせて…下さい』
『……もし、私達が助かったら、私の、初めての人になってくれますか?』
僕の行動を信じ、僕と共に生きて行こうと決めてくれたノゾミにマユミ。


改めて考えてみれば、こんなにも嬉しい事は無い、と思える大切な絆が出来ていたんだ。
どっちつかずで、誰か一人を選ぶ事が出来なかった僕を選んでくれた。
こんなに嬉しい事は無いよね……。


「え!? な、何で泣いてるのバカシンジ?」
「だって、僕はここに居ても良いんだ、って。 やっと自信が持てたんだもの……」


それが当たり前、貴方は私達のもの。 私達が貴方の物であるように……。
皆からのキスの間に、誰かが言った言葉が心にのこったんだ。

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「僕は今、みんなが好きです」

みんなを平等に愛してる、とは言えない。
だって、本当はみんな自分だけに言って欲しいはずだし、何より僕だってそうだから。
すこし前までは、僕だってアスカに僕だけを見てほしい、って思いがあったんだから。

そして今は……みんなに離れていって欲しくない、と言う独占欲もある。

「だから貴女の事も好きになりたい」

だから、これだけは譲れない。

「サツキさんが僕を好きになった理由、教えてもらえませんか?」

女性的な考えかもしれないけど……自分を好きでもない人と結ばれるのだけはいやだ。
僕は、みんなをもっと好きになりたいんだから。


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彼女がシンジに『惚れた』経緯は、アタシが一番近いみたいだ。

『自分を変えて欲しかったんだと思うの』

そういう出だしで始まった彼女の発言。

幾つかの原因から、彼女は周りが『自分を見てくれない』……そう、アタシと同じ思いに囚われたらしい。
NERVに参加したのも、半分軍隊なんだから、階級以外で区別される事は無いだろう、と。

ところが、結局日向さんも青葉さんも、そしてその他の職員たちも理由をつけて距離を置かれてしまう。

サツキ本人は『ハーフ』である事が受け入れてくれない理由と思ってるらしい。
外から見れば、まぁ、別の意味もあると感じる……『美女』だな、とアタシも思うし。

そこに現れたのがシンジだ。
ある意味エリートのアタシに対してシンジが『普通の女の子』として接しているのを見て彼ならもしかして、と思う反面
シンジがアタシに気があると言うのだけはさっさと気付いて今度はサツキの方から一歩引いてしまう。

つい最近ハーレムこさえたシンジにあてられてしまった面も否定しなかったせいで、シンジは完全に納得はしなかったみたいだけど。

「好きになるのに理由があるとは限りませんから。 僕もそうでしたし」

そう呟いたので、一発殴っておいた。

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『僕は貴方を、みんなを……愛している、とは……少なくとも今は……言えません』
『それでもいいよ、あたし』
『もっと良い人、いるかも知れませんよ? 人付き合いの臆病な僕より……』

それは違う、と私は思う。
確かに彼はスーパーマンじゃない。

でも、彼は今も戦っている。
戦自で訓練をつんだ私や、EVAの訓練をつんだアスカやレイちゃんと違って
シンジは本当の意味で『叩き上げ』なんだから。

彼女もそれを理解していたらしい。


『シンジ君は付き合いが臆病と言う訳じゃ無いと思う。 ただ、よく判らなかっただけ。
 自転車のこぎ方と同じ。 慣れなきゃ、練習しなけりゃ出来ないと思うわ。

 三佐は以前、『人の顔を見てからしか判断できない』ってシンジ君を評してた。

 だって、あたしは知ってるもの。 綾波さんを助けた事、覚えてる。 アスカとの事も。 
 マグマに飛び込む時、躊躇なんてしてたら間に合わなかったんだから。

 本当の貴方にはちゃんと勇気もあるし決断も出来る。
 ただ、心の表現の仕方が不器用なだけ。 加持一尉みたいになって貰っても困っちゃうけど』


シンジの顔を微妙に引き攣らせたこの言葉の、真の意味は……かなり後になってから知る事になる。

『皆の中から誰か選べてませんよ……美化、しないで下さい。 図に乗っちゃいます』
『ですから、たまには傲慢、と言うより自信を持って、きっぱり言ってしまうべきですよ』

結局、マリイのこの一言が踏ん切りになって。
シンジは私達の前で言い切った。

『僕が好きになっていいのなら、僕に貴女をください』

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(なんか、僕らしくないよね、さっきのは)

僕の下で喘ぐサツキさんを眺めながら感じた感想がそれ。

手足はもう、僕自身の意思を込めなくても勝手に動く気がするし、さっきの口説き文句も
思いついたまま口から出た。

自分の知識と言うより、『イメージ』が言わせた気がする。


「あ、ほかの事考えるなバカシンジ!」
「サボっちゃ駄目です」

まぁ、それでもいいかと考え直すには、一寸。
自分がどんどん変わって行っている気がしていた。


でも、そんな想いも皆が与えてくれる快楽に、流されていってしまった。

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「……おまじない?」

食事中の私の前に現れたレイちゃんはこくり、と頷くと『みんな、貴方なら詳しいと話すの』と付け加えた……期待した表情で。

「今まで聞いた人達はそろって、少女のような心の伊吹二尉なら良いのを知ってると」

以前司令と話あった時の映像をみたけど、本当に彼女の笑みは綺麗。
話の内容は一寸引っかかるけど。


「……二尉?」
「あ、御免なさい。 で、レイちゃんはどんなお呪いが知りたいの? そう言えば最近シンジ君とお付き合いをはじめたみた……!」


そう言い出して、私はここ何回も彼女の痴態をのぞき見ている事を思い出す。
お布団の上、シンジ君の上下、学校の屋上。
思い出すだけで私も興奮して、体が……。

「? 大丈夫ですか? 伊吹二尉?」
「あ、いや、御免なさい。 それで、どんな御呪いを?」
「シンジ君と離れなくて済むおまじないというのは、無いですか?」


約束では駄目なのか?

私の単純な問いに対する回答は
『代わりが居る私に約束は駄目。 それに、約束を理由に優先されるのはいや』なのだそうだ。


なんとなく、先輩から受けた説明で意味はわかる。
先輩の言う『三人目の綾波レイ』と言う存在が、本当に成立するのかは私にもよく判らない。
けど、三人目の彼女が『約束』を果たしたところで今の自分に意味は無いと思っているのだろう。

純粋にシンジ君からの気持ちを受け取りたい、と言う気持ちはわかる気がした。
それに、出し抜きたい、というほどには独占欲は育ってないみたい。

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「そうね、こう薬……サロンパスなんかを小さく切って、意中の人の靴の裏へ
 剥がれない様に 注意しながら想いを込めてぺたっと張っておく、と言うのがあるわ。
 ただし、相手に気付かれないようにしなければならないけど」

私が知っているおまじないの数々をメモして行くレイちゃん。

「彼に振り向いてほしい時には、うなじの中心に想いを込めて息を静かに吹きかける、とか」
「それは息がかかるからでは?」
「ふふ……そうかもね」


意外にレイちゃんが興味を持ったのは『浮気を封じる方法』。

「彼の下の毛を一本こっそり貰ってそれを細かく裂いた紙とよじりながら結び、お布団の下へ。
 お布団の下が畳ならその畳の下へ。 そうした上で、そのお布団の上で関係を持てば、まず他の人とは出来なくなるんだって」
「それなら8対は必要になりますね」

『8対!?』

いよいよシンジ君が絶倫に思えて仕方がなくなった。
おまけにこのとき抜け駆けが一名出ていたなんて……。

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目の前にある梅雑炊は微妙に冷めて味が落ちつつある。
でも、今の私はあの疑問に掛かりきりだった。
だから、目の前に上官が来ても判らなかったわけで……。


「何か疑問でも?」
「あ、加持一尉……。いいんですか、いま三佐に見つかったらきついですよ?」
「あ、大丈夫よ二尉。私達も居るから」
「アタシの目を盗んで浮気出来るようならやってもらいましょう?!」


三佐達三人とそのまま食事を共に取ることになったので、疑問となったあの内容をこの三人に披露してみる事にしたの。


「椎の実?」
「椎の実、ってドングリの?」
「はい、マヤが出来れば今すぐにでも欲しい、って……」

私より少し人生経験が豊富な二人でも、この話は判らなかったみたい。

「それで、何に使うかいってたのかい?」
「はい、なんでも最近気になり始めてる人におまじないを掛けてみるっていってました。
 それで、その材料として、どうしても椎の実が必要なんだそうです」


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「阿賀野二尉、伊吹二尉より連絡です」

 

「はいはい、何? 今参号機の起動用データが揃い始めた時なんだけど」
『あのさ、貴女のお父さんって、有名な植物学者よね?』
「は?」
『そうよね?』
「え、えぇ、そうだけど」
『ドングリって今手に入らないかな?』
「は?」
『だから……ドングリ、って言うか椎の実。 無理?』
「……つまり、パパのコネ使って椎の実を手に入れられないか、って?」
『そう……無理かな?』
「まぁ、聞いてみるけど……手に入るとして、幾つ要るの?それと、なんに使うの?」
『一つか二つあればいいの。 理由は、恋のおまじない』

「意中の人を振り向かせる、っていうやつ?」
『まぁ、そんなところ。 私もね、気になりだしたのよ。でも私は独占したいのよね。
  さっき、レイちゃんにも塩あげちゃったし……先に仕掛けちゃおうかな、って思うのよ』

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「「……もしかして、シンちゃん(シンジ君)の事を言ってる?」」
「今、私たち四人の内、少し彼の事を気になってるかな、って言うレベルなのが私、もしかしたらかなり気になりだしている? みたいなのがマヤ、
 撃墜されてしまってるんじゃないの? って言い切れそうなのがアオイとサツキ……」
「うわ、勝率5割、当たれば7割5分じゃない、それじゃ……。 シンちゃんやるぅ♪」
「でも、それとドングリがどうか繋がっているのかしら? 加持君しってる?」
「俺に聞かれてもなぁ……」

食後のお茶になっても、この答えは見つからず。
結局判らないまま終わろうとしていたこの話は、意外なところから答えが来る事になる。
正確には、私の真後ろから。


「『いとしいむすばれたい』っていう洒落なのだよ、それは」
「「「は?」」」


そこに居たのは、簡単な視察の後、ここで食事を取って行こうとしていた冬月副司令だった。
敬礼しようと立ち上がった私達を副司令は制する。

「あ、そのままで構わないよ。 でも、意外な呪いのネタを知っていたね、君たち」


ネギ抜き、唐辛子たっぷりの熱い掛け蕎麦をすすりながらタネ明かし。
副司令はこのお呪いのことは司令の奥様、つまりシンジ君のお母さんから聞いたのだという。

つまり、こういう事だ。
椎の実に糸を結び、好きな人の家の玄関の下に人知れず置く……可能なら埋めてしまう。
理由は『糸椎結ばれたい=いとしいむすばれたい=愛しい結ばれたい』となる、好きな人に切ない想いが届くようになるお呪いらしい。

 

私も幾つか余計に注文しようと思い始め……。

シンジ君が赤い糸が結ばれたドングリ『二つ』に足をとられてすっ転ぶのはもう少し後のこと。


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酸欠にくらくらしながら目覚めると、そこは死屍累々の世界だった。

「……って感じの話、あったわね」

 

時計の針はまだ、あの騒ぎから数時間しか経っていない事を証明していた。
少し思い出すだけでくすぶり始めた炎も、それを証明してる。


それにしても、アタシ達の前であんな台詞を言ってしまう。
躊躇なくノゾミちゃんに手を出せるようになる。
何時もは大して変わらないのに、何だってHの時だけはあんなに強いんだか……。

 

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シンジを叱ったあの後。
本格的に始まった愛撫……その刺激が彼女にとって想像以上に処女のサツキには
強力すぎたのか……あっさり気絶。


「あら……」
「サツキさんは初めてだって事、すっかり忘れてたわね……馬鹿」

 

いずれにしても、アタシ達の火照りを鎮める手段は一つしかないわけで。
サツキに代わってアタシ達がシンジの相手をした。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

火照りを冷ますつもりがあっさりと燃え上がらせたアタシ達。
まず体力のなさと日ごろの生活習慣からノゾミちゃんが脱落。
次いでマリイとマユミが明日の事もある、と大事を取って身を引いた。
そして。

 

『ひゃ、これ、丸見えになっちゃうよぉ!?』

シンジは二回目で完全に腰がぬけ切ったマナをいすに座らせて、アタシ達の
SEXを見せ付ける。


『どうマナ、見える?』
『うん……ぐちゅ、ぐちゅって小さく音が響く度にアスカのがめくれて、
 金髪のいんもーを、白くなった液体が包みこんでぇ……』


マナとちょうど向かい合う形になった椅子の上、それが今のアタシの舞台。

大股開きになったシンジの上に肩幅くらいにピン、と足を伸ばしたまま
またがって腰を振るの。

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  この後の、結果は、まぁ……惨敗だ。

体の中がひっくり返された様な苦痛と紙一重のような、そんな快楽。
そして残るのは、満足感に満ちた敗北感だった。

少し前までは如何なるものにも許さなかった[勝利者』の座。


『ほら、アスカ』

その一言だけで、今迄のアタシならそう間違いなく、そう言い出した相手に渾身の一撃を
打ち込んで二度と言わないように、痛みと一緒に刷り込んでやっていた筈のこと。
それをあっさり許してしまう。 心地よい敗北感と一緒に。

(アタシに朝は訪れないかも)

それが、注がれる精液のショックに意識を飛ばされる直前、アタシが思った事だった。


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  「あれだけやって気絶もしないなんて。 ……アンタって鋼鉄並みの頑丈さねぇ」
「戦自の訓練の成果……で、本当に見るの? 映像の横取りできるようにしたけど」
「もちろん……ってあれ? ヒカリは?」
「『向こう』よ」

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「や、ん?!」

アタシが軽い酸欠から目を覚ましたとき、シンジ君は両胸の間に頭を挟み込んで頬擦りをしていた。
……何故か、懐かしそうな顔をして。

人の気配は、多分二人位しかしない。
ふっくら優しい、けどどこかぴちっとした太ももが枕の役割をして、頭の下にある。

「胸のサイズなら私も近いと思うんだけど……」

あ……ヒカリちゃんだったのね。


でもね、膝枕してもらっていて……こう言うのも何なんだけど。
気持ちは判るしいじる何かが欲しいのもわかるけど、爪で乳首をつつくのは反則だと思うのよ、うん。
ささやかな感触が、少しずつ『熱』を体に与えて行ってるのよ。


「そうなんだけどね……お母さんに近い、というかなんと言うか……」
「……マザコン?」
「そうかも知れない。 お母さんと最後に話したのが何時だったか、思い出せない位僕の中では過去の話になっちゃってるから……あ」


  まだボーっとしたままの頭を軽く振りながら上半身を起こそうとして……できなかった。
ちょうどシンジ君があたしの上に乗っているから。

「あ、どきましょうか?」
「ううん、このまま貴方の体温が感じられるほうが落ち着けるから……」

少しずつ意識がしっかりとしてきて、現状がハッキリと判ってきた。
部屋の趣味、以前アスカから聴いていたチェロがある事から、多分この部屋の持ち主はシンジ君。
この部屋にいるのはあたし、ヒカリちゃん、そしてシンジ君の三人。
つるつるとしたシーツの感じから、ベッド・メーキングされたばかりのベッドの上にいるらしい。

「えっと、みんなは?」

あたしのちょっとした発言で深紅に染まったシンジ君の変わりにヒカリちゃんが説明をしてくれる。
彼女はあたしの後頭部が彼女の乳房にあたるように調整もしてくれた。
……男じゃなくても、コレは気持ちいいものらしい。

「妹は寝かせました。 あの子はまだ、夜更かしが出来る子じゃないですから。
 ブ−たれるマリイ達は『明日、実験と輸送が終わったら集中的に』と理由と御褒美の約束をして。
 アスカはシンジの相手をしているうちに潰れちゃって」

戦自に居たころと同じ生活パターンを送らないとどうも落ち着かない、と言うマナちゃんは自主退場したと言う。
もちろん、あのブレスレットを操作してから。

でも、何でそんなことを?


「初体験は、思い出に残したい物じゃないですか」
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ヒカリちゃんの話はあたしにとって願っても無い話だった。
けど……。


「出来れば、そばにあなたも居て欲しいの」
「え?」

そう言って部屋から出ようとした彼女をあたしは止めた。
こういう反応は創造できていなかったようで――見られるのには慣れている筈だけど――アスカいわく『シンジ君の童貞GETの猛者』は目に見えて判るほど混乱していた。

「あ、あの、それってサツキさんの初体験をを見ちゃうって事に」
「見て欲しい……まぁ、覗きとか見られて感じちゃう、って話じゃなくて」

あたしは。
自分が誰にも知られずに消えてしまうんじゃないか、と思う事がたまにある。
たまに感じるこの理由なき不安を解消したい、と言うのがNERVに参加した理由だ。

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最初の頃は大した興味なんて無かった。
毎日行う、ただの終業作業だったのだから。

「ん?」

MAGIの内部監視ログにアタックの可能性として提示されたデータ。
監視の網に引き上げられた理由は3つ。

一つ目は『ここ数日、それも深夜に……以前の実に50倍のリクエストがかかる様になった事』。
二つ目は『アクセスリクエストを出されている先が文字通りチルドレンの監視記録関係である事』。
三つ目は『リクエストしているのが全員女子職員……自宅に端末が無いレイの名前まであった事』。

「何よこれ……まさか、加持君?!」

ミサトの話として、加持君がマヤを口説いていた事があると言っていた。
確か、キスをして君の口をふさぐ……だったか、口説きの台詞は。
ただ、そう考えたとしても妙だ。

「いくら加持君でもシンジ君に興味を持ち出したレイを口説き落とすのは無理だし、
 何より、この数を落として回るのは無理……。 おとりなのかしら」

アクセスした人物の殆ど全員が一見で終っていない。
記録を信じれば、使われていないサーバーをファイルサーバにして監視映像のコピーを
命令している猛者までいる。
加持君を始めとするスパイなら、一回でそのアカウントを使い切り、捨てるはず。
一寸したミスをきっちりツケとして取り立てるMAGIが相手なのだから。

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かなり後になって判ったことだが……ちょうどその頃。
この異様なスピードで広がる『友達の輪』の端っこにいつに無く貪欲に喰らいつきながら
成長し始めた欲望の赴くまま『知りたいこと』を入手する為に。
少女が一人、本部内にあてがわれた部屋の端末の前で格闘していたらしい。

『なるほど……男性器はそうやって口に咥えても喜んでくれるのね……』

アクセス痕跡を隠す努力すら忘れた蒼銀の少女。
このいじましい(?)努力が無ければ、私がこの輪の中に加わる理由は出来なかったはずだ。

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「何よ、これ……」

目の前の映像は、音声つきの、リアルタイム送信の。
カスパー主任オペレータ・大井サツキの処女喪失現場だった。

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「いや……痛いよぅ……」

ついさっきまでの表情はあっさりと消え、彼女は僕の上に跨って。
うっすらと涙を浮かべている彼女をヒカリが抱きしめて慰めている。

「こんなに、痛み、あるのぉ」
「大丈夫ですよサツキさん。 痛みはすぐに慣れてしまいますから」

痛みのせいか、まるで年齢の上下が逆転したかのような二人。
その表情を覚えるのが義務と感じた僕は、掬い取るように裏返して、背中越しに
彼女の唇を奪う。

「ひぅ……」

痛みを紛らわせるためか、彼女の唇から伸びる舌が全力で僕のそれを追いかけてくる。
時たまサツキさんの唇からこぼれる二人分の滴はヒカリの口の中へ。

「大丈夫ですよ、シンジがすぐに気持ちよくしてくれますから……」

情欲からくる物ではない、年上の後輩を悦楽へと導く『先輩』の抱擁。
その一方で、背後から体の全てを情欲で埋め尽くそうとしている僕の抱擁。

痛みにゆがんでいた筈の顔は痛みの中から浮かび上がってきた気持ち良さと、
――少し位は自惚れていいと思う――好意を持った相手である僕に抱かれているという気持ちが。

確実に、一人の大人を『本物の女』に換えていく。

 

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浮いた情はどこさで育つ?
胸の中か、頭脳(あたま)の中か?
どうして生まれた、なに食て肥えた?

さぁてお答え、お答えは。


シェイクスピア作『ヴェニスの商人』第三幕中の歌より


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「あ、御免なさい、ちょっと、一寸だけ休ませて……」

肌の温もりと、今までの皆と違う、艶やかな反応。
二人の――文字通り二倍――の年齢差を最も象徴する身長の差。
どっちかと言うと小柄なヒカリの顔は、彼女に負けず劣らずな大きさを誇る
サツキさんの乳房の谷間に埋もれて、僕たちは少しまどろんだ。

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みんなに誤解されている事だけど、私は別にレズビアンじゃない。
ただ、他の人達と明らかに感覚が違うと思えるのは『恋愛の相手を選ぶ基準として、SEXの相性も重要と考えている』と言う事だけ。


だからレズと言われる位なら、エピキュリアン(享楽主義者)と言われた方が良い。
まぁ、皆のウワサを否定する気は特に無かったりする。
先輩とそうなってみたいとは思うし、過去女性と付き合った事が数回、確かに有るから。

でも、それ以外はたいした違いは無い筈。
こんな時に答えを詰まらせるのも……ねぇ。

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幾つかの書類整理を済ませたかった私は、結局11時まで掛かってしまって。
同僚たちも、調理担当のおばちゃん達もいない食堂でぽつんと一人
夕食を持ち込んだ本を片手にひっそりと食べていた。

「寂しいわね、一人で食べるのって……サツキ、彼のご飯を……」

この数日で出来上がってしまった、特に実体験までしっかりと見てしまった私はすっかり虜にされてしまっている。
いくら『体』しか興味が無いとはいえ、その……。

「まぁ、サツキって純情らしいから一緒に戴かれて……」

がたん!

「ひっ?!」

誰も居ない筈の、それも調理場から聞こえた大音は私の心を一気に冷やしてくれた。
読んでいたのが『怪談百物語』だったせいもあって、もうしっかりと。


誰もが想像しそうな、世に言う『幽霊ネタ』は本部内にはまったく無い。

某先輩が猫憑きだとか、バッカスの化身が一人いる、とかのお笑いネタならあるけど、人の生死を賭け、使徒……天使の名を冠したあの生物と戦う私達は、
まぁ……毎日が『ホラーを科学で解析』する毎日であり。

正直な話、幽霊話を作ってるよりも、そっちのほうが怖かったりするのだ。


勿論、今回の話の正体も『枯れ尾花』だったりするわけ……だったんだけどね。


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内心の恐怖を必死に抑えて明かりを付け、モップの柄片手に飛び込んだ私を待っていたのは

「あ、伊吹二尉」

まぁ、当たり前というか……可愛い「枯れ尾花」だった。
夕食を食べなかったせいで空腹に耐え切れなくなったのと、何やら『伝統』のものを食べ物と『一緒に』手に入れたくて、ここまで探しに来たらしい。
彼女なりの根性なのか、微妙に引きつった顔でちびちびとカツサンドを食べつつさがすレイちゃんの手伝いをする、んだけど。


「『伝統のもの』? ここに有ったかしらそんなものって」


伝統、最近のレイちゃん、本部内に広がるピンクな「友達の輪」。
言っててすぐに思い当たるものがあった。
彼女が今最も興味を持ち、こういう所で拾える「伝統のもの」っていったら……。

「もしかして、レイちゃんが探しているのって」
「すりこぎ、大根、茄子、人参……」

誰が教えたのだろう……?

 

今日の思わぬ収穫。
かなり正確な、彼の「サイズ」。
人外とか言う程じゃなかったけど、想像よりも大きかった。
楽しみ。


 
「あー! 私がまだ食べてないのにぃ!」

食堂で用意された中華や和食の出前に混じっても十分目立つ、私の為に作ってくれたシンジ君とヒカリちゃんの好意がつまった『お弁当』。

「アオイ、飲み物の手配ご苦労♪」
「ちょっと塩味がきつい気もするけど、男の料理としては十分いけるわ」

主任達を呼びに行くついでに、コーヒーなどの飲み物を食堂に取りに行かされた私を待っていたのは……同僚たちの手にかかり、変わり果てたその惨状だった。
薄紫のお弁当箱の中身は箸という名のくちばしでもう。
ぐりぐりと。


「とても美味しいという訳じゃないけど、十分いけますね」
「葛城さんが直帰するようになるはずだわ。家庭の味、としては十分だもの」
「病気なんかした時にさ、『アオイ、朝ご飯が炊けたよ』なんて言ってくれたりしたらさ」
「「良いなぁ……サツキも、葛城さんも」」

私は皆にお茶をついであげながら「なんで朝ごはん?」と聞く。
昔、朝ごはんをちゃんと炊ける男は亭主の鑑と褒め称えられたらしい。
「朝ご飯が出来たよ」と私を起こし、美味しいご飯を食べさせた後会社に向かうシンジ君。
でも時々失敗して。
黒焦げな目玉焼きが出来ていたりして。

『たまには失敗もあるわよ』って慰めて……。

「おーい」
「帰ってこーい」

夜食のお供と化した彼のお弁当はごらんの通り好評で、一寸だけ優越感にひたれた。

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「そういえばアオイ、主任は? 一緒にどうですかって誘いに行ったんでしょ?」
「一寸調子が悪いみたいで『後で食べる』って。 カエデ……葛城さんは?」
「さっき一度だけ来たんだけど……なんか目が血走ってた」
「また加持さんね……ホント、あのウワサみんな信じちゃうわよ、本当に……」

 


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あたしが加持の馬鹿と別れたのは。
リツコと浮気したからだ。
酔ったせいだと判っていても。

アイツ自身の酔った頭の中ではあたしを抱いている事になっていても。

赦せなかった。
あたしだけのアイツじゃなくなったから。
……父さんのような絶対の繋がりが無い以上、アイツとの繋がりは絶対に信じられる物じゃなければならなかったのに。
それをアイツは軽率な行動で壊したのだから。

もちろん、別れた後は後悔した。

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何度か告白もされたし、つき合ってもみた。

長続きしなかったのはアイツとの『恋』がまだ終わっていなかった……
そのせいだと気付くのに、時間は掛からなかった。

時間は流れて。


久々に会ったアイツは演技がそこかしこに感じられたりしたけど、あたしの記憶のままだった。

あたしの前でリツコに抱きついて

『悲しい恋をしているね』

なんて言って嫉妬を誘ったりする部分が増えたりもしていた。

けど、あたし以外には一線を引いてくれていた。

そして、あの結婚式の日。

『アスカとけじめをつけて来た』と言ってくれた。

だから少しだけ、信じてみよう、と思った。

 

友達以上からもう一度始めてみよう、って思ったのに。
それなのに。


アイツはまた、リツコに手を出していた。

――――――――――――――――――――――――

ディスプレイの中で起こっている光景を見ながら。
片耳だけの安いイヤホンから聞こえる嬌声に自分の声を重ねて。

『あの人』との交わりではたどり着けなかった所へと昇りつめた時。


『……っジくぅん!!』

がたん!!

『だれ!?』

 

 


それから数分。


「もしかして、みら、れたの……?」

呆然として。
自分の痴態……を見直して。
思いっきり嫌悪感に打ちのめされる。

――自慰をよりによって見られた、誰だか判らなかったけど、たぶん確実に――
――それも、司令ではなくシンジ君に抱かれている所を想像していた私を――


今日は、とても無様な気がする。
偶然見てしまったもの。
いびつでも、本人達しか判らないものでも、確かにあった一つの『想い』の形。
私はそれを否定することだけは、絶対に出来ない。

そして、羨ましいと、『愛』がほしくてこんな事をしてしまう自分も。

『あの人』は一度として私を抱いていない。
『心』と言う意味もあるけど、『女性としても』抱かれていないのよ。
(この点、加持君に抱かれたと信じている、親友の誤解はいまだ解けてない)


つまり、唇とアナルは何度も使われているのに……私はいまだ処女。
穢れた処女なのよ、私は。


今の自分を思い出す度に、自分が惨めに思えて。
涙を流せず、私は慟哭していた。

 

 

ベッドの上で果てしなく続いていた饗宴も三人の疲労度から限界になりつつあった。


上に乗る少女のお下げが一つ外れ、その癖が残った髪をまとわりつかせ。
彼女の下になっている女は痛みの証を少女の体に刻んで。

お互いの体に相手の汗をすり込んでいく。


数十分前からここではイヤホンを耳にはめながら
閉店後とはいえ、レストランで出されるものではない。


「悪趣味よ、そうやって覗くの」
「諜報に関わる俺たちだ。 少し位役得が無きゃな」
「『彼』が知ったら、なんと言うかしらねぇ」
「加持一尉はもう帰ったんだろ? この前セカンドを連れて来た時は驚いたが……彼のこのテクニックは加持一尉の伝授かねぇ?」
「それだけは無いわ。 彼、そういう事に対する神経だけはすさまじく硬いもの」


 

 

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From:ハーレムエロ探求スレッド