畜類め、繁りやがれ! 06

Original text:LHS廚さん


 

 

『今日はマリイちゃんのホテルに泊まると良いよ。 美味しいところは明日に』。

という俺の提案に納得した二人は彼女のホテルに向かうことにした。

これから聞いてもらうのは、その後部座席の会話だ。

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不安一杯のマナちゃんは、手っ取り早い話の種を選んだ。

「私の事……いつ知られたんですか?」

「お気持ちは嬉しいですが、他人からの敬語は嫌いですの。
 マユミさんのように癖になっている方のは仕方なく受け入れて居ますけど。
 答えは、これですわ。 向こうから持ち込んだ貴女の資料です」

それは、小説の単行本のような本だった。
高速のオレンジ色の電灯の下ですら、赤いNERVのマークを打ち消す事が出来ないでいた。
そして、反対に霧島さんの顔が青くなっていった。

「嘘……ムサシやケイタの事、シンジとの付き合い、あの頃の私のスリーサイズまで……詳しく」

「日本政府は機密保持の為にアメリカに大部分の『トライデント』部品の受注をしていたのです。
 今のアメリカの失業率は最高ですもの。 価格に少し上乗せするだけでマフィアすら上回る機密を保障しますわ。
 なにせ、打ち切られれば明日の銀シャリは拝めませんもの?」

ぎ、銀シャリ? こりゃまた古風な。

「……でも。 それ以上のお金をもらって即物な幸せを得ようとする人もいます。
 その成果として、アメリカ支部がまとめたのがその資料なのです」

彼女はマリイさんから渡された資料を血眼になって読んでいる。
当たり前だな。 この資料の存在は、自分達が最初からNervに踊らされていた事になってしまう。


「ただし、アメリカ支部が手に入れたこのデータは日本の本部に届く事はありませんでした。
 貴女は理解し難いかもしれませんが、本部と各国の支部には軋轢が出来つつあるのですわ」

「いいのかい? 俺の前でそんな」

彼女はアスカと違った意味で肝が据わっている。

「いいですわ。 私はもう日本本部籍のスタッフですもの。
 それに、わたくしがシンジさんに好意を持っている事から父親とのつながりが妄想の内に作られてしまいまして。 貴方と同じ立場に立たされる所でしたの。
 最も、わたくしの方は完全に濡れ衣ですけど」

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  一通り読み終わった彼女にマリイさんは告げた。

「但し、文中のムサシさん達の事とシンジさんとの事は本部からの資料です。 もし私がリアルタイムでその事を知っていたら。
 嫉妬で狂って犯罪行為をしてでも日本に来ていました。

 ですから、周りがどう思おうと『仲間』として喋ってくださいな」

「『仲間』……って、もしかしたら、マリイさんも」

ええ。 と微笑みながら頷く彼女は。
初めて会った葛城のように美しかった。


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「二人とも、僕が相手をするよ……って、本気ぃ?!」

ひかりがそのまま僕のに乗っかって、アスカが彼女と背中合わせに。

「……はい。 あなたの望みのままに」
「ちょ?!」

欲しくないの?

「う、……こ、今回だけだかんね!」

ふふっ。 そう言うことには、ならないよ。


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「今の彼は、質実共にハーレムの『主』ですわ。
 彼の撃墜数は……。

 完全撃墜がわたくし、ヒカリさん、アスカの三人。
 彼の的になって少し前に撃墜されたであろう、と言う人がマユミさん。
 好きだけど、今の彼が自分をどう思っているのか判らない、と思っていらっしゃるのが」

あんぐり、と開けっ放しの口がようやく閉まり始めた。

「私……。 あ、綾波さんは?」
「さぁ……何か、怖がっていらっしゃるようでしたわ。 彼が、ではなく自分の気持ちにもう少し……あ! そうですわ! 彼女?! どこかで見たお顔だと思っていましたら!!」

着替えを纏めたバッグからハード・カバーの日記帳を取り出す。
最後のページにホルダーを使って貼ってある写真を外す。

「ありましたわ! 彼女の印象の『元』!」
「なるほど。 確かに彼女の2Pキャラみたいね?」
「?」

さすがにふり向くのはまずいと思った俺は車を停め。
写真を覗かせてもらった。

ユイさんを三人の女性が桜の下で囲んだ写真。


「あ、裏にも何か書いてある……。
 『ネコ達とユイ。 2003・6・27.
  Photography person・レミット・ビンセンス. You are the second person.』
 ……なんか、日本語と英語がごちゃ混ぜになってない? マリイさん」

意味を何とか見つけようとする二人。

「そう言えば、わたくしって日本語の読み書き全て、日本の文化を一通りちゃんと勉強しましたわ。
 シンジさんとの生活のためですが、母の遺言でもありました。
 でも、そうせよ、と言う理由が変でしたの。

 何でも、『日本で「猫」を育てるにはちゃんと日本語がわかっていなければ』と」
「ねこ? 日本で生きてるからって日本語が判る猫がいるとは思えないけど?」

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  この質問の答えを俺に聞かれなかったのは幸運だったな、うん。

「まぁ、私も知らないし。 ネコ云々の話は後でシンジに聞こうよ」
「そうですわね。 流石のわたくしも日本の隠語までは勉強して……そうですわ! シンジさんのこえ、お聞きになりませんか? 幾つか用がありまして。
 貴女の存在は明日のお楽しみにして、声だけで宜しければ?」
「うん! 聞きたい!」

彼女がさっきリッちゃんから貰った携帯を取り出し、説明書とにらめっこしながら

「電池は、問題なし。 通話も、問題なし。 ハンズフリーモードは、こうですわね……」

数分でNerv専用の携帯電話を調べ上げた。
そして……。


「あれ? あれ? おかしいですわ?」

スクロールを何度も繰り返しながら何かを探しているマリイちゃん。

なんとなく、探しているのは何か判るんだが。


「何で無いのでしょうか……。 えと……Mr.加持?」
「ん?」
「シンジさんの番号が、無いのです。 三佐の番号はあるのですが」
「ああ、それがシンジ君の家の電話番号だ。 彼とアスカは今葛城の家に居候になってるんだよ」


なるほど、と納得した彼女は早速掛ける。


『もしもし』
「あ、夜分失礼しま『あふぅぅぅぅぅぅ!?』……は?」


は?

『あ、す、すいません!! え、えと?! 山ぎ、じゃなかった?! いか、えっと?』
「マユミさん、そこは『葛城さん』の家だそうですわ」
『アスカさん! もう一寸ボリューム……「仕方ないわ……こんなに凄いって」…触らなくても…』


おひ?
今、ぐちゃぐちゃ、って、聞こえたぞ?!


『ん……いや…』
「……貴女がいかがわしいビデオをご覧になる、と言うのはちょっと意外ですわ?」

マユミさんはこの簡単なヒッカケにあっさりと乗ってしまう。

『え! あ、あ、す、すいません。 さっきから、鈴原さん秘蔵のコレクション、を』
「コレクション? 何故そんなコレクションを見ることになったのですか?」

『えと、あの、さっきシンジさんに告白して、取りあえず、友達以上のお付き合いと言う事でOKを貰いました。 それで、ひゃ?!』

なんか、どんどん泥沼に自分からはまりに行ってる気がするんだが?
荒い息遣いはしっかり聞こえてきてるし。

「? ゴキブリでもいましたの?」
『あふ……い、いえ、そんなのではないのです。 四人でこれからの事を話し合っていたらアスカさんが『いずれシンジとHをするようになるんだろうなぁ』と言う話になり、まして。

 その内にシンジさんが『トウジのコレクションからコピーしたディスクがあるんだけど』って。

 でも、みてみると、そのその、むしゅうせーでどアップなんて、初めて、で』


そりゃそうだろうな。
確かに『無修正』で『どあっぷ』で『匂いまで』付いてるだろうし。
と言うことはアスカも?


流石司令の息子。 ここまでアスカを変えるなんて…影響力ありまくりだなぁ……。


「はあ。 まぁ、その話は良いですわ。 後でお聞きします。 ヒカリさんはいらっしゃいますか?」
『ええ?! あ、今は、一寸、よ、酔っていらっしゃいますから、その、えっと』
「お・ね・が・い・し・ま・す・わ」

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「はい、ヒカリですぅ」

ぐりぐりと僕のを飲み込んだ腰を回しながらマユミが持ってきた子機に顔を向ける。

アスカと触れ合う背中すらも快楽に変えてます、って満面に表したヒカリはとろんと言うレベルを超えて。 ぐずぐず、っと言う感じに溶けた顔で応じた。

こちらもハンズ・フリーだから…マリイさんも気付いてるんだろうなぁ……。
湿っぽい音と息づかいを抑える気は三人とも全く無いみたいだし。


『お気持ちは判りますが。 少し、本気でこちらに心を向けてください。 大真面目な話ですので。
 ヒカリさん……単刀直入に言います。先程貴女は……『五人目』に選ばれました』
「「ええっ」」

四人の声が重なる。
こういう時って萎えるってトウジが言ってたけど、それでも僕のは萎えない。
むしろ、大きくなって、ヒカリが恨めしそうな瞳を向けて来るんだ。


……強欲だね、僕のって。


『但し、チルドレンとしては補欠の立場ですし、正確には貴女の立場は『五人目の最終候補』です。
 『最終候補』はもう一人、ドイツに『渚カヲル』と言う方がいますの』
「あのナルシス両刀男ぉ!?」

ア、アスカぁ。
頼むから僕の唇にクリトリスこすりつけながら喋らないでよぉ。
『マリイ、アタシはアンタの数歩前をいってるのよ』って優越感丸だしの顔してるし。

『あら、アスカはご存知ですの? タイプの男性でしたか?』
「全然。 性格から何から、全部が……自信と不気味の固まりの重度のナルシスト男よ。
 アタシにコナかけたと思ったら翌日には加持さんに声をかける始末でさぁ……。
 本当の意味で、男女見境ないのよ。 まぁ、顔は良いんだけどねぇ。
 なぁにが『男と女と言うくくりは僕にとって等価値なんだ』、よ」

乾いた笑いが電話線の両端で起こった。

『ま、まぁ……彼の事はともかく、ヒカリさんへの辞令は明日下りますわ。
 それで、問題なのは要請を貴女が受けられた場合、シンジさん達の家の隣、つまり「コンフォート11―A―2号室」に貴女だけ転居して欲しいのです。

 ちなみにあなたが受けられた場合にその部屋で同居する事になるのは五人になるそうです。
 わたくし、マユミさん、ヒカリさん、護衛の方が一人、保護者としてメルキオール主任オペレーターの最上アオイさん……以上ですわ』

「護衛、って誰よ?」
『さぁ? 明日わかるそうですわ』

 

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「でも、ヒカリの事といい、今する会話とは一寸思えないんですけど……」
『あら? 『ポルノ・ビデオの鑑賞会』をなさっているのでは?』

はは……。
やっぱり、相当根に持ってるよ。
マユミに先越されちゃった(?)うえに仲間外れにされてるって。


「ごめんなさい。 ちょっと、その……」
『これだけはお忘れなく、シンジさん。 確かに今の貴方のまわりの女性たちと一緒に「生涯」貴方をお慕いし続ける覚悟ですが、わたくしはヒカリさん、マユミさん、アスカ……。
 誰よりもずっと、ずっと……貴方だけをお慕いしていました。
 一目惚れは一目惚れでも諦める、と言う選択肢を捨てられる位に。

 貴方が5歳の頃から。わたくし以外の『五人』の誰よりも長く。
 誰よりも想いは負けませんわ」

え? 5歳?
あの頃は父さんに捨てられた事しか記憶に無いんだけど……彼女と会ったのかな。


『ですから、わたくしの事も、ノゾミさんの事も忘れないで可愛がってくださいませ♪ ハーレム入り、彼女も同意していますわ♪』

はい?!

「ええ?! シンジの事好きだ、とはわかってたけど! い、いつ妹に確認したの?!」

唯では負けない! と言う態度はまさにアスカの親友にふさわしいよ。
でも、ノゾミちゃんまで?!


 

『わたくしも、日本に来る前ににシンジさんの『今』を知りたかったのです。
 下調べとして取り寄せた本部の保安諜報部のデータを調べた時に、彼女の存在を知りました。

 彼女からの伝言で『あね! 負けない!!』 だそうです。
 詳しくは明日の朝に……明日も笑いますわ。 保障します。 それでは……』


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確かにノゾミは、妹はあの『救出劇』以来シンジとの仲をあの子なりに作りたいって
思ってたのは知ってたけど。 手段が無い、と安心してたのにぃ……?


子機を置いてきたマユミさんが首を捻りながら指をおっている。
何度も何度も。

「どうしたの?」

「あ、あの、ですね? 私、ヒカリさん、アスカさん、マリイさん…後、ノゾミさん…ですよね?
 シンジさんの事を好きだ、って表明されたのは……。 一人、多いんです。
 マリイさん本人を入れても五人なのに……彼女は『貴女達五人』と言われました。

 どう考えても一人、多いんで「ああああああああぁぁぁー!!」 な、何ですか?!」


「明日も笑いますわ、ってそう言う事なんだぁ……。 あーあ。 そう言う事だったんだぁ……」
「な、何よヒカリ。 解ったの? さっきの意味?」

アスカとの喧嘩は、マリイさんより多くなるんだろうなぁ。
二人が混じれば更に『シンジの取り分』が減るのに。 何故かそれが楽しいと思える私がいる。
私もまた少し、壊れたかな?


「彼女がいってた『護衛役』の正体。 アスカの『もう一人の天敵』さんの事よ。 多分」

数瞬後。 ようやく誰かわかったアスカは

「な、な、な、何ですってぇぇぇ−−−−−−!!」

彼女らしい叫び声を上げた。

−−−−


「コンフォート11―A―2号室」→「コンフォート11―A―3号室」

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三人の柔らかい体。
耳元で、自分の存在を証明するように。 ひそめない、けど小さな叫び声。

 

「ん……ふぅ……んっ?!」

汗と愛液と僕の精液の交じり合った濃厚な香水を僕の左足に塗りたくっているヒカリ。


「あん! シンジぃ。 へんよぉ。 アタシの、乾かないよぉ」

同じ事を右足でやり始め、僕のをヒカリよりも短時間でベトベトにしたアスカ。


「あふぅ!! なんで?! なんでわた、性欲、収まらないんですかぁ?」

マユミは、僕のおちんちんを中に収めたまま、対面座位で腰を上げ下げする。
彼女の中にもう二度放った精子がこぽこぽと音がなりだした気がする位に出したはず。

「ねぇ、マユミ? もし、今日のがモトで妊娠したら、どうする?」
「責任とって、頂けるんでしょう?」
「けど、僕の子供を生んでくれる、って事でもあるんだよね……」

彼女はそれだけで更に恍惚になって、まだ兆候すら出てないお腹を撫で始めた。
いずれこの三つの子宮に注がれた雫で僕の子供が宿る……。


自分と相手が愛し合った結果なのだ、と言う身勝手な誇り。
まだ幼稚な、お給料以外に責任をとる手段の無い子供である僕が……孕ませると言う罪深さ。
それを相手が受け入れた上で行える、と言う事によって感じるいとおしさ。

雄の本能と言う中核にそれらが絡み合って、最後の動きと一緒になって大きな波を作る。

「んっ!」
「おふぅっ!?」

今日最後の子種が波をなして……。

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 火曜日。

今日も寝てる人が二人いる。 但し、今日は碇君と山岸さん。

反対に、昨日寝ていたはずのアスカさんと洞木さんはそれぞれ別の意味で元気だ。
昨日とは見違えるほどに生き生きとして、ビンセンス博士と霧島さんに食ってかかっているアスカさん。
必死に二組の喧嘩を(片方の派閥にいるとは気付かず)仲裁しているのが洞木さん。

「だから! 今日はアタシ達三人で作ったんだから二人のはいらないの!
 大体、アンタ達料理できるの? 軍用調理品を食べたがるのはコイツだけよ?」

そう言いながらアスカさんは相田君を指差したけど。
復活していない彼は反応しない……。 

「私だって! シンジと会えなかった二ヶ月の間勉強したんです!」
「今日の朝、校門でノゾミちゃんからサンドイッチとコンソメスープの魔法瓶を貰っているのにわたくし達のお弁当を拒否するシンジさんではないですわ。
 例えそうであったとしても。 本人の意思で拒否されない限り納得しませんわよ」

山岸さんに聞いた話では『昨日ハッスルし過ぎた』らしくてクタクタらしい碇君。
鈴原君たちに悪戯されてもまず起きない。


「さっき本人が『ちゃんと食べるよ』って言ったもの!」
「大体チェロとアタシ達の相手位しか器用な所がないシンジに断る事なんか出来るもんですか!」
「ちょ?! アスカ、なんてコト言うの?!」

自分に自信を持たなければ、私は碇君の相手になれない。
『地下水槽の私』はもう『私』ではないんだ。
それを証明するのが、これからの私の目標。


「碇君……碇君……」
「ふにゃ……マユミさぁん」
「碇君…よだれ」
「にゅ?」

目が覚めてもぼうっとしている彼の口まわりをハンカチで拭う。
山岸さんではなく私と気付いた彼は少し赤くなる。

「あ、綾波……」
「そんなに、激しかったの?」

ポン、と碇君の顔が真っ赤に染まる。

「あの後も、沢山飲んだのでしょう? 三人の?」
「う…あ…えぁ……」
「私は……三佐お勧めのビールは苦いから嫌……日本酒がよかった」
「……え?」

何故碇君は呆然としているの?

お酒を飲んだ結果、私のように二日酔いになっているのではないの?
体から強く石鹸の匂いがするのは気持ち悪くなって嘔吐した結果ではないの?


意味が違うのなら、その理由が知りたくて。
少しだけ、あの四人から彼を引き剥がしたくて。
でも、二人きりになるにはまだ不安で。

マユミさんも連れて、私達は屋上に避難した。
二種類のお弁当を持った碇君と一緒に。

 

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 数分後。
彼女たちの喧嘩は『渡す、渡させない』から『お弁当の質』へと変化していた。


「だからぁ! アタシだってちゃんと作ったのよぉ!」
「シンジはデートの時『アスカが当番守ってくれない』ってぼやいてたもん!」
「いずれにせよ、不毛な事をしてる位なら曜日を決めて『月曜日はアスカ』とかにしません事?
 食べるのは彼だけですし、わたくしが今後死ぬまでやり続ける事の是非を問うべきです」
「そうね。 じゃ、シンジに決め……あれ?」


呆然とする四人。
当たり前であろう。

今の四人にとってカラ元気に近い自信……シンジに対する恋心を彼に見せ付けることによって。 また、努力の結晶である自分たちの料理、この場合は愛情弁当によって。

彼に自分がいかに彼の事を思っているかをアピールする。
そうすれば少し位は自分をえこ贔屓してくれるのでは?と言う思いがあったのだから。

 

ところが、アピールしたい当人が、綺麗さっぱり消えている。
空回りと言うのは、恥ずかしいものなのだ。


「鈴原?」
「センセなら綾波に引っ張られるようにして出てったで? 山岸はんも引っ張ってたなぁ。
 行き先は屋上やろうかな? 今日は天気いいし。 ベントウもってったしな」
「「ありがとう!!」」

そそくさとお弁当を取り出して

 

「抜け駆けは許しません!!」 と。

それぞれが呼ぶ『綾波レイ』の呼び名を混ぜながら、ずだだだだ!と去って行く四人。

 

 

「センセのどこに『トラから牙抜いて猫にしてしまう』調教能力があるんやろ?」

彼の問いは、問い自体を聞いてないケンスケ以外の全員に無視された。

そう言う事に対する興味は尽きない中学生。
問いに対する答えと言うべきものは妖しいイメージと一緒に簡単に提出できるのだが。


彼女たちの相手であるシンジはさまざまなイメージが弱そうと言う形に固まっていて。
豹変したヒカリを見たトウジのイメージと、彼以外が持つイメージが重ならなかったから。

例え妄想できたとしても、答えは誰の口からも出なかった。

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 わたしは、みたい。

 だれかのかわりでな、ない。

 たったひとりの、わたし。

 かれをすきな、「あのひと」ではない、わたしを。

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「はふぅ……いい景色ですねぇ」

山岸さんが手を横に精一杯伸ばして、深呼吸する。

私も、やってみる。

「この街が、僕らの街。 皆がいて。 沢山の人が生きてる街。 僕が守りたい街」
「詩人ですね、シンジさん」

私の真後ろで碇君がシートを敷く。
ただのコンクリートの床が、それだけで少しの間、私達の生活の一部になる。
こんなにも、簡単に。


「少し前まではね? 他人の顔を、見ているだけだったんだ。 他人の顔色を伺って。
 目の前にいる人の機嫌さえ損ねなきゃいい、って信じてた。
 他人に拒絶されるのが怖かったから。

 でも今は、そんな生活より。  みんなが傍にいてくれるのが嬉しいんだ。 変かな?」


首が二つ、数回振られて意思を表す。


「碇君。私の事を名前で呼んで」
「え!?」

 

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 私の前の彼は、何時もの彼とは違っていました。
純粋に、驚いて、隠しもせずに。

「と、父さんは?」

おとうさん?!
昨日、朝一番にお会いしたあの御髭の方ですよね。

もしかして、綾波さんとあの方とは……。


「碇司令は私の後ろにいる人を見ているだけ。 最初はそれでもよかったのかもしれない。
 けど。 私は知ってしまった。

 浅間山で碇君がアスカさんを助けた時、うらやましいと思った。
 三人で地下通路を歩いた時、二人の会話が途切れないのも。

 その後、あの丘から街を眺めていた時、三人で話せる事がとても嬉しかった。

 何よりも、知ってしまった。 碇君を山岸さんと飲み込んだあの使徒によって。

 碇君が大切な、失うことが嫌な人だと思っていることが。
 貴方ともっと話したい、笑い合いたい、貴方の……傍にいたいと願う私が居ることを知ったの」


碇さんは戸惑っているみたいでした。
何か、綾波さんとの関係に踏み出せない何かがあるのかも知れません。


でも、それは杞憂でした。
何も言わず、彼は綾波さんを抱きしめるとキスをしました。
ウットリと目を閉じた綾波さんの頬を伝う一筋の涙が印象的でした。

 


一分くらいのキスが終った時、しんじさんはようやく私に気付かれたようです。

「何故、戸惑われたんですか? 私の時はあんなに手の早い行動でしたのに」
「本当の碇君は、そんなに決断が早いの?」

確かに手は早いです。 あの時だって……。


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シンジさんは、あの時私の手を引いて初号機というあの紫の機体の上を
手を繋ぎながら付き添ってくれましたけど
あの赤っぽい液体の入ったカプセルだけは、怖かったのです。

「あ、あの、もしかして、このなか、に?」

そしたらシンジさん、なにも言わずにニコニコしながらキスしてきたんですよ!?


 
「!?」

びっくりしましたよ。
だって、ただ唇を合わせただけならともかく、こう。
つつ、っと唇から下になぞって喉の辺りまで唇でなぞられて。

ウットリというよりぽかーんとした時に、ざぶん、と。

シンジさんにこんな強引なところが在るのに驚いたんですよ。
でも、それがきっかけで好意が恋になったんですから、イイ切欠でした。


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それで、何故綾波さんの……写真を?

えっと、女の人がおんぶしてる男の子が多分、シンジさんですよね。
という事は、こっちの反射光が原因で顔がつぶれてしまっているのがお母様ですか?
たしかに、印象だけを取り出せば綾波さんに似てますが……?!

こ、この人?!  たしか、お母さん達と一緒に写ってたあの椅子の女性に……。


「ちょっとまったぁぁぁぁ!!」
「ひゃい!!」

写真を取り上げながら、耳元で叫ばないで下さいアスカさん! ……って、あれ?

アスカさんより少しだけ遅れたマリイさんと霧島さんの表情がおかしいです。
息を整えながら、何かに呆然とされています。
青緑とこげ茶の二組よっつの目の先は……。 私が持っている、写真?


「山岸さん? このお写真は、どこから?」
「あ、あの、シンジさんのお母様のお写真だそうです。 綾波さんとキスしようとしたとき、
 ふと思い出されて、お母様とキスしてるんじゃないかって思われてしまったみたいで、その…?」

マリイさんが制服に付けたウエストポーチからPDAを取り出されました。
何があるんで……!!


「そ、その写真!!」
「え? なんでマユミさんがこの写真を御存知なのですの?」
「多分、この黒髪の人がマユミさんお母さん……本当にそうなんだ」


綾波さんの事がいつの間にか霞んでしまう中……。
今日の運命はアスカさんの携帯に届きました。

「……んっ」

友達をからかう事が大好きなのか、アスカさんの声を霧島さんは見逃しませんでした。

「あ、アスカさん携帯のバイブで感じちゃったんだ」
「そうよぉ……。 だって、シンジの力でアタシは「オンナ」として目覚めちゃったものぉ」

しっかりと藪をつついた事に引き攣って固まった霧島さんと。
まだ殻が一寸お尻に引っ付いてますね? と不謹慎な考えを持った私の前で。


「はい、アスカです……あ、リツコ?」

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「あら、アスカ? 機嫌最悪みたいね?」

呆れた。 まだそんな「情報収集手段」を使う気なの?
アスカはつかつかと日向君の椅子に座っているミサトに近付き

「お・か・げ・さ・ま・で!!」

と一撃。

「それじゃ、山岸さんと洞木さんはここに並んで?」

足を押さえて呻くミサトを『無様』と思いつつ、私は無視を決め込んだ。

「それじゃ、自己紹介を改めて、お願いね」


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司令たちを含めて、発令所の面々に一通り、紹介が済んだ後。
私特製のコーヒーを飲んで貰いながら『座談会』を始めた。
ミサトにとってもその方が都合がいいと思ったしね。

「あの、私達が同居する事になると言う最上さんはどちらの」
「彼女は今日、特別に有給扱いの外出中なの。貴女達が住む為に、
 シンジ君達の隣の部屋へ日向君と一緒に洞木さんの家から荷物を運び込むのが任務。
 日向君はこの前ミサトの昇進パーティーで洞木さんは会ってるわね。 ……さて、これからの日程は」

ミサトも満足したみたいだし、早速、この後の日程の割り振りをしてしまおう。
アスカは月一の、山岸さんと洞木さんは初めての完全定期健診の指示と。
新システムを搭載した三着のスーツの作成。


「アタシのも作るのぉ?!」
「三人共女性でしょ? だからサポーターとかのシンジ君専用の機械を使わなくて良いし、
 その為に共通システムを男性用に再調整するのは結構手間がかかるのよ。
 それと、新システムに交換したのがいくつかあるからシンクロ率伸びるかもね」

意外な事に、シンクロに興味津々のはずのアスカは全くといっていい程食いつかなかった。


「少し前ならねぇ、興味大有りだったけど。 シンジが傍にいれば良いか、と思えてきたから そっちはもう良いかな、って。 ……そう言えば、幸運だったのかもね、アタシって」
「幸運?」


続きを目で尋ねた私にアスカは

「軽い脱水症状で倒れたあの日、もしアタシがちゃんとシンクロテストに参加してたとして。
 シンジのシンクロ率があたしを上回ってたりしたら……あの頃ならシンジを拒絶してたかも。
 シンジと一緒にいることに、ささやかだけど、とても暖かい幸せを感じることも無く、ね」

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「早く行かないと最大のライバルが出来ちゃうじゃない!」
「……そうかもしれないけど。丁度告白の真っ最中かもね」
「え? それって……やっぱり綾波さんもそうなの? シンジの事を?」


「ヒカリさん……昨日言いませんでしたが、彼女も私達『3号室入居メンバー』に入ってますの」
「嘘!? 言う気になったの? レイ?!」

「……アスカ、知ってたんだ」
「だって、今の気持ちは好意だと思うけど恋なのか解らない、って言ってたんだもの……」

「彼女から言われたのですわ。 『もし、彼の中に私が居ないのなら同居は断る』と。
 ですから、真偽の程を確認した後で話したほうがいいと思いましたの」

「ってことは、アンタ達は気付いてたの!」
「元が戦自で訓練受けてた私だよ? 気配でわかっちゃう。 そうでなきゃ護衛役出来ないもの」

――――――――――――――――――――――――

「……という訳で、わたくし達は遅れたのです。
 職員室直ぐ近くの廊下で押し問答をしたので先生に怒られてしまいましたわ……。
 まぁ、それがレイさんにとっていい結果になったのは良かったと思うべきでしょうけど」

「じゃあ、そういう理由があってアスカ達は遅れてたんだ。
 道理で何時も突っ込んでくる二人が来ないと思っていたんだ」

「あ、一寸失礼しますね……」
「え、あ! 御免、ノゾミちゃんにばかり仕事させちゃって?!」
「いいんです。 姉と同じで整理整頓は大好きですから」

今日の屋上での事を話す僕らの目線の下を軽やかに、ヒカリ譲りのスピードでゴミの分別をノゾミちゃんが済ませていく。

「シンジさん、冷蔵庫はいいんですか?」
「うん、あやな……レイがもうここにあるのは全部捨てていくって。
 だから……」

白金に近い彼女の髪の間から藍色のタンクトップの胸元へ延びる一本の汗の流れ。
その汗の量を一気に増やしたい。

最も下の彼女がどう啼くか……。


「だぁ!?」

頭をふるふるとふって、いやらしい考えを必死になって追い出した。
脳裏にに浮かぶその思いは非情なまでに不謹慎で。

卑猥で。

倒錯的な快感が詰まっていそうだった。

 


 
乳房もろくに膨らんでいない女の子以前の彼女。
ロリコンとは別の意味で。
崇拝のように僕に答えようとする彼女の心と体に教え込むんだ。

苗木を育てるみたいに。 僕好みの存在へ。 レディーに。 僕だけの娼婦に。

ぞくぞくっとするよ……。

「シンジさん?」
「ひゃい!?」

はぁ……いけない……さっき一度振り払ったはずなのに。
最近この手の妄想に自分からどっぷりとハマって行くようになってる。

玄関先にいる二人は、もう帰宅の準備を済ませて僕たちを待っていた。
その後に、荷物を持った僕とマナ、最後にあや……レイが続く。

「荷物の片付けは済みましたし、冷蔵庫などは庶務課の人が処理してくださるそうなので。
 さて綾波さん。 他に思い出の品とかは有りません? 後の物はこのままでよろしいですか?」


彼女の当にレイがこっくりと頷いて、心残りはもう無いと告げる。


「それじゃ、荷物を姉たちの家へ!」
「はいはい。 ヒカリちゃんとマユミちゃんの荷物の整理が待ってるわ」

期待とわくわく感そのままにノゾミちゃんの声が弾む。
それとは反対に、マナの声はもう少し続く労働と暑さを、少しだけげんなり。

「それじゃ、行こうか。 レイ……?」


玄関から出ようとした僕の耳にちいさく。
最後に残っていたレイの。


「さよなら……今までの私」と声が聞こえた。

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夕焼けが近いお陰で少しだけ涼しくなった道を、5つの長い影を纏って歩く。

「ノゾミちゃん、わくわくしてる?」
「はい! 嬉しいですよ霧島さん! だってシンジさんと一緒に御仕事できたんです!
 これからは姉の家に行くだけで。 キスも、それにその先も……うふっ♪」

「あ、あのさ、ノゾミちゃんは、その、早いとは思わないの? キスとかはともかく」
「今のボクが怖いのは純潔の痛みだけです!」


ぴるるるるる。
丁度話をきるように、マリイさんの携帯がなる。
助かった……。

「はい、マリイでっ?! 声が大きすぎますわ! アスカ! 冷静になりなさい!

 それで……何ですのアスカ? は?策略? 『ご馳走』? あぁ……なるほど。
 主役のヒカリさん達が明日のお昼まで缶詰と聞いていますから明日に伸ばしましょう。
 は? パーティーのご馳走じゃ、ない?……あきれた!……貴女の中にはそれしか有りませんの!?」

電話の向こうのアスカとマリイさんは真っ赤になりながら大声で話している。

 

ちょんちょん、とつつかれ、振り向いた僕の前には。
三色三対の――レイの赤、ノゾミちゃんの水色、マナのこげ茶の――興味津々な瞳。


「ねぇ? アスカさんがあんなに夢中になるくらいに凄いの? シンジのって?」
「一度見たことはある。 でもしなびてて大きくなかった」
「それはですねレイさん。 刺激を受けると大きくなるんです」
「綾波さん。 その時の大きさ覚えてる?」

確か、微妙に隠れていたけどこのくらい……。

そういって、レイが両手の指で大きさを表現した。
長さはそのくらいで、今のより少し細いかな……。

「お父さんのより遥かに大きいです……」

そうなの?

「ムサシより長くて、ケイタより太いのか……」
「どうして霧島さんは二人のサイズを知ってるの?」
「どういうのか知りたかったんで、二人を捕まえてひん剥いたの♪ それだけだよ、綾波さん」

あ、あはははっはは……。

……


  帰宅(?)したボク達を待っていたのはトウジさんとケンスケさんの二人でした。

「あ!センセ、一寸」
「シンジぃぃぃぃぃぃ!」

重くは無いけどおきな段ボール箱を持っているシンジさんは逃げられない。
引き攣った彼に縋りつくようにしながら叫ぶケンスケさん。

「な、何があったのケンスケ?」
「あんな? さっき親父さんのファイル覗いたら『五人目』が予備として選ばれる可能性があるって書いてあったらしいんや。それでな……」

「姉ならもう手続きに行きましたよ? ジオフロントへ」

自分でも意地悪だ、とは思うけどシンジさんとの時間を邪魔すされるのはいや。

「……はい?」
「『五人目』でしたらヒカリさんと後もう一人が最終選抜の候補に先程選ばれました。
 ノゾミさんはその事を言われたのです。
 彼女は明日の昼まで本部に泊り込み、身体検査など素質調査の準備を……」

マリイさんの話に止めを刺された彼はとぼとぼと帰ってしまいました。
慰め役の鈴原さんを連れて。

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「あ、ここに穴開けちゃったんですか」

三号室と二号室の間の壁には即席のドアが突貫工事で取り付けられていました。
丁度、二号室のキッチンと三号室の廊下……この部屋ならシンジさんとアスカさんの部屋を挟んだ
廊下に当たる所にドアが繋がっています。

そのドアの向こうには既に日向さんと最上さんがいて、引越し蕎麦を並べてました。

「ああ、お帰り。早かったね」
「部屋割りを勝手にしてしまったけどよかったかしら。
 こちらとこちらの大部屋二つに二段ベッドを一つずつ入れて二人部屋に。
 後シンジ君の部屋に当たるところを一人部屋に。
 私はリビングで寝起きさせてもらうわ。 そっちのほうが性に合ってるの」

彼女が指差す先には一つベッドがあって、それに隣接するように端末がすえつけてあって。
ベッドの上から操作できるようにしてあるみたい。

「少し、不精ですね」
「ははは……」

話し合いの結果、マリイさんと綾波さんがアスカさんの部屋に当たるところ。
マユミさんと姉が葛城さんの部屋に当たるところ。
マナさんがシンジさんの部屋に当たるところに決まった。



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