〜 FEZ Erotic Lv.6 〜
鉄の扉が閉じられ、外界のざわめきから隔絶されたおごそかな沈黙はチャペルのそれだ。
辺りを照らし出すものはガラスランプのやわらかい灯り。
柱ごとにふんだんに取り付けられたランプの数が、天井の高いホールを隅々まで照らし出すに充分な光量を確保している。
灯りの質自体、坑道都市ベインワッドの通常区画に備えられた粗末な燭台とは段違い。炎を剥き出しにせず、ガラス細工のフードを被せた手間と贅沢さが、扉の外とはやはり違う荘厳な雰囲気を醸し出す。
―― ブリーフィングルーム。普段はネツァワルの各部隊が、部隊内や部隊同士の会議、交流、催事のために用いる特別な部屋だ。
木組みの天井からは緋の垂れ幕が垂らされ、部屋の中心にサークルを据える意匠にて敷き詰められた石畳床は、一般の坑道とは掛けられた手間暇と資金にて一線を画す。
実用性一本槍の坑道とはここでも差を見せるレリーフ扉から、まっすぐ赤絨毯が敷かれた先に四段の段差、睥睨の位置を占める演壇が置かれている。
ネツァワルの兵士だけが使用する権利を与えられたこの部屋、その場所で、部隊長などの地位を占めた要人たちが、多くの演説を行い、戦争の指揮をとってきた。
一方の質素さを実用性と言えば聞こえは良い。しかし、つまりはそれ以外に力を注ぐ余裕を一切持たない一般市民用設備との明確な格差であり、ネツァワルという国家が兵士たちにはかる便宜の程を象徴する空間である。
今宵の催しもその意味ではブリーフィングルームの用いられ方としては間違ってはいないが、しかしその扉には厳重な鍵が掛けられている。
門番を務めるベインワッド衛兵、イーファも、合い言葉を知らないものに扉を開くことはない。
分厚い石組みの壁も、内部の全てを漏らさず遮る。
ゆえに、兵士でもない坑道都市一般の住人たちには無縁なほど明々と満たされた光の中に、集まった面々は躊躇うことなく彼女を引き出すことが出来ているのだった。
「心の準備は出来ているな? マナ」
鎖のリードを握った男が、じゃらりとマナの首輪を引いた。
「ふぁ、ふぁいいぃ……」
一糸まとうことなく、犬の耳を模した『プルイヤー』を髪に飾り、家畜の首輪を嵌めて赤絨毯に這い蹲る。人の尊厳を捨て去った四つ這いで明かり下に引き出された奴隷少女に、否の返事は仮定ですらあり得ない。
従順そのものの卑屈な上目遣いで返し、はぁはぁと紅潮した面差しで取り囲む主人達の次の声を待つ。
荒い息遣いに突き出され垂れる舌は、まさしく犬。人の知性など窺えもしない、牝犬そのものの風情が何とみっともないことか。
ガルム遊技場から横流しされた酒精の効きっぷりときたら、今宵もやはり、マナから最後の羞じらいというものを奪い去っていた。
「はっ、イヌがなんだぁ? はいとでも鳴きやがったつもりか?」
じゃらんと乱暴に鎖が引かれた。
鎖は奴隷の頬を打ち、犬這いの姿勢すら不遜だとひれ伏させる。
「わん、だろう? イヌだったらよぉ」
物覚えが悪いだの、いつまでも人間様のつもりでいるなよだのと、鞭の如く全裸の少女を打つ言葉は、今宵のイベントの前座たるプレイ。
「わ、わん……」
ご覧じろ方々よ、この哀れな生け贄の、染まりきった牝イヌ奴隷ぶりはときたら―― ! と、そう誇らしげに、調教の程を披露するため。
まだいっそ、あどけない。そう呼んで然るべきの若い娘が、家畜の扱いにそれでも恍惚と媚び従う様を見て、そこまで躾けられたかと満足するための確認作業なのだった。
『おお……』
頷くお歴々の漏らす感嘆が、さざめきのようにホールに広がる。
「さすがだな。……クク、まぁあのこまっしゃくれた錬金術師やら、あんな子供までも見事に躾けてくれた君らのことだ、心配はしていなかったがね?」
「その調子で、次の娘も頼むよ」
「スキルアップに努めてくれたまえよ? なにしろ、あのエリス姫様もまだ予定に控えているのだからね」
「ははっ、お任せを」
取り囲みの一通りから賛辞を意味する目配せが集まることにより、マナには今宵の『式』へ臨むに合格と晴れて参加への許しが、調教役にはその仕事ぶりへの報酬が、それぞれ与えられるのだ。
マナの鎖を渡して、調教役を代表した男はゴールドコインが一杯に詰まった袋と共に脇へ退いた。
新たな男に鎖を引かれたマナは、裸の尻をその穴まで一堂にたっぷり視姦されつつ、よたよたと一旦下げられた演壇の脇で、今宵の晴れ着へと支度される。
ドレスアップを手伝うのは、彼女の先輩奴隷たちだ。
宴に相応しく着飾りつつ、しかし性奴隷の身分を忘れないあられもない装いで乳房を、尻を剥き出しにした牝淑女たち。今宵の主役のマナを待つまでに、その開発されきった淫乱な躰で部隊の主人達をもてなしていた名残を、頬の火照りと肌を濡らす汗、股間にぬめる滴りに留めた、揃って哀れな女性部隊員たち。
涙を堪えきれず、その度に叱咤と仕置きの鞭、股間に埋めさせられた淫具での責めを受けるアンがいた。国王の娘と仲が良いのだと無邪気に語っていた幼い町娘、あのあどけなさが嘘のように淫らがましく瞳澱ませたマルがいた。いつもの黒いローブを腰までたくし上げ、胸を大きく開いたままにした<黄金のほったて小屋>女主人、ジュンがいた。
「はうっ、うっ、マナ……マナぁぁ……。お、お前まで、ごめんよ、ごめんよぅ……」
「あはぁ、あ、マナちゃんのおっぱいも……ふかふかだぁ。マル、ふかふかおっぱい大好きなの」
ブライドドレス、ブライドスカート、ブライドシューズ。純白の花嫁衣装を、マナの豊かな胸の隆起に歓声を上げるマルが着せ、淫裂を張り型に抉られる悦びに見る影もなく手付きを覚束なくさせた美少女錬金術師が履かせ、
「んふ……可哀想にねぇ。こんな繊細な肌の脚で、坑道の石っころ道を這いずり回らされたのね? わたしも……っはぁぁ、あっ、あんな恥ずかしい恰好で、また引き回されたりしたら……」
かつてやはり『式』に臨み、部隊の備品となることを受け容れた彼女。その奴隷宣誓を捧げるまでの容赦なきセックス拷問、露出調教時代を思い出し、普段からローブの下には下着の一枚も実は身に付けず過ごしているのだと明かした熟女女将が、次々と用意を調えていく。
最後に花嫁のヴェール代わりの犬耳カチューシャを栗毛の髪に整え直し、『綺麗よ』との口々の褒めそやしに見送られて―― 。完成した新たな花嫁奴隷、マナは、祭壇に設えられた彼女の晴れ舞台へと上った。
一段、二段と、赤い絨毯の敷かれた壇上へとのぼる。
神父役を気取る黒外套のソーサラーに促がされ、そこでマナは振り返った。
式での振る舞いは全て脳裏に刻み込まれている。繰り返された調教の中で続けてきた『練習』のままに、今宵は本番を迎えるのだ。
(らいじょうぶ、わたし、じょうずにできるもん……)
ただ今晩は、見守る男達が三桁に上る部隊総員であるというだけ。ブリーフィングルーム狭しとひしめく観客に向かって、全てをさらけ出してしまうというだけ。
(見てて、ごひゅじんさま……)
鈴なりに連なった人垣の顔、顔、顔の中に、彼女を牝犬の悦びへと誘ってくれたあの調教役の男を見出したマナは、ついこれまでの癖でそう呼びかけようとし、そしてはたと気が付いたのだった。
(そっか、今晩から、ここの全員がわたしのご主人様なんら)
ぐるっと見渡す彼らの、想像しただけで―― 太いの、逞しいの、ゴツゴツしていそうなの、いかにもテクニシャンそうなのと、多種多様の『おチンポさま』を想い、マナは濡れた。
ジュクン―― 、と。疼いた内腿に熱いぬめりがまた新たに伝い流れていく感触を、なんてタイミングなのと恥じるのではなく、寧ろ喜んで。見ていただくのに丁度良い支度が出来たわと悦んで、そしてマナは式に臨んだ。
◆ ◆ ◆ 「ふふ、それでは本日
( ) の( ) 新婦と、新郎達( ) の式を始めましょうか。……さあ」
朗々とした声が、壇上に立ったマナを促した。
男の位置は神父役。唆すのは、永遠の隷属への誓いであった。
長き苦難と葛藤の過程を経て、心まで調教され尽くした彼女に今や否やはない。
「ふぁ、ふぁい……」
頷いたマナは純白のスカートの長い裾をつまみ上げて、真正面に走ったスリットからしずしずと左右にたくし開けていった。
下着は着けていない。
穢れ知らずの、まばゆき白化粧に包まれていた内腿への脚線、下腹にかけては、白揃えのストッキングを吊すガーターベルトが確認できるだけだ。
日焼けと無縁のその部分。坑道都市育ちの娘ら特有の雪肌を露わにしてしまえば、あられもない乙女の花園を男達のぎらついた目付きから守るものは、なにも残っていなかった。
被虐の予感にいち早く淫蜜をこぼす綺麗な桜色のラヴィアも、そのスリットの頂に芽吹いたばかりの風情を見せる栗毛のヘアも、正面からのラインだけでもむしゃぶりつきくなる丸みのヒップも、全てが露呈されている。
「さて」
勿体ぶった咳払いをおいて、神父役の男は続けた。
「この良き夜は、我らの部隊とこのマナ嬢の神聖なる儀式となりましょう。既に新郎代表にして立会人でいらっしゃいますオスカーさまからは、一足先に結婚証明書にサインを戴いております」
言葉を受けて、ステージの脇に腕組みで控えていた騎士姿の男が頷いてみせる。背中に長い剣を背負った、長髪の優男だ。
列席の一同それぞれがオスカーと呼ばれた男へそれぞれの敬意の表し方と共に会釈を送ると、皆の視線が再び花嫁に帰るのを待って『ご覧下さい』と、神父役がマナのスカート裏を大きく掲げて見せた。
「うぁ、ぁ……」
裾を奪われたマナが恥ずかしげに呻いて、俯く。
純白のドレスの裏地には、着込んだ花嫁の素肌をシルクの着心地よりも真っ先に迎えただろう、ねばついた白濁が撒き散らされていた。
表への染みの通り具合をみれば、ドレスアップの直前に噴射されたものだと分かる。
「無論、このあと出席されました新郎の皆々様方にも『サイン』を頂戴するわけですが……ご異存はありますまいな?」
返されたのは応と、ホール中に満ちた唱和。
満面の笑みで神父役は頷き、マナはますます顔を赤く火照らせた。綻んだ口元に露わな羞恥に増して浮かび上がっていたのは、心からの歓びだった。
―― あ、わたし、これでやっと……はなよめにしてもらえるんだぁ。
倒錯した陶酔に早くも秘め花を綻ばせるマナの耳には碌に届いていないが、その間も居並ぶ新郎たちに花嫁を紹介する口上は続いていた。
「花嫁はかねてより我が部隊の備品妻でありました錬金術師、アン嬢により見出されまして、同じく備品妻頭のジュンの見極めにて部隊の備品バンクへの預け入れが推薦された、一級品の素材牝でありました」
あの頃のマナが知らなかった、ベインワッドの闇。首都の主要施設、店舗を網羅する邪悪なネットワーク。その末端であるアンとの出会いが運命付けたと言っていい、転落と調教の履歴だった。直接の導き手たるアンにも、そのつもりは無かったろうが。
しかし、兵士として生きようとするマナがいずこかの部隊への所属を考えたとき、彼女という美しくも無防備な存在を報告しないで済ませる道はアンには無かった。
アンが報告せずとも、二人の関係を知っていたジュンが伝えたことだろう。
その場合、格好の新部隊員候補をあえて隠匿したアンを待ち受けていたのは、研究所閉鎖後の彼女が部隊に拾われた直後に受けていたような、何の自由もない凄惨な奴隷暮らし、再調教のフルコースメニューであった筈である。
『ごめん、ごめんよぉ……。でもオレっ、こうするしか……』と。アンは泣いて謝ったものだが、それでも彼女は口にした通り、愛人をたとえ淫らな地獄に突き落とそうとも、漸く取り返した錬金術師としての研究を手放すことは出来なかったのだ。
心の底まで支配された牝奴隷には到底、部隊の『ご主人様たち』に逆らうことは出来ない。強力なネットワーク、財力を持つ<部隊>をスポンサーにしている錬金術師には、その意向を無視など出来ようはずがない。
それを恨んだことも、泣いたことも、けれどももう今のマナには遠い過去だった。
「わたくし……淫らな牝いぬのマナは、こ、今宵この時より……」
はじめて顔を合わせるような男達、中には父親ほどの年上も、弟のように幼い少年も居並ぶ―― その全員に、剥き出しにさせた性器を覗かせて。隠そうという衝動どころか、ひくひくと秘粘膜、姫襞を涎にひくつかせてしまうほどの興奮に打ち震えつつ、マナは教え込まれた挨拶文句を口にしていた。
「みなさま全員の、貞淑なる花嫁奴隷として……部隊の立派な備品妻として……目覚めたる朝より眠りにつく朝まで、夢の中までも、一日の全てを捧げてお仕えいたします」
ここに、と一層露わにスカートを捲ってみせて、太腿同士を開き、その狭間に息づく淫花をより前へと腰を突き出して。
「どうか皆様の、命の源をお注ぎ下さいませ。わたくしという哀れで淫らな、浅ましい牝イヌの胎に、ご主人様方の精を注ぎ込んで下さいませ。マナの子宮に、満たして下さいませ」
そして、そしてと、夢見るようにうっとりと、
「きっと皆さま方の、部隊全てのご主人様方のせーえきを受け止めて、立派なあかちゃんを授かるまでご奉仕いたします。おなかが……っ、っは、はぁぁっ、ぽんぽんになるまで、役目をはたしてみせま、す、すっっ」
『ああ、あはぁああっ』と、堪えぬように熱い息を漏らしてしまう。
その脳裏には、父親の特定ならぬ赤子を宿す妊婦と成り果てた、己が素晴らしき末路が浮かんでいた。
「このネツァワルの良き男子らと誓いの夜に挑み、この目出度き宴に集うた皆を見事受け容れる覚悟はあるか?」
「は、はいっ」
「敬うべき夫達の褥に永久に仕え、望まれた夜も求められた昼も、いかなる時も応えて歓びを捧げる覚悟はあるか?」
やはり繰り返されるのは、呂律怪しくも昂ぶりきった応え。受諾の言葉。
ならば唱えよと、神父役の男が契約の結びを促す。
「人間を捨てて、新しいネツァワルの未来を担う子らの為に。その胎を捧げるのだな?」
マナは躊躇わなかった。
「わたひは……わたしはっ、皆様の牝イヌ妻として……、ごしゅじん様方とのふーふ愛に全てを捧げます。どうか、どうか……こ、交尾してやって……くださいませ……!!」
言い切る。年頃の少女として夢見た幸せな恋愛も、祝福されるべき結婚も、兵士として望んだ栄達も全て捨てて。部隊の実態たる秘密結社に、生きた出産装置として自身を献上する。支配階級として所属する部隊の男たちの、性欲処理奴隷として嫁ぐという誓いを、迷わずに言い切ってしまう。
その顔には、ただ晴れがましさのみが輝いていた。
どんよりと、淫悦のぬかるみに澱みきった瞳が熱っぽい―― 狂った誇らしさが輝かせているのだった。
◆ ◆ ◆ チャペルになぞらえられたブリーフィングルームは、一変してサバトの会場へと成り果てた。
「お、オスカーさまぁ……」
一番手だと鎧を脱ぎ捨てたのは、部隊の真の設立者だった零落貴族、オスカーだった。
赤い絨毯を褥に仰向けとなり、奉仕せよといきり勃つペニスを突き付ける。
甘いマスクに憧れさえした街の隣人を前に、ああと驚き頬火照らせた次に、マナは素早くドレスの胸をずらし下げ、両の乳房を剥き出しにしていた。
進み出て跪き、オスカーのペニスを谷間へ挟むよう、胸を捧げ持つ。『パイズリ』と、その行為を口にするのも嫌悪した奉仕術も、今ではお手の物だ。
「マナの、おっぱい……いかがですか? オスカーさま」
「うむ、むっ。いいぞ、マナ……」
ゆさ、ゆさと挟むペニスへの愛撫に胸を自ら揉みしだくその背中へ、また一早く、目ざとい男が覆い被さってくる。
なにしろ今宵は部隊員全てがマナを犯す。一時に一人ずつでは、時間がいくらあっても足りたものではない。
「いかんな、我が新しき妻よ。今宵の同志達はみなそなたの夫ぞ?」
耳元に吐き掛けられる息は色濃くアルコール臭を滲ませていて、お尻にはスカート越しに生固い感触が押し当てられる。
「あっ、そ、そうですね……。旦那様ぁ……ぁ」
頬の横から吸われた唇で背後のちゅぐと粘っこく舌を絡めて、そのままの次には、マナはまた第三の男に唇を奪われていた。
「ふあっ、あっ、キスぅぅ」
蛇が獲物にそうするように、瞳を閉じることなく三番目の『夫』は、うっとりとしたマナの顔を舐め上げる。
嫌悪感どころか恍惚に粟立つ項には、先の背後の男が赤ら顔をぴちゅると吸い付かせて、敏感なうなじにキスマークを刻んでいく。
「ひやっ、あっ、首ぃ……弱いのぉ……」
「ふふ、そうだったな、マナ……。お、おまえ、オレがキスしてやってもいっつも目立つからとか理由付けてて、ほんとは弱点だから……いやがってたんだよな」
オスカーの寝そべる横で四つん這いに、順番待ちの『夫』に犯されだしたアンが、顔をくちゃくちゃにさせていた。
自分が裏切った愛人の運命に泣けばいいのか、一足先に籠絡されていたマゾ体質、火の着きやすさにただ悦がり啼けばいいのか、分からなくなった顔で思い出しているのだった。
「ああんっ、そうなのっ。らって、らってマナ……しょこっ、感じちゃうから……らから止めてって言ってたのに、アンが、アンが―― ぁぁぁ、ああんん〜〜っ!」
不意に首を仰け反らし、悩ましく裏返った悲鳴を上げる。
「ははぁ、我が妻よ。尻穴を使った交わりはまだまだ慣れぬか? 生娘のような声を上げおって」
スカートを腰に引き上げられ丸裸にされたヒップを、背後の『夫』が使いだしたのだ。
濡れそぼった秘唇を犯されるよりも早く、アヌスへずぶぶと入り込んだペニスに、思わず背をしならせる。
途端、叫びに開いた口へと生臭い息と唾とが流し込まれて、身のよじりがいや増す羽目に。
その唇でさえ、あまりに多い夫達の奪い合いの対象だ。
「いかんぞ、友よ。君は我らの花嫁の尻を堪能しているのだろう? ならば唇は僕に味わせて貰わなければね」
「ふぁ……? あっ、あむん……ンンンむぅ〜」
「ふふ、花嫁くん。うっかり僕のを、噛み千切ったりしないでおくれよ……?」
酔いどれてマナのアヌスを犯す夫から唇の権利を譲って貰い、若い新たな夫は、フェラチオの奉仕を花嫁に求めた。
無論、その間もオスカーへのパイズリ奉仕は継続されているのだが、いかに全身を娼婦道具と変え、快楽を捧ぐ手管を教え込まれた彼女とて、三人同時の無理な姿勢には苦悶も浮かぶ。
後肛を突かれ弓なりにしなる背中から、更に顎を持ち上げさせられてのフェラチオを行い、一方で胸は精一杯前へ突き出したまま。
『く、ぐ、うむぅ……ぅ』と、眉根によじり寄せられ、涙が浮かぶ。
しかし、奴隷宣誓を捧げたマナに、一切の弱音は許されないのだ。
「だめよ、そんな恐い顔しちゃあ」
ジュンがアンとは反対の傍らに寄り添って、やはり順番待ちの花婿相手に息を火照らせつつ、『後輩』の少女を窘める。
「あなたの可愛らしいお顔だって……ほらね? 旦那様の溢れる精気を受け止めるための、ザーメントイレになるんだから」
ぬかるんだ視線で示す通り、あどけない少女の苦悦を眺めるだけで、射精の衝動を昂ぶらせる『夫』が、そこにはいた。
しゅっ、しゅっ、とジュンがさしのべた手にしごかれ、満足そうにしていても、要求するのは新しき花嫁への噴出だ。彼は、少女の艶やかな髪を褒め称え、その美しい前髪からの顔面に己が白濁をまぶしてやりたいのだと口にした。
「おおせのままに、ご主人様。……分かったわね? マナちゃん。あなたは、顔をそらしたりしちゃダメよ。ご主人様のおチンポ汁を、その可ぁ〜愛いお顔で受け止めるの」
「ふわ、ふわぁい……ぃンむ、ふむぅっ、むっ、んむむ……」
胸にオスカーを挟み、尻穴を酔いどれる『夫』に預け、更に若い『夫』のペニスへと唇寄せる顔面を、また別のペニスからの射精に予約される。
都合、4人。それでも足りない。
「こっちだ、こっちに手を寄越すんだよ」
「おっと、左手は俺のだな」
ジュンがしてやっているようにしごけと、両手それぞれが捕まえられる。パイズリの胸に添えさせていた補助を無くすのだから、当然のようにオスカーは不満顔だ。
だが、童顔のマナにミスマッチなのが良いと評判だったCカップバストを君は使っているのではないかと、そうやって遠慮を求められれば、まぁ仕方ないかなと。
なにせ、後がつかえてしょうがないのであるから。
代わりに、手を使えずとも巧みに揺らしてみせろよなと、マナへの要求を強めるしかない。
そして勿論、奴隷妻となったマナには求められた全てへ応える義務がある。
アナル責めにふつふつと性感を滾らせつつあるマナは、感じる一方の陶酔にのたうちつつ、懸命に胸を揺らすのだった。
そうして6人。
「だが、勿体ないじゃあないか」
マナのヒップに腰を打ち付けつつ、酔いを増すばかりの『夫』が言い、細腰にやっていた手を前へ潜り込ませた。
「オスカー殿がいきなり花嫁を床に這わせたりするものだから、折角の蕾が一人咲きで、疼き涙を流しておるよ」
「―― ッ、ぷはっ、アッ、アアン」
鼻声も甲高く、眼前のペニス二本に交互へ舌を絡めるようフェラチオ奉仕のスタイルを変えていたマナが、
「そこはぁぁ、っ」
と、舌を硬直させて、ふるふる堪えられないとばかりに首をよじる。
後肛を犯す『夫』の手は、真っ先に使用されると予想しつつも手つかずにされていた秘唇へさしのべられていたのだ。
「うむ、もうこちらはすっかり大人じゃないかね? よく熟れておるな。……ははっ、トロトロと美味そうな蜜を垂らしおって」
「ああ、僕にも確かめさせて欲しいものだね。僕の自慢の逸物をこうも甘やかに舐めしゃぶってくれる花嫁が、そうしながらどれほど淫らに潤っているのかねぇ」
「あっ、ああっ、ご主人様っ、ご主人様ぁぁっ」
空いている、と聞きつけて、次々と周囲から手が伸びる。堪らずマナは喘いだ。
「そんなにっ、そんなにされたら……ご、ごほうし……出来ません。ご主人様の、おちんちんにフェラチォ……ぉ、させてくださいぃぃぃっ、ッ、ひぃぃっ!?」
「あはぁ。……ね、こっちも美味しそうなお豆じゃない? 知ってるんでしょ、アン?」
「おほっ、ほんとじゃ……ねぇかっ。マナ、おめぇ……すっかりカチンカチンに、クリトリス……っッ、起たせやがって」
酔った指先に、場所を空けてくださいよという若い指先、二人の同性の指先までも入り交じり。少女の薄い秘毛の部分からヴィーナスの丘全体を押し合いへし合い、奪い合い、分け合う。そして、くにゅくにゅと柔らかい感触を楽しみながら、手際良く成熟途上のラヴィアを愛でていく。
ちゅぶりちゅぶりと濡れそぼった花びらをかき分け、見つけ出すのは、少女のクレヴァスの端にしこり勃っていたルビー色の肉突起だった。
マナのすっかり淫乱になった肉体の中でも、とりわけ快楽に脆い器官である。男達のに加えて同性の指にくすぐられ、転がすようにされると、一堪りもなく悩乱する声が迸ったのだった。
「やだ、やだぁ……ぁ、ああ、あ……あああ―― !」
「知らないうちにすっかり育っちまって……。こんだけ堅くしてりゃあ、オレの秘薬無しで……へへっ、オレのを、犯してくれそうじゃないか」
「そ、そうかしら……?」
バックスタイルのピストンを受けて息を切らせつつ、アンが口走る卑猥な妄想。付き合ってやるのは、長い友人付き合いから転じて、今では同じ男達に共有される姉妹奴隷となっているジュンだ。
レズっ気の強い言葉尻に乗っかかって、あまり現実的ではないのではないかしら、と継ぐ。
「男の人の……んぁぁ、ンン……ッ、おちんちんに比べるのは……やっぱり、ね。どちらかというと……マルちゃんや……」
ちらりと、少し離れた人だかりの中心で、小さな背丈を何人もの男達につり下げられるようにして空中ファックの憂き目に遭わされている町娘を眺めやる。
「ふひゃぁん、にゃっ、にゃぁぁぁ……ぁ、あぁ〜。突いて、突いて、マルのおくぅぅ……おじちゃんので突いてよぉ」
舌っ足らずな喘ぎが、一人前の女と同じ卑猥なセックス賛歌を歌い続ける。おっぱいもまだ、薄い胸に指で摘んで引っ張ったような乳暈付近の尖りしかないというのに。
幼女のものでしかない無毛の恥丘はしかし、ぐにぐにとマシュマロを思わせるしなやかな変形を見せて、大人の男のペニスをわれめへ奥まで受け容れていた。
「それか……そうね、ふふふっ。エリス様みたいな……ちびっちゃいお嬢さんに、ぴったりなサイズだと思うわよ? あふっ、ふふぅン、ん。素敵じゃない? 私たちの……一番新しい妹のが、ね。私たちの迎えるべき……新しいちび女王さまの、最初のおちんちんになるの」
熱にうかされるように言葉を繋ぎ繋ぎ。一方で熟れた乳房にどこかから回された手に喜んで、『慰めてくださるのね?』と、お礼に相手の隆々とした性器をまさぐり返す。
「悪くねぇな……。獅子の王様のお嬢ちゃんを、マナの妹にしてやんのも……っあ、あ、あはっ、お、面白……そうじゃ、ねぇかっ」
強がりな錬金術師の横顔もそのセリフが最後。したたかに膣洞の奥のウィークポイントを突かれたアンは、白目を剥きかけたアクメ貌を晒して派手にイキ狂った。ムンと牡臭の匂う集団の中に飲み込まれて、後はただマナたちにか細く擦れかけた喘ぎを伝えるだけの隣人の一人と成り果てた。
―― イクぅぅぅッ、イクッ、イクイクっ、お、オレ……っ、もう馬鹿になっちまうっ、研究なんか……無理だよぉぉぉ〜ッ!!
「あ、アンさ……ぁ、ぁあああ〜」
愛人であったボーイッシュ少女の耳を疑うような狂態は、聴いているだけでおかしな気分がいや増しになっていく。
自分たち二人で折り重なって楽しんだベッドででも、そんなまでに悩乱する声は耳にしたかどうか……。
その上に、何人もの大人に挟まれて悶えているマナ自身の身体だ。
「ふぁぁ……。いい、いいよぉぉ……。あ、あそこも……お尻も、ごしゅじんさまで、たくさん……たくさんンン」
的確にツボを刺激してくる卑猥な手付きでもってくねり踊る半裸の花嫁姿は、官能の深みへ囚われた証たる紅潮に、肌を赤く赤く染め上げられてしまっていた。
ランプが明々と照らし出す下、長年日焼け知らずだった部分の透き通る肌が燃える様は、ひたすらに艶かしいと牡の本能へ訴えてくるものだ。
そこに、汗に透けるドレスの純白が大きな花びらの重なりにも似て少女を包む。妖精の持つ透けた羽のようにも、包んで見えただろうか。
未だ順番に遠く、見守るだけの周囲の『夫』たちも、そんな小妖精の悶える様には、重ね続けてきた荒淫の経験も刹那忘れ、童貞の少年同然に魅入ってしまうだけの威力だった。
「はぁ、あああっ!」
悦がり啼き咽び、くねくねと悩ましく眉根を捩らせる表情だけでも充分堪能できる。その綺麗な顔に掛けてやりたいと言っていた『夫』が、真っ先に熱汁を噴射させた。
「おふっ、た、たまらん……!」
「んぷっ、ぷはっ、はゃ、やぁぁ……あ、顔っ、いっぱいぃぃ……!」
熱気に揺れる前髪に絡み、さらさらとした髪質を台無しに。きゅっ、と目蓋をつむった上にも、びちゃりとぷりと白濁は降り注ぐ。
次にもう一本、フェラチオを捧げていたペニスが陰嚢をぎゅっと収縮させて、勢いあふれる引き金を引いた。
右、左、と白濁の噴出がマナを襲えば、後は連鎖反応だ。
少女の鼻筋からどろりと、火照りきった頬、形の良い顎へと流れ落ちたザーメンシャワーが、胸元で格好の潤滑油と化す。胸の谷間に摩擦されていた竿にも堰を切らせ、迸らせる。
顎を打って噴き上げたオスカーの絶頂は、いよいよ濁った白色粘液にぬるぬると、マナの貌を汚していった。
となればもう、その最悪な惨めさが、真性の被虐趣味を開眼させているマナの性感を煽りまくる。倒錯したエクスタシーをオーガズムに導いてしまう。
「ぁ、ぁ、ああ……! わたしっ、からだぢゅう、ご主人さまのどろどろ……どろどろで……!」
四人以上の男性を相手取っていたとはいえ、彼女自身に挿し込まれていたペニスはその内のただ一本。アヌスに潜り込んで、マナのきつい直腸を愉しんでいたものだけ。
さすがに未だ、肛門性交では前を貫かれるほどの快感は味わえずにいるマナであったが、それを補って余りある官能悦楽が、三人掛かりの顔面ザーメンシャワーでの(こんなに……わたし、穢されて!)というマゾ酔いから補填されていたのだ。
加えて、あれだけの数の指に女の急所を愛撫されていては、あどけない顔へは似合わない荒々しさの振りたくりに、腰のピッチが増してしまうのも当然のこと。
もっと、もっとと、肛門での結合を悦んでいるのに等しい尻振りダンス。
必然、
「わしも……逝かせて貰うぞ、花嫁よ……!」
マナのまだ肉付きの薄い双臀に打ち込み、抜き、打ち込みし。腸壁への擦り付けを愉しんでいた酔漢の肉槍が、激しいアナルセックスのすばらしさに腰をガクガク震わせつつの、射精を開始する。
「おおっ、おっ、おおおおっ!」
いつにない夥しい量で行われた放出に、男は吠えた。
膣に比べれば幾分かシンプルな構造をしているのが、マナの第二の性器へと作り変えられつつあるアヌスの洞であるものの、それでも牡のオーガズムを熱汁として浴びるには、あまりに敏感な粘膜器官。
(あ、熱いっ……!)
苦悶に似た悶えに、眉根がよじられる。
反射的な食い締めに、きゅぅっと直腸が絞られた。
そこで熱流は殆ど行き止まりになったお陰、実際に精を注がれた深さはさほどでは無かったが―― マナは現実以上の範囲に牡のマグマを感じとっていた。
あつい、あつい、あつい……! と。
挿入こそ受けてはいなかったにせよ、たっぷと秘裂の入り口を弄られ、官能を爆発寸前に溜め込んでいた子宮もまた、尻肉を侵した熱を膣内射精と変わらぬトリガーと判断した。
「イク、イグぅぅう……! んくっ、はっ、ああっ……!」
顔面シャワーのマゾ陶酔がくれていたステップより更に高みへと、マナの嬌声を連ねさせる。
「あんっ、あん、あん、ああンんんんんん……!」
啼き声を甲高く、恍惚を深めながら。背後で最後の一滴まで腰を振るう男に、子供そのままの青い尻肉を揺さぶって、淫らがましく応じる。
「もっと……もっとおっ! わ、わたしに。わたしにもっと注いで下さいっ、ご主人様。わたしのお尻も……に、妊娠させてくださ、ッあ、あああぁぁぁ〜!」
ドロドロの眉間に苦悦相半の深い皺を浮かべる半熟少女の表情は、囲む観客達にも、見入るだけで絶頂を呼ぶようなアンバランスの色香に満ち満ちていて、
「んぁ、んあんぁあ……は、はン……く、くぅぅうううぅ〜〜んんンン……!」
一層高く身悶えの極まった果てで、それぞれで我慢しきれぬ手淫に及んでいたのだろう―― 四方からびしゃびしゃと浴びせられる白濁集中砲火を喚んで、そして深い満足に彩られた暗闇へと、意識を手放させたのだった。
無論、そこで終る『披露宴』ではなかった。
「こんな……こんなのって、気持ちイイ、いいぃいいい!」
「そうよアン。もっと素直に、皆さんにこの素敵な世界を教えてもらうのよ。……ま、マルちゃんも……!」
「ママっ、ま、ママぁ……あ、マルっ、マルはぁぁぁ……ぁひぃぃンんん!」
獣の姿勢で尻を高く掲げ並べさせられて。ボーイッシュな肢体に熟れた裸身、幼すぎるヌードの三つが、後ろからのグラインドにぐらぐらと揺れ、共に悦がり啼いている。
下向きに連なる二人分の乳房が、一人の乳房未満が、周りからの手で出る筈もない母乳を絞られていた。
「いい、い、イイぃぃ……っ、オレはぁぁ、あ、もうっ、奴隷で……このまま奴隷で!」
「あひっ、ひっ、ひぃぃぃッ、ご主人様ぁぁぁ」
「きゃふっ、きゃん、きゃふ! ふっ、おちんちん……おちんちん、マルにいっぱいぃぃ……」
少女達の腰が踊り、下腹から垂れ流された淫らな汁が、飛び散るように一滴、二滴と床にしたたる。
愛らしい乳首も、ぽってりと成熟した乳首も、固く固くしこり勃っていて、同じく発情しきった秘裂の肉芽と共に、最も男達の耳を愉しませる美声のスイッチとなっていた。
それが花嫁を祝福する賛美歌の代わり。
改めて、初夜の秘唇へと『夫たち』を迎え入れるべく。壇上の深紅のカーペットに寝かされたマナは、幾本もの肉柱を手に唇にあやしつつ、大きく割り広げられた股の付け根に、男達の数だけのバリエーションに富んだピストンを見舞われ、悦び咽んだ。
芽生えたばかりの生命があったとしてもすぐに溺れてしまうだろう程の精液を注がれていった。
二度、三度と精を子宮に浴びせられ、合間お湯で清められてはまた犯される。
三桁に上る部隊員が一堂に会しての、過酷なまでの荒淫儀式だ。湯と共に口移しで与えられていた回復薬のリジェネート、痛み止めにと塗りこまれた軟膏がまた例によって別の効能も持っていたのか、三時間も過ぎたかという辺りでも、まだマナは可憐な顔をくちゃくちゃにして声の限り、体力の衰えも見せず、肉悦の泥濘で耽溺する歓びを歌っていた。
「うそぉっ、イイの、イイのぉぉ……。お腹、ぱんぱんで……もう飲めない……無理なのに、無理なのにぃぃぃ……」
立ち上がろうとしても不可能なほど四肢を萎えさせ、過ぎた官能で腰骨をぐずぐずにを砕かれたも同然ながら、尚深くまぐわうためなれば、下半身全体が信じられないほどの貪欲さで悶えてみせる。
男の腰に自ら絡みついて、きつく激しく締め付け、秘洞へ収めたペニスをしごき上げてみせる。
びしゃと胎奥に浴びられた体液にわなないて絶息して、それでも『まだぁ……』と、次の誰かへ縋り付いてみせる。
「ふぅぅうンん、せーえき、せーえき……ご主人様の、どろどろした……これぇえ……」
痩身の『夫』のものも、肥満した『夫』のものも、老いも若きもボタボタと全てない交ぜになった精液を、まるで栓が抜けたような股間からボタボタ、愛液と一緒に垂れ流しながら、
「まだっ、まだ奥にしてくらひゃい! 奥に……わたひを……串刺しにひてぇぇっッッ……!」
始終口を開けっ放しになった肉孔が寂しいと常に新しい肉茎を求め、叶えられたなら喉を震わせ、あられもなく歓迎する。
「ああ、マナ……。お前も……お前もオレたちと同じに……嬉しい、嬉しいよぉっ」
何人目になるかの男に自分の蜜壷も抉って貰いながら、同性の愛人を祝福するアンに、マナはうん、うんと、何度も頷いて。夜が明けるまで果てる事なき感謝を、永遠の牝奴隷を誓った全身で示し続けていたのだった。
◆ ◆ ◆ かくして、一人のソーサラー少女の語られるべき物語は終わりを迎える。
その後、ネツァワルにマナという名前の軍師が誕生したことなかったし、殊勲者の一覧にその名で戦果が刻まれた戦いもなかった。逆に兵士らの間で悪評が広まるような、札付きの兵士失格者として知られる中にも見つけ出せない。
誰かに消息を訊ねたとしても、毎日のように大勢の新人が門を叩き、そして去っていくベインワッドだ、彼らは口を揃えて答えただろう。自分は知らないが、どこかの戦場にはいるかもしれないし、いないかもしれないな、と。
あまりに有り触れた、平凡なルーキー兵士の物語。
それがいつ始まって、いつ終ったのか、気に留める者は珍しい。
今日も変わらず、戦乱渦巻くメルファリアの六大陸に兵士たちは集い、闘う。
坑道都市ベインワッドの城門をくぐり、ネツァワルに名を轟かせようと旅立っていく数多のウォリアー、スカウト、ソーサラー。
傷付いた帰還者を新参兵、古参兵と問わず迎える<黄金のほったて小屋>に賑わいは絶えず、メイド衣装の錬金術師が彼らから研究材料を求めようとする名物姿も、やはりそこにある。
「ようこそ、ネツァワル王国へ! ここは首都ベインワット。あなたの参加を歓迎します」
新人を送り出すマネージャーの声が、大橋市場の喧噪に聞こえていた。
陽は高く、坑道から上ってきた人々が眩しげに手をかざす。今日も彼らは戦うのだろう。
どの国も同じだ。いずれかの国がメルファリアに覇を唱えるまで、その風景は変わることなく続くのだ―― 。
Remarks:シチュ的に、PDX.さんの『夜の披露宴』の二番煎じから抜け出てなさげ。そこら辺もやはりボツ作。